血なまぐさかったり殺伐としていたりする世界で生きる女性達とエロエロするお話を
戦火の方はヒロインが襲われるのがメインだし。似てるようで違うもの
ではないだろうか?
言わば以前あった傭兵や軍人でエロパロみたいなもので
要するにブラックラグーンとかヨルムンガンドに登場するようなヒロインの話ってことかな?
バルメ姉さんを戦火しようとしたら逆に殲滅されそうだしw
零戦で米軍の艦載機を追い払い、帰投した私は出頭命令を受けた。
「私は納得できません!」
「納得できずとも、帰還しろ」
目の前の海軍将校が静かに告げた。
「海軍航空隊やヤハタ隊がこの島を守るために戦っているのになぜ
私は内地に帰還しなければならないのですか!?」
飛行服のまま私は詰め寄った。
「米軍の艦隊がフィリピンを出港した……これは内密だが陸軍の
者達は未だ、連合艦隊が健在であると思っている」
「そんな――艦隊はレイテで……」
「声が大きい!島を防衛する海軍陸戦隊でも一部の者しか知らん。
これは私の推測だが大本営はこの島を見捨てる気だ。後日、
飛行場には地雷を埋設するように命令がくるだろう」
「そんな事をすれば!陸軍の同胞が」
飛行場に地雷を埋設する……それは制空権を失う事となり
先の海戦で艦隊がほぼ壊滅したことは白昼の元に晒される。
それを知った陸軍の将兵は、どう思うだろう
「君はまだ若い。ましてや女性だ」
私はその言葉にカチンときた。
「島の陸軍には私より若い女性…いえ、少女達が!兵士としているのですよ!?
ま、まさかそんな理由で――」
「……失言だった。すまん…しかし、君の帰還は変わらん」
将校は命令書を私に押しつけ、言った。
「島には私も残る。水本家の一員として先に逝く」
「おじ様!わ、私も」
「これは命令だ!」
零戦のチョークが外れ、私は機を進ませた。
飛行場の脇では、陸軍の少女兵士達が鉄兜を振って、笑顔で見送ってくれた。
あの娘達がこんな島の為に命を賭すくらいなら、米軍にくれてやればいいのに。
私は水本燕(つばめ)、水本一族のパイロットだ。
一応、軍人スレに投下する予定だった冒頭部で投下。
前に書いた『米軍整備兵と中尉』の対になる話です。
私の名前はシュルフィーナ=グリンデ。
戦車の砲手を務めている、女性戦車兵だ。
戦争の長期化で人材が不足している為、今や男も女も関係なく戦地で戦っている。
私は小さい頃に英国の分家に養子に出された。元々の故郷はグリンデ家の本家がある『帝国』。
欧州では大きく、科学の発達した国だけど前の大戦後、一部のおかしな人達が国を牛耳ってから
しだいに狂い始め、気付いた頃には周辺諸国を飲み込み『帝国』と称していた。
それ以来、戦乱という魔の手を大陸全土に広げていった。それを見過ごしてはいられない。
私の義父さんは軍の高官であり、その娘が戦わないのはおかしな話だ。
お手伝いさんの中には子供達を全員、戦地に送り出した人もいるのに。
義父さんと義母さんには『戦争になんか行かせない』と猛烈な反対を受けた。
けど、私はその反対を押し切り、志願した。
……本当は小さい頃、微かに記憶に残っている姉さんに会いたい。
姉さんはグリンデ本家の長女として『帝国』にいる。
養子に出されてから会った事はないけど…きっと無事だ。
私はそう信じている。
『戦車兵外伝』
『……ああ…これは酷いですね』
操縦手のメアリー=ポートが言った。私より1つ下の21歳の女性兵士だ。
年が近いせいか何かと話が合う。もともとは紡績工場で働いていたらしいが、
空襲で父親をなくし、母親と姉妹を養う為に軍に入ったらしい。
『…全滅ですか』
これは装填手のトウマ=ロレンス=タナベ。こちらは26歳。
祖先が極東の国から移住してきたらしく私達とは顔つきが少し違う。
黒い瞳に黒い髪。彼の祖先の国は帝国軍と同盟を結んでいる、心境は複雑だろう。
『いくら装甲が紙みたいな戦車でも10両はいたのに…中尉、ロイヤルでも出てきたんでしょうか?』
無線手のウェンリア=ディードマン。この戦車で一番年下の18歳の女性兵士。
この戦争初期に帝国に併合されてしまった小国の元・貴族令嬢様だ。
私も一応はグリンデ家の分家なワケで貴族…という事になるのかもしれない。
この戦車のコールネームが『ティンカーベル』なことから、ついたあだ名が『ウェンディ』
『ふむロイヤルだったら厄介だな……ウェンディ、司令部を』
『はい……繋がりました、どうぞ』
『こちらティンカーベル、ネバーランド応答せよ』
最後に戦車長のアルフレッド=ダイモン中尉。
元々は灼熱の大陸で帝国軍と戦っていたらしいけど、帝都侵攻作戦の為に転属させられたらしい。
戦歴は素晴らしく、もっと厳格な人かと思ったけど、私達に対して気さくに話しかけてくれた。
顎を覆う髭がとってもダンディなナイスミドル。
年齢は不詳、戦地なのに髭の手入れは欠かさない。
『こちらネバーランド、先遣隊の状況を報告せよ』
『先遣隊の戦車は絶望的。アンブッシュで撃破されたらしい。
敵の数は不明だが一部の生存者からの情報によると敵は1両だったと言っている』
先遣隊が敵と交戦し、最後の通信を残して4日が過ぎた。
大隊の移動に手間取り、やっとの事で現地に到着した私達が
見たのは無惨な戦車の残骸。
ハーフトラックに至っては榴弾で引き裂かれたように破壊されている。
たった1両でここまで的確な射撃はできるものなのだろうか?
『1両?確かか?』
『森の中に後退する帝国戦車をその兵が目撃したそうだ。しかし戦闘中の混乱の中だ、信憑性は薄い』
『了解……第3小隊は明朝0600、歩兵中隊と共に10キロ進出せよ』
『10キロ……あ〜…ん〜…西にか?』
『東だ』
『他の部隊は?』
『帝国の反撃は潰したが、こちらの損害も多い。その影響で各師団の再編に手間取っている。
大隊も補給が遅れ、他の戦車隊は橋の確保で動かせん』
『……たった6両で偵察か。この貴重な戦車をハナっから偵察に使うのか?』
『上からの命令だ。明日は空軍の定期便が援護につく。以上、交信終了』
……車内無線に響く中尉のため息。これは悪いニュースがある時だ。
『あー、あまり気の進まん任務だ。我々、第3小隊は明朝0600に歩兵中隊と共に
10qほど進出する。偵察任務だ』
車内に無言の落胆が広がる。この戦車は偵察任務に適していない。
搭載している戦車砲は連合軍の中で唯一帝国戦車を撃破できる戦車砲だが
車体は同盟国の歩兵支援戦車のモノで、敵戦車の砲の前では装甲は『紙』であり、
なお且つこの目立つ長砲身は『長鼻』と呼ばれ、帝国軍の第一撃破目標とされている。
そのために本来は後方にいて『お呼び』が掛かったら現場に出て行く戦車なのだ。
そうでなければ待ち伏せしかない。現在の連合軍には帝国戦車とのガチの撃ち合いで
勝てる戦車など存在しない。5〜6両やられても数で押し、
空軍の支援やコイツで撃破するというのが常套手段だ。
それでも別の戦場ではたった1両の帝国主力戦車によって
同盟軍の戦車大隊の進撃が遅れたという噂がある。
事実、我が軍でもたった1両の重戦車にコテンパンにやられた部隊もある。
帝国戦車は規格外に強くて、優秀な戦車兵が多いのだ。
「あーまず…代用コーヒーってまずい」
「チョコレートも大味で甘すぎです…こんなの食べてたら味覚がおかしくなりますよ」
夕方、連合軍の救援隊が到着し、救護所が設置された。
この時期は帝国軍もかなり弱体化し、こんな場所に救護所を作っても問題はなかった。
戦闘があったのは4日前、とうの昔に帝国軍は引き払って後退中だろう。
戦車の横で弾薬の空き箱に座り、私達は給与されたレーションと
代用コーヒーで夕食を取っていた。車外で食べる食事は久しぶりだ。
が、総じて不味い。基地で食べる暖かい食事と紅茶が恋しい。そして私達を見る歩兵連中の視線が痛い。
ウチの戦車の男女比率は男2人に女が3人、むさ苦しくはないが
それでもやはりニオイはつく。シラミが発生しないだけでもよしとしよう。
「一昨日も昨日も今日もランチョンミート……フィーナ先輩、そっち
のソーセージ&ビーンズと代えてくれませんか?」
これはメアリー。階級は共に軍曹なのだが私が年上という事で
彼女は私のことを先輩と呼ぶ。
「それ不味いからイヤよ。くじ引きで決めたんだから、恨むんなら
ツキの無さを恨みなさい。あーソーセージ美味しィ♪」
実際の所は単なる塩辛いソーセージとドロドロの豆煮だが、ランチョンミートよりはマシだ。
「パンじゃなくて米食いてぇなぁ……」
パサパサのパンを囓りながらトウマが言った。
「准尉、オートミールならありますよ」
ウェンディがオートミールの缶詰を勧めた。
「……穀物粥じゃねぇよ…米の事だ」
トウマの故郷の主食なのだろう。私達の味覚とは若干異なる彼も
連合軍の食事には辟易していた。
「ライス?シラミですか?」
「違う!米だ!つづりは『R・I・C・E!』お前が言ってるのは『L・I・C・E』の方だろ!」
「虫を食べるのですかぁ…極東は神秘の国。文化も違いますから恥ずかしがらないで下さい」
笑ってニッコリなウェンディ。イヤミでなく純粋にそう思っているだけにトウマも
怒るに怒れない。さすが元・貴族の令嬢様だ。
「もういい。ウェンディ、お前はKレーションでも食ってろ」
プイっとそっぽを向くトウマ。
「同盟軍空挺部隊のKレーションは食べ物ではないですね。
空挺隊の人達はタバコだけ抜き取って中身は川に流してましたから。」
「同盟国産恐怖のKレーション…あんなものまで給与された私達って一体?」
「砂漠でも俺達はお荷物扱いされてたからなぁ……」
とこれは中尉。そんな話をしながら夜は更けていった。
歩哨は歩兵に任せて、テントで眠る私達。もちろん男女は別々だ。
深夜にふと目が覚めた…横に寝てたはずのウェンディがいない。
メアリーは相変わらず毛布を被って何やら寝言を言っている。きっと
国に残してきた家族の夢でも見ているんだろう。
トイレに行きがてら探すか…と思い、メアリーを起こさないように
私は起きあがった。歩兵の歩哨がいるのでまず脱走はないだろう。
きっとウェンディもトイレなんだろうなぁ…と寝ぼけ眼で私はテントの外に出た。
愛車のティンカーヴェルの前を通り、森の中に入り、
適当な茂みの中に屈んだ。小の方でも
薬莢の中にするのは未だに慣れない…女性の比率が
高くても慣れないのはきっと性格なんだろうなぁ…と
そんな事を思って、用を足し終えた私…すると
「は……あ…はぅ…あん…ん…中尉…」
「ああ…ウェンディ……くッ…」
茂みの向こうから声がする。
………え、えーと…こ、これって…ま、まさか?
私はそーっと茂みの向こうを覗いてみた。
中尉とウェンディが薄暗い森でヤっている。
中尉はズボンだけ脱ぎ、背後からウェンディ覆い被さっていた。
ウェンディは木の幹に押しつけられるような格好のまま、
シャツをずらして胸を露出させ、お尻を突き出している。
「ん…もっと、もっと私…つ、んあはっ……」
「ウェンディ……ウェンディ…」
ズンッと背後から力強く、腰を突き出す中尉。
それに呼応しぷるんっと震えるウェンディの色白な胸とお尻。
そして中尉はすぐに腰を引き、直後に力一杯叩きつける。
「んはぁ…中尉…もっと…触っ……ひいん!」
「ああ、あぁ…気持ち…いい締まりだ…くっ……」
中尉の力強い突きの度に身悶え、くぐもった声を上げるウェンディ。
「あはッ!…もっと、もっと突いて、突いて下さい…あう…んん」
引いては突き、引いては突きの繰り返し、中尉はその合間にウェンディの
胸に手をやり揉みこねる。着やせするタイプなのか?
ウェンディの胸は結構、大きい。
あ…ヤ、ヤバイ……目の前で盛られて…私の方も何だか…その
ムズムズしてきた…最近は自分でもシテないからなぁ…。
おしまい
これは戦車兵と戦車長の読み切りモノ
特に続く予定はないので保守ついでに投下
おお〜戦車兵さん久しぶりですね
以前の軍人や傭兵でエロパロスレを落としてすまない
おっ、復活してるじゃん
立てた人GJ、投下した人もGJ
現代のマフィアってどんな感じなんだ?
