1 :
名無し草 転載ダメ©2ch.net (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 15:36:00.66 0
2 :
名無し草 (ワッチョイ 9f17-G+K4)
2016/04/01(金) 15:39:00.55 0
スレ落ちたん??
お通夜でありがとう〜
3 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 15:39:02.86 0
>>1 前スレ800待ってたけどおらんしdat落ちしたから立てたで
ようわからんけどdat落ちした前スレが復活したらそっちから埋めよ
せっかく賛成多数でコテスレなったしな
4 :
名無し草 (ワッチョイ 0bc8-eoZT)
2016/04/01(金) 15:41:30.84 0
いちおつやで
前スレエラーで再取得したらDAT落ちでビックリしたは
5 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 15:46:09.59 0
6 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 15:48:32.16 0
掃除終わって来たらdat落ちやったんやけど落ちる基準がわからん
7 :
名無し草 (ワッチョイ 077d-pU0W)
2016/04/01(金) 15:48:34.56 0
>>1>>3
お通夜ですまんは
800とったの気付かんかった上に更新してもエラーでログがこないから変やなー思ってたらdat落ちしとった…
8 :
名無し草 (ワッチョイ 9f17-G+K4)
2016/04/01(金) 15:51:13.45 0
ほんま落ちるの早くなりすぎちゃうこれずっとなんやろか…
9 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/01(金) 15:55:23.88 0
あれ前スレ落ちとる?
わいがみさくら語話したから?
10 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/01(金) 15:56:55.00 0
それはともかくジョン届いたで
他のRAHと比べると顔小さくて一緒に並べるの難しそうや
単品ではかなりええ出来ちゃうか
11 :
名無し草 (ワッチョイ a75d-/2xI)
2016/04/01(金) 16:08:24.35 0
なんで雨の日のええ透明傘って傘立てに置いたらショボい透明傘とすり替えられるんやろ
12 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/01(金) 16:09:20.10 0
13 :
名無し草 (ワッチョイ a75d-/2xI)
2016/04/01(金) 16:14:39.64 0
>>12 なんや気のせいか
わいの透明傘は元からショボかったんや!
て!待てやおい!
明らかにちゃうで!
14 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/01(金) 16:22:00.61 0
>>13 あれやろ疲れ目で傘の骨組みが細く見えたり数が少なく見えるだけで多分同じ傘やろ
15 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 16:27:30.22 0
tnkおもろいけど生まれ変わっても女がええは別に持ちたくはないねん
16 :
【末吉】 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 16:27:49.12 M
わいは匠の傘やで
和風総本家でやってたねん
17 :
名無し草 (ワッチョイ d75d-e5NB)
2016/04/01(金) 16:28:39.57 0
透明傘は盗まれる確立高いは
名前書いてたのに
18 :
名無し草 (ワッチョイ 8b4c-Iq2g)
2016/04/01(金) 16:30:33.26 0
19 :
名無し草 (ワッチョイ df80-eoZT)
2016/04/01(金) 16:31:36.70 0
>>10 ええなーめっちゃ見たいで!うp!
透明傘は勝手に持ってっていいものだと思ってるバイト先のクズおったで
傘忘れた時は勝手にもってって自分の透明なのも誰かに持ってかれてもええらしいは
乗り合いバスみたいな感じで共有傘らしいで
開いた口が塞がらんかった
20 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 16:32:49.87 0
手癖の悪いやつちねえええ!!!
21 :
名無し草 (ワッチョイ 371c-G+K4)
2016/04/01(金) 16:37:24.63 0
新品のビニール傘がボロボロのビニール傘にチェンジしとったときは温厚なわいもブチ切れや
22 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-FRpl)
2016/04/01(金) 16:37:25.53 0
>>19 うpるのはええねんけど今イメグラ変やない?
エラー起きて無理やは
回復したらリリアニちゃんと一緒にうpるでな
透明傘はわいもなくなるもんやと思っとるから公共の場所においていかなあかん場合は持ってかへんな
23 :
名無し草 (ワッチョイ df80-eoZT)
2016/04/01(金) 16:45:24.42 0
>>22 やったー
リリもかっこええしアニちゃんめっちゃ美人やねん
メイトとBB2Cはイメグラでエラー起きて使えなくなってるみたいや
24 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 16:48:05.65 0
ふと思ったけどリリが猿はチキンなんやろ発言は回収あるかも?
わからんけど何かが起きて猿一旦逃げるとかないやろか
なさそうやけど詰んでるから期待してまうは
んで地下室や
猿って体に反比例して動きもキレッキレやし岩握りつぶすしこわいねん
25 :
名無し草 (ワッチョイ 8b4c-Iq2g)
2016/04/01(金) 16:51:38.25 0
投石は猿なりの手加減でしたってなりそうや
26 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-FRpl)
2016/04/01(金) 16:51:40.00 0
>>23 わい今メイトからちんくるに変えてみたんやけどあかんみたいや
顔のサイズはほんまならジョンが普通なんやろけど他のRAH進撃キャラが大きめに作られとるから一人小顔になるんよな
>>24 猿がチキンとは…
27 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 16:55:11.24 0
>>25 手加減はしてるやろな球一個分高かったはテヘペロで余裕やし
>>26 そんなシャレかましたつもりなかってん///
脳移転あったからもう何が起きてもあるあるやねん
28 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-FRpl)
2016/04/01(金) 17:03:42.08 0
ふぁ…キスマイの宮田ってほんまにオタなんや
イベントに顔出しとか事務所に怒られへんのかな
29 :
名無し草 (ワッチョイ 9f17-G+K4)
2016/04/01(金) 17:40:27.49 0
わいちゃん買い物行ってくるで!!
30 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/01(金) 17:43:51.93 0
言ってらっしゃいやで
31 :
名無し草 (ワッチョイ 9f17-G+K4)
2016/04/01(金) 17:50:12.95 0
行こうとしたら散歩と勘違いしたにゃーが玄関から飛び出して砂場でごろんごろんしたは…捕まえて体拭かんと…
32 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/01(金) 18:06:42.25 0
にゃーってコンクリとかすっきよな
33 :
名無し草 (ワッチョイ 9385-eoZT)
2016/04/01(金) 18:16:09.08 0
>>1おつやでただいまー
なんやまた難民落ちとったんか
34 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 18:35:56.54 a
一乙
わいちゃんこれからエステや
35 :
【小吉】 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 18:38:12.21 M
仕事終わったは
ヨガさぼってユザワヤ行くで
36 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 18:38:29.38 a
おつやで
入社式やったんやけど早くも転職したい
37 :
名無し草 (ワッチョイ 9385-eoZT)
2016/04/01(金) 18:45:16.10 0
38 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 18:50:57.71 a
>>37 通勤往復便4時間
土曜休み少なめ
有給取りにくい
土曜も早速研修やしいきなり休み少なめ
初任給翌月振り込み
やってける自信ないは……
39 :
名無し草 (スプー Sd9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 18:53:03.08 d
人身事故の影響で電車2時間以上止まってたは
しかも再開後もなかなか乗れへんやし
やっと乗れたで
今日4/1やん
人身事故って入学式や入社と関係あるんやろか
40 :
【凶】 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 18:53:21.49 M
今まで気楽に学生やったんが社畜とかからいよな
最大の試練やで
41 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 18:55:52.79 a
42 :
名無し草 (ワッチョイ 9385-eoZT)
2016/04/01(金) 18:56:32.30 0
>>38 はー片道2時間はキツいな
それだけでやる気削がれるんわかるは
なんとか我慢してお金貯めて職場に近いとこ引っ越すんは難しそうなん?
43 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 18:56:41.33 a
周りみんな優良企業勤めやから余計からい
新卒やなかっただなでこんなに不利なんやな
44 :
名無し草 (スプー Sd9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 18:57:10.01 d
>>38 給料翌月振り込みはどこでもやし入社最初の土曜出社もまあしゃあない範囲や
しかし通勤時間の長さは異常やは
職場の近くに一人暮らし出来へんのけ?
45 :
名無し草 (スプー Sd9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 18:58:21.11 d
>>41 ありがとうやで
今日が金曜日でまだ良かったは
月曜でこれやったら鬱過ぎる
46 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 18:58:58.67 a
>>42 一人暮らししたら鬱になりそうでこわいねん
わい昔それで失敗して新卒採用逃したんや
わい会社選び下手すぎたはせめてハードワークなら好きな仕事選べば良かった
47 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 19:00:32.98 a
>>44 鬱になりそうで不安やねんけどがんばってみるは
工業地帯で空気も悪いねん
周りみんな4月に初任給もらえるような優良企業多いで余計からい
48 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 19:01:01.24 a
愚痴ってごめんな
明日も研修がんばるは
49 :
【吉】 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 19:01:43.47 M
通勤時間はほんまきついで
その時間寝るしかないやん
50 :
名無し草 (ワッチョイ 9385-eoZT)
2016/04/01(金) 19:02:49.30 0
>>47 周りと比べるんは精神衛生悪いからやめとこ
上見てもキリないからな
職場や通勤時間に楽しいこと見つかるとええな
51 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 19:03:10.97 a
乗り換えばっかやから寝られんねんな
52 :
名無し草 (スプー Sd9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 19:04:30.03 d
>>47 ああ翌月振り込みってそういうことか!
締め日の関係やろかいな?
逆に辞める時に翌月も貰えるとかなんやないやろか?
しかし工業地帯で一人暮らしは確かにからいな
53 :
【末吉】 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 19:05:55.44 M
わい4月に初任給出たけど4万やったは
今はあんときの若さが欲しい全財産出してもええは
54 :
名無し草 (ワッチョイ 6f44-U3xn)
2016/04/01(金) 19:06:02.07 0
好きを仕事にできる人て何%くらいなんやろ
55 :
名無し草 (スプー Sd9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 19:07:30.99 d
女性専用車やのに男性いっぱい乗ってるは
電車止まってたし遅れてたしで女性専用車両とか言ってられへんのやろな
56 :
【大凶】 (ワッチョイ dfc2-oDcN)
2016/04/01(金) 19:08:30.70 0
恥ずかしながら4月の初任給の存在とそれが優良企業の証な事実を今知ったわい驚愕におののく
57 :
名無し草 (ワッチョイ 9f9e-Iq2g)
2016/04/01(金) 19:12:20.40 0
58 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 19:17:14.21 a
友達がみんな優良企業で楽しくきゃっきゃっしてるのみるだけでもからい
頑張っていけるやろかまた鬱になって引きこもりはイヤや
59 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 19:18:45.62 a
一般的に給与は支払い早いほど優良やで
(日払いバイトは除く)
60 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 19:20:57.44 a
せめてお金貯めて素敵な旦那さんと結ばれて寿退社して幸せな第二の人生はじめるで
わいはがんばるは今も泣いてるけどでもまずは働かんとすぐやめたら転職も不利やねんな
61 :
名無し草 (ワッチョイ 8b4c-Iq2g)
2016/04/01(金) 19:24:06.97 0
我こそは無職なり!無職になれば無ショック!
なんつってな!ダハハハハハッ(ブボボップー…タロウ)
62 :
名無し草 (ワッチョイ 0bc8-eoZT)
2016/04/01(金) 19:29:36.06 0
63 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 19:29:50.51 a
64 :
名無し草 (スプー Sd9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 19:31:23.01 d
65 :
【ぴょん吉】 (ササクッテロ Spef-Iq2g)
2016/04/01(金) 19:35:35.05 p
66 :
名無し草 (ワッチョイ 6f44-U3xn)
2016/04/01(金) 19:46:15.36 0
67 :
名無し草 (ワッチョイ 371c-G+K4)
2016/04/01(金) 19:51:27.82 0
68 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 19:51:54.20 0
>>61 そんな事言いながらでもなんか可愛ええな
わいちゃん明日花見や
初めての///イカ焼き食べるつもりや
69 :
名無し草 (ワッチョイ b740-G+K4)
2016/04/01(金) 19:52:07.64 0
ツイッタでキラキラした新入生の姿いっぱい踏んでもた
目の輝きがちがうは
70 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 20:02:52.95 0
新入生って15か18よな
そりゃ眩しいはあの頃ってホンマ怖いもの無しで今振り返るとちょっと恥ずかしくなるな
71 :
名無し草 (アウアウ Saaf-plRE)
2016/04/01(金) 20:03:56.61 a
初任給翌月振込とかあるんか
そんなん4月暮らしていけんやんけおにちくや
色々最初は飲み会とか連れてかれんのに
72 :
【だん吉】 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 20:05:35.06 M
新卒なんてただの穀潰しやん
そりゃ給料あるだけマシやで
73 :
名無し草 (アウアウ Saaf-plRE)
2016/04/01(金) 20:08:06.38 a
新卒ごくつぶしって底辺会社ちゃうんそれ
いろいろフォローせなあかんのは当然やけどある程度は研修とかもあるしできるもんやろ
給料分くらいは働けるように周りが助けたるのも先輩の仕事やで
74 :
【大吉】 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 20:10:35.91 M
うちは数ヶ月ずーっと研修やで
働くのは半年後くらいやそれまでひたすらこっちが金払って育てとる
75 :
名無し草 (ワッチョイ b740-G+K4)
2016/04/01(金) 20:14:09.04 0
昔は3年目まではミスってもだいたい許される感じやったけど今もっと厳しいんやろか
76 :
名無し草 (ワッチョイ abb6-Iq2g)
2016/04/01(金) 20:16:38.97 0
みんなわいやで!
今日もお勉強と芋焼きするで!
今日はお芋は2個だけにしました
77 :
名無し草 (ワッチョイ 9fd9-G+K4)
2016/04/01(金) 20:36:46.30 0
バレはよ
78 :
【大吉】 (ワッチョイ ab7e-G+K4)
2016/04/01(金) 20:38:52.68 0
>>61 明るい無職は好感もてるな
素敵やでBBA!
79 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 20:52:20.44 a
明るくなれないときに明るい方がとかいうのみるとほんま落ち込むな
もうどうすればいいんや
がんばりたくないただ生きてたいは
80 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/01(金) 20:56:05.33 0
とにかく明るい安村観て笑えばいいと思うの
81 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/01(金) 20:57:02.39 0
あと
わいちゃん眠い
82 :
【豚】 (ワッチョイ dfc2-oDcN)
2016/04/01(金) 20:58:39.52 0
今日限定でやっとるTサイトの宝探しくじ何かええことあるんかな
とりませっせと開け続けてるけど
83 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 21:00:22.86 0
>>79 わいは悲しい時は一人になれる時間まで待って泣くで
悲しい音楽やら聞いてひたすら落ち込むし追い詰める
そうすると(わいの場合は)段々癒えてくる言うか浮き上がるねん
84 :
名無し草 (スプー Sd9f-dfgU)
2016/04/01(金) 21:05:06.05 d
泣いたらすっきりするでな
あとは寝てまうのもええで
85 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/01(金) 21:05:26.17 a
新社会人BBA乙やで
わいは転職BBAやけど同じく今日入社式やったは
初日からなんや場違いな所来てしもた感あるけど頑張るで
86 :
名無し草 (ワッチョイ 6f85-G+K4)
2016/04/01(金) 21:09:12.18 0
>>85 初日おつんぽ
来年の今頃は今日の自分みたいな新人を見る側や
87 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/01(金) 21:18:55.67 a
>>86 おおきに
前職とは畑違いの会社やし転職出来ただけでもラッキーや思うてコツコツやるは
88 :
名無し草 (スプー Sd9f-Iq2g)
2016/04/01(金) 21:19:23.08 d
新入社員ババアは五月病ならんようにな
桜の時期やしお花見でもして気分転換するんやで
89 :
名無し草 (ワッチョイ 9f17-G+K4)
2016/04/01(金) 21:21:32.27 0
ただいまやで
通勤四時間はすごいはわい毎日遅刻する自信しかないは
90 :
【大吉】 (ワッチョイ c3c8-Iq2g)
2016/04/01(金) 21:31:48.93 0
入社式して次の日休みとか結構つらくないか
91 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 21:32:32.33 a
92 :
【豚】 (ワッチョイ c3c8-Iq2g)
2016/04/01(金) 21:34:21.93 0
わい明日ケイン相談所行って靖国神社いくで
リア充や
93 :
名無し草 (ササクッテロ Spef-Iq2g)
2016/04/01(金) 21:42:31.23 p
94 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 21:44:08.89 0
>>92 桜も見てきたらええよ桜はすぐ散るから機会があった時には見た方がええ思うねん
95 :
【凶】 (ワッチョイ c3c8-Iq2g)
2016/04/01(金) 21:44:18.08 0
>>93 桜と御朱印目当てや
昔バッバがあそこに親戚おるからわいの代わりに行って言われたねん
96 :
名無し草 (ワッチョイ 272d-Iq2g)
2016/04/01(金) 21:46:57.18 0
飲み会からただいまや
何が悲しく自腹で見飽きた面子と顔つき合わせなあかんのやと思うねんけど
付き合いやからしゃーなしやな
97 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 21:48:02.09 0
靖国の御朱印どんなんやろ
わい伊勢神宮行きたいけど逆パワスポやったような…
98 :
名無し草 (ワッチョイ 6f44-U3xn)
2016/04/01(金) 21:50:59.69 0
ババアらパワスポに頼り過ぎやろ草
99 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 21:51:38.09 0
>>98 でも偶然かもやけどわい当たってるんやもん
100 :
名無し草 (ワッチョイ b740-G+K4)
2016/04/01(金) 21:56:12.51 0
イワシの頭もなんとやらやな
気分転換なるやろうしええことや
101 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 22:00:38.33 0
はよ明日にならんやろかイカ焼き食べたいねん
金魚すくいもしたいけど金魚鉢ない
昭和の小物ほしいねんな
黒電話とか豚の蚊取り線香器
102 :
【末吉】 (ワッチョイ dfc2-oDcN)
2016/04/01(金) 22:13:12.18 0
103 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 22:17:15.89 0
>>102 しばらくハンズ行ってないは
見てみよ
あとわいカルディ見るの好きやねん
コーヒー配ってるけど貰う勇気が出えへん
104 :
名無し草 (ワッチョイ b740-G+K4)
2016/04/01(金) 22:19:49.80 0
アクアの玄人やない限り金魚鉢で金魚飼うの止めたってや
カルディはタンBBAの記憶が脳裏に
105 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 22:20:19.87 0
だって見て回るのに飲めんしかといって買った後で下さい言えへん
106 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 22:21:28.67 0
>>104 えっダメやったんか…水草買ってエサ買ったら大丈夫思ってた
107 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/01(金) 22:25:19.06 a
このスレでカルディて文字見るともう駄目やは
108 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 22:31:51.20 0
何があったっけ?全くわからん
109 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 22:33:38.85 0
タンBBAのタンって舌のタン?
何や気になる
わい飲み物と砂糖と酒とお菓子しか買った事ないねん
こないだジンジャーエール買った!
110 :
名無し草 (ワッチョイ b740-G+K4)
2016/04/01(金) 22:34:00.40 0
>>106 金魚はよく水汚すから金魚鉢からいし大きくなるからどの道水槽必要になるで
球形の入れ物での視界は魚にストレスかかるっていう説がほんまか嘘かは謎や
111 :
名無し草 (ワッチョイ b740-G+K4)
2016/04/01(金) 22:39:29.02 0
貰ったコーヒー飲んでるときなんやヌルッとしたの飲み込んだ気がするねん
思い起こしたら前に並んでたジジイが大きなくしゃみしてたねん…つまり
みたいな話やったような
112 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 22:40:11.83 0
>>110 せやったんか…金魚で思い出したけど金魚を数匹(オモチャ可)買ってどっかの方角か置くとケインとか金運とかに効く?ってのが中国(P.R.Cやないで)の風水か何かであるって聞いた事思い出したは
テレビやっけ?何かで言うてたねん
金魚は縁起の良い生き物らしいは
113 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 22:40:53.99 0
114 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-RFXF)
2016/04/01(金) 22:57:26.70 a
115 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/01(金) 22:59:40.68 0
116 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/01(金) 23:03:14.61 0
毎日眠くて頭痛いねん
1時前には寝とるのにからい
117 :
名無し草 (ワッチョイ 9fbf-pU0W)
2016/04/01(金) 23:05:59.61 0
>>116 人間は1日7時間睡眠がベストらしいで
朝何時に起きてるん
118 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 23:13:21.09 0
やっぱりりわいはカルディのコーヒー貰わんようにする初志貫徹や
>>115 つまり神社の名前が御朱印なんやな
わい靖国行った事ないねんたぶん
行った記憶も写真もない
実は東京出身なんやけど転勤ばっかやから生まれただけみたいなもんやは
宮参りは松陰神社でやったとは聞いたんよな聞いた事もない神社やけど
119 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/01(金) 23:23:00.32 0
わいも御朱印集めたくなったは
氏神様って生まれたとこのと現在居住地の二つあるんやろ
この二つを特に大事にするとええ言うし
120 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:23:10.04 d
浮気 良いぞジャンもっとやれ! ジャンそのままエレンを奪っちゃいなYO!! ジャンエレを幸せにし隊 ジャンー!!!早く助けてあげてー!!!! ジャンエレを援護し隊!!
リヴァイさんに絶望を見せる準備はできてます! エレン!俺と結婚しよう!! ぜひ、私と結婚しておくれ!!!
さーて、包丁を買いに行って来よう! エレンをかっ浚い隊!! ゲス兵長 ジャン頑張れ!超頑張れ(つД`) ジャンエレを全力で援護し隊参上! 浮気は許さない、けど愛ゆえならば何だって出来るよな? エレンを幸せにし隊! エレンの幸せ笑顔がみ隊!!
浮気男以外とエレンが幸せになりますように エレン頑張れ!幸せを掴んで!! 浮気性治んないならエレンといる資格ないっしょ ジャンイケメンすぎるじゃん! ジャンの逆転の可能性は? 切ないジャン ジャンエレを全力で援護し隊参上!
エレンを世界で一番幸せにし隊 はい!私も参加希望です!! フルボッコ参加枠まだありますか?! フルボッコ参加列、最後尾プレート持ちます エレンを幸せにし隊 心底後悔するといいよ!! 浮気者に制裁を!! 浮気リヴァイ これは許さないエンドを!!
エレンを保護し隊 リヴァイさんを後悔させ隊 エレンを幸せにし隊 エレンを今すぐ抱きしめ隊 よしエレン、私と結婚してくれ! リヴァイさんをぶん殴り隊今宵も参上! エレンをかっ浚い隊! リヴァイ殴らせろ隊ここに見参!!!
121 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:23:25.12 d
_i⌒r-.、
,,-'´ ノ
./ .l
/ l チ
(( ◯ .l エレン l ン
.ヽヽ、l i .l ポ
\ヽ l l )) コ
,-'´ ̄`ゝ´ ̄`ヽ ノl ポ
.,' .,' ◯ニ.ンl ン
i i .i
ヽ、 丶 .ノ
`'ー-.'´`'ー- ''´i .|
凵 .凵
122 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:23:50.67 d
魚食えないの無様すぎる自作自演!
914 名無し草 [sage] 2015/01/19(月) 09:55:05.86
わいの神様壁博でオフ発参加やねんけどこの人自分の神ぐあいなめてらっしゃるは
売り子なしとか神が亀で叩かれるの見とうないで
920 名無し草 [sage] 2015/01/19(月) 09:58:04.72
>>914 その神一人やしってトイレの心配してた人?
942 名無し草 [sage] 2015/01/19(月) 10:04:47.25
>>929 あの人か!
あの神在庫は凄く持っていく言うてたけどわい最初にあそこに向かう予定や
わいあの神の描くカプ厨やないけどあの人の絵が好きやねん
968 名無し草 [sage] 2015/01/19(月) 10:14:33.49
>>942 わいもや!
鉢合わせしたらよろやで///
神絶対余るは〜言うてたけど倍率高いと思うねん
通販もやらん言うてるけど支部作品の続編ぽいしな
素敵な絵描かれるよな
量産絵やないしカラーも特徴あってめっちゃ綺麗や
あんな絵描いてみたいで
123 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:24:03.35 d
アズ(魚食えない)
(マジか)o。(눈"눈)そして追加したシーンのせいで注意書き必要か迷ってます...リヴァエレなのにリヴァイの出産直前の妊婦姿なんて誰もみたくないですよね...
わたしもワーイって喜び勇んでもえるようなオプションじゃないので困ってる...あっまだドン引きしないで下さい
2015年1月12日 - 9:43pm
804 名前:愚痴
ABですがAの出産間近の妊婦姿があります????
それはABじゃなくてBAもしくはA受けですよね??????
信者もサークル者も誰も突っ込んで無くて???????
本当ABサークル者って馬鹿とリバ厨ばっか
806 名前:愚痴
>>804 >ABですがAの出産間近の妊婦姿があります
ワロタ
女体化(Ω?)の時点で勘弁お引取りだけど、攻め妊娠とか更にわけわかんねw
811 名前:愚痴
>>808 >肉体的BA描写もないし作者がABと思ってるのならABなんじゃねえの
やることやってなきゃ妊娠はしないだろw
仮に支部だとしたらキャプションだけじゃなくタグにABAとかAB、BAしてもらいたい案件
ABだと思ってキャプ読んだらA妊婦ってもはや魚雷レベル
オフ本で知らずに買ったら即効で中古やへ叩き売るわ
124 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:24:39.67 d
一日で製本してくれた印刷所に愚痴るアスペルガー魚食えない
※2015年3月20日(金)ツイッターから愚痴を削除
印刷所からメール来てこないだのやっつけ不備あった(想定内)から直して返信したのが月曜日の夜で火曜日に印刷すっどー連絡来て「出来上がったので今日発送しました」(想定外)←今ココ
早くないですか?これ普通??こんな早くてちゃんと本になってる???納品日22日に設定してたのに
2015年2月19日 - 9:38pm
(嗚咽...)もういい...寝る
2015年2月20日 - 12:03am
-------------------
同人誌は画力が低くてもなぜか売れるリヴァエレのみに終始するも本当はエレリが大好きな魚食えない
アズ(魚食えない)
@ くろかわさんです!リヴァエレリ変換できると幸せに気持ちになりますね...
2015年2月20日 - 11:31pm
アズ(魚食えない)
@ えっストーカーだっていいたいんですか?否定はしない...(噛みしめる)自滅してケツ差し出すちこさん潔すぎて感動しました(さわさわ)見る専でならリヴァイ受も!
他CPはエレヒスとか?ジャンエレとか?やだな呼んでませんよいいから尻から手を離しなさいバシッ
2015年2月22日 - 7:24pm
125 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:24:44.19 d
http://twitter.com/az_0x/ http://twitter.com/__o30/ http://twitter.com/__0l0l/ http://touch.pixiv.net/member.php?id=120203 単行本を15巻以降読んでおらず原作も知らないくせに壁博で本を売り更にリヴァイ幼少時の回はネットの違法画バレで見たと平気でツイする魚食えない
-------------------
リヴァイを踏み台にしてエレンのケツを追いかけるリヴァイヘイターアスペ魚食えない
アズ@魚食えない
こないだ初めて人様に自分のリヴァエレ観語れてすごいたのしくてそこで改めて分かったのは自分エレン厨でした
進撃ハマるきっかけも進撃初描きもリヴァイだったんですがいまや彼を踏み台にしてエレンのケツ追いかけてる 『リヴァイ>>>>>薄い壁<<エレン』薄い壁=なんらかの障害
2015年3月08日 - 1:25am
-------------------
ディズニーホテルを模写してリヴァイの部屋にする魚食えない
-------------------
リヴァイのディズニーホテルをリヴァペトに使い回す魚食えない
-------------------
審議所躾シーンは公式DVと言い張る魚食えない
-------------------
魚食えないが描いたエレンとミカサに処刑前にセックスさせてエレンの子を産ませてリヴァイにその子供を渡すミカサヘイト
-------------------
魚食えないが描いたリヴァエレなのにリヴァイが孕むリヴァイヘイト
126 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:25:08.93 d
277 名無し草 sage 2015/05/06(水) 21:17:57.24
アズ(魚食えない)
http://twitter.com/a0_3a 恋した人はレンズの向こう側
379 名無し草 sage 2015/05/06(水) 21:29:15.77
>>277 魚またパクったん?
サークル名も直木賞作家の本のタイトル「サラバ!」からもろパクリの「さらば!」やしパクらななんもできんのやろか?
文学賞
さばえ近松文学賞2014〜恋話(KOIBANA)〜入賞作品
松平昌親賞「レンズの向こう側」
漫画
愛はレンズの向こう側
450 名無し草 sage 2015/05/06(水) 21:36:39.41
>>379 個人サイトやってた時のサイト名
雛が道を横切ったのは何故?
ていうのもアメリカでは有名なジョークて言われてるこれからのパクリやからなぁ草
Q: ニワトリが道を横切ったのは何故?
A: 反対側へ行くためさ!
127 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:25:12.63 d
自分のツイ垢に反応する瀬早めろんウンスジ
http://twpf.jp/shymln http://twpf.jp/shymln18 282 名無し草 sage 2015/05/07(木) 01:03:19.98
>>271 ツイッターアドレスはだめなん?
295 名無し草 sage 2015/05/07(木) 01:06:04.60
誰か
>>282に答えてや
ツイッターアド晒しは通報できんの?
-------------------
このスレでなんの脈絡もなくエルドエルド言い出した時にツイでもエルド言うててほんまメロンは難民におるの隠さんのやな
【腐女子カプ厨】進撃の巨人雑談4519【なんでもあり】
http://mastiff.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1432342337/ mln– @shymln
エルドかっこいいな…エルドと付き合いたい(顔覆い)
18:33 - 2015年5月23日
-------------------
搾乳パクラー瀬早めろんうんこ
882 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! sage 2015/04/18(土) 17:38:01.39 ID:1vnQXrCn0
メロンは自分が2を出入りして愚痴ったりヲチったり難民に入り浸ったりしてることを本当に隠さないんだねwww
128 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:25:37.94 d
129 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:25:41.76 d
130 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:26:07.37 d
131 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:26:11.13 d
132 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:26:37.79 d
エレン厨キチガイ婆
124 名無し草 sage 2015/04/28(火) 18:42:17.17
>>119,123
ほんまやひどい!;;;;
452 名無し草 sage 2015/04/28(火) 20:03:06.21
イサヤマングリジェル描いてや;;
863 名無し草 sage 2015/04/29(水) 11:28:16.35
イサヤマンが美人や…いうたわいの春馬ジェルなんで白目向いちゃったん?;;
937 名無し草 sage 2015/04/29(水) 11:37:30.07
マギーの逆壁ドンジェルにやって欲しい;;
25 名無し草 sage 2015/04/29(水) 11:46:03.31
ふええ;;
244 名無し草 sage 2015/04/29(水) 14:16:27.09
>>227 かわええねかわええね;; ジェルすごい看病したんやろなあ
301 名無し草 sage 2015/04/29(水) 14:30:00.36
ああん;;
378 名無し草 sage 2015/04/29(水) 14:39:33.76
はあん;;ドラゲナイ
774 名無し草 sage 2015/04/29(水) 23:55:12.89
>>758 なんやの意地悪ババアやな…わいめっちゃ平和的なレスしたやん泣いちゃうで;;
133 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:26:41.38 d
好きになったほうが、
by sekaE
負け。
お久しぶりです。リア友にホモの二次創作してるのがバレた私です。
リヴァモブ♀要素大有りです。
昔はエレンに一途だったのに今では来る者拒まずろくでなしな兵長を好きなエレンの報われない転生リヴァエレ。
兵長、きっとあなたは後悔する。
こんな話ばかり書いてますが私はエレンが一番好き。
--------------------
まょこ エレン、エレン、エレン!!!! 読みながら号泣てしまいました・・・・・・・・。゚(゚ノД`゚)゚。 リヴァイさん酷い!! でも、エレンには、リヴァイと幸せになって欲しいです(。-´ω`-) エレンを幸せにできるのは、兵長だけだから・・・・・・
2015-05-12 03:05
にゃお エレンを幸せにしてあげて下さい。兵長は死ぬ程後悔して頂いた後に死ぬ程頑張って頂いてエレンを幸せにして貰いたい…と思います。
2015-05-11 22:01
toa リヴァイさんを後悔させてやってくださいぃぃいいっ 。・゚・(ノД`)・゚・。
2015-05-11 10:56
陸 どうか、エレンを幸せにしてあげてください(;_;) エレンが幸せなら相手は問いませんので…ただ兵長にはどちらにしても相応の報いがあって然るべきだと思います。 それとリアばれ、御愁傷様でした……
2015-05-11 09:25
凛咲 エ、エレンを幸せにしてあげてくださいぃぃぃぃぃ( ; ; ) ただし兵長以外で というか後悔する兵長を私は見たいです(笑) どんな結末であれ続きをお待ちしております。
2015-05-10 21:32
134 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:27:06.62 d
芦菜> 陸さん はい、アウトですよね(^◇^;)勿論リヴァイさんもこのままじゃ済みませんよw暫くどちらも苦しいターンです(⌒-⌒; )
2015-10-22 19:03
芦菜> ハルさん もうスーパーアウトですよね(^◇^;)ケツバットですかね?w
2015-10-22 19:02
芦菜> MJカリンさん ああっ、対リヴァイ氏最強女子組ですねw私も一緒に交渉しますw
2015-10-22 19:01
芦菜> やえさん 勿論リヴァイさん、今のままじゃ済みませんよw
2015-10-22 19:00
陸 読了後、前作読み返してbeloved最後の二人の約束にうわあぁ(泣)となりました。 リヴァイさんも辛いんだろうけど、恋人がいることも相手も分かっているのにあれはアウトです…。
この後大人組がどう動いてくれるのか楽しみにしています。エレンがドン底なら次はリヴァイさんを…!
2015-10-22 12:36
ハル リヴァイさん!アウトーーーー!!
2015-10-22 07:04
MJカリン みんなでリヴァイさんフルボッコにしたら思い出す? ちょっとハンジさんやペトラさんと相談してきますっo(`^´*)
2015-10-22 01:49
やえ 早く!リヴァイ氏に八つ当たりを早く!!( ノД`)…
2015-10-21 22:45
135 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:27:10.40 d
136 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:27:35.59 d
137 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:27:39.38 d
エ「兵長…まさか、リヴァイ班にあのこと言ったんじゃないでしょうね?」
リ「あ?言ってねぇよ。んなことして一体俺になんの得があるって言うんだ?…それより、ナイフなんか持ち出して何をするつもりだ」
エ「何をするかですって?あなたには殺しても殺しきれない恨みがある…オシッコを見られ…オシッコをかけられ…そしてっ…俺の大事なモノを汚した恨みが!」
リ「あぁ!?」
エ「覚悟してください…あなたにとってこれまでの人生で最も恐ろしく!最も恥ずかしい夜にしてやる!!」
リ「おっ、おい、ちょっと待て!なんでナイフ握り締めながら俺のイチモツ駆逐してやるみてぇなツラしてやがんだ、てめぇ!」
エ「いいからちょっと黙っててくださいよ!!」
リ「おい、エレン!落ち着け!エレン!エレエエエェェェンッ!」
138 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:28:04.87 d
ー数分後ー
エ「はい。これにしてください」
リ「…あ?」
エ「あ?じゃないですよ。さっさとオシッコしてくださいよ。この後訓練があるんですから」
リ「(…よかった!あのナイフはエレンのケツに数々の不貞を成した俺のエリンギをバッサリするためのものじゃなかったのか!)」
エ「溢さないようにちゃんと飲み口の所も切ってあげたんだからとっととやってくださいよ!」
リ「…わかった(バサァッ!!)」
エ「なっ!?なななっなんでズボン脱ぐんですか!」
リ「やってやるよ。見たいんだろ?さぁ、その木筒を持っていろ。小便が出るところを見せてやるよ」
エ「なんで!?なんで兵長はそんなに堂々としてるんですか!?恥ずかしくないんですか!?」
リ「おら、持ってろよ。出してやるから」
エ「なんで俺が持つんですか!自分で持って出せばいいでしょ!」
リ「だめだ。俺は右手を股間に、左手を腰に添えながらでねぇと上手く小便ができねぇ。じゃねぇと、そこら中に小便が飛び散ることになるぞ」
エ「なんだよ!なんなんだよあんた!チビオヤジのくせに!チンコ出したくらいでえらそうにしやがって!!……逃げちゃダメだエレン!俺はやられたらやり返す男!そうだ!いつもいつも兵長に負けてられないっ!!(バサァッ!!)」
リ「!?てめぇ、なんでパンツごとズボンを脱いだ!?」
エ「なんでですって?あんたにオシッコぶっかけるからに決まってるでしょ」
リ「俺に小便をぶっかける!?俺も今からするのに!?…ハッ!同時にするのか!?(頭の中は完全に69でぶっかけ合いの図)」
エ「さぁ!恥ずかしがってください兵長!」
リ「クソッ…何してるのかわからなくなってきやがったが…一つだけ言えることがある…俺の人生にこんな場面(アブノーマルプレイ)があるとは夢にも思わなかった!…よし、エレン。もう御託はいらねぇ。やるぞ(ドサアッ!!)」
エ「えっ!?ちょ、なんっ、えっ!?ええええっ!?なななななっなんで押し倒すんですか!?なんで俺の顔跨ぐんですか!?なんでお互いのチンコがお互いの顔のまえにあるんですか!?なんでっ!?」
リ「さぁ出せエレン!俺の顔中に小便をぶっかけろ!俺もお前にぶっかけてやるぞ!小便と言わずザーメンまできっちりとな!」
エ「えええっ!?なんで!ちがっ、そうじゃなっ、えっ!ちょっ、待っ…………アッー!」
139 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:28:08.40 d
エル「……では、エレン・イエーガーくん。リヴァイの秘書というのは誰よりも辛く何よりも厳しい激務になると思うが、君ならリヴァイの意に沿う立派なルーキーに成長してくれると信じているよ。存分に我が社で君の能力を発揮したまえ」
エレ「はいっ!スミス社長!非力ではありますが、オレ…じゃなかった!わ、私は今後もスミス社に貢献できるよう全力で頑張ります!」
エル「うん、エルヴィンでいいよ。それに私の前でも堅苦しくしなくていい。これからも一緒に頑張っていこう」
エレ「はっ、はい!エ、エルヴィン社長!では失礼します!」
エル「……彼はいい子だね」
リヴ「そうだろ?」
エル「とても真っ直ぐで汚れのない目をしている。今はまだ少し頼りない部分もあるが努力家だ。新たな業務にもすぐに慣れるだろう」
リヴ「当たり前だ。オレが直々に躾けてるんだからな。…それと、エレンがわざわざオレの側で働けるよう計らってくれたことに感謝する」
エル「よせよリヴァイ。君が妻としてパートナーとして選んだほどだ。エレンくんは見た目も君好みで美しいし、彼の秘められた能力もきっと我が社に酬いてくれると信じているんだ。
…何より珍しく君からの頼みだったからね。このくらい造作もないさ」
リヴ「お、おいやめろ…触んじゃねぇ…会社だぞ。誰か来たら…」
エル「私の許可が降りるまで社長室には誰も入って来れない。知ってるだろ?」
リヴ「よせっ…オレはもう決めたんだ…エレンがオレの生涯のパートナーで、オレの妻だ。オレはもうエレン以外とは誰とも」
エル「誰とも…なんだい?寝ないとでも?困ったな…私は君のためならなんでもしてあげられるが、なにもなかったことにすることだってできる。例えばエレンくんの人事を今すぐ取り消し、君とは別の部署に配置することもできるんだよ?」
リヴ「おい、エルヴィン…!てめぇっ…!」
エル「…いい目だ。ゾクゾクするよ…ほら、リヴァイ。こっちに来なさい。エレンくんのためなら、なんだってする…そうだろう?」
リヴ「…エルヴィン…」
エル「さぁ、早く…」
エル「…ここで私を抱くんだ」
リヴ「えええええー…」
140 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:28:33.99 d
ミ「アニ…!アニを使うのはどうでしょうか…!?ロッドにアニを喰わせればエレンを犠牲にする必要はなくなる…!」
リ「…そうだな…それが一番の最善策だと俺も考えていた」
エ「そッ、そんなのだめですよ!」
リ「なぜだ?奴はお前ら、引いては人類にとっての裏切り者だ。そして奴は俺達の仲間を沢山殺している…償いとしては上々じゃねぇか」
ミ「エレン…私もそう思う…ので、巨人になってアニをロッドの口に投げて放り込んで!時間稼ぎならなんとかできる!」
エ「そんなの…そんなの駄目だ!俺が犠牲になればいいんだ!アニは沢山の人を殺した…だけどあいつにはあいつなりの正義と事情があったはずなんだ…!」
リ「…なぜそこまで奴を庇う?共に過ごした3年で築かれた友情ってやつか?それとも…あの女になにか特別な感情でもあるってのか?」
ミ「…ッ!そうなの?エレン!アニが…アニが好きなの!?」
コ「今はそんなこと話してる時じゃねーだろ!」
エ「そんなんじゃない!!もともと俺は好きで巨人の力を手に入れたわけじゃないんだ!この力を元の持ち主に返して人類を救う!それが最善策だ!」
リ「エレン」
エ「なんですか兵長!俺の意志はもう決まってます!だから…だから俺が奴に喰われて…んッ?!」
リ「もう黙れ」
(エレンを引き寄せておよそ5分のディープキス)
エ「……ッ、はッ……はぁッ…へい、ちょ…」
リ「いいかエレン。俺はお前を失う気はさらさらねぇ…いいから黙って俺に全部投資しろ…お前ごとな…」
エ「……はい…」
ミ「(白目)」
141 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:28:37.82 d
エ「アルミン!俺…病気かもしれない」
ア「えッ!?どうしたの急に!どこか体調が悪いの?」
エ「それが…」
ア「うん」
エ「朝起きたら…ちんこからなんかネバネバした白いのが出てた…パンツがベトベトになるくらい」
ア「…」
エ「最初は、この年になって漏らしちまったのかと焦ったんだけど、どう見ても小便じゃねぇし…」
ア「うん…」
エ「俺すげぇ怖くなって…もしかしたら巨人化と関係があるのかもしれないし…けど、兵長に報告したら団長にも伝わるだろ?
そこから憲兵にまで知られちまう可能性だってあるし…そしたら人類への脅威だとか言われて今度こそ殺されちまうかもしれないし」
ア「そんなことでエレンが殺されるわけがないじゃないか」
エ「え?!だ、だって異常だろこんなの!」
ア「異常なんかじゃないよ。エレンは初めてだったんだね?おめでとう。男になった証だよ」
エ「えっなに言ってんだアルミン!それじゃまるで今まで女だったみたいじゃないか!」
ア「エレン、落ち着いて!これは健全な男なら誰だって通る通過儀礼だよ。エレンや僕だけじゃない、ジャン達だって経験してることなんだ」
エ「そッ、そうなのか?ミカサも?」
ア「ミカサは女の子でしょ。エレンの言うその…男性器から出た白くてネバネバしてるのは精液で、エレンがその体験が初めてならそれを精通って言うんだよ」
エ「せいつう」
ア「うん。これからは定期的にその性欲処理をしなきゃならないんだけど、エレンはその調子だと自慰も知らないよね?」
エ「知らねぇ…これからどうしたらいいんだ?いつも寝て起きたらパンツにその精液が付いてたら洗うの大変だし、毎朝こんなことじゃ兵長に怒られちまう!エルドさんやグンタさんにも笑われちまう!」
ア「大丈夫。兵長も怒らないし先輩たちだって笑わないよ。エレンがパンツを汚さないようにするために自慰行為が必要になってくるんだよ。まぁ…女の人を相手にして解消する手もあるけど、
僕らはまだ娼館に行けるほどの給金もないからね…僕たちぐらいの年代だと自分で処理してるのが大半だよ」
エ「なんだよそれ…ちッ、ちんこから精液出るのになんで金払って女に処理してもらわなきゃいけないんだよ…そんなの嫌だ!」
ア「僕はジャンにしゃぶらせて出してるけどね」
エ「えっ」
ア「えっ」
142 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:29:03.49 d
アーケード版『進撃の巨人』
名前:エレン・イェーガー
年齢:15才
性別:男
誕生日:3月30日
身長:170cm
体重:63kg
出身地: ウォール・マリア南端シガンシナ区
格闘スタイル:対人格闘技、刺殺
好きなもの:チーズハンバーグ
嫌いなもの:服を破く奴、裏切る奴、人間の姿をした害虫
特技:拐われること
キャッチコピー:人類の希望、あざとイェーガー
必殺技:(技名/セリフ/説明)
・駆逐/「駆逐してやる!この世から…一匹残らず!」/スタンダードな対人格闘技。カウンターヒットすると5連コンボに持ち込める。
・駆逐改/「頑張ってお前らができるだけ苦しんで死ぬように努力するよ」/5連コンボ成功時に発動。6連目がクリティカルヒットした時に10連コンボに持ち込める。
・駆逐零式/「このッ…裏切りもんがあああああ!!」/ゲージMAX時に→←ABD同時押しで発動。 巨人化する。
・真駆逐/「死んじゃえよクソ野郎!!」/刃物で襲いかかる。一撃必殺。
超必殺技:
・へいちょ/「責任…取ってくださいね…」/リヴァイを強制召喚(ほぼ勝手にリヴァイが現れる)してエレンの代わりにリヴァイが戦う。相手のゲージを瞬時にして0にする。
挑発:「服が破けちゃうだろ!!」
勝利:1「このッ…腰抜けどもが!!」2「やった!討伐数1!」
敗北:「俺が…選択を間違えたばっかりに…」
143 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:29:07.12 d
【 エレンジェル 〜 咽び泣く幼い性器 1 〜 】
「ぐッ…!ぐぐうッ…!がッ…!!」
猿轡を噛まされたエレンの薄っすら紅く色付いた唇が悔しさに歪む。
睥睨する鋭い金目の眼差しの先には、ニヤニヤと表情を緩ませ、全裸で逆さに縛られたエレンを見下ろすダリス・ザックレーの姿があった。
股を左右にがばりと開かれたまま全身を固定されているエレンの恥部はまだ明るい陽射しの下に曝され、幼さを残す皮被と薄桃色の性器は縮み上がったままの形でザックレーの前に曝け出されている。
男の象徴とも言うべきそれは、エレンの殺意に満ちた眼と殺気に反し、余りにもトートイ。
「どんな気分かね?エレン・イェーガーくん。人類の希望と呼ばれた君ももはや用無し、ただの塵じゃ。こうして私のオブジェとしてまだ息をしていることを光栄に思うのだな!」
「うううッ…うぐッ…!」
かつて自らの手を食い千切り巨人化していた丈夫な歯は、今や猿轡を噛み締めるただの道具でしかない。
自分の置かれた情けない姿に、そして目の前にいる憎むべき老人に、エレンの殺意は益々増幅していく。
「ん?なんだ?その目は。私のおかげで未だ生き長らえることを許されている身でありながら、生意気な…」
途中からは半ば呟くようにぶつぶつと文句を溢しながらもザックレーは側にあったランタンの中から蝋燭だけを取り出し、ゆらゆらと火を灯すそれをエレンの開かれた白く小振りな尻に近付け、すぼまった慎ましやかな尻の穴にゆっくりと傾けた。
視界の端にその光景を留めたエレンの目が見開かれる。
ぐうぐうと言葉にならないくぐもる声を上げ、自由にならない体を必死で動かそうと試みるが、頑丈な手枷と全身を拘束する器具はびくともしない。
それどころか拘束する器具は更にエレンの若くしなやかな体に食い込み、ますます加虐心をそそるザックレーを喜ばせた。
手元にある蝋燭が溶け、熱を持った蝋がエレンの淡い色の肛門目掛けてポタリと落下する。
そのあまりの熱さにエレンから瞬時に殺意が消え、代わりに一気に言い様のない恐怖が襲い掛かり、エレンは喉元を仰け反らせ、両目をカッと見開いた。
144 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:29:32.91 d
【 エレンジェル 〜 咽び泣く幼い性器 2 〜 】
「あ゛っっっづっ!!あ゛あ゛っっ!あ゛か゛あ゛っ!!」
「ダハハハ!愉快愉快!そぉれ!ケツの穴がどんどん蝋で固まってきとるぞ!?」
ザックレーは、エレンの肛門の入り口のすぼみに溜まっては固まってゆく蝋を爪でカリカリと削って払い除け、また現れた皺の合間までをも丹念に埋め尽くすかのように、
再び蝋燭を慣れた手付きで微妙に移動させ、また肛門を蝋で固めては爪で剥ぎ落とす行為を繰り返した。
そうすることで絶え間無い熱がエレンの小さなすぼまりを攻め立てる。
時にはザックレーの節くれ立ち老いた指先が直に肛門を引っ掻き、エレンの内部に細やかな変化を見出だしていった。
ふるふると震える小さな性器が徐々に主張を始める。
なんなんだと自らに問うまでもない、この感覚は知り尽くしたもの…勃起である。
ー 違うッ…こんなのは違うッ……! ー
己が反応を必死に否定しながらも、あ゛ッ、あ゛ッ、と掠れた声を上げ始めたエレンの先程までとは違う色の混ざり様にザックレーはニタァと頬を持ち上げた。
「…そう言えば君はリヴァイの情婦だったな。ここにリヴァイのイチモツを夜な夜なくわえこんでいたのじゃったな?
こんな拷問では生温いかね?……いや、この下品で厭らしい腰のくねらせ方からして、これは拷問ではなくご褒美になっておるかのう?」
空いた手で顎髭を擦っていたザックレーはふむ…と嘯くと、その手をエレンの尻に伸ばす。
親指と人差し指でエレンの肛門をぐっ!と左右に拡げると、それでもひくひくと痙攣するすぼまりに火を灯したままの蝋燭を頭から一気に突っ込んだ。
火の消えた蝋燭が先端から煙を燻らせながらずぶずぶとエレンの肛門から腸内に姿を消していく。
エレンは獣のような叫び声を上げながら、射精することなく死に際のゴキブリのように足の指先まで全身隈無くびくびくと痙攣させて拷問が始まって初めての絶頂を迎えた。
火を灯したままエレンの直腸深くに埋め込まれた蝋燭は、腸液によって完全にその役目の戸張を落とし、結合部分から淡い噴煙をくゆらせるだけであった。
145 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:29:36.57 d
【 エレンジェル 〜 咽び泣く幼い性器 3 〜 】
蝋燭の煙か、巨人化能力を持つエレンの特異な体が回復を遂げる際のそれか。
暫しの間ザックレーは、蝋燭の太さの形にぴっちりと拡がりヒクヒクと蠢く紅く熟れた肛門を興味深く眺めていたが、
逆さに拘束されたエレンが半ば白眼を剥いて涎を垂らしながら意識を飛ばしているのを確認すると、ブーツの先でエレンのこめかみ辺りを蹴り上げて飛んだ意識を現実に引き戻してやった。
虚ろなエレンの目がさ迷い、冴え冴えとした目で見下ろしてくるザックレーを視界に捉える。
その目はエレンを死に急ぎと言わしめるほどの狂気とも言える獣の眼差しではない。ただひたすらに快楽を求め続ける雌の獣の目であった。
「うぐぅッ…ぐうぅッ……」
「まだ齢15じゃと言うのにとんだ売躱な体をしよって…そんなに蝋燭は気持ちよかったか?ん?わしの指二本分もない太さじゃぞ?」
「んッ!んぐッ!ぐぎぎぎいいいいぃッ!」
肛門の奥深くまで挿し込んだ蝋燭をヌウウゥゥ…と引きずり出し、抜ける寸ででまたヌブヌブと挿入する。
何度もそれを繰り返すうち、エレンの呻き声は徐々に色を含んだものに代わり始め、ザックレーの手が生み出すピストン運動に合わせるように腰を蠢かし出す。
エレンの意に反して勝手に前後左右にゆるゆると動く腰は艶かしくザックレーを誘った。
146 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:30:03.02 d
【 エレンジェル 〜 咽び泣く幼い性器 4 〜 】
蝋燭を引き抜くたびにそれに吸い付くようにぬぷぬぷと盛り上がって山の形を彩る肛門は、挿し入れるとまた容易に異物を迎え入れ呑み込み窪んでいく。
ピストン運動を素早くしてやると肛門の入り口がその動きに連動して盛り上がり窪むという動きを繰り返して益々ザックレーを歓ばせた。
「ガハハハハ!!エレンよ!お前の尻の穴は糞をするだけでは物足りんようじゃな!ほぉれもっと腰を振り乱して踊れ踊れぇ!ダーッハッハッハ!」
「んごッ!?ぐごごごごぼぉッ!いぎっ!いぎっ!ひぎいいいいーーーーっっっ!!!!」
抜き挿ししては直腸に深く突っ込んだままぐりぐりと大きな円を描くように蝋燭で内部をかき回す。
腸液が入り混ざった結合部分からはブチュブチュとはしたない音を立てて汁を飛び散らせた。
エレンは逆さに固定されM字に足を開いたまま狂ったように腰を振り、後頭部を何度も背後の柱にぶつけては下半身の疼きから解放される瞬間を待った。
出したいッ!射精したいっ!思いっきりぶちまけたいっ!最高の快楽を早くっ!
涙と鼻水と涎を垂れ流しながら目を見開いてガクガクと自らの腰を揺さぶる。
全身がっしりと拘束された体で唯一エレンの思い通りに動かせるのが下腹部から尻にかけてのか細いラインのみ。
完全に勃起したぺニスからは先走りのカウパーがだらだらと糸を引き、縦横無尽に揺れ動くぺニスは時にエレンの腹を叩きながらもエレンの桃色に染まる体のあちこちを思う存分透明の粘液で汚した。
続く
147 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:30:06.76 d
某リジに長期間に渡り粘着しているルリンチ虎糞
724 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! sage 2015/05/02(土) 02:43:01.55
>>722 難民でまで暴れて恥ずかしくない?
108 名無し草 sage 2015/05/02(土) 02:15:24.46
あかん高尾みたんのリジ草や
ドエロのルリジリ見た後やと生温いにも程があって大草原不可避や
735 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! sage 2015/05/02(土) 15:44:11.01
このスレで犬か毛玉の主しか描かないって笑われたら人間体主の単体表紙の本出すし
ドエロは兵受けしか描かないって笑われたら兵主18禁ログ投稿するし温くても18禁本出すし
本当に孝雄身たんは強がるのが大好きでダンシング楽しませてくれる弗だよな
12 Classical名無しさん sage 2015/05/02(土) 19:17:36.11
そんなにエロ描きたくないなら無理して描かなきゃ良いのにずっとエロ原稿描きたくないエロ原稿描きたくないって言っててなんなんだろこの人…結局固定じゃなくて逆カプ推しなんでしょ。さっさと逆カプに移動してエロでも何でも描けば良いのにな
206 名前:Classical名無しさん[sage] 投稿日:2015/06/19(金) 10:09:47.81
まあそれでもAB固定を装いつつ裏垢でA受けどエロ描きまくってるあの人よりずっとマシだけど
488 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! sage 2015/07/26(日) 01:49:07.62
>>423 高尾見が兵主本命はないは
兵受けエロの気合いの入りようと兵主エロのやる気の無さを見たらね
506 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! sage 2015/07/26(日) 07:35:56.40
>>502 団兵厨乙
148 :
名無し草 (ワッチョイ abb6-Iq2g)
2016/04/01(金) 23:30:24.14 0
勉強疲れたはー
お芋さん食べるで
149 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:30:32.11 d
某リジに長期間に渡り粘着しているルリンチ虎糞
395 Classical名無しさん sage 2015/09/27(日) 14:10:24.05
火花で予約してた分厚い本のサークルが個人サイトの裏で逆カプエロ作品大量に上げてるのを知って予約キャンセル申請した
いくらプロフでABメインの雑食と言ってたって支部投稿作品はABだけだし
ツイもサイトもAB固定みたいなこと書いてるから騙されたよ…
道理でこの前から作品ブクマもRTも激減してたわけだよ
402 Classical名無しさん sage 2015/09/27(日) 17:11:36.54
描く方も雑食ならツイと個人サイトのプロフにも雑食と書いておけばいいんだよ
固定と思ってほしいからAB専門垢でーすと言いつつ裏に大量のBAエロ隠しているんだろう
431 Classical名無しさん sage 2015/09/27(日) 23:56:07.99
雑食なら堂々と支部でもBA作品上げたらいいのになんで隠すんだろうね
逆カプ萌えより固定厨が落としてくれるお金の方が大事なのかなやっぱり
↓虎糞↓
168 名無し草 sage 2015/10/06(火) 10:06:07.38
3日連続で同じ本がワンツーやは信者の多いサークルはすごいは草
4位・11位の刀本はぼったくリリやなぁ
裏垢でリリ受けエロ絵描いとった5位のリジ専業の本はお手頃価格やな
720 名無し草 sage 2015/10/07(水) 09:49:06.00
ルリ厨は高尾身たんがどれだけ多くのサークルと海鮮に嫌われとるか知らんのやな
150 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:30:36.09 d
ルリ晒しミンチ=エレナの特徴
・極度のリジ厨、特に魚食えないが大好きっ!!!!!
・リジが貼られるとルリを貼り返す
・支部のみならず個人サイトやメアドまで晒す
・1月に壁博での殺害予告をしたババア=エレナ
・ルリは瀬早めろんの牛ジェルをパクった!と言い張るが全く似てない
・口癖はルリ婆(※ババアではなく婆と表記する)
・リジが命より大事で日々スレ荒らしに奮闘している30代後半喪女
・リジが晒されると荒らすがジリが晒されてもスルーすることから同じリリ受けが晒されていることには興味を持たない
・↑を指摘されると翌日からジリも晒すがリジだけは絶対に晒さない
・このルリンチババアがいる時はミンチがミンチコピペをしない……ルリンチババア=ミンチ=エレナ確定
・↑を指摘されるとミンチコピペをして時間を置いてまたルリジリ晒しをするわかりやすい荒らしミンチ=エレナ婆
151 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:31:02.02 d
8 名無し草 sage 2015/03/16(月) 02:22:03.60
アズ(魚食えない)@リプ放置すいません...ありがとございますまた来週!
2015年3月16日 12:01am
-------------
>魚食えないのブログや
>
http://blogs.yahoo.co.jp/jsay367gugdsg/folder/75635.html ;
>るーる草が痛々しいやろ
-------------
こんな腐れブログに来てくれてありがとう!!
るーる
1 訪問した際にはコメントを残してください
2 画像を貰う時はコメ&ポチ忘れずに!!
3 荒らしは禁止
4 ファンポチしてくれた人はゲスブか報告所へGO!!
