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【腐女子カプ厨】巨雑6455【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net->画像>168枚


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1 :
旭=5002 転載ダメ©2ch.net (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 14:02:58.15 0
考察雑談ホモノマドリ百合単体厨みんなで仲良く語りましょう

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【腐女子カプ厨】巨雑6454【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net
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避難所
巨避難19 [無断転載禁止]2ch.net
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外部の避難所
http://jbbs.shitaraba.net/comic/6922/
おエビ
http://www16.oekakibbs.com/bbs/jhdokoya/oekakibbs.cgi
絵茶
http://www.takamin.com/oekakichat/user/oekakichat3.php?userid=622606
★☆★☆★☆★
VIPQ2_EXTDAT: none:vvvvv:1000:512:----: EXT was configured
2 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 14:04:54.80 0
わいおつ出掛ける前に立てたで
焼き菓子とチョコか何かそろそろ買いに行かんとあかん紅茶出すかコーヒーか迷うでチョコ買うならコーヒーがええかな
3 :
名無し草 (アウアウ Sa05-DbIH)
2016/04/25(月) 14:05:32.90 a
おつやで
わい今からお昼休憩や
4 :
名無し草 (ワッチョイ 987d-DbIH)
2016/04/25(月) 14:10:00.33 0
お通夜で
とりあえず20まで埋めるか
5 :
名無し草 (アウアウ Sa05-DbIH)
2016/04/25(月) 14:14:07.33 a
おつやで
話題のファイアパンツ読んだけど
やっぱ未遂だとしてもそういう描写入ると生生々しくてあかんは
進撃って良くも悪くも性を一切感じさせんよな
6 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 14:16:11.35 0
ごめんわいも保守するけど買い物と3時からちょっと暫く書き込めんのや人が来るねん
7 :
名無し草 (アークセー Sx8d-DbIH)
2016/04/25(月) 14:17:32.31 x
>>6
ええよ立ててくれただけでとんや
>>5
パンツやないけどね
あと生生々しいってどれだけ生々しいねん
8 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 14:20:34.88 0
ごめん間違えて前コピペしてたやつで立ててもたここのBBAが気づいたんやけど巨避難古いリンクので立ててしまってん次からこっちでよろやでホンマごめん↓

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避難所
巨避難20
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外部の避難所
http://jbbs.shitaraba.net/comic/6922/
絵茶
http://www.takamin.com/oekakichat/user/oekakichat3.php?userid=622606
三┏( ^o^)┛
9 :
名無し草 (ワッチョイ fc1c-DbIH)
2016/04/25(月) 14:47:56.56 0
>>1
おつんぽ
ホシュホシュ
10 :
名無し草 (ワッチョイ 4bc8-gALo)
2016/04/25(月) 14:59:00.03 0
おつおつやで
上げとくで
11 :
名無し草 (ワッチョイ 987d-DbIH)
2016/04/25(月) 15:00:20.32 0
ほす
12 :
名無し草 (ワッチョイ 987d-DbIH)
2016/04/25(月) 15:00:53.50 0
13 :
名無し草 (ワッチョイ 39ca-DbIH)
2016/04/25(月) 15:02:57.11 0
いちおつ
エンブレム決まったみたいやね
14 :
名無し草 (ワッチョイ 39ca-DbIH)
2016/04/25(月) 15:05:02.15 0
>>7
リリの太ももは大変けしからんムチムチやと思います
15 :
名無し草 (ワッチョイ 39ca-DbIH)
2016/04/25(月) 15:22:58.45 0
ところで保守って20まで書き込むんやろか
16 :
名無し草 (ワッチョイ 39ca-DbIH)
2016/04/25(月) 15:24:02.11 0
あと5レスや
17 :
名無し草 (ブーイモ MMa8-FeNN)
2016/04/25(月) 15:24:19.25 M
会議で白目になってもうたは
更年期で寝れんのが悪いんやわいは悪くない
18 :
名無し草 (ワッチョイ 39ca-DbIH)
2016/04/25(月) 15:26:42.99 0
>>17
会議お疲れさまや
聞いてるだけやと一瞬だけ寝落ちたりするよな
19 :
名無し草 (ワッチョイ 528b-FeNN)
2016/04/25(月) 15:28:06.30 0
保守BBAになるわい
20 :
名無し草 (ワッチョイ 39ca-DbIH)
2016/04/25(月) 15:30:49.11 0
来月のバレももうすぐやんな
ちょっとナーバスなるで
21 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:40:59.84 d
浮気 良いぞジャンもっとやれ! ジャンそのままエレンを奪っちゃいなYO!! ジャンエレを幸せにし隊 ジャンー!!!早く助けてあげてー!!!! ジャンエレを援護し隊!!
リヴァイさんに絶望を見せる準備はできてます! エレン!俺と結婚しよう!! ぜひ、私と結婚しておくれ!!!
さーて、包丁を買いに行って来よう! エレンをかっ浚い隊!! ゲス兵長 ジャン頑張れ!超頑張れ(つД`) ジャンエレを全力で援護し隊参上! 浮気は許さない、けど愛ゆえならば何だって出来るよな? エレンを幸せにし隊! エレンの幸せ笑顔がみ隊!!
浮気男以外とエレンが幸せになりますように エレン頑張れ!幸せを掴んで!! 浮気性治んないならエレンといる資格ないっしょ ジャンイケメンすぎるじゃん! ジャンの逆転の可能性は? 切ないジャン ジャンエレを全力で援護し隊参上!
エレンを世界で一番幸せにし隊 はい!私も参加希望です!! フルボッコ参加枠まだありますか?! フルボッコ参加列、最後尾プレート持ちます エレンを幸せにし隊 心底後悔するといいよ!! 浮気者に制裁を!! 浮気リヴァイ これは許さないエンドを!!
エレンを保護し隊 リヴァイさんを後悔させ隊 エレンを幸せにし隊 エレンを今すぐ抱きしめ隊 よしエレン、私と結婚してくれ! リヴァイさんをぶん殴り隊今宵も参上! エレンをかっ浚い隊! リヴァイ殴らせろ隊ここに見参!!!
22 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:41:23.15 d
             _i⌒r-.、    
           ,,-'´   ノ
          ./     .l
          /       l     チ
   ((  ◯  .l  エレン  l     ン
      .ヽヽ、l  i      .l      ポ
       \ヽ l      l   ))  コ
      ,-'´ ̄`ゝ´ ̄`ヽ  ノl      ポ
     .,'    .,'   ◯ニ.ンl      ン
     i    i        .i
     ヽ、  丶      .ノ
      `'ー-.'´`'ー- ''´i .|
        凵      .凵
23 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:41:38.43 d
アズ(魚食えない)
(マジか)o。(눈"눈)そして追加したシーンのせいで注意書き必要か迷ってます...リヴァエレなのにリヴァイの出産直前の妊婦姿なんて誰もみたくないですよね...
わたしもワーイって喜び勇んでもえるようなオプションじゃないので困ってる...あっまだドン引きしないで下さい
2015年1月12日 - 9:43pm

804 名前:愚痴
ABですがAの出産間近の妊婦姿があります????
それはABじゃなくてBAもしくはA受けですよね??????
信者もサークル者も誰も突っ込んで無くて???????
本当ABサークル者って馬鹿とリバ厨ばっか

806 名前:愚痴
>>804
>ABですがAの出産間近の妊婦姿があります
ワロタ
女体化(Ω?)の時点で勘弁お引取りだけど、攻め妊娠とか更にわけわかんねw

811 名前:愚痴
>>808
>肉体的BA描写もないし作者がABと思ってるのならABなんじゃねえの
やることやってなきゃ妊娠はしないだろw
仮に支部だとしたらキャプションだけじゃなくタグにABAとかAB、BAしてもらいたい案件
ABだと思ってキャプ読んだらA妊婦ってもはや魚雷レベル
オフ本で知らずに買ったら即効で中古やへ叩き売るわ
24 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:42:04.26 d
一日で製本してくれた印刷所に愚痴るアスペルガー魚食えない
※2015年3月20日(金)ツイッターから愚痴を削除

印刷所からメール来てこないだのやっつけ不備あった(想定内)から直して返信したのが月曜日の夜で火曜日に印刷すっどー連絡来て「出来上がったので今日発送しました」(想定外)←今ココ
早くないですか?これ普通??こんな早くてちゃんと本になってる???納品日22日に設定してたのに
2015年2月19日 - 9:38pm
(嗚咽...)もういい...寝る
2015年2月20日 - 12:03am
-------------------
同人誌は画力が低くてもなぜか売れるリヴァエレのみに終始するも本当はエレリが大好きな魚食えない
アズ=目玉焼き(魚食えない)
@ くろかわさんです!リヴァエレリ変換できると幸せに気持ちになりますね...
2015年2月20日 - 11:31pm
アズ=目玉焼き(魚食えない)
@ えっストーカーだっていいたいんですか?否定はしない...(噛みしめる)自滅してケツ差し出すちこさん潔すぎて感動しました(さわさわ)見る専でならリヴァイ受も!
他CPはエレヒスとか?ジャンエレとか?やだな呼んでませんよいいから尻から手を離しなさいバシッ
2015年2月22日 - 7:24pm
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25 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:42:10.46 d
http://twitter.com/__o30/
http://twitter.com/__0l0l/
http://touch.pixiv.net/member.php?id=120203

単行本を15巻以降読んでおらず原作も知らないくせに壁博で本を売り更にリヴァイ幼少時の回はネットの違法画バレで見たと平気でツイする魚食えない
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リヴァイを踏み台にしてエレンのケツを追いかけるリヴァイヘイターアスペ魚食えない
アズ@魚食えない
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こないだ初めて人様に自分のリヴァエレ観語れてすごいたのしくてそこで改めて分かったのは自分エレン厨でした
進撃ハマるきっかけも進撃初描きもリヴァイだったんですがいまや彼を踏み台にしてエレンのケツ追いかけてる 『リヴァイ>>>>>薄い壁<<エレン』薄い壁=なんらかの障害
2015年3月08日 - 1:25am
-------------------
ディズニーホテルを模写してリヴァイの部屋にする魚食えない
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リヴァイのディズニーホテルをリヴァペトに使い回す魚食えない
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審議所躾シーンは公式DVと言い張る魚食えない
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魚食えないが描いたエレンとミカサに処刑前にセックスさせてエレンの子を産ませてリヴァイにその子供を渡すミカサヘイト
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魚食えないが描いたリヴァエレなのにリヴァイが孕むリヴァイヘイト
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26 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:42:36.10 d
277 名無し草 sage 2015/05/06(水) 21:17:57.24
アズ=目玉焼き(魚食えない)
http://twitter.com/a0_3a
恋した人はレンズの向こう側
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379 名無し草 sage 2015/05/06(水) 21:29:15.77
>>277
魚またパクったん?
サークル名も直木賞作家の本のタイトル「サラバ!」からもろパクリの「さらば!」やしパクらななんもできんのやろか?

文学賞
さばえ近松文学賞2014〜恋話(KOIBANA)〜入賞作品
松平昌親賞「レンズの向こう側」
漫画
愛はレンズの向こう側
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450 名無し草 sage 2015/05/06(水) 21:36:39.41
>>379
個人サイトやってた時のサイト名
雛が道を横切ったのは何故?
ていうのもアメリカでは有名なジョークて言われてるこれからのパクリやからなぁ草
Q: ニワトリが道を横切ったのは何故?
A: 反対側へ行くためさ!
27 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:42:43.19 d
自分のツイ垢に反応する瀬早めろんウンスジ
http://twpf.jp/shymln
http://twpf.jp/shymln18
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282 名無し草 sage 2015/05/07(木) 01:03:19.98
>>271
ツイッターアドレスはだめなん?
295 名無し草 sage 2015/05/07(木) 01:06:04.60
誰か>>282に答えてや
ツイッターアド晒しは通報できんの?
-------------------
このスレでなんの脈絡もなくエルドエルド言い出した時にツイでもエルド言うててほんまメロンは難民におるの隠さんのやな
【腐女子カプ厨】進撃の巨人雑談4519【なんでもあり】
http://mastiff.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1432342337/
mln– ‏@shymln
エルドかっこいいな…エルドと付き合いたい(顔覆い)
18:33 - 2015年5月23日
-------------------
搾乳パクラー瀬早めろんうんこ
882 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! sage 2015/04/18(土) 17:38:01.39 ID:1vnQXrCn0
メロンは自分が2を出入りして愚痴ったりヲチったり難民に入り浸ったりしてることを本当に隠さないんだねwww
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28 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:43:09.15 d
ワンドロのために1時間で描いたと言い張るリヴァエレ婆1

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29 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:43:15.23 d
ワンドロのために1時間で描いたと言い張るリヴァエレ婆2
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30 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:43:40.72 d
ワンドロのために1時間で描いたと言い張るリヴァエレ婆3
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31 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:43:47.25 d
ワンドロのために1時間で描いたと言い張るリヴァエレ婆4
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32 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:44:12.84 d
エレン厨キチガイ婆
                                          
124 名無し草 sage 2015/04/28(火) 18:42:17.17
>>119,123
ほんまやひどい!;;;;

452 名無し草 sage 2015/04/28(火) 20:03:06.21
イサヤマングリジェル描いてや;;

863 名無し草 sage 2015/04/29(水) 11:28:16.35
イサヤマンが美人や…いうたわいの春馬ジェルなんで白目向いちゃったん?;;

937 名無し草 sage 2015/04/29(水) 11:37:30.07
マギーの逆壁ドンジェルにやって欲しい;;

25 名無し草 sage 2015/04/29(水) 11:46:03.31
ふええ;;

244 名無し草 sage 2015/04/29(水) 14:16:27.09
>>227
かわええねかわええね;; ジェルすごい看病したんやろなあ

301 名無し草 sage 2015/04/29(水) 14:30:00.36
ああん;;

378 名無し草 sage 2015/04/29(水) 14:39:33.76
はあん;;ドラゲナイ

774 名無し草 sage 2015/04/29(水) 23:55:12.89
>>758
なんやの意地悪ババアやな…わいめっちゃ平和的なレスしたやん泣いちゃうで;;
33 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:44:19.23 d
芦菜> 陸さん はい、アウトですよね(^◇^;)勿論リヴァイさんもこのままじゃ済みませんよw暫くどちらも苦しいターンです(⌒-⌒; )
2015-10-22 19:03
                                            
芦菜> ハルさん もうスーパーアウトですよね(^◇^;)ケツバットですかね?w
2015-10-22 19:02

芦菜> MJカリンさん ああっ、対リヴァイ氏最強女子組ですねw私も一緒に交渉しますw
2015-10-22 19:01

芦菜> やえさん 勿論リヴァイさん、今のままじゃ済みませんよw
2015-10-22 19:00

陸 読了後、前作読み返してbeloved最後の二人の約束にうわあぁ(泣)となりました。 リヴァイさんも辛いんだろうけど、恋人がいることも相手も分かっているのにあれはアウトです…。
この後大人組がどう動いてくれるのか楽しみにしています。エレンがドン底なら次はリヴァイさんを…!
2015-10-22 12:36

ハル リヴァイさん!アウトーーーー!!
2015-10-22 07:04

MJカリン みんなでリヴァイさんフルボッコにしたら思い出す? ちょっとハンジさんやペトラさんと相談してきますっo(`^´*)
2015-10-22 01:49

やえ 早く!リヴァイ氏に八つ当たりを早く!!( ノД`)…
2015-10-21 22:45
34 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:44:44.96 d
好きになったほうが、
                                            
by sekaE 
負け。
お久しぶりです。リア友にホモの二次創作してるのがバレた私です。
リヴァモブ♀要素大有りです。
昔はエレンに一途だったのに今では来る者拒まずろくでなしな兵長を好きなエレンの報われない転生リヴァエレ。
兵長、きっとあなたは後悔する。
こんな話ばかり書いてますが私はエレンが一番好き。
                                         
--------------------

まょこ エレン、エレン、エレン!!!! 読みながら号泣てしまいました・・・・・・・・。゚(゚ノД`゚)゚。 リヴァイさん酷い!! でも、エレンには、リヴァイと幸せになって欲しいです(。-´ω`-) エレンを幸せにできるのは、兵長だけだから・・・・・・
2015-05-12 03:05

にゃお エレンを幸せにしてあげて下さい。兵長は死ぬ程後悔して頂いた後に死ぬ程頑張って頂いてエレンを幸せにして貰いたい…と思います。
2015-05-11 22:01

toa リヴァイさんを後悔させてやってくださいぃぃいいっ 。・゚・(ノД`)・゚・。
2015-05-11 10:56

陸 どうか、エレンを幸せにしてあげてください(;_;) エレンが幸せなら相手は問いませんので…ただ兵長にはどちらにしても相応の報いがあって然るべきだと思います。 それとリアばれ、御愁傷様でした……
2015-05-11 09:25

凛咲 エ、エレンを幸せにしてあげてくださいぃぃぃぃぃ( ; ; ) ただし兵長以外で というか後悔する兵長を私は見たいです(笑) どんな結末であれ続きをお待ちしております。
2015-05-10 21:32
35 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:44:51.54 d
このお方はわいの神や…刀で爆死してしもて刀の支部垢も0時前に消す宣言して消してしもたは…;;
やっぱり進撃のルジがええて気付いてくれたねん…評価してあげてや…;;
                                          
赤井百合
エルエレ垢
http://www.pixiv.net/novel/member.php?id=5560178
http://touch.pixiv.net/novel/member.php?id=5560178

                                        
エレン「おっ♡おっ♡おっふぉ♡おっほおおおおっ♡ちんぽっ♡ちんぽっ♡ちんぽっ♡ちんぽっ♡もっとっ♡おくっ♡おくっ♡
おまんこのおくっ♡ごりごりしてぇっ♡ソコッ♡きもちいいのぉおっ♡女の子になっちゃうっ♡えれんっ♡孕んじゃうぅうっ♡
おとこにゃのにっ♡えうびんしゃんにっ♡ちんぽぽぽっ♡いれられてっ♡ザーメンっ♡そそがれてっ♡孕んじゃうぅうっ♡おなかっ♡くるしいよおおっ♡♡」
36 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:45:16.91 d
mrs
太陽物語
リヴァエレ
古代エジプトをテーマにした究極のラブロマンス(笑)
王家の紋章のもろパクリ(笑)

*・゜゚・*:.。..。.:*・゜ *・゜゚・*:.。..。.:*・゜ 太 陽 物 語 ゚・*:.。..。.:*・゜゚・* ゚・*:.。..。.:*・゜゚・*
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http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=manga&;illust_id=50208927
                                          

自分で自分にタグを付ける可哀想なリヴァエレ婆4名様をご覧下さい(笑)
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37 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:45:23.09 d
エ「兵長…まさか、リヴァイ班にあのこと言ったんじゃないでしょうね?」
リ「あ?言ってねぇよ。んなことして一体俺になんの得があるって言うんだ?…それより、ナイフなんか持ち出して何をするつもりだ」
エ「何をするかですって?あなたには殺しても殺しきれない恨みがある…オシッコを見られ…オシッコをかけられ…そしてっ…俺の大事なモノを汚した恨みが!」
リ「あぁ!?」
エ「覚悟してください…あなたにとってこれまでの人生で最も恐ろしく!最も恥ずかしい夜にしてやる!!」
リ「おっ、おい、ちょっと待て!なんでナイフ握り締めながら俺のイチモツ駆逐してやるみてぇなツラしてやがんだ、てめぇ!」
エ「いいからちょっと黙っててくださいよ!!」
リ「おい、エレン!落ち着け!エレン!エレエエエェェェンッ!」
                                          
38 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:45:48.40 d
ー数分後ー
            
エ「はい。これにしてください」
リ「…あ?」
エ「あ?じゃないですよ。さっさとオシッコしてくださいよ。この後訓練があるんですから」
リ「(…よかった!あのナイフはエレンのケツに数々の不貞を成した俺のエリンギをバッサリするためのものじゃなかったのか!)」
エ「溢さないようにちゃんと飲み口の所も切ってあげたんだからとっととやってくださいよ!」
リ「…わかった(バサァッ!!)」
エ「なっ!?なななっなんでズボン脱ぐんですか!」
リ「やってやるよ。見たいんだろ?さぁ、その木筒を持っていろ。小便が出るところを見せてやるよ」
エ「なんで!?なんで兵長はそんなに堂々としてるんですか!?恥ずかしくないんですか!?」
リ「おら、持ってろよ。出してやるから」
エ「なんで俺が持つんですか!自分で持って出せばいいでしょ!」
リ「だめだ。俺は右手を股間に、左手を腰に添えながらでねぇと上手く小便ができねぇ。じゃねぇと、そこら中に小便が飛び散ることになるぞ」
エ「なんだよ!なんなんだよあんた!チビオヤジのくせに!チンコ出したくらいでえらそうにしやがって!!……逃げちゃダメだエレン!俺はやられたらやり返す男!そうだ!いつもいつも兵長に負けてられないっ!!(バサァッ!!)」
リ「!?てめぇ、なんでパンツごとズボンを脱いだ!?」
エ「なんでですって?あんたにオシッコぶっかけるからに決まってるでしょ」
リ「俺に小便をぶっかける!?俺も今からするのに!?…ハッ!同時にするのか!?(頭の中は完全に69でぶっかけ合いの図)」
エ「さぁ!恥ずかしがってください兵長!」
リ「クソッ…何してるのかわからなくなってきやがったが…一つだけ言えることがある…俺の人生にこんな場面(アブノーマルプレイ)があるとは夢にも思わなかった!…よし、エレン。もう御託はいらねぇ。やるぞ(ドサアッ!!)」
エ「えっ!?ちょ、なんっ、えっ!?ええええっ!?なななななっなんで押し倒すんですか!?なんで俺の顔跨ぐんですか!?なんでお互いのチンコがお互いの顔のまえにあるんですか!?なんでっ!?」
リ「さぁ出せエレン!俺の顔中に小便をぶっかけろ!俺もお前にぶっかけてやるぞ!小便と言わずザーメンまできっちりとな!」
エ「えええっ!?なんで!ちがっ、そうじゃなっ、えっ!ちょっ、待っ…………アッー!」
39 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:46:10.05 d
エル「……では、エレン・イエーガーくん。リヴァイの秘書というのは誰よりも辛く何よりも厳しい激務になると思うが、君ならリヴァイの意に沿う立派なルーキーに成長してくれると信じているよ。存分に我が社で君の能力を発揮したまえ」
エレ「はいっ!スミス社長!非力ではありますが、オレ…じゃなかった!わ、私は今後もスミス社に貢献できるよう全力で頑張ります!」
エル「うん、エルヴィンでいいよ。それに私の前でも堅苦しくしなくていい。これからも一緒に頑張っていこう」
エレ「はっ、はい!エ、エルヴィン社長!では失礼します!」

エル「……彼はいい子だね」
リヴ「そうだろ?」
エル「とても真っ直ぐで汚れのない目をしている。今はまだ少し頼りない部分もあるが努力家だ。新たな業務にもすぐに慣れるだろう」
リヴ「当たり前だ。オレが直々に躾けてるんだからな。…それと、エレンがわざわざオレの側で働けるよう計らってくれたことに感謝する」
エル「よせよリヴァイ。君が妻としてパートナーとして選んだほどだ。エレンくんは見た目も君好みで美しいし、彼の秘められた能力もきっと我が社に酬いてくれると信じているんだ。
…何より珍しく君からの頼みだったからね。このくらい造作もないさ」
リヴ「お、おいやめろ…触んじゃねぇ…会社だぞ。誰か来たら…」
エル「私の許可が降りるまで社長室には誰も入って来れない。知ってるだろ?」
リヴ「よせっ…オレはもう決めたんだ…エレンがオレの生涯のパートナーで、オレの妻だ。オレはもうエレン以外とは誰とも」
エル「誰とも…なんだい?寝ないとでも?困ったな…私は君のためならなんでもしてあげられるが、なにもなかったことにすることだってできる。例えばエレンくんの人事を今すぐ取り消し、君とは別の部署に配置することもできるんだよ?」
リヴ「おい、エルヴィン…!てめぇっ…!」
エル「…いい目だ。ゾクゾクするよ…ほら、リヴァイ。こっちに来なさい。エレンくんのためなら、なんだってする…そうだろう?」
リヴ「…エルヴィン…」
エル「さぁ、早く…」
                                         









エル「…ここで私を抱くんだ」
リヴ「えええええー…」
40 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:46:27.02 d
エ「アルミン!俺…病気かもしれない」
ア「えッ!?どうしたの急に!どこか体調が悪いの?」
エ「それが…」
ア「うん」
エ「朝起きたら…ちんこからなんかネバネバした白いのが出てた…パンツがベトベトになるくらい」
ア「…」
エ「最初は、この年になって漏らしちまったのかと焦ったんだけど、どう見ても小便じゃねぇし…」
ア「うん…」
エ「俺すげぇ怖くなって…もしかしたら巨人化と関係があるのかもしれないし…けど、兵長に報告したら団長にも伝わるだろ?
そこから憲兵にまで知られちまう可能性だってあるし…そしたら人類への脅威だとか言われて今度こそ殺されちまうかもしれないし」
ア「そんなことでエレンが殺されるわけがないじゃないか」
エ「え?!だ、だって異常だろこんなの!」
ア「異常なんかじゃないよ。エレンは初めてだったんだね?おめでとう。男になった証だよ」
エ「えっなに言ってんだアルミン!それじゃまるで今まで女だったみたいじゃないか!」
ア「エレン、落ち着いて!これは健全な男なら誰だって通る通過儀礼だよ。エレンや僕だけじゃない、ジャン達だって経験してることなんだ」
エ「そッ、そうなのか?ミカサも?」
ア「ミカサは女の子でしょ。エレンの言うその…男性器から出た白くてネバネバしてるのは精液で、エレンがその体験が初めてならそれを精通って言うんだよ」
エ「せいつう」
ア「うん。これからは定期的にその性欲処理をしなきゃならないんだけど、エレンはその調子だと自慰も知らないよね?」
エ「知らねぇ…これからどうしたらいいんだ?いつも寝て起きたらパンツにその精液が付いてたら洗うの大変だし、毎朝こんなことじゃ兵長に怒られちまう!エルドさんやグンタさんにも笑われちまう!」
ア「大丈夫。兵長も怒らないし先輩たちだって笑わないよ。エレンがパンツを汚さないようにするために自慰行為が必要になってくるんだよ。まぁ…女の人を相手にして解消する手もあるけど、
僕らはまだ娼館に行けるほどの給金もないからね…僕たちぐらいの年代だと自分で処理してるのが大半だよ」
エ「なんだよそれ…ちッ、ちんこから精液出るのになんで金払って女に処理してもらわなきゃいけないんだよ…そんなの嫌だ!」
ア「僕はジャンにしゃぶらせて出してるけどね」 
エ「えっ」
ア「えっ」
41 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:46:36.81 d
アーケード版『進撃の巨人』
                  