映画みたいにマシンガンぶっ放したり、派手に抗争したりしてんのかな
メキシコとか北九州とかシャレになってない
イスラム原理主義もやってる事はマフィアに近い部分があるな
流石にそんなことしたらすぐにK察のお世話になっちゃうからなぁ…。
裏で色々やってるんじゃないかなぁ。
色仕掛けで市の要人に取りいったり、
水商売系の斡旋したり
R18用のビデオ撮影したり
今年はバラグリオン作戦70周年でもあるのでソ連軍もので
「この日に一大攻勢を行う事に意義がある!」
と政治将校が熱く語る。
「三年前の今日はファシストドイツによる祖国への侵略が始まった日だからだ。そんな時期にファシストを大いに叩ける作戦が始まるのだから素晴らしいではないか。これほど意味のある意趣返しもなかろう」
1941年6月22日にソビエト連邦はヒトラーのドイツ帝国から侵略を受けた。首都モスクワの門前にまでドイツ軍は攻め寄せたが冬将軍の寒波と伸びに伸びた補給線がドイツ軍の戦力を低下させモスクワは陥落を免れた。
それから三年間は独ソ双方による攻防が続き前年のスターリングラードとクルスクでの勝利によりソ連軍は戦線の主導権を握った。そして1944年6月22日の現在。ソ連軍はウクライナの北隣にあるベラルーシを解放するバラグチオン作戦を発動させる。
ドイツ軍のバルバロッサ作戦の屈辱を晴らす戦いとして。
「もう3年か・・・」
戦車小隊を率いる・アニーシャ・ブロワ中尉はソ連が大祖国戦争と称するこの戦争が三年にも及んでいた事をしみじみと思う。
極東のハバロフスクで生まれ育ったアニーシャは独ソ戦が始まるや青年共産同盟の一員であるからと軍人を志願し1942年のレニングラード解囲戦からT34戦車の車長として戦った。
生死の境を幾つも乗り越えいつの間にか20歳になっていた。
「それでもまだこの戦争は終わりそうには無いか」
三年過ぎても戦争は激しくなるばかりだ。政治将校は「ベルリンを攻め落とすまで戦いは終わらない」と何度か言っていたがどうもそうらしい。
「赤き十月より全車前進せよ」
戦車旅団本部からの無線連絡が入る。
「前進!前進だ!」
無線の装備が小隊長ぐらいまでしか普及していないソ連軍にあって隊長が部下へ指示を出すのは旗や信号弾による合図だ。アニーシャは夜明け前なので照明弾で合図を出す。
本来なら自軍の位置や攻撃意図を暴露するから信号弾は避けたいが今はその心配は無い。1km辺り250門もの猛烈な砲撃をソ連軍がドイツ軍へ浴びせているのだから。
アニーシャ中隊の戦車は工兵がプリチャピ湿地に板を敷いた道を行く。
「こんな所から戦車が来るとは思わないだろう。それにこの盛大な砲兵の射撃。今度の作戦は上手く行きそうだ。
「目標12時の敵陣地!突っ込め!」
アニーシャの戦車中隊は何度目かの敵陣地への攻撃を仕掛けた。
アニーシャ中隊はT34/85の1943年型を装備している。既に量産と配備が成っている新型の85ミリ砲を備えた1944年型ではないが防御力と機動力は変わりはない。
「突撃砲だ!1両やられたぞ!」
「二時の方向だ!撃て!」
ドイツ軍は各地で孤立していたが激しい抵抗をしていた。
「正面に対戦車砲だ!」
操縦手が驚く。
「機銃を撃ちこみながら潰せ!」
アニーシャの戦車の正面に草で偽装された対戦車砲が現れた。
「当たった!」
「砲塔だ。大丈夫!」
対戦車砲の放った砲弾がアニーシャの戦車の砲塔にぶつかった。砲弾は傾斜のある装甲を滑り弾かれた。
「行くぞ!対戦車砲を潰す!」
操縦手は意を決して敵陣地にある対戦車砲へ車体をぶつけのしかかる。鉄と鉄がぶつかる鋭い音と衝撃が車内に響く。
「すぐに前へ出ろはまってしまうぞ」
いつまでも対戦車砲を潰してばかりもいられない。ましてや敵陣地の中だ。
「敵陣地を掻き回せ!」
アニーシャの戦車中隊が暴れる耕運機の如くドイツ軍の陣地を蹂躙する。その時になると歩兵が追いつき陣地の掃討に入る。
「これでまた一つ敵部隊を潰したな。それにしても脆い」
作戦は快調であった。作戦開始から11日目にベラルーシの首都であるミンスクを解放し今やポーランドの首都であるワルシャワへ近づくほどの電撃戦を展開していた。
ドイツ軍はヒトラーから厳重な死守命令を受けたせいで戦術的な戦線の整理も出来ず、その場に留まり続けたせいでソ連軍の動きに成す術が無く各個撃破された。
「気分がいい。この調子でベルリンまで行けそうだ」
アニーシャ中隊の先任下士官であるペーチャ・デニソフ軍曹がウォッカをあおりながら上機嫌で言った。アニーシャ中隊は補給と再編成で半日だけ進撃を止め森の中にあった。
「聞いた話だとアメリカ軍やイギリス軍がフランスに上陸してドイツ軍はそっちに戦力を集中しているらしいわ」
アニーシャはそう士官同士の会話から知った情報を教えた。
「フランスがどこか分からないけど他所へドイツ軍が行くなら大歓迎だねえ」
ペーチャはそこまで教養の高い女性では無かったが下士官としては優秀である。
「酒が飲めて気分がいいので私はこれで」
ペーチャがにっこり笑いながらその場を去る。残る酒の臭いがアニーシャの鼻をつく。
「あ〜私も一口飲もうかな」
十日以上も緊張の連続でありアニーシャも少し酒でも飲んで気分転換がしたかった。
アニーシャはウォッカを貰おうと歩く。時間は夜である。制空権も我が方にあり最前線からは後方の位置でもあるから焚き火があちこちで燃やされ久しぶりの酒に誰もが浮かれている。
この浮かれ過ぎ具合は注意すべきかもしれないがアニーシャは兵士が人間がどんなものか知っているので見守るだけにした。士気を維持するにはハメを少しは外すべきだ。
「そう。時にはハメを外さないと」
政治将校の監視に何度も求められる祖国や党への忠誠が日常のソ連軍ではストレスがたまってしまう。だからこそハメを外すべきだとアニーシャは思う。
だがハメをかなり外している現場へアニーシャは来てしまう。
「そこ、いい。ああん」
ペーチャがT34の斜めの前面装甲に寝そべり大股を開き兵の突きを受けている。
服は上着だけ着ているが前は開き豊かな胸が露になっている。ズボンは脱ぎ下半身は裸である。
「いいわ。すごくいい!」
ペーチャは突き上げられ黒髪と胸を揺らしながら悦んでいる。
「ちょっとペーチャ!ハメを外し過ぎよ!」
アニーシャはペーチャの淫らな姿を見ながら心中でそうツッコミを入れる。
ペーチャを抱く男の顔は暗くて少し分かりづらいがペーチャの戦車に乗る兵だと分かった。
「部下とあんな…」
アニーシャの戦車には操縦手と装填手が男である。だが部下であるとの思いが強く異性としてはあまり意識はしていなかった。それだけにペーチャはどう割り切っているのだろうかと思えた。
「もっと強くう〜揉んで吸ってえ」
ペーチャは覆い被さり胸を揉みながら吸う兵士の頭と背中を抱き開いた両足を腰に絡めた。
「あんなにしがみついて・・・」
ペーチャはズボンだけ脱いだ兵士にしがみつきながら突き入れをを受ける。兵士は腰の動きをより激しくしてペーチャを前面装甲にこすり付けるように上下させる。
「軍曹出ます!もう!」
「いいわ。出しなさい!ああ!」
兵士の動きが一段と激しくなりペーチャをT34の装甲に押し付けんばかりに突いてから身体を震わせ動きを止めた。射精したようだ。
ペーチャは両手で兵士の背中を抱き両足は兵士の腰を抱き留めていた。二人ともしばらくそのままの姿勢で息を荒げている。
「あんなにやって!私だってしたいのに!」
アニーシャは憤懣やるせない気持ちだった。私だってあんなに抱かれたい。酒よりも男が欲しい!そんな憤懣を心中で炸裂させた。
とはいえ部下を漁る事は軍人としての理性が抑えた。
なのでアニーシャは自分の戦車に入るやズボンをずらし股間を露出させ上着の前も開く。そして車長の椅子に大股開きをして座るや左手で胸を右手で股間を弄り始める。
「はあ…はあ…」
アニーシャは目を瞑り先ほどの熱いペーチャの情事を思い出しながら自慰に耽る。
胸を揉まれながら突かれるペーチャ。気持ちよさそうだった。
アニーシャは人差し指を中へ突きいれながらあの時のペーチャの悦びを体感しようとする。性交を見た興奮と戦場でのストレスが快楽を増大させる。
人差し指はすぐに濡れアニーシャの美乳は乳首を尖らせ左手の愛撫に形を歪ませる。
「ああ…はあああ・・・・あああ」
ペーチャのあられもない姿を何度も思い出しながら指の突きを早め乳首を摘んだりするアニーシャ。
「隊長。何でしたら私がお相手しますよ」
いきなり砲等の天蓋を開けて語りかける声がしてアニーシャは動転し胸を両手で隠し股を閉じる動作を急にやって椅子から落ちそうになる。
「バスネルじゃない。何を言ってるの?」
リアナ・バスネル上等兵。アニーシャの戦車で砲手をしている16歳の少女だ。
「ですから私が隊長の溜まっているのを発散させてあげますよ」
「分かって言っているの?」
はっきりと言うリアナにアニーシャは戸惑う。
「任せてくださいよ」
そう言うやリアナは戦車の中に入る。勿論天蓋は閉じて。
「私はこの部隊に来る前に女だけの戦車部隊に居たんです。だから女同士で慰め合う事もありましてね」
リアナはアニーシャの腕をどけて胸をまた露出させ脚も広げて股を露にさせた。
「お、女同士で抱くの?」
アニーシャは士官として隊長としての威厳は消え性の知識が乏しい生娘みたいになっている。
「そうです。同じ苦労をしているから同じ気持ちになるみたいで」
リアナはそう答えた。そうなると男同士もあるのかとアニーシャはふと思ってしまう。
「それに女同士なら気持ちいい所は分かりますから」
リアナの怪しさを含んだ言葉にアニーシャは心を震わせる。それは期待しているからだ。
「では失礼します」
リアナはアニーシャの胸を揉みながら乳首を吸う。
「ああ・・・はあ・・・」
それまでとは違う声色でアニーシャは鳴く。
リアナは両方の乳首を満遍なく舐め回しつつ右手でアニーシャの股へ伸ばす。
「すごい濡れ濡れですね隊長」
リアナは悪戯な笑みを浮かべて言う。
「さっきまで、そこ触っていたから・・・・」
アニーシャは顔を真っ赤にした。
「お股が寂しそうに泣いてますよ〜」
リアナはそう茶化しながらアニーシャの股へ顔を降ろす。
「ひゃあ。そこお〜」
リアナはアニーシャの秘部を舐めクンニを始めた。上下に舌を動かし愛撫したかと思えば豆を突くように舐めたり吸ったりした。
「あああ、いいい。すごくいいわあ」
先ほどの自慰とは違う快感にアニーシャは悦びの声を高く上げる。
「もう、もうダメえ!」
リアナがアニーシャの花弁を嘗め回しつつ豆も突く段になるとアニーシャは達した。
「ああ…はああああ」
アニーシャは車長の椅子の上で仰け反りながら果てた。
「満足できましたか?」
口の周りがアニーシャの愛液で濡らしながらリアナが尋ねた。
「満足よ。とっても・・・」
アニーシャは肩で息をしながら答えた。
「良かった。満足して貰えて」
リアナはハンカチで唇を拭きながらニコリと笑う。
(私の中隊は思っていたよりもハレンチだったのね)
まだ絶頂の余韻に浸りながらリアナはそう自分の部隊の実態を感じた。
とりあえず。ここまで
仕事の関係で次の投稿が未定なので投下したい方はお先にどうぞ
新作戦車モノ乙
女戦車長で百合は新鮮だ
T34—85って強そうなイメージがあるけど
約5万5千両も生産されたが、4万5千両も戦闘で撃破されたらしい
運用方法が悪かったのかな?
基本あのころのロシアの戦術は「前へ、前へ」の戦列歩兵の頃と同じ戦法だからな…
そりゃ戦いなれてるドイツ軍とまともにぶつかったら…
とりあえず数で押し切ったものの…(数を揃える為に女性兵士もどんどん投入したとかなんとか)
マフィアといえばショットガンは欠かせないよね
あとサブマシンガン
>>26
さすがに女騎士スレでやれよ
と思ったけどスレないんだな
単独だと辛そうだけど検索には引っ掛かって欲しい感じの微妙な立ち位置
でもここよりは、女勇者スレの方が合致しそう ここで書こうか迷ってる(んですよね?ですよね?)人が言う騎士ってのは
勇者スレに該当するようなドラクエ的ファンタジー世界観のそれとは別物だと思うけど
>>5の続き
IF本土防空隊
エロなし
レイテ沖の海戦で日本の艦船はほとんど沈んだ。
唯一の救いは主力艦隊が湾内に突入し、輸送船団を壊滅させたことだ。
それは米軍のフィリピン攻略を大きく狂わせた。
が、それが何になる?ただ戦争が伸びただけだ。
敵は正規空母を主力とした海軍に、最新鋭の装備を施された陸軍。
対してこちらは艦船が壊滅した海軍と、武器・弾薬・食糧にさえ事欠く陸軍。
そもそも敵艦隊への攻撃手段が航空機による特攻という時点で話にならない。
特別攻撃隊に使用される機体は旧式化した機体があてがわれ、
中には練習機にドラム缶を積んで出撃している者もいた。
それらは総じて航空機が真っ直ぐに飛ばせるぐらいの技量しか
ない少年や少女兵だ。
私は特攻隊に志願したが、今までの戦果と練度から却下され
本土防空部隊に編入された。 似たような境遇の女性搭乗員は私を含め3人いた。
「唐橋飛曹長であります」
「松本上飛曹で、あ、あります!少尉殿」
2人の女性が私に向かって敬礼した。
「水本燕よ。そんなに固くならなくてもいいわ。これからよろしくね」
軽く敬礼して、握手した。
「小笠原のエースに会えるなんて光栄です!