以上です
守れない人はこないでください。
152 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:31:05.76 d
153 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:31:34.61 d
IPアドレス 153.189.239.10
ホスト名 p69010-ipngn200301toyamahon.toyama.ocn.ne.jp
国 日本
都道府県(CF値) 富山 ( 95 )
市区町村(CF値) 富山市 ( 55 )
接続回線(CF値) Bフレッツ ( 95 )
154 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:31:45.22 d
155 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:32:10.22 d
156 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:32:13.86 d
エレンは女遊びの激しい部類の人間だ。それ故、セックスフレンドは何人かいたりする。
それでも社内で変な噂がたたないのは、大人になって相手を選ぶ目が肥えたからだろう。
この女性ならば面倒なことにはならないと思った相手としか夜を共にしない。それは主に年上の女性が多かったが、それ以外でもエレンは女性から誘われることが多く、異性から好かれることが多い。
一番面倒なのは年下で、自分のことを可愛いと思っている女だ。そういう子には「君にはもっといい男がいるよ」と困ったように笑って言えば、なんやかんやあっても最終的には丸く収まってくれる。
「イェーガーさん、今夜空いてますか?良かったら、ご飯でも一緒にどうかなと思って…」
少し頬を染めて上目遣いで窺う年下の女性社員は可愛く、不安そうに身を縮ませるものだから胸が寄って柔らかそうに弾んだ。あー、ヤりてぇな。その胸に顔を埋めたらどれだけ心地よいかと想像すると、今すぐにでも誘いに頷いてしまいそうだ。
しかし、この子は明らかに“彼女”という地位に拘るタイプだろう。エレンは面倒なタイプだな、と心の中で溜息をつく。
「あー、ごめん。今日はちょっと約束があって」
眉を下げて心底申し訳なさそうに謝る。
本当は約束などなかったし、できればその柔らかそうな体を堪能したかったが、秘書課のお姉さんの家にセックスをしにいく予定ができた。たった今。
「そうなんですか…残念です」
「ごめんな。また今度、皆でどこか食べに行こう」
「はい…」
決して“二人で”という約束はしない。下手に期待させて踏み込んだ関係を少しでも築いてしまえば面倒な事になるのはわかりきっている。
157 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:32:55.35 d
彼女は“皆で”と言ったことに少々不満げな顔を見せたが、すぐにその場から去ろうとはしなかった。エレンの顔をじっと見つめてくる彼女に、まだ何か用があるのかと首を傾げて見せる。
「何?」
「イェーガーさん、受付の先輩と付き合ってるって本当ですか?」
拗ねた口調で問われ、エレンは「は?」と聞き返した。
確かに受け付けには一人、体の関係を持つ女性がいたが…どうやら、二人で会っている所を社員に見られていたらしい。
「いや、付き合ってないよ。ああ、たぶん飲み会が終わった後で、帰る方向が同じだったから送っていった時じゃないかな」
にっこり笑って答えると、彼女は「そうですか」と言って頭を下げて去って行った。
受付の子と遊ぶのはしばらくやめておこう。今日行こうと思っていた秘書課のお姉さんの所もやめて、社外のセフレの家に行こうかと思案し始める。
けれど、考えるのも面倒だ。学生の頃は良かった。何も考えずにセックスできたし、責任だって今ほど重くはない。
あの頃は感じなかった色々なものが重くのしかかって来て、呼吸がし辛くなる。息苦しくて生き苦しい。
しかし、そうは思っても、まあどうにでもなるか、と思ってしまう程にはエレンは楽観的だった。だからこそ、こんなにも簡単に“下”を味わうことになってしまったのだ。
158 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:32:59.05 d
今日は金曜日で、本来ならば喜んでセフレの家へと向かうところだが、生憎と飲み会の予定が入ってしまった。
なんでも、今日の飲み会は他の課の社員も一緒にやるらしく、大人数だった。これなら途中で抜けてもばれないだろう。セフレには途中で抜けてそっちに行くから、と連絡をいれておいた。
しかし、エレンの隣をずっとキープしているのは先日ご飯にでも、と誘ってきた女の子で、今日は絶対に逃がさないと言うオーラをひしひしと感じる。
店についた時点で、「鞄こっちに置きますね」と彼女の後ろに置かれ、人質のようにとられてしまった。
こうなったら酔いつぶして隙を見て帰ろう。…と、思ったが、彼女は酔っても面倒なタイプだったらしい。
豊満な胸を押し付けられ、甘えた声で名を呼ばれる。周りにいる男性社員も羨ましいとばかりに視線を向けて来て、今日は最後までちゃんと面倒を見ろよ、とまで言ってくる始末だ。
「イェーガーさんも二次会いきますよね?」
「あー…悪いけどオレ、これから約束があるんだ」
「なんで!?やっぱり女ですか!?」
「いやあの、」
まぁ、女には違いないんだけど。
彼女は離さないとばかりに腕を掴んでくる。
もういい加減にして欲しい。体だけの関係で面倒なことは絶対に言わないと言うのならば喜んで抱く。こっちは胸を押し付けられ、足に手を置かれ、早くセフレでこの欲を発散したいと言うのに。だが、彼女に手は出せないのだ。本気にされては困るから。
「あのさ、本当に離して」
「嫌です!行かないでください!他の女の所になんていかないでください!」
「…いい加減に、」
「おい、離してやれ」
泣きそうになりながら喚く彼女にいい加減にしろ、と言いかけた時、後ろから声がした。周りははらはらしながらエレン達を見ていたので、無遠慮に彼女の腕を掴んだその人にエレンはぎょっとした。
「か、かちょう…」
彼女に課長と呼ばれたその人は彼女の上司だった。リヴァイ・アッカーマン。別の課のエレンでもその人がどれだけ優秀なのかを知っている。有名な人だ。
159 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:33:26.23 d
「こいつは俺と約束があるんだ」
エレンは、えっ、と声を上げそうになる。
「どうして課長がイェーガーさんと…?」
「大学の後輩だ」
本当に?と彼女がエレンの顔を見上げてくる。リヴァイがどういうつもりなのかはわからないが、これで腕を離してもらえると言うならうまく合わせるしかない。エレンは曖昧に笑って頷いた。
「…わかりました」
彼女もリヴァイに言われたら従うしかないのだろう。渋々ながらも腕を離した彼女の顔は明らかに納得していなかったが、エレンはホッとした。
そうして、二次会へ行くメンバー 早くこの場を去りたいとばかりに頭を下げる。が、
「っ!」
ぐい、と強い力で腕を掴まれて足が止まる。先ほどまで掴まれていた柔らかい手じゃなくて、固くて大きな男の手だ。
「おい、助けてやったんだ。少し付き合え」
「あのオレ約束があるんですけど…」
「キャンセルだ」
それを決めるのはお前じゃねぇ!と叫びそうになるのを堪えて、じっとリヴァイを見つめる。男に腕を掴まれても全く嬉しくない。エレンは柔らかくてすべすべで、暖かい肌が好きなのだ。
160 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:33:29.91 d
リヴァイは片手で器用に煙草を取り出すと、一本口に咥えるとキンッといい音を立てる金属製のオイルライターで火をつける。煙草吸うんだ、と単純な感想が頭に浮かんだ。
「…、吸い終わるまで待ってやる」
その間に女に連絡しろと言うことなのだろう。リヴァイは、エレンのこれからの約束がセフレに会いに行ってセックスをするだけの大した物ではないことだと気が付いているのだ。
試しに腕を引いてみてもビクともしない。力であってもこの男には勝てそうにない。エレンは諦めてスマートフォンを取り出すと、女に電話をかける。目の前で電話をさせるのだから性質が悪い。
相手が電話に出る間、リヴァイは余裕で紫煙を吹かす。様になっているのが少し腹立たしい。
エレンは煙草を吸わない。女が煙草を吸った後はキスしたくないと言ったからだ。まぁ、エレンも特に吸いたいとは思わないし、だからと言って喫煙者を責めるようなことも言わない。単に興味がないのだ。
「…もしもし。悪い、今日は行けねぇわ。…うん、また今度」
電話越しの会話はたったのそれだけだ。相手もその辺は割りきっているから文句を言われることもない。そう、この程度の約束なのだ。
エレンが溜息をつきながらスマートフォンをスーツのポケットにしまうと、リヴァイはちょうど足で煙草を踏み消していた。
「行くぞ」
そしてそのまま強引に腕を引かれて歩き出す。
どこに行くのか全くわからない。リヴァイとは本当に接点がなかったし、これから飲み直すと言われたって決して楽しくはないだろう。
161 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:33:55.53 d
「どこに行くんですか?」
「ついてくればわかる」
「はあ…、とりあえず手を離してもらってもいいですか?」
男が腕を引かれて歩くのはおかしいだろう。逃げるつもりはないから手を離して欲しい、と思っているのにリヴァイは離そうとしなかった。
一体何だと言うのだ。リヴァイのことは周りの評価と自分の想像でしかわからない。
先ほど言ったような余裕があって、仕事ができて、金も持っている。それは周囲とエレンの共通のリヴァイへのイメージだ。いわゆる完璧。
だが、今目の前にいる男はどうだ。強引で、人の約束をキャンセルさせるような非常識さ、おまけに煙草も吸う。
社内は全面禁煙だから、どれだけの人がリヴァイが喫煙者だと知っているのかは知らないけれど、少なくともエレンは知らなかったし、イメージもなかった。
思っていたような完璧な人ではなさそうだ、という考えはエレンを油断させた。
腕を引かれたまま連れてこられたのは結婚式なんかもできる高級そうなホテルだった。
もしかしてここのラウンジで飲むのだろうかと少しわくわくする。こんな場所めったに来ることができないし、酒は美味いに決まっている。
しかし、連れてこられたのはホテルの一室だ。リヴァイはこのホテルをよく利用するのか、それとも元々部屋をとってあったのかはわからないが、名前を言えばすぐに鍵を渡された。
「あの…?」
オレは何故ここに連れて来られたんだ、と途方に暮れる。
162 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:33:59.22 d
ようやっと離してもらえた腕を摩って、リヴァイに声を掛けると、彼は何食わぬ顔で上着を脱ぎ始めた。
「エレン」
「えっ、はい」
「お前、先に風呂に入って来い」
「は?どうして風呂に入る必要が?っていうかオレはどうしてここに連れて来られたんですか?」
「うるせぇ。いいから入って来い。俺は潔癖なんだよ」
こちらの質問は全く無視で、とにかく風呂に入れと言われる。リヴァイには何を言っても駄目だということはこの短時間でよくわかった。
エレンは、まぁ、こんないいホテルの風呂なんてめったに入れないからラッキーくらいに思うことにして、大人しく従った。
結果的には満足だった。風呂はエレンが足を伸ばしても十分すぎるほど広々としていて、何しろジャグジーバスだった。
さっぱりした気分で部屋に戻ると、リヴァイはこんなところだというのに仕事をしていた。本当に仕事人間なんだな、とエレンはイメージ通りなことを一つ見つけた。
「上がりましたけど」
「…ああ」
リヴァイはパソコンから視線をエレンに向ける。なんだか本当に変な感じだ。
今までろくに会話をしたこともない他の課の課長と高級ホテルの一室に一緒にいて、自分は風呂上がりでバスローブを着ているなんて。何だこれ、とエレンは心の中で呟いた。
「えーっと、リヴァイ課長もどうぞ」
「リヴァイでいい」
「? はい。じゃあリヴァイさん?」
言うと、リヴァイは緩めてあったネクタイをしゅるりと抜いて、こちらに近づいてくる。風呂にはいるんだろうな、と思って場所を退く。
163 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:34:24.96 d
だが、それは叶うことなく、まだ機構に新しい手に腕を掴まれて強引に引きずられてしまった。
「えっ!?ちょ、なんですか!?」
そのまま大きなベッドへと乱暴に転がされる。そして、何も言わないリヴァイにマウントポジションをとられてしまった。両腕を掴まれたままベッドに押し付けられて全く起きあがることができない。
「お、い!何すんだよ!」
エレンはその手が逃れようと必死でもがくが、驚くほどにリヴァイの体はビクともしなかった。
嫌な汗が流れる。やばい、この状況は危険だ、と頭の中で警報がなっている。
「何をするって?あんだけ女食っておいて今からテメェが何をされるのか本当にわからねぇのか?」
「っ、どけ!」
わかる。わかるから焦って、逃げようとしているのだ。
「…ハッ、男にこんなことして何が楽しいんだよ、頭おかしいんじゃねぇの…っ?」
リヴァイを睨み上げ、わざと吐き捨てるように言った。怒らせて、少しでも隙ができれば逃げられる。
「生憎、お前をどうにかしたいと思うくらいには頭がイカれちまってるからな。そういう口を利かれるとかえって興奮する」
顔は笑っていないから到底興奮しているようには見えなかったが、腹に押し付けられている固いものが何なのかくらい分かる。エレンは本格的にまずいと焦り、顔を引きつらせた。
「ちょ、ちょっと待ってください、リヴァイさん。落ちついてください、」
「俺は落ちついている。ああ、でも、興奮するなっていう意味ならそれは無理だな」
「ほ、本当に待ってください!オレ男ですよ!?」
「さっき言っただろうが、頭がイカれてるって」
エレンの抵抗はもうないようなもので、リヴァイは言いながらエレンの両手をネクタイで纏めあげた。
そして器用に片手で自分のワイシャツを脱ぎ始める。徐々に見えてくる筋肉質な体が、今自分の上にのっているのは柔らかい女ではなく男なのだとエレンに分からせた。
164 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:34:28.67 d
「なんで、こんなこと…!」
「お前、女とセックスすんの大好きだろ?そういう奴を自分の雌にしてぇんだよ」
「ク、ソ…!変態野郎…!」
リヴァイはわざとエレンの耳元で吐息交じりに囁く。こうすると相手の体が震えることをエレンはよく知っていた。
ごりごりと腹に固くなった性器を押し付けられてゾワゾワと不快感が体中に広がった。
「ん!…っ、ゃ、んぅ…っ」
頭の上で両手を押さえつけられ、顎も掴まれると強引に唇を塞がれる。少し唇がカサついていると思ったのは最初だけで、下唇を食まれ、ぬるりと舌をねじ込まれるとすぐにそんなことは忘れた。
男の舌は思っていたよりも柔らかかった。それに、気持ちのいい場所を的確についてくる。
いつもは自分が相手の唇を好きに貪っているのに、今は逆に貪られている。リヴァイの深いキスは食べられてしまいそうなほど強引で、獣のようなキスだった。
「ん、は、ぁ…ぅ、」
くちゅくちゅと音を立てながら舌で口内をかき混ぜられて、だんだん頭がぼうっとしてくる。何も考えられなくなって、リヴァイに支配されてしまったのかもしれないと馬鹿なことを考える。だから体に力が入らなくなって、されるがままになっているのだと。
唇を離したリヴァイが「良い子だ」とでも言うように頬を撫でる。エレンは浅く呼吸を繰り返しながら、潤む瞳でリヴァイを睨みあげた。
「おいおい、キスなんて飽きるほどしてんだろうが。ちゃんと応えてみろよ。それとも女にしてもらってんのか?」
「っはあ!?んなわけねぇだろ!」
「じゃあやってみろよ」
「クッソ…!」
暗にキスが下手くそだと笑われてた。これでも女にはうまいと褒められる。
165 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:34:54.06 d
そもそもそっちが無理矢理キスしてきたというのに上手いも下手もあるか、とエレンはプライドを傷つけられたようで安い挑発に乗ってしまった。
縛られた腕をリヴァイの首の後ろに通されて、顔が近くなる。
エレンはその腕でリヴァイの顔を自分の方へ寄せると、その唇に噛みつくようにキスをした。
初めは唇をあむあむと食んで、その後で湿った舌を口内にねじ込む。上顎をなぞり、相手の舌の裏を舐めあげる。じゅる、と唾液を吸って柔く舌を噛んだ。
「ん、は……ん、……っんん!?」
いきなりれろりと舌を絡められ、エレンは驚いてくぐもった声を上げる。先ほどとは打って変わって大人しかったリヴァイの舌が突如動きだしたのだ。
頭を枕に押さえつけられて、リヴァイの口内に入りきった舌を吸われ、甘噛みされる。
「ふ、…っん、ぅぅ……はぁっ、」
先ほどまで握っていた主導権はいとも簡単に奪われて、また食べられてしまいそうな程深いキスにエレンは息をするのも精一杯で、必死にリヴァイの背中をどんどんと叩いた。
「んっ…んぅ!?」
肌蹴てしまったバスローブの隙間からリヴァイの指がエレンの体に直に触れて、ビクリと跳ねた。相変わらず口内への刺激を止めてもらえず、体に力が入らない。
リヴァイの指がエレンの乳首に触れて、ゆっくりと捏ねられる。指の腹でぐりぐりと押しつぶされると、そこからビリビリとした快感が走った。
「ふ、ん、ぁ……ゃめ、っ!」
そしてぷっくりと腫れてきてしまったそこを、今度は指先で弾かれるように弄られる。その度に体がビクビクと跳ねてしまう。
エレンが女にやるようなことを自分の体にされていた。もし自分がするならば次は軽く摘んで少し痛くした後に、それを労わるように舌で愛撫する。でもエレンは女じゃない。こんな所で感じるわけがないし、リヴァイがそれを男であるエレンにするはずがない。
166 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:34:57.79 d
エレンは祈るような気持ちでリヴァイの腕から逃れようと必死になった。しかしそれは、リヴァイから逃げたいのではなく、確かに感じる快感から逃れたかったのだと気付く。いつの間にか唇は解放されていた。
「ああっ…ぁっ…!」
散々弄られた乳首にリヴァイの暖かい舌がべろりと這った。エレンは目を見開いて体を仰け反らせ、高い声を上げた。言い訳のしようもない喘ぎだった。
「良い声で鳴くな。女の前でもそうなのか?」
「ちが…っん、やめ、…っひぁ!」
ガリ、と歯を立てられた。
ビクンッと体が勝手に跳ねる。
「なぁ、気付いてるか?テメェのここ」
「あっ、や…なんで…っ」
リヴァイの指が触れたソコ。
熱く、固くなって上を向いている。獣のように唇を貪られ、女のように乳首を弄られただけだというのにエレンの性器は固く勃起していた。それはリヴァイの愛撫に感じて、興奮してしまったという紛れもない証拠だった。
エレンは自身が勃ってしまっているということに唖然とした。一方でリヴァイは心底楽しそうに笑って、エレンの性器を撫でている。
「一回出させてやる」
「ぁ…っや、やだ…っ」
もう逃げられないと思ったのか、リヴァイはエレンの上から退くと、その足の間に移動して性器を両手で扱いた。
「あっ…さわんなっ!…ぁ、っく、」
女のよりもごつごつした掌。性器を包みこんで、少し乱暴にも思える扱き方は女にされるそれとは全然違った。
そして、ぱくり、と大きく口に咥えられた瞬間、エレンは身を捻じって声を上げた。
「ひぅっ!っ、あっあっ、ゃめ、…っ舐め…っぁ!」
「初めてでもねぇだろうが」
「ぁ、ゃだ…っこんな、っ」
167 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:35:23.13 d
リヴァイの口は大きくて、キスの時のように食われてしまうと思う程深い口淫だった。
わざとじゅるりと音を立てながら舐めしゃぶられて、尿道の入り口にも強引に舌をねじ込まれる。
「やぁ…っ!たべないで…はぁっ、ぁ」
クスリとリヴァイが笑った気配がしたけれど、強すぎる快感にエレンは気がつかない。
「あっ、で、でる…っ、んっ…あっ?」
「気が変わった」
「ぁ、なに…っ」
リヴァイの言っていることの意味を理解できないまま、乱暴にひっくり返される。そして尻を高く上げさせられて、四つん這いの格好にされた。
「やめろ…っ何する気だ…っひあ!?」
べろ、とありえない場所に湿った舌の感触がした。
「ケツでイかせてやる」
このあとめちゃくちゃに奥まで突かれてメスにされた。
中途半端になっちゃったけど時間切れじゃった
168 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:35:26.64 d
エレンが手の内に堕ちてきたことにリヴァイは少なからず喜んでいた。
触れるそばから薄い体が跳ねて、嬌声が上がる。
ぐずぐずに蕩けた後孔に己の性器をねじ込めば、女のようなそこはうねり、きつく締め付けられた。
気持ちいい、もっと、と向けてくる視線と甘い声が腰にくる。普段は澄ましたような顔が真っ赤に染まるのは気分が良かった。支配する感覚。
エレンのことは大学を卒業しても繋がりのあった後輩から話を聞いたことがあった。
すごくモテる奴がいて、めちゃくちゃ女食ってるんですよ、とかそんな感じだったと思う。中には女をとられた奴もいるとも言っていた。
本当に女にモテる奴と言うのは自分からいかなくても勝手に女から寄ってくるものだ。
きっとそいつは“とった”んじゃなくて女が馬鹿だったのだろうな、とリヴァイは思った。
169 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:35:58.34 d
そして、そのエレン・イェーガーが同じ会社に入社していたと知ったのはリヴァイが課長に昇進して何年か経った頃だった。
女性社員がよく騒いでいる男性社員の名前を聞かされた時、リヴァイは記憶の端にあった女遊びの激しい男の名前がエレン・イェーガーだったことを思い出したのだ。
合同の飲み会の席で、リヴァイは初めてエレンを“エレン”だと認識してその人物を見た。
隣にはリヴァイの部下である女性社員が座っていて、体をべたべたと触られている。
他の女性社員も皆、控えめながらも羨ましそうに視線を向けていた。
エレンは女遊びが激しいようには見えなかった。
年下の女性に圧され気味で、ずっと眉を下げて困っているようだったし、どちらかと言えば女性経験が少なそうにも見える。
しかし、部下が豊満な胸を押し付けているというのにエレンは全くそれには動じずに、上手に自分を制御しているようだった。
ああ、わざとか。
と、すぐにわかった。
初心な男のような顔をして、おそらくエレンは遊ぶ女をちゃんと選んでいる。
面白い。あの男を自分のモノしたい。
リヴァイは酒を煽るふりをして口元を歪ませた。
エレンを組み敷き、その澄ました顔が快楽に歪んで喘ぐ姿を見たくて堪らなくなった。
だがそれは、エレンを陥れたいというわけではない。
女が挙って手に入れたがるエレンを男である自分が支配して、お前らが欲しがる男はこんなにも可愛い顔で強請るんだ、と言う優越感に浸りたかったのだ。
170 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:36:02.07 d
自分にだけ見せる顔。雄の顔ではない、男のリヴァイだけが見ることのできるエレンの雌の顔が見たいのだ。
結果的には…そう、結果的にその顔は見ることができたし、自分のモノにもできたと思う。だが、エレンは心までは許してくれなかった。
「ぁ…っん、ァ、…っ…っ」
「良さそうだな、エレン」
「んっ、…は、ぃ…気持ち、いいで…すっ…はぁ、アッ」
エレンの背中にちゅ、ちゅ、と吸いつきながら、腰を掴んでぐちゅぐちゅになって解れている後孔を何度も穿つ。
外気に触れれば熱を持つローションがエレンの内側の肉をますます敏感にしてしまうようで、中は火傷しそうなほどに熱かった。
こうしてセックスするようになって、どのくらい経つだろうか。季節は冬から春に変わっていた。
エレンはやたらセックスをねだるようなことはしなかったが、我慢ができなくなるとリヴァイのところにやってくる、そんな感じだった。
まだ少し、リヴァイに抱かれることに戸惑っているようだったが、指先でも触れればその体は素直になった。
だが、エレンは最初の頃よりも声を抑えるようになった。息ができているのか心配になるくらい顔を枕に押し付けて、くぐもった喘ぎだけを漏らす。手はシーツを強く掴んでいて決して離そうとはしなかった。
まだ男に抱かれる屈辱に耐えているのかと思いきや、気持ちいいか、と聞けば素直に気持ちいいと言うのだ。だったら我慢などせずにもっと喘げばいい。縋りつけばいい、そう思っているのにエレンは頑なにそうしようとはしなかった。
「おい、エレン」
「ぁ…な、なに…っン、ぁっ、っ、…アッ、ひあ!」
声を我慢されるのが不愉快で、一度性器をずるりと抜くと、その体をひっくり返してこちらを向かせた。
171 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:36:30.02 d
顔を真っ赤にして瞳を潤ませ、荒い息を繰り返すエレンは驚いた様子でリヴァイのことを見た。
「な、なん…っ」
「たまにはいいだろ。声、我慢するな」
「えっ、ちょっと待っ…アッ、」
「いいな?」
「あぁ…っ、待っ…リヴァイさ、まだ、いれないで…っ」
「ああ?」
抜いたばかりでまだ少し開く後孔に性器の先端を押しあてようとした所で、エレンがそこに手を伸ばしてそれを阻んだ。
「こっちでするなら、…っ手、縛ってください…っ」
「……なに?」
「お願いします…っ初めての時みたいに、両手、縛ってください…!」
リヴァイはその懇願に頭がくらくらした。
確かに初めてエレンとセックスした時はネクタイで両手を縛ったが、あれはエレンが抵抗するからであって、別にリヴァイに緊縛の趣味があるわけではない。
「…理由は?」
「………なんとなく、…っいいから!早く縛れよ!」
じゃないと入れさせない!みたいに叫ぶものだから、リヴァイは不本意ながらも床に放られた自分のネクタイをとる。
だが、エレンに「皺にしちゃうからオレのにしてください」と言われて、言うとおりにエレンのネクタイでその両手首を縛った。
「痛くないか?」
「平気です…もっときつくてもいいくらい」
これでも結構きつめに縛ったのだが、少しの隙間にエレンはまだ不満そうだった。
「跡がついちまうだろうが」
「いい…明日、休みだから」
そして、手首を縛るために起きあがらせていた上半身をどさりとベッドに横たえると、エレンはリヴァイを見上げて言った。
「ひどく、してください…」
エレンが何を考えてこんなことを言うのかがわからなかった。
172 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:36:33.60 d
最初が無理やりで、その後も手ひどく抱いたから、こうして抵抗もなく抱かれに来るようになってからはうんと優しく抱いてやりたかったのだけれど。
「お前、何考えてる?」
「…別に。この方が、興奮するから」
「…、」
「…早く。もう良いから、いれてください…」
まだ納得のいかないリヴァイの、少し萎えてしまった性器を、エレンが縛られた手を伸ばして撫でた。
エレンの様子がおかしいと思いつつも、ぬるりと裏筋をすくい上げるようにして指先で撫でられて、リヴァイの性器は簡単に固さを取り戻した。
太ももの裏側を掴んで少し前に倒すと、また後孔に自分の熱を埋めた。ぐぐぐ、と入っていく感覚に息を詰める。根元まで入りこめば、はぁっ、と熱い息が零れた。
「アアッ…んっ…あ、いつもと、違う所にっ、当たってる…っあぅ、」
これまでとは違う角度で入りこむ性器にエレンが身を捩った。
縛る方が興奮する、というのが本当か嘘かはわからないが、エレンがリヴァイとの最初のセックスで縛ったことがきっかけでそういうプレイに目覚めてしまったというのならば付き合うしかない。
それに、縛られたエレンの抱くことができるのは自分しかいないのだと思うと、ますますリヴァイに支配されていくエレンに正直興奮した。
「んあっ…あっ、あっ、は、ンンッ、あっ…もっと、もっとして…っ」
「っ、く」
口元を塞ぐものがなくなったからかもしれないが、先ほどよりも気持ち良さそうな声が聞こえてくる。縛られた手が二人の間を少し彷徨った後、身を捻じらせて、やはりシーツを握りしめた。
173 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:36:59.22 d
・・・
「…それで、それを聞かせられた私はどうすればいいの?」
わいわいと騒がしい居酒屋でリヴァイは正面の女性に冷ややかな視線を向けられていた。
話していた内容は、到底人のいるところでは出来ないほど下世話な話で、この居酒屋が辛うじて個室になっているということだけが救いだった。
隣の声はもちろん聞こえる。
まぁ、両隣ともすでに酔っぱらって大騒ぎなので、こちらの会話が聞こえてはいないと思うけれど。
エレンが縛ってひどく抱いてほしい、と言ってくる。
と、リヴァイは酒が届くなり言ったのだ。
「俺はアイツと普通にセックスがしたい。優しくしてやりてぇ」
「…すればいいじゃない。」
自分の話をする時はあんなに嬉々とした表情でマシンガンのように話すくせに、リヴァイの話にどうでも良さそうに答えるのは幼馴染で腐れ縁のハンジ・ゾエだった。
「必死に頼むアイツの顔に弱いんだ」
「それでもしたいならすればいいんだよ。」
「でもアイツは受け入れようとしねぇ。縛れと言われる度に一線を引かれているような気がする」
ハンジの溜息が聞こえてきた。
「ていうか、もう自分のモノにしたんでしょ?それでいいじゃん。そうして欲しいって言うならやってやりなよ」
「そうだが…いや、そうじゃねぇだろう…」
174 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:37:02.82 d
それはそうなのだが、リヴァイはそれでは納得できないのだ。
「どうして?だってさ、君の可愛いエレンはセックスしたい時に来るわけで、リヴァイだって自分の所にきてくれて満足。
彼は気持ちいいし、お互いそれだけの関係でしょう?実際それだけの繋がりでしかないんだし。むしろそれだけの関係ならもっと気持ち良くなりたいと思うんじゃない?」
女だというのにはっきりと言うハンジに若干ひきつつも、リヴァイは一理あるその言葉に眉を潜めた。
「それじゃあ体だけみてぇじゃねぇか。アイツはセフレじゃない」
「は…本気で言ってる?セフレじゃなかったらなんなの?」
リヴァイは黙考した。
エレンはセフレじゃない、と思う。
確かに会う度にセックス…というかセックスするためにしか会わないけれど、リヴァイの中ではそうではないのだ。
それだけの関係にしたくない。男のエレンが同性のリヴァイに抱かれる。
そんなのは普通では考えもしないことで、彼が自分の手の中に堕ちてきただけでも僥倖だと言うのに、リヴァイはそれ以上をエレンに求めているのだ。
「リヴァイがそう思ってなくても、きっと彼はそう思ってるよ。だからリヴァイの所に行くし、セックス自体に嫌とも言わない」
「…それでも、アイツは」
正直に話そう。
リヴァイはエレンのことを自分のモノにしたいと思っていた時から、たぶん、彼に好意を抱いている。支配したいと思うのも、自分のモノにした優越感に浸りたかったのも、全てただの独占欲だったのだ。
175 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:37:07.72 a
176 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:37:39.33 d
こんな関係になる前、二度も強引に抱いてしまったことを少なからず後悔していたリヴァイは言うなればただの不器用で、これ以上嫌われてしまわないようにするにはどうしたらよいかわからなかった。
とりあえずもう無理矢理に手を出すことを止めよう。そう思っていた。
けれど、あの日エレンに初めて呼びとめられた。
何か言いたいことがあるのだろうと、あまり人の入らない保管室に連れていった。エレンは何も言わなかった。
体に触れてしまうと抑えが利かなくなるから、出来るだけ触れないようにした。
煽るようなことを言ったのも、エレンがいつでも逃げ出せるように逃げ道を作ったつもりだった。
けれど、エレンは顔を仄かに赤くして、潤んだような瞳を期待に染める。
以前とは違う反応だった。
物欲しそうにリヴァイを見つめ、自分から顔を近づけてくる。
ああ、可愛い。
思わず少し笑って、エレンが逃げ出す前に唇を塞いでいた。
その可愛い顔をもっと見たくなった。
でも、離れようとしても強くスーツを引き寄せられて、求められた。可愛すぎる、このまま食べてやろうか。
だが、このまま流されてまたセックスしてしまっては関係は変わらないと思った。
エレンを抱きたい欲求ばかりで埋め尽くされるこの脳みそを冷やす必要がある。
ちょうど明日から出張だし、この間に頭を冷やして、帰ったらすぐにハンジを呼びだそう。
そうしてエレンがリヴァイに責任取れと言ってきた日にハンジを呼びつけたのは、一刻も早くエレンとのことをどうにかしたいからだった。
けれど結局、他の男と寝るなどと言いだしたエレンに腹が立って、強引に腕を引いていた。
もっと触れて欲しくなるから離せと言うエレンは可愛くて、でも男の所に行くから離せと言うエレンは可愛くなかった。他の男などに触れられてたまるか。
177 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:37:43.17 d
男であるエレンに女を抱くなとは言わない。異性を抱きたくなるのは人間として当然のことで、そこまでエレンを縛りつけることはできない。
リヴァイが抱くのは女も男も関係なくエレン一人で十分だけれど、それはリヴァイが勝手に決めたことだ。でも、どうしても、エレンを抱く男は自分だけでありたかった。
そうしたらエレンは、苦しそうに顔を歪めて自分の元に堕ちてきた。女の人のところには行かないで、と声を震わせて。
エレンももしかしたら自分以外を抱かないでほしいと思ってくれているのかもしれないと思った。
己だけを求めて欲しいと。エレンもリヴァイと同じ気持ちなのかもしれない、と。
そう思ったら我儘だとわかっていてもエレンの心が欲しくなった。優しくして、甘やかして、体だけじゃなくて心も満たせる存在になりたいと思いはじめてしまった。
けれど、エレンは頑なにリヴァイとの間に濃い一線を引いているのだ。それが嫌でたまらない。
「エレンに距離を置かれるのが嫌なんだ」
は?とハンジが声を上げる。
「あー…ちょっと待って。話が食い違ってる気がする。この話は緊縛プレイじゃなくて普通にセックスしたいんだけど…っていう話?それとも、セフレじゃなくて恋人にしたいんだけど、っていう話?」
「……後者だ」
「リヴァイは言葉が足りないよ。不器用すぎる」
ハンジが呆れたように言った。
178 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:38:11.06 d
自分の頭の中だけで考えすぎて、ハンジとの会話が飛んでしまったらしい。昔から、肝心なことが伝えられない。
仕事になれば話は別だけれど、リヴァイは自分の気持ちを言うのが苦手だった。
「てっきりリヴァイとエレンはただのセフレだと思っていたよ。でも、リヴァイは彼が好きなんだね。
…だったら初めからそう言ってくれる?何で悩んでるのかわからないけど、そんなの好きだって言っちゃえばいいんだよ」
簡単に言ってくれる。
けれど、女とのセックスをそれなりに楽しんでいたエレンを無理矢理にでもあんな体にしてしまったのに、心までも手に入れようだなんてリヴァイは思えなかった。
好きだと告げてしまえば、彼は二度とリヴァイを求めようとはしない気がする。
リヴァイがエレンを抱く理由をエレンは聞いてこない。それはきっと聞く必要がないからだ。
そんなことどうでもいいからただ抱いてほしい、と、それだけを望んでリヴァイのところにきているのかもしれない。
二人の間に気持ちは不要だと言われているような気がした。
「言ったらエレンはもう俺の所にはこない。…離したくねぇ。でも、同じように気持ちを返して欲しいと思うのは、ただの俺の我儘だ」
「…すいぶん拗らせたね。どちらにせよ、恋人にしたいならセフレのままじゃ駄目だよ。それはわかるよね?」
私はそのエレンと話したことはないからわからないけど、と続ける。
「好きって言えないなら言わなくてもいい。でも、もし本当に一線を引かれているっていうなら、一度踏み込んでみるべきだ。踏み込めば、エレンが何を考えているかわかるんじゃない」
ハンジはそう言うと、荒技だけど、と笑いながら酒を煽った。
179 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:38:14.70 d
・・・
その日、就業間際に『今日空いてますか』とメッセージがきていて、前回セックスしたのは一週間程前だったから、結構間が空いたな、と思った。
エレンからの誘いを断ったことは一度もなかった。一度でも断れば、きっとエレンとの次はないと思ったからだ。
幸いにも残業のある日と被ったことはない。そのメッセージに『いつのも場所で』と返せば、ただ既読とついただけだったが、それは了解の意だった。
そしていつものホテルに向かう。エレンは周囲の目を気にしてなのか、時間をずらしてその部屋に訪れる。
そして大して休むこともなく、ベッドになだれ込んで唇を貪り、しばらくその体を愛撫すれば、エレンは「縛って」と言いだすのだ。
今日もいつものように部屋に訪れたエレンは、足を踏み入れるなり「風呂に入ってもいいですか」と言ってきた。
リヴァイは初めこそ潔癖などと言ったが、あれは目の前で女に触られていたのが不快だっただけで、本当は大して気にならない。
とは言っても、不思議な事にエレン限定なのだが。
常であれば、もう我慢できないとばかりにエレンから手を伸ばし、キスをねだってくる。珍しいな、と見つめれば少し俯いたエレンがぼそりと言った。
「さっき、女の人に抱きつかれて」
それは一体どういう状況だ。大方、告白されただとか、ここに来るまでに変な女に捕まったとかそんなことだろうと安易に予測はついたが、そんなこと言わなければわからないのに、わざわざ風呂に入ろうとするなんて、余程不快だったのだろうか。
「…入って来い」
エレンは少しホッとしたように息を吐いて、バスルームへと向かった。手持無沙汰になってしまったリヴァイは窓際の椅子に腰を下ろして煙草に火をつけた。
180 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:38:43.91 d
戻って来たエレンは性急に求めてきた。
温まった体はしっとりとして仄かに赤く色づいている。作り出された香料の香りが鼻についたが、いつものエレンの香りではないそれを纏っていると、他人のモノになった彼を抱いているようで少し興奮した。
唇が腫れてしまいそうなほど貪りながら、エレンが弱いところを攻める。
乳首はすでにぷっくりと固くなって主張し、指で捏ねたり弾いて引っ掻いたりすれば、エレンはアッ、と短く喘いだ。
性器はもうとっくに固く勃ち上がっていて、ふるふると震えながら先走りを垂らしている。
触れたらすぐにでも弾けてしまいそうなそれに何の予告もなしにしゃぶりつけば、エレンは背を反らせて一際大きく喘いだ。
「ひあっ、はぁっ……ゃめ、ん〜っ…」
女とのセックスが好きだったエレンが口淫されたことがないはずはないだろうに、いつだって彼は嫌がる素振りを見せる。
初めてエレンとセックスした時は「たべないで」と舌ったらずに言われて、早急に入れたくなるほど興奮した。
女よりも深く、激しい口淫に食べられちゃうかもしれない、と思っているのだとしたら可愛くて堪らない。
「ンッ、も、でちゃ…から、…あっあっ」
じゅぶじゅぶと音を立て、吸いながら唇で扱き、舌を性器に絡みつかせた。
だんだん呼吸が短くエレンに、もう限界なのだと察すると、先端をじゅっと吸ってから口を離した。
「あ、くっ…、〜〜っ」
イきそうなところで口を離されて、思わず出してしまいそうになるのを耐えるように指がシーツを握りこんだ。
はぁっはぁっ、と詰めていた息を整えるように呼吸を繰り返して、体を震わせる。
リヴァイが体を起こせば、エレンは敏感になった体に必死に力を入れて慣れたように背を向けて尻を上げた。
やはり後ろからがいいのか、と思った。リヴァイがこうしろと言う前に、エレンはこうして後ろから受け入れる体勢をとる。
後孔をほぐすのも入れるのもこの方がやりやすいのであまり気には止めなかったが。
「ぅあ…っ、っ」
ローションを後孔に垂らし、自分の指にも纏わせた。
181 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/01(金) 23:38:44.17 0
>>117 6時半やたまに
夜中とか早朝とかに目覚めると頭痛するねん
182 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:38:47.54 d
きつく閉ざされたそこを指の腹でゆっくりと撫でる。
くちゅ、くちゅ、と音がしてだんだん温まってくると、エレンの口からも熱い吐息が漏れ始めていた。
「は、ん…はぁっ…ぁ、…っ」
次第に後孔がヒクつき始め、固く閉ざしていたはずのそこが早く入れてと指に吸いつく。
指先を少し入れて抜く、を繰り返す。
そして、思い切りそこに指を一本、根元までぐっと差し込んだ。
「あああっ!」
油断していたのだろう。入った瞬間、指がぎゅうっと締められて、エレンの性器からぱたぱたと精液がシーツに零れおちた。
「ぁっ!待っ、まだ、動かさな…っ、あっああっ」
射精した余韻に浸る暇を与えずに、指を動かした。
これまで何度もリヴァイの性器を受け入れてきた後孔は、ローションの滑りを借りて難なく動かせた。エレンも痛がる様子はない。
「んぅ〜〜っ、ぁ、はぁっ、アッ」
徐々に解れ、柔らかくなっていく後孔にリヴァイもそろそろ限界だった。
「あ…、ぁ…も、入れて…っは、ぅ、」
「エレン、」
指を抜くと、広がったままのそこが欲しがるようにぱくぱくと口を開けた。そこに、ガチガチの性器を押しあてる。
「んあ、ぁ、〜〜〜っはぁ、んんんっ」
「っ、」
にゅるる、と中に入り込む感触。柔らかくなったそこが食いちぎられそうなほどきつく締まってうねった。エレンがどう感じているのかがわかる。
183 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:39:12.48 d
強張っている背中を撫でればビクビクッと震えて中もヒクつく。
背中に覆いかぶさって乳首をきゅうっと摘めば中もリヴァイの性器をぎゅっと締め付けた。
「動くぞ、」
「あ…っ、はぃ、突いて、奥、いっぱい突いて…っんっ、ああっ、」
エレンの顔の横に手をついて、エレンの言う通り奥まで突いてやる。
その度にガクガクと体が震え、ぢゅ、ぐぢゅ、と中をかき混ぜる音とエレンの甘い声がリヴァイの耳にまで届いた。
「あっ、もっと、ひどくして…っ、んぅ、はぁっ、アッ、アッ中に、中にだしていいからぁっ…もっと、してっ…ひああっ」
また、エレンは「ひどくして」と乞う。
瞳を潤ませ、快感に熱い吐息を洩らしつつも、その顔は苦しそうに歪められていた。
これはエレンの本意ではないと思った。だとしたら、何故そんなことを言うのだろう。
リヴァイは頭の片隅でそんなことを考えながらも、快感には逆らえずに腰を振った。
奥を突き、ぎりぎりまで抜く度に聞こえるぐじゅ、ぬりゅ、といやらしい音が思考を鈍らせようとしていた。
184 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:39:15.96 d
リヴァイの放った白濁がうつ伏せになった状態で荒い呼吸を繰り返しているエレンの背中を汚していた。
セックスを終えた二人の間に甘い時間などは訪れない。
リヴァイは口下手であるし、エレンは最近リヴァイに控えめな態度で、セックス中以外はあまり言葉を発しなくなった。
エレンの背中に吐き出したものを雑に拭ってやる。その足でベッドから降りると、なんだかやりきれないような気分になって、断りもなく煙草に火をつけた。
「…中に出していいって、言ったのに」
独り言のように呟かれたエレンの声はしっかりとリヴァイの耳に届いていた。
「体きつくなるだろうが」
「別に。女じゃあるまいし、子どもができるわけでもねぇんだから中出しでも何でもすればいいじゃないですか」
やけに棘がある言い方だった。
「そういうことじゃねぇ。お前のことを心配してんだ」
「男なんだからそんなに弱くありません」
「…おい。お前さっきから何を言ってる?」
リヴァイはまだろくに減ってもいない煙草を灰皿に押し付けて、ベッドに近づいた。いつの間にかエレンはリヴァイに背を向けるようにして横になり、体を丸めていた。
「だから、優しくすんなって言ってんですよ」
「ああ?」
「ひどくしていいって何度も、」
「俺にそんな趣味はねぇ」
最初は無理矢理だった。だからこそ、今は優しくしてやりたいし、エレンの体にあまり負担がかからないようにしてやりたいと思っているのに、エレンは何故か苛立っているようだった。
185 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/01(金) 23:39:24.29 0
芋BBAは何を勉強してるかは言わんのよな
つまり…
186 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:39:41.75 d
「何が気に入らない?」
「…、」
「何でもすればいいって言うなら、俺はお前にひどいことはしたくねぇ」
言うと、エレンは体を起こして泣きだしそうな声で叫んだ。
「オレは男なんですよ…っだから、女みたいに抱くんじゃねぇよ…っ」
リヴァイは目を瞠った。
「そんな風にするなら、他を当たってください」
「エレン」
「女みたいにするなら、女とセックスした方がいいに決まってる」
「おい」
ベッドから降りようとするエレンの腕を思わず掴んだ。
エレンを女の代わりだと思ったことはないし、女のように抱いていると思ったこともない。
ただエレンの体を気遣いたくて、甘やかしてやりたかっただけなのに、それが裏目に出ているというのか。
「離してください」
ハンジが言っていた。
長い付き合いの私でさえ勘違いするんだから、エレンはもっとわかっていないよ。
リヴァイは言葉が足りないから、無理やりにでもわからせるしかないかもね。
187 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:39:45.14 d
ああ、その通りだ。エレンは何もわかっていなかった。
何も伝えていないのだから、理解しろと言う方が無理かもしれない。
でも、今リヴァイが何を言ったとしてもきっとエレンは信じようとはしないだろう。
だったら、わからせてやる。
その腕を引き寄せ、ベッドに組み敷いた。
顔には出ないが、明らかに苛立っているリヴァイを見て、エレンが目を大きく見開いて驚いた。
「な、離せよ…っ」
「うるせぇ、黙ってろ」
「んぐっ」
リヴァイは大きな掌でエレンの口元を塞ぐと、そのまま押さえつけて耳元で囁いた。
「そんなに言うなら、俺のやりたいように抱いてやる…テメェが言ったんだ、何されても文句言うんじゃねぇぞ」
こりゃ続いちまうやつだ
188 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:40:12.18 d
リヴァイとのセックスは気持ち良すぎて堪らなかった。
腹の奥に男根を埋め込まれ、ぐぽぐぽと出し入れを繰り返されれば敏感な肉はそれを締め付ける。
まるで女のようだ。
リヴァイに言われたように本当に雌にでもされたのかと思う程に、与えられる快感にエレンの体は喜んだ。
エレンには複数の異性のセフレがいる。
けれど、リヴァイとセックスをするようになってから、めっきり連絡をしなくなった。女とのセックスが嫌になったわけではない。
だが、女を相手にしたところでリヴァイとのセックス以上に気持ち良くなれるとも思えないのだ。
そうして自然に連絡が薄れれば、相手からの連絡がくることもなく、関係は消滅していった。
それだけの関係だ。セフレなんて。
そんな関係を持つ女が複数いるエレンには、リヴァイとの関係もそれと同じなのだと思うことに時間はかからなかった。
リヴァイとはセフレだ、とエレンの頭は完結する。
エレンは長らく、恋というものをしていない。
189 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:40:15.74 d
・・・
社内でリヴァイの姿を見ると、体が疼く。
あの禁欲的なスーツの下には見た目よりも筋肉質な体が隠されていて、書類を持つあの指が男であるエレンの体を翻弄する。
そして限界まで高められた体に追い打ちをかけるように太くて固い、熱が…と考えてエレンはハッとした。
仕事中なのにこんなことを考えてしまうのなんて初めてだ。
今まで適度にセフレで性欲を発散してきたエレンには、こんな待ちわびるような、我慢できなくなるほど体が疼くなど経験したことない。
これも、リヴァイとセックスするようになってからだ。
女では満足できないエレンの性欲は全てがリヴァイに向けられてしまう。
以前のエレンであれば、相手の都合など考えずに連絡していたが、リヴァイに同じようにするのは何故か躊躇われた。この躊躇いを煩わしいと思いつつも、エレンはどうしてもリヴァイに対しては強く出られなかった。
それはエレンが抱かれる側だからかもしれない。
リヴァイは他の男や女を抱くことはできるが、エレンはリヴァイに拒絶されてしまったらただ取り残されるだけで、その体を自分で慰めなければならないのだ。
エレンは他の男は駄目だ、というリヴァイの言葉を律儀に守っている。元々、他の男に体を差し出す気など少しもないが。
幸い、先ほどに会って話をした時、今日は比較的忙しくない、と言っていた。
たぶん今日ならば断られずに済む。『今日行くから』『セックスさせて』なんてセフレ相手にメッセージを送っていたのに、相手の様子を窺うように『今日空いてますか』とメッセージを送るのは何とも笑える話だった。
190 :
名無し草 (ワッチョイ abb6-Iq2g)
2016/04/01(金) 23:40:16.58 0
191 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:40:42.22 d
・・・
体は正直で、気持ち良すぎる快感に勝手に逃れようとしてしまう。
何かに掴まっていないと逃げてしまうからエレンはシーツを握りしめ、枕に顔を押し付けて耐える。
呼吸も苦しい方がいい。 思考が快楽で埋め尽くされている今、口を遊ばせていたら何を言ってしまうかわからないからだ。
気持ちいいと素直に言うことも、もっととねだることも、そのためにセックスしているのだから構わないが、何か余計な事を言ってしまうのではないかと何故か不安だった。
「ぁ…っん、ァ、…っ…っ」
「良さそうだな、エレン」
「んっ、…は、ぃ…気持ち、いいで…すっ…はぁ、アッ」
背中を吸われて体が揺れた。
リヴァイは最近、抱き方が変わった。
以前は強引で、全身を食べられてしまうような、圧倒的な雄の欲望を見せつけられるようなセックスだったように思う。
抵抗しようとするエレンを力でねじ伏せて、無理矢理言うことを聞かせるような。
けれど、最近のリヴァイはそうではなかった。簡単に言えば、優しい。
エレンが抵抗をしなくなったからかもしれないと思ったが、それにしたって優しかった。
無防備になった背中に小さく口付けられて、確かめるように触れられて、中を穿つ力は強いのに体に触れる指は優しかった。
リヴァイが強く体を押さえつけてくれないから、エレンは余計にシーツを握る指に力が入る。
192 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:40:47.15 d
そんな風にリヴァイが抱くから、正面から受け止めるのはどうしても躊躇われた。
掴むものがなくなってしまうし、リヴァイの優しいキスを正面から受けるのは何故かとても怖かった。
それなのに、
「おい、エレン」
「ぁ…な、なに…っン、ぁっ、っ、…アッ、ひあ!」
急に中から性器をずるりと抜かれると、正面を向かされた。
肩で息をしながら額にうっすらと汗をかくリヴァイが瞳に映る。
「な、なん…っ」
「たまにはいいだろ。声、我慢するな」
「えっ、ちょっと待っ…アッ、」
「いいな?」
リヴァイの性器がもう一度、ヒクついて欲しがる後孔に狙いを定めた。
「あぁ…っ、待っ…リヴァイさ、まだ、いれないで…っ」
「ああ?」
駄目、駄目だ。エレンは急に焦り出して、咄嗟にそれを手で阻んだ。
このまま入れられてしまったら駄目だ。
掴むものを失った手はおそらく目の前の男に縋るように手を伸ばしてしまう。そして引き寄せて、自由になった唇はリヴァイの耳元で何を言ってしまうかわからない。
もうすでに喉元まで出かかっている言葉に、エレンはとても嫌悪している。
193 :
名無し草 (ワッチョイ 9fbf-pU0W)
2016/04/01(金) 23:41:01.32 0
>>148 なんぼ芋好きでもこない頻繁に食うて飽きひんか?
勉強してるBBAの姿勢は素晴らしいと思うねんけど
もうちょっとご褒美にバリエーション付けた方がええで
194 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:41:12.58 d
本来、人を繋ぐためにあるはずのその言葉は、セフレという関係において、殊更リヴァイとの間では言ってはいけないものだと、エレンはわかっていた。
「こっちでするなら、…っ手、縛ってください…っ」
「……なに?」
「お願いします…っ初めての時みたいに、両手、縛ってください…!」
「…理由は?」
「………なんとなく、…っいいから!早く縛れよ!」
気付いてはならない。
エレンはセフレばかりを作ってきたから、その関係が当たり前だった。
だから、この気持ちに気付いてしまうことを体が、頭が勝手に拒んでいた。無意識にリヴァイに縋ることをしなくなる。
納得していない様子のリヴァイが渋々といった様子でネクタイでエレンの両手首を縛った。
最初は問答無用で縛って来たくせに、痛くないか、などと聞いてくる。
優しくするな。もっと前みたいに強引にすればいい。
「ひどく、してください…」
何を考えているかだって?そんなの、何も考えていない。
気持ちいいことをするだけの関係に、考えることなど必要なはずがない。
ただ快楽を追って、楽しんで、それだけだ。
けれど、どうしてだろう。
全然楽しくなかった。
195 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:41:16.10 d
社内で偶然リヴァイを見かけただけで熱くなってしまう体を引きずりながら家に帰ってくると、ご飯も食べずにベッドに横になった。
油断すれば熱を持つソコに手が伸びてしまいそうになる。
でもまだ、リヴァイとセックスしてから二日しか経っていない。頻繁に連絡して迷惑になるかもしれないと考えるなんて本当に笑える。
リヴァイから連絡が来たことは一度もなかった。むしろあっちから連絡が来れば、遠慮なんてしなくて済むのに。リヴァイはセックスしたいと思わないのだろうか。
「…あぁ、」
エレンは思い出した。
リヴァイはあの日、女は許すと言っていた。リヴァイはエレンが他の女とセックスすることに対して何も思わない。
エレンはリヴァイが抱く他の女を自分と重ね、夢の中の自分にさえ嫉妬したというのに、リヴァイは何とも思わない。
それはたぶん、リヴァイも他の女を抱いているからだ。
だからリヴァイはエレンに連絡をしてこない。所詮、リヴァイにとってエレンは都合のよいセフレでしかないのだ。
「っだったら、なんで、」
そもそもリヴァイが男であるエレンとセックスをする理由なんて、妊娠のリスクなく快感を得ることができるからに決まっている。
女のように濡れない体は面倒ではあるが、後に面倒事を引き起こすことはない。妊娠しない、体も弱くはない。自分の欲望を気兼ねなく発散することのできる体。
196 :
名無し草 (ワッチョイ abb6-Iq2g)
2016/04/01(金) 23:41:21.71 0
>>185 国家資格のお勉強やで
落ちたら恥ずかしいから合格したら言うで
197 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:41:42.34 d
だったらどうしてあんな優しく、壊れ物を扱うように触れるのか。
そんな風に女も抱いているのか。そう思うと堪らなく嫌だった。
見つめる視線も、その指も、女と比べているんじゃないかと不安になる。
固いばかりの体が女よりも勝っているところなんてない。
比べるくらいなら、女とセックスしたほうがいいに決まっている。
エレンとリヴァイの関係はエレンが一方的に手を伸ばしているようなものだ。
リヴァイはその手をとることも、遠ざけることもできる。
だからこの関係はエレンがリヴァイに手を伸ばし続け、リヴァイの愛想がつきないよう適度に距離を保たなければすぐに終わってしまう。
終わらせたくない、とエレンは思う。
どうして、と問えば今まで気付かないふりをしていた感情はすぐに答えをくれるかもしれない。
けれど、この薄っぺらな関係にその感情は重すぎる。
のせればのせるほど歪んで、終いには壊れてしまうかもしれない。
エレンはそれが怖かった。
女のようにされたこの体はもう女を抱くことはできない。
他の男に抱かれることを望まないエレンはリヴァイとの関係が壊れてしまったら、どうなってしまうのだろう。
198 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:41:45.91 d
・・・
「あー!エレンくん!」
「お疲れ様です」
リヴァイと時間をずらして会社を出る時、ちょうどエレベーターで一緒になった年上の女性社員二人に挨拶をする。
金曜日だからか、気分の良さそうな二人はこれから飲みに行くらしい。
「エレンくんも行かない?」
「女二人じゃつまらないし、エレンくんが来てくれたら嬉しいな」
細い手がエレンの腕に巻きついて、ぐっと寄せられる。
もはや抱きつかれているのと同じくらいに近い距離に、エレンは少し眉を顰めた。
「…すみません。これから予定があって、すぐに行かなくちゃならないんです。また機会があれば御一緒させてください」
そう言って頭を下げると、えーつまんない!という高い声を聞きながら、早足でホテルへと向かった。
スーツに少しだけ残る女の匂いを消したかった。女に触れられたのが不快だったわけではない。女に触れられた体をリヴァイに差し出すのが嫌なのだ。
「動くぞ、」
「あ…っ、はぃ、突いて、奥、いっぱい突いて…っんっ、ああっ、」
背中越しにリヴァイの荒い呼吸が聞こえる。
リヴァイの性器が動かされる度にぐちゅぐちゅと聞こえる音は自分の体の中で出されているのだとは到底思えなかった。
「あっ、ん、ふ…っ、ぅ、」
中が擦れる。気持ちいい。
エレンは熱に浮かされたような頭でぼんやりと考える。
199 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:41:51.19 a
200 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:42:12.34 d
今リヴァイはどんな顔をしているのだろう。
しかし、振りかえることも、正面からリヴァイを受け止めることもしたくはなかった。
その顔を見てしまったら、絶対に彼に縋ってしまうと確信していたからだ。
リヴァイを求め、その体に腕を回して引き寄せて呼吸を近くて感じたい。
離したくない、離して欲しくないと口走ってしまいそうになる。
それを耐えるようにエレンは枕に顔を押し付けて、リヴァイに縋りつきたい衝動をシーツを握りしめて耐えるのだ。
「んっ、…っ、ぅ、はぁっ…あ、」
無防備な背中をリヴァイの指が滑る。優しくするな、まるで大切だとでも言うように触れるな。
「あっ、もっと、ひどくして…っ、んぅ、はぁっ、アッ、アッ中に、中にだしていいからぁっ…もっと、してっ…ひああっ」
エレンは「ひどくして」と乞う。
そうでないと、好きになってしまうから。
もう、限界だ。
リヴァイに優しく触れられるのが、女のように触れられるのが辛くて堪らなかった。
そうじゃない。
アンタがオレを抱くのはそういうことをしたいからじゃねぇだろう。
201 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:42:16.28 d
エレンは決めつけて、リヴァイに当たった。終わらせたくないと思っていたのに、一度口にしてしまえば止まらなくなった。
「オレは男なんですよ…っだから、女みたいに抱くんじゃねぇよ…っ」
「そんな風にするなら、他を当たってください」
「女みたいにするなら、女とセックスした方がいいに決まってる」
ああ、終わりだ。こんな面倒な事を言う奴はセフレに必要ない。だったら、捨てられる前に自分から離れた方がマシだ。
けれど、リヴァイはエレンの腕を掴んだ。強引にベッドに組み敷かれて、視界に映ったリヴァイは明らかに苛立っていた。なんで、どうして。
アンタはオレを引きとめる程オレを想ってはいないだろう。
他の女を抱いていいと言う程オレを想っていないくせに。ただのセフレとしか思ってないくせに。
202 :
名無し草 (ワッチョイ 9fbf-pU0W)
2016/04/01(金) 23:42:21.52 0
>>181 せやったら逆算して12時半には寝たらええで
203 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:42:43.58 d
どろどろになっているくせにきつく締め付けてくるエレンの後孔に自分の欲望をねじ込んでから、一体どのくらいの時間が経ったのだろう。
優しくするな、と言って嫌がるエレンに思考が鈍るくらい甘い愛撫を続けた。
何度射精したかもわからないし、何度かは出さずに、中で達していたと思う。
エレンの腰にはもう力が入らずに、リヴァイの手によって支えられているようなものだった。
こちらに背を向けているエレンの体が可哀想な程に震えていた。
「ぁ…、はぁ、…っ、」
熱い吐息と小さな喘ぎ。
挿入してから一度も動かしていない性器はもうエレンの中で溶けてしまったのかと思うくらい馴染んでいた。
204 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:42:47.14 d
リヴァイも頭がぼうっとしてきていた。
体中が熱くて、痺れて、神経がむき出しになってしまったみたいに、少し動いたり、呼吸が体に触れるだけでゾクリとした快感が走った。
「…っ、」
「あっ…っ、…っ」
熱くて熱くて堪らない。額をつたった汗が白く震える背中にポタリと落ちる。エレンの体がビクッと跳ね、内側の肉がリヴァイを締め付けた。
熱い。苦しい。動きたい。
悪戯をするみたいにきゅんきゅんと締め付けてくる後孔を叱りつけるようにめちゃくちゃに突いて、擦って、泣かせてやりたくなる。
しかし、エレンが自分から手を伸ばし縋りついてくるまでは動いてやる気はなかった。
「ゃ…、動いて…っ動いてくらさ…ぁ、はぅ…っ」
「駄目だ…っ」
「ああっ…、ゃめ…っ」
体に力が入らず、自ら動かすことのできないエレンは顔を真っ赤にし、回らない舌でリヴァイにねだる。
205 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:43:13.88 d
可愛い、堪らない。我慢できずに項にちゅうっと吸いつけば、エレンの口から甘い声が上がった。
リヴァイの性器を締め付けるのはもはや反射だった。
エレンは腹の奥からじわじわと全身に広がり犯すような快感から逃れるように必死にシーツを掴み、枕に頬を押し付けていた。
もうだめ、やだ、うごいて、あつい、とうわ言のように喘ぐ。
気持ちいい。でも、あと一歩のところで手が届かない。快楽という水に溺れ続けているような感覚だった。
この苦しさから引き揚げられて安心したい。
そうでなければ、もういっそ力尽きて気を失ってしまいたい。でも、リヴァイはそのどちらも許さなかった。
「っ、は…な、なんで…っ動いてくれな…っぁ、」
「なんで?お前がひどくしろって言ったんだろうが」
文句は言うなって言ったよな?