名前:エレン・イェーガー
年齢:15才
性別:男
誕生日:3月30日
身長:170cm
体重:63kg
出身地: ウォール・マリア南端シガンシナ区
格闘スタイル:対人格闘技、刺殺
好きなもの:チーズハンバーグ
嫌いなもの:服を破く奴、裏切る奴、人間の姿をした害虫
特技:拐われること
キャッチコピー:人類の希望、あざとイェーガー
必殺技:(技名/セリフ/説明)
・駆逐/「駆逐してやる!この世から…一匹残らず!」/スタンダードな対人格闘技。カウンターヒットすると5連コンボに持ち込める。
・駆逐改/「頑張ってお前らができるだけ苦しんで死ぬように努力するよ」/5連コンボ成功時に発動。6連目がクリティカルヒットした時に10連コンボに持ち込める。
・駆逐零式/「このッ…裏切りもんがあああああ!!」/ゲージMAX時に→←ABD同時押しで発動。 巨人化する。
・真駆逐/「死んじゃえよクソ野郎!!」/刃物で襲いかかる。一撃必殺。
超必殺技:
・へいちょ/「責任…取ってくださいね…」/リヴァイを強制召喚(ほぼ勝手にリヴァイが現れる)してエレンの代わりにリヴァイが戦う。相手のゲージを瞬時にして0にする。
挑発:「服が破けちゃうだろ!!」
勝利:1「このッ…腰抜けどもが!!」2「やった!討伐数1!」
敗北:「俺が…選択を間違えたばっかりに…」
42 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:47:02.39 d
【 エレンジェル 〜 咽び泣く幼い性器 1 〜 】
                  
「ぐッ…!ぐぐうッ…!がッ…!!」

猿轡を噛まされたエレンの薄っすら紅く色付いた唇が悔しさに歪む。
睥睨する鋭い金目の眼差しの先には、ニヤニヤと表情を緩ませ、全裸で逆さに縛られたエレンを見下ろすダリス・ザックレーの姿があった。
股を左右にがばりと開かれたまま全身を固定されているエレンの恥部はまだ明るい陽射しの下に曝され、幼さを残す皮被と薄桃色の性器は縮み上がったままの形でザックレーの前に曝け出されている。
男の象徴とも言うべきそれは、エレンの殺意に満ちた眼と殺気に反し、余りにもトートイ。

「どんな気分かね?エレン・イェーガーくん。人類の希望と呼ばれた君ももはや用無し、ただの塵じゃ。こうして私のオブジェとしてまだ息をしていることを光栄に思うのだな!」
「うううッ…うぐッ…!」

かつて自らの手を食い千切り巨人化していた丈夫な歯は、今や猿轡を噛み締めるただの道具でしかない。
自分の置かれた情けない姿に、そして目の前にいる憎むべき老人に、エレンの殺意は益々増幅していく。

「ん?なんだ?その目は。私のおかげで未だ生き長らえることを許されている身でありながら、生意気な…」

途中からは半ば呟くようにぶつぶつと文句を溢しながらもザックレーは側にあったランタンの中から蝋燭だけを取り出し、ゆらゆらと火を灯すそれをエレンの開かれた白く小振りな尻に近付け、すぼまった慎ましやかな尻の穴にゆっくりと傾けた。
視界の端にその光景を留めたエレンの目が見開かれる。
ぐうぐうと言葉にならないくぐもる声を上げ、自由にならない体を必死で動かそうと試みるが、頑丈な手枷と全身を拘束する器具はびくともしない。
それどころか拘束する器具は更にエレンの若くしなやかな体に食い込み、ますます加虐心をそそるザックレーを喜ばせた。
手元にある蝋燭が溶け、熱を持った蝋がエレンの淡い色の肛門目掛けてポタリと落下する。
そのあまりの熱さにエレンから瞬時に殺意が消え、代わりに一気に言い様のない恐怖が襲い掛かり、エレンは喉元を仰け反らせ、両目をカッと見開いた。
43 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:47:09.03 d
【 エレンジェル 〜 咽び泣く幼い性器 2 〜 】
                  
「あ゛っっっづっ!!あ゛あ゛っっ!あ゛か゛あ゛っ!!」
「ダハハハ!愉快愉快!そぉれ!ケツの穴がどんどん蝋で固まってきとるぞ!?」

ザックレーは、エレンの肛門の入り口のすぼみに溜まっては固まってゆく蝋を爪でカリカリと削って払い除け、また現れた皺の合間までをも丹念に埋め尽くすかのように、
再び蝋燭を慣れた手付きで微妙に移動させ、また肛門を蝋で固めては爪で剥ぎ落とす行為を繰り返した。
そうすることで絶え間無い熱がエレンの小さなすぼまりを攻め立てる。
時にはザックレーの節くれ立ち老いた指先が直に肛門を引っ掻き、エレンの内部に細やかな変化を見出だしていった。
ふるふると震える小さな性器が徐々に主張を始める。
なんなんだと自らに問うまでもない、この感覚は知り尽くしたもの…勃起である。

ー 違うッ…こんなのは違うッ……! ー

己が反応を必死に否定しながらも、あ゛ッ、あ゛ッ、と掠れた声を上げ始めたエレンの先程までとは違う色の混ざり様にザックレーはニタァと頬を持ち上げた。

「…そう言えば君はリヴァイの情婦だったな。ここにリヴァイのイチモツを夜な夜なくわえこんでいたのじゃったな?
こんな拷問では生温いかね?……いや、この下品で厭らしい腰のくねらせ方からして、これは拷問ではなくご褒美になっておるかのう?」

空いた手で顎髭を擦っていたザックレーはふむ…と嘯くと、その手をエレンの尻に伸ばす。
親指と人差し指でエレンの肛門をぐっ!と左右に拡げると、それでもひくひくと痙攣するすぼまりに火を灯したままの蝋燭を頭から一気に突っ込んだ。
火の消えた蝋燭が先端から煙を燻らせながらずぶずぶとエレンの肛門から腸内に姿を消していく。 
エレンは獣のような叫び声を上げながら、射精することなく死に際のゴキブリのように足の指先まで全身隈無くびくびくと痙攣させて拷問が始まって初めての絶頂を迎えた。
火を灯したままエレンの直腸深くに埋め込まれた蝋燭は、腸液によって完全にその役目の戸張を落とし、結合部分から淡い噴煙をくゆらせるだけであった。
44 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:47:34.39 d
【 エレンジェル 〜 咽び泣く幼い性器 3 〜 】
                  
蝋燭の煙か、巨人化能力を持つエレンの特異な体が回復を遂げる際のそれか。
暫しの間ザックレーは、蝋燭の太さの形にぴっちりと拡がりヒクヒクと蠢く紅く熟れた肛門を興味深く眺めていたが、
逆さに拘束されたエレンが半ば白眼を剥いて涎を垂らしながら意識を飛ばしているのを確認すると、ブーツの先でエレンのこめかみ辺りを蹴り上げて飛んだ意識を現実に引き戻してやった。
虚ろなエレンの目がさ迷い、冴え冴えとした目で見下ろしてくるザックレーを視界に捉える。
その目はエレンを死に急ぎと言わしめるほどの狂気とも言える獣の眼差しではない。ただひたすらに快楽を求め続ける雌の獣の目であった。

「うぐぅッ…ぐうぅッ……」
「まだ齢15じゃと言うのにとんだ売躱な体をしよって…そんなに蝋燭は気持ちよかったか?ん?わしの指二本分もない太さじゃぞ?」
「んッ!んぐッ!ぐぎぎぎいいいいぃッ!」

肛門の奥深くまで挿し込んだ蝋燭をヌウウゥゥ…と引きずり出し、抜ける寸ででまたヌブヌブと挿入する。
何度もそれを繰り返すうち、エレンの呻き声は徐々に色を含んだものに代わり始め、ザックレーの手が生み出すピストン運動に合わせるように腰を蠢かし出す。
エレンの意に反して勝手に前後左右にゆるゆると動く腰は艶かしくザックレーを誘った。
45 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:47:41.02 d
【 エレンジェル 〜 咽び泣く幼い性器 4 〜 】
                  
蝋燭を引き抜くたびにそれに吸い付くようにぬぷぬぷと盛り上がって山の形を彩る肛門は、挿し入れるとまた容易に異物を迎え入れ呑み込み窪んでいく。
ピストン運動を素早くしてやると肛門の入り口がその動きに連動して盛り上がり窪むという動きを繰り返して益々ザックレーを歓ばせた。

「ガハハハハ!!エレンよ!お前の尻の穴は糞をするだけでは物足りんようじゃな!ほぉれもっと腰を振り乱して踊れ踊れぇ!ダーッハッハッハ!」
「んごッ!?ぐごごごごぼぉッ!いぎっ!いぎっ!ひぎいいいいーーーーっっっ!!!!」

抜き挿ししては直腸に深く突っ込んだままぐりぐりと大きな円を描くように蝋燭で内部をかき回す。
腸液が入り混ざった結合部分からはブチュブチュとはしたない音を立てて汁を飛び散らせた。
エレンは逆さに固定されM字に足を開いたまま狂ったように腰を振り、後頭部を何度も背後の柱にぶつけては下半身の疼きから解放される瞬間を待った。
出したいッ!射精したいっ!思いっきりぶちまけたいっ!最高の快楽を早くっ!
涙と鼻水と涎を垂れ流しながら目を見開いてガクガクと自らの腰を揺さぶる。
全身がっしりと拘束された体で唯一エレンの思い通りに動かせるのが下腹部から尻にかけてのか細いラインのみ。
完全に勃起したぺニスからは先走りのカウパーがだらだらと糸を引き、縦横無尽に揺れ動くぺニスは時にエレンの腹を叩きながらもエレンの桃色に染まる体のあちこちを思う存分透明の粘液で汚した。

続く
46 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:48:06.44 d
某リジに長期間に渡り粘着しているルリンチ虎糞婆
                  
724 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! sage 2015/05/02(土) 02:43:01.55
>>722
難民でまで暴れて恥ずかしくない?
108 名無し草 sage 2015/05/02(土) 02:15:24.46
あかん高尾みたんのリジ草や
ドエロのルリジリ見た後やと生温いにも程があって大草原不可避や

735 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! sage 2015/05/02(土) 15:44:11.01
このスレで犬か毛玉の主しか描かないって笑われたら人間体主の単体表紙の本出すし
ドエロは兵受けしか描かないって笑われたら兵主18禁ログ投稿するし温くても18禁本出すし
本当に孝雄身たんは強がるのが大好きでダンシング楽しませてくれる弗だよな

12 Classical名無しさん sage 2015/05/02(土) 19:17:36.11
そんなにエロ描きたくないなら無理して描かなきゃ良いのにずっとエロ原稿描きたくないエロ原稿描きたくないって言っててなんなんだろこの人…結局固定じゃなくて逆カプ推しなんでしょ。さっさと逆カプに移動してエロでも何でも描けば良いのにな

206 名前:Classical名無しさん[sage] 投稿日:2015/06/19(金) 10:09:47.81
まあそれでもAB固定を装いつつ裏垢でA受けどエロ描きまくってるあの人よりずっとマシだけど

488 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! sage 2015/07/26(日) 01:49:07.62
>>423
高尾見が兵主本命はないは
兵受けエロの気合いの入りようと兵主エロのやる気の無さを見たらね

506 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! sage 2015/07/26(日) 07:35:56.40
>>502
団兵厨乙
47 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:48:13.07 d
某リジに長期間に渡り粘着しているルリンチ虎糞婆
                  
395 Classical名無しさん sage 2015/09/27(日) 14:10:24.05
火花で予約してた分厚い本のサークルが個人サイトの裏で逆カプエロ作品大量に上げてるのを知って予約キャンセル申請した
いくらプロフでABメインの雑食と言ってたって支部投稿作品はABだけだし
ツイもサイトもAB固定みたいなこと書いてるから騙されたよ…
道理でこの前から作品ブクマもRTも激減してたわけだよ

402 Classical名無しさん sage 2015/09/27(日) 17:11:36.54
描く方も雑食ならツイと個人サイトのプロフにも雑食と書いておけばいいんだよ
固定と思ってほしいからAB専門垢でーすと言いつつ裏に大量のBAエロ隠しているんだろう

431 Classical名無しさん sage 2015/09/27(日) 23:56:07.99
雑食なら堂々と支部でもBA作品上げたらいいのになんで隠すんだろうね
逆カプ萌えより固定厨が落としてくれるお金の方が大事なのかなやっぱり

↓虎糞↓
168 名無し草 sage 2015/10/06(火) 10:06:07.38
3日連続で同じ本がワンツーやは信者の多いサークルはすごいは草
4位・11位の刀本はぼったくリリやなぁ
裏垢でリリ受けエロ絵描いとった5位のリジ専業の本はお手頃価格やな

720 名無し草 sage 2015/10/07(水) 09:49:06.00
ルリ厨は高尾身たんがどれだけ多くのサークルと海鮮に嫌われとるか知らんのやな
48 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:48:39.09 d
ルリ晒しミンチ=エレナ=虎糞の特徴
                  
・極度のリジ厨、特に魚食えないが大好きっ!!!!!
・リジが貼られるとルリを貼り返す
・支部のみならず個人サイトやメアドまで晒す
・1月に壁博での殺害予告をしたババア=エレナ
・ルリは瀬早めろんの牛ジェルをパクった!と言い張るが全く似てない
・口癖はルリ婆(※ババアではなく婆と表記する)
・リジが命より大事で日々スレ荒らしに奮闘している30代後半喪女
・リジが晒されると荒らすがジリが晒されてもスルーすることから同じリリ受けが晒されていることには興味を持たない
・↑を指摘されると翌日からジリも晒すがリジだけは絶対に晒さない
・このルリンチババアがいる時はミンチがミンチコピペをしない……ルリンチババア=ミンチ=エレナ確定
・↑を指摘されるとミンチコピペをして時間を置いてまたルリジリ晒しをするわかりやすい荒らしミンチ=エレナ婆
49 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:48:45.89 d
8 名無し草 sage 2015/03/16(月) 02:22:03.60
アズ(魚食えない)@リプ放置すいません...ありがとございますまた来週!
2015年3月16日 12:01am
【腐女子カプ厨】巨雑6455【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net->画像>168枚
-------------              
>魚食えないのブログや
>http://blogs.yahoo.co.jp/jsay367gugdsg/folder/75635.html ;
>るーる草が痛々しいやろ 
------------- 
こんな腐れブログに来てくれてありがとう!!
  るーる
1 訪問した際にはコメントを残してください
2 画像を貰う時はコメ&ポチ忘れずに!!
3 荒らしは禁止
4 ファンポチしてくれた人はゲスブか報告所へGO!!
           以上です
守れない人はこないでください。
50 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:49:11.83 d
自分で*500usersタグを付けてたのにここで話題に出てすぐに米印を外して複垢で500usersタグを付け直した恥ずかしい難民ババアがこれな
                                          

http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6042292

365 名無し草 sage 2016/01/11(月) 15:55:14.03
昨年の11月に初投稿した作品がもうすがブクマ1000いきそうや
支部デビューしてまだ2ヶ月くらいやのにわい文才ありすぎやろ
51 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:49:19.33 d
 
      
 
 
 
 
 
      こう@壁博8け48a
      http://twitter.com/ko_m06
 
 
 
 
 
   
52 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/25(月) 15:49:46.44 d
http://twitter.com/__o30/
http://twitter.com/__0l0l/
http://touch.pixiv.net/member.php?id=120203

アズ=目玉焼き(魚食えない) ‏@az_0x
このアカウント今月いっぱいで消します見てくださってありがとうございました!こっちで飽きるまで息抜きしてます→@__0l0l
特殊性癖描きたいがために作ったR18鍵アカでしたが描けてません…そのうち公開します承認待ちしてくださってた方ごめんなさい


             _i⌒r-.、    
           ,,-'´   ノ
          ./     .l
          /       l     チ
   ((  ◯  .l魚食えない l     ン
      .ヽヽ、l  i      .l      ポ
       \ヽ l      l   ))  コ
      ,-'´ ̄`ゝ´ ̄`ヽ  ノl      ポ
     .,'    .,'   ◯ニ.ンl      ン
     i    i        .i
     ヽ、  丶      .ノ
      `'ー-.'´`'ー- ''´i .|
        凵      .凵


今月いっぱいも待たず2月14日az_0x削除(大爆笑)
53 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 16:36:32.47 0
ふぅやっと来れたで家庭訪問緊張するけど楽しかった
54 :
名無し草 (ワッチョイ 5ac2-8m9F)
2016/04/25(月) 17:13:05.26 0
いちょつ

>>5
わいもあかんかった
年々これ系が弱くなっていくは
これ以降も他の女キャラで出て来そうなネタやし脱落したかもしれん

でも設定は気になるは
どう見ても年子かせいぜい二つ違いくらいの見かけやのに
兄が覚えてる暖かい世界を妹が一切知らんぽいのが不自然やは
回想で薪にされた事しかわからんマッマの存在も謎や
気になるけど読む不快感がこあいジレンマや
55 :
名無し草 (ブーイモ MMa8-FeNN)
2016/04/25(月) 17:49:12.66 M
バレか
ついにメインキャラから死者が出るんか…
56 :
名無し草 (ブーイモ MMa8-FeNN)
2016/04/25(月) 17:50:48.04 M
家庭訪問いうたら昔わんが怖くて玄関開けれへん言うてた先生おったは
57 :
名無し草 (アウアウ Sa05-DbIH)
2016/04/25(月) 17:55:57.34 a
>>56
わん恐がる先生かわええやんドーベルマンやらボクサーとかならわいもビビるけどでも何故かわい犬なつくねん最初吠えてもなつくからわんめっちゃ好きやで
58 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 17:56:58.39 0
Wi-Fi切れてた
59 :
名無し草 (ブーイモ MMa8-FeNN)
2016/04/25(月) 17:58:51.79 M
玄関のわんシールにびびって隣のわいんちにわんどこにおるんや怖いねん言うてきたは
田舎やから隣の敷地に繋いであったんやけどな
60 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 17:59:04.54 0
明太子スパするで崩れた明太子安かったからいっぱい買ってもたし自宅用は崩れた明太子で十分やねん
61 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 18:00:08.25 0
>>59
BBAもかわええ何でうちに聞くねんってなるよな草
62 :
名無し草 (ワッチョイ 837e-DbIH)
2016/04/25(月) 18:06:13.40 0
>>13
どれになったん?
わい的に朝顔は無いは思うたんやけどまさかな…
63 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 18:14:06.09 0
あっせやエンブレム決まる日?わいは朝顔が好きやってんけどな…ほなご飯準備してくる
64 :
名無し草 (アウアウ Sa05-DbIH)
2016/04/25(月) 18:15:47.03 a
決まったでBBA達よ
一番地味やったやつや
65 :
名無し草 (ワッチョイ 987d-DxlG)
2016/04/25(月) 18:26:45.78 0
さっきイサヤマンの地元がニュースに流れた気がしたんやけどわいの気のせいやったろうか
落石がどうこう言う…
66 :
名無し草 (ブーイモ MMa8-FeNN)
2016/04/25(月) 18:30:10.36 M
エンブレム出来レースや言うてたけどマジやったんやな
ほんま大人は汚いは
67 :
名無し草 (アークセー Sx8d-DbIH)
2016/04/25(月) 18:32:20.10 x
>>14
遅レスやけどなんでわいにいきなりリリ萌レスが…?
68 :
名無し草 (スプー Sdfe-DbIH)
2016/04/25(月) 18:49:26.44 d
カラーテストみたいなんしたらなんやいっつも凄いみたいな結果出るんやけどこれを生かせるものがまるでないは…
69 :
名無し草 (ワッチョイ d185-gALo)
2016/04/25(月) 19:01:15.94 0
>>66
ああいう風に同じようなカラーの作風の中にひとつだけ違うの入れると
人間心理としてそっちにばかり目が行くことになるんやから
せめてアルファベットをランダムにすべきやって言うてた人おったな
圧倒的多数決で決まった言う話やけどどういう人らが選考したんやろ?
70 :
名無し草 (ワッチョイ 39ca-DbIH)
2016/04/25(月) 19:03:41.54 0
>>67
ごえんあ
生生々しい話をしてたからつい
71 :
名無し草 (アークセー Sx8d-DbIH)
2016/04/25(月) 19:10:06.85 x
>>70
なんや生繋がりか草
わいは足フェチちゃうから進撃で足といえばジョンが空中浮遊してたことと腰ちゃんキックの時ふぁー足なげーと思ったくらいやな
72 :
名無し草 (ワッチョイ 3e07-1Geo)
2016/04/25(月) 19:14:13.36 0
はあああああああああああ
天才タイプの頭のええ人の説明わからんはーーーー
1からちゃんと説明してや!!!!
73 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 19:20:09.11 0
ただいま〜
わいもジョン空中浮遊見た後だともう浮いとるようにしか見えなくなってもうた

>>72
分かるは
結論にたどり着くまで10工程あるとして
頭ええ人って1→2→3→4...って順やなくて急に1→8とか飛んだりするんよな
74 :
名無し草 (ブーイモ MMa8-FeNN)
2016/04/25(月) 19:26:19.34 M
BBAポンデリングが食べたいよう
75 :
名無し草 (ワッチョイ 3e07-1Geo)
2016/04/25(月) 19:43:02.32 0
>>73
反応してくれてありがとうや
ほんまに辛かったねん鼻で笑われムッとされわいわもう…
はぁ腰ちゃん折檻したい気分や
76 :
名無し草 (ブーイモ MMa8-FeNN)
2016/04/25(月) 19:52:01.08 M
モチモチモチモーチ
77 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 19:52:16.38 0
わいは牛丼食ったで

>>75
それが上司とかだと避けようがなくてからいんよな
けどそういう目に合う度に自分も分かりやすい説明心がけようと思うは
あと腰ちゃんにもちゃんと1から説明するんやでババア…
78 :
名無し草 (ワッチョイ 3e07-1Geo)
2016/04/25(月) 20:14:35.17 0
>>77
わかるはー自分が説明する時はわかるようにしたろ!思うやんな
腰ちゃん折檻やめてあらいリリもふもふする事にするは
狼ジェルの肉球もフニフニしたろ
79 :
名無し草 (ワッチョイ 52a2-FeNN)
2016/04/25(月) 20:29:20.54 0
二次のホストジェルええな
ジェルじゃないけどジェルと思ったらたまらん
イサヤマンジェルのスーツ姿見たいは
スーツ屋さんとコラボしてほしいで
80 :
名無し草 (ワッチョイ 371d-DbIH)
2016/04/25(月) 20:29:39.46 0
スレ立ても保守もお通夜〜
81 :
名無し草 (ブーイモ MMa8-FeNN)
2016/04/25(月) 20:42:29.82 M
ミスドセールやったから買いまくったで
82 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 20:44:00.25 0
>>78
くじの動物達かわえかったな
>>81
ええなポンデいっぱい買えたけ
83 :
名無し草 (ワッチョイ 8d40-Nwwb)
2016/04/25(月) 21:03:28.68 0
なんでうちのマッマはこんなわがままなんや…
金か金が無いからか
84 :
名無し草 (ワッチョイ 75c8-FeNN)
2016/04/25(月) 21:29:37.47 0
>>82
買ったけどまっまが食っとる…
85 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 21:31:12.57 0
>>84
ああ…
86 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 21:32:15.65 0
わいは31行きたいねん
ずっと31%やねんで

【熊本地震 復興支援「ゴールデンウィーク ダブル31%OFF」】
期間中(2016年4月22日〜5月8日)のキャンペーン対象商品ダブルコーン・ダブルカップの売上の一部を、熊本地震被災者支援のために義援金として寄付いたします。
87 :
名無し草 (ワッチョイ 75c8-FeNN)
2016/04/25(月) 21:33:44.77 0
>>86
あかん毎日通わな
88 :
名無し草 (ワッチョイ 371d-DbIH)
2016/04/25(月) 21:38:36.57 0
アッイッス!アッイッス!
89 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 21:50:41.54 0
ふああああああルパンの歌色々聞いて耳が幸せ///色々なルパンの曲作った人センスありすぎやねん古い歌の歌詞もはわわ///や!
こんなにわいドストライクな歌が似合うルパンはええ男やってんなあんまり気づかずにいてごめんな今からルパンの大ファンや
31わいも行きたい熊本の人も食べれるとええな甘いものはストレスに効く気がする
90 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 21:52:00.54 0
わい31はナッツトゥユーが好きやねん
限定のパイナップルチーズケーキも食べたいは
91 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 21:52:42.59 0
わいはとっつぁん派
92 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 21:56:36.80 0
銭形も好き!みんな好きやわい今までルパンの歌詞よう知らん買ったし不二子ちゃんが一番好きやったけどひゃあルパン…好き///スパダリはまた別格やけど
93 :
名無し草 (ワッチョイ 6180-DbIH)
2016/04/25(月) 22:12:19.42 0
陣痛中明らかにうんこ漏らした感じして
痛くて痛くて正気保っとかれへんのに
頭の片隅は冷静に人前でうんこ漏らしたの流石にないはーなんて取り繕うたらええんや…看護婦さんに謝らんといかん…
うんこ漏らしてすみません?いやうんこはないやろ…て散々考えた挙げ句大しちゃったかもごめんなさい…てちょっとぶりっこしながら謝ったて友達の出産の話聞いてヒョエッ…なったは
出産て大変なんやな…
94 :
名無し草 (ワッチョイ 5c40-DbIH)
2016/04/25(月) 22:15:26.32 0
ルパン89のやつが好きやったような気がする
95 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 22:17:47.79 0
>>93
いや…そこはご面倒おかけしましたでええんやないか…?
96 :
名無し草 (ワッチョイ 6180-DbIH)
2016/04/25(月) 22:23:33.67 0
>>95
言われたらほんまそんなんでええな
わいも話聞いとるときヒェェなっとって流したけど草
うんこ漏らしたことについて恥ずかしいしなんか言わんとあかんと思ったんやろうな
97 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 22:25:46.83 0
>>96
というか出産時うんこ漏らす人それなりにおるらしいで
別にその友達だけちゃうから安心したらええ草
98 :
名無し草 (アウアウ Sa05-DbIH)
2016/04/25(月) 22:25:47.52 a
わい出産時のうんこて普通て聞いたで
99 :
名無し草 (ワッチョイ 6180-DbIH)
2016/04/25(月) 22:29:03.05 0
うんこ普通なんか恐ろしい世界や…
痛いのも無理やしわいには縁がない話や…
100 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 22:29:05.85 0
出産時のうんこは許されるねん
なお出産時以外のうんこは
101 :
名無し草 (アウアウ Sa05-DbIH)
2016/04/25(月) 22:46:26.10 a
だっぷんだ!
102 :
名無し草 (ワッチョイ 75c8-v6Xr)
2016/04/25(月) 22:48:53.77 0
わい全然痩せんのは夜に甘酒飲むからやろか…
103 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 22:51:55.16 0
いや体に影響及ぼすもんが何か一つだけに限定されるってあんまないんちゃう
104 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 22:51:55.47 0
風呂気持ちかったはBBA達入った?
出産でンコは普通ではないレアや思うねんけど
105 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 22:52:39.46 0
さよか
わいのまっまうんこしたで
わいはうんこと共に生まれし子や
106 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 23:00:18.50 0
うしろ穴を指でグッてするし大丈夫
107 :
名無し草 (ワッチョイ f1b8-DbIH)
2016/04/25(月) 23:01:10.11 0
わい朝風呂にする
ええよね
108 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 23:04:10.30 0
エンブレムわいの朝顔ちゃんダメやったんか…がっかりりや
109 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 23:09:20.16 0
風呂上がりの手作りあずきバー食べる歯磨きはちゃんとやる
【腐女子カプ厨】巨雑6455【なんでもあり】 [無断転載禁止]©2ch.net->画像>168枚
110 :
名無し草 (ワッチョイ 75c8-v6Xr)
2016/04/25(月) 23:11:01.24 0
わい一万円のクリーム買ったは
これでツルツルや
111 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 23:13:48.87 0
>>110
しゅげーわい化粧品で高いのでさえ5000のパウダーや無頓着やねん
112 :
名無し草 (ワッチョイ 75c8-v6Xr)
2016/04/25(月) 23:14:59.00 0
BBAになると科学の力に頼らなあかんねん
ラインで買うには高過ぎてな
113 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 23:15:54.61 0
わいとっくにBBAやねん
114 :
名無し草 (ワッチョイ 5c40-DbIH)
2016/04/25(月) 23:16:34.73 0
あずきバー見ると伝統的なあずきバーの製法を思い出して仕方ないねん
115 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 23:19:29.01 0
>>114
ホンマの教えて下さいやで
116 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 23:20:29.68 0
つかわいあずきバー食べきる前に既に眠たい…
117 :
名無し草 (ワッチョイ 75c8-v6Xr)
2016/04/25(月) 23:21:05.91 0
あずきバーは歯破壊兵器やねん
118 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 23:22:33.40 0
でも水羊羮凍らせたあずきバーおいしいで
119 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 23:26:55.27 0
あかん眠たいラップして再冷凍や歯磨きしてこ
今日芸能人倒れたらしいな大丈夫か
120 :
名無し草 (ワッチョイ 3e07-1Geo)
2016/04/25(月) 23:27:51.49 0
>>114
あずきバーのあのサクッていう食感だいすっき
同じく赤城のブラックの食感も最高や
121 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 23:39:35.03 0
ふぁーソニッケアすぐ切れるから充電してきたはまだ寝れんやんか
122 :
名無し草 (ワッチョイ 43a2-DbIH)
2016/04/25(月) 23:49:12.77 0
ネタバレまで約10日やな来月104期いうかジェルが気絶から覚めそうや思うねん
123 :
【小吉】 (ワッチョイ 75c8-v6Xr)
2016/04/26(火) 00:19:52.10 0
明日の運勢
124 :
名無し草 (ワッチョイ 864d-FeNN)
2016/04/26(火) 00:26:20.02 0
ジェルあれ気絶しとんの?
目開けとるくない?
125 :
名無し草 (ワッチョイ 612d-DbIH)
2016/04/26(火) 03:30:24.66 0
ファイヤーパンチって漫画おもろいんやけど
主人公がジェルすぎてなんとも言えん気持ちになるは
126 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:51:49.30 d
 エレンは女遊びの激しい部類の人間だ。
 それ故、セックスフレンドは何人かいたりする。
 それでも社内で変な噂がたたないのは、大人になって相手を選ぶ目が肥えたからだろう。
 この女性ならば面倒なことにはならないと思った相手としか夜を共にしない。
 それは主に年上の女性が多かったが、それ以外でもエレンは女性から誘われることが多く、異性から好かれることが多い。
 一番面倒なのは年下で、自分のことを可愛いと思っている女だ。そういう子には「君にはもっといい男がいるよ」と困ったように笑って言えば、なんやかんやあっても最終的には丸く収まってくれる。