是非、艦載機を撃墜した話を聞かせてください!」
一番、若い松本雪(ゆき)上飛曹が元気いっぱいに言った。
彼女は満州から本土へ来たとのこと。
顔に似合わず零戦でB17を3機も撃墜した猛者だという。
「かの水本家の少尉殿と共に戦えること、私も誇りに思います。
よろしくお願いします、少尉殿」
こちらは唐橋優子(ゆうこ)厚木航空隊に所属し、そのまま編入されたとのことだ。
雷電を駆って、B29を2機も撃墜した凄腕だ。
私より二人とも年下の女性であり、
松本上飛曹はまだ少女といってもいい年齢だろう。
挨拶を交わしていると、早々に『第九格納庫に出頭せよ』命令を受けた。
格納庫にて上官であろう老人に向かって私達は敬礼した。
「水本少尉、唐橋飛曹長、松本上飛曹、出頭しました」
「ああ…ご苦労さん…とまぁ、中島君…中島君」
老人が下がると、私達より背の低い……というか子供?
がてとてとと歩いてきた。
「えー諸君、よく集まってくれました。僕は鶴野敬(タカシ)
技術将校だけど階級は少佐なので、君達の上官になります」
えっへん…と言わんばかりに両腕を腰にあてる少年。
「ね、ね、ボク…どこからきたの?お母さんはどこかな?」
幼児をあやすように雪が言った。
この子供が上官とは思えない。思えるわけがない。
「失敬な!上官だと言っているぢゃないか!僕は少佐だぞ
お前より偉いんだぞ!水本少尉、部下の教育がなってないぞ!
とゆーか何か言って!」
そんなメゾソプラノな声で言われても迫力がない。
「海軍の人員不足はここまで深刻化しているのでしょうか?」
私は実に悲壮な顔をしていたのだろう、自称少佐は眉をつり上げていった。
「どういう意味だ!こら上飛曹!頭を撫でるな!」
雪に抱きつかれ、頬をふにーと伸ばされている少年を
尻目に唐橋飛曹長が老人問う。
「あの…失礼ですが、貴方が私達の上官なのでは?」
老人は皺のよった眼を飛曹長に向けた。
「ん?いや、ワシは整備兵長じゃよ?お若いの」
「ど、どうして海軍の制服を着ているのですか!?」
「んー…あ…これ、ツナギじゃなかったの?」
格納庫の奥から若い整備兵が汚れた整備服を持ってきた。
「整備長!ツナギじゃないですよ!ソレ!こっちに着替えてください!」
半ば痴呆が入り始めているの老人に子供にしか見えない将校。
私は、もしかしてとんでもない隊に配属されたのではないか?
と背筋が寒くなった。
続
>>35
GJ続けー!
でも雪は本当の上官だと気付いた時点で真っ青になって手のひら返す感じのが好み マフィアの女って言うと
派手な格好して男漁りしまくるビッチか、
はたまた死んだ男に身を尽くす黒ドレスの女か
冷酷な暗殺人形(セックスも機械的)か
この場合マフィアは日本の極道の女たちも含まれるのか?
どうもご無沙汰です
続き投下します。しかしエロは無いです
アニーシャの戦車中隊は戦線に復帰した。
「同志中尉。待っていたぞ」
アニーシャ中隊の姿を見るとブハーリン少佐が待ち構えていた。
「着いて早々で済まないがすぐに攻撃準備だ」
「すぐにですか・・・」
こんな命令は今まで何回もあった。着くなり突撃せよと急き立てるのは悪い兆候だ。
「そうだ。すぐにだ。敵をすぐに攻撃せよ」
NKVDのアラ・ボブリコフ中佐がアニーシャへ冷たく言う。太り気味な中年女性であるボブリコフは眼鏡もかけているせいか余計に威圧的に見える。
「了解です同志。すぐに準備します」
アニーシャは慌てて敬礼し了承したと意志を示した。反逆者とスパイを取り締まるNKVDに逆らう態度を見せると何をされるか分からないからだ。
「あのチェキストババア。偉そうに」
ペーチャは尊大なNKVD中佐を恨む。
「愚痴を言っても仕方ないわ。すぐに準備して」
まだぶつぶつ言うペーチャをアニーシャは中隊へ向かわせる。
「はあ。貧乏くじか」
アニーシャからため息が出た。
そう貧乏くじだった。アニーシャの戦車中隊は再編成で定数の10両が揃っていたがこの攻撃で半分の5両に減ってしまったのだ。
「あそこは敵重戦車の巣ですよ!何故教えてくれなかったんです!」
アニーシャは退却するとすぐに指揮所へ向かいブハーリン少佐へ怒鳴り込む。
「まあ、その。作戦開始まで時間がなくてな」
バツの悪そうな顔でブハーリンは答える。
アニーシャ中隊は狙撃兵大隊と攻撃に出た。すると攻撃目標の村から最凶の敵が現れた。ドイツ軍最強の戦車であるティーガーT重戦車だ。
アニーシャ中隊は突撃して距離を縮め至近距離からティーガーTを攻撃しようとしたが88ミリ砲の長射程はアニーシャ中隊を近づけさせなかった。狙撃兵大隊は戦車の援護が受けられずドイツ軍擲弾兵の銃撃に倒れた。
「ブロワ中尉それがどうしたと言うのです。敵が強力なのは当然でしょ」
ボブリコフが興奮気味のアニーシャへ諭すように言う。
「もしも敵に重戦車がいると知っていたならあんな酷い戦いにはなりませんでした」
アニーシャは構わず反論する。
「自分の失敗を私やブハーリン少佐のせいにするのか?見苦しい」
ボブリコフはアニーシャを見下す。この攻撃の失敗をアニーシャにあると見ているようだ。
アニーシャはボブリコフの考えが分かり唇を噛みこれ以上の抵抗を諦め「そのような事はありません」と自分の非だと認めるしかなかった。
「しかし同志中佐。これで戦力は無くなりましたよ」
ブハーリンは恐る恐るボブリコフへ言う。
「増援が来るのを待っている暇は無い。あの村に居る敵を倒さねばファシスト共を逃がす事になる」
ボブリコフの言う情報はアニーシャには初耳だった。
「同志中佐。敵情をお教え願います」
アニーシャは畏まって求めた。
「良かろう。ここより西へ10km先に3個師団の敵が包囲されている。その包囲された部隊を救援しようと戦車師団を伴う敵軍団が近づいている。また包囲されている敵も救援部隊と合流しようと脱出を図っているのだ」
ボブリコフは机に置かれた地図を指しながら説明する。そこには楕円形の包囲の輪へ近づく一本の太い矢印が描かれていた。
「我が部隊はここ。包囲の真後ろと言える所だ。ここから攻めて脱出を図る敵を突き崩すのが目的だがあの村の敵部隊が殿となって邪魔しているのだ。これが今の敵情だ理解できたか?」
「はい分かりました」
これでアニーシャはこの性急な状況が理解できた。せっかく包囲した3個師団の敵を逃してはいけない。救援部隊と合流する前に包囲した敵を叩きたい。だから急ぐのだ。
「ならば準備をしておけ。いつでも出撃できるように」
アニーシャは答礼して指揮所を出た。
「次の戦いで全滅ですよ!まったくあの少佐はババアは!」
ペーチャはアニーシャから指揮所での事を聞くと大いに怒った。
「運が良ければ敵は退却しているかもしれないわ」
アニーシャはどこか投げやりに言う。
「だと良いですが」
ペーチャの憂いは現実となる。
すぐにまた出撃命令が出た。今度は空軍の攻撃機が爆撃をし砲兵の射撃の後での前進となった。
「これでやられていたらいいけど…」
弾幕を眺めながらアニーシャは僅かな希望を抱く。
だが結果は同じだった。
爆撃か砲撃のお陰かティーガーは1両しか出てこなかった。しかし5両のT34を相手取るのは1両だけで十分だった。
「私の中隊が・・・」
とうとうアニーシャの戦車中隊は戦車の全てを失う。アニーシャの乗るT34も88ミリ砲の餌食となり燃えるT34からリアナと共に脱出した。
「1両の敵戦車にやられるとは情けない」
アニーシャは指揮所で報告するとボブリコフが罵った。
「責任は私にあります…」
アニーシャはそうとしか返せなかった。
「心配しなくていいわ。懲罰部隊送りにはしないから。その代わり戦車部隊の指揮を続けなさい」
ボブリコフの言葉に安堵もしたが不思議な点があった。
「補充の戦車があるのですか?」
「補充ではない。現地調達した戦車だ」
アニーシャはどういう事かと訝る。
「行って確かめなさい」とボブリコフが言うのでアニーシャはその現地調達の戦車の所へ向かう。
「アメリカの戦車だ」
そこにあったのはアメリカ製のM4シャーマン戦車である。
「どうやら我が軍が使っていたのをドイツ軍が鹵獲し使っていたらしい。放置されていたのを回収したのだ」
いつの間にかブハーリンがアニーシャの傍に来ていた。
ソ連はドイツとの戦争が始まってから米英からの支援を受けていた。その支援で供与された物の中には戦車もありイギリス製のマチルダ歩兵戦車にアメリカ製のM4シャーマン戦車があった。ソ連軍はその米英製兵器を装備して戦っていた。
「回収したのは2両だ。これでまた戦うんだ」
「はい。ありがとうございます!」
ボブリコフの言いなりかと思ったら裏ではしっかりやっているようだ。歩兵にならずに済む事にアニーシャは感謝した。
「この戦車であの重戦車とやるんですか?」
リアナはM4を見るなりぶっきら棒に言う。
「不満なの?」
アニーシャは何がリアナの不満な点なのか気になった。
「この戦車は結構やられ易いんですよ。聞いた話だとT34よりも装甲が薄いらしいです」
アニーシャ達が乗っていたT34/85は最大装甲厚が90ミリあるが目の前にあるM4A2シャーマン戦車は最大装甲圧が62ミリである。
「あの重戦車の前じゃT34でもアメリカ戦車でも同じさ」
ペーチャがあっけらかんと言う。
「けどこっちもIS重戦車にして欲しいです」
リアナはそれでも不満なようだ。
「ねえ隊長。この分からず屋に言ってやって下さいよ」
ペーチャはアニーシャに振るが答えない。
「隊長?」
アニーシャはM4戦車を眺めながら何か考え中のようだった。しかも暗い顔で。
ロリ女軍曹「よーしィ、デブ二等兵さん!