そう言って、耳の裏を舐めしゃぶる。
たっぷりと唾液を絡めた舌で、じゅるっと音を立ててそこを吸うと、またきつく締め付けられた。
油断すれば持って行かれそうになる。リヴァイとて限界に近かった。
206 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:43:17.41 d
「うぁ…っ、ゃ…っ、あついっ…リヴァ、ィさんの…っあっ」
根元まで沈めた性器はエレンの媚肉に小さく締め付けられて、もう長い間動かしていないのに全く萎える気配もない。
それどろこか、エレンの喘ぎと熱い呼吸に煽られて興奮しっぱなしだった。
「ぉ、お願い…っリヴァ、イ…さ…っあ、っ」
シーツを握りしめていた指が震えながら、エレンの腰を掴んでいるリヴァイの手に触れて、きゅっと握りしめた。
「エレン、」
こんな風にエレンから触れられるのは久しぶりだった。
何かの拍子に触れることはあっても、セックス中に求めるように触れることをエレンはしなかった。
いつもそうだった。エレンが掴むのはシーツや枕。リヴァイはそれが面白くなかった。
後ろからしているのだから仕方ないとは思っていたが、気付けば後ろから挿入するように体勢を変えるのはいつもエレンの方だった。強引に正面を向かせても、エレンは頑なに縛れと言ってくる。
ああ、こいつはわかっていて俺に縋ってこない。そう理解したのはエレンに線を引かれていると感じたのと同時だった。
「お前は、俺が嫌いか…」
自然と口から出てしまった声は思っていたよりも弱々しかった。繋ぎとめるように握り返した指は震えていたかもしれない。
207 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:43:44.91 d
強引にこんな体にしてしまったエレンの自由を奪いたくはなかった。
エレンはリヴァイには抱かれるが、男を好きなわけではない。
もちろん女とセックスしたくなる時だってあるだろう。
これから先、一緒に生きていきたいと思う相手も見つけるかもしれない。
だから、女とセックスすることは許したし、気持ちを告げることもしなかった。
線を引かれて、心までも渡すつもりはないと思っているのならばそれでも構わなかった。
だったらせめて、体だけは。セックスしている時くらい恋人のように甘やかして、恋人のように抱き合いたいと思っていた。
けれど、エレンは決してリヴァイに縋りつこうとはしなかった。
エレンからメッセージが来る度にホッとして、もっと、とねだられると求められているようで嬉しかった。
いい歳した男が、年下の男の一挙一動で嬉しくなるし、辛くもなる。
今だって、エレンが自分の指をちょっと握ってくれただけでぶわりと心の底から沸き上がる何かがあった。
好きだ、と言ってしまいそうになる。
いっそ告げて、エレンがもう自分の所へこないと言うのならばそれでもいいのかもしれない。
だったら、最後くらいはエレンが泣いて止めろと言ったって、気を失うまで甘やかしてやりたいと思った。
208 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:43:48.34 d
幸い、エレンは今、今まで散々線を引いてきたリヴァイに縋ってしまう程余裕がないし、もう思考もままならないだろう。
もしかしたら聞こえていなかった、なんてこともあるかもしれない。そんな都合のいいことを考えてしまうくらいにはエレンを手放したくはなかった。
無理矢理エレンを襲った奴が何を言っているんだ、とリヴァイは自嘲する。
いくら強い人間でも、弱い部分はある。それがリヴァイにとってはエレンだった。
エレンを自分のモノにしておきたい。でも、縛りつけたくはない。この葛藤がリヴァイの判断を鈍らせる。
「ひっ…!?〜〜っ!」
掴まれた指を放りだすように離して、ぷっくりと固く尖る乳首を指先で刺激する。
二本の指で挟んで潰すようにねじれば、エレンの体が一際跳ねて、達してしまったのがわかった。
性器が痛いほどに締め付けられる。その締め付けに性器がさらに大きくなった。
ゆっくりと、あまり刺激しないように性器をずるりと抜く。
性器の先端と、ぱくりと開いたままの後孔が粘りのある糸を引いていた。頭がくらくらする。少し擦れただけで出してしまいそうになった。
「アッ…っ、ぁ!」
その小さな刺激でさえエレンは耐えきれずまた達してしまったようだった。
209 :
名無し草 (ワッチョイ abb6-Iq2g)
2016/04/01(金) 23:44:00.71 0
>>193 わいほんまはチョコ好きやねん
でもチョコは血糖値の上下激しいから躁鬱なるって聞いたんや
ほんでヨーグルトと芋食べると腸内フローラやら何やらでポジティブに勉強もはかどる聞いてやってるねん
芋好きやし確かに前向きに勉強出来とる気がするねん
210 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:44:13.86 d
ビクビクと跳ねる性器が先走りと自身の出した精液でどろどろ濡れている光景はなんともいやらしい。
その力の入らないエレンの体を気遣うようにして仰向けにさせる。
瞳を潤ませ、とろけた表情を見せるエレンに、さらにリヴァイは興奮して、性器を固く猛らせた。
はぁ、はぁ…と震えた呼吸が聞こえる。リヴァイは正面からエレンを抱きしめる。
直に抱きしめたのなんて、初めてかもしれない。
「エレン…、頼むから、俺に触れてくれ…」
情けない、縋りつくような声だった。
耳元で、戸惑うように息を呑んだ音が聞こえた気がした。
まだエレンの手はシーツを弱々しく握っている。
「今日はお前を絶対に縛らない」
今度こそ、エレンがヒュッと息をしたのを聞いた。
「ゃ、やです…っア!まっ…うぁ…っ」
エレンの制止の声も聞かず、体の力が入らないのをいいことに太ももを掴みあげると、まだ熱くぬめるそこに性器を押し付け、腰を進めた。
211 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:44:17.72 d
「アアッ!…ぁ、っ…あつ…っま、待ってくださ…っ奥が、熱くて…っあ、んっ…びりびり、する…っ」
ぬちゅぬちゅと粘りのある液の泡立っている音が聴覚を刺激する。今までで一番気持ちが良い。
女の中のように柔らかくなった後孔がリヴァイを欲しがって締め付ける。
やっと与えられた快感に体が喜んでいるのがわかる。
「っ、エレン、」
「だ、だめ…っア、縛っ、て…っお願い…っああ!ん、ひぁっ」
「縛らないと、よくねぇか?そうじゃないよな?エレン、」
エレンの手が彷徨って固く拳を作る。
瞳は縋りつきたくて熱を孕んで潤んでいる。
後孔もリヴァイの性器に吸いついて、もっと、離したくない、気持ちいいと言っている。その手だけがリヴァイを求めていなくて不自然だった。
「エレン、」
その手を掴んで、指を絡めるとベッドに押し付けた。まるでお互い求め続けてやっと嵌ったみたいにぴたりと合わさった掌が熱かった。
212 :
名無し草 (ワッチョイ 0bc8-eoZT)
2016/04/01(金) 23:44:25.53 0
お芋さんって呼び方ええな字面だけで和むは
わいは減量のために1時間歩いてきたでお腹空いたは…
213 :
名無し草 (ワッチョイ abb6-Iq2g)
2016/04/01(金) 23:44:41.30 0
214 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:44:42.14 d
ぎゅうっと、絡められた感触に何かがこみ上げる。
可愛い、愛しい。
「あっ、っ、リヴァイさんっ…ゃだ、離して…っ」
「駄目だ」
だって、痛いほどに握りしめてくるのはエレンの方だ。
「ぅ、あっ…はぁっ、アアッ、んっ、んむっ」
喘ぐ唇に噛みつくようにキスをする。熱い口内に舌を滑り込ませて、力の入っていないエレンの舌を絡めて吸う。
くちゅ、ちゅぷ、と唾液の混じる音がした。上顎を舐めて、舌の表面を擽る。エレンが、はぁっ、と熱い吐息を漏らした。
「ゃら、っ…ん、む、んぅ〜っ」
やだ、なんて言うくせに絡めた指は相変わらずぎゅうっと握られていて離さないし、力の入らない舌をそろそろと動かしてリヴァイの舌を拙く舐めてくる。
「はぁっ…、」
「アッ、う、あぁっ、んぁ!あっ、ひぁ」
激しくエレンの体を揺さぶる。
その体に覆いかぶさるようにして抱きしめた。
215 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:44:45.99 d
今日は縛られたエレンの手がそれを拒むことはない。
快感で脳が痺れているエレンはその体を押し返さなければという考えも遅れ、その腕にすら力が入らない。
「ぁ、やめ、っ離して…っア、んっ、ああっ、やだぁ…!」
直に体がぴったりと触れて、お互いの心臓が驚くくらい速く脈打っているのがわかった。
ぱちゅ、ちゅぶ、と動かす度に結合部が泡立つ。
奥を穿つのに合わせるようにエレンの荒い息と喘ぎが漏れて、いつもよりも近いリヴァイの耳に届いた。
「だめ、やだ…っ気持ち良すぎて…怖ぃっ、あぁっ、んっ、ひあ!」
「っ、怖いなら、俺に掴まっていればいい」
「んっ、や、アアッ、だめ…っそ、そんなことしたら…っあ、やらっ…」
「そんなことしたら?」
「す、アッ…好きになっちゃ、う…っは、ああっ!」
ふ、と思わず笑ってしまった。
可愛い。本当に、エレンは可愛い。
リヴァイは、本当は気付いていた。
エレンがリヴァイとの間に線を引いていたのは好きになってしまわないように、だということを。
216 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:45:15.09 d
何がエレンにそう思わせているのかはわからない。
しかし、そう考えるようになってしまってはもう手遅れだ。
エレンはリヴァイのことが好きだ。
好きだから、好きになることを拒む。
好きになっちゃだめだ、なんて線を引くのは何の意味もなくて、そう考えるのはもう好きになってしまっている証拠だ。
だが、そう考えてしまう理由をきちんと明かさなければ、エレンは素直に認めないだろう。
もちろん、リヴァイが好きだと告げたって素直には信じない。
「どうして駄目なんだ?」
まるで子供に聞くような声音だった。
「アッ、だって…っセフレ、だから…っん、ひどくしてくれないと…っ優しく、されたらっ、あっ、好きに、なっちゃう…っ」
エレンは涙をぽろぽろ零しながら必死に言葉を紡いでいた。
217 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:45:19.63 d
そうか、エレンはセフレだと思っていたから、この関係には体以外はいらないと思っていたのか。
「あっ…!?や、奥…っあ、んあっ、ああっ」
エレンの体に腕を回し、その体を抱き起こす。
リヴァイの足の上に跨る姿勢になったことで体重がかかり、エレンの中の性器がもっと奥まで埋め込まれた。
こうなるともうエレンが掴むものは何もなくなる。
エレンはその衝撃と快感に無意識にリヴァイの体に腕を伸ばした。
「エレン」
背を丸め、リヴァイの首元に顔を埋めるエレンの耳に小さく囁いた。その体が怯えたみたいにビクッと跳ねた。
「縋っていい、好きになっていい。俺は初めから、お前をセフレだなんて思ってねぇ」
「う、や、聞きたくな…っひ、」
「お前以外を抱きたいとも思わないし、興味もねぇ」
震えるその背中を撫でた。
リヴァイは言葉が足りないよ、不器用すぎる。
218 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:47:02.56 d
そう言われたのを思い出した。気持ちをつたえるのは得意じゃない。
だったら回りくどいことは言わずにはっきり言えばいい。
「俺はお前が好きだから、お前もそう思ってくれるなら、嬉しいと思う」
一瞬戸惑うような気配がした。
そして、ゆっくりと背中に回されたエレンの両手が震えながらリヴァイの体をきつく抱きしめた。
「…女を抱いていいとか、言わないでください…オレはアンタが他の人とセックスするのは嫌です…っオレが好きだって言うなら、最後まで、手放さないでください…!」
オレも好きです、と小さく、微かに震える声がリヴァイの耳を擽った。
ちからつきた
219 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:48:19.19 d
仕事を終え、まだオフィスに残る人達に「お先に失礼します」と声を掛け、同期にも「お先」と肩を叩いた。まだ仕事の終わりそうにない同期に先に帰るなんてずるい、と言われると思ったが予想は外れ、「良い夜を」なんてニヤリと笑われてしまった。
何であんなことを言ったのか、首を傾げつつもオフィスを後にすれば、エレベーターのドアが閉まりかけていたので慌てて「すみません、乗ります」とドアを押さえた。
先客は一人だった。
「あ…お、お疲れ様です」
「お疲れ」
体を滑り込ませ、その人の隣に並ぶ。それだけで少しだけ体温が上がった気がした。この数十秒の二人だけの空間。防犯のための監視カメラはついているが、二人きりという状況に無意識的にも体が期待していた。
「っ、」
通勤鞄を持っていない方の手にひやりと何かが触れ、体が揺れた。
「リ、リヴァイさん…」
「どうした?」
やめて、の意味を込めて名を呼んだのだが、リヴァイは触れる指を止めはしなかった。
220 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:48:47.71 d
指先で人差し指の腹を擽られる。そのまま上って、指と指の間を擦られ、掌を滑った。
愛撫にも似た触れ方に、エレンは顔を俯け、静かに息を吐いた。
そして掌が重なると、指を絡められてぎゅうっと握られた。
手に触れられただけなのに、繋いだだけなのに、嬉しいと感じる。
だが、同時にもっと触れて欲しいと欲張りにもなった。
エレベーターが目的の階に着いたと音を告げる。
今日は会う約束も何もしていなかったから、ドアが開き、リヴァイが一歩足を踏み出せば繋がれた手は離れてしまうのだろう。
まさか帰りが一緒になるとは思っていなかったから、嬉しくて、余計に離れがたくなってしまう。
一緒に帰りませんか、飲みに行きませんか、なんて誘うのは簡単だけれど、男同士の恋人という世間的には白い目で見られてもおかしくない関係を気にしすぎて、エレンをさらに躊躇わせていた。
「あ…」
何と声をかけたらいいだろう、と悩んでいるうちにリヴァイの手がするりと離れた。
リヴァイはただ、「お疲れ、また明日」と言ってこの箱を自らの足で出た。
もしかしたらリヴァイの方から誘ってくれるかもしれないと思ったのに、その様子が全くないことにエレンは淋しくなった。
221 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:48:51.17 d
リヴァイは自分のことを好きだと言ってくれたけれど、エレンがリヴァイを想う程は想ってくれていないのかもしれない。
エレンもリヴァイもいい大人だ。中学生や高校生の頃のように好きだけではいられない。それはわかっているけれど。
「また明日も会えるかなんてわかんねぇのに」
エレンは課長であるリヴァイが周りに期待され、色んな仕事を任されていることを知っている。
だから頻繁に連絡することも、誘うこともしなかった。
でもそれは、それでエレンが大丈夫というわけではないのだ。もちろん会いたい、もちろん淋しい。
リヴァイが言ってくれればいくらでも一緒にいるのに。
少し離れたリヴァイの背中を見ながら、エレンも歩き出した。周りには有名な課長と、他課の社員にしか見えないだろう。
「イェーガーさん!」
高い女性の声に呼びとめられて、ハッとした。リヴァイの課のいつもの女性社員だ。
222 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:49:16.81 d
彼女はビルの玄関の所でエレンを待っていたらしく、先にそこを出たリヴァイにも「お疲れ様です」と挨拶をしていた。
「お疲れ様です!」
「ああ、お疲れ。…オレに何か用事?」
いつもはオフィス前の廊下で話していることが多いから、社内ではなく外でこうして待ち伏せをされていることに少し違和感があった。
「はい!今日はイェーガーさんのお誕生日だって聞いたので、何かお祝いできないかなと思って」
「あ、そっか…誕生日」
はい!と嬉しそうに笑う彼女を見て驚く。そうか、今日は誕生日か。
エレンは完全に忘れていた。
相変わらず仕事は忙しいし、それ以外はほとんどリヴァイのことを考えていたような気がする。
今日が何日かをわかっていても、今日が何の日かなんて考えてもいなかった。
「お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう」
「この後何か予定ありますか?なかったらご飯食べに行きませんか?もちろん私が出すので!」
「いや…そんな気にしなくていいよ。おめでとうって言ってくれただけで充分嬉しいから」
彼女の誘いをやんわりと断る。異性であれば、一緒に食事に行くことも何らおかしくはないのに、と思いながら。
223 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:49:20.46 d
少し落ち込んでしまった彼女は「そう言うと思ってました」と言って困ったように笑った。
断られることを予想していたのだろう。
「じゃあまた今度、合同で飲み会でもしましょう!」
「…うん、そうだな」
彼女が自ら大勢で、と言うのは初めてだ。
いつもエレンが皆で、と言えば渋い顔をしたのは彼女だったからこの提案は意外だったけれど、なんとなく、彼女から二人でご飯食べに行きませんか、と誘われることはもうないような気がした。
誕生日だと、彼女に言われるまで気がつかなかった。
今日一日を振り返れば、確かに先輩が少し優しかったり、同期がお昼におかずをくれたりしていた。
あれはもしかしたらそういうことだったのか、と思い当たる。
おかげでおかずは一品多く食べることができたし、定時で仕事を終えることができたけれど、彼らが予想していたようなロマンチックな誕生日はおそらく過ごせないだろう。
恋人であるリヴァイはエレンの誕生日を知らないだろうし、エレン自身も今さら言ったりしない。
約束を取り付けていないエレンは、仕事が早く終わろうが、残業しようが、今夜を一人で過ごすことに変わりはないのだ。
224 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:50:11.90 d
晩ご飯はいつもよりも豪華なものを買って行こうか。
例えば何千円ってする焼き肉弁当だとか。いやあれは予約しないといけないのだった。
「エレン」
だったら、せめて小さなケーキくらい買って行こうか。
この時間に残っているかはわからないけれど、この際コンビニのケーキだって構わない。
…そこまでしなくてもいいか。自分の誕生日なんて一年に一回は必ずやってくる日だ。
そんなことよりも、一緒にいたい人といられる日の方が何倍も、
「エレン!」
「ぅおっ!?は、はい!」
ぼんやりと考えながら歩いていたら、急に腕を後ろに引かれて体がグラついたのを何とか踏ん張って振り返る。
その犯人が誰なのかを認識すると、一瞬にして掴まれた腕が熱くなったような気がした。
「リ、リヴァイさん…!?」
「二回呼んだ」
「え?す、すみません」
ぼうっとしてて、と言うとリヴァイはわかりやすく溜息をついた。
次にちゃんと話せるのは当分後かもしれないと思っていたから、こうして会えたのは嬉しかったが、先ほどエレベーターで会った時よりも明らかに不機嫌な雰囲気を出しているリヴァイに少し戸惑った。
225 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:50:38.37 d
呼んでいるのに無視されたら嫌なのはわかるが、さっき「また明日」と言ったのはリヴァイの方なのに、と思ってしまう。
「何か急ぎの、」
「今日お前が乗るのはこっちだ」
「はっ?」
何か急ぎの用ですか、と聞く前に掴まれた腕をそのまま引かれて、エレンが乗る電車とは別の電車のホームに連れて行かれる。
そっちはリヴァイの家へ向かう電車だ。
「あのっ、どうしてそっちに…今日は何の約束もしてないし、明日だって仕事が…!」
明日は全体会議が入っている。朝一から昼を跨いで行われるそれに、課長であるリヴァイは出なければいけないはずだ。
「あと腕!離してください!」
周りからの視線を感じる。慌てて、黙ったまま腕を引くリヴァイの手をパシパシと叩いた。
「ちゃんとついていきますから!」
「…、隣」
「はい…」
ようやく腕を離してくれたリヴァイは、それでもまだ機嫌が悪そうだった。
後ろをついてくるのではなく、隣を歩けと言われて大人しく従った。そんなに疑わなくても、もう逃げないのに、と思う。
226 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:50:41.91 d
リヴァイと一緒にいられることを嫌だと思うはずがない。ただ、リヴァイの迷惑にはなりたくないと思っているだけだ。
ちょうど到着していた電車に乗り込む。この路線はいつもエレンが乗る路線よりも比較的乗客が少ないように思えた。
吊革を掴むリヴァイの隣に並んで同じように掴んだ。
リヴァイは元々、口数は少ない方だと思うけれど、今日は不機嫌が相まってもっと少なくて、何だか居心地が悪い。
オレ何かしたかな、と考えてもピンとくることは思いつかなかった。
「リヴァイさんの家に行くんですか?」
「ああ」
「そ、そうですか」
会話が続かない。
リヴァイはそれを口にしたきり自分から話すことはなく、眉を顰めながら、時折、何か考えているようだった。
駅に着くとすぐ、リヴァイは「先に家に行って風呂でもためてろ」と言って逆方向へ歩いて行ってしまった。
何がしたいんだ、と思いつつもリヴァイのマンションへと向かう。
エレンのマンションよりも広く、部屋数も多い綺麗なマンションだ。
エントランスのパネルに部屋番号を入力して開ける。
部屋へと繋がる玄関の鍵は以前もらっているから問題はない。
リヴァイが残業だという時は行かないようにしていたし、勿論アポなしできたこともないので、最初の一回以来この鍵はあまり使ったことはないけれど。
227 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:51:09.11 d
「お邪魔します…」
鍵を開けて部屋へ入ると、暗く、静かな部屋が出迎えた。
電気をつける。相変わらずゴミ一つ落ちていない、モデルルームのような部屋だ。
春らしくなってきたとは言え、まだ少し夜は肌寒くなるので弱めに暖房をつけておいた。
リヴァイがすぐに帰ってくるのかは分からないけれど、あの口ぶりだとそんなに時間はかからないのだと思う。
もう少ししてから風呂に湯を張ろうと決めて、ふかふかのソファに腰を下ろした。
今日はラッキーだと思う。エレベーターで一緒になっただけでなく、リヴァイの意図はわからないが夜は一緒に過ごせるらしい。
誕生日だから、神様が気まぐれでプレゼントしてくれたのかもしれない。
そんな子どものようなことを考えて、ふ、と笑った。
「秘密にしよ」
秘密にして、自分だけの誕生日の思い出にしよう。
リヴァイの誕生日はいつなのだろう。その時まで恋人という関係が続いていたらいいな、と思う。
もうエレンもリヴァイも誕生日を喜ぶような歳でもないけれど、それでも祝ってもらえるなら嬉しい。
それが好きな相手なら尚更。
228 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:51:12.40 d
部屋も暖まった頃、風呂をため始めた。
リヴァイが帰ってくるまで何もやることがなくてぼうっとして、風呂が溜まったという知らせと玄関を開ける音が耳に入ったのは同時だった。
すぐにお湯を止めに行って、その足で玄関先を覗く。両手にスーパーの袋を持ったリヴァイが靴を脱いでいるのが見えた。
「あの、先にお邪魔してます。風呂もためときました」
言うと、少し目を丸くしたリヴァイがじっとエレンを見つめている。
「どうかしましたか?」
「…ただいま」
「はい」
「ただいま」
「? お、お帰りなさい」
その場を動かず何度もただいま、と言うリヴァイに戸惑いつつもそう言えば、彼は満足そうにしてリビングへ消えていった。その後ろを追いかける。
「いっぱい買い物してきたんですね。仕舞うの手伝いますか?」
「いい。お前は風呂に入ってこい」
「え、でも」
「ゆっくり浸かって来い」
229 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:51:38.20 d
キッチンにスーパーの袋を置いて、着替えもせずスーツの上着だけを脱いで何やら作業を始めたリヴァイの有無を言わせない態度にエレンも折れた。
着替えは以前ここに来た時に揃えたものがあったから、それを寝室のクローゼットから出してきた。
スーツも皺にならないようにハンガーを借りて掛けさせてもらった。
おそらく今日は自分の部屋へは帰れないだろうし、朝一で家に帰るにしたってまたこのスーツを着なければならないだろうから。
キッチンではリヴァイが何かを切っている音が聞こえてくる。
なかなか手際が良かった。
リヴァイが料理をするなんて想像もしていなかったけれど、コンビニの弁当などを食べている方が想像できなかったから意外ではなかった。
何を作ろうとしているのか興味はあったが、聞いてはいけないような雰囲気が漂っていたので見つめるだけにしておいた。
「シャツは洗濯機にいれておけ」
「わ、わかりました」
視線は手元からはずことはなかったけれど、見つめていたのがバレてしまったようで少し恥ずかしい。
早足で風呂に向かい、羞恥を晴らすようにして脱いだシャツをバサリと洗濯機の中に放り投げた。
今日のリヴァイは調子が狂う。
230 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:51:41.71 d
夜はきっとセックスするのだろうと当然のように思ったので、手が勝手に体を隅々まで綺麗にしていた。
そして髪も洗って湯船に浸かった後はずっとぼんやりとリヴァイのことを考えていた。
次第に視界もぼんやりとし始めて、逆上せる寸前だと気がついて急いで上がった。少しふらつくような気がするけれど、結果的にリヴァイの指示通りゆっくりはできたと思う。
脱衣所で少し落ちつくまで蹲っていると、扉が開いた。
「…まさか逆上せたのか?」
「はい…あ、いや、いいえ」
「ほら」
顔を上げると、額に冷たいものが当てられた。冷えたミネラルウォーターだった。
「すみません…ありがとうございます」
それを受け取ると、リヴァイがエレンのまだ濡れて水滴の垂れる髪をタオルで優しく拭ってくれた。
「落ちついたら、ちゃんと髪乾かしてから来い」
そう言ってリヴァイは脱衣所から出ていった。
231 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:52:07.33 d
どのくらい風呂に入っていたのだろう。
リヴァイが様子を見にくるくらいだから相当時間が経っていたのかもしれない。
はぁ、と溜息をつくと、ミネラルウォーターを煽る。少しだけホッとした。
そしてしばらくしてから髪を乾かして、リビングへ戻る頃にはすっかり体調は良くなっていた。
リビングへ続くドアを開けると、いい匂いがしてきた。
途端に空腹なことにも気が付く。空腹で、しかも熱い風呂に長時間入っていればそりゃあ逆上せるな、とエレンは情けなくなった。
「もう平気か?」
「はい、すいません。ちょっと目眩がした程度なのでもう大丈夫です」
「そうか」
座れ、と促されて椅子に座ると、テーブルの上にはこの短時間に作ったのかと驚くほど綺麗な料理が並べられていた。
エレンはあまり料理をしないから簡単なものなのか難しいものなのかはわからないが、丼料理じゃないことだけはわかる。
「これ全部リヴァイさんが作ったんですか?」
「急だったからそんなに手間がかかるものは作ってねぇ」
そうは言いつつも自分では作りそうもない鮭とほうれん草のクリームパスタに、鯛のカルパッチョ、きのこのたくさんのったチキンソテーはガーリックのいい香りがして食欲をそそった。
レストランで出てくるように綺麗に盛られている料理にエレンは少し感動した。
いただきます、と手を揃えてさっそく料理を口にすると見た目通り、味もとてもエレン好みで美味しかった。
232 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:52:10.98 d
食後にはデザートまでついてきた。手作りだと言う苺のパンナコッタはとろけるような食感で、苺の酸味がまた爽やかだった。
リヴァイがこんなに料理ができるとは知らなかったし、好きなのも知らなかった。
これまで自分たちはセックスするためだけに会っていたから、恋人にならなければ一生知ることもなかったかもしれない。
「すごく美味しかったです。ご馳走様でした」
「こんなモンしか作ってやれなくて悪かったな」
「いえ全然!美味しかったです」
「もっと前から知ってたらちゃんと準備していた」
「? どうしても今日じゃなくちゃダメだったんですか?」
首を傾げると、リヴァイが眉を顰めてこちらを見ていた。
「…何ですかその顔」
「お前…今日誕生日なんだろう?」
え、と目を丸くした。
リヴァイは少し不機嫌そうに目を反らしながら、紅茶を啜った。リヴァイが淹れてくれた紅茶は香りが良くて、とても飲みやすかった。
「どうして知ってるんですか?」
「さっきおめでとうって言われてただろうが…」
「あー…なるほど」
「そういうことは先に言っておけ」
リヴァイは今日が誕生日だと言うことを教えなかったことに対して少し拗ねていたらしい。
233 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:52:17.38 a
234 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:52:36.26 d
でも、誕生日だと知って慌ててエレンを連れて来て、料理を作って、祝おうとしてくれていたのか。
ふは、と思わず笑ってしまった。
「すみません、オレ今日誕生日なんです」
「もう知ってる。…おめでとう。何か欲しいものはあるか?」
「ありがとうございます。美味しい料理作ってもらったんで、それだけで嬉しいです」
今日という日を自分だけの思い出にしようと思っていたけれど、リヴァイはちゃんと祝ってくれた。
毎年一回は必ずくるこの日を自分の特別な人と過ごせたことはとても嬉しいことだと思う。
それだけで今日と言う日が特別になる。
「あ、でもリヴァイさんの誕生日も教えてください」
「…十二月二十五日だ」
「クリスマスなんですか?」
そうだ、と頷くリヴァイを見ながら結構先だなと思う。
それまで一緒にいられるかはわからないけれど、今度はエレンが祝ってあげたい、と思った。
「じゃあその日はオレが料理を作るので、それまでしっかり料理教えてください」
これは、これから先も一緒にいたいというエレンの願いだ。
235 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:52:39.80 d
・・・
風呂上がりのリヴァイから自分と同じ香りがする。
正確には、今日はエレンがリヴァイと同じ香りを纏っているのだけど、近すぎて、もう境界線なんてわからない。
全身を隅から隅まで舐められて、吸われて、とにかく泣きだしたくなるほど甘やかされた。
そのせいでどこに触れられても体が跳ねてしまうし、シーツに擦れるだけで声が出てしまいそうだった。
「んっ、ぁ、…っも、いいって…っ」
「まだだ」
「ああっ、ぅ、…舌で、ぐりぐりって、しないで…っんあ」
もうぐずぐずになっているはずの後孔にリヴァイの舌がにゅるりと入ってくる。
そのまま固く尖らせた舌に内側の肉をぐりぐりと押されて、それを押し返すように締め付ける力が強まった。
自分の後孔が開いていくのがわかる。リヴァイの優しい愛撫で緊張を解いた後孔が、その指と舌によってどんどん柔らかくなっていった。
「う、んぅ…っリヴァイさん…っも、いれてください…っあ、もう充分、だからっ…ぁ、」
砕けそうになる腰に頑張って力をいれて、向きを変える。
「ここっ…はやく、ぃれて…ください…っ」
枕に頭をのせ、腰を少し浮かせて散々解された後孔を自身の指で広げて見せると、ローションがくちゅりと音を立てた。自分の指がそのぽってりとした入口に触れただけで体がビクンッと跳ねる。
236 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:53:05.59 d
ここに早く入れて欲しい。その熱くて固い熱を埋め込んで、奥まで激しく突いて欲しい。
「ぁ…っ、」
そこに、ぴとりとリヴァイの熱が宛がわれる。
後孔が期待してその先端に吸いつくようにキスしているのがわかった。
「はやく、…っリヴァイさん、いっぱいしてください…っいっぱい、ぎゅってしてください…っん」
「エレン、」
リヴァイが腰を進めると同時に体を少し前に倒す。
エレンの大好きなリヴァイが、その体がこんなにも近くにある。
エレンは腕を伸ばしてリヴァイの背中に回すと、そのままぎゅうっと抱きついた。
ずっとずっと、こうしたかった。
でも、好きになってはいけないと、好きになるのが怖いと思ってずっと手を伸ばさないようにしてきた。
でも今はそんなことしなくてもいい。好きなだけ抱きしめていい。
もうリヴァイはエレンのもので、エレンはリヴァイのものなのだ。
「アッ、ん、好き、です…っリヴァイさ…っひぅ、」
「…俺もだ、エレン」
237 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:53:09.11 d
疲れてしまったのか、体を丸めて眠るエレンの顔を見て、はあ、と息をついた。
エレンが可愛くてたまらない。
与えてやれるものは何でもしてやりたいと思うのに、どこか遠慮するエレンは今日が誕生日だと言うことも教えてはくれなかった。
それは単に自分でも忘れていただけだと言っていたが、きっとリヴァイがこうして言わなければずっと言わなかったに違いない。
渡してあった合鍵もめったに使うことがないのだ。
ただいま、と言って多少は言わせた感があっても「お帰りなさい」と言ってくれたのは正直嬉しかった。
リヴァイもエレンも我儘なんて言うような歳でもないし、男だから大体のことは何でもできてしまうけれど、それでも我儘を言って欲しいと思う。
「迷惑なんて、考えなくていい。お前は我慢しすぎだ」
エレンがリヴァイに迷惑をかけてはいけないと思っていることを知っている。もっと会いたいという願いはリヴァイしか聞いてやることができない。
リヴァイはただ待っているのだ。エレンが自分から一緒にいたいと望んでくれることを。
238 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:53:35.09 d
「リヴァイさん、起きてください。オレ一旦家に帰るので先に出ます」
隣でまだ眠っているリヴァイを揺り起す。
ぐっすり寝ているからこのまま起こさずに帰ろうかとも思ったが、以前、帰る時はいくら寝ていても絶対に声をかけろと言われたのだ。
「…いっしょにいけばいい」
「でもオレ着替えが…」
昨日勢いでシャツを洗濯機の中に入れてしまったから、着ていくシャツはないし、人の少ない朝の電車でならまだ今着ている服でもあまり人に会わずに帰れる。
だからできるだけ早く家を出たかった。
このままじゃ寝ぼけたリヴァイに引きとめられて、帰れなくなってしまう。
仕方がないから無視して出るか、とベッドを降りようとした。
が、枕に顔を押し付けたままのリヴァイに手首を掴まれてしまった。
離してください、と言っても全く離す様子もないし、寝ているくせに力が強くて全然外せない。
このままじゃ本当に、とエレンは焦り出す。
「シャツならある」
「は?オレ、リヴァイさんのは着れませんよ?」
「ちがう、お前の、きのうかってきた」
「え?」
安いので悪いが、と続けられる。
昨日、買いものに行った時に一緒にエレンのサイズのシャツを買ってきてくれていたらしい。
「だからまだ寝れる」
そう言ってまた布団の中に引きずり込まれて、がっちりと抱きつかれてしまった。
239 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:53:38.55 d
リヴァイが案外朝に弱いことを知った朝だった。
二度寝して、さすがにもう起きないとやばいと思ってリヴァイを起こして適当に朝食を食べた後、買ってきてくれたシャツを着てスーツに着替えた。
「あ、」
「どうした、サイズ合わねぇか?」
「それは大丈夫です、ありがとうございます。いや、昨日と同じスーツなのは構わないんですけど、ネクタイも一緒ってのは…って思って」
スーツもネクタイも昨日と同じなんて、自分の家に帰っていません、と背中に張り付けて歩いているようで少し気が引ける。
そんなに気にする社員もいないだろうけれど、あの同期ならきっとからかってくるに違いない。
「これやってけ」
リヴァイがクローゼットからネクタイを一本取り出してくれた。
「え…ありがとうございます」
落ちついた、少し暗めの青色のネクタイだった。
240 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/01(金) 23:54:06.02 d
触った感触が普段自分のつけているようなものとは少し違っていて、ずっと触っていたくなるような生地だ。
「それお前にやる」
「え!?これすごい高そうなんですけど!?」
「俺が一番気に入ってるやつ」
「そ、そんなん貰えませんよ!」
つっ返そうとしてネクタイを差し出すと、正面に立ったリヴァイがそれを手にしてエレンの首に回した。
「昨日誕生日だったろうが。使ったやつで悪いが、貰ってくれ」
そう言って、手際良くきっちりとネクタイを結ばれてしまえば、もう貰うしかない。嬉しくないわけがないのだ。
「あ…りがとう、ございます」
「誕生日おめでとう。今度はちゃんと何か買ってやる」
赤い顔は俯いても隠せない。
リヴァイが、ふ、と笑う声が聞こえた気がした。
番外編・おわり
エレンちゃんお誕生日おめでとう!
実は同じ会社でリヴァイともエレンとも違う課にいたアルミン曰く
「あれ、エレン。今日はいつもより大人っぽいね」
「いや大人なんだけど」
「えーっとなんて言うのかな、リヴァイ課長っぽい?」
「!!」
「そうだ、誕生日おめでとう」
「…ありがと」
241 :
【大凶】 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/02(土) 00:05:27.24 0
なんやてチョコはあかんのか
わいもそろそろ勉強せなあかんのやゴロゴロ
242 :
名無し草 (ワッチョイ 2785-eoZT)
2016/04/02(土) 00:06:42.21 0
わいやで
ソシャゲが鯖落ちして見られへん
243 :
【大凶】 (アウアウ Sa6f-Dv7U)
2016/04/02(土) 00:25:55.40 a
〔仝L仝〕腰アニ運
244 :
【吉】 (ワッチョイ 9f17-G+K4)
2016/04/02(土) 00:31:17.17 0
今日のわいの運勢♡
245 :
【大吉】 (アウアウ Sa6f-sK0p)
2016/04/02(土) 00:35:37.34 a
彡゜^・∋ゴ【金運】
246 :
【中吉】 (ワッチョイ 6fee-Iq2g)
2016/04/02(土) 00:36:47.65 0
247 :
【大凶】 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/02(土) 00:49:04.34 0
夜更かししたいけどそろそろ寝るで
おやすみん
248 :
【豚】 (ワッチョイ 9f17-G+K4)
2016/04/02(土) 00:49:28.91 0
もう昨日の放送分からカツーン3人なんやな…
249 :
【吉】 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/02(土) 00:49:30.10 0
大凶で寝るのは嫌や
250 :
【だん吉】 (ワッチョイ 9385-eoZT)
2016/04/02(土) 00:53:15.41 0
わいの仕事運
251 :
【小吉】 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/02(土) 00:59:49.77 0
明日の運勢
252 :
!omikuji (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/02(土) 01:00:30.72 0
みんな寝てもうたんか早寝BBA達や
253 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 01:31:30.47 d
254 :
名無し草 (ワッチョイ 371c-G+K4)
2016/04/02(土) 02:02:57.95 0
わいも寝るう〜
255 :
名無し草 (ササクッテロ Spef-FRpl)
2016/04/02(土) 05:45:43.93 p
>>243 (*´・J・`)ゴリちゃんおはよう…おみくじありがとう…!…昨日はうそついてごめん…
256 :
名無し草 (ワッチョイ 9f17-G+K4)
2016/04/02(土) 07:31:32.79 0
おはよう〜
257 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 07:40:36.77 a
おはやでBBAたち
258 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 08:15:41.19 a
おはやで仕事行く準備せな
259 :
名無し草 (スプー Sd9f-dfgU)
2016/04/02(土) 08:29:26.45 d
おはーわいも仕事
イカの缶詰食べたいねん
260 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/02(土) 08:38:43.32 0
おはようやで
今日は靖国神社行って出来たら日暮里の問屋行きたいねん
261 :
名無し草 (ワッチョイ 7393-Iq2g)
2016/04/02(土) 08:53:54.88 0
おはミン☆彡
262 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 08:57:54.78 a
おっはーミ☆ン
263 :
名無し草 (ワッチョイ 371c-G+K4)
2016/04/02(土) 08:57:55.29 0
おはやでクソババアたち
予定がどんどん入ってきよるは
もうやめてやわいのキャパは余裕0よ!
264 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 08:58:40.55 a
265 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 09:00:25.76 0
おはよ花見日和やは昼と夜桜両方楽しむねん
266 :
名無し草 (ワッチョイ 371c-G+K4)
2016/04/02(土) 09:04:29.89 0
>>264 全部仕事関連や係の予定や
友達からの誘いは0よ!
267 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 09:21:44.17 0
デパ地下の花見弁当先にネットで見てるけど高杉やろ
やっぱりり買わんで!先に7000のとか見て1100ぐらいの見たらめっちゃショボいねん
7000の弁当とか絶対買わん3000でも花見に買わん
268 :
名無し草 (ワッチョイ ab7e-G+K4)
2016/04/02(土) 09:41:37.39 0
おはやでー
初めて企業の同人誌通販してみたんやけど普通の商品みたいにすぐ発送メールこんのやな
来るの待ち遠しいはー
269 :
【年収 7819 万】 (スプー Sd9f-dfgU)
2016/04/02(土) 09:45:53.06 d
忙しい人は恋人にもっと構って欲しいとか言われたらウザいもんやろか
気持ちがあれば時間の工面はできるんちゃうか
270 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 09:50:40.53 0
>>269 つきあってる長さと信頼度による気がする
271 :
名無し草 (ワッチョイ ef85-sKwB)
2016/04/02(土) 09:55:57.79 0
昨日はリジオンリー本いっぱい予約始まって春コミ以上の賑わいやは
リハオンリー本はちらほら出とるけどジョンオンリー本あらへん
通販するサークル自体も激減しとるんやろか
お粗末39 刀23 進撃16(リジ13、ルリ2、リハ1) 黒子5 決壊5
ちな全年齢・18禁別200冊中に進撃本は21冊ランキンで、リジ17、リハ2、ルリ2やで
4/1付 特に表記ないものはB5、価格は税抜き表示やで
※順位かぶりを無視した絶対順位では下から10番目の順位は59位、20番目は36位や
1 オリジナル 18禁 38p 597円 予約3日目
2 リジ 全年齢 36p 700円 予約1日目
3 リジ 全年齢 A5 54p 938円 予約1日目 完売
4 黒子 18禁 64p 表紙2色刷り 1,194円
5 リジ 全年齢 A5 40p 746円 予約1日目
6 お粗末 18禁 36p 719円 完売
7 お粗末 18禁 48p 700円 完売
8 リジ 全年齢 44p 896円 予約1日目
8 決壊 18禁 32p 522円
10 刀 18禁 28p 448円
11 お粗末 全年齢 A5 60p 600円
12 刀 全年齢 A5 28p 597円
13 徐々 18禁 28p 560円 予約1日目
13 お粗末 18禁 40p 500円
15 お粗末 全年齢 ページ数表記なし 896円 予約2日目
16 オリジナル 全年齢 30p 550円
17 お粗末 18禁 36p 691円 予約1日目 完売
18 お粗末 全年齢 A5 24p 448円
19 リジ 18禁 文庫 88p 850円 予約1日目
19 お粗末 全年齢 48p 938円
19 お粗末 全年齢 40p 746円 完売
その他の進撃カプの最高位
33 リハ 18禁
40 ルリ 18禁
同人グッズの進撃グッズは24位にリジNN缶バッジなど3点ランキンや
ちな24位が57点、10位が14点順位かぶりやで
男に売れとる女向け本の上位に進撃本ランキンなしや
男向け本と合わせての総合ランキングの15位まで女向け本が独占や
女向け本は全部で88冊とちょっと増えとるで
女王のデイリーは13位にルリ本ランキンや
272 :
!omikuji (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/02(土) 09:56:07.77 M
>>269 自分が疲労しとるときに色々言われたらぐったりきそうや
273 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 09:58:00.85 0
自分の場合でしかわからんけどつきあいたてはまあそんな事言う男は嫌やけど(女はええ良くあるパターンや)会いたいとか言われたら無理するかもや三回に一回くらいは無理する
けどつきあい長くなってそれ言われたら「忙しいて見てわからんのか」とか思ってまうかもや
けどそれは決して愛情が薄れた訳やないねんむしろ信頼しきって愛情があるから甘い考えしてまうというか
わい限定の意見や
274 :
名無し草 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/02(土) 10:12:58.38 M
イベントしばらく行ってないけど行くと万飛ぶしな
5月まで我慢や
275 :
名無し草 (ワッチョイ b740-G+K4)
2016/04/02(土) 10:30:15.76 0
朝ご飯のパンがいまいちやった
負けた気分やで
276 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 10:41:07.13 0
花見より大事なヨドバシ思い出したで
冷蔵庫掃除してないしヤバイは
277 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/02(土) 10:41:36.09 0
イメグラ直っとるな
昨日RAHジョンうpしてや言うとったババアおるやろか
ジョンこんな感じやで
ノーマル顔はかなりええ感じやけど我慢顔の方は鬼瓦に見えるねん
あと見ての通り身長高くて顔が他キャラより小さめや
それでも馬面感出とるのはほんま嬉しいは
278 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 10:48:53.72 a
>>277 普通にかっこええやんわいも買えばよかった…
そのポーズなんやねん草
279 :
名無し草 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/02(土) 10:50:09.75 M
わい原作やとあんまり馬面感じんのやけどな
ジョンは馬面なんか
280 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/02(土) 10:52:28.96 0
>>279 それは最近みんな顔が長くなる呪いをかけられとるから…
個性が埋もれてもうてるだけやと思う
281 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 10:54:58.87 0
>>277 アニちゃんかわええな!
一枚目恋するフォーチュンクッキーや
282 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 11:04:03.02 a
恋やなくて変やないか?
283 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 11:29:34.97 a
284 :
名無し草 (スプー Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 11:30:57.71 d
上野めちゃ混みそうやけど花見楽しみやん
ついでに浅草寺の御朱印も貰いに行くで
285 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 11:31:02.32 a
オレンジのジャケット謎やは
286 :
名無し草 (ワッチョイ abb6-Iq2g)
2016/04/02(土) 11:33:01.26 0
わいやで!
今日も勉強頑張るは
287 :
名無し草 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/02(土) 11:34:47.58 M
わいは靖国神社に御朱印貰いに行くで
288 :
名無し草 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/02(土) 11:39:30.12 M
わい婚活BBAやけどスタジオ写真のせいか見合い申し込みそこそこ来るは
流石フォトショは凄いな
289 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 11:46:15.32 a
RAHええなあ
わいの部屋にも置く場所があれば…
290 :
名無し草 (ワッチョイ 2785-eoZT)
2016/04/02(土) 11:50:40.77 0
わいちゃん汚部屋やけど(2回くらいG出たことある)7万の腰ちゃん無造作に置いてあるで
291 :
名無し草 (ワッチョイ e332-ifqL)
2016/04/02(土) 11:57:10.03 0
汚部屋のBBAはなんで掃除せえへんのや…
292 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-Iq2g)
2016/04/02(土) 11:57:45.96 a
293 :
名無し草 (ワッチョイ 37be-wL9x)
2016/04/02(土) 12:01:14.63 0
今日の天気でサンダルつて寒いやろか
294 :
名無し草 (ワッチョイ 2785-eoZT)
2016/04/02(土) 12:04:13.96 0
>>292 いやや
グッズの箱とか学生時代の教科書とかついついとっておいてまうねん
いつか使うかも思ってまうんや
295 :
名無し草 (スプー Sd9f-dfgU)
2016/04/02(土) 12:09:25.76 d
296 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/02(土) 12:11:12.99 0
寒いで今日
わいストールと手袋しとるし
297 :
名無し草 (ワッチョイ e332-ifqL)
2016/04/02(土) 12:14:41.61 0
>>294 物持ちのええBBAやな
わい高校の制服とか指定カバンとかは人に譲ってもうていっさい残ってへんは
298 :
名無し草 (ワッチョイ b740-G+K4)
2016/04/02(土) 12:18:01.36 0
教科書なんて何に使うんや
調べたいことあってもネットで調べたほうが早い
299 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 12:18:24.23 a
300 :
【年収 2453 万】 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 12:18:33.33 a
忙しくて掃除の暇ないは…
301 :
名無し草 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/02(土) 12:20:18.39 M
靖国神社はリア充だらけや
わいの精神力が削られるは
302 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/02(土) 12:21:19.31 0
掃除が手間なのって溜め込んで何捨ててええか判断に迷うからよな
そう思って溜め込まないようにして何でも最初のうちに捨ててまうようにしたらこの前重要書類捨ててもうたは草
303 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-RFXF)
2016/04/02(土) 12:21:47.84 a
304 :
名無し草 (ワッチョイ e332-ifqL)
2016/04/02(土) 12:22:50.82 0
靖国へは5年くらい前のGWに行ったきりやけど
なんや外国人だらけやった記憶しかないは
305 :
名無し草 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/02(土) 12:26:13.60 M
色んな人おるは
わいはジャガバターを食べるか迷っとる
306 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 12:26:37.68 0
わいもそろそろヨドバシと花見に行ってこ
若い子いっぱいおるやろか
わいが若い時は花見に興味なかったけど
夜桜も行くけどこっちはデートしてるカプいっぱいおりそうやな
307 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 12:30:59.82 0
でも桜の木の下で愛を誓うと儚く散りそうな気もするは
松やとええんかな常緑樹やし
308 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/02(土) 12:32:21.64 a
>>277 2枚目確かに鬼瓦やな草
でも親戚の内気なショタを一発ネタで笑かしに行くにぃにぽくてかわええは
309 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/02(土) 12:39:39.30 0
>>308 親戚の内気なショタ(超大型)…?
別に鬼瓦させる気はなかったんやけど指笛どうやってさせたらええか分からなかったねん
310 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 12:40:35.72 a
表紙の長瀬on新リかわええーよBBAー!
311 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/02(土) 12:48:25.21 a
>>309 なんかちっこいのが急な鬼瓦にびびってるように見えるねん
あーこれ指笛の指なんか!確かに使い所少ないは
鬼瓦くらいしかできへんのでは
312 :
名無し草 (ワッチョイ e332-ifqL)
2016/04/02(土) 12:49:44.10 0
313 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 12:55:19.47 a
>>311 オプションでヨダレでも付いとればよかったんにな
314 :
名無し草 (ササクッテロ Spef-wL9x)
2016/04/02(土) 12:59:39.45 p
盆暮れ正月が休みやないなんて聞いてへんから辞めてもええかな
315 :
名無し草 (ワッチョイ 0b1c-G+K4)
2016/04/02(土) 13:04:59.70 0
>>277 この皮のジャケットみたいなのなんや?
超腰ちゃん脅えてるは草
316 :
名無し草 (アークセー Sxef-G+K4)
2016/04/02(土) 13:09:00.06 x
>>315 なにって兵団服やろ?
この超腰ちゃんかわええよな
表紙きてたんやな
いまのミン別に長瀬に指示してへんけどええんかイサヤマン草
317 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/02(土) 13:13:11.18 a
>>316 ファー長瀬と新リかわええ!久々の当たり表紙や
318 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 13:13:54.63 a
>>316 表紙はあくまでもイメージやから…
ジョン長瀬の髪掴むの好きやね
319 :
名無し草 (ワッチョイ 3785-RFXF)
2016/04/02(土) 13:14:16.48 0
320 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 13:14:22.99 a
321 :
名無し草 (ワッチョイ e332-ifqL)
2016/04/02(土) 13:14:59.70 0
>>316 長瀬がめっちゃ顎掴まれとる!
あと顔だけ出しとるコニタンがなんかかわええな
322 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/02(土) 13:16:15.63 a
サイドから顎挟まれる長瀬キュートやは
めっちゃ握ってるけど熱くないんやろか
323 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 13:17:04.12 a
最近の長瀬とちっこい仲間たちな感じ好きや
324 :
名無し草 (ワッチョイ b740-G+K4)
2016/04/02(土) 13:17:24.26 0
>>316 コニたんのひょっこり顔出しました感がかわええ
325 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 13:18:26.49 a
>>316 かわええ!けど色の塗り方のせいかなんや変やは
326 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 13:24:41.86 0
あーもうはよ花見行きたい!洗車ワックス掛けとかせんでも死にゃせんねん
松陰神社って吉田松陰の神社なんやな今の今まで知らんかったダハハ
吉田松陰あんまり詳しくなかったけど調べたら面白いオッチャンやった
氏神神社の一つやのにどんなご利益あるのかわからずじまいや
>>316 ミカミン手のひらに乗ってるかわえすぎやろ!!!
ジョンの髪の毛ギュッがまた///
でもこの表紙なら調査兵団のリベンジ期待できる?やっぱまだ先やろか
327 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 13:28:24.75 a
19巻ももうすぐやったな
楽しみや
328 :
名無し草 (ワッチョイ 2785-eoZT)
2016/04/02(土) 13:28:33.54 0
329 :
名無し草 (ワッチョイ e3c2-pU0W)
2016/04/02(土) 13:37:21.14 0
わいも花見いこかな
万博公園や
330 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 13:39:06.16 a
あれ原作塗りやとミンって別に目青くないんやっけ
ジョンもアッシュカラーっぽいは
331 :
名無し草 (スプー Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 13:42:20.06 d
>>330 原作やとミンは大体金とか薄茶て感じやな
原作でも青なんはヒスちゃんアニちゃんルルぽい
332 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 13:43:35.27 a
>>331 はーせなんや
やっぱアニメのイメージって強いんやなぁ
333 :
名無し草 (スプー Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 13:45:26.55 d
>>332 わいも今単行本の表紙見かえして初めて気づいたは
ジェルは二次も原作ぽい色で塗る人見るけどミンはもっぱら碧眼な気するは
334 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/02(土) 13:45:40.09 a
>>331 ファー言われてみればそうやは
結構目の色違うキャラ多いねんな
335 :
名無し草 (スプー Sd9f-dfgU)
2016/04/02(土) 13:51:38.71 d
髪の色でも目の色でも絶対に齟齬がおきんキャラはミカちゃんくらいやろか
336 :
名無し草 (ワッチョイ 53eb-dfgU)
2016/04/02(土) 13:52:44.89 0
ミンずっと青目やと思ってたは
薄茶もええな
337 :
名無し草 (ワッチョイ 9fd9-G+K4)
2016/04/02(土) 13:53:42.41 0
>>335 サッシャやハンちゃんも原作アニメで変わらんな
338 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 13:54:44.84 a
サッシャはよだれたらしてどないしたんや
339 :
名無し草 (ワッチョイ 9fd9-G+K4)
2016/04/02(土) 13:56:18.04 0
>>338 ゲームやと猿と戦っとる時に「こいつ倒せば肉手に入るのでは!?」言うてたは
340 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 13:57:17.70 a
341 :
名無し草 (ワッチョイ 0bc8-eoZT)
2016/04/02(土) 14:15:00.21 0
>>316 今月号表紙めっちゃええやん!!
ジミサコもおるの嬉しいは!!2冊買お
342 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-/+e+)
2016/04/02(土) 14:18:13.70 a
バレもそろそろやろか
343 :
名無し草 (スプー Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 14:24:17.89 d
>>316 ええやん
リリ班活躍するターンくるの期待しとるで!
344 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:03:12.05 d
まだ寒さの残る新春の季節である。エレンの話をつまみに酒を飲み、ほろ酔いになりながら居酒屋を出た。
いつもは話が弾みすぎて終電ギリギリに出る二人が、今日ばかりは早めに店を出た。
居酒屋の前で「ごちそうさまでした」と笑顔でいい、駅の方向へ向かうエレンのコートの袖を引っ張った。
「うちにこないか?」
リヴァイの問いかけに、エレンは顔を真赤にして小さく頷いた。
リヴァイは初めてエレンを自宅に誘った。薄暗い住宅街を二人で手を繋いで歩く。
「まだ寒いですね」
「…そうだな。まだコートは手放せない」
リヴァイのコートの袖口に、二人の手が潜り込んでいる。
エレンは時々周囲を見回して誰もいないことを確認すると、嬉しそうに微笑んで、ぎゅうと強くリヴァイの手を握る。
エレンの赤らんだ顔を見てリヴァイもまた強く手を握り返した。
酔いを覚ますという方便で、二人は二駅分手を繋いだまま暗闇の中を歩いた。
数十分の逢引に会話はなく、二人の間には繋げた手と同じような温かい沈黙が流れていた。
リヴァイが家の鍵を取り出して、玄関のドアを開けるのをエレンはそわそわと落ち着きなく眺めていた。
「もう引き返せないが、いいか?」
「……だ、大丈夫、です!」
エレンは真赤な顔をごまかすように、手の甲でぐしぐしと鼻先を拭い、そのように言う。
345 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:03:51.19 d
リヴァイはフッと笑ってエレンの頭をなでた。
「じゃあ入れ」
ドアを大きく開き、エレンを手招く。
「し、失礼します…」
二人の手は、まだしっかりと握られたままだ。まだ寒さの残る春先だというのに、二人の指先はぽかぽかと温まっていた。
「ここが、リヴァイさんの、家…」
エレンは呆然と、リヴァイの家の中を眺めた。
口を開けっ放しにしながら天井を見上げるエレンを見ながら、玄関のドアの鍵を後ろ手に閉める。
もうただでは、こいつを朝まで帰さない。リヴァイは錠を落とすと同時にそう思った。
「エレン」
家に上がったまま、廊下で棒立ちになっているエレンを胸に抱き寄せて、唇を押し付ける。がたんっと二人の足が靴箱にぶつかった。
エレンが抱えたバッグが廊下に落ちる。リヴァイのバッグも、同じように落ちた。
「…いいか?」
エレンは顔を逸らしながら小さく頷いた。壊れたのかと思うほど、バクバクしている心臓の割に、優しい声で聞けたと思う。エレンの身体を攫うように抱き上げて、雪崩れ込むように寝室に飛び込んだ。
「リヴァイさん」
ベッドマットに足を掬われたエレンは背中からベッドの上に倒れ、リヴァイはその上に乗り上がった。
「優しくする。気持ちよくする。抱かせてくれエレン」
そうしてリヴァイは、エレンを抱いた。
346 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:03:55.18 d
***
リヴァイは仕事のデスクに座りながら、重たいため息をついた。
『予定があるので、今日は無理です』
仕事の休憩中、エレンから来たメールにリヴァイは頭を悩ませていた。
食事の誘いをしたのだが、つれなく断られてしまった。
エレンに断られるのは今日に限る話ではなく、その度にリヴァイのため息は重たさを増す。
先週、初めて二人で夜を過ごしてから、丸三日エレンとは連絡がつかなくなった。
エレンを置いて家に出たあと、何度かエレンに電話したが、彼が出ることはなかった。
心配になったリヴァイは仕事を終えて、すぐに帰宅した。
テーブルには浮かれた朝食が、手付かずで残っていた。どうやら浮かれていたのは、自分だけだったらしい。
リヴァイはまた、はあと重たいため息を付いて、目の前の仕事を睨みつける。こんな日に限って、仕事の量は多くなる。
もしかしたら、エレンは自分たちの関係にああいうことはまだ早いと思っていたのかもしれない。
エレンは性的な行為に明るい方ではないから尻込みしているだけだろうと思って、強引に引っ張りこんだのが悪かったか。エレンはリヴァイの押しに弱いのだ。
347 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:04:22.34 d
二人で会うようになって半年、付き合って三ヶ月、キスもしたし、そういった雰囲気に何度もなりかけた。
先週二人で会う約束は、リヴァイが数週間前から取り付けていたものだったから、そういうことが起こると、エレンもちゃんとわかっていたはずだ。
家に呼んだ時、少なくともエレンは嬉しそうな顔だったように思う。
一生心に留めておこうと思うくらい、エレンは嬉しそうに笑った。
『じゃあ、明後日は?』
エレンのそっけないメールに、なお食いついて返事をする。
『最近、忙しいんです。ごめんなさい』
朝起きた時のエレンは、初々しくも決して怒っていたり、失望したりしているようには思えなかった。
一体何が悪かったか、リヴァイは全く思い当たるフシがない。
会えばわかるかと思うのに、会うことも難しいのではリヴァイは一人で悶々と悩むだけだ。
『いつなら会える?暇な時にうちに泊まりにきてほしい』
エレンの返信は随分時間が経った頃に返ってきた。
『来週なら……』
あまりにも歯切れの悪い返事に、リヴァイはまた本日何十回目かの重たいため息を付いた。
348 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:04:26.36 d
***
「いや、ならしない」
やめる気なんてないのに、悪い大人は余裕のあるふりをしてエレンに許可を求める。
風呂あがりのエレンの濡れた髪の毛や、寝間着からちらちらと見える鎖骨やうなじに、気もそぞろにしていたというのに、こういう時だけは大人のふりだ。
「ん…やじゃないです…」
リヴァイの手のひらに、エレンはすりすりと頬を寄せて両目を閉じた。
「すごく、きもちいい…」
ふっくらとした頬はまだ子供らしさが残っていて、手で撫でると気持ちが良い。
リヴァイは自分の頬をエレンの頬にすり寄せ、抱きしめるとぱたりとソファの上に押し倒した。
肌触りを愉しむようにエレンの喉仏や鎖骨に指先を滑らせて、エレンの服をまくり上げた。
「あ、あのリヴァイさん…」
ぎゅっと怯えたようにリヴァイの腕にしがみついてきたエレンに、リヴァイは首を傾げる。
「どうした?」
前回の出来事を踏まえ、リヴァイはなるべくエレンが言いやすいように優しく聞いてみる。
「あ、あの…ですね…お願いがあって…」
エレンは慌てた様子で、もたもたと喋った。
349 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:05:00.28 d
リヴァイはエレンの頭を撫でながら、顔を見てゆっくりと聞いた。ここで無理をしたら、なんにもならない。
エレンはますます顔を赤くして、リヴァイの腕にしがみつき肩口に顔を埋めると、リヴァイの腰に足を回してしがみついた。自分の顔を見せたくないらしい。
「お、おしりさわるの、きんし、で…」
「は…?」
「おしり、触らないなら…していい、です…」
おしりとは、ただの尻のことではないだろう。
先日、リヴァイが丹念に優しく溶きほぐし、その柔らかさと居心地の良さにため息を付いた、エレンのしりのことであるに違いない。
つまり、エレンの言葉はセックス禁止令に等しい。
「きもちわるかったか?痛かったか?」
「そういう、わけではなくて…」
エレンはもじもじと太ももの内側をすり合わせる。
「もうしたくない?」
リヴァイがぎゅっとエレンを抱きしめると、エレンは困ったように顔を見上げてリヴァイをみた。
潤んだ蜂蜜の瞳に、自分の余裕のない顔が映り込んでいた。
350 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:05:03.85 d
***
「は…、あ、んっ…あふっ…」
エレンを膝の上に乗せて、ゆるゆると溶けるようなキスをしながら、エレンの緊張をほぐそうと固く閉じられたふとももを撫でていた。
エレンの身体は子供みたいに熱くて、体の節々が桃色に染まっている。
最初は音が立つだけのやさしいキスを、体の力が抜けてきたら、唇をぺろりと舐める。
リヴァイの熱いキスと呼吸に酔わされてエレンがぴくっとまぶたを震わせたら、唇の間に舌をねじ込んで、唇や頬の裏側を舐めた。
「ん、っ…、むぁ…」
エレンが甘えるように、腹をまさぐるリヴァイの手に自分の手を重ね、ぎゅっと服の裾を掴むからリヴァイはますます、掻き立てられてキスの重なりを深めてしまう。
「服、持ってろ」
「う、ん…」
服の裾を捲り上げて、彼に持たせた。エレンの肌はいつまでも触っていたくなるようなマシュマロの肌触りで、気持ちがいい。
つやつやとなめらかな胸と腹を手のひらでするすると撫でながら、エレンの半開きになった口の中で泳ぐ舌をちゅるると吸った。
「あっ、あふ…」
リヴァイの手のひらが、真っ赤に熟れた乳首に掠ってエレンの背中がびくりと跳ねる。
351 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:05:29.35 d
リヴァイがくにくにと両手で揉むと、エレンの足が内股になって、すりすりと擦られていた。
「ちゃんと持て」
「ん…、あっあっ…あぅ…」
服の裾を握りしめたまま、どんどん下がってくるエレンの腕をリヴァイはぐいっと持ち上げる。気持ちよくなると脱力して、腕が下がってしまう。
「きもちいい?」
エレンは返事をする代わりに、両目をギュッとつむったままリヴァイに唇を押し付けた。
クラブのゴールデンタイムは深夜二時。日付が変わる前に行くのはおすすめしない。
人の集まりが悪い上に遊びたがりの初心者しかいない。その上エレンの場合、いつもつるんでくれる奴らの仕事も終わっていなかった。
エレンの夜遊びは大抵二十三時ごろには始まるから、クラブに繰り出す深夜二時までの三時間は適当に街を歩き回った。大抵はバーに寄って、適当な男に相手をしてもらう。
352 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:05:33.07 d
いわゆるセクシャルマイノリティが集まる、都心の小さな界隈でエレンは毎夜ふらついている。
セックスの相手を探しているというわけではなく、ただ自分の家に居たくないというだけだ。
以前は汚く治安が悪いというイメージを持たれていたこのあたりも、自らのセクシャルを受け入れた若年層が入るに連れてそれなりに整備されて、綺麗な飲み屋も増えた。
エレンが自らの性的マイノリティーを自覚するころには、同性愛者という言葉自体も些か市民権を得ていたから、良い時代に生まれたと思う。
そういうことでエレンはその日、暇つぶしのためにいつものバーに立ち寄っていた。
その前日クラブで明け方まで愉しんでいたから、今日はクラブに行くか行かまいか少し迷っていて、このバーでおもしろそうな相手が見つからなければ、クラブに行くのはやめて友人の家に遊びに行こうと思っていた。
エレンがいつも立ち寄るのは若者向けのバーで、浮足立った人間は多く、少しでも気が合えばすぐに二人腕を組み合ってビル群の狭間に消えていった。
店員は大抵ネコで客はタチとネコが入り交じるが、大体三十路を超えていれば、タチに回ってくれる。エレンは今年一八の、ネコとしてはそこそこもてはやされる年齢だった。
353 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:05:59.12 d
カウンターの上にランプが二つあり、五つのスツールが並んでいる。
狭いフロアには三つのバーテーブルがあって、前の客が残したグラスが放置されたままだ。
床は薄汚れた白い小さなタイルが敷かれていて、それがどことなくどこかのトイレを連想させるのが、このバーの特徴だった。
いくら見た目が綺麗になっても昔と同じくこの地域が、世の中に向かって大声で叫べないセクシャルマイノリティの欲求や不満の掃き溜めになっているのは確かだから、あながち不適切な内装でもないのかもしれない。
薄暗いバーの中で、オレンジに光る二つのランプの左側。その真下のスツールはエレンがいつも座る場所だった。
その場所に見知らぬ黒髪の男が座っていて、隣には顔に見覚えのある若い男が座っていた。彼はエレンと同じくこの店の常連だった。
黒髪の男は顔を横に振り、若い男は面白くなさそうな顔をしてするりとスツールから降りていった。
サラリとした直毛の黒髪で目元の涼やかな男の首筋がランプの光を受けてオレンジに染まっている。
彼の携帯がブルブルと震えて、画面が光る。
『今どこにいるの?』そんなメッセージが表示された携帯を彼はズボンのポケットの中に突っ込み、手元のグラスの最後の一口を煽ると、更に店員にウィスキーのタブルを頼んだ。
軽く一杯引っ掛けに来たというわけではないらしい。
「そんなに飲んで、どうするの?」
エレンは小生意気に笑って、若い男が空けた椅子に滑るように座った。
354 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:06:02.89 d
前述のとおり、エレンはセックスの相手を探すために、毎夜深夜に歩きまわっているわけではない。
ただ面白そうな相手がいればそれはまた別の話というだけだ。
「この時間は、深酒するには早過ぎるか?」
彼の腕時計は、頂点を過ぎたばかりだろうか。
彼は少し赤くなった顔で構うなとでも言いたげに、エレンを見返した。エレンはぱちりと大きな瞳で瞬きして、彼の顔をよく眺める。
「こんなところであんまり呑んでると、相手を探してると思われますよ」
カウンターの奥から、アイスピックで氷を割る音が聞こえてくる。
男の手元に滑ってきたのは、琥珀色の液体が注がれたロックグラスだ。グラスの中で浮いた氷がくるくると回った。
「そうか」
彼は小さく頷くと、再び酒を煽る。呑むのを辞める気はないらしい。
エレンは大抵の人間に褒められるその容姿を彼に向けると、柔らかく微笑んだ。
軽い気持ちで、いいなと思っただけだった。
僅かな興味と好奇心と、誰かが声を掛けてもちっともつれない彼に、自分はどのように評価されるのか、ただそれが知りたくて、隣の椅子に座った。
「どうしてこんなところに来たの?」
彼のような幸せものの暇つぶしに付き合ってもいいと思ったのは、エレンもまた暇であったのと、オレンジ色に染まった彼の肌色が妙に艶めいていたからだ。
355 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:06:45.07 d
時にはこうやって気楽に遊ぶのも悪くない。
「あなたみたいな楽な人、おれは好きですよ」
エレンはするりと、彼の左の薬指を撫でた。
***
連絡は週に一回か二回。
起きたばかりのエレンが目を擦りながら、遅刻気味に待ち合わせ場所に来て、仕事を終えたばかりのリヴァイが「何を食いたい?」と聞く。
適当に飯を食って、適当に酒を飲み、話題が尽きたら視線を交わして店を出る。
最初に一回こそ色々話をしたが、三度、四度会うようになるともう話題は尽きる。
歳も違うし、エレンは学生で、リヴァイは社会人だ。共通の話題もなく、プライベートについて話すわけもなかった。
駅前の遊歩道を通り過ぎ、途中のコンビニで飲み物と朝飯を買うと適当なホテルに滑り込んで、好き勝手にお互いの身体で気持ち良いことをした。
今日もそういう流れてホテルに入って、シャワーを浴びて出てきたところだ。
男の体でセックスするというのはそれなりに準備が必要で、エレンはホテルに入ると必ず風呂場に引っ込んだ。
身体を洗って尻の穴にローションをつっこんで、風呂から出てきたら、リヴァイはベッドの上で右手に携帯電話を抱えて、小声で話していた。
「今日は戻らない」
少し強めの語調だった。エレンは足音を立てないように、ゆっくり歩くとリヴァイの隣に座った。
356 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:06:48.95 d
彼の手のひらがくしゃりとエレンの髪の毛をかき混ぜて、ずるいひとだとエレンは笑う。
「明日の朝…、いや、昼ごろだな」
リヴァイの首元に顔を寄せ、物音を立てないようにしがみついてきた青年の身体をなだめるように撫でながら、リヴァイは淡々と電話続けた。
いたずら心が湧いてきたエレンは、リヴァイのズボンのベルトを落とし、ファスナーを下げると指先を滑りこませた。
ちらりとリヴァイがエレンの顔を見たが、構わずエレンはベッドの上に這いつくばって、リヴァイの股の間に顔を突っ込む。
丸一日の仕事を終えてきたリヴァイの身体はうっすら汗の匂いがした。
彼の電話の内容はよくわからない。
なんとなく耳を澄ますと、電話の向こう側は女の声が聞こえたような気がしたが、確証はなかった。
エレンは柔らかな手つきでリヴァイの股間を撫で回し、少しだけ固くなっているのを確認すると、下着のゴムを引っ張ってそのまま直接口に咥えた。
びくりとリヴァイの下半身が震えて、思わず唇の端を釣り上げる。
ふわふわと漂う汗の匂いを鼻先で嗅ぎながら、シャワーを浴びて温まった口の奥までずぶずぶと呑み込んだ。
エレンの腰にまとったタオルがはらりとベッドの下に落ちる。太ももの間から垂れるのは、さっき風呂場でいれたローションだ。
「ん…っ…ふぁ…」
せっかく人が声を出さないようにしてやっているのに、リヴァイの陰茎が急に芯を持ち始めたせいで、喉の肉壁が押し上げられて甘ったるい声が漏れてしまった。
357 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:07:29.73 d
喉の奥をごりごりと突かれて、エレンはうっとりと目を細めた。
上顎の前歯の裏のあたりを擦られるのがエレンは大好きだった。
リヴァイの太ももの間から、掬いあげるように彼を見上げたら、彼は少し熱を込めた視線でエレンを見下ろしてる。
エレンは笑って、口を大きく開ける。真っ赤な口からずるりと勃起した陰茎が飛び出した。
ぬらぬらと唾液をまとって出てきたそれは、エレンが口に入れる前とは比べ物にならないくらい、勃起していた。
「あー…もう電話切っていいか?」
急に電話の返事がぶっきらぼうになったリヴァイに、エレンはますます笑う。
口からこぼれた唾液を手で拭い身体を起こすと、今度はリヴァイの膝の上に乗って、ぺろぺろと首元を舐めだした。
くすぐったそうに身をすくめたリヴァイの肩を抑え、勃起した彼の陰茎に自分のものを擦り付ける。
「また電話する」
ほとんど言い捨てるようにリヴァイは電話の相手に告げると、携帯の電源を落として放り投げた。
「いたずら小僧」
「んっ…、あっ、あっ…っ!」
リヴァイはエレンを強引に押し倒すと、両膝の裏を押しベッドの上にひっくり返した。
すでに十分に慣らされているエレンのアナルに先端を押し付けて、強引に突っ込む。
「あ…、ひっ…!」
ずぶりとあっけなく入りこんだ陰茎にエレンは息を詰めて、リヴァイの背中にしがみつく。ぱつぱつと、エレンの尻とリヴァイの腰がぶつかって、いつもより大きい音がたった。
358 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:07:55.26 d
「舐めろ」
傷つかない程度にエレンのアナルをほぐすと、彼の唇に自分の陰茎を押し付けた。
エレンは顔をしかめてリヴァイを見上げたが、リヴァイはエレンの頭を掴み、ぐりぐりと先端を唇に押し付ける。
言い出したのはエレンなのだから、やってもらわなくては困る。
「抱いて欲しいんだろ」
エレンはしばらくの間、急に冷たい態度になったリヴァイを見上げていたが、諦めたように顔を伏せて口を大きく開いた。
くちゅりと音が立って、エレンの口の中に勃ち上がりかけたリヴァイの陰茎が収まる。
リヴァイははあと熱い吐息を吐くと、エレンの頭を両手で掴んで腰を振った。
「んっ…!ぐっ…」
「もっと口を開けてくれないと奥まで入らねえ」
耳を掴み、エレンの顔を上向きにさせて、ごりごりと喉奥に先端を擦りつけた。エレンの両目から、ぽろぽろと苦しそうな涙が溢れる。
「あっ…!…かはっ!」
気持いいセックスにする必要はない。セックスしたという事実がほしいだけだ。
359 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:07:59.23 d
リヴァイは挿入に足る分だけ、自分の陰茎を勃起したのを確認すると、エレンの尻を鷲掴む。
「ほら、自分でケツ突き出せよ」
「き、ちく」
「自分がねだったんだろ」
エレンは口から垂れた唾液を手の甲で拭いながら、リヴァイに向かって四つん這いになり尻を向けた。
粘膜が荒れてぷっくりと腫れ上がったアナルは、ふちからぼたぼたとローションが溢れていた。
「あっ…!ひっ…!」
「きついな…」
エレンが痛みに体を強張らせたせいで、リヴァイも痛みに顔をしかめる羽目になった。
ついでのように、エレンの萎えた陰茎を手で揉んでやって、後ろから覆いかぶさり、首や耳を舐めてやると、エレンは諦めたように脱力しリヴァイに尻を突き出すことに集中した。
「んっ、あっ…!んっ…!」
エレンの尻とリヴァイの腰がぶつかる、虚しい音が響いた。
360 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:08:32.13 d
***
「リヴァイさんはいいよね。完璧で、女にも困ってなくて、後腐れなく暇つぶしにセックスしてくれる男の子も飼ってて、お金も持ってて、かっこいい」
「エレン」
「ほんと、リヴァイさんはずるい」
だらだらとこんなことをいってエレンはリヴァイに何を求めているのだろう。
自分が足りないものは自分で補うしかないのに、心をガス欠にしたエレンは、自分を傷つけることで他人に傷つけられるのを避けている。
リヴァイが一度、エレンを「放蕩息子」と言った時、彼は酷く傷ついた顔をしながら、うんと頷いた。
駅前の通りでタクシーを掴まえて、彼を後部座席に放り込んだ。
よたよたと崩れ落ちるように無様に横たわった動物を一瞥すると、タクシーに自宅の住所を告げた。
「おれがさ、傷ついてんのわかってるんでしょ。わかってるけど、セックスするんだ」
真夜中の都心、ネオンの光がちかちかとタクシーの窓に飛び込んでくる。
酒が回ったエレンは、次々と窓から走り抜けるネオンの光を虚ろな目で追いかけていた。
「お前とセックスはしない」
リヴァイがはっきりそう言うと、エレンは急にぽたぽたと泣き出した。
まるで死刑判決を出された罪人みたいだった。ちゃんとエレンはわかっていたはずだ。
361 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:08:35.77 d
「んっ、ふ…っ」
誰にも穢された事の無いエレンの身体は何処も彼処も敏感で、両の掌で唇を押さえて声を殺しながらも、リヴァイの愛撫に過剰な程に反応する姿が非常に愛らしく、服で隠れる部分を狙って幾つもキスマークを刻み付ける。
そしてその数を増やす度に、エレンに対する独占欲は満たされて行く一方だった。
この子供は俺のものだと主張するように、所有印はリヴァイの意志を宿して鮮やかに咲き誇っている。
やがて高校生である彼にも体育の授業がある事に気付いたが、反省するどころか付けてしまったものを今更消す事など出来ないと、自分勝手に開き直った。
「ふ、んん…っ!」
びく、と背を撓らせエレンが頑なに閉じていた双眸を剥く。
362 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:09:01.50 d
リヴァイの唇が胸の突起を挟んで舌で嬲り出し、初めて他人に弄られる感覚に身体が不可解な疼きを覚え、遂にエレンが身悶え始めた。
「や、リヴァイさん…っ、あ…っ、んぅっ…!」
一瞬だけ拒絶の声を上げ、しかし再び口を塞いで未知の刺激に耐える。これが所謂前戯と呼ばれるものなのだと自分に言い聞かせ、無理矢理納得させて受け身の姿勢を取る。
ネットで必死に掻き集めた知識は、結局は何の役にも立たない。
それを糧にして積極的になる事も出来ず、成す術も無く恥じらうばかりで、俎板の上に置かれた魚の様に、ベッドの上に転がっている事しか出来ないのだ。
「ん、んん…っ」
リヴァイは身長こそエレンより低いが、その手はエレンのものより大きい。
若干日に焼けた皮膚は過去に負った僅かな傷跡を残しており、爪は綺麗に切り揃えられ、甲には太い血管が浮き上がっている。まさしく、成熟された大人の手だ。
363 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:09:05.29 d
その手が、少年と青年の中間を彷徨っているエレンの肌を、その滑らかな感触を愉しむように這い回る。
唇は未だ突起を含んだままで、舌先で転がされたり吸われたり、その都度エレンは身を捩ったり息を詰めたりと忙しない。
だが高まっているのは羞恥だけでは無い。リヴァイの愛撫により引き出された別の感覚が、ある一点へ着実に熱を集めていく。
「あっ…!」
遂にその場所が暴かれようとした途端、エレンが一度は太腿まで下げられた下着とズボンを咄嗟に掴んでそれを制した。
「やだ…っ、ま、待ってください…っ!」
慌てて元の場所まで引き上げながら、顔面を隅々まで紅潮させて、必死に懇願する声には既に涙が混じっている。
「脱がさないと、入れられないだろうが」
入れる、という直接的な表現に動揺を露わにしながら、至極尤もな正論に「でも」「だって」と、エレンが要領を得ない調子で口籠る。その様に、リヴァイはそっと目を細めた。
364 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:09:30.52 d
セックスが前提である以上、全てを曝け出す事に抵抗がある気持ちはよく分かる。
本気を出せば、身包みを剥がす事はきっと容易い。
だが今回ばかりは、エレンの意思を尊重する事を、15歳の彼のペースに合わせる事を決めたのだ。
彼に不要な恐怖や不安を植え付けてしまっては元も子もない。
15歳、その年齢が持つ意味を改めて思い知る。まだ家庭や学校という箱庭の中で、大切に養育されている無垢な子供。
そして自分は、恋を覚えたばかりの彼の、『全てを捧げたい』と望む言葉に甘えて、己に課したルールを、部下達への誓いを呆気無く破ろうとしている愚かな大人だ。
踏み止まれば、守れるものがきっとある。踏み出せば、失うものもあるだろう。
どう足掻いても年の差は埋められない。
だがきっと、身体を重ねる事で得られるものがあるという祈りにも似た確信を胸に、今だけは何もかも忘れて、エレンという最愛に溺れてしまいたかった。
「…分かった、待つ。で?何分待てばいい?」
肩を竦めて溜息を零しつつ、リヴァイがエレンから離れてベッドの上で胡坐を掻く。リヴァイからの唐突な質問に、エレンが思わず跳ね起きる。
「な、何分!?」
待ってもらえるのは有難いが、『何分』と単位を限定されてしまっては心が急く。
焦りを滲ませながら何と答えて良いのか考えあぐねていると、今度はリヴァイが自分のシャツのボタンに指を掛けた。
「……冗談だ。そうだな、確かにお前だけ脱がすってのも理不尽な話だ。…俺も脱ぐ」
「え、えぇ!?」
そして吃驚するエレンの前で、口角を持ち上げたリヴァイが素早くボタンを外し始めた。
365 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:09:34.09 d
そのままシャツを脱ぎ、ベッドの隅に無造作に放る。当のエレンは唖然としたままその様子を見詰めていた。
(すげぇ…。俺と、全然違う…)
いつもは服の下に隠されている、完成された肉体美に思わずエレンが息を飲む。
盛り上がった胸筋、割れた腹筋、逞しい上腕筋、自分との差異をまざまざと見せ付けられて、男としての矜持が微かに痛んだが、それ以上にこの身体に今から抱かれるのだと改めて認識した瞬間、身体の奥底から得体の知れない感情が湧き上がる。
それはまさに『欲情』と呼ばれるものだった。
同性の裸体など今まで数え切れない程見て来たが、そのいずれに対しても、羨望こそ抱いた事はあれども、魅了された事は一度も無い。
「先に、下も脱どくか?」
「い、いえ…!いいですっ!」
リヴァイの上半身に見惚れている間に、自身のベルトのバックルに及んだ彼の手に、我に返ったエレンがぶんぶんと首を激しく横に振る。
見てみたい、という好奇心が頭の隅にちらついたが、エレンは無理矢理それを打ち消した。
366 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:09:59.28 d
自分が先に脱げば自分の決意も固まり易いだろうという配慮からの発言だろうが、それはきっと逆効果になるという確信があった。
それに、これ以上彼に手間を掛けさせるのは流石に申し訳無い。
他の人間が相手なら、こんな面倒な手順を挟まなくても、彼の要求に素直に応じただろう。難無く先の手順へ至っていた筈だ。それがひどく心苦しかった。
主導権を握っているのは間違い無く彼だ。だがそれを無理矢理行使する事はせず、自分の心の準備が整うのを待ってくれている。
何処までも揺るがないリヴァイの厚意に、今度こそ腹を括る決意をしたエレンが、彼の身体におずおずと手を伸ばす。
「あの、俺も、…リヴァイさんに、触っていいですか?」
リヴァイの胸元に視線を留めたまま、エレンがか細い声で呟く。ほんの僅かの沈黙の後、「あぁ」と短く硬い了承の言葉が返って来た。
リヴァイの顔を見返せないまま、筋肉で膨らんだ彼の左胸にエレンが掌をそっと合わせた。
心臓の鼓動が、胸板を忙しなく叩いている。明らかに正常の域を越えた速さのそれに、エレンが瞠目する。
落ち着き払ったその表情とは裏腹に、彼の心が平穏では無い事を、それが如実に物語っていた。
367 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:10:03.35 d
弾かれたように顔を上げた瞬間、リヴァイがエレンの手を掴み、次いで肩を抱いてそのまま自分の方へと強引に引き寄せた。
「リヴァイさん…?」
「……緊張してるのは、俺だって同じだ」
思いがけず耳に吹き込んで来た彼らしくない本音に、エレンが重ねて驚く。
片腕で抱き込まれたまま見返す事も出来ずに瞬きばかり繰り返していると、今度は両腕できつく抱き締められた。
「緊張って、何で…?」
「…お前を傷付けたくない。お前に嫌われたくない。お前を失いたくない」
それなりの場数を踏み、主観的には判断が難しいが、ある程度の知識も技術も備えているつもりでいた。
少なくとも、事後に至るまでの過程を辿る事は出来る。
それが今はどうだろう、心底惚れた相手前に、初めて行為を経験する少年のように心許無い。
幻滅されないだろうか、満足させる事が出来るのだろうか、行為の後も同じ台詞を囁いてくれるだろうか。
するとエレンが「きらいになんてなりません」と、リヴァイの腕の中で頼りなく首を振った。
「…ずっとずっと、大好きです。逆に俺の方が、嫌われそうで、こわい」
「それこそ有り得ねぇ話だ」
「だって、俺、リヴァイさんに何もしてあげられない…」
一度は引っ込んでいた涙が、再びエレンの瞳から溢れ出す。
368 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:10:28.51 d
彼を幸せにする為のものを、何ひとつ持たない。与えられた数々のものを、返す事すら出来ない。
唯一捧げられるこの身体も、彼が抱いて来た誰よりも、見栄えも感触も遥かに劣るだろう。
「俺は、何も持ってないただのガキです、だから」
ぽろぽろと落ちる涙を肌に感じながら、リヴァイが彼の中に潜む苦悩の深さを知る。
エレンが何も持っていないとは思わない。そして自分は、この恋愛で見返りを得たい訳ではない。
心底惚れた相手が振り向いてくれた奇跡、それだけで十分だった。卑屈になりがちの彼に、これから少しずつそれは教えていけばいい。
「何かしたい、なんて思わなくていい。ただ、俺の傍に居てくれ。それだけで俺は十分幸せだ。………頼むから、この先も俺から離れないでくれ」
「こんな俺で、いいんですか…?本当に…?」
「馬鹿だな、お前がいいんだ。お前以外、何も欲しくない」
相手の全てを求めて止まない、こんな胸を焦がすような恋は知らない。
369 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:10:32.14 d
乱されてばかりの感情に、自分でも戸惑うばかりだ。今までは何事にも、冷静に対応して来た筈なのに。
一旦身体を離してそのまま顔を近付ければ、その切実さに胸を打たれたエレンも、応じるように双眸を瞼の裏に隠した。
深く唇を合わせて自重を掛けながら、エレンの身体をシーツの上に沈めた。
そうして優しく丹念に肌の愛撫を再開し、今度こそズボンと下着を脱がせて床の上に落とす。
若干の強張りは見られたものの、エレンは大人しくリヴァイに身を委ねている。
現れた性器は興奮の程を表すように、先端から透明な雫を零しながら緩く立ち上がっていた。
思わず見入っていると、「あんまり見ないで下さい…っ」と羞恥に淀んだ非難の声が届く。リヴァイは思わず苦笑を漏らし、まずは秘部を広げる為に指を数本、自らの口に含んだ。
男は女のように、愛液で濡れる事は無い。だが潤滑剤となるローションもゴムも、残念ながら今は手元に無い。
そして短時間で思案した結果、この方法に着地した。
370 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/02(土) 15:10:32.67 0
なんや怖い
371 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:11:00.95 d
「指入れるぞ、気持ち悪いかも知れんが少し我慢してくれ」
「は、はい…っ、ん…っ」
唾液で濡らした指先を擽るように動かしながら、やがて固く閉じたままの蕾に1本だけを潜り込ませる。
中は想像以上の窮屈さだった。
否、エレンの身体に過剰に込められた力が、更に道を狭めているのだ。
侵入を阻まれながらもリヴァイは根気強く中を解し、所謂『前立腺』と呼ばれる部分を探る。
「ひぁっ、あ、そこ、何…っ?」
ある一点を掠めた瞬間、びくん、とエレンの身体が一際大きく跳ねて、漸く見付け出したそこをリヴァイが重点的に嬲る。
「あっ、やぁッ、そこ、いや、だめっ、あ…!」
「前立腺だ。ここを突いたら、男でも気持ち良くなれるらしい。調べたのなら、お前も知ってるだろう?」
その名称は勿論以前から知っているし、男同士のセックスにおいて重要な器官である事も最近知識として得たばかりだが、刺激を与えるだけでこんなにも狂おしい程の快感を得られるとは思わなかった。
「…気持ちいいか?エレン」
「い、です…っ、あんっ」
耳元で囁かれるリヴァイの声が媚薬の様に、エレンの脳髄を侵す。
「あ、あ…っ、ふぁ、ん…っ」
覗き込んで来るリヴァイの輪郭が溶けていく。左右に開かされた下肢が、声を漏らす度に宙で揺れる。思考が急速に白んでいく。
口を塞ぐ事すら億劫になり、高まる一方の絶頂感に流されるまま喘いでいると、ちゅぷん、と音を立ててリヴァイの指が引き抜かれた。
372 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:11:09.95 d
エレンは気付かなかったが、いつの間にかリヴァイの指は3本に増やされていて、広がされた内壁が名残惜し気に蠢いて彼を誘う。
エレンの中心は反り返り、先端から滲む蜜が腹部に点々と滴り落ちている。
とても性行為に一度も及んだ事の無い、15歳の子供の反応とは思えなかった。
淫靡な表情は絶えずリヴァイを煽り、その無垢な容貌の下に潜んだ素質の高さに、密かに内心で感心する一方だ。
精神的にショックを受けるかも知れないと、今回は性器に口を付ける事はしないつもりだった。
だがその色香に当てられて、吸い寄せられるように銜え込んだ瞬間、「ひ…!!」と引き攣れた悲鳴が漏れた。
「ふぁ、いやっ、やだ、そんなとこ、きたな…っ、ひ、あぁっ…!!」
咽び泣きながらエレンが必死に訴えて来ても、リヴァイはそこから頑なに唇を離さなかった。足を動かして示した抵抗も、両手で難無く抑え込む。
男への口淫など、相手がエレンでなければ一生経験する事はなかっただろうと本気で思う。
幾ら場数をそれなりに踏んでいるとはいえ、リヴァイとしても初めて同性と交わすセックスは手探りの状態だった。
少しでも気持ち良くなって欲しい、その一心で唇と舌を巧みに動かす。
「だめ、だめっ、リヴァイさん…っ、んぁっ、いやだっ、あ、やぁあっ」
絶え間無く溢れ出て来る蜜を湧き出る唾液と共に飲み下しながら、いつの間にかもっと泣かせたいという加虐心が混じり始めた事に気が付いた。
リヴァイの理性を痺れさせる程、初めて目の当たりにするエレンの媚態はこの上無く刺激的だった。
「も、いく、いく、くち、はなして…っ、あっ、おねがい…ぃっ」
千切れんばかりに首を振るエレンからの要求を無視して、リヴァイは彼を追い詰めに掛かる。
373 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:11:37.50 d
他人の手によって齎される強烈な快楽を、自分が初めて与えたい。絶頂を迎える姿を、嬌声を、早く見たい、聞きたい。
「我慢しなくていい。ほら、全部ぶちまけろ」
「や、ひぁっ、あぁぁ…っ!!」
程無くして迸ったエレンの飛沫を、リヴァイが腔内で受け止めて余す事無く嚥下した。
我に返れば衝撃の余韻に啜り泣く声が聞こえて、身体を起こしたリヴァイが、汗で額に張り付いたエレンの前髪を優しく掻き上げる。そして晒したそこに唇で触れた。
「…エレン。可愛かった、すごく」
歯止めが利かなくなるぐらいに、と付け加えて、濡れた翡翠を覗き込みながら柔らかく顔を綻ばせた。
ずっと頭の中で繰り返して来た卑猥な妄想とは違って、エレンとの初めてのセックスは決して円滑には運ばないが、身体と心の隅々まで満たされて蕩けてしまいそうな程に幸せだった。
暴走しないよう自制心を総動員させつつ、チャックを下げて前を寛げ、下着の中から自身を取り出す。
一応時間を掛けて丹念に慣らしたが、もう一度先走りをひくつく蕾へと馴染ませる。
「……………本当は、ずっとこうしたかった」
余裕を欠いている自覚はある。念願叶って、好きな相手を同意の上で今からこの手に抱けるのだ。平静で居られる訳が無い。
呼吸は終始整わないままだ。
見下ろしたエレンの顔は情欲に染まり、その双眸が物言わずとも訴えている。『早く来て』、と。
374 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:11:41.05 d
十分に解したとはいえ異物を挿入するのだ、要領を掴めずにエレンに苦痛を与えてしまうかも知れない。
だからこそエレンの様子を注意深く観察しながら、行為を進める必要がある。
「エレン、入れるぞ」
「っ、リヴァイ、さ…っ、ん、んぅぅっ」
先端部分を後孔に埋めれば、堪えるようにエレンがリヴァイの肌に爪を立てた。微かな痛みが背中に走る。
もしかしたら皮膚が切れたのかも知れない。粘膜が傷付いたのかも知れない。血は出ていないだろうか。
「痛いか?」と問えば、顔を歪めたまま首を頻りに横に振る。
だからそれが本心なのか分からない。それでもエレンが決心したのなら、同じく決意した自分もそれに応じるまでだ。
「ごめ、な、さい…」
本人の意思に反して閉じようとするエレンの内壁に阻まれて、リヴァイの腰は完全に止まってしまった。
罪悪感に苛まれて力無く詫びて来るエレンに、察したリヴァイが「謝らなくていい」と囁く。
「お前が望まない限り途中で止めたりしねぇから、今度は我慢するな。辛かったら遠慮せずに言え。とりあえず、深呼吸しろ」
ぎちぎちと不随意に収縮する粘膜に締め付けられ、平静を装って見せてはいるものの、実際はリヴァイ自身も苦痛と衝動に耐えていた。
「はい…、は…ぁっ」
少しでも力を抜かせる為に深呼吸を促せば、目尻から涙を流しながらもエレンがそれに従う。
「……あぁ、そうだ。ゆっくりでいい」
エレンに他を気遣う余裕など無い。飽和状態に達した頭で、羞恥と不安と戦いながら、必死に自分を受け入れようとしてくれている。
375 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:12:07.97 d
せめてその先にある筈の快楽に早く到達させてやりたいと、タイミングを見計らって少しずつ腰を進め、漸く根元まで埋め込む。深く息を吐けば、繋がる事の出来た実感が押し寄せる。
「…………入った」
不覚にも涙が込み上げそうになったのを堪え、エレンの身体を掻き抱いて、最大限の愛情を籠めて名前を呼ぶ。
「エレン、エレン」
エレンが愛しい、何よりも誰よりも。一生、甘ったるい幸福の蜜に浸してやりたいと切に思う。
暖かな陽だまりの中で、ずっと笑っていて欲しい。その為の努力なら惜しむつもりは無い。
持て余した恋慕を刻み付けるように、何度もエレンの肌に口付けていると、蕾が綻ぶ様にエレンの瞼が緩み、リヴァイの視線の先で弱弱しくも笑みを浮かべた。
「これで俺、リヴァイさんのものに、なれたんですよね…?」
脈動する熱を最奥まで飲み込んだ状態で、噛み締める様に呟いたエレンに、一瞬瞠目したリヴァイがすぐに微笑み返す。
いちいち可愛くて仕方無くて、殆ど使っていなかった筈の表情筋が緩みっ放しだ。
「だが、まだ終わりじゃねぇ。もう少しだけ付き合ってもらうぞ」
最後まで挿入出来たからと言って、セックスはこれだけでは終わらない。重ね合わせた手をきつく握り締める。
376 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:12:11.80 d
前立腺を狙って緩く腰を揺らせば、「あ…っ」とエレンの唇から艶を帯びた声が漏れた。
それからはまるで熱に浮かされたようにエレンの身体を貪った。
幸い、快楽に溺れるその顔に苦痛が滲む事は無く、ただただ向き合ったまま、萎える事の無い欲望の塊でエレンの中を思い存分味わった。
どうしてこんなにも惹かれて止まないのだろう。
喘ぎ続けるエレンを組み敷いたまま、リヴァイが僅かに混濁した意識の片隅で考える。
運命なんて信じない。知らない誰かが敷いたレールの上を歩いてるなんて反吐が出る。
俺は俺の力で道を切り拓く。そう決め込んでいた過去の自分。
だがその先にエレンが居る事が、この夜を迎える事が、偶然では無く必然だったとしたならば。
かたちのないその存在を、信じてみてもいいかも知れないと今は素直に思えた。
377 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:12:52.30 d
とあるカフェの午後の話<リヴァエレ>
正月を過ぎて、今年は暖冬だと言われているが、それでもやはり寒いものは寒い。やっと訪れた週末の土曜日はあいにくの曇り空で、少しばかり風が強くてより寒さを感じる。
それでも、やはり恋人と一緒だと心が満たされていると暖かく感じるものである。
エレンはやっと出会うことができた前世からの恋人、リヴァイと週末のデートを楽しもうと、いつものカフェに来ていたのだが、少々困った状態になっていた。
「ほら、エレン。これもうまいぞ」
差し出されるフォークには、エレンの好きなガトーショコラが食べやすいように乗せられてエレンの口元が開くのを待っていた。差し出しているのはもちろん、エレンの恋人、リヴァイ。
「あ、ありがとうございます、リヴァイさん。でも、自分で食べれますから」
「俺が食べさせてやりたいんだ。ほら、口開けろ」
早くしろと口元に軽くフォークを持ってこられてしまえば口を開くしかなく、エレンは甘さが控えめでほろ苦いビターのチョコレートの美味しさを感じながらも、内心焦っていた。
「うまいか」
「ん、おいしいですよ。リヴァイさんも食べてください」
「俺はいい」
あまり甘いものが好きではないリヴァイなので、強く勧めることはしないが、それならばケーキ屋がメインの
この店に来る必要はないというのにエレンが甘いものが好きだからという理由で、リヴァイは休日になるとこの店に来たがるのだ。
378 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:13:17.58 d
リヴァイとエレンの住むマンションから徒歩10分の場所にあるこの店は、メインがケーキ屋で、併設したカフェも落ち着いた雰囲気が人気の店で、平日はもちろん、休日ともなるとかなり混雑する。
ケーキの美味しさはもちろんだが、飲み物の種類が豊富で、どれを選んでもハズレがないと人気の店なのだ。
だが、不思議なことにリヴァイとエレンがこのカフェに入店する時に待たされたことがない。
いつもなぜか窓際の中央の『予約席』とプレートが置かれた席にすぐさま案内され、ゆっくりと二人の時間を楽しむことができるのだ。
「エレン。こっちも好きだろ」
濃厚なミルクを使ったプリンがたっぷり乗ったプリンアラモードに手を伸ばしたリヴァイがスプーンですくってまた口元に運ぶ。
「えーと、その……」
「ほら、食べろ」
「んぅ……」
口の中に入れられれば、美味しいと思う。本当に思うのだが少しばかり恥ずかしい。
「やった!今日はこの席でラッキー!」
「相変わらずラヴラヴねー」
「見てよ。彼氏のあの嬉しそうな顔」
「ってか、ケーキの甘味を感じなくなったわ」
周囲がざわりとなるが、原因は間違いなく、リヴァイ。そしてエレン。
379 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:13:21.24 d
実は、この店で店員はもちろん、客ですらエレンたちの顔を知らないものはいないというくらいに覚えられてしまっていた。
いや、それどころの話ではない。現在、カフェは満員。
しかも本来カフェで相席などありえないというのに、席という席はすべて埋まっている状態で、そのことに誰も文句も言わなければ、不満もないようだ。
「先に来ててラッキーだったね」
「この席ならばっちり見えるわ」
「実況中継、してあげないと」
「あ、店の宣伝来てるよ」
「店員さん、ナイス!」
ツイッターがすごい勢いで拡散していく。
カフェの店員は、なぜか店の宣伝を打ち込む。「甘い甘い時間をお過ごしください」と。
実はこれ、知るものが知るあのカップルが来ているぞという暗号でもあった。個人情報流出が叫ばれる中、店員が苦肉の策で編み出した方法で、意外にもこれが好評なのだ。
『これ以上、あのカップル見たさに人が増えられると座る席がなくなる』というのが理由である。
あのカップルというのはもちろん、リヴァイとエレン。
外は極寒の1月だというのに、この店だけは春……というには少々暑苦しいかもしれないが。
380 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:13:56.88 d
前世の記憶を持って生まれたエレンは、遠い遠い昔に恋人だったリヴァイを捜していた。
リヴァイも記憶を持っていたので、必死になってエレンを捜してくれていたのだが、なかなか出会うことができず、エレンが大学に進学するために上京し、一人暮らしを始めたころ、ようやく再会することができた。
壁に囲まれた世界で、巨人を倒すために命をかけて戦い続けた日々の中、エレンは調査兵団の希望であった兵士長リヴァイに恋をした。
共に戦う仲間としての信頼が深くなっていくにつれて思いは強くなり、溢れだしそうになった時にリヴァイも同じ思いを持っていることを知った想いを伝えあい、恋人になってもおもわしくない戦況の中、共にいることが出来ないまま命を落とした哀しい過去。
この平和な日常で、再びリヴァイに会えたことは、エレンにとって最高の喜びだった。
リヴァイも同じだったのだろう。あの頃、伝えることのできなかったエレンへの想いを、隠すことなく伝えてくれる。
過去の世界でリヴァイは無口な人だった。
だがそれは彼の立場がそうさせていただけのことで、本来のリヴァイはそれほど無口というわけでもないのだ。他愛ない話もするし、冗談だって言う。エレンに対して惜しみなく言葉で愛情を伝えてくれる。
そう。実はそれが少しばかり問題だった。
381 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:14:00.49 d
調査兵団にいた過去の世界で、リヴァイは本当に苦しんでいた。
次々と死んでいく仲間や様々な思惑をかいくぐって戦場に立たなければならないリヴァイは、エレンに気持ちを伝えることが出来なかったことをひどく悔やんでいたのだ。
その反動なのか、今リヴァイは本当にエレンへの気持ちを余すことなく伝えてくれる。行動にも躊躇いがない。
………それが二人きりだろうが、周りに人がいようが、往来であろうが。
たとえ渋谷のスクランブル交差点のど真ん中であろうとも、リヴァイはエレンを可愛いと思ったら、素直に口にしてしまうし、抱きしめる。
羞恥心がどこかに消えてしまって影も形もないのだ。
はじめはエレンもリヴァイに会えた喜びで相当浮かれていたこともあって気が付かなかったが、日が経つにつれて、徐々に何かがおかしいと気が付いたのだ。
あれ、リヴァイさんってこんなに素直な人だったっけ?人前でもこんなにくっつくような人だったっけ?