「イェーガーさん、今夜空いてますか?良かったら、ご飯でも一緒にどうかなと思って…」

 少し頬を染めて上目遣いで窺う年下の女性社員は可愛く、不安そうに身を縮ませるものだから胸が寄って柔らかそうに弾んだ。あー、ヤりてぇな。その胸に顔を埋めたらどれだけ心地よいかと想像すると、今すぐにでも誘いに頷いてしまいそうだ。
しかし、この子は明らかに“彼女”という地位に拘るタイプだろう。エレンは面倒なタイプだな、と心の中で溜息をつく。

「あー、ごめん。今日はちょっと約束があって」

 眉を下げて心底申し訳なさそうに謝る。
 本当は約束などなかったし、できればその柔らかそうな体を堪能したかったが、秘書課のお姉さんの家にセックスをしにいく予定ができた。たった今。

「そうなんですか…残念です」
「ごめんな。また今度、皆でどこか食べに行こう」
「はい…」

 決して“二人で”という約束はしない。下手に期待させて踏み込んだ関係を少しでも築いてしまえば面倒な事になるのはわかりきっている。
127 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:52:17.09 d
 彼女は“皆で”と言ったことに少々不満げな顔を見せたが、すぐにその場から去ろうとはしなかった。
 エレンの顔をじっと見つめてくる彼女に、まだ何か用があるのかと首を傾げて見せる。

「何?」
「イェーガーさん、受付の先輩と付き合ってるって本当ですか?」

 拗ねた口調で問われ、エレンは「は?」と聞き返した。
 確かに受け付けには一人、体の関係を持つ女性がいたが…どうやら、二人で会っている所を社員に見られていたらしい。

「いや、付き合ってないよ。ああ、たぶん飲み会が終わった後で、帰る方向が同じだったから送っていった時じゃないかな」

 にっこり笑って答えると、彼女は「そうですか」と言って頭を下げて去って行った。
 受付の子と遊ぶのはしばらくやめておこう。
 今日行こうと思っていた秘書課のお姉さんの所もやめて、社外のセフレの家に行こうかと思案し始める。
 けれど、考えるのも面倒だ。
 学生の頃は良かった。
 何も考えずにセックスできたし、責任だって今ほど重くはない。
 あの頃は感じなかった色々なものが重くのしかかって来て、呼吸がし辛くなる。
 息苦しくて生き苦しい。
しかし、そうは思っても、まあどうにでもなるか、と思ってしまう程にはエレンは楽観的だった。
 だからこそ、こんなにも簡単に“下”を味わうことになってしまったのだ。
128 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:52:23.88 d
「こいつは俺と約束があるんだ」

 エレンは、えっ、と声を上げそうになる。
                  
「どうして課長がイェーガーさんと…?」
「大学の後輩だ」

 本当に?と彼女がエレンの顔を見上げてくる。
 リヴァイがどういうつもりなのかはわからないが、これで腕を離してもらえると言うならうまく合わせるしかない。
 エレンは曖昧に笑って頷いた。

「…わかりました」

 彼女もリヴァイに言われたら従うしかないのだろう。
 渋々ながらも腕を離した彼女の顔は明らかに納得していなかったが、エレンはホッとした。
そうして、二次会へ行くメンバー 早くこの場を去りたいとばかりに頭を下げる。が、

「っ!」

 ぐい、と強い力で腕を掴まれて足が止まる。
 先ほどまで掴まれていた柔らかい手じゃなくて、固くて大きな男の手だ。

「おい、助けてやったんだ。少し付き合え」
「あのオレ約束があるんですけど…」
「キャンセルだ」

 それを決めるのはお前じゃねぇ!と叫びそうになるのを堪えて、じっとリヴァイを見つめる。
 男に腕を掴まれても全く嬉しくない。エレンは柔らかくてすべすべで、暖かい肌が好きなのだ。
129 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:52:49.77 d
 リヴァイは片手で器用に煙草を取り出すと、一本口に咥えるとキンッといい音を立てる金属製のオイルライターで火をつける。
 煙草吸うんだ、と単純な感想が頭に浮かんだ。
                  
「…、吸い終わるまで待ってやる」

 その間に女に連絡しろと言うことなのだろう。
 リヴァイは、エレンのこれからの約束がセフレに会いに行ってセックスをするだけの大した物ではないことだと気が付いているのだ。
 試しに腕を引いてみてもビクともしない。
 力であってもこの男には勝てそうにない。
 エレンは諦めてスマートフォンを取り出すと、女に電話をかける。
 目の前で電話をさせるのだから性質が悪い。
 相手が電話に出る間、リヴァイは余裕で紫煙を吹かす。
 様になっているのが少し腹立たしい。
 エレンは煙草を吸わない。
 女が煙草を吸った後はキスしたくないと言ったからだ。
 まぁ、エレンも特に吸いたいとは思わないし、だからと言って喫煙者を責めるようなことも言わない。
 単に興味がないのだ。

「…もしもし。悪い、今日は行けねぇわ。…うん、また今度」

 電話越しの会話はたったのそれだけだ。
 相手もその辺は割りきっているから文句を言われることもない。
 そう、この程度の約束なのだ。
 エレンが溜息をつきながらスマートフォンをスーツのポケットにしまうと、リヴァイはちょうど足で煙草を踏み消していた。

「行くぞ」

 そしてそのまま強引に腕を引かれて歩き出す。
 どこに行くのか全くわからない。
 リヴァイとは本当に接点がなかったし、これから飲み直すと言われたって決して楽しくはないだろう。
130 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:52:56.64 d
 ようやっと離してもらえた腕を摩って、リヴァイに声を掛けると、彼は何食わぬ顔で上着を脱ぎ始めた。
                  
「エレン」
「えっ、はい」
「お前、先に風呂に入って来い」
「は?どうして風呂に入る必要が?っていうかオレはどうしてここに連れて来られたんですか?」
「うるせぇ。いいから入って来い。俺は潔癖なんだよ」

 こちらの質問は全く無視で、とにかく風呂に入れと言われる。
 リヴァイには何を言っても駄目だということはこの短時間でよくわかった。
 エレンは、まぁ、こんないいホテルの風呂なんてめったに入れないからラッキーくらいに思うことにして、大人しく従った。

 結果的には満足だった。
 風呂はエレンが足を伸ばしても十分すぎるほど広々としていて、何しろジャグジーバスだった。
 さっぱりした気分で部屋に戻ると、リヴァイはこんなところだというのに仕事をしていた。
 本当に仕事人間なんだな、とエレンはイメージ通りなことを一つ見つけた。

「上がりましたけど」
「…ああ」

 リヴァイはパソコンから視線をエレンに向ける。
 なんだか本当に変な感じだ。
 今までろくに会話をしたこともない他の課の課長と高級ホテルの一室に一緒にいて、自分は風呂上がりでバスローブを着ているなんて。
 何だこれ、とエレンは心の中で呟いた。

「えーっと、リヴァイ課長もどうぞ」
「リヴァイでいい」
「? はい。じゃあリヴァイさん?」

 言うと、リヴァイは緩めてあったネクタイをしゅるりと抜いて、こちらに近づいてくる。
 風呂にはいるんだろうな、と思って場所を退く。
131 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:53:21.82 d
だが、それは叶うことなく、まだ機構に新しい手に腕を掴まれて強引に引きずられてしまった。
                  
「えっ!?ちょ、なんですか!?」

 そのまま大きなベッドへと乱暴に転がされる。
 そして、何も言わないリヴァイにマウントポジションをとられてしまった。
 両腕を掴まれたままベッドに押し付けられて全く起きあがることができない。

「お、い!何すんだよ!」
 
 エレンはその手が逃れようと必死でもがくが、驚くほどにリヴァイの体はビクともしなかった。
 嫌な汗が流れる。
 やばい、この状況は危険だ、と頭の中で警報がなっている。

「何をするって?あんだけ女食っておいて今からテメェが何をされるのか本当にわからねぇのか?」
「っ、どけ!」

 わかる。わかるから焦って、逃げようとしているのだ。

「…ハッ、男にこんなことして何が楽しいんだよ、頭おかしいんじゃねぇの…っ?」

 リヴァイを睨み上げ、わざと吐き捨てるように言った。
 怒らせて、少しでも隙ができれば逃げられる。

「生憎、お前をどうにかしたいと思うくらいには頭がイカれちまってるからな。そういう口を利かれるとかえって興奮する」

 顔は笑っていないから到底興奮しているようには見えなかったが、腹に押し付けられている固いものが何なのかくらい分かる。
 エレンは本格的にまずいと焦り、顔を引きつらせた。

「ちょ、ちょっと待ってください、リヴァイさん。落ちついてください、」
「俺は落ちついている。ああ、でも、興奮するなっていう意味ならそれは無理だな」
「ほ、本当に待ってください!オレ男ですよ!?」
「さっき言っただろうが、頭がイカれてるって」

 エレンの抵抗はもうないようなもので、リヴァイは言いながらエレンの両手をネクタイで纏めあげた。
 そして器用に片手で自分のワイシャツを脱ぎ始める。
 徐々に見えてくる筋肉質な体が、今自分の上にのっているのは柔らかい女ではなく男なのだとエレンに分からせた。
132 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:53:27.89 d
「なんで、こんなこと…!」
「お前、女とセックスすんの大好きだろ?そういう奴を自分の雌にしてぇんだよ」
「ク、ソ…!変態野郎…!」

 リヴァイはわざとエレンの耳元で吐息交じりに囁く。
 こうすると相手の体が震えることをエレンはよく知っていた。
 ごりごりと腹に固くなった性器を押し付けられてゾワゾワと不快感が体中に広がった。

「ん!…っ、ゃ、んぅ…っ」

 頭の上で両手を押さえつけられ、顎も掴まれると強引に唇を塞がれる。
 少し唇がカサついていると思ったのは最初だけで、下唇を食まれ、ぬるりと舌をねじ込まれるとすぐにそんなことは忘れた。
 男の舌は思っていたよりも柔らかかった。
 それに、気持ちのいい場所を的確についてくる。
 いつもは自分が相手の唇を好きに貪っているのに、今は逆に貪られている。
 リヴァイの深いキスは食べられてしまいそうなほど強引で、獣のようなキスだった。

「ん、は、ぁ…ぅ、」

 くちゅくちゅと音を立てながら舌で口内をかき混ぜられて、だんだん頭がぼうっとしてくる。
 何も考えられなくなって、リヴァイに支配されてしまったのかもしれないと馬鹿なことを考える。
 だから体に力が入らなくなって、されるがままになっているのだと。
 唇を離したリヴァイが「良い子だ」とでも言うように頬を撫でる。
 エレンは浅く呼吸を繰り返しながら、潤む瞳でリヴァイを睨みあげた。

「おいおい、キスなんて飽きるほどしてんだろうが。ちゃんと応えてみろよ。それとも女にしてもらってんのか?」
「っはあ!?んなわけねぇだろ!」
「じゃあやってみろよ」
「クッソ…!」

 暗にキスが下手くそだと笑われてた。これでも女にはうまいと褒められる。
133 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:53:55.93 d
 そもそもそっちが無理矢理キスしてきたというのに上手いも下手もあるか、とエレンはプライドを傷つけられたようで安い挑発に乗ってしまった。
 縛られた腕をリヴァイの首の後ろに通されて、顔が近くなる。
 エレンはその腕でリヴァイの顔を自分の方へ寄せると、その唇に噛みつくようにキスをした。
 初めは唇をあむあむと食んで、その後で湿った舌を口内にねじ込む。
 上顎をなぞり、相手の舌の裏を舐めあげる。じゅる、と唾液を吸って柔く舌を噛んだ。
                  
「ん、は……ん、……っんん!?」

 いきなりれろりと舌を絡められ、エレンは驚いてくぐもった声を上げる。
 先ほどとは打って変わって大人しかったリヴァイの舌が突如動きだしたのだ。
 頭を枕に押さえつけられて、リヴァイの口内に入りきった舌を吸われ、甘噛みされる。

「ふ、…っん、ぅぅ……はぁっ、」

 先ほどまで握っていた主導権はいとも簡単に奪われて、また食べられてしまいそうな程深いキスにエレンは息をするのも精一杯で、必死にリヴァイの背中をどんどんと叩いた。

「んっ…んぅ!?」

 肌蹴てしまったバスローブの隙間からリヴァイの指がエレンの体に直に触れて、ビクリと跳ねた。
 相変わらず口内への刺激を止めてもらえず、体に力が入らない。
 リヴァイの指がエレンの乳首に触れて、ゆっくりと捏ねられる。
 指の腹でぐりぐりと押しつぶされると、そこからビリビリとした快感が走った。

「ふ、ん、ぁ……ゃめ、っ!」

 そしてぷっくりと腫れてきてしまったそこを、今度は指先で弾かれるように弄られる。
 その度に体がビクビクと跳ねてしまう。
 エレンが女にやるようなことを自分の体にされていた。
 もし自分がするならば次は軽く摘んで少し痛くした後に、それを労わるように舌で愛撫する。
 でもエレンは女じゃない。
 こんな所で感じるわけがないし、リヴァイがそれを男であるエレンにするはずがない。
134 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:54:01.99 d
 エレンは祈るような気持ちでリヴァイの腕から逃れようと必死になった。
 しかしそれは、リヴァイから逃げたいのではなく、確かに感じる快感から逃れたかったのだと気付く。
 いつの間にか唇は解放されていた。
                                      
「ああっ…ぁっ…!」

 散々弄られた乳首にリヴァイの暖かい舌がべろりと這った。
 エレンは目を見開いて体を仰け反らせ、高い声を上げた。言い訳のしようもない喘ぎだった。

「良い声で鳴くな。女の前でもそうなのか?」
「ちが…っん、やめ、…っひぁ!」

 ガリ、と歯を立てられた。
 ビクンッと体が勝手に跳ねる。

「なぁ、気付いてるか?テメェのここ」
「あっ、や…なんで…っ」

 リヴァイの指が触れたソコ。
 熱く、固くなって上を向いている。
 獣のように唇を貪られ、女のように乳首を弄られただけだというのにエレンの性器は固く勃起していた。
 それはリヴァイの愛撫に感じて、興奮してしまったという紛れもない証拠だった。
 エレンは自身が勃ってしまっているということに唖然とした。
 一方でリヴァイは心底楽しそうに笑って、エレンの性器を撫でている。

「一回出させてやる」
「ぁ…っや、やだ…っ」

 もう逃げられないと思ったのか、リヴァイはエレンの上から退くと、その足の間に移動して性器を両手で扱いた。

「あっ…さわんなっ!…ぁ、っく、」

 女のよりもごつごつした掌。
 性器を包みこんで、少し乱暴にも思える扱き方は女にされるそれとは全然違った。
 そして、ぱくり、と大きく口に咥えられた瞬間、エレンは身を捻じって声を上げた。

「ひぅっ!っ、あっあっ、ゃめ、…っ舐め…っぁ!」
「初めてでもねぇだろうが」
「ぁ、ゃだ…っこんな、っ」
135 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:54:32.21 d
 リヴァイの口は大きくて、キスの時のように食われてしまうと思う程深い口淫だった。
 わざとじゅるりと音を立てながら舐めしゃぶられて、尿道の入り口にも強引に舌をねじ込まれる。

「やぁ…っ!たべないで…はぁっ、ぁ」

 クスリとリヴァイが笑った気配がしたけれど、強すぎる快感にエレンは気がつかない。

「あっ、で、でる…っ、んっ…あっ?」
「気が変わった」
「ぁ、なに…っ」

 リヴァイの言っていることの意味を理解できないまま、乱暴にひっくり返される。
 そして尻を高く上げさせられて、四つん這いの格好にされた。

「やめろ…っ何する気だ…っひあ!?」

 べろ、とありえない場所に湿った舌の感触がした。

「ケツでイかせてやる」




このあとめちゃくちゃに奥まで突かれてメスにされた。




中途半端になっちゃったけど時間切れじゃった(笑糞)
136 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:54:52.61 d
 エレンが手の内に堕ちてきたことにリヴァイは少なからず喜んでいた。
 触れるそばから薄い体が跳ねて嬌声が上がる。
ぐずぐずに蕩けた後孔に己の性器をねじ込めば女のようなそこはうねり、きつく締め付けられた。
 気持ちいい、もっと、と向けてくる視線と甘い声が腰にくる。
 普段は澄ましたような顔が真っ赤に染まるのは気分が良かった。
 支配する感覚。
 エレンのことは大学を卒業しても繋がりのあった後輩から話を聞いたことがあった。
 すごくモテる奴がいてめちゃくちゃ女食ってるんですよとかそんな感じだったと思う。
 中には女をとられた奴もいるとも言っていた。
 本当に女にモテる奴と言うのは自分からいかなくても勝手に女から寄ってくるものだ。
 きっとそいつは“とった”んじゃなくて女が馬鹿だったのだろうな、とリヴァイは思った。
 そしてそのエレン・イェーガーが同じ会社に入社していたと知ったのはリヴァイが課長に昇進して何年か経った頃だった。
 女性社員がよく騒いでいる男性社員の名前を聞かされた時リヴァイは記憶の端にあった女遊びの激しい男の名前がエレンだったことを思い出したのだ。
 合同の飲み会の席でリヴァイは初めてエレンをエレンだと認識してその人物を見た。
 隣にはリヴァイの部下である女性社員が座っていて体をべたべたと触られている。
 他の女性社員も皆控えめながらも羨ましそうに視線を向けていた。
 エレンは女遊びが激しいようには見えなかった。
 年下の女性に圧され気味でずっと眉を下げて困っているようだったしどちらかと言えば女性経験が少なそうにも見える。
 部下が豊満な胸を押し付けているというのにエレンは全くそれには動じずに上手に自分を制御しているようだった。
 ああ、わざとか。
 と、すぐにわかった。
 初心な男のような顔をして、おそらくエレンは遊ぶ女をちゃんと選んでいる。
 面白い。あの男を自分のモノしたい。
 リヴァイは酒を煽るふりをして口元を歪ませた。
 エレンを組み敷き、その澄ました顔が快楽に歪んで喘ぐ姿を見たくて堪らなくなった。
 だがそれは、エレンを陥れたいというわけではない。
 女が挙って手に入れたがるエレンを男である自分が支配して、お前らが欲しがる男はこんなにも可愛い顔で強請るんだ、と言う優越感に浸りたかったのだ。
137 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:55:19.24 d
 自分にだけ見せる顔。
 雄の顔ではない、男のリヴァイだけが見ることのできるエレンの雌の顔が見たいのだ。
 
 結果的には…そう、結果的にその顔は見ることができたし、自分のモノにもできたと思う。
 だが、エレンは心までは許してくれなかった。

「ぁ…っん、ァ、…っ…っ」
「良さそうだな、エレン」
「んっ、…は、ぃ…気持ち、いいで…すっ…はぁ、アッ」

 エレンの背中にちゅ、ちゅ、と吸いつきながら、腰を掴んでぐちゅぐちゅになって解れている後孔を何度も穿つ。
 外気に触れれば熱を持つローションがエレンの内側の肉をますます敏感にしてしまうようで、中は火傷しそうなほどに熱かった。
 こうしてセックスするようになって、どのくらい経つだろうか。
 季節は冬から春に変わっていた。
 エレンはやたらセックスをねだるようなことはしなかったが、我慢ができなくなるとリヴァイのところにやってくる、そんな感じだった。
 まだ少し、リヴァイに抱かれることに戸惑っているようだったが、指先でも触れればその体は素直になった。
 だが、エレンは最初の頃よりも声を抑えるようになった。
 息ができているのか心配になるくらい顔を枕に押し付けて、くぐもった喘ぎだけを漏らす。
 手はシーツを強く掴んでいて決して離そうとはしなかった。
 まだ男に抱かれる屈辱に耐えているのかと思いきや、気持ちいいか、と聞けば素直に気持ちいいと言うのだ。
 だったら我慢などせずにもっと喘げばいい。
 縋りつけばいい、そう思っているのにエレンは頑なにそうしようとはしなかった。

「おい、エレン」
「ぁ…な、なに…っン、ぁっ、っ、…アッ、ひあ!」

 声を我慢されるのが不愉快で、一度性器をずるりと抜くと、その体をひっくり返してこちらを向かせた。
138 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:55:53.99 d
 顔を真っ赤にして瞳を潤ませ、荒い息を繰り返すエレンは驚いた様子でリヴァイのことを見た。
                                       
「な、なん…っ」
「たまにはいいだろ。声、我慢するな」
「えっ、ちょっと待っ…アッ、」
「いいな?」
「あぁ…っ、待っ…リヴァイさ、まだ、いれないで…っ」
「ああ?」

 抜いたばかりでまだ少し開く後孔に性器の先端を押しあてようとした所で、エレンがそこに手を伸ばしてそれを阻んだ。

「こっちでするなら、…っ手、縛ってください…っ」
「……なに?」
「お願いします…っ初めての時みたいに、両手、縛ってください…!」

 リヴァイはその懇願に頭がくらくらした。
 確かに初めてエレンとセックスした時はネクタイで両手を縛ったが、あれはエレンが抵抗するからであって、別にリヴァイに緊縛の趣味があるわけではない。

「…理由は?」
「………なんとなく、…っいいから!早く縛れよ!」

 じゃないと入れさせない!みたいに叫ぶものだから、リヴァイは不本意ながらも床に放られた自分のネクタイをとる。
 だが、エレンに「皺にしちゃうからオレのにしてください」と言われて、言うとおりにエレンのネクタイでその両手首を縛った。

「痛くないか?」
「平気です…もっときつくてもいいくらい」

 これでも結構きつめに縛ったのだが、少しの隙間にエレンはまだ不満そうだった。

「跡がついちまうだろうが」
「いい…明日、休みだから」

 そして、手首を縛るために起きあがらせていた上半身をどさりとベッドに横たえると、エレンはリヴァイを見上げて言った。

「ひどく、してください…」

 エレンが何を考えてこんなことを言うのかがわからなかった。
139 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:56:07.29 d
・・・

「…それで、それを聞かせられた私はどうすればいいの?」

 わいわいと騒がしい居酒屋でリヴァイは正面の女性に冷ややかな視線を向けられていた。
 話していた内容は、到底人のいるところでは出来ないほど下世話な話で、この居酒屋が辛うじて個室になっているということだけが救いだった。
 隣の声はもちろん聞こえる。
 まぁ、両隣ともすでに酔っぱらって大騒ぎなので、こちらの会話が聞こえてはいないと思うけれど。
 エレンが縛ってひどく抱いてほしい、と言ってくる。
 と、リヴァイは酒が届くなり言ったのだ。

「俺はアイツと普通にセックスがしたい。優しくしてやりてぇ」
「…すればいいじゃない。」

 自分の話をする時はあんなに嬉々とした表情でマシンガンのように話すくせに、リヴァイの話にどうでも良さそうに答えるのは幼馴染で腐れ縁のハンジ・ゾエだった。

「必死に頼むアイツの顔に弱いんだ」
「それでもしたいならすればいいんだよ。」
「でもアイツは受け入れようとしねぇ。縛れと言われる度に一線を引かれているような気がする」

 ハンジの溜息が聞こえてきた。

「ていうか、もう自分のモノにしたんでしょ?それでいいじゃん。そうして欲しいって言うならやってやりなよ」
「そうだが…いや、そうじゃねぇだろう…」
140 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:56:33.48 d
 それはそうなのだが、リヴァイはそれでは納得できないのだ。
                                      