お前の特技をようやく見つけたんだから」
デブ二等兵「サー、イエス・マム!」
投下します。4分割くらいの予定、序章でエロなし、ミリ成分ヌルめです。
「FLASH POINT」
序 「葬列」
199X年 各務野(かがみの)空軍基地
彼女−−日比谷 香(コウ)が無言の帰還をしたのは、16時を過ぎてのことだった。雨が飛行場の駐機場を濃い墨色に染め、輸送機から運び出されるいくつもの棺を濡らす。
本来ならまだ明るいはずの空は、分厚い埃のような積雲に覆われて薄暗かった。灰色の、クジラに似た輸送機のハッチから、白木の棺が4人の兵士達に担がれて地上に帰ってくる。
濃い紺色の制服に、制帽を目深にした兵士達は、降り止まない雨も意に介さず、棺を肩に担ぎ、歩みを揃えて進んでいく。棺を迎える将兵たちもまた、微動だにせずじっと雨に降られている。第6次青函紛争が始まってから、何度も繰り返された光景だった。
4階の窓越しに見る灰色の景色は、品川大尉の何の感情も動かさない。彼女の本当に残したものはとっくに回収されて、棺にはわずかばかりに燃え残った手袋と戦闘服の端切れしか納められていないと知っているからだ。
それに、何かを失って涙を流すような心が残っているなら、こんな場所で生きていける筈もなかった。感じる何かは、きっと貴重な被験者であり高価な電子機材だったものを失った無念さと、体を重ねた女がこの世から失われたことへのわずかな淋しさだった。
15年。
コウは、「手術」を受けてからそのくらいは生きられると予測されていた。そのリミットは、混乱と戦場の崩壊から来る同士討ちによる撃墜で9年も早められたことになる。
先の大戦が終わり、同時に始まった津軽海峡を挟む分断と占領の歴史のなかでは砂礫のように小さな死だった。墜落現場から速やかに送られてきた彼女の「部品の一部」は番号付きのポリ袋に入っていて、手のひらよりも小さかった。
肉体の欲望を埋め合わせ、生理的な淋しさを凌ぐだけの不毛な関係。それでも、その死を目前にすれば、痩せた裸体、品川を迎え入れる体温と波打つ声を思い出す。
世界のどこにも行く場所のない者同士で体を求め合う日々は、唐突に終わった。
弱すぎる暖房に、品川は白衣の襟を立てる。そういえば、と呟いた。コウと出会った日も、冷たい雨が降っていた。
彼女は、格闘術の組み手の最中の事故で神経の一部を損傷し、言葉を話すこともままならない状態で運ばれてきた。
1 「視界」
198X年 9月
神話による最初の人類は男だったが、「始まりのフライト・オペレーター」は女だった。
雑音混じりの音声に応えて、日比谷技術軍曹がコンソールのフットペダルを踏み込んで送信する。
「アロー・エイト・ナイナー、ステイ・プレゼント・ヘディング・ゼロ・シックス・ゼロ。
アンド、アンノン・ターゲット・ライト・オブ・ユー、アバウト・スリー・ポイント・ファイブ・マイルズ、アルチュード・トゥータウザンド、ノースウエスト・バゥンド」
(アロー89、現在の方位060度を維持して下さい。不明な機影が貴機の右側、約3.5マイル、2000フィートで北西へ飛行中)
アロー89のコールサインを持つ海兵隊の戦闘ヘリ、AH−1Wに日比谷技術軍曹―−コウが与えたのは、訓練空域に侵入してきたセスナ型機に対する注意喚起の情報だった。
ほぼ同高度で飛行させていたアロー89と、セスナ型機は針路を交差させつつ接近していた。
「誰かアイツを迎撃しろ。クソッ、これだから民間機は」
コンソールの前、コウの座ったパイプ椅子の隣で、腕を組んで毒づく品川中尉も、画面を見ずレーダー・ターゲットを追うコウも、ここでは日常の風景だった。
目に見えない蝶を追うかのように視線を動かすコウが見ているのは、脳内に投影された機影だ。
貨物コンテナの中に設置されたコンソールは、卓こそひとつだが、その機能は「空飛ぶ指揮所」である早期警戒管制機E−3と全くおなじものだった。
旅客機をベースにレーダーの傘を取り付け、空中を移動しながら戦闘機や航空部隊をコントロールするE−3のオペレーターは、コンソールのブラウン管を頼りに誘導を行う。
しかし、レーダーの情報を人間が画面で認識する限り、ブラウン管内に空域は局限され、しばしば致命的なミスが起きた。
ふたつの超大国に分割統治されたこの国では津軽海峡で国境紛争が繰り返され、軍は新兵器による大きな優越性と限りなく少ない犠牲者を求めていた。
傷病者の増加と比例した人体再生技術の発展が、「広域かつ高精詳な情報を管理できるレーダー・オペレーター」を求める軍と出会ったとき、その要求に対する悪魔の解決策が、萌芽した。
神経に損傷を負った傷痍軍人に、身体の回復を交換条件とした人体の改造手術を行い、「高性能な部品」として生まれ変わらせる。
脳神経に埋め込んだ超小型受信装置と人工神経は、特殊なヘッドセットを介して送られるレーダーからの情報を受信し、脳内で視覚に投影される。
平面のブラウン管に限定されず、立体的かつ広域・精密な情報を、リアルタイムで、まるで見ているかのように処理することで、オペレーター何人分もの機能を発揮する。それが、「傷痍軍人回復補強プログラム」の真の貌だった。
そして、その計画は既に何人もの犠牲者を出し、早々に頓挫しかけていた。
冷たい雨の日、性格の合わない同期との格闘術訓練中、「事故」で脳神経を損傷した一人の兵が、各務野空軍基地の航空医学先進技術実験隊に運び込まれるまでは。
1 「視界」
198X年 9月
神話による最初の人類は男だったが、「始まりのフライト・オペレーター」は女だった。
雑音混じりの音声に応えて、日比谷技術軍曹がコンソールのフットペダルを踏み込んで送信する。
「アロー・エイト・ナイナー、ステイ・プレゼント・ヘディング・ゼロ・シックス・ゼロ。
アンド、アンノン・ターゲット・ライト・オブ・ユー、アバウト・スリー・ポイント・ファイブ・マイルズ、アルチュード・トゥータウザンド、ノースウエスト・バゥンド」
(アロー89、現在の方位060度を維持して下さい。不明な機影が貴機の右側、約3.5マイル、2000フィートで北西へ飛行中)
アロー89のコールサインを持つ海兵隊の戦闘ヘリ、AH−1Wに日比谷技術軍曹―−コウが与えたのは、訓練空域に侵入してきたセスナ型機に対する注意喚起の情報だった。
ほぼ同高度で飛行させていたアロー89と、セスナ型機は針路を交差させつつ接近していた。
「誰かアイツを迎撃しろ。クソッ、これだから民間機は」
コンソールの前、コウの座ったパイプ椅子の隣で、腕を組んで毒づく品川中尉も、画面を見ずレーダー・ターゲットを追うコウも、ここでは日常の風景だった。
目に見えない蝶を追うかのように視線を動かすコウが見ているのは、脳内に投影された機影だ。
貨物コンテナの中に設置されたコンソールは、卓こそひとつだが、その機能は「空飛ぶ指揮所」である早期警戒管制機E−3と全くおなじものだった。
旅客機をベースにレーダーの傘を取り付け、空中を移動しながら戦闘機や航空部隊をコントロールするE−3のオペレーターは、コンソールのブラウン管を頼りに誘導を行う。
しかし、レーダーの情報を人間が画面で認識する限り、ブラウン管内に空域は局限され、しばしば致命的なミスが起きた。
ふたつの超大国に分割統治されたこの国では津軽海峡で国境紛争が繰り返され、軍は新兵器による大きな優越性と限りなく少ない犠牲者を求めていた。
傷病者の増加と比例した人体再生技術の発展が、「広域かつ高精詳な情報を管理できるレーダー・オペレーター」を求める軍と出会ったとき、その要求に対する悪魔の解決策が、萌芽した。
神経に損傷を負った傷痍軍人に、身体の回復を交換条件とした人体の改造手術を行い、「高性能な部品」として生まれ変わらせる。
脳神経に埋め込んだ超小型受信装置と人工神経は、特殊なヘッドセットを介して送られるレーダーからの情報を受信し、脳内で視覚に投影される。
平面のブラウン管に限定されず、立体的かつ広域・精密な情報を、リアルタイムで、まるで見ているかのように処理することで、オペレーター何人分もの機能を発揮する。それが、「傷痍軍人回復補強プログラム」の真の貌だった。
そして、その計画は既に何人もの犠牲者を出し、早々に頓挫しかけていた。
冷たい雨の日、性格の合わない同期との格闘術訓練中、「事故」で脳神経を損傷した一人の兵が、各務野空軍基地の航空医学先進技術実験隊に運び込まれるまでは。
重複しました。スマン
日比谷一等兵は、数日後、手術のリスク、そして術後は体にかかる大きな負担のために、余命はおよそ15年という説明を聞いてなお、失明した視界を取り戻し、四肢の自由を得ることを強く望んだ。
そして、E−3の改修用付属品としてのコウが、「はじまりのフライト・オペレーター」が生まれた。
もっとも、コウ本人はそんな歴史的な事実には無関心で、与えられた任務を砕くことだけが興味の対象になっている。
ボクサーのヘッドギアを薄っぺらくしたようなヘッドセットからこぼれるのは、日本人には珍しいくらいの赤毛。
顎や首筋まで無造作に伸びたショートヘアが黙認されているのは、こめかみや額のキワに残る手術の傷を隠す意味もあってのことだった。
その髪型や、柳のように横長の目、細い首からつながる細面、メタルフレームの眼鏡のせいもあり、病弱げな青年にも見える。
目鼻立ちはそれなりに整い、目元はよく見ると鋭い刃のような美しさも備えてはいたが、その眼差しはいつもじっと伏せられていた。
表情は豊かさに欠け、しばしばひとを拒絶する。空軍の、枯れかけた草色の戦闘服に包まれた痩躯は女性らしい柔らかさに欠け、枯れかけた命を連想させるのだった。
時々、喫煙所で煙草を吸うこともあったが、他人の姿を認めてはいつも早々に消えるのが常だ。
しかし、担当の品川からすれば、それは重要機密を内包した被験者として好ましい性質でもあった。
騒がしくせず、ただじっと余命の15年を、部品として生きてデータを残してくれればそれでいい。
一度目の結婚が半年で破綻した後、周囲が何かと女性をあてがおうとする中、ただ押し黙ってサンプルでいてくれるコウは貴重な存在だった。
「デネブ・ワン・エイト、コンファーム・メインテン・エンジェル・フォー・タウザンド?」
(デネブ18、高度4000フィートを維持ですか?)
複数の機に指示を与えるコウの眼鏡に、レーダー室コンテナの蛍光灯が反射する。
彼女の視界には、黒い空間の中を移動するいくつもの輝点と、それに付加された「付箋」−−コールサインやコード、高度を表示したデータブロックが見えている筈だ。高高度で訓練中の、本物のE−3からのレーダー情報を受信し、指示を与えている。
今はまだ地上での順応訓練に明け暮れているが、来年の末からは実際に機上に乗り組むことになっていた。
「アロー・エイト・ナイナー、パッシング・ポイント・デルタ・ゼロ・トゥー」
(アロー89、ポイントD−02を通過)
コウの額にはうっすら汗が浮かんでいた。脳とレーダーを直接接続している間、被験者は絶えず体の芯が凍り付いたような不快感を覚えるという。
今日の実験を開始してから1時間30分が過ぎていた。「接続」の歴代被験者の最長はコウの3時間50分で、最短は1分25秒で死亡している。
ブラウン管の情報とコウの交信を交互にチェックする軍用電子機器メーカーの技術者は、しきりに何かをノートにメモしていた。
彼らの専門は航空電子機器の開発で、品川の担当は主にコウの健康上の管理だ。
この計画の立ち上げ時のメンバーである品川は、脳に手を加える手術から関わり、それこそ痩せっぽちの貧相な全裸も見、脳の色、頭蓋骨の形、陰毛の生え方だって知っている。
四肢の触診を行うとき、特に足の裏、性的快感を示す脳波が観測されることも。
眼鏡の奥で、その時だけはわずかに瞳が細められることも、座り直したふうに身じろぐことも。
日比谷 香という人物は、品川にとって知らない部分はないサンプルだった。
全てを知っているのだから、これ以上何も知りたいことはない。そう思いながら、品川はコウの横顔を見た。
安物の、赤銅色のメタルフレームが光る。元々視力0・8の近視、焦点距離は25センチ。
日常生活には眼鏡がなくても支障がないレベルだ。そもそも、レーダー情報を視ている間、肉眼の視覚はシャットアウトされている。
それなのに、なぜ、コウは眼鏡を外さないのだろう。
続き投下します。
2「遮断」
兵器なのか人間なのか分からないような体になった今でも、自分の人生にはこの選択肢以外存在しなかったと理解できる。任務をこなしてさえいれば、生活基盤とやるべきことを全て与えてもらえるのだから。
事故の時は除隊を覚悟して途方に暮れたが、結果的には生きるのに支障のない体さえ軍隊は与えてくれた。15年という期限付きではあるものの、冷暖房付きの個室での生活、3食の温かい食事、優先的に与えられる休暇が保証されている。