あれ?
あれ?
違う。この人、俺の知ってるリヴァイさんじゃないと本当の意味で理解するまでに半年かかった。エレンはエレンで相当浮かれていたので仕方ない。
382 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:14:25.50 d
ようするに、リヴァイは恋人であるエレンに対して、周囲がドン引きするほどの甘い言葉を臆面もなく言い放つ、ちょっと……、いや、かなり恥ずかしい人になっていたのだ。
「お前の手は柔らかいな」
「リヴァイさんと比べたら、ですよ」
「俺の好きな柔らかさだ」
ガト―ショコラとプリンアラモードをすべてリヴァイの手によって食べさせられたエレンは、ようやく恥ずかしさから解放されたとホッとしたが、片手はリヴァイの手によってテーブルの上で柔らかく握られたままになっている。
ふにふにと手の甲を突いてきたり、少し強めに握ってきたり。とにかく触れているのが嬉しいとでもいうように、離してくれない。
「これからどうします?買い物でも行きましょうか」
「そうだな。買いたいものがあるなら行こう」
「特にこれといってあるわけじゃないんですけど、たまには出かけたいところとかないですか」
「お前と一緒ならどこでもいい」
「一緒ですよ。せっかくの休みだし」
「そうだな。やっとお前と一日中一緒にいられる」
お前誰だよ、と思ったあなた。あなたは正しい。
383 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:14:29.21 d
だが、このリヴァイは正常運転であり、しかもこれくらいは序の口である。ボクシングでいうならジャブ。軽い軽いジャブだ。
このカフェでは有名となりつつある二人の会話を周囲の人間が耳を澄ませて聞いているのだが、エレンしか眼に入っていないリヴァイはそんなものは関係ないし、エレンはエレンでまさかそこまで注目されているとは思っていなかった。
さすがにリヴァイに食べさせてもらう時は周囲の眼が気になったが、自分たちの会話を聞いて身悶えしている人がいるとは思っていない。
「ねぇ、あの二人って一緒に暮らしてるんでしょ?」
「そうよ。半年前にリヴァイさんがエレン君を必死に口説き落として暮らし始めたの」
「なら、ずっと一緒にいるんじゃない」
「バカね、仕事で離れてる間が辛いのよ」
「どんだけ……」
リヴァイとエレンの座る窓際のテーブルを中心に、すべての席は埋まっている。
若い女性ばかりなのには、もちろんこの店がケーキ屋のカフェという理由があげられるが、それだけではない。彼女たちの目的は、間違いなく、リヴァイとエレンであった。
384 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:14:55.10 d
ストーカーにならない程度の情報は共有され、この店の常連客は二人が一緒に位していることや、好んで食べるこの店のメニューくらいは把握している。
家を付きとめたり、あとをつけたりという行為は厳禁だ。
これは徹底されている。
あくまでも、この店で客としてこっそり聞き耳を立てて楽しむ。
それがこの店の客としての正しいあり方だと彼女たちはルールを順守していた。
「あー、この二人の会話を聞いて、来週も頑張れる気がするわ」
「ブラックのコーヒーがシロップの原液飲んでる気分になるのに、やめられないのよね」
こそこそと交わされる彼女たちの会話は、エレン達の耳には入らないようにひそめられている。
突然、リヴァイの手が、エレンの手を持ち上げて手の甲に唇を落とした。
「たまに正面に座ると、お前をまっすぐ見ることが出来ていいもんだな」
「リヴァイさん…、だから今日は隣に座らなかったんですか」
「ああ。だが、こうやってテーブル越しにしかお前に触れられないのは辛い」
切ない表情でリヴァイが握っているエレンの手を両手で包み込んでしまう。赤くなったエレンは恥ずかしそうだがどこか嬉しそうだ。
背筋が寒くなるほどにくさいセリフだというのに、許されてしまうのはアレである。いわゆる但しイケメンに限る……というやつだ。
「すごいわね…。私、今日初参加だけど、まさか本当にこんな人いると思わなかったわ」
「初参加なの?ラッキーじゃない。でもTwitterとかではかなり有名でしょ」
「都市伝説みたいなものかと思ってたの」
今日初めて参加した女性は、とんでもない美形が、超可愛い少年に甘い言葉を囁くというTwitterが賑わっていることを知り、友人に誘われてこの店に辿りついた新参者だった。
385 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:14:58.99 d
午前中からこの店に入店し、ケーキを楽しみつつ友人と話が盛り上がって長居していたら、二人が現れて、気が付けば周囲の席がすべて埋まっていた。
「カッコいいとは聞いてたけど、あそこまでカッコいい人と思わなかったし、恋人もあんなに可愛い子だと思わなかったわ」
さらに言えば、ここまでリア充爆発しろと思えるとも。
「まだまだ初心者ね」
「大丈夫よ。そのうち爆発しろなんて思わなくなるから」
「むしろもっとやれって思うようになるわ」
この店に訪れる女性は下は10代から50代まで様々な年齢層で、中には当然お腐れ様もいる。
お腐れ様率は高い。だいたい比率でいえば6対4といったところか。ちなみにこの対比はお腐れ、乙女系といった2種類に大きく分けられる。
この分類がよくわからない初心者のために簡単に説明すると、お腐れは、まあ、わからない人はいないだろう。
男同士のカップルをこよなく愛し、カップルでないものまで脳内でカップルに返還させる特殊能力を保持した女性の尊称である。
最近は市民権を得たかのようにその数を増殖させている(異論は認める)
次に乙女系。これは乙女ゲームをこよなく愛す、二次元の世界に嫁やら夫やらがいる女性のことでもあるのだが、中には本当に純粋に自分もこんな甘いことを囁かれたいという願望を持った一般人も含まれているので要注意だ。(異論は認める)
386 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:15:24.65 d
一見、この女性たちにつながりなど何もない。服装も違う、年代も違う、趣味、嗜好も違う。
なのに、彼女たちの一体感というものはすごかった。
「これを見ないと落ち着かなくなってしまったのよ。もう、中毒よね」
「わかる…!全身を駆け回る甘味がクセになるのよ」
周囲のざわつきなど耳に入っていないリヴァイは今日もエレンに思うがままの言葉を伝える。
「夕食は俺が作るからな」
「たまには俺が作ります。リヴァイさん、仕事で疲れてるのに……」
「お前がうまそうに食ってくれるのが俺の疲れを取ってくれるんだ。お前はただ座って待ってくれてりゃいい」
「俺も、たまには作りますよ」
「お前のこの手が、荒れることを想像するだけで気分が悪くなる。洗いものもするなよ」
「いや、1週間に1回もさせてくれてないじゃないですか。洗濯だって俺、一緒に住むようになって1回もやってないのに」
「お前がする必要はない。クリーニングに任せろ」
「下着とか、肌着くらい俺、洗います」
「それは俺の役目だ」
一緒に暮らすようになって半年。エレンは生活をするうえで必要な家事を一切やっていない。リヴァイがやらせてくれないのだ。
「どんだけ過保護なの」
「手が荒れるって、今の洗剤、荒れないよね」
「炊事、洗濯やってるの、彼氏なんだ」
「羨ましいー。あたしの彼氏なんか、何にもしないのに」
「ってか、彼氏いるだけいいじゃない」
エレンの手をまだ離さないリヴァイは、正面で向かい合って座っているのがもどかしくなっているようで、しきりにエレンの手を引っ張っていた。
387 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:15:28.44 d
「リヴァイさん、引っ張らないで」
「こっちに来ないか?」
「いかないですよ。今日は向かいあわせが良かったんですよね」
「もう十分だ。やっぱりお前が隣にいねぇと落ち着かねぇ」
「我慢してください。これ、飲み終わったら出ましょう」
まだ残っている紅茶を示してリヴァイを説得するエレンは、困った顔をしながらも幸せそうだ。恋人に甘い我がままを言われて喜ばないわけがない。
「今から買い出しに行きましょうか。ちょっといいスーパーで買い物しましょう」
リヴァイの好きなワインを買って、それから二人で家に帰ろうと。
「荷物は持つなよ。俺が持つ」
「そんなたくさん買い物しないから大丈夫ですよ」
「お前は俺の手を持ってろ」
それは手を繋げと言っているのだが、こんなセリフ、テレビかゲームの中でしか聞いたことがない周囲の女性たちは身悶えた。
「待って…、心臓が痛い」
「いきなり投下してくるから、背中がぞわぞわする」
「あのいい声で、俺を持ってろ、なんて卑怯すぐる……!」
「ああ……、何で私、ホットココアなんて頼んじゃったんだろう。砂糖の味しかしない」
「言われてみたい……、あ、ううん、本気で言われたら引く」
「あの彼が言うから許されるのよ」
世界の真理、ただし、イケメンに限るの発動である。
388 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:15:57.56 d
紅茶を飲み終えたエレンが席を立ち、出口に向かうために足を進める。
リヴァイはエレンよりも出口に近い席なので、エレンが通り過ぎた後に立ち上がるのかと思いきや、横を通り過ぎようとしたエレンの腰を掴み、そのまま引き寄せて自分の隣に強引に座らせてしまう。
「ちょ、リヴァイさん」
「お前が悪い」
エレンの肩に顔をうずめて、甘えるように眼を閉じて擦り付け、独特の色気のあるあの低音ボイスで囁いた。
「腹が減った。俺の好物が喰いてぇ」
「好物ですか?じゃあ、ついでに買って帰りましょう」
「俺が喰いたいのはとびっきり甘いこれなんだが」
ちょん、とリヴァイの指がエレンの唇をつつき、リヴァイの言っていることを理解したエレンの顔が真っ赤に染まる。
ガンッ、ガコッ。
「腰にキた……」
「ダメ。顔があげられない……凄すぎる」
「んー、これこれ。この背中を這い上がる感覚が癖になるのよ」
「まだまだイケるよぉ。こいこいっ」
慣れていない新参者はここでテーブルに突っ伏した。
恥ずかしくて顔があげられない、腰にきてテーブルに突っ伏すしかないなど、理由はあるが、常連客はまだ眼を輝かせている。
これが常連客の慣れというものなのか。
389 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:16:00.93 d
「こんなところで何言ってるんですか。ほら、出ましょう」
「もう少し」
エレンの腰を引き寄せ、まだリヴァイは離す気がないようだ。
「家に帰ってからでいいじゃないですか」
「いやだ。今から買い物に行くなら、こうやって抱きしめることは出来ねぇだろ」
「だから、家に帰ってから……」
「エレン」
リヴァイがエレンの顔を覗き込み、唇が触れそうなほど顔を近付ける。
「お前の唇は俺とキスすることと、俺に愛してるって言うためにあるんだ」
それ以外、今は聞きたくない。
いや、そこは食べることも入れてやってくれ。本来の使用目的が完全に除外されている。
ガツンッ、ドンッ。
テーブルに頭を打ちつける音と、壁にぶつけた音が店内のそこかしこから聞こえてきた。
「鼻からシロップが出そう……」
「吐く……。蜂蜜を吐く……」
「これは……、つうこんのいちげき……」
「子宮が疼いたわ」
「こんな攻撃が来るとは……」
歴戦の勇者……ではなく、常連客もテーブルに突っ伏す見事なリヴァイの攻撃。
カフェの店内は、テーブルに突っ伏す女性客にあふれていたが、店員は気力を奮い立たせ、脚を踏ん張り続けていた。
390 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:16:26.61 d
今まで、すべての光景をこの目に焼き付けてきたこのカフェのウエイトレスとして、私は負けない、と何と戦っているのかわからないが彼女は、立ち向かう。
だが、相手は強敵。
「好き…ですよ。じゃなきゃ、一緒に住んでません」
「俺はお前のことが好きなんじゃねぇ。愛してるんだ」
クリティカルヒット。ウェイトレスは400のダメージを受けた。
「もうダメ……。腰が抜けて……」
「全身が練乳に漬かってる感覚が……」
新参者たちはすでに戦闘不能状態だ。常連客もすでにヒットポイントは残っていない。
今日もこのカフェで、甘さにやられた女性たちの屍が大量生産されてしまうのだろう。
「俺もだよ。リヴァイさん。こうやって一緒にいられるの、嬉しい」
少しばかり拗ねてしまったリヴァイにエレンも恥ずかしさを堪えて小さく囁く。耳が異常に鋭敏になっている女性たちはもちろん聞き逃しはしない。
そして本日、最大の攻撃が投下された。
391 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:16:30.12 d
「あと長くても70年しか一緒にいられねぇんだぞ。少しでも長く一緒にいてぇじゃねぇか」
リヴァイのエレンに甘えるような声音に、ついにウエイトレスの膝が崩れる。
あと70年。
それは今から死ぬまで一緒にいることは決定なんですね。
しかも70年しかと言いましたね。
短いんですか?70年は短いから足りないと言っているんですね。
ありがとうございます。
膝と腰が同時に砕けたウェイトレスに、その場の誰も責めることなど出来ないだろう。
彼女はよく頑張った。そう褒め称えてやりたい。
ようやくリヴァイが納得したのか二人で席を立ち、会計を済ませるためにレジに向かったのを、壁に縋りながら必死に立ち上がって「ありがとうございました」と震える声で送り出したは、カフェの店員として優秀だった。
手を繋ぎ、二人寄り添って歩く後ろ姿を見送った店内では、店中の女性客が脱力し、その後、ブラックコーヒーの注文が殺到することとなる。
平和な休日の光景であった。
392 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:16:55.40 d
秋も終わり、深夜の風はすっかり冷たいが、空にまたたく星はいっそう澄んで夜道を照らしている。
リヴァイは足取りも軽く帰途についていた。原因はわかっている。エレンだ。
まだ付き合いたての恋人であるエレンとは、人生の転機となる衝撃的な出会いからこっち、半同棲が続いている。
今日は会社にとって重要な接待があり、リヴァイも出席しなければならなかった。
数日前にそれを聞いたエレンは友人と飲みの約束をし、今日は実家に帰ると言っていたのだが、先程スマホをチェックしたところリヴァイの家に帰っているというメールがきていたのだ。
一昨日会ったばかりとはいえ、やはり浮かれる。『今日のオレは一味違います』という意味深な追記は期待していいということだろうか。どんな味がすることやら。
(寝てなきゃいいがな)
とはいえ寝てたら寝てたで明日は休みだ。たっぷり堪能させてもらう。
393 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:16:58.97 d
そんなことを考えながら自宅の扉を開けたリヴァイは、すぐに違和感に気がついた。
エレンの靴があり、リビングの電気がついている。しかしいつもならばエレンがおかりなさいのハグをしに犬のように走ってくるのだが、それがない。
消灯を忘れて寝たのだろうかとリビングに入り、リヴァイはそこでソファに突っ伏しているエレンを発見した。
「……エレン?」
寝ている。しかもただ寝ているのではく、上半身は何故か裸でビニール紐がぐるぐると巻かれてあった。
ズボンのベルトは外されテーブルに放られており、そのテーブルにはガムテープとはさみが置かれていた。
どういうことだ。何がしたかったのか謎だが、とにかくこのままでは体が冷える。リヴァイはエレンの肩を揺さぶった。
「おいエレン起きろ。風邪引くぞ」
「ん……」
むにゃむにゃと口を動かすもののエレンは起きない。仕方ない。ゆるく巻かれただけのビニー紐を外し、リヴァイはエレンを抱き上げた。
「んぅ〜」
むずがるエレンが、目を閉じたままリヴァイの肩口に額をぐりぐりと押し付けてくる。いとけないエレンの様子に機嫌が浮上する。
394 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:17:24.74 d
寝室へ入り、エレンをベッドへ座らせたリヴァイは布団をあけてエレンの体をそこに滑り込ませてやった。
ズボンと下着も脱がせる。そこまでしてもエレンは目を開けない。どうも大分飲んできたようだ。
(今日のお楽しみはなしか)
少々残念に思いながら、エレンにそっとくちづける。
そうしてからリヴァイは音をたてないようベッドを離れた。
コートを脱いで所定の位置へかけ、リビングで部屋着に着替える。
シャワーを浴びるつもりだったが、その前に冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しエレンの眠るベッドへ戻った。
それほど飲んできたのなら水を飲ませておいたほうがいいだろうと思ってのことだ。あたたまった部屋ではエレンが裸の肩を出して眠っている。
「……」
足の裏から頭のてっぺんまで貫いた充足感に、リヴァイは無言でエレンの寝顔を撮ることに決めた。
そうでもしないことにはこの気持ちが収まらない。くすぐったいくらい、深くやわらかい感情。
まさか自分が恋人の写メなど撮るようになるとは。感慨深くなりながら何枚か角度を変えて撮っていると、音に気づいたのかエレンがもそもそ体を動かし、ゆるり瞼を開けた。
「ただいま」
髪を梳きながらそっとくちづける。酒と眠気でとろんとしている金を見つめ、今度はもう少しだけ深くキスすればエレンの唇が受け入れるように開いてゆく。
395 :
名無し草 (ワッチョイ 9fd9-G+K4)
2016/04/02(土) 15:17:28.21 0
何が起こっとるんや
396 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:17:28.32 d
吸い込まれるように、飽きず何度も音をたててくちづけていれば、エレンの反応も段々しっかりしてくる。
このままやっちまうか。しかしシャワー浴びてえなと迷っていると、唇を離したエレンがふにゃりと笑った。
「リヴァイさんだあ」
とろけた無防備な笑顔にリヴァイの心臓がどくりと音をたてた。だから反応が遅れた。
「しばってえ」
「あ?」
「しばるー」
くすくす笑っている。言葉も舌ったらずで思った以上に酔っているようだ。
エレンは強い筈なのでかなり飲んだのだろう。だとしても聞き捨てならん。
「しばるって、縛る、か? Tie me up please?」
「はい! ぷりーず!」
子供のようにうんっと頷いたエレンが首に抱きついてくる。
シャワーを諦めたリヴァイはそのままエレンの横に滑り込んだ。ちゅっちゅっとリヴァイの頬にキスしてくるエレンが楽しげに説明しだす。
「SMです。リヴァイさんの好きな」
ちょっと待て。
「道具勉強したし、きっこー縛り、します! あ、でも」
出来なかった……と途端に顔が曇り、酔ってるせいだろう目までうるうるし始めた。
「オレ、まだまだ、ぎゃふんじゃないれすね……」
「アホか」
いやホントにアホか。
前髪をのけて額にキスしてやりながら、リヴァイは考えを巡らせた。
397 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:17:54.58 d
何をどうなってSM好きと判断されたのか知らないが、してみると先のビニール紐は亀甲縛りの練習でもしていたようだ。十二メートルはいるだろ。あれ。
いややったことはないが。もう少し尋ねてみると、ガムテープは口を塞いだり手錠の代わりに用意したのだという。
そんなもんかぶれるに決まってる。酔っ払いに言っても仕方ないが。
「そもそもなんでSMだ」
「ちがう……」
「なにが」
「たいつ売ってなかったんれす」
「タイツ?」
「全身タイツ……」
そのままうにゃうにゃと不明瞭なことを言いながらエレンが胸板に頬ずりしてくる。
あやしてやりながら、リヴァイはもう片方の手でスマホを操作した。
自分が恋人の寝顔を撮るようになるというのも予想外だったが、全身タイツの意味を調べるはめになるのはもっと予想外だった。果たして検索結果が出る。
曰く、全身タイツとはその名の通り頭から足先までの全身をタイツで覆ったもので、日本では新しいジャンルのプレイとしてポルノ界の片隅を風靡しており、ZENTAIという名称で海外でも認知度が高まっているとのこと。平和か。
398 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:17:58.76 d
そもそもエレンはそれを買ってきて何をどうしたかったのか。
今日のオレは一味違いますって、一味どころじゃねえだろ、これ。
あの馬面とどんな飲み会してきやがった。いや。誰に断ってエロ話してきた。
「エレン、起きろ」
きつく呼んで強めに肩を揺さぶる。眠りの粉をかけられて再度深いところへ行こうとしていたエレンが重たげに瞼を開く。
「んん……?」
「なんだ全身タイツって」
「ドイツ人に……」
「ドイツ?」
「ドイツ人に勝つにはそれしかないから……」
「ハァ!?」
「リヴァイさん、よろこぶ」
よろこばねえよ。どんな目で見てんだ。半眼になるものの骨子が掴めてきたリヴァイは、うにうに言うエレンから辛抱強く事と次第を尋問した。
がしかし、自分にテクニックがないから、リヴァイはSEXで満足出来ていないのでは→実はもの凄い趣味を隠しているのでは→リヴァイは四分の一ドイツ人→ドイツ人といえばSM→マニアの友人宅でAVを見せてもらおう。
という経緯を聞き出したリヴァイは、呆れてものも言えなかった。
しかもその友人に見せてもらったものが凄かったらしく、これに対抗するには全身タイツしかない! と覚悟を決めたそうだ。
覚悟の決めどころの大いなる逸脱よ。感動もんである。
語るうちにエレンがぼろぼろ泣き出す
399 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:18:24.23 d
「だって、だってドイツのやつらひどいんです。あれは飲み物じゃねえしそれは食べ物じゃねえ。そこは手袋じゃねえし、ましてブーツでもねえ。ヘルメットでもねえんだよ!! なに考えてんだあのジャーマン!!」
「お前のダチがなに考えてんだ」
「E・Tパロでポルノ撮るなよ! どこだよ抜きどころ! あいつら全員くちくしてやるー!!」
わっと泣き伏すエレンの背をリヴァイは仕方なく撫でた。ちょっとPTSDになってんじゃねえかよ。
リヴァイを喜ばせたいと悩み、友人に相談し、準備して帰りを待ち、裸でポルノの話をしているというのに色気というのがどこにもない。
斬新な……と抱きしめていると、落ち着いたエレンが今度は静かにしゃくりあげる。
「……イギリスもひどいんです……」
国境越えた。
「変態ニュースで世界のトップをひた走るんです。ジェントリやべぇ」
「長いか、その話」
「自動車とかフェンスとかテーブルとか冷凍チキンとか、どうやってヤルんだよ!? 愛好サークル作ってんじゃねえよ! ……くちくしてやる……一匹残らず……!!」
全然落ち着いてなかった。
涙を流す凶暴な金に、しかしリヴァイの心臓が不覚に高鳴る。初めて見た時のエレンを思い出したのだ。
月光の下、刃物を持った男と対峙するエレンを見た、あの衝撃。何者の指図も受けぬ焔をまとう獣のような。血まみれの化物のような。気づけばリヴァイは口を開いていた。
「……手伝ってやろうか」
「う?」
「皆殺し」
「あいっ!」
「いい返事だ」
ご褒美に頬にキスすれば、くすぐったがったエレンが笑みをこぼして抱きついてくる。
400 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:18:28.02 d
なめらかな肌を手のひらで堪能しながら、リヴァイは笑みを噛み殺した。
残念な酔っ払いだ。大変残念な酔っ払いではあるが――――実に悪くない。。
「ほら、いい子だからもう寝ろ」
「んん……でも……アメリカの奴らだって……」
「大西洋を越えられる程夜は長くねえ。おら」
エレンを抱き直し、幼児を寝かしつけるように布団の上からぽんぽんしてやる。
元々眠たかったエレンは抵抗せず瞼を閉じた。リヴァイの腕の中でごそごそと寝心地のいいように体を動かし、隙間なくひっついてひとつ大きく満足気な息を吐く。
しばらくそうしていると、やがて規則正しい寝息が聞こえてきた。
破壊神のような話をした当の本人の癖に、その寝顔はあまりに無垢で幼く、リヴァイはSDカードを交換せねばならなかった。
401 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:18:53.43 d
トーストの焼ける匂いで目が覚めた。
あたたかな太陽の気配がする。重い瞼を開けたエレンは、ぼんやりとあたりを見回してここがリヴァイのマンションであることに気がついた。
(あれ……昨夜どうしたっけ)
猛烈に喉が渇いている。リヴァイのほうが早く起きるとは珍しい。
朝が超絶に弱い彼を起こすのが普段のエレンの役目なのに。と、そこへリヴァイが姿を現した。
「起きたか」
瞬間、エレンは昨夜のことをあますところなく思い出した。
「ぎゃー!!」
「人の顔見て悲鳴あげるたあ随分な恋人だな」
「あ、あわわ、あわわわわ」
慌てて起き上がり、エレンは自分が何も着ていないことに気がついた。
飛び上がってシーツにくるまる。リヴァイはドアにもたれたまま面白そうにそんなエレンを見つめた。
「変な格好してたから脱がせただけだ。何か飲むか」
「えっ!?」
「酒以外」
「うあー! 昨日はすいませんっ!!」
「構わん。で、何飲む」
「う、あ、え」
しどろもどろになりながら、なんか甘いのと呟くとリヴァイが踵を返す。
402 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:18:57.09 d
エレンはわたわたと昨夜の記憶を掘り起こした。途切れ途切れだが、多分ほとんど覚えている。
オレ、すっげえリヴァイさんに絡んでなかったか!?
「エレン」
呼ばれ、振り向くと戻ってきたリヴァイがペットボトルを渡してきた。苺ミルクだ。
珍しいもの買ってるなと思いつつありがとうございますと蓋を開けてあおる。
落ち着きたいのと喉が渇いているのと、リヴァイの視線から逃れたいのもあって心持ち視線を外しながらごくごく喉を鳴らしていると、リヴァイがベッドに座った。
心持ち楽しそうである。
「それで、どこからにする」
「?」
「滅ぼすんだろ。ドイツとイギリス」
なにそのハルマゲドン。
しかも昨夜のエレンの理屈だと日本が真っ先に滅ぼされておかないことには。
ペットボトルから恐る恐る口を外し、エレンは情けなく眉を八の字にした。
「わ、忘れてくださいぃ……」
「仕方ねえな」
やわらく目を細め、リヴァイは腕を伸ばしエレンの髪を撫でた。
何だか物凄く上機嫌だ。優しい。
髪を撫でた手のひらが、どぎまぎしているエレンの頬に触れる。
ベッドに乗り上げたリヴァイは、ペットボトルを取り上げてサイドテーブルに置き、エレンにそっとくちづけた。
ぶわっと頬が熱くなる。
403 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:19:22.70 d
くちびるを離したリヴァイはいたずらっぽく首を傾げた。
「……この程度で赤くなるくせにな」
「それはっ!」
反論しようと声をあげたところで視界がまわり、気づくとリヴァイがエレンを押し倒していた。
布団もシーツも引っペがされて裸の体にかぶさられる。
朝の明るい光のなか、一人だけ裸で伸し掛られるという恥ずかしさにエレンはぎゅっと目を閉じた。
「リヴァイさんっ!」
「俺とのSEXに不満があるか」
エレンはぱちりとまたたいた。意味を理解するなり、頭の奥で怒りの火花が弾ける。
「っなわけないでしょう!?」
「なら」
両頬をぐっと掴まれる。
「一人で焦ってんじゃねえ。俺もお前も満足してる。それでいいだろうが」
「焦るに決まってんじゃないですか!」
がばりと身を起こす。鼻と鼻が触れ合う距離でエレンはキッとリヴァイを睨んだ。ここだけは外せない。
「確かにSMだのなんだのはいきすぎでしたけど、でも、リヴァイさんはオレに何してもいいっていうのは本気なんです。遠慮なんてかけらもさせたくない。オレは経験不足でテクもないし、男だし、だけど、でも――オレだって男です」
アイスブルーを見据える。
「リヴァイさんを気持ちよくしてあげたい」
死ぬほど。
エレンの、それが今出来うる精一杯で最大の愛の渡し方なのだ。
404 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:19:26.60 d
このひとが運命だと思った。
しかし一目惚れは理屈の欠如であり、運命に保証書はなく、愛が変化するものならば、この恋はふと覚める夢のようなものであることを考えなければならなかった。
ならばエレンがどれほど焦がれようと、リヴァイが我に返ったように『これは勘違いだった』と言い出す日が来るかもしれない。
その時、エレンの体はそれを繋ぎ止めるくさびになる必要があった。
たといそこまで最悪なことにならなくとも、リヴァイが完全にエレンに満足することで、そうする可能性を限りなく減らすことが出来る。
なにもかも初めてのこの恋は、なにもかもが幸福で、だからこそとても恐ろしい。
なんでもするというエレンの覚悟を探るように見つめたリヴァイは、ひとつ息を吐くとエレンの腕を引いて起き上がった。
ベッドの上にぺたり座るエレンにシーツを巻いて、真正面にあぐらをかき顔の下半分を手のひらで抑える。
その表情にマイナス要素がないか注意深く見つめ、エレンはふと気づいた。あれっ。
よろこんでる?
「……遠慮、と言ったがな、エレン。俺はなにひとつ遠慮してない」
「嘘ですよね」
エレンは即答した。
「リヴァイさんのSEXは優しすぎるんです。不自然なくらいオレを気遣ってくれる」
「そういうプレイだからな」
エレンはまばたきした。窓の隙間から風がさしこみ、カーテンが揺れる。
405 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:19:52.36 d
「え?」
「そういうプレイだからだ」
顎を撫でてリヴァイが続ける。
「負担をかけないようにだとか、そういうのも勿論あるが、優しいフリしたほうがお前の羞恥心を煽れるし、トロ顔だのイキ顔だのもじっくり見られる。
些細な表情の変化も見逃すつもりはねえし、お前、エレン、優しい言葉かけりゃあかなり恥ずかしいポーズだって言うこと聞くだろ。オレに得だ」
何故か偉そうに胸を張るリヴァイをエレンは呆然と見つめた。開いた口が塞がらない。なんか、もしかしてもしかしなくとも。
(……お、オレ……もしかして、凄い勘違いをしてたんじゃ……)
「それを知っちまったお前は、今後更なる羞恥と屈辱に耐えるハメになるわけだ」
いい墓穴を掘ってくれた。満足そうにトドメを刺すリヴァイに、エレンはゆっくりと崩れ落ちた。
「あああああ……」
「なんでもするっていう言質もとったしな」
「あああああ!!」
とうとう絶叫するエレンである。
さんざん悩んだオレとか! 昨夜の覚悟とか! 亀甲縛りだとか全身タイツだとか、死ねオレ!!
リヴァイはサイドテーブルから苺ミルクを取ると、一口飲んで顔をしかめた。
「甘え」
「ああああああああ」
「遠慮とか言ったがな。エレン、お前こそ俺にすべて差し出してはねえだろ」
「あ!?」
涙目で顔を上げるエレンにリヴァイはペットボトルを軽く振ってみせた。
「お前、苺ミルク好きだろ」
「えっ」
なぜそれを。言ったことはないのにと目をまるくすれば、リヴァイが得意げに目を細める。
406 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:19:56.60 d
「苺ミルクが好きだが、興味無いフリをする。紅茶は砂糖を入れたい。コーヒーはカフェオレぐれえにしねえと飲めない。本当は淋しい癖に、なんでもないフリして実家に帰る。オレの前で大人ぶりたいんだ。違うか」
「あ……あぅぅ……」
口をぱくぱく開閉させる。違わない。大人なリヴァイの前で、ガキっぽいと思われたくなかったから少しだけ見栄を張っていた。
けれどまさか気づかれていたなんて。
「いいじゃねえか」
羞恥に丸まろうとするのを持ち上げられ、膝の上に乗せられる。
赤くなった顔を下から覗き込まれて、エレンは視線を彷徨わせた。
「遠慮したり、見栄張ったりすんのはカッコつけたいからだ。惚れた相手には特にな。俺だって同じだ」
「……リヴァイさんも?」
意外だと目を見張れば当たり前だと呆れたように返答される。
「お前は俺との違いを気に病んでるようだが、社会的地位だの、金だの力だのはな、誘蛾灯にはなってもお前が俺に惚れる要素にはなってくれん。
そもそもそんなもん、望めばこれからいくらでも手に入れられる筈だ。お前は根性がある」
やさしく頭を叩かれ、エレンは突如膨れ上がった喜びと誇らしさに声もなかった
(そんな風に思っててくれたんだ……)
胸がいっぱいになる。その胸に、すとんと落ちてくるものがあった。
407 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:20:21.93 d
自分が本当に欲しかったものは、きっとこれだったのだ。追いつきたい。
認めて欲しい。果てしないような広い差を、なんでもいいからどうにか埋めたかったのだ。
エレンはそっとリヴァイの首に腕をまわした。
「リヴァイさん」
「ん?」
「……リヴァイさん、テディベア好きでしょ」
リヴァイが固まった。静止した青のなかにある驚愕の色を見下ろし、エレンはにんまりと笑った。
「テディベアとか、子猫とか、可愛いぬいぐるみ大好きですよね。隠してるけど、知ってるんですよ。オレ」
リヴァイがエレンに張っている見栄があるのなら、絶対にこれが入っている筈だと確信して笑う。
TVでテディベアが特集されていれば、PCや仕事の手は止まっているのに頑として見ようともしない。
だのに意識だけはそちらに一点集中している。映像が終われば動き出す。リヴァイは本当は、とてもわかりやすいひとだ。
反応のないリヴァイの頬に手をあて、鼻の頭にちゅっとキスを落とす。
「リヴァイさん可愛いっ!」
「ってめえ!」
「あはははは!」
がばっと襲いかかるのを、ベッドの上で転がりながら逃げる。
すぐに捕まって抱きしめられて、くすぐられて、げらげら笑いながら暴れるともっと拘束がきつくなって、苦しくて、リヴァイが重くて、くすぐったくって、笑いが止まらない。
リヴァイががぶがぶと犬みたいにキスしてくるのだって楽しい。リヴァイにぎゅうと思い切り抱きつけばくすぐりは止んで、乱暴なキスがほんのちょっと甘くなる。
そうしてキスを交わしていれば、やがてくすぐっていた手のひらがねっとりとエレンの背筋をなぞった。
「ん……」
腰の奥をじんわり揺らす感覚にエレンはそっと目を開けた。
408 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:20:25.62 d
「リヴァイさん。あの、もうひとつだけ」
「まだ納得してねえのか」
「んんっ、いえ……納得はしました、ケド、やっぱもうちょっとテクニシャンにはなりたいです」
手を止めたリヴァイがエレンを覗き込む。そういや昨夜もそんなこと言ってたなという呟きに頷く。
「だってリヴァイさん、オレのフェラじゃイかないじゃないですか」
くちびるを尖らせてみせると、リヴァイはああ成程とエレンを抱き直した。
「射精だけが快楽じゃねえだろうが。オナニー覚えたての猿じゃあるめえし」
「お、大人の発言だ……」
性を覚えたての猿ことエレンはおののくのみである。しゃぶられるとすぐイってしまうのをどう思われているのか、怖くて聞けない。
リヴァイは楽しげに続けた。
「お前、食いちぎるつもりかってぐらいに必死にかぶりついてくるだろう。あの形相は悪くねえ」
「形相て」
「テクニックがどうのこうの言ってたが、そういう表情を視姦させてもらってるし、お前が裸でいるだけでさっきから犯したくて仕方ねえんだ。今はそれで充分だろうが」
あけすけな言いようにエレンは顔を赤くした。
(……なんか、リヴァイさん、ほんとにオレのこと好きなんだな)
空回りしたし全然噛み合ってなかったけれど、リヴァイの思っていることが聞けてよかった。
409 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:20:50.65 d
口も悪くてぶっきらぼうだけど、エレンの不安は台風の後のように一掃されていた。
いつか近い未来、エレンはまた不安になったり、勘違いしたり、暴走したりしてしまうんだろう。
リヴァイのことを好きでいる限り、幸せでいる限り、失うことを恐れずにはいられない。ただ……
「リヴァイさん」
「ん?」
微笑んだエレンは、とびきりの内緒ごとを話すように囁いた。
「これから、何百回も、何万回も、オレとSEXしてくださいね」
リヴァイが瞠目する。エレンは喉の奥で笑った。
リヴァイがエレンとの未来を考えてくれているのならば、自分が迷ってちゃ駄目だ。もしかしたらの不安なんてリヴァイが軽く蹴飛ばしてくれる。なら、自分はひたすら一生懸命にリヴァイを愛せばそれでいい。
(それに何万回も抱かれたら、テクニックぐらいつくだろ!)
完璧だ。多分!
覚悟ととに拳を握り締め、リヴァイを見つめ――今度はエレンが瞠目する番だった。
410 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:20:54.40 d
リヴァイの目の色が変わっていた。獲物を捕食する黒豹のような、狼のような、絶対王者のようにゆるり己の唇を舐めるリヴァイにエレンの本能がエマージェンシーを放つ。
硬直するエレンに、リヴァイはそっととのしかかった。恐怖のような快楽のような痺れがエレンの背筋を這う。
「忠告はした筈だ」
「ひっ!?」
「言っただろう。優しさはただのギミックだと。昨夜から散々煽ってくれやがって」
頬、首筋、胸板。撫でられるところから震えが走る。
「仕方ねえよな。お前がここまで暴走するってことは、次のステージに移行するべき時期を俺が逃したからだ。違うか?」
「えっ……」
なんだ次のステージって。全身タイツとか言い出した癖にわけもわからず思考停止していると、素早く抱え上げられ反射的に首に腕をまわす。
リヴァイはベッドから降りて歩き出した。
「え、ど、どこに……」
「風呂。隅々まで洗ってやる。抵抗したら縛る」
どんな洗い方されんだ!? あわあわとエレンはうろたえた。
どうしようなんか虎の尾を踏んだ。いや、もしかしたら最初から踏んでいて、リヴァイの忍耐が切れただけだったのか。
411 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:21:20.02 d
未知への恐怖に本能が逃げたがるが、そもそもこれは最初からエレンが望んでいたことではなかったかと思うと体が動かない。
まだ朝なのに、これから何をされてしまうのか。
何を教えられてしまうのか。
怯えたままリヴァイにしがみつくままなエレンは、しかし脱衣所で鏡に映る自分の顔を見て唖然と口を開けた。
さぞや青ざめているのだろうと思った自分の顔が、はしたないくらい真っ赤だったのだ。
「降ろすぞ」
声とともに抱っこから降ろされる。ふんわりしたマットの上に降り立ったエレンは、浴室のドアを開けるリヴァイのシャツを掴んだ。振り向いたリヴァイが鋭く反応する。
「なんだ。反論は却下する」
「はい」
紅潮の冷めぬまま、エレンはリヴァイをしっかりと見据えた。なんにもわからなくたって、なにをされたって、覚悟はありますと伝わるように。
あなたが好きだって、伝えるように。
「望むところです」
そうしてエレンは、噛み付くようにくちづけた。
その後の二人を語る必要はあるまい。出会いの瞬間からフルスロットルで爆走しているバカップルにとって、エレンの一夜の暴走などその磐石になんの影響も及ぼさない。
ただ、リヴァイの部屋にエレンの実家の家具が運ばれ、冷蔵庫には苺ミルクが常備され、棚にはテディベアのぬいぐるみが置かれるようになった、ただそれだけのことである。
ちなみにこれはエレンの余談だが、後日我に返ったジャンにその後の経緯を尋ねられたので、「オレの存在自体がテクニシャンだから大丈夫だった」と答えたら「意味がわからない」とキレられた。
END(笑)
412 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:21:32.07 d
リヴァイが二年と少しという長期に渡る出張から帰ってきたのはもう冬から春に季節が切り替わる時のことだった。
エレンの誕生日には間に合った、とリヴァイは内心胸を撫で下ろしている。
それでも前日というギリギリのところである。本当に間に合って良かった。間に合って良かった。
自分自身の誕生日から年末正月にかけて、エレンと二年ぶりの再会を果たし一緒に過ごした日々が既に懐かしくなっている。
その後のエレン不足からリヴァイの疲労はピークを通り越して砂漠である。
早急にエレンという名のオアシスを欲している。
だが空港にエレンの姿はない。仕方がなかった。
帰国日が最後まで曖昧であり、エレンに知らせることすらままならなかったのだ。
エレンには自宅のあるマンションで待っていて欲しいと伝えてある。
空港からタクシーをすっ飛ばして家に帰ろうと思っていたリヴァイに、思いがけないものが目に入った。
光に色を変え、宝石のように美しく輝く大きな瞳。
意思の強いそれが、目の前のリヴァイをじっと見ている。
舞い踊るような衣装がひらりと風に舞っているのがよくわかる。差し出された手は、指が長くしなやかだ。
だがそれでも、リヴァイよりも手が小さいのをよく知っている。
空港の大きな柱。そこに貼られた大判のポスター。
その中にエレンがいた。
ようこそ!の英字版と共に。
その下に、おかえりなさいとなじみ深い言葉が書かれているのにうっかりときめきそうになる。
早く会いたいとは思ってはいたがそういうことじゃなかった。
リヴァイはポスターの下で立ち尽くしてしまった。
413 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:21:57.62 d
とりあえずリヴァイはエレンにメッセージを送った。
『リヴァイさん! おかえりなさい!!』
「ああ、エレン。今すぐ会いてえすぐ帰るから」
『はい! お待ちしてますね』
その文字列が目の前のエレンとポスターのエレンの言葉が重なった。
リヴァイはタクシーの運転手をびびらせながらそれからすぐさま帰宅を果たした。
が、扉を壊す勢いで開けたリヴァイの前に仁王立ちしていたのは、かのエレンの幼馴染、ミカサ・アッカーマンであった。
リヴァイは扉を開けたまましばし固まった。エレンも出てくる様子がない。どこに行った俺のオアシス。
「……なんでてめえがここにいる?」
「悪いけど、あなたをすぐにエレンに会わせるわけにはいかない」
「ふざけんな、どういうことだ」
「二年もエレンを待たせておいた上に、エレンが会いにいかなければどうにもできなかったあなたが悪い」
それを言われてしまえばぐうの音も出ないが、リヴァイのエレン不足は深刻である。
普段ならそこまでイラつかないミカサの言葉だが、リヴァイの額には青筋を立った。
414 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:22:01.19 d
ポスターのことといい、エレンには聞きたいことも話したいこともしたいことも山ほどある。
「てめえが俺の家にいる理由にはならねえな。エレンはどうした」
「さきほど、アルミンとジャン達の車でとある場所に連れて行った。あなたにはエレンを探してもらう」
「……なんだと?」
「ヒントはこれ。私はあなたにこれを渡すためにエレンに許可をもらってここにいる」
恐らくは首謀者はアルミンだ。エレンからリヴァイの帰国を聞いてからずっと考えていたのだろう。
つまりこれは、ささやかな意趣返しというわけだ。
完全に焦らされている気分だ。
ミカサから受け取った紙には、ヒントというよりも暗号が書かれている。
『30C730D130FC30C8306E5C4B4E0A99AC4E0A306B3066』
「……まためんどくさいもの作りやがって」
「エレンを悲しませた罰。せいぜい焦れるといい」
「荷物とここはお前に任せていいのか」
「……」
エレンからもそう言われていたらしいミカサがこくりと頷き、リヴァイは車の鍵と財布とスマートフォンだけを持って家を出た。
415 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:22:26.76 d
駐車場に寄り、自分の車を発進させる。
「……まあこれは単純なやつだな」
リヴァイはこの文字列を見てすぐにピンときた為、その場所へと車を向かわせた。
「お前か」
「うおっ」
ジャンはびくっと肩を跳ねさせて振り返る。不機嫌最高潮のリヴァイにビビり、思わず座っていたベンチから転げ落ちる。
びゅうびゅうと昼過ぎの風が吹き付けるデパートの屋上はまだ寒い。風邪をひいたらどうしてくれるのか。
だが、思いの外早いリヴァイの到着に風邪は回避できそうだ。精神的に死にそうだけども。
「は、早かったっすね……?」
「機械には強いほうだ」
「な、なるほど?」
ぶすっとしたリヴァイに、ジャンは内心でエレンを殴りつけたかったが、それもそれでこの人に殺されるだろう。
ついでにミカサに冷たくされるのも耐えられない。
416 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:22:30.37 d
アルミンに協力を要請された時は冗談じゃないと思ったが、エレンがこのおっかない大人を待ち続けてる間喧嘩をふっかけても張り合いがなかったことを思い出すと、勝手に頷いていたから全くあの死に急ぎは質が悪い。
リヴァイは、で? と顎をしゃくった。
「ここにエレンがいるわけじゃねえんだな」
「は、はい。これを渡すようにと」
半分震えながらもメモを渡すジャンからひったくるようにメモを受け取ったリヴァイがまたしてもチッと大きく舌打ちをする。
「……ここでてめえを締め上げればとっととエレンの場所を聞けるのか?」
「か、勘弁してください!! 俺も教えられてないんですよ!!」
「……そうか。分かった。巻き込んで悪かったな」
「い、いえ……」
そう言って背を向けたリヴァイに、ジャンは一気に身体の力を抜いた。
「くそ……」
ぐったりとしながらアルミンへと電話をかける。リヴァイの到着を知らせるためだ。
「おいアルミン、リヴァイさんやべえぞ、魔王みたいになっちまってる」
『あはは。さすがリヴァイさんだ』
「……お前な」
魔王のようだったと聞いて笑い飛ばせるこいつは一体何なんだ。
417 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:22:56.24 d
なんてことはない。アルミンはちょっとだけ怒っているだけだ。
『だってエレンがあんなに苦労して会いに行ったんだもの。リヴァイさんにだって頑張ってもらわなきゃ』
お前らはほんとエレンのことしか考えてねえな、とジャンは溜息を吐くと、天を仰いだ。
デパ地下でケーキでも買って帰ろう。
「……さて」
リヴァイは車に戻るとメモを開く。
『128,603+8,709,959=?』
思わずハンドルに突っ伏した。これはなかなかに難しい問題をふっかけてきたようだ。
「クソが……」
自分よりもかなり年下の人間にこうも振り回されるのは面白くないが、エレン絡みだと思えばやってしまうのがリヴァイである。
早くエレンに会いたい。
リヴァイは頭をフル回転させ、問題へと立ち向かった。
「驚きました。早かったですね」
かつてエレンが通っていて、リヴァイの出会った場所。春休みがもうすぐ終わるであろう高校の校門の前でリヴァイはアルミンを捕まえた。
「頭がかち割れそうだ」
不機嫌を隠そうとしないリヴァイに、アルミンは苦笑を零した。どんなに不機嫌で怖いオーラを纏っていてもリヴァイは理不尽に暴力を与える人間ではないことをエレンから聞いてちゃんと知っている。
だから少し困らせたところで怖くもなんともない。
「お付き合いいただいてすみません。でも、僕としてもエレンがあなたを待ち続けているのを傍で見てましたから」
「……それについては、お前らにも心配かけた。悪かった」
「いいえ、ご無事でよかったですし、お仕事なのも理解してますが結局行動をしたのはエレンからでした」
それなら、リヴァイさんもエレンの為に動かないと。
418 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:22:59.97 d
ことりと可愛らしく首を傾けたアルミンに、リヴァイはただ溜息を吐くだけだった。
「お疲れのところすみません。実は実行するときにエレンにもちょっと怒られたんですよ。でもエレンも勝手に旅に出たのを悪いと思っているみたいで僕たちを邪険にできない。だからエレンもあなたに会いたいのを堪えて付き合ってくれてるんです」
怒らないであげてくださいね、と言われてリヴァイは少し目を細めただけだった。
怒りはしないが、少しだけベッドの上で啼かせてしまう可能性は大いにある。
「これで最後です。エレンを迎えに行ってください」
最後に渡されたメモは何の変哲もないただの地図だった。
ふわりと、リヴァイの鼻を春の温かな香りが掠めていった。
エレン、エレン。お前は一人でそこで待っているのか。何年も待たせて、会いに来させて、あんな風に寂しかったと泣かせて。
それでも愛してると言ってくれた。
リヴァイの足は自然と早くなる。春の空気は熱を上げるリヴァイの体温にじっとりと汗を滲ませた。
あの熱帯のような鋭い日差しではない。木を掻き分けて進むわけでもない。だけど、エレンまでひどく遠く感じた。
それよりも遠い距離を、エレンは飛んできてくれたのだ。
ならば、今度は自分が、飛んでいこう。
419 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:23:28.75 d
エレンはアルミンに言われた場所でぼうっとベンチに座っていた。人気はない。結構な穴場なのだここは。
ひらりひらりとすぐ傍で色の薄い花びらが舞い散っている。
少しだけ早い満開を迎えるこの桜があるこの高校の裏山の展望台は、エレンとリヴァイの思い出の場所だった。
あの日もこんな桜吹雪の中だった。
学校を去るリヴァイを呼び出して、泣きながら、縋りながら告白をした。
リヴァイは泣くエレンの背を抱き締めてその想いに応えてくれた。
最初から目を奪われ、初めての感情に振り回され、それでもリヴァイの優しさに諦められなくて。
想いに応えたリヴァイもまた、最初からエレンを傍におきたいと思っていたらしい。
だからやたらと用事を言いつけられたり補修に付き合ってくれたりしたのか。
理由など分からない。ただ、こいつは俺のものだと思った。
そう好きな人に言われてときめくしかなかったエレンは、そこまで思い出して顔を赤くした。
かつかつかつ、と磨き抜かれた革靴が階段のコンクリートを駆け上がってくる音を聞いて、思わず立ち上がった。
「エレン!!!」
「リヴァイさん!!!」
息を乱し、空港からそのままあちこち駆けまわって来てくれたリヴァイにエレンも駆け寄って、桜吹雪の中強く抱き締め合った。
「お前な……ほんと、お前らな……」
「すみません……お疲れなのに、こんなことになっちまって」
「いやいい……とにかくお前に会いたかった。エレン、ただいま」
ただいま、という言葉にエレンは瞳を潤ませた。待っていた、その言葉を。ずっと待っていた。
「………おかえりなさい……!!」
「もう長期の出張はこりごりだ」
「エルヴィンさんからも今回のことについては謝罪がきました。でもお仕事ですし、仕方ないですよ」
「ふざけんな俺が耐えられねえ。もう二度とごめんだ」
ぎゅううと強く抱き締めてエレンの肩に顔を埋め、リヴァイはようやく帰ってきたと感じることができた。オアシス最高。
「で、エレン」
「はい?」
「色々あるが、とりあえず聞きたいことがある」
あのポスターのことだ。独占欲がそこそこあるリヴァイにとって、エレンを見せびらかしているあのポスターにこの先不安しかない。
420 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:23:32.65 d
いや、被写体がいいためポスター自体はとてもいい出来だ。飾っておきたいくらいには。
「あ、あれですか……その、大学のサークルのやつにどうしてもって頼まれて……一度だけ撮ったんです」
事の発端は空港でのこの国くる外国人向けのポスターの募集だった。
それにエレンの通う大学の写真サークルが乗っかり、モデルを探していたところエレンに白羽の矢が立ったらしい。
「ほんとに一度だけって約束で……、まさか採用されるなんて思ってなかったんですが……」
「お前が妙な奴に絡まれないか心配だ」
「大げさですね……」
「ふざけんな絶対寄ってくる」
エレンは苦笑するばかりだが、リヴァイの心配は尽きないだろう。
「なんせ写真の出来はすごく良かったからな」
「あ、確かに自分でも自分じゃないみたいで、なんか不思議でした」
「なあ、何を考えて写真を撮ったんだ」
「……っ」
言葉に詰まるエレンの腰を更に引き寄せる。
ごうと風が吹いて、桜が降り注ぐ中、キスを交わす
421 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:23:58.03 d
「あなたに、」
むせかえるような花の香り。
白く霞む背景の中、それこそ桜色の頬をしたエレンが息も絶え絶えに告げる。
「おかえりなさいと言える、その日を思って」
それはまさしく今日のことだった。
だが、リヴァイが見たエレンの表情はあのポスターとは全然違う。
それはリヴァイしか知らない、エレンの表情である。誰にも教えてやるものか。
あとリヴァイさんがいつ突然帰ってきても一番最初におかえりなさいとポスターでもいいから言えたらいいなと思ってと言われたリヴァイはエレンを抱き上げて桜吹雪と同じように踊りそうになるのを必死に堪えて、抱き上げたまま車へとダッシュした。
どうしてやろうかこいつ。
END(笑)
422 :
【年収 7819 万】 (スプー Sd9f-dfgU)
2016/04/02(土) 15:24:24.06 d
荒らしの長文連投スレの容量減らしてdat落ちさせるやつやで
1000いかんでも強制的に落とせるねん
423 :
【年収 7819 万】 (スプー Sd9f-dfgU)
2016/04/02(土) 15:24:54.27 d
あぼんでなんにも見えないけど通報はした方がええは
424 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:25:05.88 d
十八歳の誕生日に恋人ができた。
相手は近所に住む母親の従弟で、リヴァイという。エレンより十五歳年上の彼は、外資系の会社に勤めていて、月の半分くらいは出張で家を空けている。
そんな彼を小さな頃から大好きで、逆を言えばリヴァイしか好きじゃなかった。
物心ついた頃から、リヴァイの膝は自分のもので、両親が苦笑するくらいだった。
当時は学生だった彼も、エレンが小学生の頃に社会人になり、会える機会がぐんと減った。
「しょうがないでしょ。リヴァイ君だって、いつまでもエレンのお守りだけをしてる訳にはいかないんだから」
しょぼくれて膝を抱えて座っているエレンに、母親が呆れたように腰に手を当てて溜め息をついた。
「だって、リヴァイさん、今度プラネタリウム連れてってくれるって言った。野球も一緒に観に行ってくれるって……」
あれもこれも、みんなエレンがねだったことだ。ぐちぐちとしている息子に、業を煮やした母親が喝を入れる。
「あー、うっとおしいね! 少しはお日様に当たって遊んでおいで!」
猫の子のように首根っこをつままれて、外へ放り出された。家のすぐ傍は公園で、誰かしらがいつも遊んでいる。顔を出せば、野球かドッヂボールに誘ってもらえるだろう。幼馴染みのアルミンが新しい図鑑を持ってきて一緒に見ようと言ってくれるかもしれない。
しかし、今は公園でみんなと遊ぶ気はまったくなかった。
425 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:25:44.11 d
今、リヴァイに会いたいのだ。
「だって……約束したし」
ナントカの一つ覚えのように呟いて、エレンは閉められてしまった玄関を見上げる。
もう三か月、リヴァイに会っていない。限界だ。
そう思ったら、エレンは涙がじんわりと滲むのを感じた。
学年が変わる前には、毎週のようにリヴァイと会っていたのに。
リヴァイの家は、エレンの家から徒歩で五分ほどの場所だ。
丘の上に建つ一軒家で、子供のエレンでも迷う事はない。何度もエレンは、母親には内緒でリヴァイの家の前まで行ったがいつも留守だった。
「今日は、いるかな」
エレンは、リヴァイの家に向かって歩き出す。
リヴァイの両親は今年の春、転勤でこの街を離れた。
派手なアロハのようなお揃いのシャツを着たふたりが写っている転居ハガキが家に届いたのを、エレンも見た覚えがある。
426 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:25:47.77 d
てくてくと丘を登って行くと、リヴァイの家が見えてきた。
ナチュラルカントリー風のエレンの家とは違う、モダンな作りの建物は今日もシン……と静まり返っている。
「やっぱりいない」
駐車場に、車がない。インターフォンを鳴らしても、もちろん返事はない。
リヴァイはどこに、行ってしまったのだろう。
「リヴァイさんに会いたい」
どうしても、一目だけでもいいからリヴァイに会いたくて、エレンはリヴァイの家の門の内側に入り込んだ。
ガレージが良く見える玄関前に植えられた細い幹の木の下に、エレンは座り込んだ。
「ここなら、リヴァイさんが帰ってきたらすぐにわかるもんね」
今日こそは。一目だけでも。
エレンはリヴァイに会ったら、この三か月のことを何から話そうか指折り数えだした。
427 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:26:25.15 d
ふわりと身体が浮く感触がして、エレンは目をしばたかせた。自分が抱き上げられているのに気が付いたが、眠くて仕方ない。
遠くで母親の声が聞こえるので、父親に抱かれているのだろうか。エレンは開きかけた目を、またとろんと瞑った。
しっかりとした腕は、エレンをまるで宝物のように抱いてくれている。ぎゅっと抱き寄せられて、エレンは頬を擦り付けた。
そこからふわりと香ってきたのは、サンダルウッドとオークモス。それにまつわるブレンドされた他の香りは、エレンの大好きな香りだ。
大好きな、リヴァイの纏う香り。
そこで自分が抱かれているのが、父親ではなくてリヴァイだと気が付き、エレンは飛び起きる。
「リヴァイさん!」
目を擦りながら顔をあげれば、間近にリヴァイの顔があった。
エレンを見つめている青灰色の瞳は優しい。
会いたくて会いたくて仕方がなかった人物が、そこにいることにエレンは歓喜した。
「ああ、起きたか」
リヴァイはエレンが目覚めたのを知って、声を和らげた。
「おかえりなさい!」
エレンは、リヴァイの首に両手を回してしがみついた。
「おかえりなさい、じゃない」
「え、違うの……?」
「エレン!」
ようやく帰ってきたのではないのかと、眉を下げたエレンの後ろから母親の声がした。
「あれ、母さん。どうしたの?」
「どうしたじゃないでしょ!」
首だけを回して声の方を見れば、母親がものすごい形相でエレンを怒鳴っていた。
428 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:26:46.56 d
「な、なに?!」
「アンタって子は! 心配させて!」
そこで、初めてエレンは気が付いた。辺りはもう夕闇を通り越して、真っ暗だという事に。
「あ……」
事態を悟ったエレンは、声を詰まらせた。
「あとちょっとで、警察に電話するところだったんだからね!」
鬼の形相の母親は、怒っているのに泣いているように見えて、エレンはどうしたらいいのかわからなくなってしまう。
「ご、ごめんなさい。オレ、オレ……」
心配をかけてしまったことに気がついて、エレンは涙が一気にあふれるのを止められない。
「うぇぇ……ごめんな……い!」
わんわん泣きだした泣きだしたエレンと、やっぱり泣いてしまった母親の間でそれまで黙っていたリヴァイが仲裁に入る。
「カルラさん、落ち着いて。エレンも、反省してるからもう許してやってほしい。なんにもなかったのだから、良かった」
落ち着いた声は、二人をなだめてくれる。
「……まったく、エレンはリヴァイ君が好きで好きでしょうがないんだから」
最後はそう締めた母親は、エレンに向かって手を差し出した。
「さあ、帰りましょ」
「や、やだっ! リヴァイさんと一緒にいるっ!」
やっと会えたリヴァイと離れるのはいやだと、エレンは泣いた。
429 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:27:15.59 d
そして根負けしたのはリヴァイの方で。
「カルラさん、今日エレンをうちに泊まらせていいですか」
「リヴァイ君だって、お仕事から帰ってきたばかりで疲れてるでしょ」
「いや、明日は休みだし、エレンがこんなんなのも、俺のせいだし気にしないでください」
リヴァイは、エレンを抱いたまま、母親に話しかける。エレンはエレンで、リヴァイの首にかじりついたまま離れないぞという意気込みなので、母親は早々に諦めた。
「じゃあ、申し訳ないけど、お願いするわ。あとで着替えとか持っていくから。明日の晩は、うちにご飯食べに来てちょうだい。それならいいでしょ、エレン」
「うん! ありがとう!」
肩をすくめた母親に、エレンは笑顔で返事をした。
「泣いたカラスがもう……だね」
「現金だな」
エレンを間に挟んで、大人二人は苦笑しきりだった。
430 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:27:19.27 d
「あと数年はこのままかと思ったが、意外と早く時期がきたな、エレン」
初めて見る、リヴァイの恋人としての顔だった。保護者でも庇護者でもない、対等な人間を相手にした時のリヴァイの顔は、凶悪な程に色気があって。
「俺と、恥ずかしいことしような」
甘い艶を孕む声で囁かれたら、エレンはもう陥落するしかなかった。
まだまだ陽の高い時間から、ベッドの上にいることに居心地の悪さを覚えて、エレンはうろうろと視線を彷徨わせる。
リヴァイはチェストの傍で、こちらに背を向けて何事かをしている。
その間に、もう逃げてしまいたい衝動に何度も駆られて、エレンは腰を浮かせては戻るという事を繰り返していた。
「リヴァイさん……?」
不安になって声をかければ、リヴァイは振り向かずにもう少し待っていろと返事をしてくる。スーツの上着だけ脱いだ彼の背中を、エレンはいたたまれない気持ちで見つめた。
431 :
名無し草 (ワッチョイ abb6-Iq2g)
2016/04/02(土) 15:27:20.02 0
あぼーんだらけやんか
432 :
名無し草 (ワッチョイ 2785-eoZT)
2016/04/02(土) 15:27:35.07 0
SSやAA投稿するスレやと途中で容量オーバーしてまうことあるんよな
433 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:27:49.06 d
そしてようやく振り向いた彼が手にしていた物を見て。エレンはぽかんとする。
「リヴァイさん……それ、それなに……?」
ベッドの枕元に置いたそれは、ローションのボトルとスキンのパッケージ。それから……
「デジタルビデオカメラだな。正式に言うならカムコーダ」
そう、リヴァイの手には小型のレコーダー一体型のビデオカメラが握られていた。
「これは仕事で使ってるやつだが、まだ新しいから使いやすい。ワイプも使えるしな」
「ワイプ……?」
「サブカメラが付いていて、多方面から映像が撮れる」
「それ……まさか……」
「初めてだからな。エレンの可愛い顔を残しておかないと」
おかないと!って意味がわかりません!
