>>1のつづき
●どのような場面で使われるもの?
「空気圧縮機はさまざまな工場でも稼働し、圧縮空気の力でネジを回したり、物を動かしたり、溶接クズなどを吹き飛ばしたりするなど様々な用途に使われています。
普段の生活の中では歯科クリニックで使われる歯を削る「ドリル」や、大工が建築現場で使う「釘打ち」、ゴルフ場で靴に付いた泥を吹き飛ばす「エアガン」などが想像しやすいですね」
「小型の空気圧縮機の仕組みは、モーターでシリンダの中のピストンを動かし、圧力タンク(空気タンク)の中に圧縮した空気を貯めます。使用するときは、タンクの中の空気を吐出します」
「例えば自動車のタイヤはパンパンに張っていて、人間の力で空気を入れることは難しいですね、空気圧縮機はそのようなときに使われます」
「たいてい事故が起こるのは小さな空気圧縮機の使用時です。本人は『たいしたことがない』と悪気なく使っても、圧縮された空気は体内で膨張します。
圧縮されているので何倍もふくらむので、気づいたときに取り返しがつかない事態になります。ちょっとしたいたずら心で短時間でも大きな事故につながります」
ここで、日立産機システムの標準的な小型空気圧縮機(上記写真)を例にとる。家庭用の電源(単相100ボルト)で使用可能な出力0.75キロワットものだ。町の自動車整備工場やガソリンスタンドなどで修理に使われるという。
この製品の最高圧力は0.93Mpa(メガパスカル)、吐出し空気量は80L/minである。
「空気圧縮機の能力は、圧力と、吐出し空気量で決まります。圧力は空気を押し出す力で、単位はMPaを使います。
約1MPaで1センチ四方の中に10キログラムの力がかけられている状態です。吐き出し空気量は、1分間に送り込める空気量のことです」
●1分間で大人1人以上の体積の空気を送り込める
この製品は、1分間に80リットルの容量の空気を送り込むことが可能で、1分間に大人1人以上の空気を送り込むことになる。この数字は空気圧縮機単体の能力で、短時間でも人体に向けて使用されると深刻な事態となる。
また、内蔵されている空気タンクも38リットルあり、本体以外に外付けタンクを利用することもあり、空気タンクに蓄えられた空気は人体と比較すると非常に大きな容量となる。
続いて、大工の釘打ち用に使われる製品の仕様を見てみると、最高圧力は2.7Mpa。吐出し空気量は38L/minとなる。つまり、こちらは1分間に38リットルの空気を吐き出すことができる。
●小型でもお尻に使えば大惨事
「これも家庭用電源で子ども1人分の容積38リットルの吐き出し空気量があります。とてもじゃないが、計算するまでもなく体に入れば大きな影響があります。
どちらにせよ今回の事故の様に内蔵の破裂など大きな損傷が考えられます。たとえ、ズボンの上からだとしても取り返しのつかない事態になります」
「1Mpaは1センチあたり10キロの圧力となり、小さな空気圧縮機でも大変危険です。ここで紹介したものが産業用空気圧縮機の中で小型なものです。町工場でも10倍以上の大きさのものも多く使われています。
そのため、小さな空気圧縮機でも十分に危険です。お尻に空気を入れるような行為は製品の用途に反した使い方です。絶対にやめていただきたいです」