「どうして?だってさ、君の可愛いエレンはセックスしたい時に来るわけで、リヴァイだって自分の所にきてくれて満足。
彼は気持ちいいし、お互いそれだけの関係でしょう?実際それだけの繋がりでしかないんだし。むしろそれだけの関係ならもっと気持ち良くなりたいと思うんじゃない?」

 女だというのにはっきりと言うハンジに若干ひきつつも、リヴァイは一理あるその言葉に眉を潜めた。

「それじゃあ体だけみてぇじゃねぇか。アイツはセフレじゃない」
「は…本気で言ってる?セフレじゃなかったらなんなの?」

 リヴァイは黙考した。
 エレンはセフレじゃない、と思う。
 確かに会う度にセックス…というかセックスするためにしか会わないけれど、リヴァイの中ではそうではないのだ。
 それだけの関係にしたくない。
 男のエレンが同性のリヴァイに抱かれる。
 そんなのは普通では考えもしないことで、彼が自分の手の中に堕ちてきただけでも僥倖だと言うのに、リヴァイはそれ以上をエレンに求めているのだ。

「リヴァイがそう思ってなくても、きっと彼はそう思ってるよ。だからリヴァイの所に行くし、セックス自体に嫌とも言わない」
「…それでも、アイツは」

 正直に話そう。
 リヴァイはエレンのことを自分のモノにしたいと思っていた時から、たぶん、彼に好意を抱いている。
 支配したいと思うのも、自分のモノにした優越感に浸りたかったのも、全てただの独占欲だったのだ。
141 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:56:40.09 d
 こんな関係になる前、二度も強引に抱いてしまったことを少なからず後悔していたリヴァイは言うなればただの不器用で、これ以上嫌われてしまわないようにするにはどうしたらよいかわからなかった。
 とりあえずもう無理矢理に手を出すことを止めよう。
 そう思っていた。
 けれど、あの日エレンに初めて呼びとめられた。
 何か言いたいことがあるのだろうと、あまり人の入らない保管室に連れていった。エレンは何も言わなかった。
 体に触れてしまうと抑えが利かなくなるから、出来るだけ触れないようにした。
 煽るようなことを言ったのも、エレンがいつでも逃げ出せるように逃げ道を作ったつもりだった。
 けれど、エレンは顔を仄かに赤くして、潤んだような瞳を期待に染める。
 以前とは違う反応だった。
 物欲しそうにリヴァイを見つめ、自分から顔を近づけてくる。
 ああ、可愛い。
 思わず少し笑って、エレンが逃げ出す前に唇を塞いでいた。
 その可愛い顔をもっと見たくなった。
 でも、離れようとしても強くスーツを引き寄せられて、求められた。
 可愛すぎる、このまま食べてやろうか。
 だが、このまま流されてまたセックスしてしまっては関係は変わらないと思った。
 エレンを抱きたい欲求ばかりで埋め尽くされるこの脳みそを冷やす必要がある。
 ちょうど明日から出張だし、この間に頭を冷やして、帰ったらすぐにハンジを呼びだそう。
 そうしてエレンがリヴァイに責任取れと言ってきた日にハンジを呼びつけたのは、一刻も早くエレンとのことをどうにかしたいからだった。
 けれど結局、他の男と寝るなどと言いだしたエレンに腹が立って、強引に腕を引いていた。
 もっと触れて欲しくなるから離せと言うエレンは可愛くて、でも男の所に行くから離せと言うエレンは可愛くなかった。
 他の男などに触れられてたまるか。
142 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:57:05.81 d
 男であるエレンに女を抱くなとは言わない。
 異性を抱きたくなるのは人間として当然のことで、そこまでエレンを縛りつけることはできない。
 リヴァイが抱くのは女も男も関係なくエレン一人で十分だけれど、それはリヴァイが勝手に決めたことだ。
 でも、どうしても、エレンを抱く男は自分だけでありたかった。
 そうしたらエレンは、苦しそうに顔を歪めて自分の元に堕ちてきた。
 女の人のところには行かないで、と声を震わせて。
 エレンももしかしたら自分以外を抱かないでほしいと思ってくれているのかもしれないと思った。
 己だけを求めて欲しいと。
 エレンもリヴァイと同じ気持ちなのかもしれない、と。
 そう思ったら我儘だとわかっていてもエレンの心が欲しくなった。
 優しくして、甘やかして、体だけじゃなくて心も満たせる存在になりたいと思いはじめてしまった。
 エレンは頑なにリヴァイとの間に濃い一線を引いているのだ。それが嫌でたまらない。

「エレンに距離を置かれるのが嫌なんだ」

 は?とハンジが声を上げる。

「あー…ちょっと待って。話が食い違ってる気がする。この話は緊縛プレイじゃなくて普通にセックスしたいんだけど…っていう話?それとも、セフレじゃなくて恋人にしたいんだけど、っていう話?」
「……後者だ」
「リヴァイは言葉が足りないよ。不器用すぎる」

 ハンジが呆れたように言った。
 自分の頭の中だけで考えすぎて、ハンジとの会話が飛んでしまったらしい。
 昔から、肝心なことが伝えられない。
 仕事になれば話は別だけれど、リヴァイは自分の気持ちを言うのが苦手だった。

「てっきりリヴァイとエレンはただのセフレだと思っていたよ。でも、リヴァイは彼が好きなんだね。だったら初めからそう言ってくれる?何で悩んでるのかわからないけど、そんなの好きだって言っちゃえばいいんだよ」

 簡単に言ってくれる。
 けれど、女とのセックスをそれなりに楽しんでいたエレンを無理矢理にでもあんな体にしてしまったのに、心までも手に入れようだなんてリヴァイは思えなかった。
 好きだと告げてしまえば、彼は二度とリヴァイを求めようとはしない気がする。
 リヴァイがエレンを抱く理由をエレンは聞いてこない。
 それはきっと聞く必要がないからだ。
143 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:57:12.66 d
 そんなことどうでもいいからただ抱いてほしい、と、それだけを望んでリヴァイのところにきているのかもしれない。
 二人の間に気持ちは不要だと言われているような気がした。

「言ったらエレンはもう俺の所にはこない。…離したくねぇ。でも、同じように気持ちを返して欲しいと思うのは、ただの俺の我儘だ」
「…すいぶん拗らせたね。どちらにせよ、恋人にしたいならセフレのままじゃ駄目だよ。それはわかるよね?」

 私はそのエレンと話したことはないからわからないけど、と続ける。

「好きって言えないなら言わなくてもいい。でも、もし本当に一線を引かれているっていうなら、一度踏み込んでみるべきだ。踏み込めば、エレンが何を考えているかわかるんじゃない」

 ハンジはそう言うと、荒技だけど、と笑いながら酒を煽った。
・・・

 その日、就業間際に『今日空いてますか』とメッセージがきていて、前回セックスしたのは一週間程前だったから、結構間が空いたな、と思った。
 エレンからの誘いを断ったことは一度もなかった。
 一度でも断れば、きっとエレンとの次はないと思ったからだ。
 幸いにも残業のある日と被ったことはない。
 そのメッセージに『いつのも場所で』と返せば、ただ既読とついただけだったが、それは了解の意だった。
 そしていつものホテルに向かう。
 エレンは周囲の目を気にしてなのか、時間をずらしてその部屋に訪れる。
 そして大して休むこともなく、ベッドになだれ込んで唇を貪り、しばらくその体を愛撫すれば、エレンは「縛って」と言いだすのだ。

 今日もいつものように部屋に訪れたエレンは、足を踏み入れるなり「風呂に入ってもいいですか」と言ってきた。
 リヴァイは初めこそ潔癖などと言ったが、あれは目の前で女に触られていたのが不快だっただけで、本当は大して気にならない。
 とは言っても、不思議な事にエレン限定なのだが。
 常であれば、もう我慢できないとばかりにエレンから手を伸ばし、キスをねだってくる。
 珍しいな、と見つめれば少し俯いたエレンがぼそりと言った。

「さっき、女の人に抱きつかれて」

 それは一体どういう状況だ。
144 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:57:39.12 d
 大方、告白されただとか、ここに来るまでに変な女に捕まったとかそんなことだろうと安易に予測はついたが、そんなこと言わなければわからないのに、わざわざ風呂に入ろうとするなんて、余程不快だったのだろうか。

「…入って来い」

 エレンは少しホッとしたように息を吐いて、バスルームへと向かった。
 手持無沙汰になってしまったリヴァイは窓際の椅子に腰を下ろして煙草に火をつけた。
 戻って来たエレンは性急に求めてきた。
 温まった体はしっとりとして仄かに赤く色づいている。
 作り出された香料の香りが鼻についたが、いつものエレンの香りではないそれを纏っていると、他人のモノになった彼を抱いているようで少し興奮した。
 唇が腫れてしまいそうなほど貪りながら、エレンが弱いところを攻める。
 乳首はすでにぷっくりと固くなって主張し、指で捏ねたり弾いて引っ掻いたりすれば、エレンはアッ、と短く喘いだ。
 性器はもうとっくに固く勃ち上がっていて、ふるふると震えながら先走りを垂らしている。
 触れたらすぐにでも弾けてしまいそうなそれに何の予告もなしにしゃぶりつけば、エレンは背を反らせて一際大きく喘いだ。

「ひあっ、はぁっ……ゃめ、ん〜っ…」

 女とのセックスが好きだったエレンが口淫されたことがないはずはないだろうに、いつだって彼は嫌がる素振りを見せる。
 初めてエレンとセックスした時は「たべないで」と舌ったらずに言われて、早急に入れたくなるほど興奮した。
 女よりも深く、激しい口淫に食べられちゃうかもしれない、と思っているのだとしたら可愛くて堪らない。

「ンッ、も、でちゃ…から、…あっあっ」

 じゅぶじゅぶと音を立て、吸いながら唇で扱き、舌を性器に絡みつかせた。
 だんだん呼吸が短くエレンに、もう限界なのだと察すると、先端をじゅっと吸ってから口を離した。

「あ、くっ…、〜〜っ」

 イきそうなところで口を離されて、思わず出してしまいそうになるのを耐えるように指がシーツを握りこんだ。
 はぁっはぁっ、と詰めていた息を整えるように呼吸を繰り返して、体を震わせる。
 リヴァイが体を起こせば、エレンは敏感になった体に必死に力を入れて慣れたように背を向けて尻を上げた。
145 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:57:45.69 d
 強張っている背中を撫でればビクビクッと震えて中もヒクつく。
 背中に覆いかぶさって乳首をきゅうっと摘めば中もリヴァイの性器をぎゅっと締め付けた。
                  
「動くぞ、」
「あ…っ、はぃ、突いて、奥、いっぱい突いて…っんっ、ああっ、」

 エレンの顔の横に手をついて、エレンの言う通り奥まで突いてやる。
 その度にガクガクと体が震え、ぢゅ、ぐぢゅ、と中をかき混ぜる音とエレンの甘い声がリヴァイの耳にまで届いた。

「あっ、もっと、ひどくして…っ、んぅ、はぁっ、アッ、アッ中に、中にだしていいからぁっ…もっと、してっ…ひああっ」

 また、エレンは「ひどくして」と乞う。
 瞳を潤ませ、快感に熱い吐息を洩らしつつも、その顔は苦しそうに歪められていた。
 これはエレンの本意ではないと思った。だとしたら、何故そんなことを言うのだろう。
 リヴァイは頭の片隅でそんなことを考えながらも、快感には逆らえずに腰を振った。
 奥を突き、ぎりぎりまで抜く度に聞こえるぐじゅ、ぬりゅ、といやらしい音が思考を鈍らせようとしていた。
 リヴァイの放った白濁がうつ伏せになった状態で荒い呼吸を繰り返しているエレンの背中を汚していた。
 セックスを終えた二人の間に甘い時間などは訪れない。
 リヴァイは口下手であるし、エレンは最近リヴァイに控えめな態度で、セックス中以外はあまり言葉を発しなくなった。
 エレンの背中に吐き出したものを雑に拭ってやる。
 その足でベッドから降りると、なんだかやりきれないような気分になって、断りもなく煙草に火をつけた。

「…中に出していいって、言ったのに」

 独り言のように呟かれたエレンの声はしっかりとリヴァイの耳に届いていた。

「体きつくなるだろうが」
「別に。女じゃあるまいし、子どもができるわけでもねぇんだから中出しでも何でもすればいいじゃないですか」

 やけに棘がある言い方だった。

「そういうことじゃねぇ。お前のことを心配してんだ」
「男なんだからそんなに弱くありません」
「…おい。お前さっきから何を言ってる?」
146 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:58:26.26 d
 リヴァイはまだろくに減ってもいない煙草を灰皿に押し付けて、ベッドに近づいた。
 いつの間にかエレンはリヴァイに背を向けるようにして横になり、体を丸めていた。
                  
「だから、優しくすんなって言ってんですよ」
「ああ?」
「ひどくしていいって何度も、」
「俺にそんな趣味はねぇ」

 最初は無理矢理だった。
 だからこそ、今は優しくしてやりたいし、エレンの体にあまり負担がかからないようにしてやりたいと思っているのに、エレンは何故か苛立っているようだった。
「何が気に入らない?」
「…、」
「何でもすればいいって言うなら、俺はお前にひどいことはしたくねぇ」

 言うと、エレンは体を起こして泣きだしそうな声で叫んだ。

「オレは男なんですよ…っだから、女みたいに抱くんじゃねぇよ…っ」

 リヴァイは目を瞠った。

「そんな風にするなら、他を当たってください」
「エレン」
「女みたいにするなら、女とセックスした方がいいに決まってる」
「おい」

 ベッドから降りようとするエレンの腕を思わず掴んだ。
 エレンを女の代わりだと思ったことはないし、女のように抱いていると思ったこともない。
 ただエレンの体を気遣いたくて、甘やかしてやりたかっただけなのに、それが裏目に出ているというのか。

「離してください」

 ハンジが言っていた。
 長い付き合いの私でさえ勘違いするんだから、エレンはもっとわかっていないよ。
 リヴァイは言葉が足りないから、無理やりにでもわからせるしかないかもね。
147 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:58:53.32 d
 ああ、その通りだ。エレンは何もわかっていなかった。
何も伝えていないのだから、理解しろと言う方が無理かもしれない。
 でも、今リヴァイが何を言ったとしてもきっとエレンは信じようとはしないだろう。
 だったら、わからせてやる。
 その腕を引き寄せ、ベッドに組み敷いた。
 顔には出ないが、明らかに苛立っているリヴァイを見て、エレンが目を大きく見開いて驚いた。

「な、離せよ…っ」
「うるせぇ、黙ってろ」
「んぐっ」             

 リヴァイは大きな掌でエレンの口元を塞ぐと、そのまま押さえつけて耳元で囁いた。

「そんなに言うなら、俺のやりたいように抱いてやる…テメェが言ったんだ、何されても文句言うんじゃねぇぞ」

                  






こりゃ続いちまうやつだ(大爆笑)
148 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:59:13.11 d
 リヴァイとのセックスは気持ち良すぎて堪らなかった。
 腹の奥に男根を埋め込まれ、ぐぽぐぽと出し入れを繰り返されれば敏感な肉はそれを締め付ける。
 まるで女のようだ。
 リヴァイに言われたように本当に雌にでもされたのかと思う程に、与えられる快感にエレンの体は喜んだ。
                  
 エレンには複数の異性のセフレがいる。
 けれど、リヴァイとセックスをするようになってから、めっきり連絡をしなくなった。女とのセックスが嫌になったわけではない。
 だが、女を相手にしたところでリヴァイとのセックス以上に気持ち良くなれるとも思えないのだ。
 そうして自然に連絡が薄れれば、相手からの連絡がくることもなく、関係は消滅していった。
 それだけの関係だ。セフレなんて。
 そんな関係を持つ女が複数いるエレンには、リヴァイとの関係もそれと同じなのだと思うことに時間はかからなかった。
 リヴァイとはセフレだ、とエレンの頭は完結する。

 エレンは長らく、恋というものをしていない。
・・・

 社内でリヴァイの姿を見ると、体が疼く。
 あの禁欲的なスーツの下には見た目よりも筋肉質な体が隠されていて、書類を持つあの指が男であるエレンの体を翻弄する。
 そして限界まで高められた体に追い打ちをかけるように太くて固い、熱が…と考えてエレンはハッとした。
 仕事中なのにこんなことを考えてしまうのなんて初めてだ。
 今まで適度にセフレで性欲を発散してきたエレンには、こんな待ちわびるような、我慢できなくなるほど体が疼くなど経験したことない。
 これも、リヴァイとセックスするようになってからだ。
 女では満足できないエレンの性欲は全てがリヴァイに向けられてしまう。
 以前のエレンであれば、相手の都合など考えずに連絡していたが、リヴァイに同じようにするのは何故か躊躇われた。この躊躇いを煩わしいと思いつつも、エレンはどうしてもリヴァイに対しては強く出られなかった。
 それはエレンが抱かれる側だからかもしれない。
149 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:59:43.40 d
 リヴァイは他の男や女を抱くことはできるが、エレンはリヴァイに拒絶されてしまったらただ取り残されるだけで、その体を自分で慰めなければならないのだ。
 エレンは他の男は駄目だ、というリヴァイの言葉を律儀に守っている。元々、他の男に体を差し出す気など少しもないが。
 幸い、先ほどに会って話をした時、今日は比較的忙しくない、と言っていた。
 たぶん今日ならば断られずに済む。『今日行くから』『セックスさせて』なんてセフレ相手にメッセージを送っていたのに、相手の様子を窺うように『今日空いてますか』とメッセージを送るのは何とも笑える話だった。
・・・
                  
 体は正直で、気持ち良すぎる快感に勝手に逃れようとしてしまう。
 何かに掴まっていないと逃げてしまうからエレンはシーツを握りしめ、枕に顔を押し付けて耐える。
 呼吸も苦しい方がいい。
 思考が快楽で埋め尽くされている今、口を遊ばせていたら何を言ってしまうかわからないからだ。
 気持ちいいと素直に言うことも、もっととねだることも、そのためにセックスしているのだから構わないが、何か余計な事を言ってしまうのではないかと何故か不安だった。

「ぁ…っん、ァ、…っ…っ」
「良さそうだな、エレン」
「んっ、…は、ぃ…気持ち、いいで…すっ…はぁ、アッ」

 背中を吸われて体が揺れた。
 リヴァイは最近、抱き方が変わった。
 以前は強引で、全身を食べられてしまうような、圧倒的な雄の欲望を見せつけられるようなセックスだったように思う。
 抵抗しようとするエレンを力でねじ伏せて、無理矢理言うことを聞かせるような。
 けれど、最近のリヴァイはそうではなかった。簡単に言えば、優しい。
 エレンが抵抗をしなくなったからかもしれないと思ったが、それにしたって優しかった。
 無防備になった背中に小さく口付けられて、確かめるように触れられて、中を穿つ力は強いのに体に触れる指は優しかった。
 リヴァイが強く体を押さえつけてくれないから、エレンは余計にシーツを握る指に力が入る。
150 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 03:59:50.32 d
 そんな風にリヴァイが抱くから、正面から受け止めるのはどうしても躊躇われた。
 掴むものがなくなってしまうし、リヴァイの優しいキスを正面から受けるのは何故かとても怖かった。
 それなのに、
                  
「おい、エレン」
「ぁ…な、なに…っン、ぁっ、っ、…アッ、ひあ!」


 急に中から性器をずるりと抜かれると、正面を向かされた。
 肩で息をしながら額にうっすらと汗をかくリヴァイが瞳に映る。

「な、なん…っ」
「たまにはいいだろ。声、我慢するな」
「えっ、ちょっと待っ…アッ、」
「いいな?」

 リヴァイの性器がもう一度、ヒクついて欲しがる後孔に狙いを定めた。

「あぁ…っ、待っ…リヴァイさ、まだ、いれないで…っ」
「ああ?」

 駄目、駄目だ。
 エレンは急に焦り出して、咄嗟にそれを手で阻んだ。
 このまま入れられてしまったら駄目だ。
 掴むものを失った手はおそらく目の前の男に縋るように手を伸ばしてしまう。
 そして引き寄せて、自由になった唇はリヴァイの耳元で何を言ってしまうかわからない。
 もうすでに喉元まで出かかっている言葉に、エレンはとても嫌悪している。
151 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:00:18.33 d
 社内で偶然リヴァイを見かけただけで熱くなってしまう体を引きずりながら家に帰ってくると、ご飯も食べずにベッドに横になった。
 油断すれば熱を持つソコに手が伸びてしまいそうになる。
 でもまだ、リヴァイとセックスしてから二日しか経っていない。
 頻繁に連絡して迷惑になるかもしれないと考えるなんて本当に笑える。
 リヴァイから連絡が来たことは一度もなかった。
 むしろあっちから連絡が来れば、遠慮なんてしなくて済むのに。
 リヴァイはセックスしたいと思わないのだろうか。
                  
「…あぁ、」

 エレンは思い出した。
リヴァイはあの日、女は許すと言っていた。
 リヴァイはエレンが他の女とセックスすることに対して何も思わない。
 エレンはリヴァイが抱く他の女を自分と重ね、夢の中の自分にさえ嫉妬したというのに、リヴァイは何とも思わない。
 それはたぶん、リヴァイも他の女を抱いているからだ。
 だからリヴァイはエレンに連絡をしてこない。
 所詮、リヴァイにとってエレンは都合のよいセフレでしかないのだ。

「っだったら、なんで」

 そもそもリヴァイが男であるエレンとセックスをする理由なんて、妊娠のリスクなく快感を得ることができるからに決まっている。
 女のように濡れない体は面倒ではあるが、後に面倒事を引き起こすことはない。
 妊娠しない、体も弱くはない。
 自分の欲望を気兼ねなく発散することのできる体。
152 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:00:25.11 d
 だったらどうしてあんな優しく、壊れ物を扱うように触れるのか。
 そんな風に女も抱いているのか。そう思うと堪らなく嫌だった。
見つめる視線も、その指も、女と比べているんじゃないかと不安になる。
 固いばかりの体が女よりも勝っているところなんてない。
 比べるくらいなら、女とセックスしたほうがいいに決まっている。
 エレンとリヴァイの関係はエレンが一方的に手を伸ばしているようなものだ。
 リヴァイはその手をとることも、遠ざけることもできる。
 だからこの関係はエレンがリヴァイに手を伸ばし続け、リヴァイの愛想がつきないよう適度に距離を保たなければすぐに終わってしまう。
 終わらせたくない、とエレンは思う。
 どうして、と問えば今まで気付かないふりをしていた感情はすぐに答えをくれるかもしれない。
 けれど、この薄っぺらな関係にその感情は重すぎる。
 のせればのせるほど歪んで、終いには壊れてしまうかもしれない。
 エレンはそれが怖かった。
 女のようにされたこの体はもう女を抱くことはできない。
 他の男に抱かれることを望まないエレンはリヴァイとの関係が壊れてしまったら、どうなってしまうのだろう。
153 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:00:51.33 d
・・・
                                     
「あー!エレンくん!」
「お疲れ様です」

 リヴァイと時間をずらして会社を出る時、ちょうどエレベーターで一緒になった年上の女性社員二人に挨拶をする。
 金曜日だからか、気分の良さそうな二人はこれから飲みに行くらしい。

「エレンくんも行かない?」
「女二人じゃつまらないし、エレンくんが来てくれたら嬉しいな」

 細い手がエレンの腕に巻きついて、ぐっと寄せられる。
 もはや抱きつかれているのと同じくらいに近い距離に、エレンは少し眉を顰めた。

「…すみません。これから予定があって、すぐに行かなくちゃならないんです。また機会があれば御一緒させてください」

 そう言って頭を下げると、えーつまんない!という高い声を聞きながら、早足でホテルへと向かった。
 スーツに少しだけ残る女の匂いを消したかった。
 女に触れられたのが不快だったわけではない。
 女に触れられた体をリヴァイに差し出すのが嫌なのだ。



「動くぞ、」
「あ…っ、はぃ、突いて、奥、いっぱい突いて…っんっ、ああっ、」

 背中越しにリヴァイの荒い呼吸が聞こえる。
 リヴァイの性器が動かされる度にぐちゅぐちゅと聞こえる音は自分の体の中で出されているのだとは到底思えなかった。

「あっ、ん、ふ…っ、ぅ、」

 中が擦れる。気持ちいい。
 エレンは熱に浮かされたような頭でぼんやりと考える。
154 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:00:59.66 d
 今リヴァイはどんな顔をしているのだろう。
 しかし、振りかえることも、正面からリヴァイを受け止めることもしたくはなかった。
 その顔を見てしまったら、絶対に彼に縋ってしまうと確信していたからだ。
 リヴァイを求め、その体に腕を回して引き寄せて呼吸を近くて感じたい。
 離したくない、離して欲しくないと口走ってしまいそうになる。
 それを耐えるようにエレンは枕に顔を押し付けて、リヴァイに縋りつきたい衝動をシーツを握りしめて耐えるのだ。

「んっ、…っ、ぅ、はぁっ…あ、」

 無防備な背中をリヴァイの指が滑る。優しくするな、まるで大切だとでも言うように触れるな。

「あっ、もっと、ひどくして…っ、んぅ、はぁっ、アッ、アッ中に、中にだしていいからぁっ…もっと、してっ…ひああっ」

 エレンは「ひどくして」と乞う。
 そうでないと、好きになってしまうから。

 もう、限界だ。
 リヴァイに優しく触れられるのが、女のように触れられるのが辛くて堪らなかった。
 そうじゃない。
 アンタがオレを抱くのはそういうことをしたいからじゃねぇだろう。
155 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:01:28.85 d
 エレンは決めつけて、リヴァイに当たった。
 終わらせたくないと思っていたのに、一度口にしてしまえば止まらなくなった。
                  
「オレは男なんですよ…っだから、女みたいに抱くんじゃねぇよ…っ」
「そんな風にするなら、他を当たってください」
「女みたいにするなら、女とセックスした方がいいに決まってる」

 ああ、終わりだ。
 こんな面倒な事を言う奴はセフレに必要ない。
 だったら、捨てられる前に自分から離れた方がマシだ。
 けれど、リヴァイはエレンの腕を掴んだ。
 強引にベッドに組み敷かれて、視界に映ったリヴァイは明らかに苛立っていた。なんで、どうして。
 アンタはオレを引きとめる程オレを想ってはいないだろう。
 他の女を抱いていいと言う程オレを想っていないくせに。
 ただのセフレとしか思ってないくせに。
 どろどろになっているくせにきつく締め付けてくるエレンの後孔に自分の欲望をねじ込んでから、一体どのくらいの時間が経ったのだろう。
 優しくするな、と言って嫌がるエレンに思考が鈍るくらい甘い愛撫を続けた。
 何度射精したかもわからないし、何度かは出さずに、中で達していたと思う。
 エレンの腰にはもう力が入らずに、リヴァイの手によって支えられているようなものだった。
 こちらに背を向けているエレンの体が可哀想な程に震えていた。