速攻逃げ出そうとしたエレンの足首を、リヴァイが握る。そのまま自分の方へ引き寄せて、リヴァイがくるぶしに口付けをひとつ。
そして、伸し掛かってきたリヴァイが、枕元の壁にあるニッチにビデオカメラを置いた。カメラの本体には、すでに赤いランプが灯っている。
「大丈夫だ。やってる間は、気にならないくらい溺れさせてやるから」
顔を寄せられて、唇を奪われる。ファーストキスだと言うのに、最初から本気のキスを仕掛けられてエレンは喘いだ。
唇を舐められて、その隙間から舌が忍んでくる。唇が触れるだけがキスじゃないと、リヴァイは徹底的にエレンに教え込む。
口蓋の裏の誰もが弱い部分を舌先で刺激して、驚いて逃げる舌を絡ませるように舐めあげて、いつしかエレンはとろんとキスに酔ってしまう。
434 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:27:52.54 d
室内に響くリップ音がエレンの思考力を奪って、リヴァイのなすがままになっていく。さりげなくリヴァイが位置を調整して、エレンの顔がよく映るようにしていることにも気が付かない。
エレンを背中から抱いて耳朶を食みながら、一つずつボタンを外していく。
徐々に露わになる首筋に、紅い痕をいくつも付けながらエレンのシャツをはだけて、ベッドの下に落とす。
「エレン、可愛い……」
耳朶から耳殻にターゲットを変えて、リヴァイはエレンを何度も味わう。
キスに酔ったエレンは、ぐったりとリヴァイに身体を預けて、なすがまままだ。
こんなにもキスが気持ちいいなんて、知らなかったエレンは、ふわふわとした気分で自分の身体を探る手に身を震わせていた。リヴァイの手が動く度に、身体が反応してしまう。
胸の飾りやうなじを食まれながら、両手で摘ままれれば明らかに快感が腰から這い上がってくる。
「……っ、んっ」
両の胸の乳首がリヴァイによって、育てられ弄られる。最初はなんの感触もなかったそこが、今は明らかな快楽を拾っている。噛み殺そうとしても、秘かな声が漏れてしまう。
「……ぁ、も、そこやだ……」
低下した思考力で首を振れば、うなじを甘噛みされる。
「ここは嫌か。じゃあ、こっちだな」
するりと離れた手が脇腹をかすって、エレンのボトムを緩める。指が下着をくぐり、直接下腹に触れた。
「リヴァ……!」
慌てて止めようと手を重ねたが、その手ごと股間を揉みしだかれる。
「ひゃ……んっ!」
自分でもびっくりするような甘い声が出て、エレンは驚く。リヴァイの手が、自分の手の上から股間を揉んでいる。まるで自慰をしているようで、エレンは恥ずかしさに身を捩った。
「もぅ、やだぁ……!」
許容範囲をとうに超えて、エレンが涙目になる。リヴァイにされている事が嫌なのではなくて、恥ずかしいのが嫌なのだと思う自分は、もう終わっていると思う。
あんなに無理だと思っていたことが、いざ始まってしまうと気持ち良くて、馬鹿みたいに声を上げてしまう。涙をぽろぽろ流しながらリヴァイを睨むと、苦笑された。
435 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:28:25.05 d
「あ? 何だって?」
リヴァイは思い切り眉をしかめ、机越しに真面目な顔をしているエルヴィンを見据えた。リヴァイが低い声で不機嫌を隠しもせずにいるのに、エルヴィンはいつものことだとさらりと受け流すだけだ。
「聞こえていただろう。エレンを縛る練習をしておけ」
どうやらリヴァイの聞き間違いではなかったらしい。
リヴァイは音を立てて机に手を着くと、エルヴィンとの距離を詰めた。
「なぜ。縄でぐるぐる巻きにでもしろっていうのか?」
「そうは言っていない。ただ、手錠がいつでもあるとは限らない。それに手錠だけでは心もとない。全身を芸術的に拘束しろと、上からの指示だ」
芸術的に、の言葉でエレンを拘束することの意図を把握し、思わず舌打ちをしてしまう。リヴァイの気持ちを知っていながらなんと残酷な命令だろう。もっとも、リヴァイは己の感情で動くような愚かな男ではない。命じられたならば、命じられただけの働きをする。
「チッ……貴族の豚共がまた妙な知恵を付けたな。巨人化したら俺がすぐに削げるとわかっているだろうに」
「巨人を見たことがない方々には、いくらか刺激が必要なんだろう」
「……壁の外には刺激しかないっていうのに、気楽なもんだ」
皮肉に皮肉を重ね、リヴァイはエルヴィンを見下ろす。エルヴィンは静かに視線を返すだけだ。リヴァイは声を潜めた。
436 :
【年収 7819 万】 (スプー Sd9f-dfgU)
2016/04/02(土) 15:28:39.74 d
>>432 それそれ
前スレ途中で落ちたんもそれや
437 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:28:56.06 d
リヴァイと共に本部から戻って来たものの、リヴァイはエレンに地下室――つまりはエレンに与えられた部屋――の掃除を命じ、一人執務室に籠ってしまっている。
リヴァイが地下室に訪れるまで掃除を続けるよう言いつけられているが、エレンが掃除を始めてからそれなりに時間が経った。
毎日の掃除終了の時間を大きく過ぎても、リヴァイが地下室を訪れる気配はない。
おかげでエレンは先輩兵士から様子を見に来られる度に「もう掃除はいいんじゃないの?」と休憩を提案され、苦笑いして首を横に振るばかりだ。
洗いたてのシーツもベッドの上でぴんと皺ひとつなく伸ばされ、いよいよすることがなくなってくる。
一体どうしてリヴァイはわざわざ部屋の掃除を命じたのだろうか。
毎日の掃除よりも入念に、という意味だとはわかっていても、エレンを含め新兵はそう荷物が多くない。
特に巨人という脅威に最前線で刃を握る調査兵団は。
エレンの私物の半分以上は衣類で、その衣類も小さな棚に収まってなお隙間を作る程度なのだからたかが知れている。
兵団服や立体起動装置、ブレードなどは支給されたものだが、一番大きなエレンの持ち物になっている。
この地下室には、そんな僅かなエレンの持ち物の外には、ベッドと毛布、枕、それから明かりくらいしかない。どこを掃除しようか悩んでしまうのも仕方ないだろう。
なんとか掃除をするものを見つけようとあたりを見回すと、鈍い光を放つ鎖が目に入る。
「あとは……これ、か?」
支給された、とは言い難い。最初からこの部屋に安置されていただろう鈍色の鎖は、エレンの両手を拘束するための手錠だ。しかし、同時にエレンが生存するための命綱でもある。
438 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:29:25.43 d
化物扱いではあるけれど、リヴァイとこの手錠のおかげでエレンは生存を認められた。
危うく解剖され、エレンにとって悲願である巨人の駆逐≠成すことなく殉職するところだった。
夜、眠る前に手錠をかけられる瞬間はその鎖の冷たさに心が凍りつきそうになるけれど、巨人への闘志がそれを許さない。
燃え盛る巨人への怒りや憎しみは、どんな苦悩も困難も、エレンの生への執着と昇華されている。
己が生きる意味は何か、存在する理由は何か、闇に呑みこまれる静かな地下室でエレンは考える。
兵団服を脱ぎ手錠をかけられたエレンは、化物と罵られたあの瞬間と何も変わらない。
人間と化物の中間のような、そんな心地になる。
否、手錠をかけられている間、エレンは化物なのだ。
考え事のせいでうまく寝付けない夜もあるけれど、日中の訓練や実験によって疲れた身体はやがて眠りに就き、短いようで長い、それでいて長いようで短い一日を終えることができる。
そして穏やかな朝が訪れると、人肌に温まった手錠を外され、リヴァイの監視の届く範囲で化物から兵士へと生まれ変わることができるのだ。
エレンは、リヴァイに首をはねられるその瞬間まで、ただの兵士でいられる。それが誇らしくもある。
夜――化物の間でもエレンを生かす手錠を、手にした。
「……磨いておく、か」
細かいくぼみまで埃一つないように。白い布で擦って磨いていく。
自らを拘束する手錠を磨く兵士が一体どこにいるのだろうか、と自虐しそうになる。毎晩毎晩この手錠に拘束されるエレンは、やけに馴染む冷たさに苦笑した。
ただの兵士である日のある時間でも、己の中にある化物は消えることはない。もちろん、化物である日のない時間でも、エレンはエレン以外の何者でもないのだが。
439 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:29:29.24 d
化物の力は忌むべきものであると同時に、希望でもある。何も化物であることを悲観することはない。
利用できるものは何であろうとも利用してやる。そう自分を奮い立たせ、化物さえも掌握し、自由を手にするのだ。自由を、翼を、背負って。
かつん、と床が鳴る。
「あ……」
エレンが我に返って顔を上げると、音の主はいつもの通り冷めたアイスブルーの瞳をエレンに向けていた。
「手錠まで磨いていたのか」
あまりにリヴァイが感心したように言うので、エレンは敬礼するのを忘れたまま首を傾げてしまった。もう掃除するところが見当たらなかったから、手を伸ばしただけなのだが。
「おかしかったでしょうか」
「いや。手錠の意味を理解し、磨くその精神を評価する」
「あ、ありがとうございます!」
褒められた! と心が弾む。実際エレンはそんな高尚な精神と判断を持って手錠を磨いたわけではなかったけれど、自分に必要なものだとは理解している。だから、この言葉はとっておいてもいいだろう。
肯定は褒美だ、といつ頃から思うようになっただろう。リヴァイとの数少ない言葉でのコミュニケーションの中で、彼に認めてもらえることが、どれほど嬉しかったか。
リヴァイはエレンにとってヒーローだったけれど、こうやって話をしているとそれだけではない、不思議な気持ちになる。じんわりと暖かい気持ちが胸いっぱいに広がって、頭の中も熱を帯びるような、そんな感覚だ。
440 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:30:06.80 d
エレンが嬉しさで胸をドキドキさせていると、リヴァイは部屋を見回して頷いた。
「部屋は……悪くない。掃除の腕を上げたな」
「先輩方も何度も様子を見に来てくれたので」
「ああ、あいつら。そういえば、いい加減勘弁してやってくれと言いに来たな」
あはは、とエレンは思わず乾いた笑いを浮かべてしまう。
エレンが念入りに掃除をする姿を見て、彼らは手伝う場所すらないのだと理解した上で休憩を促してくれていたのだ。
先輩方がエレンの様子を見に来てくれていたのは、何も化物への監視だとか、兵士としてエレンに休憩を促すためだけではなかったらしい。リヴァイへの進言もしてくれていたとは、頼りになる先輩だ。
リヴァイは掃除の出来を確認し終えると、エレンの隣をすり抜けて換えたばかりのシーツが張られたベッドに座る。隣を通った時にふわりと香る匂いは優しい石鹸で、エレンは自分の汗臭さに恥ずかしくなる。
そういえば、本部から古城に戻ってからずっと掃除をしていたので、汗と埃にまみれている。血がないだけ壁外調査に出ているときよりはましかな、という程度だ。リヴァイは綺麗好き≠セ。エレンはさりげなくリヴァイの座るベッドから一歩下がって距離を取った。
後ずさるエレンを気にも留めず、リヴァイは話を切り出した。
「ところで、だ」
「は、はい」
ベッドのリヴァイがエレンを見上げる。その静かな視線と声にエレンの背が自然と伸びた。
「エレン、お前に掃除を命じたわけだが、俺も準備をしてきた」
「準備、ですか」
441 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:30:10.78 d
一体何の準備をしてきたのだろうか。エレンに命じていた掃除もその何かの準備だと言う。
すぐには気が付かなかったけれど、リヴァイは確かに白い袋を持っている。あまり大きくはないようだが、その袋の中身まではわからない。
エレンがじっと袋を見つめていると、リヴァイはゆっくりと袋を開けた。中身は――縄、だった。
ゴクリと喉を鳴らす。胸は、先ほどとはまるで違う意味でドキドキしている。
「ああ。本部でエルヴィンからある指令を受けた」
「団長から……何でしょうか」
エレンが固い声で尋ねると、リヴァイは言い淀むように一瞬だけ間を作った。それでいて、はっきりと告げた。
「……お前が人類に仇なす者ではないことを、その身を持って証明しろと」
心臓が、うるさい。
エレンはただ「わかりました」とだけ言った。
これはエレンが化物だからではない。リヴァイはエレンを化物ではない証明をしようとしているのだ。そう、言い聞かせるように胸を押えた。
リヴァイが掃除の次にエレンに命じたことは、風呂に入ることだった。
エレンは掃除道具を片付けると手を洗い、着替えを持ってリヴァイのいる地下室から一人、地上へと上がった。
風呂で念入りに身体を磨く。肌が赤くなるくらい、擦って、擦って、擦り上げる。垢の一つ、残さないように。
うとい、とよく周りから言われるけれど、エレンは医者の息子だ。両親と幼い頃別れたとはいえそういうこと≠知らないはずがない。知っていて、あえて反応しないだけだ。
興味があるわけでもなく、自身の手で再現したいとも思わなかったから。
しかし、この身体にリヴァイが触れるというのなら別だ。
442 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:30:49.50 d
エレンが人間であるという証明のために、リヴァイがそういうこと≠他でもないエレンにしようとしている。
あまりにもエレンは特殊な入団だったため、あまり詳しくはないけれど、まだエレンが訓令兵だった頃、風の噂で聞いたことがある。特に男性兵士の間で、お互いの信頼や味方であることの証に身体を開くことがあると。
もちろん、身体を開くのは若い兵士だ。
きっとリヴァイは命令で、触れたくもないエレンの身体に渋々触れようとしている。
今以上の迷惑は、かけたくない。
嫌悪感を抱かれるのは仕方内にしろ、せめて、きれいな身体で挑みたい。頭の先から足の先まで、石鹸の匂いしかしないように。
リヴァイが触れるのは最低限必要な局部だけかもしれないけれど、どこまで触れるのかはわからない。そっと萎えた自身も、奥の窄まりも、洗える範囲で指を辿らせていく。
「……アッ」
若い身体は正直だ。泡立てた石鹸で下腹部を洗うだけで反応してしまうのだから。はしたないな、と頭の片隅で冷静に思っても身体は高ぶったままだ。
残念ながら思考と身体の反応はイコールではない。快感を得られるか否かは、接触によるものであって、精神のありようではない。もっとも、単にエレンが本能に左右されやすい年頃なのかもしれないが。
443 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:30:53.29 d
窄まりのシワを伸ばして洗って、中に指を差し込んでようやく自身が萎えたことに安堵し、また泡を足していく。泡がひりひりする。しかし、途中でやめるわけにはいかない。リヴァイが触れても問題がないくらい綺麗にしなくてはいけないのだから。
念には念を、と二本の指で洗い終える頃には、エレンはぐったりしてしまっていた。
「……遅い」
いつもよりも二倍ほど時間をかけて風呂に入ったエレンが地下室へと戻ると、待ちくたびれたらしいリヴァイから早速お小言をもらってしまった。エレンは恐縮したまま頭を下げる。
「す、すみません」
「いいから、こっちに来い」
リヴァイは待ちくたびれたと言った具合に、縄をその手に巻き付けたり引っ張ったりと、暇つぶしをしていたようだった。
エレンが言われるまま素直にベッドに近づくと、腕を引かれて寝転ばされる。湯上りで火照った身体がひんやりと冷たいシーツに触れ、心地いい。
エレンがシーツの心地よさに目を細めていると、ベッドサイドテーブルの明かりに照らされたリヴァイの影が揺らめいた。
エレンが顔を上げると、リヴァイはエレンを囲うように覆いかぶさっていた。
「お前、随分肌が白くなったな」
リヴァイにじっと見つめられると、落ち着かない。
エレンはさり気なく視線をシーツに落としてリヴァイから目を逸らした。
「よく、洗ったからでしょうか。……少し擦りすぎたかもしれません」
肌をよく擦ると垢も取れるが血行もよくなる。赤い肌は普段よりも肌を白く見せるかもしれない。
実際のところ、エレンの肌は日によく焼けていてあまり白くはなかった。……なかったのだけれど。度重なる巨人化の影響で何度も肌が再生したようで、訓練兵だった頃よりずっと白くなっていた。
本来の肌の白さと言われればそれまでなのだが、己の中の化物の力がなんてことない一瞬さえも支配しているように感じられて少しだけ薄気味が悪い。
日焼けは結局のところ火傷なわけだが、ある程度男は焼けていた方が強く見えていい、とエレンは考える。ただし、リヴァイのようにそもそもの存在が最強であれば、肌の白さや黒さは関係ないのだが。
444 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:31:19.91 d
リヴァイはそんなものかと頷いてエレンの服の裾を掴んだ、と思うとぺらりと捲った。エレンの腹が見える。
「わあ!」
「……ああ、悪い。寒かったか」
エレンが驚いて咄嗟に声を上げると、リヴァイは服を戻して謝ってくれる。
一瞬にして心臓が早鐘を打つ。驚いたけれど、これからリヴァイとエレンがしようとすることを考えると扱く当たり前のことだ。
こんなことで驚いていてはいけない。全身リヴァイに触れてもらえるように洗ってきたくせに。
エレンは自分を奮い立たせるように首を左右に振って、自ら服を捲り上げた。大丈夫、綺麗、なはずだ。
「いえ、……すみません、ちょっと驚いちゃって」
「驚く?」
抱かれるにあたって覚悟は決めたとはいえ、貧相な身体だ。
大人のリヴァイと比べると、エレンの身体は筋肉も全然ついていないし、骨格もまだ発達途中で薄い。おまけに風呂で肌を擦りすぎたせいで少々赤味を帯びていて、少し恥ずかしい。
恥ずかしさを振り切るように、エレンは思い切ってリヴァイの手を導いて、腹に触れさせた。
「あの! オレが何を言っても続けてください。抵抗はしないように、します」
エレンは逸らしていた目をリヴァイに向け、真剣な眼差しでお願いをした。
何がどうだろうと、リヴァイは命令をされてエレンに触れようとしているのだ。二人は、最後までたどり着かなくてはならない。
445 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:31:23.69 d
エレンもこの身体をリヴァイに開くために、中まで洗ってきたのだ。むしろ触れてくれなければ無駄な苦労だったと虚しくなる。
リヴァイはエレンを見下ろしたまま、触れさせられた腹を撫でた。その手つきは、いつもリヴァイがエレンの頭を撫でるときとはまるで違った。
形を確かめるような、皮膚をたどるような、羽がふわふわと肌の上を踊るようなそんな繊細な触れ方だった。
「……まあ、抵抗されると少し手間だからな」
リヴァイの声も、心なしか柔らかく聞こえる。兵士たちの前にいるときのリヴァイでもなく、民衆の前にいるときのリヴァイでもない。
地下室の暗闇の中、明かりに切り取られた小さな空間だけの特別な秘め事――エレンはゆっくりと空気に呑みこまれていく心地だった。
リヴァイの声が柔らかくて、勘違いしそうになる。
しかし、これは命令なのだと言い聞かせて、兵士としてリヴァイに続きをねだる。
「うまくいかなかったら、気絶させてでもお願いします」
「気絶? それはむしろやりにくい」
「なら、頑張ります。声は出さないほうがいいですか?」
「声? いや、それはどちらでも構わないが、悲鳴は勘弁してくれると助かる」
「わかりました」
エレンはさらに服を捲り鎖骨のあたりまで露出させ、今度はベルトに手をかける。
なるべくリヴァイに手間をかけさせないように、ことをスムーズに運べるように。羞恥心を振り切るようにエレンは衣類を肌蹴させた。
「おい……?」
腹を撫でていたリヴァイの手がぴたりと止まる。
446 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:31:52.64 d
エレンは構わずベルトとボトムを寛げ、腰から引き下げた。
しかし、リヴァイの身体がすぐ上にあるせいで、うまく脱げない。
足から引き抜くには少し難しいし、脱がなければ汚れてしまう。
せっかく勢いに任せて羞恥心を置いてけぼりにしようと思ったのに、とんだ誤算だ。
ちらりとリヴァイを見上げ、恐る恐るねだった。
「脱ぎにくいので……できれば、少し手伝ってもらってもいいですか?」
リヴァイは驚いているのか、まじまじとエレンを見つめた。
「全裸でやるつもりか?」
「その方が、いいかと」
ところで、エレンはあまり服を持っていない。綺麗好きなリヴァイのことだ。きっと、汚れた服で寝ることは許してくれないだろう。そうなると、エレンが選ぶのは、全裸で寝るか、服を着て寝るかの二択になる。
ことが済んだ後、きっと羞恥心はエレンに追いついてしまう。リヴァイが地上へ帰った後も一人裸で情事後の雰囲気を引きずるのはつらい。服を着て、夢だったんだとでも思っておいた方が、ずっとマシだ。
「わかった。……なら、縄をもう少し考えてくればよかった」
縄、の一言に妙な緊張が戻って来る。リヴァイの声は相変わらず優しいままだったが、どうやら縄は使うらしい。
「やっぱり、縄は使わないといけませんか?」
「そうだな。むしろ縄がメインだ」
縄は抵抗したら使われるのだろうと思ったけれど、そうでもないようだ。
もしかすると、リヴァイがエレンを抱くための必須条件なのかもしれない。
447 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:31:56.39 d
縛れば少なくとも、エレンから手も足も出なくなり、無駄な接触は避けられるだろう。
抵抗だけではなく、エレンがリヴァイの身体に腕を回したり、腰に足を回したりすることも好ましくない、そう仮定すると納得できる。
エレンの表情があからさまに硬くなったことに気が付いたのか、リヴァイは腹から手を離し、頬を撫でてくれた。
頬は手を添えるだけで、目尻を親指でそっと撫でてくれる。
まるで甘やかされているような心地だ。
「心配するな。こういうのは不得手じゃない。……痛くするつもりはないから、練習だと割り切って身を任せろ」
「はい……」
優しい手に縋りたくなるが、練習≠フ一言でさらに心配になってしまう。
まさか他の兵士にもエレンは身体を開かなくてはならないのだろうか。嫌だ、と直感的に思う。
身体を開くのならば、幼い頃から憧れていたリヴァイがいい。むしろ、リヴァイ以外、この身を捧げようと思っていない。
先ほどよりも不安な気持ちで見上げると、むに、と下唇を親指で下げられる。目尻に触れていた優しい指は、いつの間にか官能的にエレンに触れている。
ぐっとリヴァイは顔を近づけた。
「キスは、大丈夫か?」
どきり、と心臓が跳ねた。今にもキスができそうなほどに迫ってきているというのに、今更聞くのだろうか。――聞くのだろう。
448 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:32:24.04 d
エレンが応と返事をしなければ、リヴァイはキスをせずに抱いてくれる。
エレンは瞬きで返事をした。
すぐにリヴァイの唇が重なった。
あまりにも近い距離に恥ずかしさが追いついてしまって咄嗟に目を伏せる。
視覚が遮断されてしまうと他の感覚器が鋭くなるとかいうが、本当らしい。
見てはいないから実際のところどうなっているのかわからないけれど、リヴァイの唇が啄むように何度かエレンの唇に触れた後、唇よりも柔らかいぬめった何かがくすぐった。
小刻みに触れる何か≠ェ気持ちよくて唇で挟むと、吐息が触れた。
そしてちゅるんと音を立てて離れていく。
「お前、キス好きなんだな。……優しくしてやる」
リヴァイの声は楽しそうだ。そっと瞼を持ち上げると、リヴァイが舌を出しているところが見えた。
「ん……舌?」
エレンが思わず口に出すと、リヴァイは上機嫌な様子でエレンの額に自身の額を重ねた。エレンによく見えるように舌を出して見せてくれる。
「舌だ。……ほら、口を開けて舌を出せ」
「あ……ん、く」
エレンがリヴァイを真似て舌を差し出すと、またすぐに唇を塞がれてしまった。
今度はぱくりと舌を食べられて、息が出来なくなる。もごもごとしゃべると、おかしかったようでリヴァイの吐息が笑っている。
まるで子供を甘やかす大人のようだった。
449 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:32:27.75 d
リヴァイはどうやらエレンを優しく抱いてくれるらしい。
はじめ縄を見せられたときは、どんな酷い抱かれ方をするのか不安だったけれど、冷えた心も妙な緊張も少しずつほぐれていく。
リヴァイの手がシーツとエレンの身体の間に差し込まれ、掬いあげられるようにして抱き上げられる。
「あ、……へい、ちょう」
「ん、全裸だろ? ほら、腕を上げろ」
エレンの息が上がる頃、ようやく唇が解放されたというのに、口がすぐ寂しくなってしまう。しかし、いくらリヴァイが優しいからと言ってあれやこれやと我儘を言ってはいけない。これは、儀式なのだ。
エレンがいかに調査兵団に、否、リヴァイに身を捧げられるかを示す、儀式。
エレンはリヴァイの言う通り腕を上げ、服を脱がしてもらった。
中途半端に脱いでいたボトムも下着ごと取り払われて、正真正銘全裸になる。リヴァイの視線が肌に突き刺さるようで、落ち着かない気持ちになるけれど、同時に冷静にもなる。
エレンの身体を隠すものはもう何もなく、ただのエレンがベッドに座っているだけだ。
リヴァイの手が背中に回る。
「あ……」
「細い身体だな。傷もない、綺麗なもんだ」
「……巨人化をすると、傷痕も何も残りませんからね」
抱きしめられたままエレンが自虐的に答えると、リヴァイはそうじゃないと背筋をたどるように撫でる。
450 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:33:02.80 d
「卑屈になるな。……それでいい。お前はこの力だって利用して目的を果たすんだろうが」
「はい……兵長」
エレンの声は、震えてはいなかっただろうか。
リヴァイは、わかってくれている。
エレンが巨人を憎んでいることも、そのためにはこの身体だって化物としてだって闘う意思があることも。
エレンは、誰よりも強い目的意識を持っている。エレンが優れているのは頭脳でも戦闘能力でも、何でもない。
目標に向けて、目的に向けて、一心に努力を続けることのできる意思の強さだ。
その目的を手にするまで決して足を止めない、止めることは許さない。
そんな、強さがある。そして、そのエネルギーは周りまでも巻き込んで、影響する。
――それでも、エレンはまだ十五だった。リヴァイの半分も生きていない子供=B
大人しく子供でいられる時間は疾うに過ぎ去ってしまい、大人と対応に渡り合うために一人前になることが必要だった。
幼さは、敵だった。
エレンは早く大人になるため、人一倍努力を重ねてきた。大人として認められる兵士になるため、三年間厳しい訓練にも耐えてきた。
それなのに、今こうしてぎゅっとエレンを抱きしめてくれている腕にすがりたくなってしまう。リヴァイの腕の力強さに、幼心が揺さぶられる。
兵団服を脱いだエレンは心まで無防備だ。大切な人を失ったあの時から、エレンの幼い心は止まっている。情操教育のすべてはあの瞬間途切れた。
いつもは兵士という強靭なコートを着ているけれど、裸になってしまえば幼い心が剥き出しで、頼りない。本心が――見え隠れする。本当は、誰かに甘えたかったのかもしれない、だなんて。
幼い頃憧れた翼に、大人の腕に、泣きたくなる。
ぽんぽん、とあやすように背中を撫でられ、甘いキスをされ、エレンはついにリヴァイの身体に手を伸ばした。リヴァイが早く縛らないからいけないのだと。
リヴァイは、拒まない。
つづきは最彼で!
451 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:33:06.58 d
幸福の箱庭
by 黒繭
甲高い鳴き声と共に小さな影が飛び立った。その姿を大きな瞳に写した少年は空高く舞い上がろうとする一羽の小鳥をまるで追うようにして右手を掲げる。
その指先に触れたのは尾羽の滑らかな手触りではなく、冷たい無機質な感触。
いっぱいまで開かれた金翠色の双眸を、上から帳が下ろされるように影が覆う。まるで諭すみたいに、温かい手が両翼が生えていたはずの背中をゆっくりと撫で下ろした。
その手は優しくて、どこまでも安心を与えてくれるから、少年はどうしても眦から零れるものを止めることが出来なかった。
開いた本を片手に乗せ、文字の羅列をひたすら目で追っている金髪の少年と、難しい顔をして眉をひそめ、迷わせながらペンを走らせる暗褐色の髪の少年。
テーブルの角に斜め向かいに座った彼らはどちらも下を向いて、今やるべき事をただ黙って各々打ち込んでいる。
先に沈黙を破ったのは暗褐色の髪を持つ少年。
書き洩れがないか紙を上から下までざっと目を通した彼は、ふう、と短く息を吐いた後、持っていたペンをテーブルの上に置いた。
452 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:33:34.91 d
「アルミン、出来たぞ」
そう呼ばれた少年は、自分の名を綴る声に本から現実へと引き戻され、顔を上げてそちらを見る。
そしてお願いしますというように目の前に両手でスッと差し出されたその紙を受け取ると、目を走らせ出来たものを確認した。
右手にペンを持ち、まるをつけ、その下もまるをつけてチェックを入れたり、それからまるをつけ、直しを入れて、まるをつける。
正解の方が多いだろうか?そう思いながらも紙を渡した方の少年は、手を膝に置き、真剣な顔で相手の次の言葉を待った。
「凄いよエレン、この前より断然出来るようになってる」
「そ、そっか!良かった」
その言葉にやっと緊張が解れた様子で、エレンと呼ばれた少年は採点が終わるまでの間に溜め込んでいた息をやっと吐き出し、少しの笑みを浮かべる。
正直、あまり得意ではないし、難解な数式やら興味のない王族の歴史なんぞを覚える事に意味があるのかは分からない。
必要だと言われればそうなのだろうと思うし、同じ年頃の少年たちが皆相応に勉学に勤しんでいて知っているべき事だと言うなら、自分も出来るようになる必要はある。というくらいには考えていた。
「お前の教え方が上手いおかげだけどな。」
「エレンが努力してるからだよ。あとは、ここの計算の仕方だけど……」
「2人共、お茶が入った。少し休んで」
部屋のドアを開けて中に入ってきたのは黒髪の少女。その片手には金属製のトレーとその上にティーポットとカップ、中央に菓子が置かれていた。
453 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:33:38.62 d
木製飾り棚の上に置かれたゼンマイ式の置き時計は10時になる少し前を指している。
先程から、部屋の向こう側からオーブンの熱で拡散され、屋敷中に広がっていた焼き菓子のいい匂いがずっと鼻孔を擽っていたことには気付いていた。
少女が入ってきた途端、更に香ばしいバターの匂いが部屋に充満して、少しの空腹の隙間を突付いてひとりでに鳴り出しそうだった腹をエレンはなんとか持ち堪えたと撫で下ろす。
ソーサーごと目の前に置かれた紅茶はそっちの気で、真ん中にやってきたお待ちかねのマドレーヌを手に取り、嬉しそうにそれを頬張るその表情には年相応のあどけなさが宿る。
少女はティーカップを配り終えるとエレンの隣の席に座り、美味しそうに食べるその顔を横で見ながら朗らかに笑み、口に合ったようだと安心した様子で彼に声を掛けた。
「エレン、厨房に昼食も用意しておいた。」
「ん、ああ。悪いな、ミカサ。助かる」
そう答えて視線を少女の方へ送るために顔を右横に向けると、ついてる。と言われながら頬の食べカスを指で拭われたエレンは、母さんみたいなことすんなよ!と、不満気に顔を顰めた。
そんなよくある光景を静かに眺めていた金髪の少年は、ふ、と笑い、ティーカップを口元に運ぶ。
自分でも気付いている。突っ慳貪に相手を突き離そうとも、素直になれないだけだ。
血の繋がりはないが今や唯一の家族であり、母代わりになろうと躍起になっているミカサ。自分に無償で座学を教えに来てくれている昔からの幼馴染み、アルミン。この2人と過ごす時間はエレンにとって心地よいものだった。
当たり前のようにずっと自分の傍にあるそれらは、ありふれていて、だけど絶対に無くしたくないものだ。
454 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:34:05.13 d
この癖は、いつからだったか。
大切な人たちから自分に向けられる言葉や表情、一つ一つを思い出にしようと、心にしたためるようにして深く刻み付ける。
「なぁ、ヒストリア……いや、女王様は元気か?」
そういえば、と、ふと思い浮かんだ見知った顔。
だがその人物は自分とはあまりにかけ離れた地位にあり、今や名前で軽々しく呼んでいいような身分の相手ではない。
まさか自分と共に勉学や訓練に励んできた仲間が、国の主になってしまうなんて。
元々、由緒正しい王族の血筋であったことが明らかになり、国の変革を求める人々らによって祭り上げられた彼女は、形ばかりだった今までの王に成り代わり、名前も生活をも一変させて女王として国に君臨することになった。
「今は僕たちも遠目で見れるだけなんだ。でも、時々隠れて手を振ってくれたりするよ」
「そっか。もう暫く会ってない気がするな…」
彼女が女王に就任してから会えたのは、2度程だったか。お忍びで此処へ来たヒストリアとミカサやアルミンを含む同期連中が数人、自分の誕生日に皆でパーティーを開いて祝ってくれたのがもう大分前のことのように思える。
「なぁ、あと、ライナーとベルトルトは?アニのやつもずっと見てないような気がするし」
エレンの言葉に、隣に居たミカサが顔を上げて斜め前に座っているアルミンを見た。
アルミンは持っていたティーカップをソーサーに戻すと、話し始める。
「アニの方は憲兵の仕事が忙しいみたいで。他の2人も僕らよりずっと大変な任務があるからね。なかなか時間が取れないらしい」
「そっか。みんな忙しくやってるんだな…」
訓練兵を卒業して疎遠になってしまった者も当然いる。
アニはあんな性格だ。同期だからといって自分一人のためにこんな場所まで訪ねて来るはずもない。
しかし、それぞれが自分に与えられた役割を果たしている。
…自分ばかりが、取り残されて。
455 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:34:14.21 d
「エッレーン!お邪魔するよ〜!」
「あ。この声、ハンジさんだ。」
玄関の呼び鈴よりも余程威勢のいい声が響き渡り、その声の主である客人をもてなさなければと慌てて立ち上がったエレンは、部屋のドアからロビーに急ぐ。
「こんにちはエレン君、早速だけど庭の手入れをさせてもらうね」
そう言ってハンジの斜め後ろに立っていたのは、この人の部下。
頭には日除けの麦わら帽子を被って首にはタオルを巻き、両手に使い古された軍手をはめて右手には彼の得物とも取れる使いなれたスコップ。
その出で立ちは熟練された庭師であることを物語っている。…彼の実際の職業はともかくとして。
自分たちの上官でもある客人の訪問に、エレンに続いてミカサとアルミンも出迎えようと部屋から出てきた。
「いつもすみません、モブリットさん。ハンジさんも忙しいのに…」
「いいの、いいの。私は息抜きで遊びに来てるんだから。モブリットも何かを世話するのが趣味なだけなんだから気にしないでいいよ」
「お言葉ですが、ハンジさん。僕は貴方の世話は趣味でやってるわけじゃないですからね。」
モブリットの、上司に対する恐れもない毅然としたその言葉に笑いが起こり、ハンジ本人とエレンまでも同じく声を上げて笑った。
皆でこんな和やかな会話をしながら、笑いの絶えない生活が当たり前のようにいつも傍にある。
こんな穏やかな毎日が与えられているのは、自分がこの場所に居ることを許されているからだ。
「そろそろ僕たちは帰るね。」
そう言ったアルミンと、泊まりがけで必要だった荷物を纏めたミカサがその後に続く。
外開きの玄関のドアが開放され、出ていこうとするミカサとアルミンにつられてエレンは咄嗟に足が動いた。
踏み出してしまった一歩。だがその先を続けられない。続けてはいけない。
いつだってこの2人の隣を歩いていた。
だけど、今の自分にその権限は与えられていない。
456 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:34:39.86 d
「外まで見送りは要らないよ、エレン」
「…ああ。オレもいつかお前たちに追い付くから、それまで待っててくれよな」
エレンがそこで笑って見せたのは、精一杯の強がりだった。
今は自分が出来る事をしなければならないと、思っているから。
その顔を見たミカサが持っていた手荷物を取り落とす。
玄関に投げ出されて鞄の中からバラけ出た替えの洋服が散らばったことなんか気にもせず、エレンに駆け寄り彼の体を強く抱き締めた。
「安心して此処に居て。エレン、貴方の世界は残酷なんかじゃない…」
「………」
「ミカサ、行こう」
落とされた鞄に荷物をまた押し込めて本人の代わりに拾い上げたアルミンがミカサの肩に触れて、先を促す。
ゆっくり離れていくミカサの顔は泣き出しそうなのに笑顔で。前にもこんな顔を見たことがあった気がするのに、それがどういう場面だったのかどうしても思い出せない。
不安にさせないようにという気遣いからか、自分の顔を見て微笑んだまま外に出て行く2人に何て声をかければ良いのか、エレンには分からなかった。
457 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:34:48.41 d
「心配しなくてもあの2人はまたすぐ会いに来てくれるよ、親友なんだから。」
3人の様子を黙って見ていたハンジが、あの2人が居なくなってもボンヤリと玄関のドアを眺めて放心したままその場に立ち尽くしていたエレンの背中に声をかける。
振り返って頷いた顔はそれでもすっきりしない物憂げな表情だった。
そんな彼の気持ちを切り替えさせなければと考えたハンジは屋敷の奥へと勝手に歩き出す。
「…さてさて。モブリットの庭仕事が終わるまで私たちは何して待ってよっか。座学の時間にする?」
「あ、えっと…ハンジさん。今日はまた一勝負お願いしてもいいですか」
「おぉ!私に何勝何敗したか覚えているかな〜?エレン。」
「ハンジさんの5勝0敗。オレの勝ち星無しで連戦連敗。ですよね」
玄関から応接間へと移動した2人は、向かい合うソファに座り、中央に置かれたテーブルにチェス盤を拡げて駒を並べる。
先行するのは白を選んだエレンだ。
時間が経つにつれ互いのポーンが数個取られていき、エレンの持つ重要な駒の多くはボードの端へ追いやられる。
ハンジが次の一手でチェックに持ち込めるかと思われた瞬間だった。
エレンが自分のルークをキングの隣へ動かし、キングを後退させる。
458 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:35:38.04 d
「良い一手だ。アルミンの入れ知恵かな?」
「ふふ。バレちゃいましたか。昨日あいつに教えてもらったんですよ」
昨晩、徹夜でアルミンと対戦してやっと覚えた手だ。
一手で2駒動かし王を城で守ることが出来るキャスリングという特殊な技。
この前までは、それぞれの駒を動かせる範囲や簡単なルールくらいしか頭に入ってなかったエレンだったのが、実に目覚ましい進歩だ。
キングを動かさず守りに入れたいのは分かる。
チェックメイトを決められればそこでゲームが終わってしまうのだから。
しかしそれに相反し、後先を考えず攻める一方であるナイトの縦横無尽な動かし方。
キングやナイト、ポーンたち。
それらをエレンが誰に見立てて動かしているつもりなのか、ハンジには手に取るように分かってしまった。
みんなの力が必要だと理解していながら、どうしても自分が先行して動くこと止められない、エレンらしい戦い方。
それでエレンがこの先サクリファイス(犠牲)という一手まで覚えたなら、自分たちは見るに耐えられないだろう。
ボードゲーム上の事だとしても。特に彼は。
「やっぱり負けちゃいました」
残念そうに笑ってエレンがそう呟く。
決め手となったのは、自分の駒が相手の駒に囲まれてしまいそれにエレンが気を取られている隙に、駒を奥へと動かしていたハンジがプロモーションという手を使ってポーンでしかなかった駒をクイーンに昇格させ、チェックに使った奇術だった。
459 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:35:41.78 d
それはさしずめ一兵士から一日にして女王にまで上り詰めさせられたヒストリアのように。
「なかなか良い勝負だったよ」
「…ねぇ、ハンジさん。オレたちの戦いは、こんなボードの上で行われているような生半可なものだったでしょうか」
「……?」
「ヒストリアの存在は確かに重要だった。けれど相手のキングを取れば終わりに出来るような、そんな簡単な戦いじゃなかったはずです。」
続けてエレンは言い放った。
「だから、ちゃんと皆殺しにしねぇと…」
声色が一変し、見開かれた双眸が攻撃的な金色を湛えてぎらりと光る。
静かなこの場所に敵などいるはずもないのに、その眼は確かに何者かを見据えていた。
「エレン…?いきなり物騒なこと言うなぁ。どうしたの?」
しかし殺意剥き出しの顔を今しがたしていたはずのエレンが、今度は俯いて顔面蒼白になり、いやだ、こわい、と言いながら急に体を震わせ始める。
「何で…?オレのキングが無い。居ないんです、此処に、」
「……え?」
エレンの駒だった白のキングは台座の上に置かれている。
しかし、それは彼の眼には映らない。どうやらチェスの駒のことを言っているのではないらしかった。
460 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:36:07.14 d
「オレは、あの人の命令ならちゃんと従えるのに…」
ハンジは気付く。エレンが言う『あの人』が、誰のことを言っているのか。
「命令…?違う、そうじゃないッ!オレは自分の意思であいつらを…!」
大声で叫んだエレンがソファから急に立ち上がる。
エレンの意識と魂は交錯していた。
唯一信じて自分を託せるその人にその身を委ねたいという彼の意識と、自分が思うように戦いたいと思えば檻をも破壊できるほどの攻撃性を孕んだ、魂とが。
均衡が崩されつつある。
これ以上は自分の手に負えないと判断したハンジが何とかしなければと、自分も立ち上がった。
「少し落ち着こう、エレン。待って、今、薬を…」
激昂し今にも暴れ出しそうなエレンに背を向け、ハンジはこの部屋で安定剤が保管されているであろう場所へ移動する。こういった不測の事態でも対応出来るように念のため、各部屋に用意してあったはずだ。
注射器で精神安定剤を打つ前に手がつけられない状態になったらどうするべきか。生憎、気密性の高い防音に優れた屋敷だ。
異変に気付いた部下が駆け付けてくれる見込みはあまりない。外に出て先にモブリットを呼びに行くべきかどうか。
461 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:36:11.16 d
考えながらもハンジは飾り棚の引き出しから取り出して、密閉された容器に入っていた薬を注射器で吸い上げさせ、準備をする。
「嫌だっ…!オレはッ!誰の指図も受けないッ!」
ガシャンッ
エレンの手によって乱暴に振り払われたチェス盤が大きな音を立てて床に投げ出される。飛散してばら蒔かれた駒が床に転がり落ちた。
朧気な意識の奥底からそれでもいつだってじわりと胸を掴んで離さない記憶。深紅の絨毯に散らばるその様を見て、赤く赤く無惨に投げ出された幾つもの亡骸が脳裏に思い起こされる。
敵も仲間も同様に。無数の死体の上に築き上げてきたのは、ただ国の安寧を願うためのものだったか。
自分たちが手に入れようとしていたのは平和という偶像で飾られた小さな世界でしかなかったのか。
狂っているのはオレじゃない。
ずっと前からエレンはそんな違和感を少しずつ感じていた。
皆が話している言葉と自分の記憶とにズレが生じて、本当のことが分からなくなっていたことに。
自分はどうして此処に居なければいけないのか。己の意思を蔑ろにされてまで閉じ込められている理由が分からない。
もう誰の言葉も信じられないならいっそ、自分の感情に付き従うしかないのではないか。
そう。自分を支えてくれていたのは、ミカサとアルミンだけじゃない。
いつも隣に居て自分を見守ってくれていた人が、他にも居た。
家族や親友という繋がりが足枷になって引き止めさせてしまうのならば、自分に対し何の柵もない彼ならきっと。
あの人ならば…自分の全てを理解してくれる。望みを伝えれば此処からだって解き放ってくれるはずだ。
462 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:36:39.75 d
「…ねぇ、ハンジさん。みんな遊びに来てくれるのに、何で兵長だけオレに会いに来てくれないんですか?」
立ち竦むエレンは窓の外を見た。
何故だろうか。空を見て、彼の影を探してしまうのは。
自分はあの人の背中をいつも追い求めていたのだと、それだけはハッキリと分かる。
自分はあの背を追って、まだ飛べる。
皆が握って離そうとしない命綱を、自ら振りほどくことだって厭わない。
「待って、エレン…『兵長』って、誰?そんな人、どこにもいないよ…?」
信じられないような発言にエレンは眩暈がした。
「!?嘘だッ!最期まで一緒に戦うって決めたんだ!!今も一人で戦ってるかもしれないのに!何でッ!オレだけが、こんな所に…っ」
自分の中に確かにある、あの圧倒的な存在が現実のものではないと否定されるなんて。頭がぐちゃぐちゃになりそうだ。
いつでも先頭に立ち、導いて、進むべき未来を選ばせてくれた彼は、自分が造り出した幻や妄想なんかじゃない。そんなはず、ない。
「此処に居ないって言うなら、オレ、探しに行かなきゃ…あの人を。」
「待って!エレン!!」
迷わず部屋のドアへと向かおうとするエレンを制止しようと、薬が入った注射器を握り締めたハンジが後を追う。
その時だった。
エレンが出口に到達する前にドアがひとりでに開いたのは。
実に良いタイミングでモブリットが戻ったのだとハンジは思った。
だが予想に反してその人物は、自分の部下なんかよりも今最もこの場所に必要となる人間だった。
「おい、何の騒ぎだ」
463 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:36:49.25 d
品のある黒いスーツジャケットに身を包み、首には白いクラバットを巻いている。前髪はやや右側で分けられ、襟足は短く刈り揃えられた黒髪の男。
眉根を寄せて怪訝さを顔面に貼り付けたその人物。
それは間違いなく今しがた帰って来た、この屋敷の主人だった。
その人物を視界に写した途端、エレンの瞳から大きな涙が零れ落ちる。
「あ…あ…っ、兵長…っ、兵長っ」
言いたいことは山ほどあった。
だが、一気に溢れ出るものを言葉として伝える術も分からず、衝動のまま彼に縋り付く。
堰を切って漏れ出た感情のまま、子供みたいに泣きじゃくって自分の身体に縋る少年に動揺を見せるわけでもなく、その男は肩を支えて相手を少し押し戻した。
「教えてくれ、エレン。いつから俺にそんな肩書きがついたんだ?」
その男は、先程エレンが口にした言葉を確認しようとしていた。
責めるわけでもなく、突き放すわけでもなく、落ち着かせるように頬に触れて涙でくしゃくしゃの顔をじっと覗き込む。
「俺の名前は?」
この少年の持ち前の美しい両眼はいまや白目が血走り充血して、鼻面までをも赤くさせている。整っているはずの顔を歪ませ酷い有り様だった。
「……っ」
それでも眼を背けず自分を見つめてくるグレイシュブルーの静かな瞳に、エレンの眼は戸惑うように揺らぐ。
自分はこの人をいつもなんと呼んでいるか。なんと呼ぶべきであるか。分かっていないわけじゃない。
「リヴァイ…さん」
464 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:37:21.31 d
俯き、小さな声でそう言ったエレンの肩は酷く震えていた。
その後も消え入りそうな声で続けざまに自分の名を呼び、肩に顔を埋めて泣く少年の頭を手で支える。
リヴァイと呼ばれた男は、エレンに向けていた穏やかな表情とは一変し、睨みを効かせ、相手を責めるような鋭い眼をエレンの肩越しから奥に居た人物に向けた。
困ったように苦笑いで答えるしかないハンジ。
リヴァイは、どういうことか後で説明しろと眼で問い質しているらしかった。
だがその前にチェス盤と駒がぶちまけられた床の惨状を見るに、もっと別の落ち着ける部屋にエレンを連れていき、暫く様子を見るべきか。そう考えたリヴァイが、彼から少し離れようとした瞬間、かくん、と、細身の身体が力無くその場に崩れ落ちる。
「エレン…?」
咄嗟に抱えられた少年はリヴァイの腕の中で、そのまま意識を手放した。
お互いの自室とは違い、2人で夜を過ごすための部屋は、別の場所に用意されている。
応接室や客間から離れた所を敢えて選んで用意されたその場所は、何日の間も使用されていなかったというのに、清掃を担当した本人が言う通りに塵一つ無く、ベッドメイキングも何もかも完璧だった。
ベッド脇の飾り棚に灯りを灯すための道具。香油が入ったガラスの小瓶。水差しとコップ。
いくつかの着替えとタオル、替えのシーツが仕舞われた引き出しが付いた収納棚がその隣に置いてあるくらいの、シンプルな内装。
余計な物は一切置かない。この部屋は。時間を気にするのも煩わしいから、時計だって置いてない。
お互いの身一つがあればいいと、そんな意味を持つことも知っているから、それ以上は何も言わない。確認する必要もない。
「わっ、ちょ、リヴァイさ…!」
ベッドの上で無遠慮に剥ぎ取られる衣服はあれよあれよと言う間に脱がされていくのだが、カーテンが開け放たれたままで窓から射す光を直に受けて曝された自分の貧弱な身体が哀れになり、その先を一旦止めさせたくなった。
明るいうちから致す事になろうとは思っていなかったから。それならせめてカーテンを閉めて、暗いなら蝋燭を灯すくらいの配慮を貰いたかったのに。
465 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:37:46.37 d
あー!わー!とか叫んでる間に結局全部脱がされてしまい、残った恥じらいを捨てきれないエレンはシーツを身に纏おうと手繰り寄せて握り締める。
その様子を見ながら腰を下ろし、今度は自分の衣服を脱ぎ始めるリヴァイを、直視出来ずに視線を不自然に泳がせたエレンは明らかに挙動不審だ。
「いい加減慣れねぇのか」
慣れる、わけがない。
現役の兵士であるこの人の屈強な肉体を見せ付けられたら、どんなに自主トレしようと屋敷で燻っているしかない自分の身体なんて比べてしまえば情けないったらない。
だから女性のような恥じらいというよりかは、そっちの方がエレンにとっては酷だった。
でもそんなどうにもならない劣等感を知られることすら恥である。
「だ、だって。…だって、オレ、記憶があやふやだから、毎回初めてのような、ものなんです」
自分の上へのし掛かってきたリヴァイに対しどうか容赦を…と、そんな意味も込めての、苦し紛れの言い訳だった。
その言葉に少し口端を吊り上げ嗤うリヴァイの顔は影になった所為もあってか、いやに蠱惑的であり、エレンは心臓を直に撫で上げられるような恐怖と期待の矛盾した切迫感に身を震わせる。
「そりゃあ、ヤる度に初々しくて堪んねぇな」
…なぁ、エレン?
艶めいた低い声でそう言われてしまえば、もう。
466 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:38:24.11 d
耳から犯されたそれが首を下り、背筋から伝わって腰までをも悪寒が走り抜ける過程で既に。痺れが全て快楽に変わる事を、予感させていた。
さっきの初めて宣言はどこへやら。
自ら腰を揺すって躯をしならせ、いい、いい、と浮かされたように繰り返し囀ずる淫靡さに、持っていかれそうになりながらリヴァイは迫り上る射精感に堪えていた。
「っ、…おい、ちょっとは自制しろ…ッ」
「や、あっ、止まんな…んぁあっ」
いつの間にか完全に主導権が奪われている。
無垢だった少年をここまでにしてしまった自分に罪があると今ここでリヴァイは懺悔したい気持ちにまでなったが、申し開きをしたいその相手は聞いてもらえるような状態ではなさそうだ。
元々加減をしてやるつもりであったから、前戯も丁寧に時間をかけ、挿入後も様子を見ながら動きを緩やかにしてやっていたというのに。
途中から自分で動きたいと言い出したエレンに、本人のペースでやらせた方が相手にとっても楽かと考え、上にさせてやったのが間違いだった。
一度イかせたしそれで落ち着くだろうと思ったのだが、余計に拍車を掛けてしまっただけのようだ。
我を忘れ向こう見ずに突き進む性格もリヴァイは理解しているつもりだったが、今日のエレンは妙に性急で、貪欲である。
「やッ、んン、やだぁ…っ、ほしい、りばいさ…っ、もっとシて欲しぃ…ッ、」
「…ッ、エレン…」
そんな可愛いことを、腰を擦り付けながら言う。
脳を掻き交ぜられるような甘い声でねだられ頭が麻痺しかけて、倒錯行動に至らせるほどの危険すら感じたが、理性の綱をそれでもリヴァイは手放さなかった。
467 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:38:27.83 d
身を起こし、エレンを抱き締めると、宥めるように背中をさする。
「…駄目だ、今日はゆっくり。…な?」
「ふ、ぅ、ん…うぅ、」
その言葉に相手の肩に取り縋り、必死で自分を落ち着かせ従順になろうとするいじらしいエレンに、いい子だ。と言って、震える額にキスを落とし、乱れた髪を梳いてやる。
本当なら淫ら極まりない声で泣くまで喘がせ、溺れさせてやりたいくらいだが。
倒れたばかりでこんな行為を強いていることさえ間違いなのに、これ以上無理をさせるわけにもいかない。と、リヴァイは我慢させざる負えなかった。
首に手を回して相手の律動に合わせられるまでにやっと自分を取り戻したエレンの腰を抱いて、緩和な動きで下から突き上げる。
洩れ出た熱い吐息を時折奪って口付け、エレンの様子を見ながらリヴァイは抽送を繰り返していたのだが、閉じられた瞼の端から突然、水滴が頬を伝って零れだした。
動きを止め、どうした?と、聞きながら、眦から零れ落ちた涙を唇で拭ってやっても、留めどなく溢れ出て更に止まらなくなったので、困り果てたリヴァイはエレンの頬を両手で抱えるようにして押さえ、真っ直ぐ見つめる。
「おいおい。泣かれたら、善くねぇのかと思っちまうだろ…?」
具合が悪いのか?と聞くリヴァイに、ふるふると首を振って、エレンがしゃくり上げる。
468 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:38:57.91 d
途中で気分が悪くなったら中断するから、ちゃん言え。と、最後まで自分の事を第一に気遣ってくれているリヴァイの優しさに、エレンは今まで押さえていた涙がついに決壊してしまった。
「……ん、ふ………って、だって…っ、こんな、近くにいるのに遠くて、こわいんです…また離れ、たら、リヴァイさんのこと、全然分からなくなっちゃうかもって…思ったら、オレ…ッ」
ずっとそんな不安を抱えていた。
一緒に居る間は相手の事が分かるのに、傍に居ない時は何故かリヴァイの記憶だけが薄れていく。
同期の皆や幼馴染みのことは絶対に忘れないのに、リヴァイのことだけが、何故か。
事故で一時的に失われただけかに思われていた記憶の穴は、リヴァイに関することだけが未だ進行して広がっていた。
会えない時間が空けば空くほど、記憶は抜け落ちて、それを取り戻すのに随分と時間が掛かってしまう。
リヴァイと過ごした日々の大事な記憶を何度も何度も反復し、紙に書き留め、忘れまいと抗う事を人知れず繰り返していたけれど、いつかまた完全に喪失してしまったらという恐怖がエレンをいつでも責め立てた。
「……。大丈夫だ。俺はお前を覚えてる。ちょっとくらい忘れても、ちゃんと思い出させてやるから…」
469 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:39:07.74 d
だからもう泣くなとリヴァイはエレンを強く抱き締める。
その言葉にやっと開かれた揺蕩う瞳は水底の硝子玉のようにゆらゆらと綺麗で、尚も愛しさが込み上げる。自分を信じて疑わないのであろう純真な瞳ごと、舐め回して愛してやりたいくらいだった。
愛しいと感じる身体そのものが情欲に直結しているみたいにリヴァイを昂らせてしまったから、エレンは自分の中に収まっていたモノを、強制的に思い出させられて腰にずくん、と、快感が走る。
抱き締めたままで堪らずリヴァイが中を穿つと、甘ったるい矯声が耳に心地よく響いてそれを更に引き出すようにして腰の動きが速くなり、互いの熱を限界まで掻起させるのも容易かった。
「んンぁ、ふぁあっ、あ、ぁっ」
「……っは、エレ、ン…ッ」
最奥まで捩じ込み、中イキさせて自分の種をこれでもかってくらい植え付けてやりたい程だった。
しかし、ドライオーガズムは平常でも暫く動けなくなるくらい身体に負担がかかるものだ。
元より今日は大事を取ってそこまではしないつもりだった。
肉穴が、きゅうきゅう締まって限界を訴えてくるので、イキそうか?と、聞けば、こくん、こくん、と頷いて、エレンが絶頂を前にしがみ付こうとするので、リヴァイは中から濡れて滑る自身を引き抜いた。
なんで?どうして?と、恨めしそうに震えている哀れな瞳に構わず、血管が浮き出て極限まで猛った肉棒を相手のそれに擦り付ける。
エレンの手を取り互いのモノを握らせて、リヴァイも一緒に強く握り込んで裏筋をぐっと擦り上げた。
470 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:39:33.15 d
「っあぁ、ン…!あ、ーんんッ」
「ーーッ!」
吐き出した自分の体液が相手の性器を汚していることすら、得も言われぬ快感で。
出した後で白濁に塗れたぺニスをしつこく擦り付け絡ませ合うという動物じみた行動にすら互いに酔いしれて、いつまでも2人は名前を呼び合い濃厚なキスを交わして確かめ合った。
くたりとベッドに沈むエレンの体をきれいに拭いてやって、服を着せてやる。
自分で出来ますと言ってもけっきょくリヴァイがやってしまうとエレンは分かっていたから、全部任せた。
何から何まで、すみません。と、手間をかけさせている事を律儀に謝るエレンに、俺が好きでやっていることだとリヴァイは言いながら毛布をかける。
「明日はオレが調子良かったら、対人格闘の訓練つけてもらってもいいですか?」
「ああ。」
「オレ、いつか記憶が戻って病気も治ったら、リヴァイさんと色んな所へ行きたいです」
「……そうか」
穏やかな表情で夢物語を話して微笑むエレンの頭を撫でてやれば、すぐにうつらうつらと微睡み始める。
471 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:39:42.35 d
その稚い様子にどうしようもなく愛情が湧き出てしまうリヴァイは、こめかみにキスを送った。
「無理をさせたからな。もう休め」
そう言ってやれば、素直なもので、数分も待たずにエレンは眠りへと落ちていく。
「……何処にも行けないんだ、エレン。」
深い眠りに静かな寝息を立てる綺麗な顔を見下ろしたリヴァイの瞳は冷たい影を落とし、曇る。
忘れても思い出させてやるなどと、根も葉もない戯れ言を吐いた自分のこの舌を噛み切ってやりたい。
「なんせ、俺が切り落としちまったんだからな」
飛ぶことを覚え始めたばかりで未完成だったが、真っ直ぐで美しかった柔い風切り羽を本人も気付かぬ間に削ぎ取ったのも、この鳥籠に閉じ込めてお前を騙し続けているのも、他でもない自分なんだ…と。
472 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 15:40:23.50 d
この前はサシャとコニーが泊まりに来て。また別の日にはジャンとマルロ。
その後はピクシス指令と部下の女性が訪ねて来た。
その次はエルヴィンさんとナイルさん。昨日はまたミカサとアルミンが来ていた。
必ず毎回2人ずつ、それすらも意味があったのだと。
『身体の調子がまだ戻ってないこともあるけど、脳が情報を処理しきれなくて、一時的にまた昏睡状態に入ったんだと思う。』
『何故、エレンの記憶は戻りかけている』
『薬に対して身体に抗体が出来てしまっているのか。それとも自分の意思で飲まないようにしているのか…』
『だが、飲み続けたとしても、あいつの中に未だ燻る衝動をそんな薬ごときでずっと抑え込めるなどと、俺には到底思えん』
『そのためのストッパーとして貴方がいる』
夢か現か。その時は、自分でもよく分かっていなかったが。
裸足のまま夢遊病みたいに意識がはっきりしない頭で屋敷を彷徨って辿り着いた部屋の前でそんな会話を聞いてしまったのは、大分前の事だったろうか。
気怠さが抜けきらない身体を起こしたが、そのままでは少し寒く感じた少年は素肌にシーツを身に纏い、ベッドから這いずり出て窓から外を眺めた。
ガラス越しに空を仰ぎ見、月明かりを宿したまるい瞳は磨かれた金のような眩い輝きを放つ。
脱ぎ捨てベッドに置いたはずの服が縺れ合う間に散らばってずり落ちたのか、自分の衣服が床に散乱していた。
どうにかしようとそれらを拾い上げると、シャツから何かが落下する。
そのまま転がり落ちて壁に当たり、動きが止まった小さな石ころのような球体のものを彼は拾い上げた。
473 :
名無し草 (ワッチョイ ef55-Iq2g)
2016/04/02(土) 15:40:54.81 0
さっきほんまにしっことうんこがドバチャて同時に吹き出して(ほんま吹き出した)ふぁあああああ〜〜@@♡♡/////@@♡@@てなったは
474 :
名無し草 (ワッチョイ 6fc2-G+K4)
2016/04/02(土) 15:56:23.84 0
>>423 あまりに酷過ぎるからわいも昨日したし他のBBAもちゃうスレで通報しとったみたいや
475 :
名無し草 (スプー Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 16:02:14.58 d
ババア上野からただいま
めちゃ人多かったねん
御朱印三つも増えたから余は満足じゃ
476 :
名無し草 (スプー Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 16:02:23.03 d
477 :
名無し草 (ワッチョイ abb6-Iq2g)
2016/04/02(土) 16:03:15.38 0
>>475 上野発の夜行列車降りた時からー
おつやで
478 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 16:07:16.17 a
479 :
名無し草 (ワッチョイ 8bf1-DUcv)
2016/04/02(土) 16:12:47.54 0
なあ、同期の助けたとこってこれであっとる?
