これまで成長を牽引してきた地方政府の借金は、天文学的な数字となっている。
借金返済の原資調達に必死になるあまり、軽微な法律違反に対して異様に重い罰金を科すなど、地方政府は今や経済活動に対する足かせ的な存在に化している。
少子高齢化も猛烈な勢いで進行中だ。豊かになる前に高齢化が始まった中国社会が、この負担に耐えられるとは到底思えない。
不動産バブル崩壊に起因する消費者の買い控えも長期間続くことは確実だ。これらの要因から、中国は当分の間「デフレ地獄」から脱却できないだろう。
「経済的な恩恵を享受したい」との思惑から、国際社会は長年にわたり、中国の機嫌を損じないよう努めてきたが、中国経済がかつての輝きを失ってしまえば、もはや中国に媚びる必要はない。
周辺諸国を中心に国際社会は是々非々で中国と対峙する傾向を強めるだろうが、中国がこれまでと同様の拡張主義を取り続けたら、軍事的な衝突の可能性は排除できなくなる。
そのリスクが最も高いのが南シナ海だ。
フィリピンのマルコス大統領は10日、中国の李強首相も出席している会議の場で「中国から継続して嫌がらせや威嚇を受けている」などと訴えた上で、南シナ海における紛争を防ぐためのルール作りを加速するよう要求した。
フィリピンが南シナ海の領有権を巡り中国を対面の場で非難したのは異例のことだ。
面子をつぶされた中国側は怒り心頭だろう。「フィリピンへの軍事的圧力をさらに強めるのではないか」との不安が頭をよぎる。
フィリピンの動きに反中的な傾向が強いベトナムなどが同調すれば、南シナ海の地政学リスクは一気に高まることだろう。