北海道からの亡命者であるがゆえに生活の基盤がない母は、生活のあらゆることを本土の人間であるコウの血縁上の父に頼っていた。
その父親が、何かと後ろ指をさされる亡命者との生活に嫌気がさして消えてからは、あらゆることが困窮した。公的支援で細々と食いつなぎ、生活費を何度も数えては夕食を我慢する生活に比べれば、今の軍隊での生活は天国だ。
衣食住すべてが支給されるし、仕送りで充分に母と、年のはなれた弟を養うことができた。
熱めのシャワーで思う存分石けんの泡を流しながら、コウは目を閉じる。
手に触れる27歳の肉体は骨張っていて、いびつな石膏像に見える。思えば、コウがもたらす給金と、実験の成果は少なからぬ人間を満足させたが、コウ本人を求める人間はついぞいなかった。
母が、裕福で慈悲深い男性に後妻として迎えられてからは徐々に連絡も途切れていったし、ただ痛いだけのセックスを与えた異性という存在は、コウを2、3回でうんざりさせるのに充分だった。
肉体的な寂しさは、自分の指で処理してしまえば事足りた。
湯気に煙る鏡を覗き込むと、薄いそばかすが散らばった細面が無表情にこちらを見つめ返している。濡れ髪をかき上げると、いくつもの手術跡が生え際を走っている。
コウ本人がどれだけ透明な存在であっても、兵器の部品である限り、存在意義が与えられる。
シャワーを止め、籠に置いたタオルを手に取る。髪の水を切り、平坦な胸を拭き、屈んでふくらはぎを拭こうとしたところで、ふと手が止まった。
肌の表面を微弱な電流が這うような感覚がフラッシュバックする。まさかこんな場所で、セックスの快感より先に、足の裏が自分の性感帯だと知ることになるとは。
それをメディカルスタッフ前で、脳波まで取られて、それでも表情を維持することに執着している。くだらないが、仮面をかぶることに意思表示の意味があった。
この世の最果てのような、狭苦しいシャワールームに、湯気が溶けて消える。籠の底、着替えの下に、眼鏡があることを確認して安堵した。
磨りガラスのような視界が、レンズの覆域内だけはどこまでもはっきりとクリアになる。視えることに安心した。視えなければ戦えない。
「やるべきこと」ができなくなった瞬間、コウの存在は誰にも視えなくなる。その黒く透明で圧倒的な事実に、ふと寒気がした。
廊下に出ると、既に電気は常夜灯に切り替わっている。そろそろシャツとショートパンツでは肌寒い。岐阜の郊外に位置する各務野基地は、昼は暑く夜は冷える。
無人の研究棟がその寒々しさを際立てた。通常は兵舎で共同生活を送る規則なのだが、コウだけは隔離されてこの研究棟に寝起きしている。階段を上がり、4階の自販機に寄ろうとしたとき、ふとひとつの部屋から漏れる電気に気がついた。
徹夜の残業だって珍しくないし、疲労困憊したスタッフが電気を消し忘れることだって多々ある。
廊下にスリッパの音がぺたぺたと響いた。突き当たりの窓からは、基地の外の、田園と住宅街のうら寂しい光景が見える。自販機で買った水が、取り出し口に落ちる音がいやに大きく響いた。
買った水を拾い上げたとき、コウは後ろで動く影に気がついた。明かりのついている研究室のドアのすりガラスに、逆光になった黒い影が伸びている。
姿形の分からない黒い影に、一瞬非科学的な恐怖心を抱いた。かがんだまま硬直して凝視するコウの瞳孔が開く。すっと引き戸が開いた。
室内の眩しすぎる光に紛れた人影は、表情を読み取れない。
「品川中尉」
残業ですか、と言おうとして口をつぐむ。彼はまだ白衣と、その下に草色の戦闘服を着ていた。
軽く額にかかるくらいの短髪は、いつもデータを読む時に前髪を掴むせいで乱れている。銀縁の眼鏡の奥にある瞳は確かにこちらを認めているが、瞬きさえしない。ようやく明るさに目が慣れても、静止した表情のままの品川の意図が読み取れなかった。
「・・・日比谷」
奥二重の目がようやく動く。いつもの、部品を検分するような無機質な眼差し。2隻の潜水艦が互いの出方を探るような緊張感がみなぎっていた。
品川が財布から小銭を取り出す。何のことはなく、ただ缶コーヒーを買いたいらしい。
「おつかれさまでした。失礼します」
早々に立ち上がり、去ろうとするコウを品川が呼び止める。釣り銭、というぶっきらぼうな一言で、コウは自分が動揺していたことに気がついた。
それをきっかけに緊張のピークが過ぎ、無意識に呼吸を吐き出した。釣り銭をとろうと屈んだそのとき、突然視界がかすんだ。
「え・・・」
眼鏡がすり抜けたのだと思った。慌てて、床に膝をつく。冷たいリノリウムの感触が膝を押し返す。
動転しながらも、眼鏡を潰さないようにそっと床に手を這わせる。かすんだ視界が急にどこまでも暗く思えた。
「ない、眼鏡、眼鏡が」
心臓の刻む鼓動が早さを増すのが分かる。落ちた音もしなかった。何も見えないほど悪くはない視力のはずなのに、床には何もない。
消えてしまったかのようだった。減圧訓練のときの、眠気にも似た思考能力の減衰が訪れる。それは本能的な恐怖と混乱を誘発した。
抑えなければいけない、このままではもっと深く黒いパニックに陥ると悟った。口元を手で覆う。意識的にゆっくり呼吸をして、理性を取り戻そうとした。
重武装で全力疾走したあとのように、視界が揺れる。その端に、コンバット・ブーツのつま先が映った。その主を見上げれば、闇と霞でぼやけた貌がこちらを見下ろしている。
「恐怖」
コウの身に起こっていることを分析して呟く声。その右手には、消えた眼鏡がつままれていた。
品川は、震えながら廊下に座り込むコウを観察していた。
「返してください」
絞り出した声は語尾が震えた。血管が収縮し、体温が下がる。
筋肉が硬直し、知らぬ間に握った手は爪が白んでいた。ここは基地の中だ。地上だ。安全なエリアだ。何度もそう頭のなかで繰り返す。
「機能不全を起こす。不完全な部品だ」
「返せ」
苛立と懇願が言葉を波打たせる。かがみ込んだ品川は、黙ってコウを覗き込む。
酸素を求めるようにして眼鏡へ伸ばした手から、眼鏡が遠ざかった。キチガイ軍医め殺してやる、という罵倒が無意識に漏れる。伸ばした手をすり抜けた品川の手のひらが、遺体の目を閉じるようにコウの視界を遮断した。
「1982年、第5次青函紛争、函館侵攻作戦」
「何を」
何故か払いのけることもできずに、コウは固まる。呼吸が苦しい。
「爆煙、月のない夜、電気のない街、黒い海」
「やめてください」
「上陸部隊にパニックが起き、部隊は崩壊しながら機関銃の餌食になった」
「やめてください!」
叫びとともに思い切り掴んだ品川の腕を、全身の力でようやく引きはがす。光を求めて見開いた目から涙が溢れていたことに気づいた。
永遠に感じるような暗闇から戻ったことに、神経が一瞬弛緩する。掴む力が抜けた一瞬を計ったように、今度は腕がそれ以上曲がらない方向まで捻りあげられた。
立ち上がった品川に引きずられるような形になったコウは、再び叫びそうになる。
「見えないことは恐怖か」
「やめて」
研究室にコウを引きずり込んだ品川は、そのまま机に上半身を押し付けると、包帯を使って恐るべき手際の良さで両手首を縛り上げた。
机の上に散らばっていた書類をゼロ距離で見ていたコウは、それが自らの経歴や精神分析を記録した書類であることに気づいていた。
その内容を読む間もなく、今度は包帯が視界を遮断する。
「いやだ!」
「そうだな、あの夜は怖かった」
品川の回顧に、ひゅうひゅうと呼吸が音を立てた。パチンという音がして、包帯越しに見えていた光さえもが失せる。
やけにはっきりと感じられる空気の流れと、品川の気配。尻を突き出すようなあられもない姿で拘束された自分の姿に気づいて、心拍数が加速していく。
猛獣のいる森の中に、独りでいるような孤独感。感じる唯一の体温は、皮肉にもコウを押さえつける骨張った手だけだった。
「怖い、怖いよ」
「それなら、もっと闇の奥に逃げてしまえばいい」
ゼロ視界の中で、苦痛と束縛、遠くから聞こえる声だけがコウ自身の存在を証明する。その痛みにすがり、平衡感覚を取り戻そうとした。
大量に分泌されたアドレナリンがコウを興奮させ、神経を鋭敏にしていく。心臓が血液を送り出すたびに、動脈が軋んだ。
大事な部品を撫でるように触る品川の手が、背筋の上を滑る。
「んっ」
思わず漏れた声に、コウは愕然とした。
鋭い電流が流れたように、足が引き攣ったのを感じた。それはまごうことなき性感だった。
冷たい机に押し付けられた胸が、痛いほど張っている。腰骨のあたりが帯電したようになり、秘裂とそこから続く肉の管の存在を感じた。
「戦闘で分泌されたアドレナリンは、その後暴力や性欲の亢進を引き起こす。正常な反応だ」
抱いて、セックスしてほしい。ただ痛いだけだと見切りをつけたそれを強く意識した。無意識に腰がくねる。
んっ、ふっ、と声の混じる呼吸をしながら、コウは頬が熱くなるのを感じていた。体を撫でる手を意識したとたん、何も見えない闇が、その甘美な感覚を飛躍的に尖らせていく。
替えたばかりの下着が陰唇に張り付くほどぬるぬるに濡れていた。今すぐにでも、このまま奥まで突いてほしい。
抗いがたい本能の声が、コウの唇を濡らす。
「お願いです、挿れてください」
腰を突き出して、媚びるように脚を開いたコウの膝は震えていた。
下着から染み出した愛液が、太ももにゆっくりと垂れていく。コウの恐怖はそのまま性欲へと変化していた。
しかし、欲情した体に最初に侵入したのは、男根ではなく太い指だった。ショートパンツの脇から侵入した指が、粘液にまみれながら襞と肉の芽とを弄ぶ。
コリコリとした芽を爪先でいじられ、その刺すような鋭い快感にコウは口の端から唾液を垂らした。2本の指が、膣の入り口にあてがわれる。
肉の壁を割って体の中に入ってくるソレを、粘膜が締めつけた。ゆっくりと動く指がこすれて、もどかしさがコウを責め立てる。
「あっあっ」
体の芯が性器を中心に溶けて落ちていくような感覚。それでも、高まりにはまだ足りない。緊縛された凌辱の姿勢が、コウの劣情をいっそう強くする。
指がじゅぶ、と音を立てて引き抜かれ、品川がズボンを下ろした気配がした。やがて、指とは違う弾力のあるものが開口部に押し当てられる。
「う・・・んっ」
奥底をこじ開けながら、待ちわびた男の質量が入ってきた。それが肉の道をこするだけで、信じられないほどに全身が歓喜する。
後ろから組み伏せてくる体重が、コウの肉体の存在を際立たせる。束縛され、視界を閉ざされることで、コウは初めて肩書きや立場から解放され、メスへの堕落が許された。
ぱん、ぱん、と、肉体が肉体にぶつかる音が響く。結合部から出し入れのたびに溢れるぬるい粘液が幾度も足元へ伝った。
テンポを押さえてゆっくりと抜かれた男根に襞が絡まり、別の快楽が開く。
「ふ、んっ、気持ちイイ、セックスがスゴイのぉ」
咽び泣きのような喘ぎ声に、品川が挿入のリズムで言葉を途切れさせながら応える。
「足の裏、触るだけで、欲情していた、もんな」
「はあ、あんっ、言わないでぇ・・・」
品川が抜きながら、少し体の向きを変えた。今度は腹部を外側に向かってこするような軌道で、コウを犯してくる。
強まった刺激に、粘膜が品川を締め上げるのが分かった。刺激は、脊椎を伝って脳までも白くさせる。顎を突き上げたコウは、真後ろで自分を串刺しにするケモノの吐息を聞いた。
秘部の入り口からの鋭い刺激と、突かれている中からの溶けるような快感が互いに引火して体温を上げていく。
今の自分はただ犯されるためだけの女で、固くなった劣情を奥までねじ込まれている。品川の肉体がひときわ強くコウにのしかかった。そうだ、ここで、闇の奥まで逃げてしまえばいい。
「お願いこのままイカせて・・・」
甘い懇願が漏れた。品川の唇がコウの首筋に吸い付き、指が固くなった乳首を撫で、ピストンが鐘をつくように奥まで突き当てられた。
そこから先は、闇が白くなったように思えた。気がつけば自分で腰を動かし、膣口で男根をしごいていた。だらしなく半開きになった唇からは舌が出て、机の上に唾液が垂れた。
追い込んでくる品川の男根は、その時を間近に控えて一瞬固く太くなる。
「あんっ、あんっ、あんっ、イクッ、いくぅ」
「出すぞ、コウっ」
絶頂は加速の先に唐突に訪れた。突然、感覚が何もかも電流に打たれたかのように引き攣った。
最奥で品川が果て、精液が放たれた。余韻が脳髄をしびれさせる。しばらくつながったまま、ふたりは重なり合っていた。
コウが脱力して膝をつくと、品川が自身を引き抜いた。戒めが解かれる。部屋は電気が消えて、月明かりだけがほんのりと部屋の中を照らしていた。
まだ足りない。コウは、床に座り込んだまま、目の前の品川の腰にすがりついた。しまおうとしていた男根に唇を寄せた。どろどろとした精液と愛液にまじったそれを、口に含む。
卑猥な味の肉塊を舌で包み込みながら、コウはまた下腹部が熱を帯びて収縮するのを感じていた。
あと1回くらいでおわります
おお!久々の新作!ありがたい!