ジェル→ミカ→←ジーン←ミン
ミカ→←サッシャ
アニ→コニ
ユミ→クリコニゴリ腰
腰→ゴリ→コニ→クリ→ユミ→腰
480 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 16:13:22.44 a
ジーン誰や
481 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 16:14:45.23 a
また新たなキャラが生みだされてしまった…
482 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/02(土) 16:14:56.08 a
>>479 いちいち言うのめんどいくらいもっといっぱいある
483 :
名無し草 (ワッチョイ abb6-Iq2g)
2016/04/02(土) 16:20:02.83 0
484 :
名無し草 (ワッチョイ 8bf1-DUcv)
2016/04/02(土) 16:31:50.45 0
>>482 そか
上手い事一週せんかなあと思たけど
ほとんど忘れてんなあ
逆はこれだけやし
腰→アニ→修造→ゴリ
485 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/02(土) 16:33:46.54 a
>>484 BBAが何を言いたいんかわいにはよう分からん
486 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 16:38:13.33 0
たらいまん桜美しかったは満開や
初めてのイカ焼きもおいしかったし冷蔵庫も買えた
でも届くのは月曜日にしてもらった
今日のメインは夜桜や!ライトアップされた桜はまた美しいねん
487 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 16:52:42.68 0
あーロフトとハンズ行けば良かった
488 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 17:06:40.24 0
あーSHARP買収されるニュースやは
SHARPは前からおかしな事してるな思ってたらやっぱあかんなったな
わいの中では負の法則は健在や
上の人間がバカやと大変やな
489 :
名無し草 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/02(土) 17:18:30.19 M
わいもケイン相談所行って靖国神社行って日暮里で布買ってめちゃ充実した1日やったは
明日はぐだぐだするで
490 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 17:29:31.08 0
>>489 夜桜も行ったらまた幻想的やしええんやない?
わいググってもわからんのが松陰神社のご利益や
結局大志(夢)を抱く者を応援する神社やろか
吉田松陰は外国行きたかったんよな密航しようとして捕まって草や前科数犯ってのがおもろかったは
491 :
名無し草 (スプー Sd9f-Iq2g)
2016/04/02(土) 17:43:23.85 d
靖国ジンジャーええなあ
東京民うらやま
492 :
名無し草 (ブーイモ MM9f-Iq2g)
2016/04/02(土) 17:44:31.39 M
都内はどこも桜満開やな
谷中霊園も花見客がおったは
493 :
名無し草 (ワッチョイ 0b1c-G+K4)
2016/04/02(土) 18:20:34.75 0
ゴリ→腰の名シーンがないやん
二期の見せ場やで
腰ちゃんがはじめちゃんみたいな顔なっとるねん
494 :
名無し草 (ワッチョイ 7fb6-Iq2g)
2016/04/02(土) 18:22:43.48 0
ツイのトレンドにジェル誕クルージングが入ってて草
なんや恥ずかしいで
495 :
名無し草 (ワッチョイ 9fbf-pU0W)
2016/04/02(土) 18:23:37.96 0
496 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/02(土) 18:28:46.36 0
みてきたは
めちゃ恥ずかしい
497 :
名無し草 (ワッチョイ 2785-eoZT)
2016/04/02(土) 18:36:21.63 0
TBではそういうのあったって聞いたことあるは
498 :
名無し草 (スプー Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 18:37:10.12 d
>>479 ゆみうが助けたんはゴリ腰両方やないけ
ちゅうかウト城メンバー全員巨人状態で助けとるな
499 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 18:46:30.85 0
ふぁ寝てるやんけ夜桜行くんに!
わいミカちゃんがヒスちゃんの頭ぶつからんように助けたとこ好きやで
500 :
名無し草 (アークセー Sxef-G+K4)
2016/04/02(土) 18:46:43.53 x
巨人もカウントするんなら補給所で長瀬もジョン達助けとるで
501 :
名無し草 (ワッチョイ 2785-eoZT)
2016/04/02(土) 18:48:39.36 0
助けた人をたどっていってうまく一周したらおもろいけどそう都合よくいかんやろ
502 :
名無し草 (ワッチョイ d76e-dfgU)
2016/04/02(土) 18:52:20.06 0
前スレてコピペ荒らしの容量食いのせいで落ちたんか
このスレも最後まで行けんのかもしれんな
503 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 18:52:54.60 a
補給所てなんやっけ
504 :
名無し草 (ササクッテロ Spef-Iq2g)
2016/04/02(土) 18:54:10.90 p
TBとかのやつはクルージングしゅごーて感心して見てたけど自ジャンルでやられると恥ずかしさしかないは
505 :
名無し草 (アークセー Sxef-G+K4)
2016/04/02(土) 18:56:11.83 x
>>503 さすがに忘れんなや
補給所に人が集中しすぎて巨人とジョンがご対面して「わいは知ってたはずや現実ってやつを」って言ってたやろ
そこに横からグーパンツで長瀬が殴って助けとったやん
506 :
名無し草 (アークセー Sxef-G+K4)
2016/04/02(土) 19:03:18.05 x
ただいま
横からグーパンツ草
507 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 19:04:16.26 a
クルージングって具体的になにするねん
508 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 19:05:07.31 a
509 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/02(土) 19:07:28.99 0
イサヤマン紅茶花伝買い占めるん
510 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/02(土) 19:08:02.10 0
たらいま
イサヤマン日記更新したん?
511 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-pU0W)
2016/04/02(土) 19:16:26.17 0
BBA
朝から頭が痛いねん…
512 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/02(土) 19:17:15.17 0
513 :
名無し草 (ワッチョイ 371c-G+K4)
2016/04/02(土) 19:17:54.64 0
514 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-pU0W)
2016/04/02(土) 19:22:44.36 0
>>512 偏頭痛の定義調べたけどなんか一般的すぎでようわからんは
>>513 わいの紫苑さんどこにおるねん
515 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-dfgU)
2016/04/02(土) 19:26:51.46 a
クルージングトレンド入すげーやん
ジェルおめやで
516 :
名無し草 (ワッチョイ 53a2-G+K4)
2016/04/02(土) 19:27:20.50 0
表紙が来たって事はバレ近いんかな
夜桜お七してくるは
517 :
名無し草 (ワッチョイ 531c-aHcU)
2016/04/02(土) 19:30:05.50 0
こんにちはババアたち
久しぶりに来たで♡ジェルは元気かな?
そういえばジェルの誕生日にわい家の近くの桜一気に咲いたは
すごくない?春の子奇跡の子やろジェル〜
518 :
名無し草 (スプー Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 19:33:54.71 d
クルージングすごいな
嫁のがあってもわいは船酔い酷いから無理そうやは
519 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/02(土) 19:35:22.55 0
というかなんで船なんや?
店貸し切りとかじゃあかんの?
520 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-Iq2g)
2016/04/02(土) 19:36:32.94 0
ホテルのスイートルームとかええな
夜景見ながら嫁の絵描いたケーキ食べるねん
521 :
名無し草 (ワッチョイ 531c-aHcU)
2016/04/02(土) 19:37:28.61 0
今日かわええブラジャー買った
522 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-Iq2g)
2016/04/02(土) 19:38:24.57 0
わいセシールの3Dブラに興味津々
523 :
名無し草 (スプー Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 19:43:03.88 d
>>519 どうせやるなら豪勢にてことやない?
中身はパーティーするだけやしな
524 :
名無し草 (アウアウ Saaf-plRE)
2016/04/02(土) 19:44:50.09 a
他マンガのバレ見に行ったらその他のバレでリリ死んでることにされてて草
このタイミングでバレくるわけないし100パー嘘やけど
525 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/02(土) 19:47:11.36 0
>>523 なるほど
ここで見たのかどうか忘れたけどリリ誕ドイツ旅行とかジョン誕馬肉料理店貸し切りとかも楽しそうやったな
みんな色々考えるもんや
526 :
名無し草 (ワッチョイ 9fd9-G+K4)
2016/04/02(土) 19:48:39.87 0
>>524 どこに落ちた嘘バレやねん草
そんなん騙される奴もおらんやろな
527 :
名無し草 (ワッチョイ 9fbf-pU0W)
2016/04/02(土) 19:49:14.88 0
>>525 馬肉酷すぎない草
それでジョン祝ってるつもりなんか
528 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 19:51:50.74 a
529 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/02(土) 19:52:29.09 0
ゆみう誕にニシンで祝うようなもんや
530 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/02(土) 19:53:32.08 0
餌追加したいからまんぞくそんはよ帰らへんかな
531 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 19:53:51.55 a
馬肉パはええけどニシンパーティはテンション上がらへん;;
532 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-Iq2g)
2016/04/02(土) 19:55:04.07 a
ジョンは馬面であって馬ではないねん
ヒス誕に馬肉祭りやと幼馴染食うってことで嫌がらせ感あるけど
ジョンと馬の間にあるのは顔の長さだけやねん
533 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 19:57:10.14 a
ジョン誕祝うならオムオムやな
534 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/02(土) 19:57:36.22 0
535 :
名無し草 (ワッチョイ 9fd9-G+K4)
2016/04/02(土) 19:59:16.79 0
お祝いできて旨いもん食えてええやん馬肉パーティー
わいも馬刺し食いたい
536 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/02(土) 20:00:19.60 0
537 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/02(土) 20:01:10.19 0
あー!オールインワンゲル欲しい!…購入しよかなどうしよーかな
538 :
名無し草 (ワッチョイ 8b4c-Iq2g)
2016/04/02(土) 20:01:38.05 0
539 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:01:59.56 a
540 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/02(土) 20:03:31.97 0
541 :
名無し草 (ワッチョイ b740-G+K4)
2016/04/02(土) 20:06:15.83 0
>>532 つまりウマヅラハギ食べたらええんやな
確かわりとうまかったような気がする
542 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:08:32.01 a
>>527 よく考えたらババアが酷いって言ってること自体が酷いんやないか?草
別に共食いちゃうねんで
543 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:12:05.43 a
あれやあれ
リリやったら掃除
ジェルやったら地下室の鍵
ミカちゃんはマフラー
それと同じ感じやねん
544 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/02(土) 20:15:37.15 0
ここにシュークリームがあるじゃろ
545 :
名無し草 (ワッチョイ 13b8-G+K4)
2016/04/02(土) 20:18:04.50 0
546 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:21:30.34 d
自分にだけ見せる顔。雄の顔ではない、男のリヴァイだけが見ることのできるエレンの雌の顔が見たいのだ。
結果的には…そう、結果的にその顔は見ることができたし、自分のモノにもできたと思う。だが、エレンは心までは許してくれなかった。
「ぁ…っん、ァ、…っ…っ」
「良さそうだな、エレン」
「んっ、…は、ぃ…気持ち、いいで…すっ…はぁ、アッ」
エレンの背中にちゅ、ちゅ、と吸いつきながら、腰を掴んでぐちゅぐちゅになって解れている後孔を何度も穿つ。
外気に触れれば熱を持つローションがエレンの内側の肉をますます敏感にしてしまうようで、中は火傷しそうなほどに熱かった。
こうしてセックスするようになって、どのくらい経つだろうか。季節は冬から春に変わっていた。
エレンはやたらセックスをねだるようなことはしなかったが、我慢ができなくなるとリヴァイのところにやってくる、そんな感じだった。
まだ少し、リヴァイに抱かれることに戸惑っているようだったが、指先でも触れればその体は素直になった。
だが、エレンは最初の頃よりも声を抑えるようになった。息ができているのか心配になるくらい顔を枕に押し付けて、くぐもった喘ぎだけを漏らす。手はシーツを強く掴んでいて決して離そうとはしなかった。
まだ男に抱かれる屈辱に耐えているのかと思いきや、気持ちいいか、と聞けば素直に気持ちいいと言うのだ。だったら我慢などせずにもっと喘げばいい。縋りつけばいい、そう思っているのにエレンは頑なにそうしようとはしなかった。
「おい、エレン」
「ぁ…な、なに…っン、ぁっ、っ、…アッ、ひあ!」
声を我慢されるのが不愉快で、一度性器をずるりと抜くと、その体をひっくり返してこちらを向かせた。
547 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:22:08.97 d
顔を真っ赤にして瞳を潤ませ、荒い息を繰り返すエレンは驚いた様子でリヴァイのことを見た。
「な、なん…っ」
「たまにはいいだろ。声、我慢するな」
「えっ、ちょっと待っ…アッ、」
「いいな?」
「あぁ…っ、待っ…リヴァイさ、まだ、いれないで…っ」
「ああ?」
抜いたばかりでまだ少し開く後孔に性器の先端を押しあてようとした所で、エレンがそこに手を伸ばしてそれを阻んだ。
「こっちでするなら、…っ手、縛ってください…っ」
「……なに?」
「お願いします…っ初めての時みたいに、両手、縛ってください…!」
リヴァイはその懇願に頭がくらくらした。
確かに初めてエレンとセックスした時はネクタイで両手を縛ったが、あれはエレンが抵抗するからであって、別にリヴァイに緊縛の趣味があるわけではない。
「…理由は?」
「………なんとなく、…っいいから!早く縛れよ!」
じゃないと入れさせない!みたいに叫ぶものだから、リヴァイは不本意ながらも床に放られた自分のネクタイをとる。だが、エレンに「皺にしちゃうからオレのにしてください」と言われて、言うとおりにエレンのネクタイでその両手首を縛った。
「痛くないか?」
「平気です…もっときつくてもいいくらい」
これでも結構きつめに縛ったのだが、少しの隙間にエレンはまだ不満そうだった。
「跡がついちまうだろうが」
「いい…明日、休みだから」
そして、手首を縛るために起きあがらせていた上半身をどさりとベッドに横たえると、エレンはリヴァイを見上げて言った。
「ひどく、してください…」
エレンが何を考えてこんなことを言うのかがわからなかった。
548 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:22:13.02 d
それはそうなのだが、リヴァイはそれでは納得できないのだ。
「どうして?だってさ、君の可愛いエレンはセックスしたい時に来るわけで、リヴァイだって自分の所にきてくれて満足。
彼は気持ちいいし、お互いそれだけの関係でしょう?実際それだけの繋がりでしかないんだし。むしろそれだけの関係ならもっと気持ち良くなりたいと思うんじゃない?」
女だというのにはっきりと言うハンジに若干ひきつつも、リヴァイは一理あるその言葉に眉を潜めた。
「それじゃあ体だけみてぇじゃねぇか。アイツはセフレじゃない」
「は…本気で言ってる?セフレじゃなかったらなんなの?」
リヴァイは黙考した。
エレンはセフレじゃない、と思う。
確かに会う度にセックス…というかセックスするためにしか会わないけれど、リヴァイの中ではそうではないのだ。
それだけの関係にしたくない。男のエレンが同性のリヴァイに抱かれる。
そんなのは普通では考えもしないことで、彼が自分の手の中に堕ちてきただけでも僥倖だと言うのに、リヴァイはそれ以上をエレンに求めているのだ。
「リヴァイがそう思ってなくても、きっと彼はそう思ってるよ。だからリヴァイの所に行くし、セックス自体に嫌とも言わない」
「…それでも、アイツは」
正直に話そう。
リヴァイはエレンのことを自分のモノにしたいと思っていた時から、たぶん、彼に好意を抱いている。支配したいと思うのも、自分のモノにした優越感に浸りたかったのも、全てただの独占欲だったのだ。
549 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:22:40.40 d
こんな関係になる前、二度も強引に抱いてしまったことを少なからず後悔していたリヴァイは言うなればただの不器用で、これ以上嫌われてしまわないようにするにはどうしたらよいかわからなかった。
とりあえずもう無理矢理に手を出すことを止めよう。
そう思っていた。
けれど、あの日エレンに初めて呼びとめられた。何か言いたいことがあるのだろうと、あまり人の入らない保管室に連れていった。エレンは何も言わなかった。
体に触れてしまうと抑えが利かなくなるから、出来るだけ触れないようにした。
煽るようなことを言ったのも、エレンがいつでも逃げ出せるように逃げ道を作ったつもりだった。
けれど、エレンは顔を仄かに赤くして、潤んだような瞳を期待に染める。以前とは違う反応だった。
物欲しそうにリヴァイを見つめ、自分から顔を近づけてくる。ああ、可愛い。思わず少し笑って、エレンが逃げ出す前に唇を塞いでいた。
その可愛い顔をもっと見たくなった。でも、離れようとしても強くスーツを引き寄せられて、求められた。可愛すぎる、このまま食べてやろうか。
だが、このまま流されてまたセックスしてしまっては関係は変わらないと思った。エレンを抱きたい欲求ばかりで埋め尽くされるこの脳みそを冷やす必要がある。
ちょうど明日から出張だし、この間に頭を冷やして、帰ったらすぐにハンジを呼びだそう。
そうしてエレンがリヴァイに責任取れと言ってきた日にハンジを呼びつけたのは、一刻も早くエレンとのことをどうにかしたいからだった。
けれど結局、他の男と寝るなどと言いだしたエレンに腹が立って、強引に腕を引いていた。もっと触れて欲しくなるから離せと言うエレンは可愛くて、でも男の所に行くから離せと言うエレンは可愛くなかった。他の男などに触れられてたまるか。
550 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:22:44.65 d
男であるエレンに女を抱くなとは言わない。異性を抱きたくなるのは人間として当然のことで、そこまでエレンを縛りつけることはできない。
リヴァイが抱くのは女も男も関係なくエレン一人で十分だけれど、それはリヴァイが勝手に決めたことだ。でも、どうしても、エレンを抱く男は自分だけでありたかった。
そうしたらエレンは、苦しそうに顔を歪めて自分の元に堕ちてきた。女の人のところには行かないで、と声を震わせて。
エレンももしかしたら自分以外を抱かないでほしいと思ってくれているのかもしれないと思った。
己だけを求めて欲しいと。エレンもリヴァイと同じ気持ちなのかもしれない、と。
そう思ったら我儘だとわかっていてもエレンの心が欲しくなった。優しくして、甘やかして、体だけじゃなくて心も満たせる存在になりたいと思いはじめてしまった。
けれど、エレンは頑なにリヴァイとの間に濃い一線を引いているのだ。それが嫌でたまらない。
「エレンに距離を置かれるのが嫌なんだ」
は?とハンジが声を上げる。
「あー…ちょっと待って。話が食い違ってる気がする。この話は緊縛プレイじゃなくて普通にセックスしたいんだけど…っていう話?それとも、セフレじゃなくて恋人にしたいんだけど、っていう話?」
「……後者だ」
「リヴァイは言葉が足りないよ。不器用すぎる」
ハンジが呆れたように言った。
551 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:24:15.46 d
氷海樹
恋に落ちる音はどんな音
どうにも先日から、リヴァイの頭の隅をチラチラと掠めて離れないものがある。
『3年大将のハチマキ、頂きます…っ!』
体育大会でリヴァイに立ち向かってきた1年生大将のひとり、エレンのことだ。
そのときはもちろん瞬殺してやったが、以来、リヴァイの頭を悩ませるようになった。
彼は調査団の後輩でもあるので、それなりに関わりがある。
関わりはあるし掃除の指導なんて何度もしているが、こんなにも脳内にチラつくのは初めてのことだった。
(なんだってんだ、クソッ)
チラつくのは決まってひとつ。
エレンがただでさえ大きな目をギラギラとかっぴろげて、こちらを睨みつける顔だ。
直後にハンジがやらかしたせいでその日は曖昧になってしまったが、とうにリヴァイの悩みは始まっていた。
浮かぶ残像を振り払うように首を振る。
そこでふと聴こえた声に顔を上げた。
今は昼休み、開け放った窓のおかげで校庭の声が聴こえてくる。
「エレン! ミカサとアルミンも聞いて下さい! ついに…ついにメロンパンを手に入れましたよーっ!!」
「マジか! すっげえな?!」
「それはすごいね、サシャ!」
「おめでとう」
「はい! 今までの私の努力がこれでひとつ報われ…っむぐむぐ」
「食うのはえぇよ…」
「サシャ、もう少し味わってもバチは当たらないよ…?」
言うまでもなく、エレンと彼の友人たちの声だ。
窓から校庭を見下ろしてみれば、グラウンド傍の芝生で弁当を広げているエレンたちの姿がある。
しばらく彼らを…正確にはエレンを…眺めて、リヴァイは打ちのめされた。
(なんでアイツを気にしてんだ、俺は…!)
ただの後輩だ。
調査団へ乗り込んできた猪突猛進で、ときどき生意気な口を利く後輩。
(…あのとき、巨人をぶっ殺したいと言った顔も悪くなかった)
と思ってから、リヴァイはまたも打ちのめされる。
(だから…!)
エレンの、友人たちと弁当を食べる顔。
552 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:24:35.65 d
調査団で活動するときの顔。
それから。
巨人に対するときの顔。
チーハンチーハンと騒いでいるだけの、煩い子どもだと思っていたのに。
(そうだ。あれはただの後輩だ)
強く頭(かぶり)を振って、リヴァイは窓の外から無理やり視線を引き剥がした。
調査団の活動は、秘密裏の部活ゆえに正規の部活動が終わった後に始まる。
「お疲れ様です!」
「あ、エレン。アルミンたちもいらっしゃい」
今日も彼らは調査団の部室へ来たようだ。
生物部に寄ってからやって来たリヴァイは、廊下を歩いているだけで分かる部室の騒がしさに眉を寄せた。
仮にも闇に紛れた部活、もう少し密やかに出来ないものか。
(そういえば…)
エレン・イェーガーという後輩が1人でいるのを、リヴァイは見たことがない。
まあリヴァイ自身もなぜかハンジとミケがよく寄ってくるし、ペトラたちもいつも4人でいるし、常につるんでいるのも珍しくはない。
「おい。もう少し静かに出来ねえのか、てめぇら」
「あっ、リヴァイさん!」
「リヴァイ先輩、おつかれさまです!」
しかし人数が多いというのは、掃除にはありがたい。
学校の窓は壁美化部の範疇だが、旧校舎の大部分は調査団が使用している。
「てめぇら、今日は倉庫の掃除だ」
「えぇーっ?!」
「また掃除ですかぁ?!」
(こいつら、掃除に対する意識がなってねぇな…)
躾直しか、とハリセンを取り出そうとしたところへ、後ろから走ってきたハンジが取りなした。
553 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:25:01.58 d
「まあまあ、1年生諸君の気持ちはよーく分かるよ。でもね、今年の調査団の活動方針は、顧問の先生がいないと決定も履行も出来ないんだ」
「…アルミン、りこうって何だ?」
「実行するってことだよ」
「へえ」
「そういえば、調査団の顧問って誰なんですか?」
「エルヴィンだよ」
「エルヴィン先生?」
3年生の学年主任をしている教師は、エレンたちも知っている。
彼の授業は週に1度しかないが、とても分かりやすいしキースと違って話しやすい。
「秘密裏の部活だからさ、顧問として活動するのは私たちよりもっと大変ってことだよ」
「へえ…」
そうなんだ、と1年生たちの顔が納得に変わったところで、リヴァイが舌打ちをした。
「チッ、喋ってねえでさっさとやるぞ。時間は有限なんだ」
どうせ今日も、エルヴィンは来ないだろう。
その意見にはハンジたちも同意であったので、文句は言わない。
「エルドたちは部室と隣の空き部屋だ。ハンジとミケはガキ共を倉庫に連れてけ。…エレン、お前はこっちだ」
「えっ?」
ハンジの後を追おうとしていたエレンは、なぜか呼び止められて目を丸くした。
「俺…ですか?」
「そうだ、お前だ。俺の掃除を手伝え」
首を傾げながらもリヴァイに着いていこうとしたエレンの腕を、ミカサが掴む。
「待って、1人ではきけ…危ない。私も行こう」
「…ミカサ。危険も危ないも同じ意味だよな?」
言い換えれてないぞ、というエレンにしてはずれていないツッコミを、彼女はスルーした。
「リヴァイ先輩。エレン1人では大変なので、私も手伝います」
「いいや。お前は倉庫だ」
「! なぜですか?!」
人数が多い方がと食い下がるミカサに、リヴァイは犬を追い払うように手を振る。
「俺もやるんだ。それに狭い部屋に人数はいらねえ」
ミカサはぐっ、と唇を噛んだ。
深刻そうな空気だが、中身は掃除の組分けの話である。
埒が明かない、とエレンはミカサの両肩を掴んだ。
554 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:25:19.35 d
「ミカサ。お前にはお前の役目がある。子供みたいな駄々こねてんじゃねえ!」
君たちも子どもだよ、というツッコミを飲み込んだハンジは偉かった。
エレンに真正面から諭され、彼女はようやく頷く。
「…分かった。終わったらすぐに行く」
「おう」
「おい、話が終わったならさっさと行くぞ」
「はい!」
先に歩き始めたリヴァイを追い掛けるエレンを、ミカサはいつまでも見送っていた。
「……これ、掃除の話だよな?」
ジャンの呟きは誰にも拾われなかった。
リヴァイが向かった先は、元は職員の宿直室らしかった。
簡単な調理場と調理器具や食器があり、来客用なのか仕切りのない隣には小さめの応接室。
「旧校舎にこんな部屋が…」
「俺たちしかいないからな。勝手に使わせてもらってる」
さて、とリヴァイは掃除専用スタイルへと切り替える。
要するに、埃避けのバンダナとマスク代わりの布を付け、ハタキを装備した状態のことだ。
「うぇっ、リヴァイさんいつの間に」
「おい。てめぇもさっさと着替えろ」
「いや、着替えるったって…」
それ大掃除の格好じゃ…と言い掛けたエレンを、まさかとリヴァイが睨み上げる。
「エレンよ…掃除を舐めんじゃねぇぞ」
ピシッとその両手に張られた白い布。
鋭すぎる眼光に、エレンは思わず悲鳴を上げた。
「躾直してやる」
「ヒッ?!」
掃除は上から。
面倒でも物を避けながら。
「うぅ…何なんです、これ」
「なんだも何も、掃除のための正式なスタイルだろうが」
「掃除に正式スタイルって何…」
どうにも心地の悪い頭の三角巾を直して、エレンはリヴァイを振り返る。
「ていうかここ、十分綺麗じゃないですか…」
「ぁあ? 何言ってやがる」
この埃が見えねえのかと凄もうとしたリヴァイは、エレンを見るなり固まった。
ちょうど口許の布を下ろしたところであったエレンは、目を見開いているらしいリヴァイに首を傾げる。
「リヴァイさん?」
「……………何でもねぇ」
たっぷり数秒を使って顔を背けたリヴァイは、さっさと続きをしろと言っただけだ。
(どうしたんだ?)
555 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:26:15.87 d
まあ、掃除が終わらなければ他のことはさせてくれないようなので、大人しく従う。
リヴァイはハタキに意識を戻したエレンを盗み見て、内心で頭を抱えた。
(どういうことだ…可愛いってなんだ可愛いって!!)
そう、リヴァイは口の当て布を下ろして振り返ってきた三角巾姿のエレンを、あろうことか『可愛い』と思ってしまったのである。
(待て…あいつは男だろうが! 確かに可愛い顔をしてるが!)
…と言い訳を脳内で叫んで、再び自分の思考に絶望した。
(おい…可愛いって顔ならやつの馴染みだというきのこ頭の方が…いや、あれも男だ。クリスタって女のことを言うんじゃないのか)
しかしクリスタの姿を思い返してみて。
(エレンの方が可愛いだろうが!)
と、セルフツッコミのち絶望というコンボを自ら喰らう。
器用な男だ。
「リヴァイさーん?」
悶々としているリヴァイをエレンが呼んだ。
「こっちの棚終わりましたけど…」
「…分かった。確認する」
(人には手ぇ止めるなって言っといて、リヴァイさんの手の方が止まってんじゃん)
ムッと頬を膨らませて、エレンはぼすりとソファへ座る。
他の誰かがやろうものなら「掃除中だ」とか「埃が立つ」とハリセンを飛ばすところだが、今回のリヴァイは違った。
(クッソあざとい!!!)
先ほどうっかりどきゅんとキたかもしれない、掃除スタイルのエレン。
そのエレンが同じ格好でソファに座り、膝に立てた両手に顎を乗せて膨れっ面をしているのである。
そのまま叫びそうな声を深い溜め息に変え、リヴァイは掃除の終了を告げた。
「まったくなってねぇが、今日はもういい。倉庫を手伝ってこい」
「? 分かりました」
釈然としないながらも、エレンは立ち上がる。
「その掃除スタイル用の三角巾はお前にやる。どうせ倉庫でも汚れるしな」
「はあ…ありがとうございます…?」
首を傾げるエレンに、なぜ首を傾げるのか尋ねたいのはリヴァイの方だ。
エレンが部屋を出ていけば、部屋の中は一気に静かになる。
(なんだってんだ畜生…)
ソファへどかりと腰掛け、2度目の深い溜め息を吐く。
そこがエレンの座っていた箇所だなんて自覚はリヴァイにはなく、彼は片手にハタキを握り締めたまま考える人になっていた。
シュールである。
556 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:26:42.81 d
スン、と鼻を鳴らしたミケに、即時復活を遂げたハンジが食いついた。
「そうそう! 特にペトラなんか女神って言われてるクリスタと張り合っちゃって、この間恋バナしてたよ!」
「恋バナ?」
「そ、恋愛話。まあリヴァイには縁がない…わけでもないか〜」
靴箱にラブレター入ってたりするもんねえ、とハンジは笑う。
「迷惑なだけだ」
「うわ、今の台詞で世の男子生徒を敵に回したよ?」
「知るか」
調査団の部室はそろそろだ。
「じゃあ、クリスタは彼氏欲しいな〜とか思わないの?」
「そんなもんいらねーよ! アタシがいるからな!」
「もう、ユミルったら」
ペトラが笑顔のままで固まった。
そのシュールさにクリスタとユミルは気づくことはなく、ペトラは自ら金縛りを解く。
「と、ところで。クリスタは『恋に落ちる音』ってどんな音だと思う?」
引き攣る口許を直したペトラが、改めて会話を再開させた。
クリスタは疑問を抱かず食いつく。
「素敵な言葉ですよね! 私の好きな曲にもその歌詞があるんです」
「確かに素敵よね。でもこれってどんな音なのか気にならない?」
気にならない、わけでもなかった。
「うーん、心臓が鳴る音だとしたら、ドキン?」
言ったクリスタを、ユミルが後ろからぎゅうぎゅうと抱き締める。
「うっわ可愛い! アタシはそんなクリスタにキュンってするな!」
ペトラは笑顔のまま固まりかけたのを阻止した。
「『ドキン』と『キュン』ね。あり得そうだわ…」
「何か可愛らしいものが落ちる音なら、『コトン』とかじゃないか?」
唐突なエルド参戦。
それをペトラとクリスタは許した。
「一理あるわね」
「あっ、一目惚れなら目が合った音とか!」
「それどんな音だ?」
「え、えっと…ばちん?」
まるで火花だ、頬を張られた音だと笑ったところへ、不機嫌な声が割り込む。
「おい、てめぇら。調査団の活動は静かにやれと言わなかったか?」
「リ、リヴァイ先輩!」
ガラリと調査団部室の扉を開けると、まさに噂をしていたペトラとクリスタ
557 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:27:15.93 d
「じゃあ、クリスタは彼氏欲しいな〜とか思わないの?」
「そんなもんいらねーよ! アタシがいるからな!」
「もう、ユミルったら」
ペトラが笑顔のままで固まった。
そのシュールさにクリスタとユミルは気づくことはなく、ペトラは自ら金縛りを解く。
「と、ところで。クリスタは『恋に落ちる音』ってどんな音だと思う?」
引き攣る口許を直したペトラが、改めて会話を再開させた。
クリスタは疑問を抱かず食いつく。
「素敵な言葉ですよね! 私の好きな曲にもその歌詞があるんです」
「確かに素敵よね。でもこれってどんな音なのか気にならない?」
気にならない、わけでもなかった。
「うーん、心臓が鳴る音だとしたら、ドキン?」
言ったクリスタを、ユミルが後ろからぎゅうぎゅうと抱き締める。
「うっわ可愛い! アタシはそんなクリスタにキュンってするな!」
ペトラは笑顔のまま固まりかけたのを阻止した。
「『ドキン』と『キュン』ね。あり得そうだわ…」
「何か可愛らしいものが落ちる音なら、『コトン』とかじゃないか?」
唐突なエルド参戦。
それをペトラとクリスタは許した。
「一理あるわね」
「あっ、一目惚れなら目が合った音とか!」
「それどんな音だ?」
「え、えっと…ばちん?」
まるで火花だ、頬を張られた音だと笑ったところへ、不機嫌な声が割り込む。
「おい、てめぇら。調査団の活動は静かにやれと言わなかったか?」
「リ、リヴァイ先輩!」
ガラリと調査団部室の扉を開けると、まさに噂をしていたペトラとクリスタ、ついでにユミルたちもいた。
不機嫌オーラ全開のリヴァイの後ろから、ハンジとミケも顔を出して部室を見回す。
何の話してたの? と続けるハンジに、ミケがスン、と鼻を鳴らした。
「甘い話だ」
「え、空気甘いの?」
ハンジも真似して嗅いでみるが、さっぱり判らない。
「甘い…ああ、かもしれないですねえ」
ユミルは相変わらずクリスタを抱き締めながら答えた。
「『恋に落ちる音はどんな音なのか』っていう話をしていたんです」
爽やかなクリスタのその笑顔こそが恋だと、ライナーなら言ってのけそうだ。
558 :
名無し草 (ワッチョイ f3d4-G+K4)
2016/04/02(土) 20:27:24.73 0
>>519 原作でジェルとミンが海行く約束してるからやないの
泣けるやん
559 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:27:59.73 d
リヴァイは眉を寄せる。
「…『鯉が落ちる音』…?」
「ちょっ、リヴァイ。あなたそれ素なのww?」
ハンジがうっかり草を生やして吹き出した。
さすがにリヴァイ相手は不味いと思っているのか、ユミルは吹き出しそうな口を両手で押さえている。
グンタとエルドも顔を逸らし、オルオはさっさと舌を噛んだ。
クスリと笑ったペトラは、非常に堂々としている!
「違いますよ、リヴァイさん。『恋に落ちる音』です」
「そんな音があるのか?」
「マジボケかよ!」
リヴァイが恋愛事に興味がないことがよく分かる。
一頻り笑ったハンジが話に加わった。
「あれだね、よく歌詞にあるやつだろう? その音がどんな音かって話かな」
「そうなんです。候補が幾つか出ていて」
クリスタが指折り数える。
「まずは『ドキン』で、似たような形で『ドキッ』もそうかなって」
「ふんふん、なるほど。漫画とかでもよくある表現だよね」
控えめな『トクン』とかもありかな! と思い付いたハンジに、ペトラがおおっ! と身を乗り出す。
「『トゥンク…』ってやつだな? 少女漫画定番の!」
ユミルがケラケラと笑い、謎の擬音祭りが始まった。
「さっき言ってたんですけど、よくあるのはやっぱり『きゅん!』ってやつですよね!」
「あー、あるある! 私は巨人ちゃん見てるときゅんきゅんするなあ!」
「「「いえ、それはないです」」」
一斉に否定されても、ハンジはえぇー、と唇を尖らせるだけで凹みはしない。
リヴァイは1人考えていた。
560 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:28:16.94 d
(…きゅん…だと?)
口の当て布を下ろして振り返ってきた、三角巾姿のエレン。
(ドキン……だと…)
膝に立てた両手に顎を乗せて、膨れっ面をしていたエレン。
「あ、ハンジさんは一目惚れの音ってどんなだと思います?」
「一目惚れかあ。目が合ったときだから、やっぱり『バチッ』じゃない?」
目が合ったあの体育大会の日、そんな音が…。
(聴こえてない、聴こえてない、そんな音は…)
「まあ、でもさあ」
ハンジがひらひらと片手を振る。
「『ドキドキ』も『キュンキュン』も、すでに恋してる音だよねえ」
てことは、私はいつでも巨人ちゃんに恋してるってことだね! 知ってた!
騒ぐハンジに、ユミルも改めてクリスタの頭を撫でる。
「アタシもいつだってクリスタに恋してるぜ!」
「もう、ユミルったら」
三様に花を飛ばす彼女らに、ペトラは今度こそ口許を引き攣らせた。
「わ、私だって…!」
561 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:28:49.06 d
私だって恋がしたいっ!
荒ぶり始めたペトラを宥めるエルドすら、気付かなかった。
沈痛な表情で考える人になってしまったリヴァイの姿に。
(いや、待て。あいつは男だぞ?!)
馬鹿なところも可愛いが、と思ってしまってから、またも無限ループに陥る。
リヴァイのオーラがピンク混じりの不味い色になっていることに気づいても、グンタは我関せずを貫いた。
相変わらずオルオは舌を噛んで悶絶していて、調査団の部室は騒がしい。
「…なあ、アルミン。鯉がどうかしたのか?」
エレンがミカサとアルミンと共に部室を覗いても、まだ誰も気づかない。
中を指差しながら尋ねたエレンに、アルミンは苦笑する。
「いや、エレン。魚の鯉じゃなく」
「裏庭の池に、巨大な鯉がいたらしい。そんな話をしている」
アルミンの言葉を遮り、ミカサが強引に続けた。
「へえ、すっげえな。釣れたらサシャが喜びそうだな!」
「ダメだよ。鯉は寄生虫がいっぱいいるんだから」
「えっ、そうなのか?」
「そう。エレンに近づけるわけにはいかない」
ミカサの強引な言葉の意味に気づいたアルミンは、いろいろと察して顔を青くした。
エレンはふぅん、と感心するばかり。
調査団の本日の活動ーーーなし。
解散!
562 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:29:32.37 d
え? ハイヒールについて、何か面白い話はないかって?
とあるブランド服メーカーの、靴のデザイナー室に勤めているってだけのオレにそれ聞く?
あー、ハイハイ、判ったよ。
んじゃ今から話すエピソードは、別に他言無用じゃねえけど自己責任でやれよ?
…下手したら本人様に削がれるからな。
どこをって? バカ、聞き流せよ。
で、ハイヒールな。
ここに話聞きに来るってことは、春と秋にあるコレクションは知ってるよな。
そのコレクション企画のときにだけ、アトリエに来るデザイナーがいるんだよ。
名前はリヴァイ・アッカーマンって言って、東洋の2世って言ってたかな。
どんなって…うーん、目つきめっちゃ怖くて背が低い。
まあ、その辺と人種の話で馬鹿にすると完膚なきまでに叩き潰されるけどさ。
…察しろ、話さねえよこれは。
んで、そのアッカーマンさんな。
靴のデザイナーなんだけど、自分担当のデザイン試作で最終版になると、必ず違うカラーリングで2足分作らせるんだ。
例えばこのハイヒール。
ターコイズブルーのグラデーションとシルバーのリボン彫刻だろ。
563 :
名無し草 (ワッチョイ f3d4-G+K4)
2016/04/02(土) 20:29:40.37 0
約束の地があるってのええよな
564 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:30:14.49 d
これ、決定稿がターコイズブルーであって、最終版の試作はクリームイエローとオレンジのが別にあった。
そんで出来上がった2つの試作を持ち帰って、一晩考えて翌朝に自分の決定を全員に伝えて最終審査に入るんだ。
オレは思ったね。
「ハイヒールをじっくり眺めて決めるなら、アトリエでやっても同じじゃね?」って。
だから、恐れ多くもご本人に聞いてみたんだ。
「なんでわざわざ家に持ち帰るんですか?」ってよ。
…うっせ、同期にも「死に急ぐなバカ!」って散々言われたっての。
ああ、あと「死に急ぎは間に合ってるから戻ってこい!」とか言われたわ。
ある意味プライベートに関わる話なわけだろ?
オレ死ぬかも、ってさすがにちょっと思ったけどさ。
訊いたとき、アッカーマンさんびっくりしてた。
どんな美女に言い寄られても鉄壁な無表情のあの人が、なんか目ぇ丸くしてたし。
驚いたからか珍しかったからか、休憩時間に答えてくれたよ。
…先に言っとく。
そのコーヒー、零すんじゃねえぞ?
あの人こう言ったんだよ。
『恋人に似合う方を選ぶためだ』
…ってよ。
っぶねえ?! だから零すなって言ったんだろが!!
大丈夫か? そ、ならいいや。
コレクションは時流を作るから、いろんな人間が知恵と予測を持ち寄ってデザインとかを決める。
もちろんアッカーマンさんもそれを元にデザインを作る。
けどあの人の中では、最終的にはいつも『恋人に似合う方』を選ぶのが正しいんだとさ。
あー、はいはい。
気持ちは分かるよ、ゴチソウサマってやつな。
でもまだ終わりじぇねえよ?
565 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:31:30.85 d
恋人っつーかな、あの人もう結婚してる。
正確に言うと恋人じゃなくて『パートナー』なんだけどな。
…うん、相手は男だ。
なんつーか、乱暴な表現になるけどキラッキラしてる子だな。
イケメンでモデル体型だけど、それよりも身の内から輝いてるってーの? そんな感じ。
もちろん訊いたさ。
「男性ならコレクション用デザインのハイヒールなんて履けませんよね?」って。
…だーから、死に急ぎ言うな!
そんでアッカーマンさん、オレの質問に当たり前だって言った後に、珍しく笑ってみせたんだよ。
『履けなくても似合うかどうかは分かる』ってよ。
おい、おい、机叩くんじゃねーよ、やかましい。
『すえながくばくはつしろください』? なんだその呪文?
オレもその続き聞いて居た堪れなくなったけどよ…。
『あいつの足元に1足ずつ置いてじっくり見て、その次はあいつに片方だけ持たせるんだ』
『シンデレラの硝子の靴みてぇにな』
…っ、そうだよ! 惚気に使われたんだよオレはっ!!
右か左かどっちかの靴だけそのパートナーに持たせて、絵になる方を選ぶってこったよ!!!
もう、マジで居た堪れなくてオレバカだったわ…ほんと走り去りたかった。
あっ!
おいこら待て、まだあるんだよ続きが。
ほら、ちょうどあそこにアッカーマンさん居るだろ。
そうそう、エントランスの。
黒髪は珍しいからすぐ分かるよな〜。
で、隣がアッカーマンさんのパートナーな、確かエレン君って名前だったかな。
566 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:31:45.99 d
…な? なんかキラッキラしてるだろ?
でさ、そのエレン君の足元見てみろ。
見たことある色とデザインしてねえか?
ご名答。
この間の春夏コレクションで、うちが女性用で出したデザイン。
アッカーマンさんが担当したやつのな。
紳士靴でも出してたのかって? いいや、出してねえ。
あれはアッカーマンさんが、決定稿になったやつを紳士用にデザイン落とし込んだやつだ。
コレクション分の作成が一段落した頃に、あの人自分でアトリエの職人に発注してるんだってさ。
名目は「紳士用への転用試作」らしいんだけど、もうだーれもそんなこと信じてない。
けどあの人、厳しいけど誠実だから信用力凄くて、みんなそういうことにしてる。
まあ、な?
あんたもあれ見りゃ、ピーン! と来るよな。
紳士用への転用試作なんかじゃなくて、恋人に贈るために作ってるってさ。
社員だしデザイナーだし、ってんで若干は安いらしいけど、でもほぼオートクチュール料金だぜ。
信じられるか?
オレは無理だね…オートクチュールなんて頼めねえよ。
567 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:32:40.52 d
あー、うん。
アッカーマンさん居ないとこで、エレン君と話す機会あったんだけどさ。
その靴のこと聞いてみたんだ、去年だったかな。
コレクションと同じアッカーマンさんデザインの靴、贈られてどんな感じ? って聞いてみた。
そしたらまず苦笑してたよ。
そりゃあな…。
『どう見ても高そうじゃないですか…。タグには本革って書いてありますし。
初めはもちろん断りましたけど、すでに作って俺の手元にあるわけで、しかも俺しか履けないし』
『なんで仕方なく履いてたら、見る度にすっごい嬉しそうな顔してるんですよね…。こっちが恥ずかしいくらいに』
『しかもコレクション終わったと思ったら、また違うやつ作って持ってきますしね…』
『こんな高いものは止めて下さい! ってきっぱり言ったら、なんて返したと思います?』
『"年に2回だけの俺の趣味を奪うんじゃねえ。こいつの発注費はxxx(桁が凄い)だが、俺の年収はxxx(やっぱり桁が凄い)だ。何の問題もねえだろうが!"って何か勢い良く…』
『あはは…。お察しの通り、諦めましたよ』
言ってたエレン君も、負けず劣らず嬉しそうな顔してたとオレは思うけどな。
2人の家、かなり立派なシューズクローゼットあるらしいぜ。
…おっと、アッカーマンさんたち帰るみてえだ。
こんな偶然ないだろうし、エレン君の今履いてる靴の話聞いてみたら?
惚気話はもう結構? そりゃそうか。
んじゃ、オレの話はこれでオシマイ!
良い話だっただろ?
End.
568 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:33:59.84 d
小さい頃に父親グリシャの部屋にあった写真集。
今はもう実家のどこにあるかもわからない。
空、街中、植物、動物……同じカメラマンの写真集がワンセットで置いてあった。
医者であったグリシャの部屋は医学書ばかりが並び、海外の言葉で書かれた本も多く、どれを見ても当時のエレンには理解ができなかった。
当時の、とは言っても今読んだところで、医学を専攻しているわけでもなければ、外国の言葉に強いわけでもない大学生のエレンには到底理解ができる内容でもない。
読んでみたいともあまり思わないのが正直なところだ。
そんな中で写真集は異彩を放っていた。並んだ背表紙からも小難しい医学書ではないことが簡単に見てとれる。
グリシャの趣味とも思えないが、確かにそれはそこにあり、エレンはグリシャの不在時に父親の部屋に忍び込んではパラパラとページをめくって楽しんでいた。
それは母親のカルラが病気で亡くなるまで続き、カルラが亡くなった後は掃除や整理をする人間がいなくなったことで、いつのまにかその写真集は医学書の中に埋もれて見つけられなくなってしまった。
569 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:35:05.24 d
もうカメラマンの名前も思い出せない。グリシャの部屋に行けばあったから油断していた。
見つからないなら自分で買おうと、いつだったかグリシャ本人に聞いてみたこともあったけれど、その答えは「そんなものあったかな?」というエレンの望んだ答えとはほど遠いもので、その時はひどく落胆したことを覚えている。
グリシャは医者という職業柄、家にいることは少ないものの母親を早くに亡くしたエレンを気遣い、できる限りエレンと会おうとしてくれた。
家族仲は良いと言っていいだろう。
しかし、大学二年生のエレンは今は小さなアパートで一人暮らしをしている。
理由は単純なもので、大学進学時に選んだ大学が実家から遠かったこと。
それまでも一人暮らしのようなものだったから生活力はある方だと自負しているので何の問題もない。
むしろ通う大学が遠い方が問題だ。
父親らしいことができなかったからと、グリシャに懇願されたエレンは生活費と学費は仕送りに甘えていて、自分の遊ぶ金だけを稼ぐために週に三回程度のアルバイトをしながらの生活だった。
母親を早くに亡くしたことは不幸だが、エレンは自分は幸せな人間だと思っている。
アルバイトに費やす時間が少ない分、勉強に励む日々で、ちょっと勉強に息詰まった時には目を閉じて記憶の中にある写真を思い出して深呼吸すると頭が少しスッキリする。
どこにあるかわからない写真集はエレンを作る一部にすらなっていた。
570 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:36:15.44 d
この季節、時折吹く風はまだ冷たい。しかし日に日に気温はどんどん暖かくなって春の訪れを告げていた。
もう少し経てばコートも要らなくなるだろう。
アパレルショップはもう春の新作がショーウィンドウに並んでおり、春らしいパステルカラーが駅前の通りを彩っていた。ショップの奥では一部の冬物衣類のセールをやっている店もある。
何か掘り出し物がないか立ち寄りたくなって、しかしそこで提出期限はまだ先とは言え、課題のレポートがまだ完成していないことを思い出せば、自然と足が帰宅を急いだ。
大学の講義も昼過ぎに終わり、アルバイトもない。早くレポートを仕上げてしまおう。
視線をショップから目の前の道へと戻す。
前方から携帯電話を見ながらふらふらと人が歩いてきたので、そっとよけて人とすれ違えるだけのスペースを空ける。
人通りが多い。都会の人は歩くスピードが早いというのは本当だった。
またせかせかと歩く小柄な男性が前方から歩いてくる。
ぶつかりそうな距離ではなかったのでエレンは今度はよけるような動作はせずにそのまま歩き続けた。
「!」
男性とすれ違った時だった。ぐいっと腕を掴まれてエレンの体は後方へと引かれ、驚いて振り返れば、そのまま男と目が合う。
571 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:37:15.34 d
「な、なんですか……」
なにかしただろうか。
肩すらぶつかっていないはずだから、因縁をつけられる覚えもなければ物を落としたわけでもないだろう。
男の目つきは鋭く、まるで睨まれているようだった。正直とても怖い。
「お前……、あ、いや、君……あなた……?」
どれでもいい。男はできる限り丁寧な言い方を考えているのかもしれないが、無表情でそう言われても怖い印象は変わらない。
「はあ……、あの、ご用件は?」
なかなかその先の言葉が出てこない男におそるおそる尋ねてみる。
身長はエレンの方が高いのに男のオーラが威圧的でついつい縮こまってしまい、身を引こうにも腕は掴まれたまま、離してもらえそうもない。
「待て。怪しい者じゃない……怪しいだろうが、そこまで怪しくないから安心してほしい」
エレンの警戒心にようやく気づいた男はそう言うと鞄を片手でごそごそと漁っている。
「突然で悪いが、お前を撮らせてほしい」
目的のものを見つけて鞄を漁る手がピタリと止まった。そうして片手で差し出されたのは名刺だ。
リヴァイ・アッカーマン写真事務所と肩書きが書かれた目の前に出された名刺と言われた言葉を頭の中で反芻する。
「………………あ、いや、いいです。そういうの興味ないんで」
572 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:37:55.66 d
出た結論は、怪しい人物だということのみだった。
こういうのはきっぱりしっかり断るに限る。
「写真家なんだが、新しく写真集を出そうと思っている。人物をメインにしたものにするつもりなんだが、なかなかこれだというモデルが見つからなかったところにお前を見かけた」
断りを入れたはずなのに男の言葉は続く。当然まだ腕を離してもらえないので逃げ出すこともできない。というか散々悩んでいたのに結局お前呼びであることに突っ込んだら怒られるだろうか。
「調べてもらっても構わない。今すぐに返答をくれなくてもいい。だが、撮らせてほしい。お前がいい。もちろんモデルのバイト料も出すから考えてみてくれないか」
止まらない猛攻にもう一度名刺を見た。差し出されたままの名刺はエレンに受け取ってもらうことを待ち続けている。
事務所代表 兼 カメラマン リヴァイ・アッカーマン
事務所の住所と電話番号が記載されている。
失礼かもしれないが、エレンはこの名前を知らない。聞いたことがあるような気もしたけれど、はっきりと思い出せなかった。
573 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/02(土) 20:38:01.65 0
574 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:38:35.19 d
思い出せたところで、モデルになるつもりがないエレンは今度はこの場をどうやって切り抜けよう考え出す。
「あー……じゃあ、考えます。考えるので、とりあえず離してもらえないですか?」
試しに名刺を受け取って曖昧な返答をしてみせてみた。
すると、思いの外すんなりと腕は解放されて自由になる。返事が決まったら連絡してほしいと告げられ、また曖昧に言葉を濁す。
「いい返事を期待している。返事が決まっていなくとも質問があれば何でも答えるから連絡してほしい」
「わかりました。ちょっと急ぐので今日はこれで、」
名刺を鞄にしまい込んで頭を下げる。律儀にもリヴァイもまた頭を下げてくれた。終わってみれば因縁をつけられたわけでもなんでもない。キャバクラのキャッチに声をかけられたようなものだと頭を切り替えて、逃げるようにしてその場を離れた。
万が一にでも後をつけられていたら困るので、時々振り返って後方を確認したがリヴァイの姿は遠くなる一方でそんな様子はない。良かった、助かった。
ほっと息を吐いて、帰路を急ぐ。住んでいるマンションまでここから歩いて十五分。
(早く帰ってレポートしよ)
575 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:39:54.64 d
そんな出逢いとも言えない出逢いからひと月ほど経った頃だった。
ひと月も経てば、リヴァイのことは変な勧誘を受けただけ。飲み会の話のネタにもならない出来事になっていた。
もらった名刺は鞄に入れたままなのでぐしゃぐしゃになっているだろう。そういえばこの間、傘を持ってもいないのに雨に降られたから濡れて文字すら読めないかもしれない。早めに処分しておいたほうが良さそうだ。
あの時やろうと思っていた課題のレポートも早めに終わらせることができて、もう提出済み。大学生活は順調だった。
来週くらいにはまた新しい課題が出されるかもしれない。単位は絶対に取得して留年はしない。金銭面の面倒をみてくれているグリシャのためにも、エレンは勉強しなければならなかった。
『……続いて、特集コーナーです。今日は写真家のリヴァイ・アッカーマンさんについて! 知る人ぞ知る写真家ですが、』
突然、夕方のニュースを流していたテレビから聞き覚えのある名前が聞こえてきた。
「え?」
思わずエレンがテレビを見ればそこには先日見た顔の写真が画面の半分を占領し、リヴァイ・アッカーマンと紹介されている。
混乱するエレンを置いて、リヴァイの顔写真が映っていた画面は次に彼の撮った過去の写真や写真集をスライドで流し出す。
576 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:40:28.72 d
見たことのある写真だった。
一部、エレンの知らない写真もあったが、出てくる写真のどれもがエレンの記憶にあるものばかりだ。忘れもしないし、間違えようもない。それはグリシャの部屋にあった写真集の写真だった。
(だからなんとなく聞き覚えがあったのか?)
リヴァイについて調べもしなかったエレンはその事実に愕然とする。信じられない真実に頭がくらくらした。
リヴァイは、怪しくないどころか好きだとも言える人物らしいことが分かる。
ああ、でもこれで名前が分かったから写真集が買える。違う、自分はなんて失礼なことをしたんだ。でもあの場では仕方がない。いきなり写真を撮らせてくれなんて言われて警戒しないはずがない。あの写真集のカメラマンだなんて誰が思うか。
『アッカーマンさんはまだ発売日は未定ですがまた写真集を出すそうです。今度は自身初の人物写真がメインで、それに合わせて個展も予定しているだとか……これは楽しみですね!』
テレビのアナウンサーは既に纏めに入っている。特集と言えどもコーナー自体の時間は三分程度の短いものだ。その三分間でこんなにも混乱したのは世界広しと言えどもエレンだけではないだろうか。
久々に見た思い出の写真はやはりどれも綺麗だった。思い出補正などは決してなく、どれもが記憶以上のもので、改めて好きだと思った。
特集コーナーが終わるとニュースは一旦コマーシャルへ移る。新商品のお菓子のコマーシャルで独特の歌が流れていた。頭に残ってたまに鼻歌で歌ってしまうけれど、今はそんなものは一切頭に入ってこない。
エレンは慌てて、鞄を置いてある部屋の隅まで走り、中を乱暴に探り出した。
あの名刺はどこへいった? 鞄のどこかにあるはずだ。
「あーもう!」
577 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:41:15.68 d
探してもなかなか目当てのものが見つからない。苛立って鞄の口を逆さまにひっくり返して中身を床にぶち撒けた。
物をひとつずつよけて探すとやがて角が折れてボロボロになり、雨水で茶色くシミができてしまったいるそれが見つかる。幸いにもまだ字は読める状態だった。
「良かった! あった!」
両手でそれを取り上げて、指先で折れてしまった場所を伸ばす。そんなことしたって元の状態には戻らないことはわかっていても、そうせずにはいられなかった。
ひと文字ずつ指でなぞる。
自分がリヴァイの世界の中に入れるとは考えもしたことがなかった。
似合うとも思えない。あれからもうひと月も経っているし、待っていると言われたのにエレンはリヴァイに連絡のひとつだってしなかった。
考えるとごまかして、しっかりとした断りだってしなかったのに、好きな写真家だったというミーハーな理由で話を蒸し返されても困らせるだけだろう。
なんだこいつは、と嫌な印象を与えてしまうかもしれない。返事もしていない時点でもう充分嫌な奴だが。
「はぁ……、」
大きなため息がエレンから漏れる。落胆していた。
(もったいなさすぎる、)
あの後になんでリヴァイのことを調べなかったのか。レポートの提出日はまだ先だったのだから少しでももらった名刺に書かれた名前をインターネットで検索をかけてみれば良かったのだ。たったの一分、時間を使っていればきっと今と違う結果になっていた。
一気に後悔が押し寄せてきて、エレンの気持ちはどんどん下降する。もう夕食を作るのも面倒だった。そう思いつつも、腹は空腹を主張してぎゅるるるると鳴いていた。
「気晴らしに外で食べるか……」
なにか美味しいものでも食べて気持ちを落ち着かせよう。
エレンは財布と携帯だけをジーンズのポケットに突っ込むと、ついたままだったテレビの電源と部屋の照明を落として駅前へ向かった。
578 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:41:51.64 d
歩きながら店を決める。
最近できた個人経営の洋食屋にしようか。ランチでしか行ったことはないけれど、とても美味しかった。今度ディナーでも利用したいと思っていた店だ。
とぼとぼと歩いていると、もうその店は目の前だった。開店したばかりでまだ客は少ない。真新らしいドアに手をかけると、ドアの内側にかけられたベルが来店を知らせてチリンチリンと鳴った。
落ち着いた照明の中に客はひと組。奥のテーブルに座って何やら歓談中のようだ。
店主とウェイター、それぞれからいらっしゃいませと声をかけられたので会釈して、カウンター席へと座る。
奥の客がどんな料理を頼んでいるのか気になって、メニューを開く前に横目で盗み見た。
「あっ!」
しかしエレンの視界に飛び込んできたのはテーブルの上の料理ではなく客の顔だ。忘れもしない。あの顔、あの髪型。そこにはリヴァイが女性と対面して座っていた。
声を出した時、リヴァイと目が合った気がする。
通りすがりのようなものだったし、もしかしたらリヴァイはエレンのことを忘れているかもしれない。でも覚えていたら気まずいことこの上ない。
579 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:42:29.23 d
急いでメニューを開いて、その中の文字列を追った。カタカナばかりの料理名でちっとも頭に入ってこない。流し見るようにしてページを次々とめくっているとあっという間に最後のページまできてしまった。もう一度最初のページに戻る。
奥の席が気になって仕方がない。何かぼそぼそと話している。
「……ほら、行ってきなよ。アンタなら大丈夫だって。わたしもう帰るからさ」
何かエレンにとって不穏な内容な気がする。
(行ってきなって、もしかしなくてもオレのところにか? いや、お姉さん帰らなくていいですよ。助けてください。あっ、ちょ、立った。こっち来る。やばいやばいやばい……)
顔面蒼白。なんだか急に体調が悪くなってきた。呼吸が苦しいし、鼓動も尋常じゃないくらい早い。変な汗も出てきたし、顔も熱い。熱でもあるんじゃないのか。帰ったほうがいいんじゃないか。
カルパッチョってなんだっけ。サルシッチャってなんだっけ。あれ? アヒージョって踊り食いのこと? コンフィって猫の種類じゃなかったか?
まさにエレンの頭はパニックだった。
数歩の距離なのにリヴァイがこちらに来るまでがひどく長く感じた。
そうだ、きっとトイレがこっちにあるんだ。そうに違いない。
以前トイレを借りた時に奥に行った記憶を打ち消してそんな現実逃避まで始めるも、リヴァイはエレンの背後でその足を止めた。
「…………」
580 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:43:04.21 d
「よう、覚えているか?」
「…………」
「チッ、」
緊張でなにも言えない。後ろを振り返ることすらできない。背中を丸めるとメニューにどんどん顔が近づいていき、もうすぐメニューとキスしてしまうそうだ。
そんなエレンの気を知ってか知らずか、リヴァイはエレンの隣の椅子を引いてそこに腰かけた。
体は完全にエレンの方を向いている。頬杖をついて、メニューとキスする五秒前のエレンをじっとりと眺めていた。
怖い。最初に腕を掴まれた時の恐怖が蘇る。いや、今日はエレンに後ろめたいことがある分、初対面の時よりももっと怖い。
こんなに怖い人があんな綺麗な写真を撮ってるだなんて詐欺だ。
「このひと月、ずっと連絡を待っていたんだがそろそろ待ちくたびれたな」
わざとらしいため息。視線が痛い。リヴァイは目から針でも出てきて自分をチクチクと刺しているのではないか。
「……あの、それ……オレに言ってます……、よね……」
「あ? 忘れたのか?」
この期に及んで、もしかしたら人違いかもしれないという可能性にかけて確認してみると、針がナイフに変わった。ようするにさらに鋭い目つきで睨まれた。
「すみません! よくある勧誘だと思って無視していました! でも本当に写真家さんで、しかも昔よく見た写真集の人で、まさか道ばたでいきなり腕をすげえ力で掴んできて自分を撮りたいと言った人がその写真家さんだなんて思わなくて、……ごめんなさい!」
勢いよく頭を下げると、ゴツン! といい音がした。メニューとのキスは避けられたが、テーブルとは額でキスをしてしまう。
581 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:43:34.79 d
どうにでもなれとばかりに正直に話して謝罪する。まだ心臓はドキドキとうるさい。
「……まあいい、」
「…………」
ふっとリヴァイを纏う空気が変わった。針もナイフも感じない。おそるおそる顔を上げてリヴァイを見ると無表情に近いが笑っているような顔をしていた。
(怒ってない……?)
「飯食いにきたんだろ。何にするんだ? ここは何でも美味いが、メニューになくても食べたいものがあれば言え。店主が知り合いだから作らせる」
その言葉にこの店がリヴァイのテリトリーだったことを知る。また腹の虫が空腹を訴えて鳴き出して、エレンは羞恥で赤くなった顔をメニューで隠した。
「そのお前が顔を埋めているページの真ん中の”ハンバーグのチーズ焼き”は美味い」
メニューが近すぎてわからない。そんな料理が書いてあったのか。料理名からして絶対に美味しい。食べなくてもわかる。食べたい。
「……じゃあ、それで」
小声で伝えると、リヴァイは知り合いだと言う店主にハンバーグのチーズ焼きとサラダ、ライス大と辛口のジンジャーエールを注文した。次いで、会計はリヴァイ持ちでいいと言い、自分用にグラスシャンパンを頼んでいる。
奢ってもらう理由がないと慌てたエレンは会計は別にしてほしいと頼んだが、あえなく却下されてしまった。
曰く、何の欲目もなしに奢るわけがない。下心があるに決まっているとのことだった。
「まだモデルは決まっていない。撮らせてくれ。その目が欲しい」
睨むでもなく、ただ真剣に目と目を合わせてそんなことを言われると、口説かれているような気分になる。男同士なのに妙な気分になってしまいそうだ。
改めて見るとリヴァイは整った顔立ちをしていた。背こそ低いが、欠点はそれくらいに思える。
582 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:44:27.03 d
リヴァイと一緒にいた女性はエレンがメニューに沈んでいる間に本人の宣言通りに帰ってしまっていたようだ。
エレンがようやくまともな思考で話せるようになったと判断したのか、リヴァイはテーブル席に置いていた荷物を取りに一旦席を立ち、またすぐに戻ってきて先ほどと同じようにエレンの隣に座った。
「さっき、テレビでアッカーマンさんの写真を見ました。特集コーナーで、」
「リヴァイでいい」
「……リヴァイ、さん…………昔、父親の部屋にリヴァイさんの写真集があったんです。でもどこかにいってしまって、誰の写真集かも分からなかったそれっきりだったんですけど、やっと分かったので今度買おうと思います」
リヴァイが切り取った世界はどれも美しい。ずっと好きだった。
新しい写真集も発行されているのなら調べてそれも買いたい。彼が話したいこととは違うことは分かりつつ、好きだと訴えることをやめることはできなかった。
本当なら今ここで携帯電話を使ってネットショッピングでもしてポチっと購入してしまいたいくらいだ。
「そんなことを言うといい返事だと期待するが?」
583 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:45:06.84 d
頼んだグラスシャンパンが出される。合わせて、ジンジャーエールもエレンの前に置かれた。軽く乾杯をしてからひと口飲む。シュワシュワした炭酸で頭が冴えてきた。
テレビを見た時はモデルを引き受ければ良かったと後悔したが、本当にエレンで良いのだろうか、と疑問がわく。
当たり前だがエレンは一般人だ。どこにだっている大学生で、リヴァイはやたらと目を褒めてくれるけれどそれだって人より少し大きな釣り目というだけだ。目力が強いとはよく言われる。でも目が大きければそんなことは必然で、ほかにも似たような人はいるだろう。
それどころか、もっと良い人だってたくさんいるはずなのだ。
リヴァイがエレンを選ぶ理由がないように思えた。エレンでなければならない理由が、エレンには分からない。素人を使うより、プロを使ったほうが撮影も楽に進む。
何より、自分がリヴァイの世界に紛れ込むことで、彼の世界が汚れてしまうんじゃないかと恐怖すら感じてしまった。
すっかり怖じ気づいたエレンはそれを素直にそのまま伝える。
「……お待たせさせてしまったのに申し訳ないです」
リヴァイの期待する返答ができない自分が悔しかった。もっとエレンに自信があれば、喜んでと言えたかもしれない。
「……言いたいことはそれだけか?」
そう尋ねたリヴァイどこか、覚悟を決めたような表情に見えた。
シャンパンを口に含んで、喉を鳴らして飲み込む。
「いいか、よく聞け…………俺は、お前に一目惚れした。だからお前が一番綺麗だと思っているし、一番綺麗に撮れる自信がある。好きだと思った奴を撮りたい。自分の世界に入れたい。そう思うことは自然だろう? 他の奴じゃ駄目だ」
584 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:46:15.81 d
「え、」
「惚れたと言っても付き合えとは言わない。好きだ。撮らせてほしい」
緊張しているのか、リヴァイの肩がわずかに震えていた。
突然の告白にパチパチと目を瞬かせる。リヴァイに見えないようにカウンターテーブルの下で自分の手の甲を抓ってみると痛かった。夢じゃない。
口説かれているみたいだ、と思ったのは勘違いじゃなくて、真実だった?