「ぁ…、はぁ、…っ、」

 熱い吐息と小さな喘ぎ。
 挿入してから一度も動かしていない性器はもうエレンの中で溶けてしまったのかと思うくらい馴染んでいた。
 リヴァイも頭がぼうっとしてきていた。
 体中が熱くて、痺れて、神経がむき出しになってしまったみたいに、少し動いたり、呼吸が体に触れるだけでゾクリとした快感が走った。
                  
「…っ、」
「あっ…っ、…っ」

 熱くて熱くて堪らない。
 額をつたった汗が白く震える背中にポタリと落ちる。
 エレンの体がビクッと跳ね、内側の肉がリヴァイを締め付けた。
156 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:01:49.59 d
 熱い。苦しい。動きたい。
 悪戯をするみたいにきゅんきゅんと締め付けてくる後孔を叱りつけるようにめちゃくちゃに突いて、擦って、泣かせてやりたくなる。
 しかし、エレンが自分から手を伸ばし縋りついてくるまでは動いてやる気はなかった。

「ゃ…、動いて…っ動いてくらさ…ぁ、はぅ…っ」
「駄目だ…っ」
「ああっ…、ゃめ…っ」

 体に力が入らず、自ら動かすことのできないエレンは顔を真っ赤にし、回らない舌でリヴァイにねだる。
 可愛い、堪らない。
 我慢できずに項にちゅうっと吸いつけば、エレンの口から甘い声が上がった。
 リヴァイの性器を締め付けるのはもはや反射だった。
 エレンは腹の奥からじわじわと全身に広がり犯すような快感から逃れるように必死にシーツを掴み、枕に頬を押し付けていた。
 もうだめ、やだ、うごいて、あつい、とうわ言のように喘ぐ。
 気持ちいい。
 でも、あと一歩のところで手が届かない。
 快楽という水に溺れ続けているような感覚だった。
 この苦しさから引き揚げられて安心したい。
 そうでなければ、もういっそ力尽きて気を失ってしまいたい。
 でも、リヴァイはそのどちらも許さなかった。
                                         
「っ、は…な、なんで…っ動いてくれな…っぁ、」
「なんで?お前がひどくしろって言ったんだろうが」

 文句は言うなって言ったよな?
 そう言って、耳の裏を舐めしゃぶる。
 たっぷりと唾液を絡めた舌で、じゅるっと音を立ててそこを吸うと、またきつく締め付けられた。
 油断すれば持って行かれそうになる。リヴァイとて限界に近かった。
157 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:02:20.00 d
「うぁ…っ、ゃ…っ、あついっ…リヴァ、ィさんの…っあっ」
                                
    
 根元まで沈めた性器はエレンの媚肉に小さく締め付けられて、もう長い間動かしていないのに全く萎える気配もない。
 それどろこか、エレンの喘ぎと熱い呼吸に煽られて興奮しっぱなしだった。

「ぉ、お願い…っリヴァ、イ…さ…っあ、っ」

 シーツを握りしめていた指が震えながら、エレンの腰を掴んでいるリヴァイの手に触れて、きゅっと握りしめた。

「エレン、」

 こんな風にエレンから触れられるのは久しぶりだった。
 何かの拍子に触れることはあっても、セックス中に求めるように触れることをエレンはしなかった。
 いつもそうだった。
 エレンが掴むのはシーツや枕。リヴァイはそれが面白くなかった。
 後ろからしているのだから仕方ないとは思っていたが、気付けば後ろから挿入するように体勢を変えるのはいつもエレンの方だった。
 強引に正面を向かせても、エレンは頑なに縛れと言ってくる。
 ああ、こいつはわかっていて俺に縋ってこない。
 そう理解したのはエレンに線を引かれていると感じたのと同時だった。

「お前は、俺が嫌いか…」

 自然と口から出てしまった声は思っていたよりも弱々しかった。
 繋ぎとめるように握り返した指は震えていたかもしれない。
158 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:02:34.09 d
 強引にこんな体にしてしまったエレンの自由を奪いたくはなかった。
 エレンはリヴァイには抱かれるが、男を好きなわけではない。
 もちろん女とセックスしたくなる時だってあるだろう。
 これから先、一緒に生きていきたいと思う相手も見つけるかもしれない。
 だから、女とセックスすることは許したし、気持ちを告げることもしなかった。
 線を引かれて、心までも渡すつもりはないと思っているのならばそれでも構わなかった。
 だったらせめて、体だけは。セックスしている時くらい恋人のように甘やかして、恋人のように抱き合いたいと思っていた。
 けれど、エレンは決してリヴァイに縋りつこうとはしなかった。
 エレンからメッセージが来る度にホッとして、もっと、とねだられると求められているようで嬉しかった。
 いい歳した男が、年下の男の一挙一動で嬉しくなるし、辛くもなる。
                  
 今だって、エレンが自分の指をちょっと握ってくれただけでぶわりと心の底から沸き上がる何かがあった。
 好きだ、と言ってしまいそうになる。
いっそ告げて、エレンがもう自分の所へこないと言うのならばそれでもいいのかもしれない。
 だったら、最後くらいはエレンが泣いて止めろと言ったって、気を失うまで甘やかしてやりたいと思った。
幸い、エレンは今、今まで散々線を引いてきたリヴァイに縋ってしまう程余裕がないし、もう思考もままならないだろう。
 もしかしたら聞こえていなかった、なんてこともあるかもしれない。
 そんな都合のいいことを考えてしまうくらいにはエレンを手放したくはなかった。
 無理矢理エレンを襲った奴が何を言っているんだ、とリヴァイは自嘲する。
 いくら強い人間でも、弱い部分はある。
 それがリヴァイにとってはエレンだった。
 エレンを自分のモノにしておきたい。でも、縛りつけたくはない。
 この葛藤がリヴァイの判断を鈍らせる。
159 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:03:00.05 d
「ひっ…!?〜〜っ!」
                  
 掴まれた指を放りだすように離して、ぷっくりと固く尖る乳首を指先で刺激する。
 二本の指で挟んで潰すようにねじれば、エレンの体が一際跳ねて、達してしまったのがわかった。
 性器が痛いほどに締め付けられる。その締め付けに性器がさらに大きくなった。
 ゆっくりと、あまり刺激しないように性器をずるりと抜く。
 性器の先端と、ぱくりと開いたままの後孔が粘りのある糸を引いていた。
 頭がくらくらする。少し擦れただけで出してしまいそうになった。

「アッ…っ、ぁ!」

 その小さな刺激でさえエレンは耐えきれずまた達してしまったようだった。  ビクビクと跳ねる性器が先走りと自身の出した精液でどろどろ濡れている光景はなんともいやらしい。
 その力の入らないエレンの体を気遣うようにして仰向けにさせる。
 瞳を潤ませ、とろけた表情を見せるエレンに、さらにリヴァイは興奮して、性器を固く猛らせた。
 はぁ、はぁ…と震えた呼吸が聞こえる。リヴァイは正面からエレンを抱きしめる。
 直に抱きしめたのなんて、初めてかもしれない。

「エレン…、頼むから、俺に触れてくれ…」

 情けない、縋りつくような声だった。
 耳元で、戸惑うように息を呑んだ音が聞こえた気がした。
 まだエレンの手はシーツを弱々しく握っている。

「今日はお前を絶対に縛らない」

 今度こそ、エレンがヒュッと息をしたのを聞いた。

「ゃ、やです…っア!まっ…うぁ…っ」

 エレンの制止の声も聞かず、体の力が入らないのをいいことに太ももを掴みあげると、まだ熱くぬめるそこに性器を押し付け、腰を進めた。
「アアッ!…ぁ、っ…あつ…っま、待ってくださ…っ奥が、熱くて…っあ、んっ…びりびり、する…っ」
                  
 ぬちゅぬちゅと粘りのある液の泡立っている音が聴覚を刺激する。
 今までで一番気持ちが良い。
 女の中のように柔らかくなった後孔がリヴァイを欲しがって締め付ける。
 やっと与えられた快感に体が喜んでいるのがわかる。

「だ、だめ…っア、縛っ、て…っお願い…っああ!ん、ひぁっ」
「縛らないと、よくねぇか?そうじゃないよな?エレン、」
160 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:03:08.06 d
 エレンの手が彷徨って固く拳を作る。
 瞳は縋りつきたくて熱を孕んで潤んでいる。
 後孔もリヴァイの性器に吸いついて、もっと、離したくない、気持ちいいと言っている。
 その手だけがリヴァイを求めていなくて不自然だった。

「エレン、」

 その手を掴んで、指を絡めるとベッドに押し付けた。
 まるでお互い求め続けてやっと嵌ったみたいにぴたりと合わさった掌が熱かった。
 今日は縛られたエレンの手がそれを拒むことはない。
 快感で脳が痺れているエレンはその体を押し返さなければという考えも遅れ、その腕にすら力が入らない。

「ぁ、やめ、っ離して…っア、んっ、ああっ、やだぁ…!」

 直に体がぴったりと触れて、お互いの心臓が驚くくらい速く脈打っているのがわかった。
 ぱちゅ、ちゅぶ、と動かす度に結合部が泡立つ。
 奥を穿つのに合わせるようにエレンの荒い息と喘ぎが漏れて、いつもよりも近いリヴァイの耳に届いた。

「だめ、やだ…っ気持ち良すぎて…怖ぃっ、あぁっ、んっ、ひあ!」
「っ、怖いなら、俺に掴まっていればいい」
「んっ、や、アアッ、だめ…っそ、そんなことしたら…っあ、やらっ…」
「そんなことしたら?」
「す、アッ…好きになっちゃ、う…っは、ああっ!」

 ふ、と思わず笑ってしまった。
 可愛い。本当に、エレンは可愛い。
 リヴァイは、本当は気付いていた。
 エレンがリヴァイとの間に線を引いていたのは好きになってしまわないように、だということを。
161 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:03:34.01 d
 もちろん、リヴァイが好きだと告げたって素直には信じない。

「どうして駄目なんだ?」

 まるで子供に聞くような声音だった。

「アッ、だって…っセフレ、だから…っん、ひどくしてくれないと…っ優しく、されたらっ、あっ、好きに、なっちゃう…っ」

 エレンは涙をぽろぽろ零しながら必死に言葉を紡いでいた。
 そうか、エレンはセフレだと思っていたから、この関係には体以外はいらないと思っていたのか。
                  
「あっ…!?や、奥…っあ、んあっ、ああっ」

 エレンの体に腕を回し、その体を抱き起こす。
 リヴァイの足の上に跨る姿勢になったことで体重がかかり、エレンの中の性器がもっと奥まで埋め込まれた。
 こうなるともうエレンが掴むものは何もなくなる。
 エレンはその衝撃と快感に無意識にリヴァイの体に腕を伸ばした。

「エレン」

 背を丸め、リヴァイの首元に顔を埋めるエレンの耳に小さく囁いた。
 その体が怯えたみたいにビクッと跳ねた。

「縋っていい、好きになっていい。俺は初めから、お前をセフレだなんて思ってねぇ」
「う、や、聞きたくな…っひ、」
「お前以外を抱きたいとも思わないし、興味もねぇ」

 震えるその背中を撫でた。
 リヴァイは言葉が足りないよ、不器用すぎる。

 そう言われたのを思い出した。気持ちをつたえるのは得意じゃない。
 だったら回りくどいことは言わずにはっきり言えばいい。

「俺はお前が好きだから、お前もそう思ってくれるなら、嬉しいと思う」

 一瞬戸惑うような気配がした。
 そして、ゆっくりと背中に回されたエレンの両手が震えながらリヴァイの体をきつく抱きしめた。

「…女を抱いていいとか、言わないでください…オレはアンタが他の人とセックスするのは嫌です…っオレが好きだって言うなら、最後まで、手放さないでください…!」
 
 オレも好きです、と小さく、微かに震える声がリヴァイの耳を擽った。
                                         




ちからつきた(糞笑)
162 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:03:41.50 d
 指先で人差し指の腹を擽られる。
 そのまま上って、指と指の間を擦られ、掌を滑った。
 愛撫にも似た触れ方に、エレンは顔を俯け、静かに息を吐いた。
 そして掌が重なると、指を絡められてぎゅうっと握られた。
 手に触れられただけなのに、繋いだだけなのに、嬉しいと感じる。
 だが、同時にもっと触れて欲しいと欲張りにもなった。
 エレベーターが目的の階に着いたと音を告げる。
 今日は会う約束も何もしていなかったから、ドアが開き、リヴァイが一歩足を踏み出せば繋がれた手は離れてしまうのだろう。
 まさか帰りが一緒になるとは思っていなかったから、嬉しくて、余計に離れがたくなってしまう。
 一緒に帰りませんか、飲みに行きませんか、なんて誘うのは簡単だけれど、男同士の恋人という世間的には白い目で見られてもおかしくない関係を気にしすぎて、エレンをさらに躊躇わせていた。
                  
「あ…」

 何と声をかけたらいいだろう、と悩んでいるうちにリヴァイの手がするりと離れた。
 リヴァイはただ、「お疲れ、また明日」と言ってこの箱を自らの足で出た。
 もしかしたらリヴァイの方から誘ってくれるかもしれないと思ったのに、その様子が全くないことにエレンは淋しくなった。
163 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:04:06.99 d
 リヴァイは自分のことを好きだと言ってくれたけれど、エレンがリヴァイを想う程は想ってくれていないのかもしれない。
 エレンもリヴァイもいい大人だ。
 中学生や高校生の頃のように好きだけではいられない。
 それはわかっているけれど。
                 
「また明日も会えるかなんてわかんねぇのに」

 エレンは課長であるリヴァイが周りに期待され、色んな仕事を任されていることを知っている。
 だから頻繁に連絡することも、誘うこともしなかった。
 でもそれは、それでエレンが大丈夫というわけではないのだ。
 もちろん会いたい、もちろん淋しい。
 リヴァイが言ってくれればいくらでも一緒にいるのに。
 少し離れたリヴァイの背中を見ながら、エレンも歩き出した。
 周りには有名な課長と、他課の社員にしか見えないだろう。

「イェーガーさん!」

 高い女性の声に呼びとめられて、ハッとした。
 リヴァイの課のいつもの女性社員だ。
 彼女はビルの玄関の所でエレンを待っていたらしく、先にそこを出たリヴァイにも「お疲れ様です」と挨拶をしていた。
                  
「お疲れ様です!」
「ああ、お疲れ。…オレに何か用事?」

 いつもはオフィス前の廊下で話していることが多いから、社内ではなく外でこうして待ち伏せをされていることに少し違和感があった。

「はい!今日はイェーガーさんのお誕生日だって聞いたので、何かお祝いできないかなと思って」
「あ、そっか…誕生日」

 はい!と嬉しそうに笑う彼女を見て驚く。そうか、今日は誕生日か。
 エレンは完全に忘れていた。
 相変わらず仕事は忙しいし、それ以外はほとんどリヴァイのことを考えていたような気がする。
 今日が何日かをわかっていても、今日が何の日かなんて考えてもいなかった。

「お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう」
「この後何か予定ありますか?なかったらご飯食べに行きませんか?もちろん私が出すので!」
「いや…そんな気にしなくていいよ。おめでとうって言ってくれただけで充分嬉しいから」

 彼女の誘いをやんわりと断る。
 異性であれば、一緒に食事に行くことも何らおかしくはないのに、と思いながら。
164 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:04:15.16 d
 少し落ち込んでしまった彼女は「そう言うと思ってました」と言って困ったように笑った。
 断られることを予想していたのだろう。

「じゃあまた今度、合同で飲み会でもしましょう!」
「…うん、そうだな」

 彼女が自ら大勢で、と言うのは初めてだ。
 いつもエレンが皆で、と言えば渋い顔をしたのは彼女だったからこの提案は意外だったけれど、なんとなく、彼女から二人でご飯食べに行きませんか、と誘われることはもうないような気がした。

 誕生日だと、彼女に言われるまで気がつかなかった。
 今日一日を振り返れば、確かに先輩が少し優しかったり、同期がお昼におかずをくれたりしていた。
 あれはもしかしたらそういうことだったのか、と思い当たる。
 おかげでおかずは一品多く食べることができたし、定時で仕事を終えることができたけれど、彼らが予想していたようなロマンチックな誕生日はおそらく過ごせないだろう。
 恋人であるリヴァイはエレンの誕生日を知らないだろうし、エレン自身も今さら言ったりしない。
 約束を取り付けていないエレンは、仕事が早く終わろうが、残業しようが、今夜を一人で過ごすことに変わりはないのだ。
 晩ご飯はいつもよりも豪華なものを買って行こうか。
 例えば何千円ってする焼き肉弁当だとか。いやあれは予約しないといけないのだった。

「エレン」

 だったら、せめて小さなケーキくらい買って行こうか。
 この時間に残っているかはわからないけれど、この際コンビニのケーキだって構わない。
 …そこまでしなくてもいいか。自分の誕生日なんて一年に一回は必ずやってくる日だ。
 そんなことよりも、一緒にいたい人といられる日の方が何倍も、

「エレン!」
「ぅおっ!?は、はい!」

 ぼんやりと考えながら歩いていたら、急に腕を後ろに引かれて体がグラついたのを何とか踏ん張って振り返る。
 その犯人が誰なのかを認識すると、一瞬にして掴まれた腕が熱くなったような気がした。

「リ、リヴァイさん…!?」
「二回呼んだ」
「え?す、すみません」

 ぼうっとしてて、と言うとリヴァイはわかりやすく溜息をついた。
165 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:04:41.19 d
 晩ご飯はいつもよりも豪華なものを買って行こうか。
 例えば何千円ってする焼き肉弁当だとか。いやあれは予約しないといけないのだった。

「エレン」

 だったら、せめて小さなケーキくらい買って行こうか。
 この時間に残っているかはわからないけれど、この際コンビニのケーキだって構わない。
 …そこまでしなくてもいいか。自分の誕生日なんて一年に一回は必ずやってくる日だ。
 そんなことよりも、一緒にいたい人といられる日の方が何倍も、

「エレン!」
「ぅおっ!?は、はい!」

 ぼんやりと考えながら歩いていたら、急に腕を後ろに引かれて体がグラついたのを何とか踏ん張って振り返る。
 その犯人が誰なのかを認識すると、一瞬にして掴まれた腕が熱くなったような気がした。

「リ、リヴァイさん…!?」
「二回呼んだ」
「え?す、すみません」

 ぼうっとしてて、と言うとリヴァイはわかりやすく溜息をついた。
 次にちゃんと話せるのは当分後かもしれないと思っていたから、こうして会えたのは嬉しかったが、先ほどエレベーターで会った時よりも明らかに不機嫌な雰囲気を出しているリヴァイに少し戸惑った。
 呼んでいるのに無視されたら嫌なのはわかるが、さっき「また明日」と言ったのはリヴァイの方なのに、と思ってしまう。

「何か急ぎの」
「今日お前が乗るのはこっちだ」
「はっ?」

 何か急ぎの用ですか、と聞く前に掴まれた腕をそのまま引かれて、エレンが乗る電車とは別の電車のホームに連れて行かれる。
 そっちはリヴァイの家へ向かう電車だ。

「あのっ、どうしてそっちに…今日は何の約束もしてないし、明日だって仕事が…!」

 朝一から昼を跨いで行われるそれに、課長であるリヴァイは出なければいけないはずだ。

「あと腕!離してください!」

 周りからの視線を感じる。
 慌てて、黙ったまま腕を引くリヴァイの手をパシパシと叩いた。

「ちゃんとついていきますから!」
「…、隣」
「はい…」

 ようやく腕を離してくれたリヴァイは、それでもまだ機嫌が悪そうだった。
 後ろをついてくるのではなく、隣を歩けと言われて大人しく従った。
 そんなに疑わなくても、もう逃げないのに、と思う。
166 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:05:03.67 d
 リヴァイと一緒にいられることを嫌だと思うはずがない。
 ただ、リヴァイの迷惑にはなりたくないと思っているだけだ。
 ちょうど到着していた電車に乗り込む。
 この路線はいつもエレンが乗る路線よりも比較的乗客が少ないように思えた。
 吊革を掴むリヴァイの隣に並んで同じように掴んだ。
 リヴァイは元々、口数は少ない方だと思うけれど、今日は不機嫌が相まってもっと少なくて、何だか居心地が悪い。
 オレ何かしたかな、と考えてもピンとくることは思いつかなかった。
                  
「リヴァイさんの家に行くんですか?」
「ああ」
「そ、そうですか」

 会話が続かない。
 リヴァイはそれを口にしたきり自分から話すことはなく、眉を顰めながら、時折、何か考えているようだった。

 駅に着くとすぐ、リヴァイは「先に家に行って風呂でもためてろ」と言って逆方向へ歩いて行ってしまった。
 何がしたいんだ、と思いつつもリヴァイのマンションへと向かう。
 エレンのマンションよりも広く、部屋数も多い綺麗なマンションだ。
 エントランスのパネルに部屋番号を入力して開ける。
 部屋へと繋がる玄関の鍵は以前もらっているから問題はない。
 リヴァイが残業だという時は行かないようにしていたし、勿論アポなしできたこともないので、最初の一回以来この鍵はあまり使ったことはないけれど。
「お邪魔します…」
                                       
 鍵を開けて部屋へ入ると、暗く、静かな部屋が出迎えた。
 電気をつける。
 相変わらずゴミ一つ落ちていない、モデルルームのような部屋だ。
 春らしくなってきたとは言え、まだ少し夜は肌寒くなるので弱めに暖房をつけておいた。
 リヴァイがすぐに帰ってくるのかは分からないけれど、あの口ぶりだとそんなに時間はかからないのだと思う。
 もう少ししてから風呂に湯を張ろうと決めて、ふかふかのソファに腰を下ろした。
167 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:05:29.41 d
 今日はラッキーだと思う。
 エレベーターで一緒になっただけでなく、リヴァイの意図はわからないが夜は一緒に過ごせるらしい。
 誕生日だから、神様が気まぐれでプレゼントしてくれたのかもしれない。
 そんな子どものようなことを考えて、ふ、と笑った。

「秘密にしよ」

 秘密にして、自分だけの誕生日の思い出にしよう。
 リヴァイの誕生日はいつなのだろう。その時まで恋人という関係が続いていたらいいな、と思う。
 もうエレンもリヴァイも誕生日を喜ぶような歳でもないけれど、それでも祝ってもらえるなら嬉しい。
 それが好きな相手なら尚更。
 部屋も暖まった頃、風呂をため始めた。
 リヴァイが帰ってくるまで何もやることがなくてぼうっとして、風呂が溜まったという知らせと玄関を開ける音が耳に入ったのは同時だった。
 すぐにお湯を止めに行って、その足で玄関先を覗く。
 両手にスーパーの袋を持ったリヴァイが靴を脱いでいるのが見えた。

「あの、先にお邪魔してます。風呂もためときました」

 言うと、少し目を丸くしたリヴァイがじっとエレンを見つめている。

「どうかしましたか?」
「…ただいま」
「はい」
「ただいま」
「? お、お帰りなさい」

 その場を動かず何度もただいま、と言うリヴァイに戸惑いつつもそう言えば、彼は満足そうにしてリビングへ消えていった。
 その後ろを追いかける。

「いっぱい買い物してきたんですね。仕舞うの手伝いますか?」
「いい。お前は風呂に入ってこい」
「え、でも」
「ゆっくり浸かって来い」
 キッチンにスーパーの袋を置いて、着替えもせずスーツの上着だけを脱いで何やら作業を始めたリヴァイの有無を言わせない態度にエレンも折れた。
 着替えは以前ここに来た時に揃えたものがあったから、それを寝室のクローゼットから出してきた。
 スーツも皺にならないようにハンガーを借りて掛けさせてもらった。
 おそらく今日は自分の部屋へは帰れないだろうし、朝一で家に帰るにしたってまたこのスーツを着なければならないだろうから。
168 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:05:37.55 d
 キッチンではリヴァイが何かを切っている音が聞こえてくる。
 なかなか手際が良かった。
 リヴァイが料理をするなんて想像もしていなかったけれど、コンビニの弁当などを食べている方が想像できなかったから意外ではなかった。
 何を作ろうとしているのか興味はあったが、聞いてはいけないような雰囲気が漂っていたので見つめるだけにしておいた。
                  
「シャツは洗濯機にいれておけ」
「わ、わかりました」

 視線は手元からはずことはなかったけれど、見つめていたのがバレてしまったようで少し恥ずかしい。
 早足で風呂に向かい、羞恥を晴らすようにして脱いだシャツをバサリと洗濯機の中に放り投げた。
 今日のリヴァイは調子が狂う。
 夜はきっとセックスするのだろうと当然のように思ったので、手が勝手に体を隅々まで綺麗にしていた。
 そして髪も洗って湯船に浸かった後はずっとぼんやりとリヴァイのことを考えていた。
 次第に視界もぼんやりとし始めて、逆上せる寸前だと気がついて急いで上がった。
 少しふらつくような気がするけれど、結果的にリヴァイの指示通りゆっくりはできたと思う。
 脱衣所で少し落ちつくまで蹲っていると、扉が開いた。
                  
「…まさか逆上せたのか?」
「はい…あ、いや、いいえ」
「ほら」

 顔を上げると、額に冷たいものが当てられた。
 冷えたミネラルウォーターだった。

「すみません…ありがとうございます」

 それを受け取ると、リヴァイがエレンのまだ濡れて水滴の垂れる髪をタオルで優しく拭ってくれた。

「落ちついたら、ちゃんと髪乾かしてから来い」

 そう言ってリヴァイは脱衣所から出ていった。
 どのくらい風呂に入っていたのだろう。
 リヴァイが様子を見にくるくらいだから相当時間が経っていたのかもしれない。
 はぁ、と溜息をつくと、ミネラルウォーターを煽る。
 少しだけホッとした。
 そしてしばらくしてから髪を乾かして、リビングへ戻る頃にはすっかり体調は良くなっていた。
169 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:06:02.85 d
 リビングへ続くドアを開けると、いい匂いがしてきた。
 途端に空腹なことにも気が付く。
 空腹で、しかも熱い風呂に長時間入っていればそりゃあ逆上せるな、とエレンは情けなくなった。

「もう平気か?」
「はい、すいません。ちょっと目眩がした程度なのでもう大丈夫です」
「そうか」

 座れ、と促されて椅子に座ると、テーブルの上にはこの短時間に作ったのかと驚くほど綺麗な料理が並べられていた。
 エレンはあまり料理をしないから簡単なものなのか難しいものなのかはわからないが、丼料理じゃないことだけはわかる。

「これ全部リヴァイさんが作ったんですか?」
「急だったからそんなに手間がかかるものは作ってねぇ」

 そうは言いつつも自分では作りそうもない鮭とほうれん草のクリームパスタに、鯛のカルパッチョ、きのこのたくさんのったチキンソテーはガーリックのいい香りがして食欲をそそった。
 レストランで出てくるように綺麗に盛られている料理にエレンは少し感動した。
 いただきます、と手を揃えてさっそく料理を口にすると見た目通り、味もとてもエレン好みで美味しかった。
 食後にはデザートまでついてきた。
 手作りだと言う苺のパンナコッタはとろけるような食感で、苺の酸味がまた爽やかだった。
 リヴァイがこんなに料理ができるとは知らなかったし、好きなのも知らなかった。
 これまで自分たちはセックスするためだけに会っていたから、恋人にならなければ一生知ることもなかったかもしれない。
                                  
