
残業代未払い問題がたびたび報じられています。では、社員が業務の都合に合わせて自由裁量で働けるフレックスタイム制や、あらかじめ1年単位で給与額を決める年俸制を導入していれば、
会社側は残業などの労務管理をしなくてよいのでしょうか。そんなことはありません。特定社会保険労務士の井寄奈美さんが解説します。【毎日新聞経済プレミア】
◇自分でスケジュールを組めず、残業代もなく
A男さん(28)は、社員数約50人のIT関連企業に勤務する第二新卒入社の社員です。同社はフレックスタイム制を導入しており、社員には入社2年目から年俸制を適用しています。
A男さんはフレックス制と年俸制と聞いて、自分の好きな時間に働き、高収入が保証されるイメージを持っていましたが、現実は厳しいものでした。
入社2年目のA男さんの年俸は約300万円でした。年俸を12等分して月々支払われます。月収は25万円ほどで賞与はなく、残業代も支給されませんでした。
しかし、A男さんは先輩とチームを組んでいたため、自分でスケジュールを組むことはできません。フレックス制のメリットは遅刻の扱いがないことだけでした。
早朝に特段の予定がないときは、午前10時ごろに出勤しても誰にもとがめられません。
ただ、先輩が毎日午前8時には出勤するため、A男さんも午前9時までに仕事を始めていました。先輩は早出早帰りタイプで、繁忙期以外は午後6時には退勤しますが、
A男さんは先輩の指示をこなすために午後8時ごろまで勤務するのが常でした。
A男さんの月々の総労働時間は約220時間。会社の月平均所定労働時間は170時間前後です。月に約50時間残業していましたが、毎月の給与明細には基本給25万円と記載され、
半年に1度、通勤手当が別途支給されるだけでした。
◇会社にだまされていると感じて業務改善
A男さんは社長との個人面談で、年俸は約320万円になり、月々の内訳は基本給19万5000円、業務手当7万2000円になると言われました。
年俸額が上がったため学生時代の友人たちの給与と比べても多く誇らしかったのですが、基本給の額が入社時からほとんど上がっていないことにショックを受けました。
入社時は年俸制ではなく、基本給は19万2000円でした。
3年目から基本給とみなし残業代の業務手当がはっきりと分けられると、実際には入社時と変わらない給与で長時間働かされている、会社にだまされていると感じたそうです。
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