SFで眼鏡っ娘(?)とはまた良いねえ
前にあった軍人スレに職人さんいっぱいいたのになんであのスレ落ちたんだろ
no solution の人の作品、すげー面白かった。また来てくれたら嬉しいな
>>50の続き投下します。
2 「空間識失調」
あの無視界の闇の中、手探りで触れるものは弾け飛んだ内臓や手足の一部、変型した小銃、砲撃により飛び出した眼球、顎の骨だけで、そこには生者はいなかった。
闇の彼方で聞こえるうめき声はこれから死ぬ人間のもので、浜の砂には夥しい量の生命が吸い込まれて消えていた。数分前まで生きていた人間をただの有機物に叩き落とす、巨大な暴力の嵐。
眼鏡が割れていることにも気がつかずに、品川は浮遊感を伴った空間識失調に陥っていた。いつの間にか波間を漂流していたのを発見され、内地に帰還した後も、その感覚は消えなかった。
生者は品川にとって、まだ温度を失っていないだけの死体だった。街中を歩く人々が、同僚が、そして妻が、大きな破壊を免れただけの死体として品川の目に映った。
じきに妻とは離婚し、友人との付き合いも絶えた。そうして生と死の境を失った品川でなければ、繰り返される被験者たちの死に耐えられなかった。
もはや人間ではないコウが、ほんの少し特別だっただけだ。構築されたシステムの作動を観測できる、確かな生を持った存在。予測できる余命。
分析され数値化され尽くした肉体と精神。たったひとつ、どうしてコウが眼鏡に執着するのか、というよりそれを失ってコウはどうするのか、知りたかった。
品川の下半身にすがりついて、唇と舌で再び屹立しはじめたものを愛撫するコウの赤毛を握りつぶす。今まで散々見たコウの裸身が月明かりの中に生々しく浮かび上がっていた。
足首には、汚れた下着だけが絡まっている。
唾液にまみれた男根を気道の入り口まで突き当てると、裏筋に舌が吸い付いた。気道を閉塞された耳が赤く血色に染まる。
都合、品川の腰に抱きつくような格好になったコウの指に力が入ったのが分かった。
月明かりに晒された床に、股から垂れた白濁と愛液の混合液が点々と落ちていた。口蓋の粘膜をなぞりながら男根を引き抜くと、酸素を求めてコウが大きく息を吸う。
粘りつく気持ちよさの温度が失っていたはずの品川の劣情を蘇らせる。舌と唇が、男根に絡みながら張り付いた。真空が口腔を性器に変える。 「ふ・・・うぅ・・・」
片手で品川の根元を持ちながら、コウはだらしなく開いた股の付け根をまさぐっていた。唾液の立てるぐじゅぐじゅとした音と、コウの指が粘膜をかき回す音が混じる。
指の抽送に合わせて悶えるように前後する腰の奥から、新しい滴りが垂れて陰毛を汚す。昔の妻いわく、「奉仕だけで実際気持ちよくない行為」だった口淫が、コウの発情を上昇させていく。
「コレが気持ちいいのか?」
「ふぁ・・・息が止まって、死にそうなの、あんっ、めちゃくちゃにされて、すごくいい・・・あーっ」
背を弓なりにして、品川の一物をくわえこみながら自慰にふけるコウが小さな絶頂を迎えて細い叫びを漏らす。
近視の目から溢れる涙が、頬を伝って溢れた唾液と混じった。再び頭を掴んで、男根を奥まで突き立てる。暴力的に「使われて」いるコウは、苦しいような、そして艶かしい高い声を漏らす。
波打つ身体はずっと以前から爛熟していて、しかし快楽への堕ち方を知らなかったのだ。
中出しから回復した男根を口の中から引き抜くと、名残惜しそうに唇が狭められる。
焦点の合わない目が品川を見上げている。待ち望むような瞳、本能にかられて、品川はその身体を押し倒した。
今度は向き合う姿勢で、膝の間を割って身体を入れた品川の屹立が、襞で包まれた肉の溝に狙いを定める。そばかすが点在する、仰向けの裸身の腰を持ち上げて、頂点を粘液で溢れた秘所に押し当てた。
先端で焦らすようにこすると、愛液が糸のように垂れ、甘い声と共に腰が跳ねる。ズボンを下ろしただけで、白衣さえも脱いでいない品川の白い影に覆われて、コウはまた凌辱されようとしていた。
腹が、早まる呼吸に合わせて上下している。誘うような手が、品川の首筋を撫でる。切れ長の瞳に、月光と品川の目とが映えていた。肉の穴に、男根を刺す。口腔よりさらに柔らかい道が品川を締め付けて、奥へと導いていく。
「あ、ああっ、はあぁっ!」
コウが顎を突き上げると、ショートカットの赤い髪が散らばって乱れる。彼女が、研究室の冷たい床の上で辱められている光景はひどく非現実的だった。
「ふっ、すげえ、淫乱女」
「ぅ、あっ」
抱きながら貶めると、目の前の顔がまた上気する。上半身を起こし、膝を持ち上げて屈ませる。
律動のたび、緊張と弛緩を繰り返す足指に手を伸ばした。
冷たい足の裏は存外に柔らかく、さぐる指先が皮膚に沈んでいく。足の裏、コウの性感帯をくすぐると、挿入した中が一層品川を締め上げた。
親指の付け根のふくらみや、土踏まずを弄ぶたびに、電気に撃たれたようにコウが引き攣る。
「や、そこダメぇ、あっ」
拒否を無視して、最奥にものをとどめたまま、指先で足裏に触れた。女を征服する満足感が、品川の中にこみ上げる。
指を齧って強すぎる快楽に耐える横顔、体液で汚れた結合部分、胸板で固くなっている蕾が、セックスに溺れるコウの身体を表現する。ピストンを止めると、コウは大きく息を吐いて腰をくねらせた。
男根をしごく肉の締め上げに、下半身がまた射精感を帯び始める。
「あぁ・・・我慢できないです、奥に下さい、して・・・」
うわずった声だった。コウを抱いて、床に押しつぶしながら、ゆっくりと強く自身を突き当てていく。顔を寄せると、近眼のコウと目が合った。
そのまま、行為の一部として唇を重ねる。コウの睫毛と、吐く息が頬に触れた。細い腕が品川の背中にしがみつく。焦らしながら送り込んだ男根で、胎内を探った。
何度も唇を重ね、離した。淫猥なにおいの淀む研究室に、洗いたての髪の香りが揺れる。
「品川中尉ぃ・・・あぁ、すごい、熱い、またナマでイっちゃう・・・」
「コレがお前の本性か、コウ」
獣のような交合に、肉体と肉体が境目を失う。凍っていた命に引火した恐怖と本能が、夜を燃やして落としていく。
舌を絡ませ、指を互いに折り重ねた。床を濡らすほど愛液を滴らせる花弁を、壊すような速度で突き刺す。腰を振った品川と一緒に、コウの白い脚が揺れる。
急速にこみ上げていく精液が、屹立を固く太くする。
「あん、イク!イクの!ふとい、やぁっ・・・!」
「コウ、はぁっ、コウ!」
息と血潮の音だけが、耳元で強く響く。生存本能が、コウに吐き出せと頭の奥で命じた。
最後の瞬間が訪れる。強い解放感が品川の脳髄をしびれさせ、腰を麻痺させる。キツい肉の壁に搾り取られて、何度も断続的に出した。
二度汚した膣内を、完全に出し切るまで犯し抜く。出して果てた後、口の端から涎をたらしたコウが目をあけたまま失神しているのを、品川はどこか遠い意識で見ていた。
*
羽織った白衣の裾から伸びる細いふくらはぎと、そこにつながる裸足。品川の白衣を全裸に羽織ったコウが、安物の眼鏡を手に取って掛けなおす。
汚れた内腿を拭き取っただけの裸身には、情交の痕跡が月明かりにも生々しく残っていた。いつもの、表情の変化に乏しいコウの顔。手櫛で整えた前髪に、ちらりと傷跡が覗く。
「むなしいね」
コウの呟きに、品川は答えなかった。所詮は互いに欲情を解消するための、ひとときの夢。
恋や愛はそこに存在せず、壊れてしまったもの同士が自分を救済するための行為だと分かっていた。それでも、今だけは、コウは世界で一番精密で、最も美しい兵器だった。
身体を寄せたコウの、細い赤毛に指を絡ませる。そしてふたりは、親愛の長いキスをした。
無視界の残酷な世界で、それでも視ることを選んだふたりの眼鏡がぶつかってカチャカチャと音を立てた。
*
エピローグ「失跡」
コウが消えたあとの研究室は、まるで最初からそんな存在など無かったかのように整然としていた。
デスクにあった数少ない私物は既に整理されて、引き取り手もなく処分されている。雨が事務室の窓ガラスを洗い流すように降り続いていた。
世界からコウが消えた。それは、世界にとってコップが割れるのと同等程度の意味しか持っていなかった。
デスクの上には、白いバラの一輪挿しだけがぽつんと置かれている。蛍光灯の下のそれは、荒廃した色あいだった。
なんともなしに、品川はデスクの引き出しを開ける。グレーに塗装された引き出しの中で、引っかかった何かのカタッという音がした。
奥に手を入れると、細長い針金のようなものに触れる。それをつまんで引っ張りだした瞬間、品川は息が詰まるのを感じた。
何にも揺らがなかった感情に、怒りのようなものがこみ上げる。
赤銅色のメタルフレームの眼鏡を手に、品川は黙って立ち尽くしていた。
完
スレお借りました。失礼しました
>>68 乙でした!
需要あるか判りませんが、なんちゃってマフィアものいきます。
『エルザ・フォルギエーリの葬送』
レンツォ・ベルターリはイタリア人にしては寡黙な男である。
女と見れば口説きに掛かる軽薄なところもなく、むしろ過去の恋愛経験から女を苦手とするきらいがあっ
た。同僚で後輩のシルヴィオなどにはそれでよく揶揄されている。「イタリア男にあるまじき奴だ」。
レンツォの性格は彼の容貌にも素直に現れている。厳つい顎、薄い眉と眉間に寄った深い皺、切れ長の三
白眼はいつも鋭く光り、唇はやや厚い。鼻筋は通っているが、決して美男子ではなかった。北方イタリア人
にしてもやたら高い身長や骨ばった長い手足は、誰彼構わず威圧感を植え付ける。
しかし勤勉で、実直な三十九歳の彼はナポリ近郊のこの街、アントネッリを取り仕切るマフィアの、すぐ
にでもボスに目通り願えるほどの位置にいる幹部でもあった。
バッソ一家――と言えば近隣の住民は震え上がる。それは懐に忍ばせた飛び道具よりもずっと確実だった
。一家の若きボス、ドン・バッティスタは恐怖の象徴。だが何も無闇に無法を行うわけではない。
恭順者には庇護を、裏切り者には死を。それがマフィアの掟である。
そのドン・バッティスタの郊外にある邸(やしき)の一つに、一人の女が保護を願い出たのは秋も終わり
に差し掛かる頃だった。
他のマフィアのご多分に漏れずバッソ・ファミリーは、街の地下政府的役割を担っている。女が警察に駆
け込まずバッソ一家を訪ねたのは、それはやはり女が訳ありであったからだった。女は言った。
「ドン・バッティスタに御目文字願いたい」と。
女はエルザと名乗った。
「ドン・バッティスタはお前など知らないと言っている」
構成員の男が、椅子に腰掛けバッソの男たちに両脇を固められたエルザに冷たく言い放った。
「彼が覚えていなくても、わたしはドン・バッティスタを知っています。お会いできれば分かるはずです。
お願いします」
女は悲痛なほどの懇願を男に向ける。
レンツォがバッティスタの邸の居間に足を踏み入れたのはそのときだった。
「どうした」
低い声で構成員に問うと、男はレンツォに事情を話した。如何に女がボスの知り合いだと主張しても、お
いそれと本人に会わせるわけにはいかない。女――エルザが敵対勢力の鉄砲玉ではないという根拠はどこに
もないのだ。
「おい女」
ぶっきらぼうにエルザを見下ろして、レンツォはぎくりとした。「ボスは貴様になどお会いにならん」―
―そう言おうとしていた筈だったのに。
アーモンド形の大きな黒い瞳がレンツォを見返していた。長い睫毛、白皙の肌、艶やかな長い黒髪は緩く
一つに束ねて横に流してある。一目でアジア系の混血だと分かった。レンツォが言葉を続けられなかったの
は、彼が確かに女に見覚えがあったからだ。女、エルザもそれを確信したようだった。形の良い、肌の色に
比べて鮮やか過ぎる唇が開いた。
「お願いします」
レンツォは、その唇にしばし見入って、「分かった」とだけ言った。 改行失敗失礼。
バッソ一家のボス、ドン・バッティスタは横暴な男だ。気に入らない部下の失態には己が拳で制裁を加えることも珍しくない。気分屋で自己中心的な、しかし鎬(しのぎ)にはそれなりに真面目な男でもある。しかも、尊大な態度とは裏腹に、部下には慕われていた。
そのバッティスタが、私邸の一室でエルザを見たとき一瞬目を見開いた。エルザの言う通り、バッティスタは彼女に会ったことがある。見覚えがあるはずだ――。彼は得心した。
随分と昔のことだが、それはどこかのファミリーとの会食の場で、相手の次期ボスだとかいう男が飾り物のように連れていた童女だ。洗練された、幼いながら貴婦人を思わせる立ち居振る舞いの少女は、微笑みながら男の養女だと名乗った。
可憐な少女の面影が、今もその顔立ちに残っている。
「……エルザ・フォルギエーリ、か?」
バッティスタが尋ねた。その場にいたレンツォと、護衛筆頭のシルヴィオは顔を見合わせる。暴君バッティスタがそんな昔に会った人物を、それもさほど重要でない他人を記憶していたことに驚いたのだった。エルザと呼ばれた女は、しかし小さく首を横に振った。
「わたしはキリマ、です。エルザは、……死にました」
冷ややかな声は感情を押し殺していたゆえか。言葉の最後が揺れたのは聞き手の気のせいではない。常から不機嫌そうなバッティスタの眉がぴくりと持ち上がった。怪訝そうな顔を向けるバッティスタに、キリマは怖じながらも言葉を紡ぎ始める。