「すごく美味しかったです。ご馳走様でした」
「こんなモンしか作ってやれなくて悪かったな」
「いえ全然!美味しかったです」
「もっと前から知ってたらちゃんと準備していた」
「?どうしても今日じゃなくちゃダメだったんですか?」

 首を傾げると、リヴァイが眉を顰めてこちらを見ていた。

「…何ですかその顔」
「お前…今日誕生日なんだろう?」
「どうして知ってるんですか?」
「さっきおめでとうって言われてただろうが…」
「あー…なるほど」
「そういうことは先に言っておけ」

 リヴァイは今日が誕生日だと言うことを教えなかったことに対して少し拗ねていたらしい。
170 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:06:09.63 d
 でも、誕生日だと知って慌ててエレンを連れて来て、料理を作って、祝おうとしてくれていたのか。
 ふは、と思わず笑ってしまった。

「すみません、オレ今日誕生日なんです」
「もう知ってる。…おめでとう。何か欲しいものはあるか?」
「ありがとうございます。美味しい料理作ってもらったんで、それだけで嬉しいです」

 今日という日を自分だけの思い出にしようと思っていたけれど、リヴァイはちゃんと祝ってくれた。
 毎年一回は必ずくるこの日を自分の特別な人と過ごせたことはとても嬉しいことだと思う。
 それだけで今日と言う日が特別になる。

「あ、でもリヴァイさんの誕生日も教えてください」
「…十二月二十五日だ」
「クリスマスなんですか?」

 そうだ、と頷くリヴァイを見ながら結構先だなと思う。
 それまで一緒にいられるかはわからないけれど、今度はエレンが祝ってあげたい、と思った。

「じゃあその日はオレが料理を作るので、それまでしっかり料理教えてください」

 これは、これから先も一緒にいたいというエレンの願いだ。

・・・
                  
 風呂上がりのリヴァイから自分と同じ香りがする。
 正確には、今日はエレンがリヴァイと同じ香りを纏っているのだけど、近すぎて、もう境界線なんてわからない。
 全身を隅から隅まで舐められて、吸われて、とにかく泣きだしたくなるほど甘やかされた。
 そのせいでどこに触れられても体が跳ねてしまうし、シーツに擦れるだけで声が出てしまいそうだった。

「んっ、ぁ、…っも、いいって…っ」
「まだだ」
「ああっ、ぅ、…舌で、ぐりぐりって、しないで…っんあ」

 もうぐずぐずになっているはずの後孔にリヴァイの舌がにゅるりと入ってくる。
 そのまま固く尖らせた舌に内側の肉をぐりぐりと押されて、それを押し返すように締め付ける力が強まった。
 自分の後孔が開いていくのがわかる。リヴァイの優しい愛撫で緊張を解いた後孔が、その指と舌によってどんどん柔らかくなっていった。

「う、んぅ…っリヴァイさん…っも、いれてください…っあ、もう充分、だからっ…ぁ、」

 砕けそうになる腰に頑張って力をいれて、向きを変える。
171 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:06:36.53 d
「ここっ…はやく、ぃれて…ください…っ」

 枕に頭をのせ、腰を少し浮かせて散々解された後孔を自身の指で広げて見せると、ローションがくちゅりと音を立てた。
 自分の指がそのぽってりとした入口に触れただけで体がビクンッと跳ねる。
 ここに早く入れて欲しい。
 その熱くて固い熱を埋め込んで、奥まで激しく突いて欲しい。
                  
「ぁ…っ、」

 そこに、ぴとりとリヴァイの熱が宛がわれる。
 後孔が期待してその先端に吸いつくようにキスしているのがわかった。

「はやく、…っリヴァイさん、いっぱいしてください…っいっぱい、ぎゅってしてください…っん」
「エレン、」

 リヴァイが腰を進めると同時に体を少し前に倒す。
 エレンの大好きなリヴァイが、その体がこんなにも近くにある。
 エレンは腕を伸ばしてリヴァイの背中に回すと、そのままぎゅうっと抱きついた。
 ずっとずっと、こうしたかった。
 でも、好きになってはいけないと、好きになるのが怖いと思ってずっと手を伸ばさないようにしてきた。
 でも今はそんなことしなくてもいい。好きなだけ抱きしめていい。
 もうリヴァイはエレンのもので、エレンはリヴァイのものなのだ。

「アッ、ん、好き、です…っリヴァイさ…っひぅ、」
「…俺もだ、エレン」

 疲れてしまったのか、体を丸めて眠るエレンの顔を見て、はあ、と息をついた。
 エレンが可愛くてたまらない。
                  
 与えてやれるものは何でもしてやりたいと思うのに、どこか遠慮するエレンは今日が誕生日だと言うことも教えてはくれなかった。
 それは単に自分でも忘れていただけだと言っていたが、きっとリヴァイがこうして言わなければずっと言わなかったに違いない。
 渡してあった合鍵もめったに使うことがないのだ。
 ただいま、と言って多少は言わせた感があっても「お帰りなさい」と言ってくれたのは正直嬉しかった。
 リヴァイもエレンも我儘なんて言うような歳でもないし、男だから大体のことは何でもできてしまうけれど、それでも我儘を言って欲しいと思う。
172 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:06:45.01 d
「迷惑なんて、考えなくていい。お前は我慢しすぎだ」

 エレンがリヴァイに迷惑をかけてはいけないと思っていることを知っている。もっと会いたいという願いはリヴァイしか聞いてやることができない。
 リヴァイはただ待っているのだ。エレンが自分から一緒にいたいと望んでくれることを。
「リヴァイさん、起きてください。オレ一旦家に帰るので先に出ます」

 隣でまだ眠っているリヴァイを揺り起す。
 ぐっすり寝ているからこのまま起こさずに帰ろうかとも思ったが、以前、帰る時はいくら寝ていても絶対に声をかけろと言われたのだ。
「…いっしょにいけばいい」
「でもオレ着替えが…」

 昨日勢いでシャツを洗濯機の中に入れてしまったから、着ていくシャツはないし、人の少ない朝の電車でならまだ今着ている服でもあまり人に会わずに帰れる。
 だからできるだけ早く家を出たかった。
 このままじゃ寝ぼけたリヴァイに引きとめられて、帰れなくなってしまう。
 仕方がないから無視して出るか、とベッドを降りようとした。
が、枕に顔を押し付けたままのリヴァイに手首を掴まれてしまった。
 離してください、と言っても全く離す様子もないし、寝ているくせに力が強くて全然外せない。
 このままじゃ本当に、とエレンは焦り出す。

「シャツならある」
「は?オレ、リヴァイさんのは着れませんよ?」
「ちがう、お前の、きのうかってきた」
「え?」

 安いので悪いが、と続けられる。
 昨日、買いものに行った時に一緒にエレンのサイズのシャツを買ってきてくれていたらしい。
                                         
「だからまだ寝れる」

 そう言ってまた布団の中に引きずり込まれて、がっちりと抱きつかれてしまった。
 リヴァイが案外朝に弱いことを知った朝だった。

 二度寝して、さすがにもう起きないとやばいと思ってリヴァイを起こして適当に朝食を食べた後、買ってきてくれたシャツを着てスーツに着替えた。
173 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:07:11.06 d
「あ、」
「どうした、サイズ合わねぇか?」
「それは大丈夫です、ありがとうございます。いや、昨日と同じスーツなのは構わないんですけど、ネクタイも一緒ってのは…って思って」

 スーツもネクタイも昨日と同じなんて、自分の家に帰っていません、と背中に張り付けて歩いているようで少し気が引ける。
 そんなに気にする社員もいないだろうけれど、あの同期ならきっとからかってくるに違いない。

「これやってけ」

 リヴァイがクローゼットからネクタイを一本取り出してくれた。

「え…ありがとうございます」

 落ちついた、少し暗めの青色のネクタイだった。
 触った感触が普段自分のつけているようなものとは少し違っていて、ずっと触っていたくなるような生地だ。

「それお前にやる」
「え!?これすごい高そうなんですけど!?」
「俺が一番気に入ってるやつ」
「そ、そんなん貰えませんよ!」

 つっ返そうとしてネクタイを差し出すと、正面に立ったリヴァイがそれを手にしてエレンの首に回した。

「昨日誕生日だったろうが。使ったやつで悪いが、貰ってくれ」

 そう言って、手際良くきっちりとネクタイを結ばれてしまえば、もう貰うしかない。
 嬉しくないわけがないのだ。

「あ…りがとう、ございます」
「誕生日おめでとう。今度はちゃんと何か買ってやる」

 赤い顔は俯いても隠せない。
 リヴァイが、ふ、と笑う声が聞こえた気がした。




番外編・おわり

エレンちゃんお誕生日おめでとう!



 実は同じ会社でリヴァイともエレンとも違う課にいたアルミン曰く

「あれ、エレン。今日はいつもより大人っぽいね」
「いや大人なんだけど」
「えーっとなんて言うのかな、リヴァイ課長っぽい?」
「!!」
「そうだ、誕生日おめでとう」
「…ありがと」
                


 
ファーーーーーーーーーwwwww
174 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:07:18.43 d
 女を抱くことしか知らなかった体が男に抱かれることを知ってしまった。
 内側を抉られるような刺激は思考も快感に染まり、何も分からなくなるほど気持ち良かった。
 これまでにないほど乱れてしまい、こんなのは違う、オレじゃない、と何度思ったかわからない。
 それでもこれ以上の快感を得ることはこの人意外にはあり得ないとわかっていた。
 繋がりは、体以外に何もない。
 だからこそ、彼を見かけた時はいつもセックスしている姿としか結び付かなくて、体が勝手に疼いて期待しまう。
 そして、その事実にやはりセフレでしかないのだと落胆した。
 落胆してしまう理由には気がつかないふりをした。
 そして、いつかこの関係が終わってしまった時、自分はおかしくなってしまうかもしれないと不安になって、これ以上は踏み込まないように線を引いた。
 心の中にいつの間にか生まれていたリヴァイへの恋心は、エレン自身によって無視されることで迷子になり、孤独になっていた。
 けれど彼に、リヴァイに、縋っていい、好きになっていい、と言われた時、とてつもなく安心した。
 やっと救われたような安心感、幸福感。
 同時に、もう二度とこんな思いはしたくないと思った。

 エレンは心配してくれていた同期に「社食で悪いけど」と言って昼飯を奢ることにした。
 この会社の食堂はなかなか美味しくて、軽食からボリュームのあるものまで、メニューも豊富だから女性社員にも人気だ。
 同期に「一番高くてもいいの?」なんて聞かれて、若干顔をひきつらせ頷くと、冗談だと笑われた。
 まだ時間が早いのか、食堂は席を選べるほどには空いていた。
 結局、同期が選んだボリュームのあるカツ丼と、特に食べたいものがなかったエレンは日替わり定食を頼んで、窓際の席へと座った。近くに座っている者はいなかった。

「解決したっぽい?なんか吹っ切れたっつーか、落ちついた…?いや、ホッとしたような顔してるな、最近」
「…そんな顔してるか?」
「してるしてる。前は毎日不機嫌って感じだったし、一時期戻ったかと思えば今度は背中に闇背負って、無理してます、って感じだった」
175 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:07:44.67 d
 なんだそれ、と言ってしまいそうになったが、まぁ…間違いではないかもしれない。
 訳も分からずリヴァイに強引に抱かれ、そのくせ放っておかれて頭にきていたし、自分のところへ来てくれたリヴァイに少しだけ満足もしたが、その後の関係を維持しようと無理をしていたのも事実だ。
 やっぱり、この同期はふざけていそうに見えて案外人のことをちゃんと見ている。

「…悪かったな、気遣わせて」
「気なんか遣ってねーよ」

 そうは言うけれど、話を聞いてくれようとしたり、食事に誘ってくれたりしてくれていたし、エレンに無理矢理聞くこともせずにいてくれた。
 しかし、それを言ってしまうのは野暮というものだ。
 何があったのかを話すことはできなかった。
 ただ「たぶん、もう大丈夫だと思う」と言えば、彼は「そっか」と笑っただけだった。
 午後は外に出ないといけないからと言って先に食堂を出た同期を見送って、エレンはまだ随分と残っている手もとの昼飯をゆっくりと食べ始めた。
 具合が悪いわけでも、気分が落ちているわけでもない。
 何と言うか、実感がわかないような感じで、気がつけばぼうっとしている。
 急に肩の荷を下ろされて、楽になるどころか何が起きたのかわからない、という感覚なのだ。
 リヴァイに好きだと言われたのは二日前だった、と思う。
 金曜の夜にホテルで会う約束をして、そのまま次の日の朝まで気が狂う程セックスをしていた。
 肉体が溶けたかと思うくらい全身が熱くて、思考もぼんやりとして、体に力が入らなくなった。
 眠る、というよりは気を失いそうになる時に、リヴァイに電話がかかって来たのを覚えている。
176 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:08:06.38 d
 そして、そのやり取りを辛うじて視界に入れていると、ペットボトルのミネラルウォーターを煽ったリヴァイが口移しでその水を飲ませてくれた。
 そういえば喉もカラカラだった。
 冷えた水が体内に流れて少しだけ思考がクリアになる。
「トラブったらしいから行ってくる」と言いながら髪を撫でられて、その心地良さにまた目を閉じた。
 目が覚めた時にはリヴァイはいなくなっていた。そういえば呼び出されていたと思い出して、休日なのに大変だな、とぼんやりと思った。そして、シャワーを浴びて戻ると、スマートフォンに『そろそろ起きたか。
 部屋はそのまま出て構わない。また後で』とメッセージが届いていた。そのメッセージには『お疲れ様です。わかりました』と返したが、また後で、と返さなかったのは無意識だったと思う。
 そして休日が開けて今日まで、連絡は一度も来ていない。リヴァイの課は今日も忙しそうだった。
 好きだ、と言われた。好きです、とも言った。でも、果たしてこの関係は本当に変わったのか、エレンには自信がない。
 気がつけば、昼休憩に入った社員が増えてきたようで、ちらほらと食堂に入ってくる人が増え始めていた。早く食べて出ないと、と食べるペースを速めた。
 エレンの後ろの席に誰かが座った気配がした。椅子の背もたれが、コツリとぶつかる。

「あ、すいません」

 幅を取りすぎていたかもしれないと思って謝ると、背中にドン、と何かがのせられたような重みが増した。
 はぁ…と深い溜息が聞こえる。ああ、この匂いは。

「お…お疲れ様です、…リヴァイさん」
「…ああ」

 椅子を合わせ、エレンの背中を背もたれにするようにして寄りかかられている。
 頭ごと預けるようにするリヴァイの声は疲労に染まっていていつもよりも低かった。
 寄りかかられていて体を動かすことができない。
 食事をすることも躊躇われて、疲れたリヴァイの体が楽になるよう、ひたすら背もたれなりきろうとした。
 食堂にはどんどん人が増えていくが、だからと言って離れてください、なんて言うこともできなくて困ってしまった。
 きっと以前までのエレンであれば言っていたと思うけれど。
177 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:08:33.05 d
「お前今日、定時であがれるのか」
「そうですね、たぶん」
「そうか。じゃあ駅前のカフェで待ってろ」 
「え?仕事終わってからですか?」
「ああ。俺も比較的早く帰れる予定だ…というかそろそろ帰らせてもらわねぇとさすがにきつい」

 珍しく弱音を吐いているような気がする。
 今まで普通の会話らしい会話はほとんどしてこなかったから、聞いたことがないのは当たり前かもしれないけれど。

「そろそろって、もしかしてあれから家に帰っていないんですか?」
「…まあな」

 風呂に入りてぇ、とうんざりしたリヴァイの声を聞いて、だから今日はいつもよりもリヴァイの匂いが濃いのか、と考えて急に恥ずかしくなった。
 自然に体が熱くなる。興奮にも似た高揚に頭を振ると、背中の重さがなくなった。
 立ち上がったらしいリヴァイを振りかえる。

「いくら早いって言ってもお前の方が早いだろうから、待っていてくれ」
「でも、お疲れなんじゃ」
「だからだろ。じゃあな」

 何が“だから”なのか。
 見上げたリヴァイの顔には疲労が浮かんでいたが、そう言って肩に手を置かれてしまえば何も言い返すことができなかった。



 定時を迎え、リヴァイに言われた通り、駅前のカフェに入る。
 仕事終わりの時間帯の店内はそれなりに客がいた。
 ホットコーヒーを頼んで席を探すと、運良く外がよく見える席が一つだけ空いていたのでそこに座った。
 土曜日の朝、休日出勤していた社員によって発覚したミスはかなりひどいものだったらしい。
 それでも他課に影響が出なかったのは課長であるリヴァイの働きによるものだと聞いた。
 さすがだと思ったが、あんなに疲労しているところを見てしまうと、働き過ぎなのではないかと思ってしまう。
 そんな状況で休む時間をエレンが奪ってしまうことは尚更躊躇うし、自分なんかと会うよりもゆっくり休むべきだと思う。
 リヴァイの顔を見たら早く休むように言って帰ろう。
 …言ってもいい立場にいるよな?と不安になったが、たぶん、おそらくだがもう体だけの関係ではないのだと思う。
 はっきりしないな、と思う。
178 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:08:40.31 d
 それにしても、リヴァイからこうして約束を取り付けてくるのは初めてだったから、少し変な感じだ。
 普通の恋人みたいだ。
 だが、これまでセックスしかしてこなかったから、リヴァイとすることと言えばそれぐらいしか思いつかない。
今日だって当然のようにセックスをするのだと思っている。
 ただ、リヴァイからも誘ってくれるようになっただけでやることは今までと変わらないのかもしれない。
 好きだとは言われたけれど、果たしてそれで恋人になったと思ってもいいのだろうか。
 これまでの自分では考えもしなかった男同士の恋人。
 男同士の友情以上を経験したことがないのだから実感がわかないのも当たり前なのかもしれない。
 好きになった女を男として守り、支えていきたいと思うのは当然のことだと思う。
 けれど、リヴァイとの関係の中で男であるエレンはどちらかと言えば守られる側なのだろうし、現にセックスでは抱かれる側なのだ。
 だが、エレンもどうしたって男だから、当たり前のようにそうなってしまうことに抵抗があるのも当然のことなのだ。
 エレンは女のように弱い存在ではないのだから。
 一緒にいる時に女のように扱われていい気はしない。
 それがエレンを好きだと言うリヴァイからの愛情だとしても、男であることを忘れたくはない。
 だから、それを素直に受け止められるのは女側になるセックスの時だけなのだ。
 そう思うと、今まで散々体だけの繋がりだと言っていたセックスこそが自分たちを恋人たらしめるものなのかもしれないと思った。
 考え過ぎだと、思うかもしれない。
 自分が好きだと思った相手も自分のことを好きだった。それならそれでいいじゃないか。
 エレンはまた悩みすぎてしまう思考を掻き消すように首を振った。


「エレン。待たせて悪かったな」

 ハッとして顔を上げる。
 外が見える位置に座っていたというのに全く気がつかなかった。
 腕時計を見ると、リヴァイが来たのはエレンがこのカフェに入ってから一時間経った頃だった。
179 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:09:05.71 d
「お疲れ様です。そんなに待っていませんよ。仕事の方はもう大丈夫なんですか?」
「ああ、何とか。今日の仕事が間に合わないところだったが、あいつらが頑張ってくれたおかげだ」
「そうですか、良かったです」

 いつの間にかエレンの隣が空いていたらしく、リヴァイがそこに座る。
 はぁ、と重い溜息が聞こえた。
 何か飲みますか、と聞くと少し考えた後に、いらない、と返って来た。

「今日は早く帰って休んだ方がいいんじゃないですか?」
「…そうだな、帰ろう。俺の家に行くぞ」
「は?」

 ぽかんとするエレンを無視して立ち上がり、当然かのようにエレンの飲んでいたコーヒー代を払おうとするリヴァイを何とか抑えて自分で会計を済ませると、二人でカフェを後にした。
 どんどん先を歩いて行ってしまうリヴァイの後を慌てて追いかけて、いつもとは違う電車に乗り込んだ。

「リヴァイさんの家に行ってもいいんですか?」
「駄目だったら言ってねぇ」
「でも、疲れてるだろうしオレがいたら休めないんじゃ」
「問題ない」
「でも、」
「しつこい」

 聞き入れないのはそっちだろう、と思いつつも、そういえばこの人ははじめから強引だったと思い出して早々にエレンが諦めた。
 ざっと車内を見ても空いている席はなくて、二人並んで吊革に手を伸ばした。
 窓から見える景色がいつもと違う。
こんな風に並んで電車に乗るのは初めてで、リヴァイのいる右側が妙にむずむずした。
 降りるぞ、と言われて降りたのはたぶん乗ってから五つ目くらいの駅だったと思う。
 綺麗な街で、リヴァイに似合うな、と思った。
 道のわからないエレンはリヴァイのあとをついていくしかなくて、疲れている彼に煩わしいと思われないようにと、一歩後ろをただ無言で歩いた。
 途中でコンビニに寄ってミネラルウォーターなどを買ったが、リヴァイの住むマンションは駅から歩いて十分ほどで、うるさくなりがちな駅前から程良く離れた位置にあった。
 さすが優秀なリヴァイ課長と言いたくなるようなマンションに、エレンは何度も瞬きをした。
180 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:09:12.40 d
「…お邪魔、します」

 玄関を開けた瞬間にリヴァイの匂いがふわりと香った。
 本当にリヴァイの部屋に来てしまったのか、と信じがたいような気分になってしまう。
 今まで会うのはいつものホテルの部屋だったから、リヴァイの家に来るのはもちろん初めてだ。
 彼のことを知っていくのが怖くてセックスする以外で一緒にいることをできるだけ避けていた。
 だから、一緒にいる時間が長くなればなるほど、どんどん新しいことを知っていく。
 例えば吊革を掴むのは左手。
 エレンは電車が揺れる度にぶつかりそうになる手にいちいちドキドキした。
 それと、見かけによらず甘いものが好きらしい。
 コンビニでプリンを買っているのを見てしまって、少し笑いそうになった。
 そうやって一つずつリヴァイのことを知って行けるのは、良いことだと、嬉しいことだと思う。

「道は覚えたか?」
「えっと、はい。たぶん。ほとんど一本道でしたし、それほど駅から離れてないですから」

 リヴァイに促されてソファへと座る。広いリビングは綺麗に片付いていて、少し落ちつかない。

「じゃあ次は一人でも来れるな」
「はあ…」

 ぼんやりとした返事をすれば、リヴァイは何を気にすることもなく隣の部屋へと消えた。
 リヴァイは当然のことのように言ったけれど、一人でここに来るようなことがあるのだろうか。
 今自分がここにいることすら未だに不思議でならないのに、一人で?
 戻って来たリヴァイがリビングのテーブルにコトリと何かを置いた。

「エレン、鍵はここに置いておく。俺は先に風呂に入ってくるからお前は好きにしてろ」

 ソファから振り返ると、確かにテーブルの上に銀色に光る鍵が置かれている。
 わかりました、と答えると、リヴァイは風呂場へと早足で向かった。

「…帰る時は掛けて帰れってことかな」

 エレンはリヴァイのいない部屋でやっと肩の力を抜いた。

「ん、…っ」

 風呂から上がって来たリヴァイが隣に座ったと思えば、すぐに唇を塞がれた。
 やっぱりするのか、と冷静に考えながらも体はどんどん熱くなって、休んで欲しいと思うのにその手を拒むことはできなかった。
181 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:09:38.53 d
 後頭部に回った大きな手に引き寄せられて、口付けが深くなる。
 まだ少し濡れているリヴァイの髪から水滴がぽたりと落ちて、エレンのシャツを濡らした。

「っ、ふ…ぁ、リヴァイさ…っぁ…、は、あの…っ」
「…なんだ」
「その、手、を…」

 今まで伸ばせなかった手を。
 恐る恐るリヴァイの肩に手を伸ばすと、リヴァイが驚いたように何度か瞬きをして、ふ、と笑った。

「どうぞ?」
「…っ」

 腕を持ち上げられて、リヴァイの肩にのせられた。
 その余裕に、おじおじしていた自分が少し恥ずかしくなったけれど、また深いキスをされてしまえばその腕でリヴァイに抱きつかずにはいられなくなった。

「ん、んっ…ぁ、」

 エレンの体はリヴァイに触れられればすぐに反応してしまう。
 体は熱くなって、キスをして舌を絡ませただけでどうしようもなく興奮した。
 現にもうすでにエレンの中心は固くなりはじめているし、リヴァイの指がシャツの裾から入って肌を撫でる度に腰が揺れてしまう。
 もっと、いっぱい触って欲しい、そう欲張りになればなるほど、ぎゅう、と無意識にリヴァイに縋った。

「エレン…腕、少しゆるめろ…」
「え、ぁ…ごめ、なさ…っ」

 ハッとして慌てて腕を解くと、リヴァイの体がぐらりと傾いて、エレンの胸にぽすりと落ちた。

「え?リヴァイさん?」

 すう、と静かな寝息が聞こえてくる。
「寝てる…?」

 やっぱり相当疲れていたんだ。
 軽く背中を叩いてみたが、起きる様子は全くない。
 おそらく、エレンとホテルで会っていたあの日からずっと休まず駆けまわって、眠る暇もなかったのだろう。
 しばらくどうしようか考えたが、寝ているリヴァイを寝室へ運べるほど力はないので、このままソファに寝かせることにした。
 許可もなく入るのは躊躇ったけれど、風邪を引かせるわけにはいけないと、寝室に入って布団を何枚か持ってくる。
 布団からはリヴァイの香りがして、体の熱を取り戻しかけたが、ぐ、となんとか堪えた。
182 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:09:45.19 d
 ちゃんとベッドで横にならないと疲れはとれないだろうけれど、仕方がない。
 エレンは自分の非力さを悔やんで筋トレしようかな、なんて考えてみる。
 いくら鍛えてもリヴァイには勝てそうもないけれど。
 テーブルの上に置いてあった鍵で玄関に鍵をかけると、玄関ポストにそれを落とした。
 終電には十分間に合いそうだ。
 迷わずに駅まで来ると、あと少しも待てば電車が来そうだった。
 スマートフォンを取り出してメッセージアプリを開く。

『鍵はポストに入れておきました。ゆっくり休んでください。』

 すぐに既読がつくことはないだろう。
 セックスもせずに帰ったのは初めてだ。
 リヴァイの寝顔を見るのも初めてで、眉間の皺がなくなって少し可愛く見えた。
 それに、あんな風に人に寄りかかって寝てしまうなんて意外だった。
 それほど疲れていたのかもしれないけれど、他人にはあまり無防備なところは見せない人なのだろうと思っていたから。
 エレンはスマートフォンを仕舞うと、ホームにゆっくりと到着した電車に乗り込んだ。