「え、は……? はああああ? なん、どういう……っ!」
「一度しか言わねえよ。こっぱずかしい」
リヴァイもどこかぎこちない反応を大混乱中のエレンに返して暫く無言が続いた。
ピピピ! と調理場からタイマーが鳴っているのが聞こえる。頼んだ料理がそろそろ出来上がるのかもしれない。こんな状態で食べて味がわかるか不安だ。
「引き受けてくれないか」
立ち上がって頭を下げるリヴァイにエレンはどうすれば良いのか真剣に考えた。
教えていないので、リヴァイはエレンの名前も知らない。知り合ったばかりのおそらくかなり年下の男に告白をすることにどれだけ勇気と覚悟が必要だろうか。
不思議と嫌悪感はなかった。
エレンでなければならない理由もあった。
585 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:47:01.52 d
断ろうと思った理由は自信がなかっただけ。嫌なことはハッキリと嫌だと言える人間だ。実際今までそうして自分の意志を相手に伝えて生きてきた。そのせいで衝突することも少なくなかったが、それがエレンだ。
ならばもう答えは出ている。
「次の写真集だけでいい。頼む」
リヴァイの頭は下げられたまま、今どんな表情をしているのかは分からない。
でもきっと真剣だろう。真剣に自分を撮りたいと思ってくれている。好きな写真家の作品になれる。
だからこそ緊張もするし、不安だって大きい。
(だけど、)
こんなに光栄なことは他にあるだろうか。
「……分かりました」
「!」
言ってしまったからには取り返しはつかない。リヴァイの覚悟に、エレンも覚悟を決めた。リヴァイがやっと頭を上げる。目を丸くして、驚きと喜びが混ざったような、そんな顔だった。
「いいのか?」
「本当に、オレでいいのなら」
こくりと頷いて見せる。とても小さな声でありがとう、と聞こえた気がした。目尻を下げて微笑んだリヴァイにエレンの胸が高鳴る。
586 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:48:30.80 d
これはなんだ。
告白されたせいか、なんだか変に意識してしまっているのかもしれない。
いまだに立ったままのリヴァイに座るように促してから、自己紹介をした。
すると名前を褒められ、またドキドキしてしまう。
タイミング良く出てきた料理を食べることでなんとか平常心を保ちながらエレンはリヴァイと会話を続けた。
食べた料理はこの店のメニューをコンプリートしたくなるくらい美味しかったのでランチもディナーも外で食べる時は暫くこの店に来ることを決意した。
それをリヴァイには言う余裕はなかったけれど。
リヴァイは終始柔らかな雰囲気を出しており、エレンの返答にとても満足したことは確かだ。
連絡先を交換した時もエレンの電話番号を登録した後に大事そうに自分の携帯電話を見た後で、エレンには「絶対に削除するんじゃねえぞ」と凄んできた。
「本当に引き受けてくれて嬉しく思っている。短期アルバイトとして契約書を書いてもらいたいから後日、俺の事務所まで来てほしい」
聞けば、正式に書面で契約を交わすこと、撮影した日の分はしっかりと給料を出すと言われ、それならばと都合のつく日と時間帯をいくつか提示するとあっさりと来所する日取りが決まった。
写真集の為の撮影なんてもちろん初めてのエレンはどれくらいの時間が取られるかは想像もつかない。
今のアルバイトの合間にできるか心配になって尋ねるとできる限りエレンに合わせるが、リヴァイもスタッフも他の仕事もあるので多少は融通をきかせてほしいことを頼まれ、それには引き受けた手前、了承した。
そうしているとエレンが家を出てからもう四時間も経っていた。そろそろ帰る時間だと、トイレに立つ。
用を済ませて席へ戻ると支払いは終わってしまっていた。
「こういう時は収入の多い大人に任せるもんだ」
けろりと言い放つリヴァイが少しだけ憎くなった。確かに大学生と社会人では収入は大きく違うが、支出だって違うはずだ。なんとなく腑に落ちない気持ちになって無言でリヴァイを睨むと頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。完全に子ども扱いじゃないか。
「家まで送る。どっちだ」
「ち、近いのでそれはさすがに大丈夫です!」
今度はリヴァイが不服そうな顔をする。言いくるめるのにかかった時間は十五分。なかなか粘られたほうだろう。
587 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:49:06.32 d
数メートル進んでから振り返るとリヴァイはまだ店の前でエレンを見ていた。見えなくなるまで見送るつもりらしい。お辞儀をすると手を振られ、エレンは携帯電話を取り出した。メールを起動させて登録したばかりのリヴァイのアドレスを選択する。
『風邪引かないうちに帰ってくださいね。今日はごちそうさまでした。おやすみなさい』
本文を入力して送信ボタンを押す。メールに気づいたリヴァイがそれを読んでいる間に走って逃げるように帰った。
家を出た時と違って、とても気分が良い。今夜はぐっすり眠れそうだった。
2、
「おはようございまーす」
「今日はよろしくお願いします」
テレビでしか見たことのない機材を持つ人々が行き交っていた。
あれからエレンは約束通りにリヴァイの事務所でアルバイトの契約を交わし、元々働いていたアルバイト先に少しシフトを減らす交渉をした。
タイミング良く大学は春休みに入り、自由な時間が増えたこともあって、そこまでシフトを減らさずに撮影にも当たれそうだ。
リヴァイが春休みとゴールデンウィークに集中的に撮影を行う計画を立てて、今日はその初日の撮影の日だった。
指示された時間に事務所へ行くと、控え室に連れて行かれて簡単に化粧をされた。ファンデーションで肌を整える程度だったが、生まれて初めての化粧だ。
顔にペタペタと塗られる感覚に息苦しさを感じた。今日のところは髪はそのままでいいらしい。自然な感じがいいのだそうだ。
588 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:49:42.96 d
これから三ヶ月ほど撮影は続く。
まずは近場からと廃ビルでの野外撮影と、白ホリスタジオを利用しての室内撮影をする予定だ。
廃ビルでの撮影ではエレンがメインになるものもあれば、なんとなく誰かがいる程度にしか写っていないような写真も多く撮られた。休憩中に撮った写真を見せてもらうとリヴァイの作品作りに参加ができていることを急激に実感してわくわくしてくる。夢みたいな現実だ。
ビルの使用許可が取れているギリギリまで撮影をした後、次はスタジオへと車で移動する。スタジオという場所へ行くのも初めてだ。
一体どんなところだろうか。ドラマや漫画で見るような場所だろうか。気持ちが高揚して普段よりもテンションが高くなる。
しかしそれもスタジオでの撮影が始まるまでだった。
失念していたが、白ホリということはここで撮る写真はエレンがメインのものばかりなのだ。廃ビルとは違って、エレン以外には何もない真っ白な空間にわくわくが全て緊張へと差し替わる。
緊張は如実に撮影に影響し、ガチガチに固まってしまったエレンは自分でもこれではリヴァイが思うような写真が撮れないことが分かってしまう。
「エレン、」
見かねたリヴァイがエレンに声をかけて近づいてくる。
「上手くできなくてすみません……」
「そうじゃない。これを見ろ」
そうしてリヴァイの持っていたカメラの液晶画面を前に出された。表示されていたのは廃ビルで撮った写真で、さっき見せてもらったのとはまた別のもの。伏し目がちにどこか遠くを見るエレンがアップで写っていた。
「綺麗だろう。気張らなくても大丈夫だ。ポーズや視線はこっちで指示する。絶対に良く撮ってやるから自信を持て」
ぽんぽんと頭を撫でられるとそこからすっと緊張が解れていく。リヴァイに頭を撫でられるのは二回目だった。
エレンの目にやる気が満ちる。
「よし、いい目だ。それを撮らせてくれ」
リヴァイにずっと褒められていた目。両手で顔を隠して目だけ出したり、下から見上げる形でカメラを睨みつけるような、エレンの目力が強調される構図やポーズでの撮影が続いた。同じ構図でも色々と角度やライティングを変えてリヴァイの満足するまでシャッターは切られる。
589 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:50:13.10 d
最後に目のアップを撮られて、撮影は終了した。
撮った写真を確認するリヴァイにしきりに「綺麗だ」と褒められ、周りのスタッフもまた写真を見ると同様にエレンに賛辞を送ってくれた。
スタジオでの撮影中、リヴァイはよく喋った。
「いい」「そのまま」「もう少し腕を上げてくれ」「綺麗だ」「もっと睨めるか?」「今のは良かった」
リヴァイがいない時に教えてもらったが、こんなに喋るのは珍しいらしい。もしかしたら緊張でガチガチになってしまったエレンを気遣ってくれていたのかもしれない。
「顔は怖いけど優しい人なんですよ」
教えてくれたスタッフはそう言って笑っていた。
この日の撮影の後は公園、車の中、プールなど色々なところに行った。スタジオもまた使用しては色々な小道具に埋もれたり、家具を使用したりと多種多様だ。
回数を重ねると次第に慣れていき、もう緊張して固まってしまうこともなくなった。
いい写真が撮れるとリヴァイの口元が緩むことに気づいてからはやたらとカメラの向こうのリヴァイを見てしまい指で視線を指示されることが多くなるくらいには慣れて余裕が出てきている。
撮影の終わりにいつもその日の写真を少しだけ見せてもらうのが楽しみだった。
やっぱりリヴァイの撮る写真はすごい。
自分が自分じゃないみたいで、色んな意味で感動する。ぼーっと間抜け顔で立っていただけでもリヴァイの手にかかれば、物憂げに悩む美しい青年に変わる。
人物を入れた写真を撮るのが初めてなんて嘘みたいだ。
そんな、美しく世界を切り取るリヴァイという人間を知る度に、惹かれ、心を奪われてしまったのは必然だろう。リヴァイは優しかった。それはエレンだけにではなく、スタッフにもスタジオの管理人にも、誰にでもだ。
仕事もキッチリこなすし、周りの迷惑になるようなことは絶対にしない。
なんて怖い人だと恐怖し、不審がっていたのが遠い過去に思えた。
590 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:51:02.77 d
こうなると気になるのはリヴァイの気持ちだった。モデルになってほしいと頼まれた日以降、彼の口からエレンに好意を示す言葉は出ていない。
今もエレンを好きでいてくれるのか。気持ちが変わらないのなら両思いのはずだ。
エレンのことが好きだから、一番綺麗に撮れると言っていた。
リヴァイが撮るエレンは本当に綺麗で、それが変わらずに好きでいてくれている証と思ってもいいのだろうか。
自惚れてしまいたい。リヴァイのことを考えるとぽかぽかと体が温かくなった。
撮影は野外よりもスタジオで行うことが多く、この日はシャワールームで撮影をする為にハウススタジオの一階を借りている。
シャツをはだけさせ、肩を出した状態で浴槽に腰掛けたり、逆に服をすべて着込んだまま浴槽に入ったり。今日もシャッターは次々と切られていく。
浴槽には半透明のシャワーカーテンがついていて、そのカーテンを締めた状態でそこにうっすらと見えるシルエットの撮影をしていた時だった。
「うわ! え、な、ええ?」
設置された水道管からいきなり水が溢れ出してきた。
蛇口には触れてもいない。瞬く間にエレンは水浸しになり、その冷たさに声を上げた。カーテンを開けて逃げようとも考えたが近くには撮影機材が置いてある。
自分が濡れるのはいいが、機材が濡れることがあってはならない。ここは自分がなんとかすべきだと判断し、水が出ている箇所を手で抑える。
水漏れ(というレベルの出方ではなかったけれど)が起きていることはきっとみんなすぐにわかるはずだ。機材を避難させるまでは濡れても構うものか。
だが、エレンの思いもむなしく、カーテンはすぐに開けられた。シャー! と勢いよくカーテンレールが滑る音と共にリヴァイが姿を現したのだ。
「機材が……!」
「もう近くにはない。いいからお前も早く離れろ」
開いたカーテンの向こう側を見ると、確かに水がかかってしまう範囲から機材は既に撤収されていてエレンはほっと胸をなで下ろす。
「でも、リヴァイさんまで濡れることなかったのに」
591 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:51:47.32 d
声を出して呼んでくれれば出ていけた。
「それがお前を心配するなという意味なら却下だな」
勝手に体が動いたのだと、苦笑される。
水道管を抑えていた手を取られて、浴槽から出るように促されれば、遮るものがなくなった水はエレンとリヴァイを容赦なく濡らした。
水も滴るいい男、という言葉がエレンの脳裏をよぎる。しかも白いシャツを着ていたせいで濡れた部分がうっすらと透けており、大人の男の色気を感じる。
エレンはその肉体に目を輝かせた。
着痩せするタイプであったことを初めて知った。透けて見える筋肉の付き方がすごい。ひょろっとしたエレン自身の体とは比較にもならない。
「なに見てんだ。タオルもらって早く体を拭け。こんなもん素人じゃどうにもならん。管理人に連絡して業者を呼ぶ」
突然のアクシデントにもほぼ慌てることなく対処するリヴァイを尊敬の目で見る。当然のことなのかもしれない。
でも自分がいざこの状態になったら落ち着いて対処できる自信はない。
リヴァイはスタッフに渡されたタオルで濡れた髪の滴を拭いながら携帯電話を片手にスタジオの管理人へ連絡していた。
管理人常駐のスタジオではなかったが、リヴァイからの連絡をもらうと管理人はすぐに水道整備の業者を呼び、自らも来てくれるとのことだった。
管理人はすぐ近くの別オフィスにいるらしく、到着までに五分ほど要する。特になにかをしてほしいという指示もなく、ただ安全なところで待っていてほしいと言われたとリヴァイがその場にいた全員に伝えてきた。
幸いにもここで撮りたい写真は既に撮れていて、再度このスタジオで撮り直すこともない。
592 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:52:23.20 d
撤収の準備をしている間に管理人は到着し、それから間もなく管理人が呼んだ業者もやってきた。エレンは濡れた衣服を着替えて、髪を乾かし終えると帰宅の許可が降りた為、ほかのスタッフよりもひと足早くスタジオを出ることになった。
「今日はすまなかった」
「そんな! 大丈夫ですよ。お疲れさまでした。またよろしくお願いします」
申し訳なさそうに頭を垂れるリヴァイにぶんぶん首を横に振る。
「また連絡します」
「ああ、次も頼む」
リヴァイもこの頃にはもう着替えてしまっていて、エレンは少しだけ残念に思う。
実はエレンは筋肉フェチなのだ。リヴァイの筋肉を見て目を輝かせたのはそのせいで、ひどく憧れた。いい腹筋してるんだろうな。触ってみたい。
このことで、余計にリヴァイへの想いに火がついてしまったのは言うまでもない。
業務連絡以外でリヴァイからメールや電話がくることはほとんどないのに携帯が鳴るのが待ち遠しくなった。
暇さえあれば携帯の画面を見て、リヴァイから連絡がないかと今か今かと待ち続ける。メール着信があったかと思えばメルマガだったり、友人からの遊びの誘いだったりで、落胆することが増えた。
自分の気持ちを自覚すると、やはり相手を独り占めしたくなるのが人間というものだろう。
一度告白されているせいでその想いは余計に膨れ上がった。
次会えるのはいつだったかな、とスケジュール帳を確認すると三日後だ。先日は水のアクシデントがあったけれど、そんなアクシデントはそうそうあるものでもない。
撮影自体は順調で、もう半分程度が終わっていて、次の撮影は泊まりで郊外へ行く予定だ。その打ち合わせが三日後。
593 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:53:32.47 d
スケジュール帳を確認していると、つきっぱなしだったテレビに幸せそうなカップルがカメラの前でお互いの仲の良さを見せつけている様子が映し出された。
エレンは音がない空間が苦手で、家にいる時ならばテレビは常についていた。なにか見ているわけではない。
ただなんとなくつけて流しているだけ。今、リヴァイと一緒にいられるのも、あのニュースが流れた時にこうしてテレビをつけっぱなしにしていたお陰だからこの習慣も捨てたものではない。
テレビに映っているカップルの映像に、エレンは簡単に触発された。
二人はとても幸せそうで、きらきらした瞳で笑いあっている。自分もリヴァイとこんな関係になりたい、と思うことに時間はかからなかった。
打ち合わせが終わった後、エレンは早速、告白をする為にリヴァイを呼び出した。
まだリヴァイには事務仕事が残っていたので、場所は事務所の近くの喫茶店だ。
いまだかつて彼女がいたこともなければ告白をしたこともない。メールや電話で言ってしまえば簡単だったかもしれないけれど、
それでは自分の好きという気持ちがちゃんと伝わるかわからないし、すぐに返事がほしかったからちゃんと本人を目の前にして自分の気持ちを告げることを選んだ。
付け加えて、あんなに自分を綺麗に撮ってくれるのだから、きっとまだリヴァイもエレンを好いていてくれているだろうと踏んでいたことも直接告白をしようと思った理由のひとつだ。
夕方から夜に変わる時間帯で、店内はまばらに客がいるだけ。
594 :
名無し草 (ワッチョイ f3d4-G+K4)
2016/04/02(土) 20:54:05.54 0
>>573 そなんか
じゃあリリも一緒に来たねん(適当)
595 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:54:06.17 d
店員に通された席も前後左右に他の客が座っていることもなく、店の角席でちょうどよかった。
リヴァイは紅茶を、エレンはレモンスカッシュを注文して、それぞれ何口か飲んでいる。
いざ、告白するとなると少しばかり緊張する。リヴァイもこんな気持ちだったのだろうか。それとも先にエレンの気持ちもわからないまま告白したリヴァイはもっと緊張しただろうか。
今から言うことがリヴァイを喜ばせる内容だといい。そもそもそうじゃなかったら、きっとエレンは気まずさに撮影を続けることはできない。
だから、どうか。
「リヴァイさん、」
テーブルの下、膝の上に置いた手のひらを握った。本当は目を見て伝えたいけれど、エレンにそこまでの勇気はない。
「どうした? なにか撮影に不満でもあったか?」
わざわざ呼び出して伝えたいことがあると言ってきたエレンにリヴァイは心配そうな顔をしていた。
持っていた紅茶のカップをソーサーの上に置いて、エレンの言葉を待っている。
「そうじゃなくて、あの、」
いきなり好きです、と言えばいいのか。それとも少しは前振りがあったほうがそれらしいのか。
悩んで悩んでエレンは前者を取った。まどろっこしいのは性に合わない。
「好きです。撮影、とか……してたら、リヴァイさんのこと好きになりました」
「………………っ、」
この時、エレンが顔を上げて告白していれば気づいたかもしれない。
しかしエレンは俯いたまま、もっと言えば目を閉じてリヴァイの表情を見ないままだった。
だからエレンは気づかない。告白を受けたリヴァイの顔が一瞬青冷めたことに。驚きで表情が抜け落ちたことに。
「……あの、なので、まだリヴァイさんがオレを好きだと言ってくれるなら、付き合いません、か…………?」
エレンの言葉はまだ続いた。
緊張しつつも心の片隅ではイエスをもらえると思っての告白だ。
緊張はしても不安は少ししかなかった。
「…………」
「リヴァイさん?」
なかなか反応をしないリヴァイに焦れて、閉じていた瞼をそっと開いて、様子を窺う。視界に入ったのは驚きに目を丸くしているリヴァイだ。その表情からはなんとも感情が掴めない。
「……そう、だな。突然だったから驚いた」
596 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:54:35.34 d
エレンが顔を上げたのをきっかけに、リヴァイもやっとそのひと言を返した。
「嬉しい、と思う」
「本当ですか……!」
テーブルに身を乗り出して、リヴァイに詰め寄る。気持ちが受け入れられた、リヴァイも同じ気持ちだった、とエレンの表情は明るくなった。
一方でリヴァイはまだ信じられないものを見る目でエレンを見ていたが、両思いになったことが信じられないのだろうとごく自然にそう思った。それが、間違いだとは気づけなかった。
さっきまでの緊張が嘘のようにエレンは途端に生き生きとし出す。
「オレも嬉しいです。リヴァイさんのこと好きになれて同じ気持ちになれて」
「ああ、……じゃあ、付き合うか。あー……それで、今日はこれが言いたかったのか?」
「はい、好きだって思ったらいてもたってもいられなくて、仕事が残っていたのにすみませんでした」
にこにこと笑うエレンにリヴァイもぎこちない笑みを返してくる。表情筋が仕事をしないのはいつものことだ。特に気にとめることもしなかった。
告白の答えを聞けて安心すると急に喉が乾く。レモンスカッシュをストローで一気に飲み干した。リヴァイは腕時計を見ている。
「時間大丈夫ですか?」
「そろそろ戻らないとだな……送ってやりたいが今日もできそうにない。悪い」
「いいえ、むしろありがとうございます。帰ったらメールしますね!」
話も終わったし、飲み物もなくなった。リヴァイも仕事が残っていることだし、帰ったほうがいいだろう。
見るとリヴァイの紅茶は殆ど減っていなかったが、彼が席を立って荷物を持ったのでエレンもそれにならう。
会計を済ませて、喫茶店を出た。
「気を付けて帰れよ」
「はい、リヴァイさんもあまり遅くまで頑張りすぎないようにしてください」
597 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:55:08.15 d
目線より少し下にあるリヴァイの目を見る。抱きついてみてもいいだろうか。男同士だし、外だからまずいか?
でもせっかく付き合いだしたんだから触れたい。別れの言葉を交わしてもエレンはうーんうーんと悩み、立ち去ることができなかった。
ふう、とリヴァイが息を吐く。
エレンの心情を察したリヴァイの腕がエレンの背に回って軽く引き寄せられた。ぽんぽんと背を叩かれる。熱い抱擁とまではいかなかったが、それはエレンの望んだものだった。
わずかに触れるリヴァイの体は震えている。
「緊張する、な……」
「はは、らしくないですね」
「じゃあ、またな」
最後に頭を撫でられて、体が離れる。小さな触れ合いだったが、満足したエレンは今度こそ笑顔で帰って行った。
周りは太陽が沈み、暗くなっている。ビルの明かりはあるとは言え、普段から表情の変化に乏しいリヴァイの暗く悩むような面もちに、最後までエレンは気づくことはなかった。
3、
予報は雨のち曇りのはずだった。晴れることを願って車に乗り込んだのは何時間前だろう。
目的地に近づくにつれて、空から雲は消えていき、とうとう着いた頃にはエレンたちの頭上には晴天が広がっていた。太陽が眩しい。予報は嬉しくも大ハズレだった。
一泊二日での泊まりの撮影。これで撮り終わらないとなるとまたやってくることになる。よくあることではあるものの、それはできれば避けたいとリヴァイが言っていたので、エレンは前日に年甲斐にもなくてるてる坊主を作り窓辺にぶら下げていた。
リヴァイと付き合うことになってから、約一週間。
598 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/02(土) 20:55:11.74 0
みんなで熱海に慰安旅行や
599 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:55:56.97 d
今日まで会える予定はなく、代わりにエレンはメールや電話で会いたい気持ちを発散させた。おはよう、から始まり、おやすみなさいで終わる。
なんでもないようなことでもリヴァイと共有したかったし、リヴァイはこれを聞いたらなんと言うだろうと反応が気になった。恋の力は大きい。
電話はリヴァイからメールの返信がきた時にすかさずかけた。
出られない時はメールしかできない旨のメールがエレンの着信の後に必ずある。律儀な人だ。
メールの返信はだいたいが相槌ばかりで、なにかリヴァイから話題を提供することはない。電話でも同じだった。
それでも話を聞いてくれるだけで嬉しい。
改めて年齢を聞けばリヴァイはエレンの十歳も上だった。年が離れているので、当然同年代と接する時とは違うだろう。
出会ってからの時間は短くともリヴァイはエレンと同じく嫌なことは嫌だとハッキリ言うタイプであることも知っている。
言葉遣いから、そのハッキリした物言いは時にきつく感じることもあるが、相手を傷つけようとしていることではなく、ただ不器用なだけだ。
そんな不器用なところも好きだと思うひとつの理由になっている。
続かないメールや会話に少しの不満や寂しさはあったけれど、元々口数は少なく、さきほども言ったように言葉遣いも乱雑であるリヴァイに今以上を求めることはしてはいけないだろう。
そんな中で待ちに待った撮影だ。リヴァイに会える。しかも撮影の間はリヴァイはエレンだけを見続ける。その上、泊まりでてるてる坊主まで作った。成功させたい。
成功して、もっとリヴァイとの仲を親密なものにしたかった。
小さな湖のある森に隣接したペンションが今夜の宿で、着いた早々に撮影には入らず、各々与えられた部屋に荷物を置いて昼食をとったのちに、準備が整ってから撮影を始める運びだ。
そこまできてエレンは一人、不満の声を上げていた。
「え、オレ一人部屋なんですか?」
ペンションは小さい。スタッフの数も多いとは言えないけれど、その殆どが二人〜三人部屋だった。エレンはひっそりと期待していたのだ。
付き合うようになったのだから、もしかしたらリヴァイと同じ部屋かもしれない、と。
現実はリヴァイもエレンも一人部屋。エレンの願望は叶うことはなかった。
600 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:56:29.29 d
「俺は部屋でもやることが多いからな。自分でできることは自分でやりたい。隣で仕事をされると同室になった奴が休めないだろう」
「オレはそんなこと気にしません」
「俺が気にする。お前はバイトとは言え、俺が撮らせてくれと頼みこんだモデルだ。VIP待遇を喜べ」
「でも、」
付き合ってるのに、と続けようとした言葉は声になることはなかった。
リヴァイが真剣にこの撮影に挑んでいることを知っていたし、不器用なリヴァイなりの気遣いを無碍にすることはできない。
もしかしたら隣で眠れるかもしれない。いつもよりも長く一緒にいられるかもしれない。そう期待した心が少しだけ折れた。
(リヴァイさんは仕事だし、仕方ねえよな)
一人で与えられた部屋に入る。一泊分の荷物なんてそう多くない。
エレンはモデルなので、機材を準備することもなく、部屋へ入って持ってきたボストンバックをクローゼットに押し込んでしまえばやることがなくなってしまった。昼食の時間と指定された時間までまだ三十分もある。
どうしようかと考えたが、特にやることも見つからず、結局携帯にダウンロードしていたアプリゲームでその三十分を潰した。その後、ペンションの管理人が用意してくれた弁当を食堂で食べ終わると、撮影をするために全員で森へと入る。
四月も終わる頃で緑が綺麗だった。
晴れてくれたこともあって今日の撮影も順調だ。
エレンの衣装は上も下も真っ黒なシンプルなTシャツとパンツ。時々裸足になって緑の中に立った。
暗くなるまで続いた撮影が終わったのは夜の八時も過ぎた頃。それから昼同様に食堂で夕食をとってあっと言う間に解散となった。
大浴場のような共同風呂もあったが、エレンはなんとなく部屋に備え付けてある風呂に入り、一日の汚れを落とす。足の裏は特に念入りに洗った。
その都度タオルで拭いていたし、ペンションに戻ってからも簡単には洗ったが、森の中を裸足で歩いたので洗うにこしたことはない。
地面に寝ころんだりもしたので、頭もよく洗う。風呂から上がれば石鹸のいいにおいがエレンを包んでいた。このペンションのアメニティの石鹸は安物ではなかったらしく、風呂上がりの髪はいつもよりもふわふわで触り心地も良くなっている気がする。
ドライヤーで乾かした髪を自分で触れて、エレンは満足気に笑った。
601 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:56:50.98 d
パジャマ用に持ってきたシャツとスウェットのズボンをはいて、スリッパを引っかける。部屋の鍵を持って、ドアを開いた。
カードキー型のオートロックキーだから鍵を閉める作業はしなくてもいい。
向かうはリヴァイの部屋。部屋番号は昼の間に本人に聞いている。行ってもいいかとは聞かなかったけれど、駄目だとも言われていない。
少しくらい、行ってもいいだろう。
コンコンコン
リヴァイの部屋はエレンの部屋と同じ階の一番端だ。ズボンのポケットに持っていたカードキーを入れて手ぶらになったエレンはその部屋のドアをノックした。
「エレンです。今、大丈夫ですか?」
声をかけるとこちらに近づく足音が聞こえて、ガチャリと鍵が外されドアが開く。
「……なんだ」
開いたドアを足で止めて、リヴァイがエレンを見る。
彼は宣言通り、パソコンでなにか作業をしていたようだ。ドアが開いた先にノートパソコンがあり、リヴァイは眼鏡をかけていた。
「明日は早朝からだから早く寝ておけ」
そう言って眼鏡を外して、眉間を二、三度揉む。早く寝なければいけないのはリヴァイのほうではないだろうか。エレンから見ても彼が疲れを感じているのは明白だった。
「はい、でも、えーと、」
ここにきたのにはあることをするためだ。でも自分からは言いにくい。リヴァイの作業も中断させてしまったし、できるだけ早く済ませたい。
眼球がきょろきょろと左右に動く。しかしエレンがためらったのはその一瞬だけだった。
ええい、言うより悩むより行動だ。それが自分のいいところのはず。
「失礼します!」
リヴァイの身長はエレンよりも低い。
肩は掴みやすかった。
なぜ肩を掴んだかって。
それはリヴァイの体を固定するためだ。
なぜ固定するのかって。それは……。
「っ、」
その時、息を飲んだのはエレンかリヴァイか。
肩を掴んだエレンはそのまま自分の顔をリヴァイの顔に近づけた。
時間にして一秒ほど、二人の唇が重なって。離れる。
「……へ?」
先に声を出したのはエレンだった。
キスをした、はずだった。自分はリヴァイに、おやすみのキスをねだりにきたのだ。結果はねだれずに、半ば強引に唇を奪ったのだけれど。
602 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/02(土) 20:57:04.34 0
>>594 ミンの代わりにリリと行ってもうてゴエンア;;
603 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:57:30.76 d
付き合ってから、エレンにとっては生まれて初めてのキスだった。ファーストキスはレモンの味、なんていうのは今はもう古いのか。レモンかどうかはわからなかった。わかる前に、離れてしまった。
離したのはリヴァイで。
唇が重なった瞬間、リヴァイは力づくでエレンの体を引きはがした。突き飛ばすにも近いそれにエレンはバランスを崩して一歩後ろへ下がる。
なんだ。この反応は。これではまるで。
……その先は考えたくなかった。
「いきなりだったから、だ。もう少し自分を大切にしろ」
ごく自然にリヴァイは袖口で唇を拭った。その腕は下ろされることなく、リヴァイの唇をエレンから隠してしまう。リヴァイも動揺していた。
でもエレンはもっと意味がわからない。
あからさまな拒絶に見えた。ぱちぱちと瞬きをして、表情がごっそりと抜け落ちる。
「いえ、すみません。おやすみの、キスとか、……ちょっと憧れてて、はは」
ははは、と声を出しながら、顔は全く笑えていなかった。
一歩引いてしまった足を元の位置に戻す。その一歩分、リヴァイとの距離が近くなる。そこで、エレンはまた見てしまう。理解してしまう。目の前の男が、近づいた分だけエレンから距離を取った。
(なんで、)
問いたい言葉を飲み込む。
「おやすみなさい」
代わりに就寝の挨拶をした。今度はちゃんと笑顔で。キスはしない。これ以上近づかない。笑顔で手を振るだけだ。
「あ、ああ。また明日」
「明日、もしオレが寝坊したら叩き起こしてくださいね」
迷惑はかけたくないんで、と付け足して言う。
そこにいたのはもう普段と変わらないエレンだった。本当はなんでと問いただしたいのを我慢して、いつも通りの自分を心がけた。
「リヴァイさんも早く寝てください」
リヴァイにはどんな自分に見えただろう。そんなことも考えたが、これ以上はこの場にいるのが苦しい。
もう一度、「おやすみなさい」とできる限り明るい声で挨拶して自分の部屋へ走り帰った。短い距離の廊下を走りながら片手でポケットに入れたカードキーを探る。
部屋の前に立つと、ガクガクと体が震えてきてカードキーを落としてしまった。ゆっくり膝を折ってそれを拾う。重力に負けて目からなにか出てきそうだ。
604 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:57:51.56 d
カードキーを差して、ドアを開く。電気は消したまま一直線にベッドまで歩き、倒れ込むように横になった。もぞもぞとシーツにくるまる。
(本当は、気づいてた)
でも、気づかないようにしてた。この一週間。
都合よく、言い訳をつけて、見ない振りをしていただけだ。
両思いだった、と喜んだのはつい最近。
(そういえば好きだとは言われなかった)
付き合うか。と言われただけ。
メールの返信も、電話も、思い描いていたようなものではなかった。
テレビに映っていたカップルはもっと距離が近かった。
(オレは遠ざけられた)
好きな相手とのキスをあんなにふうに拒むだろうか。
キスした唇を無意識に拭うだろうか。
これ以上キスされないようにと自分の唇をガードするだろうか。
最初に一目惚れをした、と言ったのはリヴァイだったのに。
一緒に撮影をする中で嫌われてしまったのかもしれない。告白してしまった手前、エレンの告白を断れば撮影できなくなるかもしれないと危惧されたのかもしれない。
自分を好いてくれていると思った理由は綺麗に撮ってくれたからだ。
それだって、リヴァイのカメラマンとしての腕がいいだけで、できて当たり前のことなのかもしれない。
だって、普段から何でもない世界をあんなに綺麗に切り取るのだから。
そこにエレンが入るか入らないかの差でしかない。
しっかりと考えればわかったこと。それを自分は調子に乗って。
そうだ、そもそも一目惚れなんて姿形だけを見た時の感情だ。
中身を知ればいくらだって気持ちが冷める可能性はあった。
キスなんてするんじゃなかった。せめて撮影がすべて終わるまでは甘い夢を見たかった。
(でもまだ本人から言われるまでは信じたい)
そう思うのは我が儘だろうか。
「そろそろ起きてくれ」
「……?」
ぼんやりとした視界の中にリヴァイが見えた。もう朝なのか。いつ寝たか記憶にない。
605 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:58:25.21 d
(今日もリヴァイさんは整った顔してるなぁ……)
いっそ自分なんか撮らずにリヴァイをモデルにしたほうがいいんじゃないか。ああ、自分で自分を撮ることは無理か。もったいない。
寝ぼけた頭で、エレンはそんなことを考えてふわりと笑った。
「幸せそうな顔をしているところ悪いが、そろそろ出ないと間に合わない」
リヴァイが布団にくるまったエレンを揺する。体が動くと頭が冴えてきた。
「……! え、あ、…………え? リヴァイ、さん?」
「おはよう、エレン」
日が昇る前で外はまだ暗い。跳ね起きてベッドサイドの時計を確認すると時間は早朝の四時前だった。寝坊したかと思ったが、そこまで寝過ごしてもいない。
「な、なんでここに?」
「マスターキーを借りた。起きたらいつもメールが来るのに今日はなかったからな」
エレンの問いに簡潔に答えたリヴァイはベッドに腰掛けて、リヴァイの重みの分、ギシ、とスプリングが鳴ってベッドが沈んだ。昨晩のことを思い出して、気まずい。
できる限り考えないようにしなければ。
リヴァイの態度は恋人らしくはないけれど、決して嫌いな者へのそれとも違う。良くも悪くも普通だった。
昨晩のことは夢だったのかもしれないと、都合のいいことを考えながらベッドから起きあがって洗顔と歯磨きを済ませる。
洗面台で見た頭には寝癖はついていなかった。どうせ撮影の前に少しだけ整えられるのだ。くしで簡単にとかすだけにしておく。
リヴァイが部屋にいるまま、エレンは前日の内に渡されていた衣装に着替えだす。昨日は真っ黒な衣装だったが、今日は反対に真っ白だ。
シャツの裾が長めに作られていて、ヒラヒラしている。天使のような衣装だった。そこにまた真っ白なストールを首に巻く。
606 :
名無し草 (スプー Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:58:30.57 d
初めて行った海でクラゲに刺されて海のせいで病気なったはて騒ぐんやろか
607 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:58:46.14 d
着替えている間、リヴァイの視線はずっとエレンに向けられたまま。
顔を洗って頭がハッキリしてきたエレンはそこでふとした違和感に襲われた。また気づいてしまった。決して気づきたくなかったのに、また。
(……好きな相手が目の前で着替えてたら多少はこう、なんか、むらっとくるよな、)
エレンは水に濡れたリヴァイにドキドキしたことを思い出す。リヴァイは眉ひとつ動かさずにエレンが着替え終わるのを待っている。
その姿はただのカメラマンだ。恋人ではない。
(性的な目で見てほしいわけじゃないけど、)
なんの反応もされないということは、エレンを全く意識していないのだろう。
一方通行になってしまったかもしれない気持ちの整理はまだつかない。
だってまだ昨日気づいたばかりだ。しかもつき合ったのだって最近のこと。
なにか、ほんの僅かにでもリヴァイが焦るような仕草をしてくれていたのなら、エレンはまだ信じることができるのだ。
それなのに、思う通りにならない現実に奥歯を噛み締める。
準備が終わり、リヴァイと共に部屋を出てペンションのロビーへ向かう。そこにはもう他のスタッフは全員揃っていた。その場で簡単に化粧を施され、髪を整えてから、まだ真っ暗な森の中へ入っていく。
空に雲はない。一昨日雨だった予報は昨日晴れに書き換えられていた。
きっと綺麗な朝日が見られるはずだ。
湖畔まで移動してから、暗がりの中で撮影の準備を行う。リヴァイはカメラのチェックに余念がないように見えた。
エレンはリヴァイが作った絵コンテを確認して頭に叩き込む。こんなに早く撮影の準備を行っているのは朝日を撮る為だ。日の出は一瞬。その一瞬を自分のせいでシャッターチャンスを逃すことはあってはならない。
日が昇っていない湖畔は寒かった。ぶるりと震えたエレンにスタッフがブランケットを貸してくれたが、体が温まる前に遠くが明るくなってくる。
合図もなく、それが当たり前のように撮影が始まった。
時々、リヴァイに指示を受けながら、立ち位置やポーズ、視線を変える。シャッターは止めどなく押されていき、チラリとリヴァイを見ると口元が綻んでいた。いい写真が撮れたのだ。
その時、強い風が吹いた。首に巻いていたストールが後ろへなびき、エレンは振り返ってその先端を目で追いかける。
608 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:59:28.09 d
リヴァイのカメラがカシャカシャと連続して鳴った。その音が鳴り終わるとリヴァイはカメラから手を離す。
「一旦休憩にしよう」
エレンにもその言葉は届いていたが、足がその場から動かなかった。なぜかは自分でもわからない。
ただ、なんとなく。その場にしゃがみこんで、朝日できらきらと光る水面を見つめた。
ひんやりと冷たい空気に包まれて、感じる太陽が暖かくて気持ち良い。
「寒かっただろう。風邪をひく」
背後から誰かくる気配がして、上から声が降ってきた。振り返るとリヴァイがブランケットを持って立っている。
それ以上言葉を発さずに前方に回り込んできたリヴァイは、地面に膝をついてエレンと視線の高さを合わせ、持っていたブランケットをエレンの肩にかけた。
「……はい、」
「はいじゃねえだろ」
外に出ていて誰にも使われていなかったブランケットは撮影前に羽織っていた時よりも冷たく感じる。
「じゃああっためてくださいよ」
「なに言ってんだ」
頬を膨らませてエレンがぼやく。それを聞いたリヴァイが笑った。いい写真が撮れて機嫌が良い。
ああ、やっぱり好きだなぁ。
目の前の男に対する自分の気持ちを再確認させられた。
でもこれ以上はリヴァイには近寄らない。彼が嫌がることはしない。
こんなに近くにいるのに、なんて遠いんだろう。エレンからは決して縮められない距離を、今度はリヴァイが詰めてきた。
(また、この顔、)
今までに何度か見たリヴァイの表情。なにかを決心して覚悟したような、そんな顔だ。深く息を吸ってからぎゅっと唇を一文字に結んでいる。
今回近づいたのはエレンからではないのにこんな顔をさせてしまうなんて。
(もうこの顔は見たくない)
瞼を閉じて、そっと視界をシャットダウンした。
唇に柔らかく湿っぽいものが触れて、離れる。
「ん……?」
さっき閉じたばかりの瞼を持ち上げると、リヴァイの顔のアップが眼前に広がっていた。
じゃあ今唇に当たったのは、もしかしなくてもリヴァイの唇か。
609 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 20:59:47.35 d
キスされたことを疑問に思うよりも先に、リヴァイはあんな顔をしないと自分とキスもできないことに気づいてしまう。
好きでもない男とキスするなんてエレンだって御免だ。絶対にしたくない。それをさせてしまったのは仕事のためか、昨晩の償いのつもりか。
どちらにせよ、このキスでエレンは確信した。
(本当にもう、好きじゃないんですね)
昨日思った通りだった。
痛い痛いと心臓が悲鳴を上げている。
なんで気づいてしまったんだろう。なんで好きになってしまったんだろう。
リヴァイみたいな人に好きだと言われれば意識しないなんて無理だ。仕方ない。
飽きられてしまったのは自分に魅力がないからだ。それでも笑いかけてくれる。関係を良好に保とうと努力してくれる。
これにエレンは応えなければならない。
「ほんっと、寒いですね」
ぶるりと震えてから身を縮こまらせてしまえばリヴァイが半歩分離れた。不自然にならないようにそっと距離を取る。
エレンの傍にいては不愉快だろう。不愉快の原因にはなりたくない。気遣わせたくない。
「休憩っていつまでですか?腹減りました」
わざとらしいほど明るい声を出した。準備のいいリヴァイのスタッフたちのことだからそう大きな声で言えば聞いた誰かが菓子を出してくれるかもしれない。
その予感は的中して、「クッキー持ってるからおいでー!」と手招きしてくれるスタッフへとエレンは駆け寄る。
リヴァイはその後をゆっくりとした歩調で追いかけた。
それから、エレンは恋人らしいことをリヴァイに望むことをパッタリとやめた。別れてほしいとは言われなかったし、エレンからも言えなかった。代わりにプライベートでリヴァイに関与しないように言動を改めた。
610 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:01:11.43 d
好き合ってもないのに、付き合う意味があるのかと考えて何度か別れましょうとメールを作成したけれど、送信することはできず、未送信のままエレンの携帯電話に溜まっていく。
(だって。付き合っていればまたオレを好きになってくれるかもしれない)
そんなことあるわけない。この関係を望んだのはエレンだけだ。
リヴァイは早く自由にしてあげなければならない。分かっているのに、できなかった。
だからせめてリヴァイの気苦労が減るように。
前よりも真剣に(前も真剣だったけれど)撮影に打ち込む。リヴァイとの距離は常に一歩あけた。
そのことを意識した状態でいると、不意にリヴァイから近づいてきた時にビクリと体が跳ねてしまって、そういう時は大体、咳をして誤魔化す。
エレンをモデルにして良かったと思われたくて。仕事の汚点にはしたくなかった。
カメラマンとモデルの関係が拗れるといい写真を残すことは難しくなる。もうしてはいけないことをたくさんしてしまったから、これ以上は失敗できない。
名前だけの『恋人』を見るたびに痛む胸に気づかないふりをして、自分の気持ちに蓋をした。
そんな努力の甲斐あって後半の撮影では撮影終わりによく食事に誘ってくれた。
勘違いでなければ、撮影中に頭を撫でてこようとしてきたこともある。
伸びてきた腕は上手に避けてしまったが、警戒が解けてきていたことは確かだと思う。
エレンは間違っていなかった。
そうだ、間違っていなかった。その事実がエレンに牙をむく。牙は深くエレンの心臓を抉り、傷つけていく。
もうきっとこれは抜けない。日々ゆっくりと深く突き刺さり、いつか心臓を食い破ってしまうだろう。
今はそれが撮影がすべて終わった後だといいな、と願うばかりだった。
そうすれば、リヴァイの迷惑にならないから。
そうすれば、最後に一番みっともないところを見られなくても済む。
そうすれば、リヴァイの記憶の中でエレンはちょっと困った奴程度で収まるかもしれない。
そうすれば、嫌いって言われないかもしれない。
(好きはもう望まないから、嫌わないでほしい)
最後に「よくやったな、助かった」と声をかけてもらうだけでいい。
その後まで彼がほしいだなんて言わない。これ以上わがままは言わない。
611 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:01:24.71 d
彼を見ているともっと好きになってしまうそうな自分がいることが怖くて。
いっそ嫌いになれれば楽になれるのにそれすらできず。
ただ、心臓がズキズキ痛み、その痛みで意識を保っていた。
最後の撮影は海浜公園で行われた。
リヴァイからの指示はなく、公園の中を自由に回っていればいいとのことだったので、好き勝手に動くことにする。最初はこれでいいのかという戸惑いが強かったけれど、一時間もそれを続けていれば戸惑いも吹っ切れて一人の散歩を楽しむようになる。
数時間、一応カメラを気にしてゆっくりとした動きで公園内をぐるぐる回り、最終的にたどり着いたのは浜辺だった。
今日もまた晴天で風もなく、穏やかに波を打つ海が広がっている。海水浴の季節にはまだ早いので人もあまりいない。
「すっげーきれい!」
元々海が好きだった。
一人で考え事をするのも、友人たちとわいわい騒ぐのも、全部楽しい。
広い海を目の前にしていると自分の悩みなんかちっぽけに感じて気が楽になる。
すぐ傍に流木があり、その陰で蟹がちょこちょこ横歩きをしているのを見てからからと笑う。
せっかくだから友人とくる時にはできないことをやろう。
エレンが始めたのは砂遊びだ。海水でほどよく湿った砂を山にして固める。中央にトンネルを掘って反対側に貫通させてから、なんとなく城っぽい形状にしていく。
なにが完成したのかと聞かれると自分でもわからないものだったが、久々の砂遊びで立派な作品ができて満足した。
「いいな、」
リヴァイはそう独り言を言い一心不乱に浜辺で遊ぶエレンにレンズを向けてシャッターを押している。考えてみれば撮影中はリヴァイといる時間の中で一番楽かもしれない。レンズを通せば笑えるし、見つめることだってできる。
撮影という線引きがすでにされていることが大きな助けになっていた。
カメラに夢中なリヴァイの姿に、これが最後なんだから、と悪戯心がわく。
今日は一度もカメラに視線を送っていない。
612 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:03:46.62 d
このタイミングで思いっきり笑顔でカメラを見たらきっと驚くに違いない。両手をパンパンと合わせて簡単に砂を落とした。そのままぐるん! となんの予告もなく、上半身を回して、横から写真と撮っていたリヴァイに向けて全開の笑顔を見せた。
カシャカシャカシャカシャカシャ……
何度もシャッター音が聞こえてきて、仕掛けたのは自分だったけれどそんなに撮られると恥ずかしくなる。
「そんなに撮らないでくださいよー!」
カメラに両手の平を突き出して顔との間に遮りを持たせると、ようやくシャッター音が止まる。
リヴァイの手からカメラが離れ、ネックホルダーにぶら下がって胸のあたりでぷらぷら揺れていた。
「どうしたんですか?」
自然体の写真を撮りたかったのに、カメラ目線なんかしたから気に障ったのだろうか。でもそれならそれで注意されるはずだし、そもそもシャッターはあんなに切られることはない。
「お前……っ、その顔は反則だろ……」
ついにはしゃがみこんでしまったリヴァイに少しだけ近寄る。この距離ならまだ大丈夫のはず。
「え、……なんか、すみません?」
「違う、最高だった。俺はずっとあれが撮りたかったのかもしれない」
「よく分からないですけど、リヴァイさんが満足したなら良かったです……?」
「した。これで撮影は全部終わりだ」
エレンの理解が及ばないまま、リヴァイは一人で納得して立ち上がる。
『全部終わり』
613 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:04:33.70 d
その言葉にエレンがはっと息を飲んでいる間に、少し離れた場所にいるスタッフに告げれば、スタッフからは歓声がわき上がる。
口々に「お疲れさまです!」と言い、拍手が起きた。
なんとも呆気ない終わり方だった。
そうは思ってもリヴァイが終わりだと言えば撮影は終わりで、同時にエレンの役目も終わってしまう。
その後、リヴァイは簡単なデータの確認、他のスタッフは機材の後片づけをしてから、都合のつく者全員で簡単に打ち上げに行くことになっている。先にそのことを聞かされていたエレンも参加する予定だった。
ちなみに本打ち上げはまた後日あり、今日は一旦のお疲れ会といったところらしい。
普段ならばやることがないエレンは先に帰宅となるも今日は暇を潰さなければならない。
砂で汚れた手足を洗い、汗ふきシートで体を拭くとスッキリした。
車には着替えも準備してあるので、スタッフに鍵を借りて空いた時間の内に着替えてしまう。大きなワゴン車で窓にはカーテンがかかっていた。
(ちょっと疲れたな、)
まだ時間はあるだろう。一日中歩いた疲れで瞼が重い。
ワゴン車の一番後ろの席にゴロンと横になった。足を伸ばすことはできないし狭いけれど、それよりも横になれることが嬉しい。
うとうとと夢に意識がもっていかれる寸前、隣の駐車スペースに別の車が止まった音が聞こえた。
エンジン音が止まり、続けてドアが開く。閉める時はバン!とそんなに力強く閉めなくても閉まるのになあと思うくらい大きな音が響いた。
「リヴァイいたー! 撮影どうなの、順調……ってえええええええ! もう終わっちゃったの? 最後くらい見学したくて車飛ばしてきたのにひどいじゃないか」
出てきた人物はよく通る大きな声のようだ。エレンが乗る車の中にまでよく聞こえてくる。
リヴァイの知り合いらしく、そしてリヴァイもまたこの近くにいるらしいことがわかった。大きな声は女性のものだ。
「うるせえよ、クソメガネ」
「ねー、そのカメラのデータ見せてよ……って、え? いいの? もっとごねないと見せてもらえないかと思ったのにどういう風の吹き回し?」
「ほんとにうるせえな。声のトーン抑えろ。ほらよ、」
女性の声はどこかで聞いたことがある。どこだったか。聞いてるうちに思い出すだろうか。
614 :
名無し草 (アウアウ Sa6f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:05:05.83 a
>>544 わいなんかダッツ2つ食ったった
期間限定キャラメルトリュフうままや
>>320 ほんまや手繋ぎめちゃきゃわやで!!