「“エルザ”が死んだというのには少し語弊があります」
キリマ――エルザの目は暗く、表情が読めない。
「わたしも“エルザ”なのです」
正面で聞いていたバッティスタが眉根を寄せた。
「“エルザ”は二人の人間から構成されていました……エルザ本人と、その身代わりのわたしです。
子供の頃から容姿が似ていて、本物のエルザに何かあった時のために、わたしはエルザではない“エルザ”として育てられました。
エルザと衣服も勉学も振舞いもすべて同様にし、エルザに起こったことはわたしの記憶にもなり、わたしの経験はエルザのものにもなった……」
教科書を読むようにすらすらと語る。
内容は他の者にはにわかに信じがたい話だったが、実際に“エルザ”と面識のあったバッティスタはどこか理解できているようだった。
目の前の女と昔会ったエルザとされる娘の相違点でも見つけたのだろうか、とエルザの後ろから彼の様子を見るレンツォは思う。
その視線を鬱陶しがるように一度ゆっくり瞬きをし、バッティスタはエルザに問う。
「俺が会った女はてめぇか?」
質問にキリマは明らかに狼狽し、数多くの選択肢から正答を選ぶように下を向いて目を泳がせる。
「推奨される『正解』じゃねえ、事実を答えろ」
「…………エルザです」
エルザ、いやキリマは俯いたまま、低く述べた。あの日バッティスタに目通りかなった娘はキリマではなくエルザであると。それが真実かどうかは、キリマにしか判らない。キリマは、或いはそれが自分とエルザどちらの記憶なのか、定かではないのかもしれなかった。
「どうしてえんだ」
「えっ、」
「そのエルザ・フォルギエーリの替え玉だったっつー告白を聞かせてどうしてえんだっつってんだ」
同情でもされたいのか、と言わんばかりだった。バッティスタは興味のない人間に対してはとことん情のない男だ。
レンツォはバッティスタを心底から敬愛しているが、キリマに対しては少し哀れに思った。つまりこれには生きてきた時間ずっと、自己を与えられる機会がなかったのではないかと推察できたから。
レンツォがバッティスタに対して感じる忠誠とそれに付随する喜びや誇りを、あるいはそれに似た何かを、十八歳のキリマは一度でも手にしたことがあるのだろうか。尊大なバッソ・ファミリーのドンを前に、キリマはうつろに見えた。
「身を守りてえなら警察にでも言やいい」
「わたし――」
席を立とうとせんばかりのバッティスタに、キリマは言葉で縋った。
「わたし、逃げてきたんです。エルザの父親から」
エルザ・フォルギエーリの父親とは、つまりある街を仕切るファミリーのドン、リカルド・フォルギエーリだった。
「あの人は……」
キリマは一度言葉を区切った。
「……異常者なのです。これまでは浮浪児を攫っては『趣味』の犠牲にしてきました。ファミリーの裏切り者は勿論、彼自身の手によって拷問され、殺されました。それでも、当然ながら身内に手を出すことはありませんでした。けど」
キリマの視線が、バッティスタの座るソファの猫足に注がれていた。レンツォはキリマの斜め後ろから、その睫毛が瞬くのを見た。
「けど、彼は『知って』しまったのです」
キリマが、自分の身体を抱いた。
「大切なものを、自分で壊す悦びを、か?」
バッティスタの言葉に、キリマは泣きそうになりながら頷いた。
「あの人はエルザを、……エルザを」
キリマの目元が引き攣った。両手で顔を覆い、それ以上話そうとはしなかった。
レンツォにも、一体フォルギエーリ・ファミリーの中枢で何があったのか、何とはなしに察しが付いた。養子とはいえ自分の娘を、リカルド・フォルギエーリは無残にも蹂躙したのだ。
そして、エルザの経験はキリマのものにもなる。キリマは、エルザがされたのと同じことを。
「リカルド・フォルギエーリはエルザの父親ですが、同時に敵です。わたしはあの人が嫌い。エルザ、は、……『神は秩序を欲する』と。あいつはエルザの大切なものを全部壊して、最後は彼女……も、」
その左手が右手をきつく握っていた。
バッティスタは嫌悪感もあらわにフンと鼻を鳴らし、レンツォに言った。
「しばらく置いてやれ」
「……よろしいので?」
「俺がいいと言っている」
「……御意に、ボス」
キリマを客間に案内しその場を去ろうとすると、彼女はレンツォに対してにこりと微笑んだ。
「どうもありがとう」
その仕種に、なるほど、と彼は瞠目せざるを得なかった。“エルザ”として厳しく訓練されていただろうその物腰は、役割の束縛から解放されても尚優雅と言うに相応しかったので。
「……貴様、本名を何という」
澄んだ瞳でつっけんどんなレンツォを見ながら、キリマは赤い唇から答えを発した。
「千代子。桐間、千代子。あなたは?」
「レンツォ・ラザリオ・ベルターリ。チヨコ、か。何故苗字を名乗る?」
「最後がO(オー)で終わるから」
男性名のようで、とキリマが言った。
「出身は」
「日本です」
「何故イタリアに?」
そこで初めて、キリマの表情から笑みが消えた。
「実父が、フォルギエーリ・ファミリーの構成員だったので。父はわたしが幼い頃、抗争に巻き込まれて他界しました」
なるほどそれでリカルドの庇護下に入ったのか。或いは、エルザによく似ていた彼女はもとよりその為にイタリアに連れて来られたのかもしれなかった。
「ベルターリさん。わたしは」
「レンツォでいい。何だ」
「……いえ。何でもありません。おやすみなさい」
「……? ああ」
キリマが客間に消えてから、レンツォはようやく、自分が久しぶりに女に興味を持って話し込んだことに気付いた。廊下の向こう側からシルヴィオがにやにやと笑いながらやって来た。
「見てたぜレンツォ。珍しく口説いてたのか?」
「莫迦を言え。基本情報を聞き出していただけだ」
「つまらん。俺が食っちまおうかな」
「やめておけ、シルヴィオ。仮にも余所のファミリーの女だ。後になって問題が起こったらどう責任を取る。ボスの怒りを買うぐらいでは済まんぞ」
へいへい、とシルヴィオは不真面目そうに去っていった。
ぱしゅ。秋空の下、消音器を通した小さな破裂音がして、弾丸が前方へと飛び出した。それは高速で回転しながら、人の上半身型に整えられた木製の板に命中する。
キリマは殺しの術を心得ていた。
迷いなく他者の命を奪う方法を。
本人は語らずにいたが、それはかつてエルザとともに誰かに仕込まれた手管であったのだろう。
深夜、レンツォはバッティスタに報告書を持って訪ねた。時間が遅くなったことにバッティスタは怒り、癖の悪い足でレンツォの脛を蹴りつけた。
痛む向こう脛を引きずりながら客間の前を通ると、客間からはごく小さな話し声がした。元々重厚な造りの邸宅である。漏れ聞こえるということは、それなりに大きな声で喋っているのだ、と思い、レンツォは何気なしに耳を澄ませた。
いや、これは話し声ではない。
(泣いている……?)
居ても立ってもいられず、レンツォは思わずドアを開けた。
「キリマ?」
「ひっ!」
客間の明かりは点いていなかった。廊下の電燈から光が部屋の中を横切る。ソファの横に、キリマが蹲っていた。
「あ、いや……っ」キリマが顔を背ける。
「どうしたキリマ、具合でも……」
ここで“エルザ”の片割れを喪った心情故の嘆きかと思い至らないところがレンツォである。しかし、どのみちそうではなかった。キリマの右手が、己の脚の間にある。女の匂いがつんとレンツォの鼻に届いた。
「む……っ?」
「見、ないで」
消え入りそうな声でキリマが懇願した。一体キリマが何をしていたのか、いくら鈍感なレンツォにも解った。彼女は暗い部屋の中で、一人自分を慰めていたのだ。
「ご、めんなさい、こんな、こんな」
「……あ……、」
身動きが取れずにいたレンツォは、自分の中の雄が頭をもたげるのを感じた。朴念仁のレンツォとて何も経験がないわけではない。
つい、手を伸ばし、キリマの肩を掴む。キリマは拒まなかった。後ろ手に客間のドアを閉める。
ソファに座らせて後ろから掻き抱き、無骨な手でシャツの中をまさぐった。下着の隙間から指を差し込むと、既に硬く尖った突起が触れる。
人差し指と親指で優しくつまみ、残りの指はふくらみをやわやわと揉み解した。暗い部屋にキリマが切なげな吐息を落とす。
「あ、あ」
微かに震えるキリマの身体を、焦らすように右手でくまなく撫でさすると、キリマが身を捩った。
レンツォは昨日爪を切ったばかりだということを神に感謝して、そろりと指を濡れそぼった秘部に這わせた。「っん」キリマが呻く。しなやかな陰毛を掻き分けて、ぷっくりとした萌芽をつまむと、キリマはびくりと仰け反った。
「い、いつも、この時間……、だったから……っ」
いつもというのは、リカルドがエルザを、或いはキリマを組み敷いていた時間のことだろう。レンツォにはやけにそれが腹立たしく思えた。一体いつごろから、どれほどの間彼女はリカルドの餌食になっていたのだろう?
レンツォはキリマの、身体の肉付きからするとやや厚ぼったい割れ目に骨ばった中指を沈めた。
「あっ……、はぁっ……」キリマは深く息を吐いて、それを受け入れる。にゅるり、と奥まで入った中指を前後に動かすと、くぐもった嬌声が聞こえた。
キリマが自分の口を手で塞いだのだ。
「んっ、ん、ふ、んんっ」
他者の気配をはばかる喘ぎは、股の間から漏れるくちゅくちゅとした粘液の音に相まって卑猥さを増す。
「んっ、う、あ、」
指の抽送に合わせて秘所の締め付けがきつくなった。レンツォの指の節がキリマの感じやすい場所を行き来するたび、吐く息が激しくなる。レンツォの長い腕ならば、指を根元まで咥え込ませるのは容易かった。
そのうち、キリマの感じる場所がレンツォにも判った。「あっ、ん、ああっ」腰をくねらせていたキリマが、レンツォが『そこ』を忠実に刺激するようになってからはほとんど大人しくされるがままになっている。
時折自分でレンツォの腕を押さえ、『ここだ』『もう少し長く』と示しさえする。
「んっ、ふっ、ふ、う、あぁ…………っ!」
何度も繰り返し齎された快感に、キリマはとうとう気をやってしまったようだった。
ソファに倒れこみ、ぐったりと肩で息をしているキリマの太ももがぐっしょり濡れている。
レンツォはスーツのズボンの上から自分自身の昂ぶりを確かめ、ジッパーを下ろそうとして……やめた。
「レン、ツォさん……?」
何も言わずに立ち上がったレンツォを、キリマは不思議そうに見ている。どうして、これ以上のことをしてくれないの? そんな疑問が聞こえてくるような視線を振り切り、レンツォは部屋を出て邸の手洗いに向かった。
危なかった。シルヴィオに自重しろと言っておきながら、自分が一線を越えそうになるなど。厳密に言うともうかなり危険なところまできている。レンツォは鏡の前で頭を抱えた。こんな。敬愛するボスの立場のことすらも忘れて淫行に耽るなど、何をやっているんだ。
「莫迦は俺だ……」
独りごちると、手と顔を洗った。それでも、身体中にキリマの匂いが染み付いている気がした。
「それで、腹ぁ決まったか」
数日後の談話室で、バッティスタとキリマは向かい合っていた。
「はい。勿論対価は払います」
長い睫毛を伏せて、キリマは答えた。
「エルザの代理人として、……いえ、エルザ・ルイージャ・フォルギエーリとして、正式に協力を依頼したい。――エルザのパパを殺します」
「……いいだろう。渡りをつけてやる。おい、聞いたなレンツォ?」
物陰に隠れていたレンツォは飛び上がった。
「! は、ボス……」
「てめえのやることは解ってるな? フォルギエーリを洗え。徹底的にだ」
「は!」
ビッと背筋を伸ばして、レンツォは応じる。
その日、晩秋のアントネッリを幾人ものバッソ・ファミリー準構成員(アソシエーテ)が出立した。
更に数日。
「間違いないようです」
ぱらりと写真付きの書類をめくって、レンツォは部下の報告を聞いた。
「リカルド・フォルギエーリには反感を持つ者がいくらか居ます。
特に、顧問(コンシリエーレ)のマッフェオ・ヴァッリは、その立場上公にはできませんが『エルザ』と懇意にしていた過去があり、今回のことには相当参っているようです」
「それで、エルザ・フォルギエーリの葬儀は?」
低いレンツォの問いに別の部下が答える。
「やはり、出ていません。住民の証言も教会の記録も洗いましたが、それらしきものはなかったと。『キリマ』の供述通りならエルザは三週間前に死亡しているはずです」
「解った。キリマを呼んでくれ。お前たちは下がっていい」
「は」
「どうする?」
レンツォの問いかけに、キリマは肩を強張らせた。リカルドを殺害することを決めた以上、「どうする」とはつまり、キリマ自ら手を下すかどうかを尋ねているのだった。
そこまでの段取りは、バッソ一家と一部のフォルギエーリの者が道筋をつけてくれる。あとはキリマが自分の手を汚す覚悟があるかどうかだ。キリマは椅子に座ったまま、レンツォの目を真っ直ぐに見た。
あんな――破廉恥な出来事があって尚、レンツォはその視線にたじろぐことはなかった。彼の持つ自制心は仕事に関わるほど冴え渡る。
「……わたし、やります」
「人を殺したことは?」
キリマは唾を嚥下して言った。