・・・

 起きてスマートフォンを見ると昨日のメッセージに既読のマークがついていたから、朝はちゃんと起きられたのだと思う。
 少しでも疲れがとれていればいいけれど。
 しかし、会社でばったり顔を合わせて、疲れ云々というよりかは不機嫌そうなことにエレンは首を傾げた。
 明らかに先を急いでいるリヴァイに頭を下げ、その場を去ろうとした腕を掴まれ、人気のない所まで連れて来られた。
 壁に追い詰められ、リヴァイの腕に囲われて、ジロリと睨まれた。
 逃げられそうもない。

「え、と…あの、オレ何かしました…?」
「…帰るなら起こせ」
「でも、ゆっくり寝て欲しかったんです、けど」

 疲れて寝てしまったリヴァイを起こすようなことはしたくなかったし、彼のことを考えての選択だったのだが、ただ起こさなかったことを怒っているのか、勝手に帰ったことを怒っているのか、エレンにはわからなかった。
 リヴァイが、はぁ、と大きな溜息を吐く。
183 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:10:11.41 d
「…次からはいくら寝ていても起こせ」
「わ、わかりました」

 リヴァイが離れる。
 これまでこうして強引に腕を引かれた時は何かされることが多いから、何事もなく体が離れたことに少しホッとした。
 昨日は、キスはしたのにセックスできなかったから、今ここで体にそういう意味で少しでも触れられたら我慢が出来なくなりそうだった。

「それと、お前あの鍵の意味、わかっているか?」
「掛けて行けってことですよね」
「…違う」
「え?」
「まぁいい。次渡した時はそれ使って家で待ってろ。あと返さなくていい」

 時計を見ながらそう言って去っていくリヴァイの背中を見ていた。
 鍵の意味。
 返さなくていい、と言うのはつまりエレンにくれるということなのだろうか。
 もしかして、あれは合い鍵だったのだろうか。
 確かにリヴァイが使っていた鍵はキーケースについていて、エレンに渡したものとは違った。
 あれは合い鍵だったのか。
 だとしたらそう言ってくれればよかったのに。
 でも、合い鍵なんて大事なものは信用のおける人にしか渡すものじゃないと思う。
 例えば、恋人、だとか。

「……、恋人」

 口に出した瞬間、ぶわわ、と顔が熱くなる。
 はっきりしない、実感が沸かない、なんて言ってきたのに、リヴァイが自分のことを恋人だと思っているかもしれないと考えただけで急に恥ずかしくなった。

「なんて単純…」

 エレンはその場に座り込み、思わず笑った。
 うだうだ考えていた。
 自分は女じゃないから守られたくない、なんて意地を張って、そんなことを考える自分はリヴァイの恋人ではいられないのではないかと思っていた。
184 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:10:18.29 d
 だけど、やっぱりそんなのは考えすぎていただけだった。
 男だ、女だ、なんて関係ない。
 エレンはリヴァイという人が好きで、好きな人に恋人だと思ってもらえただけでこんなにも嬉しくてたまらない。
 自分よりも弱い存在だから守るんじゃない、好きな相手だから守るのだ。
 エレンだって好きな相手を守りたいと思うし、心配だってする。
 それはきっとリヴァイだって同じことで、お互いにそう思って、気持ちのうえで対等になれるのが恋人なのだと思う。
 いつかも言ったかもしれない。
 エレンは長らく、恋というものをしていなかった。

「はは、久々すぎて忘れてた」

・・・

 忙しい日が続いて、リヴァイともなかなか連絡がとれなかった。
 それも一段落して、社食で少し遅い昼食を食べ終え、一息ついているところだった。

「イェーガーさん、お疲れ様です!ここいいですか?」
「ああ、お疲れ。どうぞ」

 正面の席に座ったのはリヴァイの課の子だ。彼女は休憩しに来たのか、手には甘い匂いのするカップを持っていた。
 彼女と話すのも久しぶりだ。楽しそうに話すのをエレンはただ合槌をうちながら聞いていた。

「イェーガーさんもしかして恋人できました?」
「…え、なんで?」
「なんか…うーん、落ちついたっていうか…いや前から落ちついた感じではあったんですけど、うーん、とにかく前と何か違う気がします、いい方向に」
「そうかな」

 どう言ったらいいのかわからなくてはっきりしない彼女はいつかの同期の姿と重なるものがあってエレンは、はは、と笑った。
 変わったのかどうか、自分ではわからない。
 でも、あの日から心がすっきりしたような気はしている。
 いつもどこかで抱えていた不安はいつの間にか気にならなくなっていた。

「じゃあ今日ご飯行きませんか?恋人いないならいいですよね?」

 ぐ、とこちらに身を乗り出して言う彼女に「えっと、」と戸惑った声を出してしまった。
185 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:10:47.75 d
 すると肩にトン、と手が置かれて反射的に顔をそちらに向けた。

「仕事しろ」
「課長!」

 リヴァイだった。
 エレンの肩に手を置いているくせに、その言葉は彼女に向けて言っているものだった。
 そしてそのまま自然にエレンの隣へと座る。

「今休憩中です。って課長、また邪魔する気なんですか?」
「ああ?別に」

 言いながら、ちらりと横目で見られた。

「予定がねぇなら付き合ってくれるんじゃねぇか?」
「え、」

 女と二人でご飯を食いに行っても構わない、と言われているようでエレンは少しショックだった。
 リヴァイはエレンが女とセックスすることも構わないと言っていたし、こうやって時折、手離すようなことを言うのだ。
 好きだと告げた日にそんなことを言うのは止めて欲しい、と言ったのに、未だにそれを許す真意がわからない。
 ふと、どうしたいんだ、と少し苛立つエレンの手に何かが触れた。

「っ、」

 リヴァイの指だ。
 まだ二人はエレンの前で会話を交わしていると言うのに、テーブルの影に隠れて何食わぬ顔で触れてくる。
 ああ、もう。口では「付き合ってくれるんじゃねぇか」なんて言っておいて、行かせる気なんか少しもないではないか。
 掌に冷たい、金属の感触。それは紛れもなく、リヴァイの部屋の鍵。

「もう!冷やかしにきたんですか?」
「ちゃんと用事があってきたが、もう済んだ」

 立ち上がったリヴァイがエレンを見下ろして、少し笑った。

「課長もちゃんと仕事しないと最近できたって言う恋人に愛想つかされちゃいますよ!」
「ああ…それはねぇだろ。お前もそう思うよな?エレン」
「えっ、そ、そうですね…」

 ああ、ああ、もう、本当に。
 エレンの返答を聞いて満足そうに去っていくその背中に飛びついてやりたくなった。
 クソ、とエレンは心の中で呟く。
じわじわと顔が熱くなっていくのを止めるのに躍起になった。
186 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:11:08.00 d
「それで、今日どうですか?」
「ご、ごめん…予定、できたから…」
「なんだ、残念です」

 次渡した時はそれ使って家で待ってろ。
 そう言われたことを、エレンは忘れていなかった。
                                         



 リヴァイがいつも使っているのとは違う、何もついていない鍵で中に入った。
 リヴァイが帰ってくるまで何をしていたのか思い出せないけれど、玄関が空いた瞬間に中に引きずり込んでキスをしたのは覚えている。
 珍しくリヴァイが驚いたような顔をして、体勢を崩していた。
 どうしてか、堪らなく触れたくなった。
 今までずっと触れて欲しいと思うばかりだったのに、今日は自分からリヴァイに触れたくて頭がくらくらした程だった。
 寝室に連れて行かれて、両手を握られたままベッドに座ったリヴァイがこちらを見上げてくる。

「冷や冷やしました。あんなこと言って、オレを試して面白がってるんでしょう?」

 リヴァイの上に乗り上げるようにして跨った。
 自然と腕は彼の頭を抱きこむ形になる。

「リヴァイさんは、まだオレが女を抱いてもいいと思ってるんですか?」
「お前は俺とセックスするが、男が好きなわけじゃねぇだろう?男なんだから女も抱きたくなって当然だ」

 そう言いながら背中に回った手が骨をなぞるように撫でられて、反射的に仰け反った。
 リヴァイはわかっているのだ。
 抱かれる側のエレンが自分で男であることを忘れたくないと、ただ女のように扱われるのが嫌だと思っていることをちゃんとわかっている。
 だから、こうしてそのチャンスを与えるようなことを言うのだ。
 …そんなこと言うから、セフレだと思われるんですよ。
小さく呟いた声はリヴァイの耳にも届いていると思う。

「リヴァイさんはオレ以外も抱きたくなるんですか?…ぁ、」

 首筋をれろりと舐められて、小さく喘ぐ。

「俺はお前しか抱かない」
「でもオレは女とセックスしていいって?」
「男はひっかけるなよ」
「…オレだってリヴァイさんだけです」
187 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:11:41.67 d
 リヴァイだからセックスしたいと思う。
 抱いて欲しいと思う。
 それは間違いなくリヴァイを好きだからで、好きな人に他人とセックスしてもいいなんて言われたら嫌に決まっている。
 本当は自分のことを好きじゃないのかもしれない、と思ってしまうのは当然だ。
                                          
「リヴァイさんはそうやってオレに選択肢を与えようとするけど、そんなの必要ない。もっと縛ってください。…じゃないとオレはどうしていいかわからなくなる…」
「お前を全部、俺のものにしていいのか?」

 じっと顔を見上げられた。

「…好きな人には全部あげたいと思うし、好きな人は誰にも渡したくないって思うのが、普通なんじゃないんですか」
 男同士で好きだ何だ、と言い合うのはどうしても恥ずかしくて顔を背けてしまう。
 けれど、恋人同士であるならどうだろう。
 無償に好きだと言いたくなるし、触れていたくもなる。

「お前はすんなり帰っちまうし、合い鍵を受け取らねぇからその気はないんだと思っていたが…」
「それはリヴァイさんの言葉が足りないんですよ…!」
「……まぁいい。もうお前は俺のものでいいんだな?」

 はい、と言おうとしたその唇を塞がれて、それに応えるようにリヴァイにぎゅうっと抱きついた。



 唇が腫れてしまうかもしれないと思う程にキスをして、自分よりも分厚いリヴァイの手で肌をなぞられ、敏感な部分を擦られて何度も達した。
 今までシーツを掴むしかなかった手でリヴァイに目一杯抱きついて、抑えなくなった声で何度も「好き」とこぼす。
 やはりリヴァイとのセックスは気持ちが良い。
 思いが通じたとなれば、尚更、気持ちが良かった。

「あ、ああっ…ん、んぅ、リヴァイ、さん…っ」

 もう下半身はローションや体液でぐちゃぐちゃで、あんなにきつく閉じていた後孔もリヴァイの舌と指に翻弄されてだらしなくヒクつき、開いたままになっていた。
 すぐに熱いリヴァイのモノで塞いでくれると思ったのに放っておかれて、もの欲しそうに疼いてしまっている。
188 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:11:49.41 d
 仰向けに寝かされ、赤く熟れた乳首に吸いつかれた。
 じゅう、っときつく吸い上げられて背中がビクビクと跳ねあがる。
 快感を押さえつけるように、リヴァイの頭を抱え込めば、また吸い上げられて、カリッと噛まれた。
                                          
「ああっ…んっ!…、はぁっ…、ぁ、噛まな、で…っ」
「でも今のでまたイッただろう、エレン」
「ん、ゃ、…も、おかしく、なりそ…だからっ、入れてください…っ」

 何度もイかされたし、寸止めにもされた。
 もう乳首だけでも達してしまうほど、体中が敏感で、脳が痺れている。
 このままじゃ気を失ってしまいそうだった。
 自ら足を上げて、リヴァイを見上げる。
 余裕をなくして歪むその顔に興奮した。

「アッ…、すご、い…ぐちゅぐちゅ、してる…っ」

 後孔の窄まりに指を伸ばして、ぐずぐずに蕩けてヒクつくそこを見せつけるように開いた。
 我慢できずに少しだけ中に入りこんでしまった指に、粘着質な液体がくちゅりと絡みついた。

「ここ、リヴァイさんので、奥まで、いっぱいにしてください…っ」

 はぁっ、と切羽詰まった呼吸が聞こえて、熱くぬめった後孔に熱く、固くなった性器が押し付けられる。

「ぁ、っ、んっ〜〜〜……っ!」
 
 そのまま躊躇いもなく、ぐ、と腰を進められて、リヴァイの性器が根元まで内側にぐぢゅんっと突っ込まれた瞬間、全身に電気が走ったみたいにガクガクと震えて、大きすぎる快感に、たまらずリヴァイの背中に爪を立てた。

「あっ、あ…、ぁ…ゃ、すご、い…入れただけ、なのに…っ気持ちいい…っはぁ、」

 体に力が入らないのに、後孔はリヴァイの熱をぎゅうっと締め付けて離さない。

「あっ、ん、リヴァイさん…っ熱い、オレの中でびくって、してる…っは、ぁ…っ」
「お前…っ、そりゃわざとか?」
「な、何…っアッ!…ぁ、まだ、奥っ…」
189 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:12:18.34 d
 足を抱えられて、折りたたまれるようにされると奥まで入ったと思っていた性器がもっと奥まで入り込んできた。
 熱い、大きい、固い。
 隙間なくぴったりと埋まる熱は少しの動きでも敏感に反応して、締め付けてしまう。
 耳元で、「悪い、動く」と余裕のない声が聞こえて、え、と思った瞬間には媚肉を強く擦られた。

「アアアッ…〜〜〜っ、っ、ぁ、く、ぁ…っ」

 全身がスプッスプッと震え、中でイッてしまったのがわかった。
 リヴァイにしがみついていないと、自分が今どこにいるのかがわからなくなってしまいそうで、必死にしがみついた。
 ああ、気持ちいい、すごい、死んじゃいそう。

「アッ!あっ、ん、は、あぁっ…!リヴァイさ…っリヴァイさん…っすき、です…っ」
「ああ、っ俺も好きだ」
「い、いっぱい…っしてくださ…っ…ぁ、んぅ、あ、はぁっ」

 性器を出し入れする度に、ぐぢゅ、ぢゅぶ、と恥ずかしい音が聞こえてくる。
 でも繋がっているのだと実感できて興奮した。
 顔を近づけて、キスをせがんだ。

「ん…、食べちゃう、みたいなキス、してください…」
「は、なんだそれ」
「ん、好き、です…っ」

 思えば、あの最初のキスでエレンはもうリヴァイのことを好きになっていたのかもしれない。
                                          



おわり (笑)

内容ごちゃごちゃで本当すいませんでした
ありがとうございました!(大爆笑)
190 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:13:03.38 d
幼い頃にリヴァイさんに一目ぼれしたエレンが高校生になって再会し距離が縮む話。教師×生徒かつ義兄弟(ほぼネタバレ)という欲張りっぷり。

※事故、流血表現ありです
※リヴァイさんのモブお母さんが出てきます

前回までの雌エレンシリーズ、たくさんの方に読んでいただけて嬉しかったです〜!
今回の話はリヴァ←エレなのでリヴァエレ未満って感じですが、きっとこれからどんどんリヴァイさんがエレンちゃんにハマっていって手放せなくなるんでしょうね( ˘ω˘ )
ちなみに続ける予定は今のところあんまないです


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*進撃の腐人
*現パロ
*リヴァエレ
続きを全裸待機!!
風邪ひいてるけど構わないっ(バッ
季節外れのインフル中だけど(バッ
ハマっていく過程を是非…!!
191 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:13:32.30 d
 いつの間にか彼の身長を追い越してしまっていた。こんなに近くで彼を見るのは久しぶりで、緊張して視線を合わせることができなかった。
 しかし、周囲に気を遣わせてはいけないと思って彼の額のあたりを見つめていると、目を合わせないようにしているのがばれていたのか、眉間に皺が寄っているのがわかった。

「あ、えっと…よろしくお願いします…」


・・・

 春から着るこの学ランはエレンが幼い頃に憧れた人が着ていたものと同じだった。
 この制服を着たらあの人のように大人になれるだろうかと期待したけれど、鏡に映る自分の姿を見て、そう簡単にはいかなそうだと思った。
 小学生だった自分が高校生の彼に対して思ったことと、高校生になった自分が今の彼を見て思うことはおそらく何も変わっていないと思う。
 尊敬して、憧れて、そして、好きだと思う。
 とは言っても、最後に彼を見たのは何年も前のことで、今は何をしているのか、どこにいるのかもわからない。
 本当はまともに話したことだってないし、不意に耳に入ってきて知ったその名前を呼んだことすらないのだ。
 けれど記憶の中に彼はいて、エレンの恋心を今でもずっと一人占めしている。
192 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:13:38.89 d
 今日から授業が始まる。
 皆の心の中には新しいことを学べることへの期待とこれからついていけるだろうかという不安があるのだろうけれど、エレンにはそんなことはどうでもよかった。
 エレンは机に突っ伏すと、はぁ、と溜息をつく。
 やっとあの人と同じ制服を着て、同じ学び舎で過ごすことができるのだ。
 あの人は高校時代、何組だったのだろう。
 もしかしてこの教室で一年間過ごしたのかもしれない、と思うだけでドキドキした。
 初めてあの人に一歩近づけたような気がする。
 名前以外には制服しかわからなくて、とにかくこの高校に入って同じ制服を着ることだけを目標としてきた。
 この高校に入れば、彼とエレンの人生において少しだけ共通点ができる。
 そして、追っているうちにまた会えるのではないか、なんて夢のようなことを考えていたのだ。
 まぁ、そんなことあるわけがないのだとわかってはいるのだけれど。
 彼はもう社会人で、もしかしたら結婚して子供もいるかもしれない。
 そう考えてしまうと胸が苦しくなるが、幸せであってくれたらいいと、思う。
 そして、できればもう一度会えたら、と。
 真新しい教科書をぺらぺらと捲った。
 まだ誰の物にもなっていないような匂いがする。
 まだ誰も触れていない新しい紙の匂いは結構好きだ。
 けれど、やはりあの人の方が好きだと、エレンは思った。

 一時間目はLHRで、これから一年間共に過ごすクラスメイトのことを知る時間になった。
 アルミンやミカサも同じ高校へ入ったけれど同じクラスではなかった。
 特に淋しいということはないが、少し残念な気はしている。
 同じ中学出身の、何かと喧嘩の多いジャンと同じクラスになるならば幼馴染である二人が一緒の方が良かった。
 もうそんなことを言っても仕方がないので、エレンはクラスメイトの自己紹介を聞くふりをして窓の外を眺めていた
 ――この景色はあの人が見たものと同じなのだろうか。
193 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:14:04.31 d
 一年四組であるエレンのクラスの担任は生物教師のハンジ・ゾエという女性だ。
 明るくて気さくなハンジは見るからに優しそうで、厳しく、怖い人でなくてよかったと皆がホッとしたと思う。
 しかし、私も最後にもう一回自己紹介してもいいかな、と言うので、名前と担当教科しか知らないクラスの皆は勿論だと頷いた。
 そして全員の紹介を終え、ハンジは話し始めたのだが、その内容は、何ともひどいものだった。
 「私は生き物が大好きなんだけど、生き物とは実に素晴らしいよね」から始まり、生命の神秘について聞かされることとなり、話すにつれ生々しくなる話に、皆顔を真っ青にさせ、口元を覆い俯く者までいた。
 興奮気味に話すハンジは全く止まる様子もなく、もうやめてくれ、誰でもいいから止めてくれ、と願うクラス全員の思いを聞いたのはチャイムと言う名の救いの鐘だった。
 ハンジは明るく、気さくではあるが、それ以上にマッドサイエンティストなのだと言うことをエレン達一年四組の生徒は漏れなく知ることとなった。
 一つ言っておくと、この時間に決めておくべきだったクラス委員は決まらずに終えた。

 授業開始一日目の授業は教科書を進める先生もいたが、ほとんどが授業の説明で終わったので、それほど疲れはしなかった。
 誰かと一緒に帰る約束をすることもなく昇降口で靴に履き替えていれば、後ろからアルミンとミカサが来たので、一緒に帰ることにした。

「エレンは部活見学には行かないの?」
「あー、まぁ入る気もねえしな。お前らは?」
「僕は考え中」
「エレンが入らないなら私も入らない」
 ミカサは運動部にでも入れば間違いなく活躍できると思うのだが、いつもこの調子だ。
 母を亡くしたあの時から過保護すぎる程エレンの傍にいたがる。
 高校生になったのだから、そろそろ自分自身のことも考えて欲しいと思うのだが。
「お前、何か部活入れよ」
「どうして」
「嫌ならいいけど。お前が部活入ったら試合とか応援に行ったのに」
 そう言うと、ミカサはしばらく考え込んでいるようだった。
 大方、エレンの応援と一緒にいる時間が減ることを比べて悩んでいるのだろう。
194 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:14:29.20 d
 エレンは初めから部活に入るつもりはなかった。
 部活に入ればそれだけお金がかかるし、父は遠慮しなくていいと言ってくれたけれど、家のこともやらなくてはならないので、できるだけ時間は有効に使いたい。
 勉強も頑張るつもりだ。
 勉強ができれば将来の選択肢が増える。
 まだ将来何をしたいかなんて決まっていないけれど、もしあの人が何をしているのかを知ったら、エレンは簡単に憧れて、その背中を追ってしまうのだろう。
 その時、自分の過去を後悔したくはない。
 ろくに話したこともない人が目標なんて言ったら笑われてしまうかもしれないが、エレンにとってはそれだけ彼は大きな存在なのだ。
「そういえば、四組の担任の先生ってどんな人?確か生物の先生だっけ」
「…た、楽しい感じの先生だけど……。三組は生物の先生誰なんだ?」
 ミカサとアルミンは三組だった。
「えっと、まだ授業がないからどんな先生かはわからないけど、確かモブリット先生だったかな」
「……そうか、よかったな」
 あのLHRでのハンジの話を思い出しただけでもゾッとしてしまう。
 急に体を震わせたエレンに、アルミンとミカサは首を傾げたが、知らない方がいいこともあるので何でもないと言ってやり過ごした。
「お前らの担任は?」
「アッカーマン先生?無口って感じで怖そうに見えるけど、まだよくわからないかな。数学の先生だよ」
「ふうん」
「エレンのクラスの数学は別の先生なのかな?」
「エルド先生だな」
 先生が違うから試験前は意見交換できるね、と話した。
 二人とは途中で別れて、エレンは今日の夕飯と明日からの弁当の材料を買いにスーパーに寄った。掃除、洗濯、炊事など、家事は全てエレンがやっているのだ。
 母親はエレンが幼い頃に亡くなっている。一緒に買い物に行った帰りに、袋から転がった林檎を追いかけて道路に飛び出したエレンを庇って、余所見運転をしていた車にはねられたのだ。
 あの辺りの記憶は不鮮明だが、ぐちゃりと潰れた林檎が中まで真っ赤に染まっていた光景だけは未だに目に焼き付いている。
 以前は林檎を見るだけで吐き気がしていたが、今はそれも少し落ち着いて、たまに気分が悪くなる時はあっても随分平気になったと思う。
195 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:14:45.46 d
 当時は血の色を思わせるような赤いトマトもケチャップも苦手だった。
 母がいないことに慣れたとは言いたくないが、医者である父と二人でなんとかこれまでやって来られた。
 父は病院に泊まったり、夜中に緊急で呼びだされたりと忙しい。入学式も手術があって来られなかったけれど、小学校の頃から授業参観も運動会も、卒業式にも父がきてくれたことはなかったので、もう慣れてしまった。
 その度に一緒にいてくれたアルミンとミカサとその両親にはとても感謝しているが、エレンがここまでやって来られたのはやはりあの人の存在もあった。
 母を自分のせいで亡くしたと思い、毎日泣いていた入院生活のなかで彼に出会ったのだ。
・・・

 その日は、母と一緒に夕飯の買いものをしに外に出ていた。
「今日のごはんなに?」
「何だと思う?」
「チーズハンバーグ!」
「それは昨日も食べたじゃない」
 だから今日はチーハンはなし!と言う母に「え〜」と抗議の声を漏らすと、デザートに果物あるからね、と言われてすぐに機嫌をよくした。
「母さんが作ったものはどれも美味しいから、何でもいい」
 母は、ありがとうと言って笑った。
「オレが持つ」
「ありがとう、エレン。でもエレンには重いからいいわ」
 代わりに、と言って母は手を繋ぎたがったけれど、もう手を繋いで歩くような年齢ではないからと言って隣を歩いた。それよりも、その荷物を持ってあげたかった。エレンは母の役に立ちたかったのだ。
 けれど、重くない、と言って母の手から半ば奪うようにして持った買い物袋は母が言った通り重くて、その中身は零れ出す。
 ころころと転がったのは、真っ赤な林檎だった。さっき母さんが言ったデザートの果物は林檎だったんだ、そう思いながらエレンはその真っ赤な果実を追いかける。

「エレンっ!!」

 母の呼ぶ声と、車の音。
 振り返れば、強張った顔をした母に痛いほど強く抱きしめられていた。え、と思った時には体中に衝撃が走って、母と共にアスファルトへと叩きつけられた。

「っ…、ぁ、」
 体中が痛い。目がチカチカして前がよく見えない。でも、自分の上に覆いかぶさる母の体がとても重いことだけはわかった。
196 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:16:41.72 d
 何が起こったのか分からなくて必死に首を捻って周りを見れば、ぼやけた視界に赤が見えた。
 林檎だ。ぐしゃりと潰れた、赤い林檎。
 でも、林檎は、中身も赤かっただろうか。

 目を覚ましたエレンの視界に一番初めに映ったのは、驚いた顔をした綺麗な看護師さんだった。知らない人ではない。
 父に用事があると言って母と病院を訪れた時、何度か顔を見たことがあった。
 母と買いものに出かけたはずなのに、何故今自分は病院にいるのだろうか。いつの間に、ここに来たのだろう。
「エレン…!」
 看護師さんが呼びに行ったのか、病院内は走らないように、と教えた本人である父が走って病室に入ってきた。
 その顔はとても心配そうだが、安心しているようだった。
 しかし、未だ意識のぼうっとするエレンには、父が泣きそうに見えたくらいで、やはり状況はよくわからなかった。
「と、さ…」
「エレン、父さんがわかるな?」
 声が掠れて上手く出せない。
 その問いかけにゆっくりと瞬きをして肯定を示せば、よかった、と言って右手を父の大きな手で握られた。
 暖かい。母とは違った、大きくて包み込むような手だった。
 そうだ、一緒に母もいたはずだ。母は今、どこに。
「か…さ、……母さ、んは…?」
「……エレン、」
 さっきまで隣にいた母の声をまだ聞いていない。
 目を覚まして一番初めに見た顔は母じゃなかった。
 あの時恥ずかしいからと言って母と繋ぐのを嫌がった手を今は父が握っている。
 母が、いない。次第に不安になって、エレンは母さん、と呟いた。
「エレン、母さんはお前を守ったんだ」
 父の声は、震えていた。