615 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:05:33.71 d
「おおー、めちゃくちゃいいね。モデル、エレンで大正解!」
「そうだな。あいつが引き受けてくれてよかった」
外から聞こえてくる会話にエレンは嬉しくなった。
リヴァイがエレンをモデルにして良かったと他者と話している。彼らはエレンがここにいることを知らない。つまり、これは本音だ。
頑張って良かった。
この言葉を聞けただけで満足できる。自然と口元に笑みが浮かんだ。傷つきすぎた心臓に鎮痛剤が打たれた。
「わたしのアドバイス通りにして良かったよね」
「…………」
「なにその間は。エレンが引き受けてくれたのってわたしのお陰じゃん!」
「……まあ、そうなんだが」
「全然理解できないけど、リヴァイってやっぱりモテるんだなって思ったよ。好きだって言ったんでしょ?」
「……ああ、」
「君が好きだって言えば大概の子は落ちて言うことを聞いてくれる、なんて我ながらひどいこと言ったし、実行するリヴァイもリヴァイだけど、その点はこの写真見たら納得。ほんといい写真」
「そりゃ、どうも」
「どうしたの? さっきから浮かない顔して」
「なんでもねえよ」
途中から両手で耳を覆ったのに、彼女のよく通る声は鼓膜に届いてエレンの脳に無理矢理入ってきた。
これ以上聞いちゃ駄目だ。聞きたくない。そう思うのに、理解してしまう。分かってしまう。
最初からリヴァイはエレンを好きじゃなかった、なんて。そんな知りたくもないことを。
好きだって、一目惚れをしたと言われた。
ほんの少しでもリヴァイに好かれている期間があったのとなかったのでは全然違う。それがなかっただなんて聞きたくなかった。
それが全部モデルを引き受けさせるための嘘だったなんて、。
鎮痛剤だと思ったものが毒に変わる。即効性の毒だ。じわじわと体を蝕むなんてレベルじゃない。急激な吐き気を目眩に襲われて、以前に二度合わせた唇が冷えていく。
相手を見てドキドキしたことも。
連絡がこなくてそわそわしたことも。
次に会えるのは何日後だとカレンダーを見てカウントしたことも。
触れたいと願ったことも。
好きになってもらいたいと望んだことも。
616 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:06:03.38 d
好かれようと努力したことも。
付き合うことになった時の喜びも。
なにも、なにも。リヴァイは感じていなかった。思っていなかった。
全てエレンの一方通行で、全てエレンだけが感じ、望んだことだった。
それが分かってしまえば全てが簡単に繋がるのだから笑えない。
最初から、この想いが叶うはずなかった。
それならば尚更、距離を取ったことはいい判断だったんだ。
あれ以上近づいていたら、嫌いにランクダウンしてしまっていたかもしれない。
(……馬鹿みたいだ、)
リヴァイの言葉を信じた自分も。エレンに告白されて後に引けずに我慢して付き合っていたリヴァイも。
なのに嫌いになれない。ひどいことをされたのはエレンなのに、自分でも嫌いになったっておかしくないと思うのに。
だってあの人はいつも優しかった。いつもエレンを気にかけてくれた。
食事に誘ってくれていたのだって嬉しかったんだ。味は分からなかったけど、一緒の時間を過ごせるだけで幸せだった。
写真だって本当に綺麗に撮ってくれていて、自分が彼の作品の一部になれることが本当に嬉しかった。
人生で一番の自慢だ。
撮影のことがあったからといっても、エレンの言葉を拒否することは簡単だったのに、彼は恋人ごっこにも付き合ってくれた。
恋人らしかったかと聞かれれば、疑問は残る。だけど、リヴァイはリヴァイの時間をエレンにくれた。
不器用なりに一生懸命だったんだと思う。
今だって別れようとは言われていない。エレンの気が済むまで付き合ってくれるつもりかもしれない。
(ああ、でも、)
「……それは駄目だろ」
自分の思考に自分で否定した。声に出さなければこの期に及んで気持ちが揺らいでしまう。
大好きな人の時間を奪ってしまう。リヴァイを自分から解放してあげなければならない。
エレン自身からリヴァイに別れを告げる。できるだろうか。
いや、しなくてはならない。リヴァイに罪悪感が残らないように。その為に自分が悪者になっても。
気づけば、リヴァイたちはどこかへ行ってしまっていた。
二人は最後までエレンがここにいて、会話を聞いていることは知らないままだった。
617 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:07:47.87 d
「先生さようならー!!」
「おう、また明日な!!」
勢いよく手を振る少女に向かってエレンも同じように大げさに両手を上げて手を振った。その隣にいる母親は笑いながらエレンに向かって頭を下げている。
彼女は母親にしてはまだ若かった。エレンと同じ年代だと聞いたことがある。
自分ももしも早く結婚をしていればあれくらいの年代の子供がいたのだろうか。
子供の手を引いて帰っていく親の姿を見るたびにエレンはそう考えていた。
シガンシナ地区にある小さな保育所がエレンの勤務先だった。
住宅街の傍にあるこの保育所に預けられるのは先ほどの母親のように両親が共働きをしている家庭や母子、または父子家庭の子供も多い。
あまり各家庭の事情を詮索するつもりはないし、エレンとしては子供と触れ合えればそれでよかった。
昔から子供が好きだったから今の職業は天職だと彼自身は思っている。
両親――特に父親はエレンに医療関係に従事をしてほしいと願っていたようだったが、彼自身そこまでの学がなかった為早々に諦めた。
単純に子供が好きだからといってこの仕事は続けられるものじゃない。預かっている子供たちの中には難しい家庭の子供や両親もいる。
彼らも人間であるから、ともちろん念頭に置いて応対はするのだがそれでもやはり理想と現実は大きく異なることもある。
ストレスだって思いのほか溜まるし、休日も満足に休める時間も少ない。
それでもエレンはこの仕事が好きだ。子供が好きで、彼らと触れあえる時間はここでしか得られないものだった。
618 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:08:16.03 d
親子の姿が見えなくなるとエレンはくるりと振り向いて園内の中へと戻る。
あと残っているのは――親がまだ迎えに来ていない子供はミカサだけだった。
「ミカサ」
教室を覗けばミカサは一人大人しく積み木遊びをしていた。
エレンの声にぱっと表情を輝かせた彼女に笑いかけながら「おいで」と彼はしゃがんで両手を広げる。
途中まで積み上げた積み木を放り出してミカサはエレンに向かって走ってきた。
スピードをつけたおかげで抱き着くというよりは彼女の突進を身体で受け止め、思わずよろめいてしまう。
「こら、走るなよ。危ないだろ?」
「だってエレンが呼んだから」
「エレンじゃなくて先生って言いなさい。ったく」
そうは言いながらもエレンは笑いながらミカサを抱きあげた。そして慣れた様子で彼女を抱き上げると、先ほどまでミカサが遊んでいた場所まで連れて戻る。
ミカサは毎日最後まで残る園児だった。彼女の父親は毎日迎えが遅く保育所が閉まるぎりぎりの時間にならないといつも迎えに来ない。
駅からここまで走って来る時もあるらしく、冬でも額に汗を浮かべて迎えに来ることもあった。
「すまない」と頭を下げる彼のことをエレンも他の保育士も迷惑だとは思ってはいなかった。
619 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:09:01.23 d
ミカサの家庭は父子家庭だ。詳しくは知らないが父親と母親は彼女がこの保育所に預けられる前に離婚をしてしまったのだと聞いている。
たまに彼女が母親に連れられて帰る子供の姿を羨ましそうに見つめることがあった。
やはり母親が恋しいのだろうか。その姿を見るたびにエレンは胸が締め付けられるような思いをしていた。
「ミカサ、楽しいか?」
だからというわけでもないが他の子供たちよりもエレンはよくミカサにこの問いかけを行う。彼女以外にも片親の家庭の子供だって何人かいる。
その子供たちも片親を恋しく思い寂しさを抱いているはずだ。
エレンは彼らにも同じ問いを聞いているがミカサには特についつい同じ質問を繰り返してしまう。
贔屓目に見てしまうことは悪い事だと思っているがミカサだけは特別だった。
彼女だけはどうしても放っておけず、それ以外にも他の子供たち以上に構ってしまっていた。
ミカサは積み木を手にしたままエレンを見やった。決して大きな瞳ではなかったが彼女の目はとても綺麗だ。
澄んだ瞳いっぱいにエレンを映しながら、ミカサは控えめに首を振る。
「エレンがいるから寂しくはない。私は楽しい」
「エレンじゃなくて先生な」
何度そう言い聞かせてもミカサは呼び方を直さなかった。
彼女以外は皆「エレン先生」や「イェーガー先生」とちゃんと呼んでくれるのに、ミカサだけは「エレン」と彼を呼び捨てで呼ぶ。
はじめからずっとそうだ。いくら言っても直そうとしないのでエレン以外の子供も保育士も何も言ってはいない。諦めていないのは彼だけだ。
620 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:09:29.28 d
ため息をつきながらエレンはミカサが組み立てた積み木の上に最後のひとつを乗せる。
三角形の積み木を乗せれば家のような形が出来上がった。
ミカサはその周りに小さなぬいぐるみを並べる。どうやら積み木の建物が彼らの家らしい。
「どれがお父さん?」
「クマさん。それでウサギさんがお母さん」
並べたぬいぐるみを一つひとつ指さしながらミカサはエレンに家族たちを紹介していく。
それを眺めながらエレンはミカサに相槌を打っていた。
「ワンちゃんがお兄ちゃんでネコちゃんが妹」
「そうか、たくさんいるな」
「うん、みんなが寂しくないように。家族は沢山いたほうがいいから」
微笑ましく思っていたがその一言でエレンは思わず表情を曇らせる。こういう場合はどういう顔をすればいいのか、一瞬分からなかった。
「ミカサは今、寂しいのか?」
ミカサはウサギのぬいぐるみを抱きしめながら彼顔を上げた。無表情で自分を見つめるエレンにミカサは小首を傾げる。
「寂しくない。エレンもお父さんもいるから」
ぎゅっと彼女の腕に力がこもったのが分かった。寂しくなんてないわけがない。
ミカサのことをずっと見てきたエレンにはそんなことくらいすぐに分かってしまった。
ミカサは強い子だ。素直だし我儘も滅多なことでは言わない。
泣きたいこともあるのに泣こうとはしないし、自分のことよりも周りのことを常に見ているようなタイプの子供だ。
強がる必要なんてどこにもないのに。エレンは手を伸ばして再び彼女をぬいぐるみごと抱きしめた。
621 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:09:58.02 d
「……エレン?」
先ほどよりも強く、きつく抱きしめる彼の腕にミカサは困惑を示す。
はっ、と我に返りエレンは慌てて腕の力を緩めた。
身体を離すことはなく、腕の中にミカサを閉じ込めたままエレンは彼女の顔を覗き込む。
「そうだよな、こうやっていれば寂しくなんてないもんな」
やはりミカサだけはエレンにとって特別だった。
どうしても構ってやりたくなってしまうし、他人事として見られない。
出来ればずっと傍にいてやりたいと思う。この保育所から巣立った後も、自分がもしもこの子と一緒に暮らせればきっと寂しい想いなんてさせない。
彼女とこうして迎えが来るまでの時間を二人きりで過ごしている間、何度もそういった想いが過っている。
しかし彼女と一緒にいたいという理由はそれだけじゃない。
ミカサと一緒に暮らしたいという理由はそんな単純なものじゃない。
さらにいえばそれは彼女には直接的には関係がなかった。どちらかといえばエレン自身の問題ではあるし、しかもこれはミカサのことを考えたうえでのものじゃない。
むしろミカサにはさらに寂しい想いをさせるだけだろう。新しい母親と出会わせてやることが出来なくなるのだから。
これらは万が一に、エレンが彼への想いを成就させた場合の話ではあるのだが。
622 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:10:26.96 d
がらっ、と扉が開く音がする。
エレンとミカサ、二人揃ってそちらのほうを見やれば一人の男がそこに立っていた。
今日は額には汗は浮かんではいない。チェックのマフラーを巻きグレーのスーツを着た男は彼らの姿を見て鋭い瞳をほんの少し和らげた。
どきり、と心臓が大きく高鳴った。ミカサよりも彼のほうへと視線が釘付けになり、外せなくなってしまう。
穏やかに見つめる視線は自分に向けられたものじゃないことは知っている。
それでも今は勘違いもしてしまいそうになる。
いや、実際してしまっていた。彼がそんな眼差しで自分を見つめているものだと思うと胸がさらに苦しくなる。
「お父さん」
ミカサは彼に向かってそう叫ぶ。その声にエレンは現実に引き戻された。
気付いた時にはミカサはぬいぐるみを手放していた。
エレンの腕から抜け出すと彼の元に向かって歩いて行く。
「お父さん」と彼女に呼ばれた男はしゃがみこんでミカサと目線を合わせる。傍まで来た彼女の頭を撫でるとミカサは嬉しそうに笑みを零した。
「遅くなって悪かったな。いい子にしていたか?」
「うん、エレンと一緒にいたからいい子にしていた」
大きく頷いたミカサに「そうか」と男はつられたように笑みを浮かべた。彼女とは違って控えめなもので口端をほんの少し上げた程度でしかない。
人によってはそれが微笑みだとは分からない程度のものだ。しかしミカサにも、そしてエレンにもそれは彼の精一杯の笑顔だということは見て明らかだった。
ミカサに続き遅れてエレンも彼らがいる入り口のほうへと歩み寄った。手にはミカサの荷物や上着を持ち彼女の帰り支度もついでに用意してやる。
「お疲れ様です、リヴァイさん」
エレンは父親の名前を呼んだ。ミカサからエレンへと視線を移し、「ああ」と表情を変えないままに頷く。
「今日も遅くまで悪かったな」
「いいえ、これがオレの仕事ですから。気にしないでください」
エレンは答えながらミカサに上着の袖に手を通す様に促す。その姿は父親であるリヴァイよりも手慣れた様子だった。腕を広げたミカサに合わせて上着を羽織らせ、そのままボタンまで留めてやった。
623 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:10:58.22 d
「遅くなるようなことがあれば事前に連絡を頂ければ夕飯くらいまでは面倒を見ますから。いつでも連絡してくださいね」
「ああ、いつも本当にすまないな。助かる」
エレンがいつも最後まで残ってミカサの相手をしていることはリヴァイも知っていた。この時間帯に残っているのは大抵エレンしかいない。
はじめはあまり話すこともなかったが、機会が増えれば自然と会話も増える。
しかもエレンは女性ではなく男性だったから余計に距離も縮まったのかもしれない。
子供を放っておいて仕事に行くなんて、という女性からの視点ではなく同じ男性として同情をしてくれるエレンにリヴァイはいくらか救われているのだというは話をリヴァイ本人から直接聞いたこともあった。
付き合いが深くなれば連絡先も交換をするし、対応に関しても贔屓とまではいかないが少し甘くもなってしまう。
リヴァイは仕事が終わってから急いで保育所までやって来てはくれるが、それでも最終の預かりの時間を過ぎてしまうことも何度かあった。
そういった時もエレンは文句も言わずにミカサの相手をしている。
事前にリヴァイから連絡を貰えば彼女と一緒に夕飯まで食べることさえもたまにあった。
本当は公私混同なんてしてはいけないことなのだが、エレンはリヴァイに対して甘かった。彼だけは特別だ。
ミカサだけではなく……――いや、ミカサがリヴァイの子供だからこそ彼女まで特別扱いしてしまう。
「寂しくなかったか?ミカサ」
上着を着せ終え鞄を背負ったミカサにリヴァイはエレンと同じ質問を問いかけた。差し出された大きな手を握り、ミカサは大きく頷いた。
「エレンがいたから大丈夫。お父さんが来るまでちゃんと待っていた」
624 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:11:42.47 d
「そうか。それならいい。いい子にしていたご褒美に今日はハンバーグでも食うか?」
「!!うん、お父さんと一緒に食べたい!!」
リヴァイの前ではミカサも一人の子供だ。
いくらエレンが好きだと言っていてもやはり態度は大きく違う。
ミカサが感情をここまで素直に表せるのはリヴァイの前だけだ。
二人の姿を見守りながらエレンは自然と笑みを浮かべている。
「それじゃあ、エレン。また明日」
「ええ、また明日。おやすみなさい」
「おやすみ、エレン。また明日」
ひらひらと小さく手を振るミカサに手を振り返しながらエレンは二人の姿を見送った。手を揺らしながら二人は寒空の下を歩いていく。
リヴァイの手を小さな手のひらで握っているミカサの姿にエレンはほっと胸を撫でおろした。
同時に抱くのはやはりミカサに対しての罪悪感だった。彼女の父親のことを父親として見ることをしていない。
一人の男として意識をしている。その為にミカサのことも多少なりとも利用していた。悪いとも思うしいけないことだともちろん自覚はしている。
でもそれを止められない自分がいることもまた事実だ。人として最悪だ、エレンは彼らの姿を見送る度に自分を蔑んだ。
幼いミカサは恐らく気付いてはいないはずだ。エレンが自分の父親のリヴァイに恋情を抱いていることを、まだ彼女は知らない。
エレンはゲイだ。
いつから、という明確な時期はない。中学に入学し、周囲の友人たちがグラビアアイドルの際どい写真やクラスメイトの可愛い子の噂話などで盛り上がっていたがエレンは大して興味がなかった。
しいていうなら隣のクラスの同級生が気になる程度だったが、それは女子ではなくて男子生徒だった。
625 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:12:18.74 d
その頃はただの憧れに似た感情だと思っていた。クラスは違ったが彼とは仲が良く、顔を合わせば話をするくらいだった。
彼はあまりよく喋るようなタイプの人間ではなかったが頭もよく誰に対しても優しかった。
自分にないものを沢山持っていたから憧れていたんだろうとはじめは思っていたが、実際は全く違った。
そのことに気が付いたのは二年目の夏休みが終わった後、彼に初めての彼女が出来てからだ。
突然心の中に出来た大きな空洞にエレンは驚き、その日はよく眠れなかったことを覚えている。
日が経つにつれてそれは「空虚」だということに気付き、自分が彼を必要以上に欲していたことに気が付いた。自分は彼に憧れていたんじゃない。
彼を欲していたんだ。その気持ちに気が付いてもどうすることも出来なかった。
だって自分は男であるし、彼も同じ男だ。当時のエレンの中ではその感情を同性に対して口にすることはいけないことだと思っていた。
――男が男を好きだなんて。
周囲の目はあまりいいものではない。だからエレンも容易に口にすることは出来なかったし、中学を卒業するまで結局自分の気持ちを彼に告げることはなかった。
その後もずっと好きになったのは男ばかりだ。初めて男の恋人が出来たのは高校に入学してからだったが、実際に触れ合ってみても思っていたほど嫌悪感を抱くことはなかった。
むしろさらに愛おしいと思う。友人たちが可愛い女性に欲情するように、エレンも好きになった男に同じように欲情をした。その頃辺りからだろうか。
周囲のことをそれほど気にすることがなくなったのは。さすがに自分の性癖を簡単に打ち明けることは出来なかったが、昔よりはまだマシだ。
自分は男が好きだ。男しか好きになれないとはっきりと受け入れてしまうとこれまで悩んでいたことが少し馬鹿らしくも思えた。
626 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:12:53.60 d
だからエレンは生まれてから一度も女性を抱いたことはない。
これから先も間違ってもそんな気は起らない。だから結婚もしないし子供を授かることもないだろう。
両親には申し訳ないと思うが自分の気持ちも変えられない。
でも子供は好きだったからなるべく彼らと接することが出来る職業に就きたいと思った。
そしてエレンは保育士を志し晴れてその夢を叶えることが出来て今に至っている。
やりがいのある仕事だし飽きも来ない。そして何よりも子供たちと過ごす毎日は楽しく、自分が後ろめたさを感じながら生きていることを忘れさせてくれた。
ちょうど社会人になってから恋人とは上手くいかないようになっていた。新しい恋人が出来て短い付き合いばかりだ。
そんなことを馬鹿みたいに何回も繰り返していくうちに、次第に付き合い自体が面倒になって身体だけの関係を重ねるようになっていた。
週末には夜に行きつけのバーに通ってその夜の相手を探すことだってあった。
体中が空っぽになって何をやっても満たされない。自分は一生このままなんだろうと思っていた。
そんな時だった。リヴァイがミカサを連れて保育所へやって来たのは。
小さな女の子の手を引いてやって来たその父親の姿に、エレンは目を奪われた。
「おはよう、エレン」
翌朝、いつものようにリヴァイはミカサの手を引いて保育所にやって来た。
入り口に立ってやって来た子供たちを出迎えていたエレンは二人の姿を見るや否や満面の笑みを浮かべる。
「おはようございます、リヴァイさん。それにミカサも」
にっこりと笑いながら彼女を見下ろすとミカサも嬉しそうに笑った。
滅多なことで笑わない子だったがエレンが相手をすると別だ。彼にだけは特別、彼女は笑うことが多い。
リヴァイ曰く、自分と一緒に家にいる時よりもエレンといる時のほうがいい笑顔をしているらしい。
627 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:13:34.30 d
「おはよう、エレン」
「だからエレン先生だって。あと『おはよう』じゃなくて『おはようございます』だろ?ほら、ちゃんと言って」
昨日は許してくれたが今朝はそうはいかなかった。
ちゃんと言えるまでここを通さないと仁王立ちをして立ちふさがる。腕を組んでわざと怖い顔をするエレンに、さすがのミカサも怖気づいてしまう。
「う」と声を漏らして思わずリヴァイの手を強く握った。
「どうしよう」とリヴァイに助けを求めたが彼もエレンと同じような顔をしていた。残念ながらミカサを助けることはなくただ首を振るだけだ。
「……おはようございます。エレン、先生。」
「よし、えらいぞ。よく出来ました」
渋々彼女は言う通りにはしたが、またすぐに「エレン」と呼ぶのだろう。不貞腐れる彼女の頭に手を置き、ぽんぽんと軽く叩いて褒めてやる。
するとすぐにまた表情を明るくし、機嫌を良くした。
よくよく見ればミカサの鼻先はや頬は少し赤くなっていた。
寒そうにマフラーに顔を埋めているし、昨日はつけていなかった白い耳当てまで付けている。これは多分リヴァイに付けられたんだろう。
昨日に比べれば確かに今朝は冷えていた。夜中に雨が降ったおかげで濡れたコンクリートが冷えて一部は凍って滑りやすくなっている場所もある。
「今日は寒いな。早く中に入って温かくしろよ?」
部屋の中は朝からストーブをつけているので暖かいはずだ。
これ以上ここにいると風邪を引いてしまうかもしれない。頭に置いた手をもう一度ぽんとまた一つ叩いた。エレンの言葉にミカサは素直に頷く。
「お父さん、行ってくるね」
と、リヴァイと繋いでいた手を呆気なく手放して、入り口まで走っていってしまった。
最後に建物に入る前に一度二人のほうを振り向き、「お父さんいってらっしゃい」とだけ言うとミカサはすぐに中に引っ込んでしまう。
ミカサぐらいの年の子でもまだ母親から離れられない子供も中にはいる。
ここまで手を引かれてやって来てもいざ保育所の中に入ろうとすると・嫌がって泣いてしまう光景を目にするのは割と日常茶飯事のことだ。
ミカサはそういったことは滅多にない。あの歳でもういくつかのことはしっかりと割り切っているようで、リヴァイと離れることもあまり寂しがっている様子を見せたことはなかった。
628 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:14:04.74 d
今朝のリヴァイは黒いコートを羽織っていた。
それと同色の手袋をしながらミカサと同じようにマフラーに顔を埋めている。恐らくミカサもああやって寒さをしのいでいたのは、リヴァイの格好を真似ているからだろう。
親子で似た仕草をしている彼らを微笑ましく思い口元が緩んでしまう。
「偉いのはお前のほうだろう。よくもまあチビをあんな簡単に手なずけるな」
リヴァイは感心した様子で息をつく。吐き出した吐息は白くふわりと舞った。
「それが仕事ですから。でもミカサはすごく楽なほうですよ。ちゃんと良い子にしてくれますから」
「……そうか、ならよかった」
ほっ、としたのだろう。瞬間、表情を綻ばせたリヴァイにエレンは目ざとく気が付いてしまった。
「あ、」と思った時にはもう遅かった。彼の表情から目を離すことが出来なくなってしまう。
綺麗だ、と思ってしまった。男なのに。いや、男だからそう思ってしまうんだろう。
目じりに少し皺を浮かべて笑ったリヴァイは父親の顔をしているのに。自分だけが彼だけを「そういう対象」で見つめてしまっている。
「どうした?」
あまりにも食い入るように見つめていたエレンにリヴァイは少し怪訝そうに眉を潜ませていた。
エレンは慌てて首を振り「な、なんでもありません」としどろもどろになりながら答える。
しかしリヴァイの視線は外れることはなかった。むしろその眼差しはきつくなり、エレンに突き刺さるように鋭いものになっていく。
629 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/02(土) 21:14:19.99 0
問屋で布買ってきたからバッグ作るで
630 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:14:31.89 d
そして何を思ったのか、リヴァイは唐突にエレンへ向けて手を伸ばしてきた。
手袋をしたままの黒い手がずい、と急に近づいてくる。
「うわっ、」
思わずエレンは声をあげて目を閉じる。殴られる、と咄嗟に身構えたがそんなことはなかった。
むしろ感じられたのは柔らかくて温かな感触だった。但し布越しではあったが。
しかしリヴァイの手のひらの温もりであったり、ある程度の感触はなんとなくそれでも伝わってくる。
エレンの前髪を少しあげてリヴァイは彼の額に自分の手を置いていた。
「熱があるってわけでもないみたいだな」
「あ、ありませんよ、そんなの!!」
少し声を荒げながらリヴァイの手をエレンは振り払った。
エレンの心臓はばくばくと五月蠅い。それを服の上からぎゅっと押さえつけるように左胸を押さえながらとりあえず落ち着こうと何度も大きく深呼吸を繰り返す。
「顔が赤いからてっきり熱があるのかと思ったんだが……」「違いますよ、大丈夫です。体調が悪かったらそもそもここにはいませんから」
幸いなことにリヴァイは挙動不審なエレンの様子をおかしなものだとは思ってはいないようだ。
離された手は再びエレンの元へと伸びることはなく大人しくリヴァイのコートのポケットの中へと戻される。
気遣われたのは嬉しいが気付いてくれないのはやはり少し寂しいと思う。こんな気持ちは自分の我儘だ。
「お前がいなかったら寂しいな」
「え?」
自分勝手な感情だと思っているから、ある程度は抑制しなければいけないとも思っていた。
なるべくそれを抑え込んで表に出てこないように押し殺してしまおうと、そう考えているのにこの男はその意図をこうやっていとも簡単に壊していく。
631 :
名無し草 (ワッチョイ afa2-EVjd)
2016/04/02(土) 21:14:59.99 0
ヒロアカアニメ作画良さげやな
覇権くるやろか
632 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:15:23.58 d
「そりゃあミカサは寂しがるでしょうね。オレによく懐いていますから」
「まあ、そうだな。あいつもそう思うだろうしそれに俺も寂しいと思うんだがな」
ほら、そうやってまた好き勝手に振り回して。こちらがどんな気持ちを抱いているかなんて知らない癖に。
毎晩貴方のことを思ってベッドに寝転がった後に、どんなことをしているかなんてことも、全部、全部知らない癖によくもまあそういうことを言うものだ。
呆れるところではあるが、リヴァイを手前にした以上浮かび上がっている感情はやはり彼への好意とこれからの関係の期待だった。
しかしいずれの感情にせよ、愛情は結ばれることはないし関係が発展しないことなんて目に見えて分かっているのだが。
「冗談言わないで下さいよ。オレに会わなかったら寂しいだなんて」
本気にしてしまいたくない。
いちいち真に捉えていたら自分の身も心も持たないなんてことはよく分かっている。分かっているのだが頭はそうはいかなかった。
「冗談なんかじゃない」
リヴァイはエレンが目の前でここまで葛藤を繰り広げていることを知らない。
素知らぬふりをしているようにも見える彼の顔が憎らしくも思えてきた。
もしも自分の気持ちが、今の瞬間にすべて伝わってしまったらリヴァイは軽蔑するだろうか。
綺麗な彼の顔がぐちゃぐちゃに歪んで、もう自分のほうを見てはくれなくなるかもしれない。
「お前がいると落ち着くんだよ。それにミカサのことも色々と任せられる……ここで一番安心して頼れるのはお前なんだよ、エレン」
頭の中で何かが崩れていく。自分が必死になって隠そうとしていた感情が身体の中から溢れ出して止められない。
胸が苦しい。息もまともにできなくて、また熱があるわけでもないのに顔中が熱くなって頬が赤らんでくる。
633 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:15:56.68 d
「お前はミカサだけじゃなくて俺の話もよく聞いてくれるからな。助かっているんだ、お前がいると。癒し系ってやつだな」
「っ、……それ、褒めてますか?」
「褒めているだろう?嫌っていうくらいに」
リヴァイは肩を竦めて首を傾げる。なんて性質の悪い人なんだろうか。これを無自覚で行っているのだから怖い。
前の奥さんも自分と同じようにこうやって彼の無自覚に惹かれて好きになったんだろうか。はああ、とエレンは大きくため息をついて頭を抱えていた。
リヴァイはエレンを気にすることなく、腕時計で時間を確認している。そういえば今日はいつもよりも長話をしているが仕事には間に合うのだろうか。
帰りが遅い分リヴァイとミカサは時間に余裕を持ってやってくる。エレンが門の前で出迎えれば今のように少し話をしてから出社することもあるが、今日はそれがやけに長いように感じた。
「それじゃあ、今日もミカサをよろしく」
やはりタイムリミットは来てしまったらしい。残念だがここまでだ。これ以上心臓を押し潰されなくても済むと分かり、エレンは胸を撫でおろした。
「分かりました。気を付けて、こちらは気にしないでください」
顔を引き締めたエレンがにっこりと笑うとリヴァイは眉尻をほんの少し下げて、申し訳なさそうに頭を下げる。
「ミカサのことは気にしなくていい」という意味合いと「迎えの時間も気にしなくてもいい」という意味はしっかりとリヴァイに伝わっていたらしい。
どうせ今日もエレンが最後まで残るのだ。ミカサの面倒はいつも通り見てやるつもりだし、リヴァイのこともずっと待ち続けているつもりだ。自分だってもう一度、リヴァイと会いたいのだから。
「何かあったら連絡ください、大丈夫ですから。ほら、早く行かないと遅刻しちゃいますよ?」
先ほどのミカサと同じようにリヴァイの肩も押してやる。
鞄を持ち直しリヴァイはマフラーで口元を隠しながら双瞳に弧を描いた。どきり、とまたエレンの心は乱される。
「ああ、分かってる」
片手を軽く上げて駅までリヴァイは歩き出した。その歩みはどこか早足ですぐに彼の姿は小さくなっていく。
エレンは昨日と同じようにリヴァイの姿が見えなくなるまで、ずっと見守っていた。寒さのせいではなく赤くなってしまった頬を隠さないままに。
634 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:16:58.71 d
リヴァイと顔を合わせたのは次の月曜日だった。
「おはよう、エレン」
「おはようございます」
なんとなく気まずくて目を逸らしそうにもなる。無理矢理浮かべた笑顔がぎこちない。しかし首を傾げたのはミカサだけでリヴァイは特に気にしている様子もなかった。
「今日も寒いな」
「ええ、本当に」
白い息を吐きながら思わず空を仰ぐ。冷え切った空気と分厚い雲が流れる空に嫌でも冬の気配を感じてしまう。
今日はもしかしたら雪が降るかもしれない。朝の天気予報ではそんなことも言っていた。リヴァイの格好は普段と変わりはなかった。マフラーを首元に巻いて口元は少し隠れている。
「風邪を引くなよ」
「大丈夫ですよ、オレそういうのは強いほうなんで」
ミカサの背を押し先に教室へ入るように促した。先に来ていた他の子供たちと一緒に彼女はリヴァイに手を振り歩いていく。
ポケットから手を出して控えめに振り返すリヴァイの姿に自然と笑みが零れる。彼のこういう姿がエレンは好きだった。
「お前に風邪なんて引かれたら困るからな」
「そんな大げさな。大丈夫ですよ、ミカサは他の先生にもよく懐いていますから」
「あいつじゃない。俺が困るんだ」
そして向けられた瞳はミカサを見つめていたものとは変わっていなかった。穏やかで優しい、父親の目をしている。
しかしエレンの瞳にはそうは映ってはいない。どきりと心臓が一つ高鳴った。それを誤魔化す様に咳払いをした。
「おいおい、大丈夫じゃなかったのか?」
635 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:17:09.33 d
わざとらしく呆れたふりをするリヴァイが意地悪い。エレンは思わず彼を睨んでしまった。「これは違いますよ、たまたまですから」とすぐに言い訳をしたが彼はあまり信用している様子はなかった。
「しっかりしてくれよ。お前がいないと、調子が狂うんだ。話し相手がいないと寂しいだろう?」
「それは……まあ、そうですけれども」
別によりにもよって自分じゃなくてもいいだろう。そういうことを言う相手は。
今日もリヴァイに調子を狂わされる。はあ、と大きく息をついた後エレンは冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んだ。これで少しは気分が落ち着けばいいのだが一向にその気配はない。
「……オレも、リヴァイさんがいなかったら寂しいんで。風邪なんて引かないでくださいよ」
便乗して気持ちを伝えるとリヴァイは「俺のほうこそ大丈夫だ」と言って肩を竦めて笑う。
「俺が倒れたらミカサの面倒を誰が見るんだ?」
「その時はもちろんオレが、」
そこまで口にして慌ててエレンは口を閉じた。厚かましい態度を取ってしまった自分を彼は恥じる。羞恥で顔が赤くなってしまい、それを隠す様にエレンは俯いた。
「何もそこまでしなくたっていいんだぞ。自分のプライベートくらい大事にしろ」
リヴァイも気に障ったのだろうか。心なしか口調が強くなって叱られている心持になる。
636 :
名無し草 (ワッチョイ 371c-G+K4)
2016/04/02(土) 21:17:20.13 0
わいもジェルと海行ってくる
豊満なビキニ姿見せるの恥ずかしいは///
637 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:17:45.51 d
「……でも、」
「本当に大丈夫だ。絶対にそんなことはないから」
ちらりと視線を上げるとリヴァイはマフラーを上げて口元を隠していた。
「……でも、何かあったら連絡してくださいね」
「ああ、『何か』あったらな」
言葉を強調するリヴァイにエレンは眉尻を下げる。
きっとリヴァイが言うのだからその「何か」はエレンの元に訪れることはないのだろう。
安堵しながらも自分を頼ってはくれないのか、と寂しさも感じてしまう。
何も起こらないことがもちろん一番なのだが、「何か」が起こって自分だけを頼って欲しいのに。
今でもリヴァイはエレンを頼ってくれているとは思うがそれ以上に、彼に必要とされたい。気持ちが報われないのならそれ程度の欲求は満たされてもいいはずだ。
今日は随分と時間があるようだ。リヴァイはまだ足を駅のほうへと向けようとはしない。エレンは自分の腕時計に目を落とした。
デジタル時計が表示している時間はそこまで悠長に構えていられる程の時間ではないように思える。
「いいんだ。今日は少しのんびりできるから」
エレンに聞かれる前にリヴァイは彼の抱いた疑問の答えを提示した。
「そうなんですか?」
「たまにはこういう日もあるんだよ」
「それならもっと家でくつろいでから来てもいいんですよ?」
一応、園内では登校の時間帯というのは決まっている。
でも場合によってはその時間を過ぎての登校も認められているし、リヴァイとミカサにも何度かそういったことはあった。
ミカサだって出来る限りリヴァイと一緒に過ごしていたいと思っているはずだ。しかしリヴァイは首を振った。
「あまりだらだらしていると仕事に行く気が失せるからな」
「あー……それは分かります」
エレンにもその気持ちはよくわかる。ぎりぎりの時間まで布団の中にいると起きる気力がなくなってしまうのはよくあることだ。
だから彼も極力早めに起きて無理矢理身体を起こすタイプだった。どうやらリヴァイも同じらしい。
638 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:18:17.16 d
「それに今日はお前にも言いたいことがあったからな」
「は?」
素っ頓狂な声をあげてエレンは目を丸くした。
「再来週の土曜日、空いているか?」
瞬間、真っ白になった頭を強引に動かした。
週末に一緒に過ごす相手なんて元からいない。わざわざスケジュールの確認なんてすることもなかった。
「えっと、空いています」
リヴァイの双瞳が柔らかく弧を描く。そんな些細な表情の変化にどきりとしてしまう。
「なら一緒に出掛けないか?ミカサが遊園地に行きたがっているんだ」
「もちろん構いませんが……その、オレも一緒でいいんですか?」
「ああ、お前と一緒がいいんだと」
リヴァイは少し困った様子にも見えた。もしかしたら珍しく駄々でもこねられたのか。
あまりそういったミカサの姿は考えられなかった。
断る理由なんてなかった。エレンは大きく頷いて笑って見せる。
ミカサを預かる以外の理由でリヴァイから声を掛けてもらったのはこれが初めてだ。しかも休みの日に彼と会える。これが嬉しくないわけがない。
「それじゃあまた詳細は連絡する。付き合わせて悪いな、イェーガー先生」
「ッ、いえ。そんなことは……大丈夫ですから、」
こんな時に呼び方を変えるなんてずるい。動揺して口ごもってしまう。
駅に向かい立ち去ってしまったリヴァイの後ろ姿をエレンは見ることが出来なかった。
どきどきと心臓が五月蠅い。彼と一緒にいるといつもこんな調子だ。
ここまで心臓が早く動きっぱなしだったら、きっと自分は早死にしてしまうんじゃないんだろうか。
それよりも再来週はどんな服を着ていけばいいのだろう。
とりあえずミカサに会ったら他の子に言わないように口止めしないと。頭の中はぐちゃぐちゃになって混乱している。
リヴァイがいなくなった後も、他の園児たちが登校していたはずだったのだがそれ以降の記憶はあまり鮮明に残ることはなかった。
639 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:18:49.28 d
*****
二週間後の土曜日なんてすぐにやって来てしまった。
迎えの時には一切その話題は出さなかったが、夜になってリヴァイから連絡が来た。
「土曜日の朝に家まで迎えに行く」とだけ簡潔に書かれた文面をエレンは何度も読み返してしまった。
日が変わっても夢じゃないのかと思いながらリヴァイとのトーク画面を開いて確認をする。
カレンダーに赤い丸まで付けてしまい、それを目にするたびに頬が緩んで仕方がなかった。
リヴァイにはやはり自分の気持ちはバレてしまっているのだろうか。でも好かれていると分かっていたらむしろ誘われなんてしなかっただろう。
リヴァイは決して男が好きだというわけじゃない。ただ娘のミカサが自分を好いているから誘っただけでそれ以上の意味はない。トーク画面やカレンダーを目にするたびに浮かれてしまう自分に対してエレンは何度もそう言い聞かせた。
そうだ、これはただのデートなんかじゃない。
ただの友人としての誘いだ。たったそれだけのこと。関係なんてものは何も進展はしないに決まっている。
「どうしたんだ?エレン」
煙草を吸いながらぼんやりとしているエレンに男が声を掛けた。彼はまだベッドの中だ。
シャワーを浴びた後も汚れたシーツの中に戻ってだらだらと寝転がっている。エレンはその男の隣に並んでピロートークをするつもりにはなれなかった。椅子に腰掛けてだらしがない彼の様子を眺めていた。
「いや、別に」
冷たく言い放ちフィルターを噛みしめる。この前の週末にバーで出会った彼とは連絡先を交換していた。
これが二度目の逢瀬だ。明日はリヴァイとの約束の日だったが、その前に無性に人肌が恋しくなってしまって彼を呼んでしまった。
彼との相性は特別悪くはない。どちらかといえば良いほうだが完璧という程でもない。溺れない程度に良い。
それくらいの相性のほうが身体だけの関係を続けるにはちょうどよかった。
640 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:19:45.72 d
彼の左手の薬指に指輪が嵌められていることに気付いたのは今日が初めてだった。
確か初めて出会った時には付けていなかったはずだ。
恐らくエレンがそこまで深い付き合いを求めてはいないと分かったから、開き直って堂々と既婚者であることを曝け出しているのだろう。
「一つ聞いてもいいか?」
「どうぞ?」
男はベッドの中で両手を広げる。このまま飛び込んできても構わないと言っているようだったが、エレンはその誘いには乗らなかった。
短くなった煙草を灰皿に押し付けながら口の中に残った紫煙をエレンは吐き出す。
「奥さんには言っているのか?バイだってこと」
男にとってエレンの質問は予想外だったらしい。ハトが豆鉄砲を食らったような顔を浮かべた。
広げた両手を下ろし彼は顎をこすった。
「言っていないよ。言えるわけがないじゃないか」
「一度も?」
「もちろん。俺は女だけじゃなくて男も好きだなんて言えないよ、彼女を愛しているんだから」
よくもまあ平気で浮気なんてしておいて「愛している」なんてさらりと言えたものだ。
呆れ果てるエレンに男は小さく笑った。悪びれる様子なんて全く見られない。
「大切に思っているんだ。彼女のことも、それに子供のことも。家庭は崩したくはない。でも結婚してからセックスレスになってね。だからこうやって火遊びしているってわけさ」
「……最低だな、アンタ」
思わず本音を呟いてしまった。女ではなくて男を選ぶ理由はエレンでもわかる。男なら妊娠しない。
それに仲良くしていてもまさかセックスをしているなんてまずは思われない。彼のような既婚者であれば尚更だ。
仕事先で出会った友人だとでも誤魔化していれば彼の奥さんは浮気だとは思わない。
男は怒らなかった。反省はしていないが、それくらいの自覚はあるようだ。カラカラを笑いながら「そうだな」と頷いていた。
「でも君だって同じようなものだろう?本命がいるのに俺を利用するなんて」
うっかり片思いの相手がいることを話さなければよかった。
それにこんなやつと同類なんて思われたくはない。舌打ちを一つして顰め面を浮かべたが、エレンは言葉で否定をすることが出来なかった。
641 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:20:22.22 d
「悪い男だと思うか?」
上目遣いで彼を見上げる。自分よりも体格がいい男はこうされることが好きだというのはエレンの経験上分かっていることだ。
彼もそうだった。甘えているのだと勘違いをして気を良くしている。顔を近づけられてもエレンは拒まなかった。
瞼を閉じて彼からの口づけを受ける。舌を差し込んだ後、すぐに引っ込めて唇を開けば男の舌が口内にねじ込まれた。音を立てて舌を絡ませながらエレンは男の首に腕を回す。
体勢を変えて自分の身体の上に跨ってきた男の単純さにキスをしながら呆れてしまった。
「いや?むしろ魅力的だね、君のような男は」
キスを終えて男はエレンの顔の間近で厭らしく笑った。色っぽさなんて感じない。
ときめきなんて微塵も感じていなかったがエレンは不敵に笑って男の襟足を指先で触れた。
再び自分の身体に触れてくる大きな手のひらに身体を捩りながらエレンは快楽に身を任せようと瞼を閉じる。
浮かんでくるのはどうしてもリヴァイのことだ。行為中忘れようとしても彼の顔や声が浮かんできてしまう。
もしも男の手のひらが彼のものだったら。聞こえる息遣いがリヴァイのものだったら、そんな妄想の中にエレンは自分の意識を沈めた。
「ッ、」
思わず口にしそうになるリヴァイの名前を飲み込んでエレンは唇を噛みしめる。
それが快感を堪えている姿だと思った男はこちらを見上げながら、下半身に顔を埋める。
「はっ……アッ、」
わざとらしく立てられる水音を聞きながらエレンはリヴァイのことを考えてしまっていた。
男は自分と同じようにはならないのだろうか。エレンのペニスを舐めながら自分の妻のことを考えることはないのか。
子供への罪悪感だとか、そういうものは抱いたりしないのか。身体を捩りながらエレンは手を伸ばし、男の頭を押さえつける。
こちらを見上げた男にわざと吐息を荒げながら「もっと」と呟けば彼は喜んでいた。
642 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:20:39.10 d
男はなんて単純な生き物なんだろうか――自分を含めてだが。
エレンは呆れながらもわざとらしく声をあげて善がって見せた。こういう時くらい楽しまないと。
「んっ、あっ……なあ、もっと……もっと強くしろよ」
年下の癖に生意気だと言われかねないが彼は別だ。
煽るような言い方をしたほうが彼は燃えるらしい。
お望みだといわんばかりにきつく吸い上げ、根元を擦る彼の愛撫にエレンはまた甲高い声をあげてシーツを掴む。
同類だとは言っていたがやはり彼は自分とは違った人間のようにしか思えなかった。
自分は彼のことだけを見つめることが出来ない。セックスにだって集中出来やしない。
どれだけ愛されてもその向こうにいるリヴァイのことしかエレンは考えられなかった。
歪む視界の向こうで自分を見下ろすリヴァイを想像しながらエレンは男の口の中で果てた。
643 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/02(土) 21:21:57.94 0
644 :
名無し草 (ワッチョイ 07b9-G+K4)
2016/04/02(土) 21:22:46.84 0
645 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-rDjd)
2016/04/02(土) 21:25:38.66 0
>>644 ユザワヤじゃ足りんくて問屋街行ったは
レジにリリの絵書いてあってわいドキドキや
646 :
名無し草 (ワッチョイ c3c8-pU0W)
2016/04/02(土) 21:25:43.57 0
京はやしやの抹茶わらび餅うますぎる><*
647 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:33:37.05 d
「ファーランさん、いつもご苦労様」
「いえいえ! また何かあればご連絡ください」
顔なじみの美人受付嬢に労いの言葉をかけられ、笑顔で有名企業のオフィスを出た。
オフィス向けプリンターや複合機のメーカーの修理担当として、様々なオフィスに呼ばれるのが俺の仕事だ。
たまに変な客にあたったり、客の都合で深夜残業になったりすることもある。
それでも、平均的な給料がもらえて、週休2日。上司や同僚も気の良い奴が多い。
手先が器用で笑顔が爽やか(と自分では思っている)俺には、ぴったりの仕事だと思う。
「もしもし、主任ですか? 今、ESネットさんの修理終わりました。この後は……えぇ、はい。明日は直行で壁外出版さんの定期点検で……本当ですか? じゃあお言葉に甘えて! お疲れ様です!」
オフィスビルの入り口から少し逸れた場所で上司に終了の報告をすると、明日は得意先に直行と言うこともあり、機材を乗せた社用車でそのまま直帰して良いというお許しを得た。
まだ夕方の5時。車を家に置いて飲みに行くか……。
スマートフォンを胸ポケットに入れて、ウキウキ気分で駐車場へ向かおうとした時だった。
648 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:33:57.13 d
「おい、お前……?」
「え? あ……!」
呼びとめられて振り返ると、背が低く、目つきが鋭い、襟足を奇麗に刈り上げたスーツ姿の男が立っていて驚いた。
相手も驚いていた。
「ファーランか?」
「リヴァイ!」
こんなことを言うと頭がおかしいんじゃないかと言われそうだが……
前世の仲間と再会した。
俺には前世の記憶がある。中世のヨーロッパ風の世界で、なぜか人を襲う巨人がいるというファンタジックな前世だ。
俺もその巨人に食われて死んだ。
……と言っても、巨人と戦ったのは死ぬ直前だけで、記憶のほとんどはスラム街のような場所でゴロツキをしていたことばかりだ。明日はどうなるか解らない、必死に生きる毎日。盗みや詐欺は何度したかわからない。
あまり良い記憶ではないが、前世に比べると今はなんと幸せなんだ、と現状に感謝できる。それに、頼もしい仲間に出会ってからは前世の暮らしも悪くなかった。
その仲間というのが、リヴァイだ。
「再会を祝して!」
「乾杯」
再会してから一時間後、俺は社用車を自宅近くの駐車場に置いて、リヴァイは一度オフィスに寄って仕事を済ませ、サーラリーマン御用達の半個室のチェーン店居酒屋でビールのジョッキをぶつけあった。
「あそこで会ったってことは、勤め先はESネットか?」
「あぁ……よろしくお願いします」
「ちょうだい致します」
サーラリーマンらしく名刺を差し出され、俺からも名刺を渡す。前世のリヴァイのことを考えるとおかしくて仕方がない。
649 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:34:52.08 d
「おー! すげぇ重役!」
渡された名刺は、今をトキメク国内……いや、世界最大手のショッピングサイトを運営するESネットの常務取締役の名刺だった。給料良いんだろうな……今日はこいつにおごらせよう。
「お前こそ、このメーカーなら安定していていいじゃねぇか。それに俺はESの社長に学生時代からついていただけだ。そうだ、社長はお前も知っている奴だぞ」
「俺が? 前世の知り合いってことか?」
「あぁ」
リヴァイは前世と同じ独特の持ち方でビールを煽り、妙に楽しそうに口の端を上げた。
ESネットの社長……あまりメディアに出ないが、確かESはイニシャル……ん? まさか。
「エルヴィン・スミス……?」
「そうだ」
「はぁぁぁぁ? お前、あいつと仲良いのかよ!?」
エルヴィン・スミスといえば、前世では敵……というと語弊があるが、仲間では無かったはずだ。それがなぜだ?
「お前が死んだ後、色々あったんだ。あいつは常人には考え付かないことを考えるやつだ。仲が良いというよりも、信頼に足る面白い奴だ」
「俺が死ぬ直前のリヴァイとは全然違う……大丈夫か? 俺がいなくなったからって騙されたんじゃないのか? その色々あった部分を教えろよ」
「あぁ、そうだな……あれからなかなか面白いことが多かった。当時はクソみてぇだと思っていたが……」
それから2時間ほど、4杯のビールと枝豆、たこわさ、刺身盛り合わせ、焼き鳥盛り合わせ、串カツ盛り合わせ、ピザを消費しながら俺が死んだあとの世界の話を聞いた。
話の内容にも驚いたが、リヴァイがよく食べるようになっていたのにも驚いた。
650 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:35:19.35 d
「そうか……そんなことが。まさか巨人の正体が……」
「あぁ。俺の理解の範疇を超えていたから、説明も上手く出来ていない部分もあると思うが……だいたいはこんな感じだったな」
「そんな面白いことになっていたなら、もう少し生きていたかったな」
「……すまないファーラン。あの時、俺が選択を間違えなければお前もイザベルも死なずにすんだ」
それまで、前世と変わらず表情は堅いながらも楽しそうに話していたリヴァイが、急に声のトーンを落とす。
「おいおいおいおい! 何言ってんだリヴァイ! あの時、お前があの選択をしてくれて俺は嬉しかったんだ。あの計画は、俺が一番乗り気で、リヴァイは俺に合わせてくれているだけだと思っていた。
でも、あの時お前が自分で選択して向かってくれたから……まぁ、悪くない最後だったぞ?」
「ファーラン……」
「ほら、そんなことよりもっと楽しい話題ないのか? そうだ! 俺が死んだあと、恋人とかできたのか?」
俺もリヴァイも、この世界ではもう平和で幸せなんだ。前世のことは引きずって欲しくない……そう思って茶化すように話題を変えた。内心、リヴァイに恋人はできていないだろうと思いながら。
「あぁ、できた」
「ふへ!?」
思わず変な声が出た。
651 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:35:31.93 d
恋人ができた?
いや、リヴァイはモテる。モテていた。しかし、好意に応えることはなかったし、潔癖症のリヴァイは女遊びをするようなことも無かった。それが……恋人?
「リヴァイが落ちるなんて……俺が知っている子か? どんな子だ? 美人か?」
「お前は知ねぇ奴だ。そうだな……15歳くらい年下で、目がでかくて小顔で、周りは美人系だと言っていたが、俺は可愛いと思う。悔しいが背は俺よりも高くてスラっと手足が長い……スタイルが良いと言えばいいか」
なんだそれ、羨ましい。
「おい、男の理想みたいな子だな。どこで出会ったんだよ? 名前は?」
「調査兵団の部下だ。名前はエレン」
「エレンちゃんか……あぁ、そんな出会いがあるならもっと必死に生き残ればよかった!」
「ちなみにエレンは性格も良いし、家事能力も高い。掃除は俺が今まで会った中で一番上手くなった……かなり仕込んだがな」
あの淡白なリヴァイが、聞いてもいないのにそんな事を語り出すなんて。
目は据わっているが口元がこんなにゆるむなんて。
「エレンちゃん、完璧すぎるな……リヴァイが落ちたのも解る気がする。それで? そのエレンちゃんとは結婚したのか? 子どもは?」
「いや、あんな時代だ。結婚なんてできなかった。……そもそも二人とも男だからな。当時の制度では結婚できねぇし、子どももできねぇ」
「そうか。大変……ん?」
ん?
……ん?
「男?」
「あぁ」
「エレンちゃんが、男?」
「あぁ」
「お前、ゲイだったのか? まさか、俺のケツも狙ってたのか!?」
「エレン以外のケツに興味ねぇよ。ましてや友達のケツなんて狙うかよ」
「友達……」
いろんな衝撃がその一言でどこかへ行った。
そうか、リヴァイは俺のことを“友達”と思ってくれていたのか。
「なんだ? 急にニヤけて」
「いや、そうかそうか……」
一緒につるんではいたが、利害関係の一致する仲間程度に考えているんだろうなと思っていた。それが“友達”という単語がリヴァイの口から出るなんて嬉しくてたまらない。俺はそこまで信頼されていたのか。
652 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:36:27.84 d
リヴァイに恋人がいたことも、その恋人が男だったことも衝撃だが、それ以上の衝撃で、嬉しくて、ついついビールが進んだ。
「で、そのエレンちゃんとは再会したのか?」
「あぁ、半年ほど前に再会して、先週から同棲を始めたところだ」
5杯目のジョッキを空にしたリヴァイの頬が少し赤い。現世でも幸せなのか。安心した。
「……だが、リヴァイ、お前今何歳だ? 15歳年下に手を出したら犯罪だろ?」
「安心しろ。現代では俺が今32歳、エレンは7歳年下の25歳だ。来週の水曜で26歳になる。いくら手を出してもかまわねぇ」
思えば、俺もリヴァイもこの時点でかなり酔いが回っていたんだ。
「手、出してるんだな?」
「あぁ。当然だろう? 再会したのはゲイバーだったんだが、会ってその日に手を出した。あいつに記憶はなかったが、イイ場所も変わっていなくてな……
前世の記憶を頼りに快感だけを与えまくってやった。セックスでメロメロにしてからゆっくり口説いているうちに、エレンも記憶を思い出して……今は前世のように恋人同士として、平和に仲良く暮らしている」
「おぉ! 体で惚れさせたってことか。男として尊敬するな。後学のためにそのテク伝授して欲しいくらいだ」
そして俺からソッチの話を振った。
煽った。
煽ってしまった。
「お前は器用だから俺が教えなくても大丈夫だろう? それに俺のテクはエレン専用だ。エレン以外の前立腺の場所なんて検討もつかねぇ」
「前立腺か。聞いたことあるな。風俗でもソウイウサービスしてくれる子、いるらしいし」
「エレンの前立腺は指で言うとこの辺りまで埋めて第一関節をこう…これで3〜4回押し上げてやればガン勃ちでガマン汁漏らすくらいにはなるな」
ジョッキの水滴で濡れた指をリヴァイがクイっと曲げる。ただ指を曲げただけなのに妙に卑猥だ。
「マジか……俺、最近自分で擦っても勃つのが遅くなってきて…前立腺調べてみるかな」
「あぁ、いいかもしれねぇな。だが、ゆっくり開発していかないと、なかなか快感は拾えねぇから焦るなよ?」
「わかった。でも、指はともかくチンコ入れるのは勘弁だな。つーか、リヴァイのチンコが入るケツ穴があるのに驚きだ」
着替えや水浴び、怪我の治療の時に見たリヴァイのモノは、男としては羨ましい長さと太さだった。
653 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:36:41.57 d
そう、先程から摘まんでいるこの極太茄子の丸ごと浅漬けと同じくらい太い。
「慣らせば入るもんだ。エレンの孔も何もない時はキレイに締まっているが、柔らかくほぐせばこのオニオンリングの外周くらいに広がって上手に咥えこみやがる」
……よし、このオニオンリングと茄子の残りはリヴァイに食ってもらおう。
そんな事を考えていると、不意にスマホが鳴った。LINEの音声通話の着信音だ。
「……悪い、俺の方だ。出ていいか?」
「あ、あぁ」
そうか。リヴァイもスマホを持って、LINEを活用するのか……!
しかも、キノコのマークで有名な人気機種の最新型。
前世ではどちらかと言うとあまり物を持たず、流行りものには疎かったから意外というか、おもしろいというか、変わったなというか何というか……。
「どうしたエレン? あぁ、大丈夫だ。そう聞いていたから今、外で飯を食っている」
電話の相手はエレンちゃんか。
7歳年下のかわいくてスタイルが良くて、ケツの穴がオニオンリングの外周くらい広がるエレンちゃんか。そうか。
「昔の友達と偶然再会して……そうだ。前に話したファーランだ」
ん? リヴァイの奴、エレンちゃんにも俺のことをちゃんと友達って……しかも以前に話していたなんて……そうか、俺そんなにリヴァイに……照れるな。
「あぁ、体調に気をつけてがんばれ。アルミンにも無理はするなと釘をさしておけよ」
エレンちゃんはまだ仕事中か? 25歳って言っていたし、リヴァイが好きになるくらいだからきっとやる気のある元気な子なんだろうな。
ビールをちびちび減らしながらスマホの先のエレンちゃんを想像していると、不意にリヴァイの頬の赤みが増す。
「あぁ、声が聞けて良かった。今日もお前の声は悪くねぇな」
はい、出ました。
654 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:37:16.29 d
リヴァイの「悪くない」!
これはイコール「好き」「大好き」「最高」だ。しかも、声が聞けて良かった? リヴァイはこんな甘いことを言う奴だったか?
エロい下ネタはクソネタの延長で言いそうな気もしたが……おいおいおいおい、エレンちゃんはリヴァイにこんなことを言わせるほどかわいいのか????
「待たせたな。話していたエレンからだ。仕事で遅くなるらしく……なんだ?」
「いや、なんでも」
思わず緩みまくる頬を無理やり引き締めて、首を振った。
「そうだ、エレンちゃんは何をしている子なんだ? 会社員か?」
「あぁ。会社勤めだ。最近、エレンの友人が立ち上げた会社が忙しいらしく、そっちに転職したところで……あぁ、このスマホを作っている会社だ」
「は? これ、今一番人気のスマホだろ!? 国内シェア50%とかいう……!」
先ほど気になったキノコのマークのスマートフォンMash。
リヴァイのスマホは最新型だが、俺も一つ古い型を使っているし、周りもスマホといえばだいたいがこのシリーズだ。
「そうらしいな。ちなみにエレンの友人も、前世で調査兵団にいた奴だ。アルミン・アルレルトって言ってもわからねぇとは思うが」
「いや、アルミン・アルレルトは知っているが……」
先日も最新のタブレットの発表会の映像がニュースで流れていた。マークと似たキノコカットの髪型が特徴的な青年だ。
おいおい。調査兵団出身者は経営の才能もあるのか?
「すげぇなみんな……他に誰かすげぇことやってる奴いないのか?」
「そうだな……エレンの幼馴染で調査兵団にもいたミカサってやつが今年のオリンピックに出るな。あとは大食いタレントのサシャ・ブラウスもエレンの前世の同期だな」
知ってる。二人ともよくテレビで見る。
「エレンちゃんの代、豊作じゃねぇか。二人とも可愛いし……俺たちの代はエルヴィン・スミスだけか? 情けねぇな」
「いや……そうだな……ミケはわかるか? ナナバ、ゲルガーと3人でトロスト区に料理屋を開いている。先月発売のグルメガイドで星を獲得していたな」
「それってまさかビストロSUN−SUN……か?」
「あぁ。たまに食いに行くがなかなか美味い。今度お前も行くか?」
あのガイドでトロスト区唯一の三ツ星店じゃねぇか! 予約が全く取れない名店の!
655 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:37:37.28 d
「行く。連れて行け」
「あぁ。あいつらもお前に会いたがるだろう」
あいつらが俺のことを覚えているか、会いたがっているかは解らないが、あのビストロに行ける機会は逃したくない。冷え切って硬くなった唐揚げを噛みしめながら深く頷いた。
「あと、ハンジは研究者で……奴の話からは何をしているのかサッパリわからんが、今度イグノーベル賞に入るらしい」
「ハンジ? あぁ、あの眼鏡の……それは想像通りだな」
想像通り過ぎて逆につまらない。まぁ、俺の人生も面白いかと言われると困るが。
「お前の方は誰か再会していないのか? 特に地下街の奴らには、俺の方は全く会えてねぇんだ」
「俺は1人だけだな」
「誰だ?」
どのタイミングで言うか悩んでいたが……リヴァイのより一つ古い型のスマートフォンの画像フォルダを開いて、一枚の写真を選んでリヴァイへ向けた。
「これが、エルミハ区の実家で女子高生やってる妹だ」
リヴァイがスマホの画面を見た瞬間目を大きく見開いた。
「……イザベル」
画像は高校の入学式に母親とイザベルが、高校の門の前で撮った写真だ。
紺色のブレザーにチェックのスカート、イザベルいわく「前世と同じ髪型のほうが、アニキに見つけてもらいやすいだろ?」という二つに結んだ赤毛。
現世らしく鞄には人気のゆるキャラのマスコットが付いているし、化粧はほとんどしていないが、色つきのリップクリームに、俺が入学祝に買ってやった女子高生に人気のスポーツブランドのスニーカー。こいつはこいつで、現代を楽しんでいる。
656 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:38:05.09 d
「記憶もあるぞ。どうせならリヴァイアニキの妹に生まれたかったってのが口癖だ。今度会ってやってくれ」
「もちろんだ。元気そうだな」
リヴァイの顔がスマホに近づき、しばらく眺めた後、ゆっくりと離れていった。
「元気過ぎるくらいにな。バレー部で、友達も結構いるらしいから安心しろ」
「そうか。前は同年代の女友達なんてほとんど作れなかったからな。しっかり遊んで楽しんでいるなら嬉しい」
「遊び過ぎて勉強はさっぱりだが、スポーツ推薦が貰えそうで大学の心配がないから更に勉強せずに部活と遊びばかりで……兄としては嬉しいような悩ましいような、だな」
「イザベルらしいな。いいじゃねぇか。今はしっかりやりたいことをすればいいんだ」
「そうだな」
イザベルが前世で苦労していたことは知っているし、前世に関係なく、兄としてもあいつには楽しくやって欲しい。
「前世の奴らがそれぞれにやりたいことを見つけて活躍してくれているのは……まぁ、悪くねぇな」
リヴァイが残り少なくなったビールを飲み干して、穏やかに微笑んだ。
酔いでうっすら赤い顔に照れたような頬笑み。
あぁ、こいつも平和で幸せなんだなと思うと嬉しかった。
生まれ変わって良かったと……。
そう、しみじみと感傷に浸っていたのに、リヴァイの一言で折角の感動がどこかへ行った。
「しかし、やりがいある仕事につくのはいいが、忙しすぎてイチャイチャできねぇのは困ったもんだがな」
「それは、エレンちゃんのことか……?」
さっきまでの笑顔はどこへ行った?
目が完全に据わってやがる。
懐かしい。
リヴァイは酒に強いし、地下街ではたらふく酒が飲めることも少なかった。
ついでに言うと、リヴァイは酒よりも紅茶が好きで、酒場に行っても紅茶を頼む様な奴だった。
だからこんな風に酔ったところは前世でも2、3回しか見ていない。見ていないが……。
これは、本気で酔いが回った時の目だ。赤ん坊なら泣きだすレベルの。
「転職して最初の1ヶ月は、毎日顔を合わせて晩飯を食えていたし、週に3回はペッティング、金曜と土曜と祝前日は必ずセックスできていた。
それが、スマホの新型発売と同時に上場してからは平日のイチャイチャは無し。土曜日の夜だけセックス……それも一晩に2回しかさせてもらえねぇんだ。あークソ! 溜まる」
657 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:38:57.40 d
強盗の脅し文句の様な低音ボイスでそんな事を言われても……1年以上彼女がいなくて1年以上セックスしていない俺はどうなんだ? おい?
「リヴァイ、お前今32歳だろう?」
「あぁ」
「俺も同じだが、性欲強過ぎるだろ」
「かわいい恋人が隣で寝ていやがるのに、勃起しない不能な男なんているのか?」
「お前、それを俺以外の前でいうと、刺されるぞ?」
「お前にしかこんな話できねぇよ」
喜んでいいのか、悲しんでいいのか解らない言葉に曖昧に頷いていると、普段からよくしゃべるリヴァイの口が更に調子に乗ってくる。
「しかし、エレンの体の負担にはなりたくねぇからな。土曜だけ、2回だけというのなら、1回ずつを大切にしてぇと思うだろう?
最近はエレンに似あう下着、猫耳、エプロン、ナース服、パンストなんかを用意するようにしている。エレンにも好評だ」
リヴァイは猫耳やエプロンやナース服やパンストに萌える奴だったのか? 前世にこんなものはほとんどなかったが……いや、それにしても……
「好評なのか?」
「あぁ。猫耳なら『リヴァイさぁ〜ん、オレ、猫なのに尻尾が前にあるの。何でかにゃぁ? 触って確かめてにゃん♡』とかかわいく言いやがる」
「いや、お前のドスの効いた声で言われてもかわいくないが……」
妙に喉が渇く。ビール……しまった、もうジョッキは空だ。
「エプロンの時は『お風呂もご飯もすんだから、オレの時間ですよね? た・べ・て』とか、ナース服の時は『あれ? ここ熱いですね? 膿がたまってるかもしれないですね?
治療にはオーラル、ハンド、アナルの3コースが選べます☆』とか、パンストの時は……何か言うまえに破いちまったな。とにかく可愛い」
「ノリノリだなエレンちゃん」
「あぁ、あいつも俺のことが大好きだからな」
「……そうか。よかったな」
ダメだ。俺の知っているリヴァイの許容量を超えた。
酒だ。酒のせいだし、酒を飲もう。
飲み物のメニューを真剣に眺めながら、店員を呼ぶボタンを押した。
658 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:39:23.05 d
「エレンがノリノリだと、俺も応えなければという気持ちが湧いてくる。最近は暗闇で光るゴム『ムード満点☆ベッドの上のスター●ォーズ!
ライト●ーバースキン』も買ってみたが、暗い中でも存在感があって、出し入れする度に暗くなったり明るくなったりで楽しかった」
「ハーイ! おまたせしました〜」
リヴァイが喋りきった瞬間に、若い女の店員がやってきた。
喋りきった時で良かった。
「飲み物頼んでいいですか? プレミアムビール、大瓶で。リヴァイは?」
「ハイボール」
「プレミアムの大瓶とハイボールですね! ありがとーございますぅ! ご注文いただきました〜」
端末に注文を打ち込んだ店員が、大声で厨房に声をかけながら席を離れた。
瞬間。
また、リヴァイが口を開く。
「前世でもヤりまくったってのに、全然飽きねぇんだ。あの頃はセックスぐらいしか恋人同士の過ごし方は
無かったが、この時代ならいくらでも恋人同士で楽しめる遊びやスポーツもあるってぇのに……もしかしたらエレンの孔は名器なのかもしれねぇ」
「……」
もう、なんて返せばいいんだ?
呆れているうちに冷えた瓶ビールとグラス、ハイボールがやってきた。
「おまたせしましたー! プレミアム大瓶と、ハイボールですぅ」
「どうも」
「あぁ」
それぞれに受け取って、冷えた酒を喉に流し込む。
「……」
「……」
あぁ美味い。現代の酒は本当に美味い。
659 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:39:40.46 d
「……孔だけじゃねぇぞ」
まだこの話続いてたのかよ!
「乳首だ。思わず吸いつきたくなる良い乳首だ」
「穴は解らねぇが、胸は女の方が良いだろう? ほら、柔らかくてふわふわで揉み心地が……」
「いや、エレンのまっ平らな胸に乳首があるからこそエロい。何度も言うが、吸いつきたくなる」
「乳首は吸うもんだが……女と違って母乳が出るわけでもないし」
「それはそうだな。授乳プレイしかできねぇな」
あぁ、もう酒でもだめだ。
瓶からグラスに注いだビールを一気にあおると、わざとらしくシャツの袖を捲って腕時計を眺めた。
「お! もうそろそろ終電だな! 出るか!」
「おい、乳首と授乳プレイの話はまだ終わってねぇぞ」
残念そうに言うな。すっかりセクハラおやじじゃねぇか。
「これからはまた、いくらでも会えるだろう? その話は次回の楽しみに取っておくから、な?」
「それもそうだな……次はミケの店に行くか。そこでエレンのピンクからうっすら色づいて来た乳首についてたっぷり語ってやる。楽しみにしていろ」
「あ、あぁ」
伝票を持って席を立つと、体幹のいいリヴァイにしては珍しく壁に手をついて体を支えながら入口へ進んだ。
これだけ酔っているんだ。次回までに乳首のことは忘れているだろう。忘れていてくれ。授乳プレイは聞きたくないぞ。
660 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:40:05.57 d
会計を済ませて外に出ると、3月も下旬に入ったものの風は冷たかった。
いい感じに酔いがさめそうだ。
「そうだリヴァイ、そのうちエレンちゃんに会わせろよ?」
色々聞いてしまった手前、実際に会うと気まずい気もするが、リヴァイがここまで好きになった相手だ。見てみたい。
リヴァイも自慢したいだろうし、次回にでも会えるんじゃないかと思ったが……リヴァイの表情はなぜか険しい。
「……ファーラン、お前を信用していないわけではない。だが、お前とは昔から気があっていた」
「ん? あぁ、そうだな」
リヴァイの言葉の歯切れが悪い。訝しげに見ていると、久しぶりのリヴァイの舌打ちが聞こえた。
「俺が好きなものはたいていお前も好きだろう? それにお前の方がイケメンで爽やかで背も高い」
「リ、リヴァイ?」
急に褒めるなよ、照れるじゃねぇか。
「お前に会わせると、エレンをとられないか心配だ」
リヴァイが拗ねたような表情で視線を逸らした。
恋人への執着心の高さを見せつけながら俺のことを褒めるなんて……こいつも賢くなった……って、おい!
「いやいやいやいや! エレンちゃん男なんだろ!? 俺は根っからの女好きだから! 絶対に大丈夫だ!」
「彼女はいるのか?」
「い、今はいないが……まぁ、安心しろって! どんなに美人でも男には勃たねぇって!」
「しかし、エレンは可愛いんだ。性格も良い。スタイルもいい。セックスの具合も最高。声も、性格も。顔も、スタイルも、顔も、性格も、顔も、性格も、顔も、スタイルも存在そのものが可愛いんだ。油断できねぇ」
661 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:40:31.80 d
「可愛いのは解ったが、もう少し俺を信用してくれよ? 俺が友達の恋人を奪うような奴に見えるか?」
「…………」
おい、何だよその間。
「見えねえ。そうだな。すまなかった。近々会わせる。俺の家に遊びに来い」
「あぁ、楽しみにしている」
「クソ、本当に終電が来るな。俺は地下鉄だ。ファーラン、お前は?」
「中央線だ。近いうちに連絡する。会えて良かった」
「俺も、会えて良かった。気をつけて帰れよ」
「リヴァイもな」
どちらともなく伸ばした手を握り合って、すぐに離した。
名残惜しい。
でも、この世界は平和だ。
明日急に死ぬ可能性は前世とは比べ物にならないほど低い。
きっとまた会える。
何度も。何度も。
「おやすみ」
「おやすみ」
背中を向け会うと、お互いの駅へと歩き始めた。
現代でも、これからまたリヴァイと楽しくやれる。そう思うと酒が入っている足取りは立体機動の様に軽やかだった。
662 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:40:56.53 d
ちなみに10日ほど後にミケの店へ一緒に行った際、「今日は車だから」と一滴も酒を飲まなかったリヴァイが、「授乳プレイは本当に素晴らしいんだ。
水曜がエレンの誕生日だったんだが……歳をとるごとに乳首から滴る母乳が似合うようになるんだ、エレンは尊い」と1時間近くじっくり語ってくれた。
リヴァイに再会できてよかった。
……よかった。
…………よかった。
よかった、よな?
END
エレンくんお誕生日おめでとう!!!!!!
お誕生日なのに、エレンくんが沢山出てくるような出てこないような話ですみません。
以下、こういう話になった「理由」を書かせて頂きます。
今回ファーランをメインにしたのには、リヴァイさんと仲良い人は何人かいますが、対等で、気兼ねなく「友達」と呼べるのはファーランくらいかなと考えたからです。
他の距離が近い人たちは「仲間」「家族」「運命共同体」の意識が強い気がします。
また、調査兵団の人はエレンのことを知っていますが、ファーランはエレンを知らないので「エレン」ではなく「リヴァイの恋人」という認識なのがとても美味しいと思うんです。
だって、恋人というステータス込みでの認識ですよ!リヴァイの、ですよ!
二人ひと組の認識ですよ!
そして、エレンくんの誕生日だからこそ、あえての、エレンくんを知らない人(ファーラン)に向けてリヴァイさんが切々と語ると言う、愛情表現の仕方もあるかなと思ってこういう形にしました。
そんな風に色々考えたのに、ただの下ネタオンパレードですみません。
あらためてエレンくんお誕生日おめでとうございます!!!!!!
663 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:42:55.77 d
それは男性向けファッション誌に載っていたとある記事がきっかけだった。
『嫉妬深い女の子のここが無理!』
まあ、ありがちなネタだよな。
若者向けに柔らかい表現で書かれた見出しの下には、その雑誌のモデルが実際体験した束縛話や読者が投稿してきた嫉妬深い彼女にまつわるエピソードなどが事細かに書かれている。
別に興味がないわけではないのだが、短い大学の昼休みにそんな気疲れしそうな記事はとても読む気になれない訳で。
タイトルだけを目で追い、ページをめくろうとしたとき、不意に隣でスマートフォンを見ていた友人が俺の手を押さえて声を発した。
「嫉妬深い女の子のここが無理、かー。そういや俺の彼女も嫉妬深くてさ…束縛が半端ないの。最近悩んでんだよな」
「へぇ、お前でも悩んだりするんだ」
どんな悩みなの?と正面にいた友人が笑いながら先を促し、飲んでいた紙パックのジュースをテーブルに置いた。俺も頬杖を付き、黙ったまま隣にいる茶髪の顔を眺める。
「それが、この前彼女の家に遊びに行ったときのことなんだけど…。彼女の家で飼ってる猫ちゃんと遊んでたわけ。
そしたら急に『猫と私どっちに会いに来たの?もう私のこと好きじゃないの?』って凄く怒られちゃってさ。あげく何故か浮気云々の話に発展して、最終的に携帯チェックされたんだよ…」
「やだ何それ怖い」
「そうか?それはお前が悪いだろ」
騒がしい講義教室にも関わらず、わりかし大きく響いた俺の言葉に、正面に座った黒髪と隣にいた茶髪野郎が驚いたような表情でほぼ同時にこちらを見た。
ん…?俺、なんか変なこと言ったか…?間抜け面でこちらを見つめる二人に何だよと言う意味を込め眉を寄せてみせると、隣の茶髪野郎が恐る恐るといった感じに口火を切った。
「え?俺の何がダメだった?」
「猫とばっか遊んで彼女に構わないから怒ったんだろ」
「じゃあ携帯チェックされたのは?それも俺がダメなの?!」
「怪しまれるようなことしてたお前が悪い」
詰め寄るように顔を近付けてきた茶髪…もといサークル仲間の立花を押し返して、頬杖をつきなおす。
「えーっ!俺そんなことしてないのに?!」
「うるせぇな、叫ぶなよ」
「まあ、立花って見た目からしてチャラついてるからな。しょーがないんじゃね」
664 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:43:38.58 d
そう言って呆れたように目を細めた黒髪…改め同じクラスの岩崎は飲みかけの紙パックにささっていたストローを甘噛みし、目線を宙へと流した。
「髪色だけで人を判断したらいかんよ岩崎くん。それならアルミンだって金髪だし絶対俺よりチャラく見えんじゃんか」
「アルミンをお前みたいな奴と緒にすんじゃねーよ。なあエレン」
別の教室で授業の準備をしているであろう幼馴染の姿を思い浮かべながら、岩崎の言葉に大きく頷いてみせる。
確かにこいつとアルミンじゃ見た目も中身も天と地ほどの差があるな。
「じゃなくて話戻そうぜ。そうだな…例えばさエレン、お前の彼女が『浮気してるでしょ?携帯みせなさいよっ』って言ったらお前どうすんの?まさか見せんの?」
わざとらしく女性を真似た声を織り込んできた立花に、ため息混じりの返事を返す。
「見せるに決まってんだろ。やましいことなんて何もないし」
「はあ?!少しも?少しもやましいことないの?!清廉潔白なの?!」
「お前と一緒にすんなよ」
「じ、じゃあその彼女が女友達との何気ない事務的なメール見つけて『やっぱり浮気してるじゃない!私のこと好きならこの子のアドレス消してよ!』って言ったらどうすんの?さすがにそこは怒るか」
「怒るわけねぇだろ。『そんな風に不安にさせてごめん。俺が好きなのはキミだけだから』って謝るよ」
「やだ何このイケメン」
665 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:44:05.21 d
抱いて!とふざけ笑いをして自分の肩を抱いた岩崎の足を机の下から蹴り、嘘だろ!と頭を抱えた立花を横目で睨む。
嘘も何も実際俺にはリヴァイさん以外の恋人、なんて微塵も考えられないし多少理不尽なことでも好きな人が望むことをしてあげたいと思う。
まあ、あの人がそんな子供じみたヤキモチを妬くとは到底思えないが…。
「真面目だなーエレンは」
「なら逆に2人に聞くけど、浮気云々は置いといたとして、お前らが立花の彼女の立場だったらどうすんだよ。
むこうが猫とばっか遊んでたら怒るだろ?」
俺だって怒りはしないがいじけたりはする…と思うし。
不機嫌交じりに腕を組み、悪友2人にそう投げかけると先に口を開いたのは茶髪野郎の立花だった。
「さあ…どうかな。けど、猫と私どっちに会いに来たのよ?とかは言わないし浮気なんて疑ったりしねーよ」
「確かに言わないな。面倒くさい奴って思われたくないし」
「ああ。妬きもちやくのは可愛いと思うけど、度が過ぎると辛いよな」
「そうそう。例えば飲み会の帰りに女物の香水の匂いがする!とか言われてもなー…」
「あと友達からのメールに口出しされたりとかも嫌だな。信用されてない感じがさ」
分かるー!と岩崎の言葉に共感を示した立花だったが、残念なことに俺には何一つ分からなかった。
何なんだこいつら心広すぎだろ。…広過ぎんだろ!俺は猫とばかり遊ばれるのも嫌だし、飲み会の帰りに誰が知らない奴の匂いがすんのも嫌だ。
ましてやリヴァイさんが…友達と私用のメール…?いや、それは無いにしろ、どれも「仕方ないなー」なんて軽いノリで許せるようなものではない。
もしあの人がこのどれかをしてこようもんなら、間違いなく指摘して抗議の声をあげるだろう。
下手したら冷戦状況になりかねないし…。と急に俯いて黙り込んだ俺に、立花が不思議そうな顔でこちらを覗き込んできた。
「んー?エレンちゃん何か引っかかる部分でもあったの?」
「……なあ…そういうのを指摘されると嫌だと思うもんなのか?」
666 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:44:37.39 d
一般的な健康男子でもあるこいつらが嫌だ面倒くさいと思うなら、リヴァイさんもきっと少なからず同じようなことを思うに違いない。
それは…凄く悲しい。頼む、嫌じゃないよな?普通は妬くよな?と縋るような気持ちで2人の意見を煽るが、
「当たり前だろ!そんな信用ねぇなら別れようってなりかねないぜマジで」
即答かよクソが。
しかも、わ…別れようとか思ったりまでするのか。リヴァイさんもそんなこと考えたりとかしたことあるのかな…。
そういえば確かに前、近所の猫が我が家にやって来たとき、猫より俺を可愛がってください的なニュアンスのことを言って面倒な奴だなと呆れられたことがあった。
まさかあのとき…本気でうざったい奴だなとか思われていたのだろうか。
立花の発言と暗雲が立ち込み始めた過去回想に軽いショックを受けていると、手にしていたジュースを飲み終えた岩崎が楽しそうな笑顔を見せ言葉を続けた。
「まあ指摘される度合いにもよるけどな。お前も、付き合ってる彼女にあんま嫉妬深くすんのはよくないぞーエレン」
「…そうか。あんまり妬かれると嫌だよな…」
「だから度合いにもよるだろ。妬くのはいいけど、愛想尽かされない程度にしとけよ」
どの程度なら愛想尽かされずに済むんですか。なんて聞けるはずもなく。机に顔を突っ伏して、目を閉じる。
でも、リヴァイさんに限ってそんなこと…。
あの人は俺が嫌がるようなことはしない人だし、何よりリヴァイさんが猫と戯れたり俺に無断で女の子とお酒を飲んだりするはずがない。
俺はヤキモチ妬きかもしれないが、今までだってその類の嫉妬で怒るなんてことはなかったし。…多分。でも、そう考えると俺って本当大切にされてるんだよなあ。
「えー、何この子ニヤニヤしちゃって」
「はあ?!ニヤニヤなんてしてねぇだろ」
667 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:45:03.42 d
気持ち悪く笑ってんのはお前の方だ!と体を起こして、隣に座った立花の頬を両手で引っ張る。ったく腹立つなこの茶髪野郎が。
「いひゃい、いひゃいよエレン!」
「やだーお顔が真っ赤よエレンちゃん。何考えてたの」
「悪ノリすんなよ岩崎。俺はお前らと違って恋人に大切にされててよかったなと思って優越感に浸ってたんだよ」
そう言った俺の手を振り払い、可愛いくもない顔で頬を膨らませた立花にため息すら出なかった。いやマジで可愛いくない。
「おいこら俺だって大切にされてるぞ。大切にされすぎて束縛されてんだからな」
「はあ…正直エレンが羨ましい。俺はまず彼女が欲しいよ」
「ねえ、僕も羨ましがってよ岩崎くん」
いいなーという羨望の眼差を受けながら、帰ったらリヴァイさんに甘えてやろうかな。
なんて、この時は幸せを感じていた。
はずなのに。
668 :
名無し草 (スプッ Sd9f-G+K4)
2016/04/02(土) 21:45:41.07 d
「ああ…エレンか」
どういうことだよコレは。
「ほら毛玉、エレンが迎えに来たぞ」
時刻は深夜23時過ぎ。「帰ったぞ」という家主の声に返事をして、眠りを訴えてくる瞼に鞭を打った。
明日は学校もバイトも休みのため仕事で遅くなったリヴァイさんの帰宅を待っていたのだが、いつの間にか睡魔に負けてしまっていたらしい。
寝起きでぼやける頭を引きずりながら、帰って来たであろうリヴァイさんを出迎えるため玄関へと続く扉を開ける。
と、途端に濃いお酒の匂いと甘い香水の香りが鼻をついた。…マジかよ。
「り、リヴァイさん…」
思わず声が裏返ってしまったが、恋人が泥酔状態で戻って来た場合は仕方ないと思う。
そして、その普段より幾らか気の抜けたような姿を見て脳裏を過ったのが最初の一言だった。
しかし一体どういう状況なんだこれは。キツいお酒の匂いを全身に纏ったその人は、あろうことか玄関に座り込み、膝に抱えた黒い塊の背を楽しそうに撫でている。
ん…?あれってこのマンションの一階の人が飼っている黒猫先生じゃないか。
「……にしても」
随分とタイムリーだなおい。普段は滅多に抱き上げない猫とお酒に女物の香水の匂い…。昼間大学で話していた内容フルコースですかそうですか。
もうどこからツッコミを入れて行けばいいのか分からなくなった俺は、とりあえずそこに駆け寄ってユラユラと揺れる背中に手を添えた。
「リヴァイさん?どうしたんですかこんなに酔っ払って」
「あー…そんな飲んでねぇし酔ってもねぇ」
わりかしハッキリとした口調でそう言ったその人は、椅子の背もたれのごとく俺に体重を掛けると再び膝で丸まる黒猫の頭を撫でた。
「こいつが下で擦り寄って来たんだ…だから仕方なく、だな」
「分かりましたから、とりあえずリビングに行きましょう?こんなとこにいたら風邪ひきますよ」
「ああ?俺に指図すんじゃねぇ」
「どんだけ飲んだんだよあんた…」
「うるせぇ…なあ…毛玉」
「じゃあその毛玉と2人で部屋に入りましょう?ね?」
「毛玉は誰かと違って静かで、好感が持てる…」