「ない。けど、エルザと相談したから」
「相談?」
「はい。わたしはエルザじゃないし、エルザはわたしじゃない。けどエルザのことはわたしが一番よく知ってる。わたしのことはエルザが一番よく知ってる。
わたしたちはお互いが、お互いになりたかったから。エルザが出す答えが、わたしには判る。もしも、死んだのがエルザじゃなくてわたしだったら、エルザは迷わず父親を殺したでしょう」
すべてが終わってしまったら、還る場所などどこにもない。
それでも、キリマの決意は揺るがなかった。
その地域一帯が、リカルド・フォルギエーリの資産だった。豊かな牧草地に囲まれた別荘。そこにキリマは電話を掛けたのだった。『エルザ・フォルギエーリは間もなく貴方の元に帰ります』と。
リカルドに、それが復讐だと判らなかったはずはないだろう。しかし彼の誤算は、館に存在するほとんどの人間がキリマに通じていたことだった。或いは、彼女にリカルドを殺すことはできないと踏んでいた。
ありふれた盗難車が別荘の前に止まる。おんぼろのフィアット・パンダだったが、誰も不審に思うものはいなかった。リカルドの支配する街にはそんなものいくらでも走っている。
一人の女が、運転していた黒いスーツの男のエスコートで車を降りた。
艶やかな黒い髪を風に晒し、黒いワンピースを身に付けて。
女は軽快に階段を駆け上がり、パラッツォ風の廊下を歩いた。
やがて一つのドアの前で足を止める。
「わたしがいない間、何を考えていたの?」
女はノブに手を掛ける。
「戻ってくると思っていた?」
女はノブを回す。
「それとも殺すべきだと判断した?」
女はドアを開ける。
「帰ってきたよ」
女は椅子に座る男を見据えた。
「――パパ」
ドアは閉じられなかった。
だがレンツォは部屋に背を向け周りに気を配っていたから、部屋の中で銃声が響いたときキリマがどんな顔をしているのかその一切を見なかった。
引鉄は三回引かれた。
終わったのだろうかとレンツォが思っているとき、背後でもう一回轟音が鳴った。
血の匂い。漂ってきたそれをレンツォは懐かしく思う。
彼の父もまたマフィアだった。そして敵対者に殺された。幼少のレンツォを拾って育ててくれたのがバッソ・ファミリーの先代ボスで、バッティスタの父親だった。
血の憧憬に身を委ねていると、俄かに館が騒ぎ始めた。銃声を聞きつけた親リカルド派の構成員たちが慌てている気配がする。
そのとき、キリマが口を開いた。
「我々にとって」
それは冷徹な声だった。
「父殺しは許されざる、最も忌むべき大罪ではないか?」
震えてすら、いなかった。
エルザと名乗った女は血まみれの己が手を見つめていた。
部屋の外に彼がいるのを、女は知っていた。
彼に届くように、澄んだ声で。
「リカルド・フォルギエーリは死んだ」
裁きを求めるように、穏やかに。
壁に、キリストを磔にした十字架が掛かっていた。
「わたし――」
「チヨコ」
レンツォは遮った。
部屋の中に進み出でて、女の言葉の続きを蹴散らした。
「“チヨコ”、用は終わったな」
“チヨコ”は凝然と彼を見ていた。
床に崩れたリカルド・フォルギエーリの側に寄り、レンツォはその生死を今一度確認する。
女は彼が自分をチヨコと呼んだのだとやっと理解した。
そう、エルザではない……。
だから、そこで死んでいる男は、自分の父ではない。
「キリマ」
レンツォは立ち上がる。
「追っ手が掛かるぞ。早くしろ」
途中で乗り捨てるための盗難車に、喪服の二人は乗り込んだ。
レンツォの家で、キリマは血に汚れた手を洗った。指紋の隅々まで付着した血液は、まるでリカルドの執着を表しているようになかなか取れなかった。
「わたし、もうどこへ行ったっていいのね」
キリマはどうしたいのか分からないのだった。
エルザの父の支配から逃れ自由を手にしても、彼女はその自由の使い方を知らない。
「最初の自由を頂戴」
キリマはレンツォに縋りついた。
「ひゃ、あ、あうん、ああっ」
節くれ立った二本の指がキリマの中で跳ね回る。レンツォはキリマの片足を持ち上げ、より鮮明にその部位が自分の前で蠢くよう一層光に晒した。
キリマはもう喘ぎを潜めたりせず、思う様声を上げる。
「あ……っ、そこ、あ、あ」
キリマの身体には無数の傷痕が残っていた。まだ生々しい噛み痕から引き攣れた火傷まで、様々な傷が。
レンツォはキリマの脚の間に顔をうずめ、太ももの切り傷を舐めながら奥に近付き、指を入れたままの膣の腹側を舌で探った。
「あっ、あ、やだ、だめぇ」
力なく拒絶するキリマの身体に説得力がない。肉芽を探り当て、強く吸うと小さな悲鳴とともに白い肢体が瞬時に緊張した。短い痙攣の後じわじわと脱力し、絶頂に達したことを身体がレンツォに知らせる。
その余韻を楽しませる間もなく、レンツォは指を引き抜き今度こそ硬く屹立した自身をあてがった。「あ」キリマが息を呑む。大きな期待とわずかな不安。リカルドによって幾度となく馴らされたであろうそこに、レンツォは自分を上書きするように沈み込む。
「い……っ、ん……っ、ふ、はぁ」
緊張がキリマの内部に一瞬の痛みを引き起こしたが、媚薬のように互いを高めあう粘膜に、それもすぐに消え去った。ぬちゅ、と音がして、一度最奥まで突き入れられる。キリマは自分の体内に埋め込まれた肉の杭が動くたびに齎す、抗いがたい快感に呑み込まれた。
「あっ、あ、あン、はあ、あぁ」
「キリマ……っ」
解るか。レンツォはキリマの身体に問う。自分が今誰のものなのか。誰のベッドで、誰に傷を舐められ、誰に快楽を刻み込まれているのかを。深く、浅く、何度も突いた。
「ひっ、ああ、はぁん、んんっ」
唇を自分のそれで塞ぎ、舌を貪った。何度も歯があたる、寡黙な男の不器用なキス。唾液を吸い取りながら、自分にしがみつくキリマの細い身体を、腰を押さえつけ、
「あ、ひっ、」
「キリマ、出すぞ……っ」
離した唇から嬌声が聞こえなくなるまで揺すぶって――、レンツォは、キリマの柔らかな身体の奥に精液を注ぎ込んだ。
睫毛を濡らして、キリマはまだ熱い身体を横たえていた。
「レンツォ……」
「……む」
今更ながら恥ずかしくなってきたと思われるレンツォに、キリマは優しく口付けた。
「……ありがとう」
レンツォは行為の最中よりも顔を赤くして、押し黙ったが、何度か空中とキリマの間に視線を彷徨わせ、言った。
「その……『最初の自由』と言ったな」
「……? はい」
「…………、『最後の自由』も、俺が貰っていいだろうか」
果たして、元から紅潮していたキリマが、耳まで真っ赤になった。
「リカルド・フォルギエーリの思惑通りになってしまいました」
バッティスタに報告するとき、キリマはそう言って少し寂しそうに笑った。
「彼は最後に、自分を壊したかったのに違いありません」
キリマがエルザの復讐に来ることを、場所の指定をすることでリカルドは知ったはずだ。
それでも別荘でキリマを待ったのは、自分の運命を受け入れていたためか。それとも、エルザ――或いはキリマに対する情が残っていたのか。
いずれにせよ、エルザもリカルドもいなくなったことで、キリマは永遠にその宿命から解放された。
キリマの身体に残る傷のことを、もはやこの世に一人しか知る者はいない。
「エルザの遺体は散骨されてしまったようです」
「葬式は出すのか?」
ドン・バッティスタは彼にしては珍しく神妙に訊いた。
「はい、そうしようと思います」
「棺には何を入れる」
「わたしの髪を。これはわたしが“エルザ”として生きた時間の長さでもありますから」
キリマは自分の長い髪を、指で作った鋏で切る真似をした。
「ふん。それをそこの唐変木は納得したのか?」
「えっ」
暗に二人の関係を見抜いているぞと言われ、キリマはともかくレンツォは大いに慌てた。
「い、いや、ドン! 俺は女が出来たからといって鎬を疎かにはしない! 信用してくれ!」
「誰もてめえのザーメン頭のことなんざ心配しちゃいねえんだよ、愚図が」
そう言いながら、バッティスタはニヤリと笑った。
アントネッリの教会の墓地に、“エルザの遺髪”を納めた軽い棺が運ばれていく。
喪服を着た数人ばかりの小さな葬列だった。
秋も終わりに近い、肌寒い日のことだった。
晴れた空は、どこまでも青く澄んでいた。
墓碑にはこう刻まれた。
『神は秩序を欲する』
ここに、エルザ・フォルギエーリは葬られた。
おしまい。
★地名、人名、出来事などすべてフィクションです。
★マフィアは秘密主義です。絶対にこんなに簡単にボスにお目通りはできません。
★マフィアは秘密主義です。絶対にこんなに早く余所のファミリーの内情は知れません。
★エロ成分もマフィア成分も中途半端で申し訳ありません。
>>35の続
「すいませんでしたすいませんでしたすいませんでした」
とにかく土下座・土下座・土下座。
平に平に額をコンクリート製の床に擦りつけて謝罪する雪。
「ああ、もう!わかったから、わかったから上飛曹!許すから!」
逆にあたふたする正真正銘の海軍少佐。
というのは、雪が少佐の頬をふにーと伸ばしていると
どこからか厳つい搭乗員が『貴様ぁ!何しとるかッッ!』
と鬼の形相で格納庫に入ってきたからだ。
その階級は中尉。私の一つ上だ。
あまりの剣幕に雪は固まってしまった。
「貴様ッ!上官侮辱罪で営倉にぶち込んでやる!」
と雪の胸ぐらを掴んだ。
そこへとてとてと歩いて少佐が中尉の脚を掴んだ。
「ああ、いいです、いいです、武藤君」
武藤…どこかで聞いた名だ。
「し、しかし!少佐殿、上官の頬を抓るなど……」
「僕がいいって言ったのです。もちろん、命令で。だから問題ないです」
うんうんと頷く少佐を見て中尉は雪から手を離した。
「はッ、申し訳ありません」
そのパイロットは少佐に直立不動で敬礼した。
そして私達に向き直ると
「貴様ら!俺は女だからと言って容赦はせん!性別など関係ない!わかったな!」
お、思い出した!この中尉は『空の宮本武蔵』と称されるトップクラスのエースだ。 「どうだ、洗練されたこの機体!B29迎撃の新鋭機だ。
僕が設計したんだぞ!すごいだろう諸君」
えっへんと胸を張る少佐は可愛い。
「これが新型の戦闘機……ですか?」
「ペラが後ろに…」
「対B29迎撃するために短時間で高々度に達する用に設計した
よって牽引式ではなく推進式にしたのだ。これによって機の先端に
武装を集中的に配置できるんだぞ。少尉、意見を聞きたい」
「は、はぁ……えー…」
「遠慮はいらないぞ」
自信満々な少佐に、私は率直な意見を言った。
「耐久性や補給の話を抜きにしますと、まず防御面では
エンジンが後ろにありますから対戦闘機戦では撃たれ弱いかと思います」
「ぐッ……」
「最近では硫黄島に配備された最新鋭のP51が護衛についてきますよ?」
とこれは唐橋飛曹長。
そう。先日、硫黄島が米軍の猛攻を受け守備隊が全滅したという情報を聞いた。
あの島は時間稼ぎだったのだ。
本土を防空するため、外地から熟練の搭乗員を招集し
部隊再編の時間を稼ぐ……たったそれだけの為に守備隊を見捨てたのだ。
「またB29の迎撃戦ではエンジンで弾を防げませんから
対空機銃で乗員が傷つきやすいかと」
「B17でさえ苦労したのに、今度はさらに上のB29ですか」
「うわああああん!欠点ばかりぢゃないか!もっと良い点を言ってよ!
ねぇ!ねぇ!ねぇ!少尉!」
むにゅ…大きく突きだした少佐の両手が私の両乳を鷲掴んだ。
「痛いです」
「あ、も、申し訳ありません。反射的に」
少佐の頬を張ってしまった。
「良い点は……後方から撃たれた場合、エンジン自体が防弾壁になって乗員の生還率は高い点。
また短時間でB29の高度に到達できるのは魅力的です。ベテランパイロットのが搭乗し、
機の能力を最大限に発揮できれば強力な迎撃機になると思います」
「そう!そう言うことを言って欲しかったんだよ!君達の愛機になるわけだし!」
少佐は得意顔になって言った。な、何だって?この機体が私達の機になる!
「で、ですが、これは新型ですよ!?ほ、本当に私達が搭乗してよいのですか?」
「んー…依頼はしたけど、皆『紫電改や電電の方が良い』って言って
乗ってくれないんだよ。ベテランパイロットだから、僕も強く言えないし。
陸軍は門前払いだし……よって乗ってくれるのは君達、女性パイロットしかいないのです」
(少尉、それって暗にあたし達をバカにしているのでは?)
雪がボソッと耳打ちする。私は手で制し言った。
(逆に考えるとこれで爆撃機を撃墜すれば『だから女は…』なんて言われなくなる)
「事情はわかりました。少佐、この機の試験飛行の記録を閲覧したいのですが…」
私はこの機体『震電』を指しながら言った。
少佐は明後日の方向を見ている。
「あの……し、試験飛行も私達がしろと?」
「君達の腕を信じている」
今度は唐橋のゲンコツが少年の頭部にめり込んだ。
「少佐ッ!大丈夫ですか!?」
頭部を抑えて蹲る少佐に雪が駆け寄った。
「こんマセガキィ!少尉の乳揉むだけでなぐぅ、試験飛行もざぜる気なんかぁ!
万がいづ、墜落でもじだらぁどんすんつもりじゃゴラッ!」
よくわからない方言で唐橋が怒鳴った。
続
エロチックなランジェリーだと思っていたらそれがタトゥだったマフィアな姐さんとか居ないんだろうか?