 目を覚ましてから二日が経った。まだ頭の包帯はとれていないし、骨折した左腕は動かせないが、右手はかすり傷だけで、ご飯は一人で食べられるようになった。
 意識もはっきりしているから、あの日のことも少しだが思い出せる。
 あの日、エレンは落ちた荷物を拾おうと道路に飛び出して、余所見運転をいていた車に跳ねられた。
197 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:17:42.07 d
 母が抱きしめていてくれたからエレンは大事には至らなかったけれど、たくさん血が流れていたのを覚えている。
「エレンくん、ご飯ちゃんと食べられた?しっかり食べて、早く治そうね」
 目を覚ました時からエレンを担当してくれている看護師さんが皿に残っているものを見て、子ども用のフォークにそれを刺すとエレンの前にずい、と出す。
その匂いは林檎だった。
 その瞬間、目の前の綺麗に八等分された林檎とは似ても似つかない、ぐしゃりと潰れた真っ赤な林檎が頭を過った。
「ぅ、ぐ…っ」
「エレンくん!?」
 咄嗟に右手で口元を覆った。そうしないと今食べた物がこみ上げて来そうで、必死に喉に力を入れて耐えた。
 看護師さんが「ごめんね」と言いながら背中を摩ってくれている。
「食べられなかったら残していいから」
「ごめ、なさい…」
「ううん、私こそごめんね。急がなくていいよ」
 眉を下げて笑った看護師さんはエレンが膳を前に押したのを見て、じゃあ持っていくね、と言って下げてくれた。
 怖くなって、布団を片手で頭までかぶった。
 あの時、事故に遭ったのはエレンだけではなかったはずだ。
 だって、体がまだあの重みを覚えている。
「エレン、」
 布団越しにエレンの震える体に大きな手が触れた。エレンは恐る恐る顔を出す。
「父さん…」
 昼食の後に必ず様子を見に来る父はいつも通り穏やかな顔をしていた。
 母の話をしようとしない父がいつも通りに笑っているのを見て、エレンは腹が立った。
 どうしてそんな風に笑っていられるんだよ。
「父さん…か、母さんは?オレ、母さんと買いものに行ってたはずなんだ…でも、どうして、ここに、母さんはいないの?」
「…エレン、母さんは」
「母さん、オレをかばって、一緒に…っ父さんはお医者さんだから、もちろん、母さんも助けてくれたんだよな…っ?」
 父の顔色が悪くなって、ついには俯いてしまう。ごめん、と掠れるような声が聞こえた。
そしてエレンは悟った。母は死んだのだと。
 自分を庇って死んだ。
 あの時、無理矢理買い物袋を持とうとして袋から落ちて転がっていった林檎をエレンは取りに行こうと道路に飛び出した。
198 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:18:55.41 d
 そして、車が来て、母はエレンを庇って、代わりに。
「っな、何で…!母さんはオレをかばったのに…っ何で父さんは母さんを助けてくれなかったんだよ…!!」
 エレンは自分が悪いんだと己を責めた。
 そして、母の言うことを聞かなかった自分の命だけを助けた父を責めた。
 オレのせいなのに、どうしてオレだけを助けたの、どうして。
「どうして、オレなんかより、母さんを助けてくれなかったんだよぉ…っ」
そう言って泣きだしたエレンの体を父は優しく抱きしめた。
「父さんは母さんを助けられなかった。だから、母さんが命を掛けて守ったお前だけは…エレンだけは、どうしても助けたかった…っ」
 父も泣いていた。いつも通りなわけがない。
 辛いのを、泣きたいのを我慢して、エレンを不安にさせないように必死で穏やかなふりをしていたのだ。
「母さんを助けられなくて、ごめん…っでも、俺は、カルラが守ったお前が生きていてくれて、本当に、良かったと、思う…っ」
「と、父さ…っう、っ母さん…っ母さん……っ!」
 病室に、子ども泣き声が響いた。

 母が亡くなったと知ってからはいつもぼうっとして、何もする気がおきなかった。食事は看護師さんが持ってきてくれるまで気付かず、と言うのも、全く腹が空かないのだ。
 いつの間にか時間が過ぎている。食べなきゃ治らないよ、と言われれば口には運ぶものの、美味しいかどうかはよくわからなかった。
 気が付くとぼろぼろと涙が零れていて、看護師さんに大丈夫かと聞かれるまで自分が泣いていることにも気がつかなかった。
「エレンくん、今日は外に散歩に行ってみようか」
 そんなエレンを見かねて看護師さんが外に連れ出そうとしてくれた。
 足はすり傷だけで自由に動かせたけれど、看護師さんは車いすを用意してくれて、エレンはただそれに従った。
 外に出るのは久しぶりだった。
 今日は晴れていて風も心地いい、らしい。
「良い天気だね、エレンくん」
「うん…」
 病院の中のような独特の匂いはしなくて、生温かい風が春の匂いを運んでくる。
 そうだ、もう、春だ。小学校の学年が上がって新しいクラスになった。
 新しいクラスには幼馴染のアルミンやミカサもいて、皆また一緒なんだ、と言ったら、良かったね、と一緒に喜んでくれた人がいた。でも、もういない。
199 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:19:48.29 d
 母を亡くして、これからどうやって暮らしていくのだろう。
 父は仕事以外何もできないし、家に帰ってくる時間も不規則で病院からの呼び出しで夜中でも仕事に行くことがある。
 子どものエレンに出来ることはあまりにも少ない。もっと母の手伝いをしておけばよかった。
 ぐ、と拳を握った。
「エレンくん」
 その手を看護師さんが優しく握ってくれた。
 でもこれも、母の手じゃない。あの日、母が手を繋ごうと言ってくれた時、ちゃんと、恥ずかしがらずに手を繋いでおけばよかった。
 最後に繋いだのはいつだっただろうか。もう母の手の暖かさなど覚えてはいない。
「何かあったら、私も力になるからね」
 にこりと笑ってくれた看護師さんにエレンは返事をすることができなかった。
「私にも息子がいるんだけど、もう高校生だからエレンくんを見ているとあの子の小さい頃を思い出すな」
 看護師さんは車いすを押しながらそう話した。
 打った頭に異常はなかった。
 左腕の骨折以外はほとんど軽傷で済んだので退院することはできたが、忙しい父が帰ってこない家に一人でいるのは心配だからと言って、完全に腕の包帯がとれるまでは入院することになった。
 どちらかと言えば、精神的ショックの方が大きくて、以前の元気なエレンの姿はなく、いつも生気のないような目をしていた。
 アルミンやミカサも休日になれば見舞いにきてくれたけれど、母と仲良く手を繋いでいるのをただ見つめていた。
 二人の両親は「遠慮なく頼ってね」と言ってくれた。
 しかし、もういない母と比べてしまって、あんなに優しい彼らにひどいことを言ってしまうかもしれない。
 そう思うと、素直には甘えられなかった。
 エレンが入院している間も小学校の授業は進む。また学校へ通えるようになっても、授業は全くわからないだろうなと思っていた。
 そんな時、入院している小学生くらいの子どもたちに、たまに勉強を教えに来てくれる人がいるのだと父から聞いた。
 エレンも行ってみるといい、と言われ、エレンは教えてもらった談話室へと足を運んだ。
 開かれているドアから少しだけ中を覗く。
 エレンと同じくらいの年齢の子どもが明るく笑いながら勉強をしていた。その光景にエレンは何故か足が竦んだ。
 どうしてあの子たちは笑っていられるのだろう。
200 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:20:33.38 d
 それでも、事故以降全く笑えなくなってしまったエレンには眩しすぎる。
「できた!リヴァイ〜!」
「おい、年上を呼び捨てにすんじゃねえ」
 そう言いながら部屋の奥で立ち上がったのは学ランを来た人だった。
 もしかしてあの人が勉強を教えてくれる人なのだろうか。
 高校生だとは聞いていなかったから少し驚いた。
 リヴァイと呼ばれたその人は乱暴な言い方をしたものの、丁寧に勉強を見てくれているようだった。
 そして、「正解」と言いながら子どもの頭を撫でる。その微かに笑った顔に、エレンはただ、単純に、一目惚れをしたのだ。
 じっと見ていれば、視線に気づいたリヴァイと目が合って、おい、と投げかけられた言葉にエレンの体はビクリと揺れた。
「お前も一緒にやるか」
「っ、」
 こちらに近づいてくるリヴァイに、エレンはぶんぶんと首を振りながら後ずさると、病室へと駆けだした。
 胸がドキドキしている。
 あの事故以来、こんなにドキドキしたのは初めてだった。
 久しぶりすぎて、どうしたらいいのかわからない。
 このドキドキをどうやっておさめたらいいのかがわからない。
 とにかく居ても立ってもいられなくて、口を手で覆うと踵を上げて何度かジャンプした。
 エレンはまた談話室に向かう。リヴァイがいつ来るのかわからなかったが、休日は必ず来るので、それを知ってからは何度か中を覗いた。だが、やはり中に入ることは気が引けてしまうし、リヴァイに話しかけることなど到底できなかった。
 リヴァイに憧れた。その頭を撫でる手一つであんなにも皆が笑顔になっている。そして、皆から慕われるその姿がエレンにはとても大人に見えて、あんな風になりたいと思ったのだ。
 今日はエレンがリヴァイに会える最後の日だった。今日の午後には退院するので、父がいるからこの病院へ足を運ぶことはあるだろうが、もうこの談話室を覗くことはおそらくないだろう。
 だが、中を覗くと、お茶を啜りながら話をしているお婆さんが三人いるだけで、子どもは一人もおらず、リヴァイの姿も見えなかった。
 今日こそは勇気を出して話しかけようと思っていた。退院してしまうから、いまさら勉強を見てください、なんて言えないけれど、少しでも話がしたかった。それなのに。
 エレンは拳をぐっと握ると、俯いたまま病室へと戻った。
201 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:21:21.46 d
 これから何分…、いや何時間待たされるかわからない。
 エレンはアルミンとミカサが持ってきてくれたプリントと教科書を交互に睨んでいた。
 そのプリントは担任の先生が少しでも早く勉強に追いつけるようにとわかりやすくまとめて作ってくれたものだった。
 書いてあることはわかる。理解もできる。
 だが、これで本当に合っているのかはわからなくて、エレンは次第に飽き始めた。
 隣に座って来たお婆さんが「勉強してるの、えらいね」と言ってくれたけれど、何も返すことができなかった。
 早く帰りたい、そう思っていると、ふと手元の教科書に影が落ちた。
 視界の端に映るのは、黒い靴だった。
「…?」
「お前、退院するのか。とうとう最後まで入ってこなかったな」
 その声に、勢いよく顔を上げる。
「あ、ぅ…り、」
 リヴァイだった。
 こんなに近くで見るのは初めてで、エレンは緊張と驚きで声が出なかった。
 どうしてここにリヴァイがいるのだろう。
 だって今日は談話室にはいなかった。心臓のドキドキが大きすぎて、周りの音がよく聞こえない。
 何か、何か話さないと。
 エレンは頭がいっぱいいっぱいになって、口をぱくぱくするだけでうまく話せない。
「勉強、見てやろうか?」
「う、ん…あ、でっ、でも…」
 リヴァイはエレンの隣に座ると、手元のプリント覗きこんだ。
 近い、恥ずかしい。
 プリントに書いた答えは間違っているかもしれないのに。
「なんだ、できてるじゃねえか。合ってる。偉いな」
「っ…!」
 頭にぽん、と手がのせられて、エレンの前髪をさらりと撫でた。
 瞬間、ぶわりと体が熱くなった。
 ずっと、羨ましかった。
 こうして「偉いな」と言って撫でてもらえる皆が。
 その手は思っていたよりも優しくて、暖かかった。胸の奥がきゅうっとなって、エレンは思わず胸元を掴んだ。
 何故か、涙があふれそうだ。
「退院祝いにこれをやる」
「え…」
 差し出された小さな袋からは甘い香りがした。
 それを受け取ると、リヴァイは立ち上がり、「じゃあな」と言って去って行ってしまった。
ありがとう、を言えなかった。
202 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:22:05.46 d
 父と二人で帰ってきた家は静かで、まるで何年も誰も住んでいなかったような静かさだった。
もう、母はいない。
「エレン。頑張ろうな、父さんと」
「…うん」
 それから父は頑張ってご飯を作ってくれようとしたけれど失敗して、結局、近くのコンビニでパンを買ってきて食べた。やっぱり味はしなかった。
 食べないと父が心配するから食べたけれど、ただスポンジを噛んでいるような食感に、エレンは何度も手を止めかけた。
 その後すぐに病院から連絡がきて、父はまた出ていってしまった。
 エレンをこの家に一人残すことに父はとても心配したが、これからだってこういうことは何度も起きるのだ。我儘を言ってはいられない。
 大丈夫だから、と言ってエレンは父を見送った。
 この家にいる時、母がいないことなんてなかった。でも今はエレンしかいない。
 これからどうしたらいいんだろう。どうなってしまうのだろう。
 父は家事はできないし、これから毎日味のしないパンを食べることになるのだろうか。不安で堪らなくて、無性に母に会いたくなった。
 しん、と静まった家でエレンの鼻を啜る音と嗚咽だけが響いた。

 朝起きると、リビングのテーブルの上に昨日の残りのパンと、紐を通した家の鍵が置かれていた。
 父はあれから一度家に帰って来て、これを用意してまた病院へ戻ったらしい。
 共に置いてあったメモには『カギはちゃんとかけて、なくさずにもっていなさい』と書かれてあった。エレンはそれをしっかり首に通した。
 今日から学校へ行かなくてはならないから、お腹が減っていなくても何か食べなくてはならない。
 エレンはテーブルに置いてある何の味もしないパンを一口食べた。
「…おいしくない」
 ポツリと独り言が漏れた。
 そして、ハッと思い出す。昨日、リヴァイがくれたものはなんだったのだろう。
 エレンは自分の部屋へ駆けだして、机の上に置きっぱなしだったそれを手に取った。
「…!やっぱり甘い匂いがする…!」
 先ほどまで食べていたパンも本来ならば甘い香りがするはずなのに、何の匂いもしなかった。
 思えば、病院食だって何の匂いも味もしなかった。でも、これは匂いがする。
203 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:22:56.63 d
 エレンは急いで包みを開けた。
「…!」
 ふわりと甘い香りがして、エレンの腹がきゅうっと鳴った。美味しそう。
 これが何のお菓子なのか、この時のエレンはわからなかったけれど、これは母が良く作ってくれたパウンドケーキと似ていた。
 そして、勿体ないと思いつつ一口食べると、口の中に甘さと仄かな酸味が広がって、エレンは驚いてそのパウンドケーキをじっと見つめた。
「りんご、だ」
 あの真っ赤な林檎を思い出す度に吐き気がしていた。
 でも、この小さく刻んでのせられた林檎はただただ美味しくて、エレンは信じられない気持ちで、また一口食べた。
「…っおいしい…っ、ぅ、」
 美味しい、味が分かる。
 エレンはぼろぼろと涙を流しながら、それをぺろりと食べた。
「ふふ、おいしいなあ…!」
 この日から、エレンは食べ物の味がわかるようになった。
 
 母を亡くしたエレンの中で、リヴァイの存在は大きかった。
 ぼうっとして、自分で歩くことすらしなくて車いすを用意されていたエレンが自分の足で談話室へ行った。
 そして、喜ぶこと、楽しむことを忘れていた心があんなにも高鳴った。
 偉いな、と言って頭を撫でてくれた。味覚も取り戻すきっかけとなってくれた。
 エレンはあんな風になりたいとリヴァイに憧れ、目標にしてきた。
 間違いなく、リヴァイとの出会いでエレンは変われたのだ。
 母がいないことに淋しくないわけではない。
 ただ、今のままじゃいられないと思った。
 それからはめげずに料理にも挑戦したし、洗濯や掃除もするようになった。
 勿論、勉強もしっかりやった。
 そして今、エレンはリヴァイがあの時着ていたのと同じ制服を着ている。

・・・

 それは突然だった。
 昨晩、珍しく比較的早い時間帯に帰って来た父に明日の夜は空けておいてくれと言われた。
 人を招きたいんだと言われ、いきなりだな、と思いつつもエレンは頷いた。
 夕飯は?と聞くと、いつも通りでいいけど四人分、と言われて少し豪華にした方が良さそうだな、と思った。
204 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:23:31.13 d
 エレンは日直で、数学のプリントを集めて放課後までに職員室に持ってこいとエルドに言われていた。
 その旨をクラスメイトに伝えれば、放課後にはしっかりと全員分集まった。
「失礼します」
 職員室に入るのはやはり少し緊張してしまう。
 話したことのない先生がたくさんいるし、中には生活指導の先生であったり、年配の先生なんかは厳しそうで少し苦手だった。
「エルド先生、プリント持ってきました」
「ああ、ありがとう。えーっと…」
「? あ、エレン・イェーガーです」
「そうか。ありがとうな、エレン」
 エルドはそう言ってプリントを受け取った。
「じゃあ失礼しま…」
「イェーガー…?」
「え?」
 後ろから声がした。誰だろうと振り向けば、確か、三組の担任のアッカーマン先生だ。
 集会などで遠くから見たことはあったけれど、彼の授業は受けていないのでこんな風に近くで見るのは初めてだ。
「お前、イェーガーって言うのか」
「は、はい…。エレン・イェーガーです」
「…そうか」
 彼はそれだけを言うと、背を向けて自分の席へと戻って行った。
 そういえば、彼はリヴァイに似ているような気がして、ドキドキしてしまう。
 しかし、リヴァイを追いかけて入った高校に、彼が教師として在籍しているなんてうまい話があるはずがない。
 エレンは首を振って職員室を出ようとした。
「あれ、エレン。どうしたの?」
 入れ違いに職員室に入ってこようとしたのは担任であるハンジだった。
「数学のプリントを提出しにきたんです」
「そっかそっか!御苦労さま!気をつけて帰ってね」
「はい、ありがとうございます」
 そう言って頭を下げると、ハンジは笑顔で手を振ってくれた。
 そしてドアを閉めようとした瞬間、

「あ、リヴァイ!」

 エレンはその名前に弾かれたように顔を上げた。
「今日みんなで飲みに行こう!」
「俺はパスだ。用事がある」
 えー、と言うハンジの声が聞こえる。
 しかし、エレンにはリヴァイと呼ばれたその人しか目に入らなくて、まさか、と高鳴る心臓の音に、周りの音は何も聞こえなくなった。
205 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:24:44.79 d
 嘘だろう、そんなはずはない。
 先ほどそんなうまい話があるかと言ったばかりだし、こんな、運命みたいなこと。

 家に帰っても、頭の中はリヴァイでいっぱいだった。
 本当にアッカーマン先生があのリヴァイなのか、確実性がもてなくて早くはっきりさせたかった。
 でも正面から聞くのは怖い、と言うよりは緊張してうまく話せないだろう。
 本当に、信じられない。
 だって本当だったら、嬉しくてどうにかなってしまいそうだ。
 エレンは両手で口元を覆うと、心臓落ちつかせるように息を吐いて、視線を反らした。

「よ、よし!ご飯作ろう!」
 今日は来客があるのだから頑張らなくてはならない。
 どんな人が来るのかわからないが、きっと同僚の人だろう。
 今までも何回が来たことがある。いつもの食事に何か足せばいいか、とエレンはさっそく調理に取り掛かった。

 ちょうど全てが出来上がったところで、父は帰って来た。
 今日は早く帰る、と言って本当に早く帰って来たことなんて数えるほどしかないので、ただいま、と言う声を聞いて少しホッとした。
「おかえり、父さん」
「ただいま」
「お邪魔します。エレンくん、久しぶり。私のこと覚えているかな?」
 父の後ろから顔を出したのは女の人で、いつもとは違う顔にドキリとしたものの、彼女の顔には覚えがあった。
「あ…あの時の、看護師さん」
「覚えていてもらえて嬉しいな。元気そうで良かった」
「はい。えっと、あの時はお世話になりました。上がってください」
 彼女はエレンが入院していた時に担当してくれていた看護師さんだった。
 久しぶりに見る彼女は以前よりも歳をとっていたが、それでもやはり綺麗だった。
 彼女と父の雰囲気が何か違う。
 この家は自分の場所であるのに、なんとなく居てはいけないような気がして、エレンは焦りを感じていた。
 これ全部エレンくんが作ったの?すごい、なんて言われて、そんなことないです、と普通に返したけれど、居心地が悪いのは変わらなかった。
206 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:25:10.26 d
 そして、三人でテーブルについて少し沈黙した時、もしかして、とエレンは思った。
「エレン、父さん再婚しようと思うんだ」
「……えっと、」
 父の言葉には驚いた。
けれど、大きな声を上げなかったのは、そのことに薄々気がついていて、やっぱり、と思ったからだった。
「そう、なんだ」
「反対か?」
 父の言葉に思わず顔を上げる。
「反対とかそんなんじゃない、けど…いきなりで、ちょっとびっくりしてて…言葉が出ないっつーか…」
父が母ではない、別の人と結婚する。
 そんなこと急に言われてもどうしたらいいかわからない。
 父が母ではない人を愛したという衝撃。母ではない人が自分の義母になることを素直に受け止められるほど、エレンは大人ではなかった。
「エレンももう高校生になったから、いい機会だと思ったんだ」
「エレンくん、私じゃ嫌かな?」
「い、嫌とかじゃなくて」
 そんな聞き方はずるい。
 エレンはお世話になった看護師さんのことが嫌いではなかったし、むしろ何かと気にしてくれる彼女には懐いていた方だ。
 だから、嫌か、なんて聞かれたら首を振るに決まっている。
 でも、そうしたら、母のことを忘れてしまいそうで、母の記憶が塗り変わってしまいそうで嫌なのだ。
 エレンは将来自立していく人間だ。
 これから先、仕事以外何もできない父に誰かが傍にいてくれたらいいな、と思ったことは何度もあった。
 でもそれは、こんなに早くなくても良かった、のに。
「あ、あの、あなたが嫌って言うわけじゃないんです。ただ、受け入れるのには、時間がかかってしまう、と、思うんです」
 エレンは彼女を悲しませないよう、懸命に言葉を選んだ。
「でも、父さんはオレがいなかったら何もできない人だから、えっと、その、父を、よろしくお願いします…」
「エレンくん…ありがとう」
 彼女は少し涙ぐんでいた。
 エレンも泣いてしまいそうだったけれど、たぶん彼女とは意味が違う。
 そこはぐっと堪えて、二人が気を遣ってしまわないよう精一杯笑った。
 エレンにとって母はカルラ一人だ。
 それは今までもこれからも変わらない。
 それをエレン自身がわかっていれば、それでいい。
 いずれはこの家を出ていくことになるのだろう。
207 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:27:24.61 d
「あのね、エレンくん。私、息子が一人いるのだけど」
 彼女は少し言いにくそうに話し出した。
 そういえば、入院している時に高校生の息子がいると言っていたのを思い出した。
 あの頃は何とも思わなかったが、今考えてみると、父よりも少しだけ年下の彼女にそんな大きな息子がいるというのは驚くべきことだ。
「今は一人暮らしをしていて、学校の先生をやっているの。結婚はしていないけれど、もう家を出たんだから私のことはいいって言っているのに心配性で。
仕事を終えてから来るって言っていたからそろそろ来ると思うんだけど…。一応、お兄ちゃんになるわけだから紹介させてね」
「はい」
 お兄ちゃん。そうか、義兄ができるのか。
 エレンはますます頭が混乱しそうだったが、もう社会人と言うのだからあまり関わることはないだろうと思って、深く考えないことにした。
「あ、そういえばエレンくんはローゼ高校なのよね?じゃあもう顔合わせてるかな」
「え?うちの高校の先生なんですか?」
「そう。もしかして担任だったりとか」
「そ、それはないと、思います…!」
「そうなの?」
 マッドサイエンティストのハンジを思い出して、エレンは苦笑いで、はい、と答えた。
 その時、インターフォンが鳴り、実際に会った方が早いかも、と彼女は笑った。
 エレンは首を傾げながら、玄関に向かう。
 はい、と言ってエレンはそのドアを開けた。
「っ、は、え…」
「アッカーマンです。…やっぱりお前だったか、エレン・イェーガー」
 ドアを開けた先に居たのは隣のクラスの担任、アッカーマン先生だった。
 固まるエレンを余所に、リビングから顔を出した父と言葉を交わしている。
「こんばんは、イェーガー先生。お久しぶりです」
「ああ、久しぶり。リヴァイくん」
 元から知り合いだったような会話にエレンは益々戸惑った。
 意味がわからない。看護師さんの息子はアッカーマン先生で、アッカーマン先生は父のことを知っていて。
「ど、どうして父さんはアッカーマン先生のことを知って…」
「ああ。リヴァイくんは高校生の頃、うちの病院で子どもたちに勉強を教えにきてくれていたからね」
「え…」
208 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:28:05.93 d
 ちょっと待ってくれ、それは。
 エレンは未だ整理しきれていない頭で一生懸命考えていた。
 隣のクラスの担任であるアッカーマン先生は看護師さんの息子で、高校生の時に病院で子どもに勉強を教えていた。
 つまり、エレンの憧れてやまないあのリヴァイは、隣のクラスの担任のアッカーマン先生だった
「リヴァイだ、よろしく。エレン」
 目の前のリヴァイは何も気にすることなく、エレンに手を差し出した。
 いつの間にか彼の身長を追い越してしまっていた。
 こんなに近くで彼を見るのは久しぶりで、緊張して視線を合わせることができない。
 しかし、周囲に気を遣わせてはいけないと思って彼の額のあたりを見つめていると、目を合わせないようにしているのがばれていたのか、眉間に皺が寄っているのがわかった。
「あ、えっと…よろしくお願いします…」
 差し出された手に触れる。
 固い、男の人の手だった。
 懐かしいな、と言いながら三人はリビングに戻って行く。
 エレンは一人取り残されて、呆然としていた。
「なんだ、それ…」
 突然の展開に、エレンは思わず乾いた笑いを漏らした。
 憧れてやまないあの人の名前がリヴァイ・アッカーマンであることと、その人がエレンの隣のクラスの担任であることをこの時初めて知った。
 彼らに様子がおかしいとは思われたくなくて、いつも通りに笑って、自分で用意したご飯も食べたけれど、うまくできていたかわからない。
 どうしたの、とは聞かれなかったし、変な空気にはならずに済んだのだから大丈夫だったのだと思う。
 酒を酌み交わす父とリヴァイを見ながら、エレンは己はまだ子どもなのだと思った。
 挨拶をしに来ただけだから先に帰ると言ってリヴァイが立ち上がるまで、エレンは一度も彼の顔を見ることができなかった。
 憧れていたリヴァイが義兄になるというのは、普通ならば嬉しいことなのかもしれない。
 けれど、エレンはすぐに受け入れることはできそうにない。だってエレンはあの時からずっと、リヴァイのことが好きなのだ。
 今までならば遠い存在であるリヴァイのことを憧れて、尊敬して、ただ純粋に好きでいられた。
 でも、家族になってしまった。
209 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:28:45.08 d
 義兄になってしまった彼を恋愛感情で好きだと思うには近すぎて、同時にあまりにも遠い。
 好きだと告げるには相当の覚悟がいる。
 リヴァイは大人だから何事もなかったように接することができるだろうけれど、エレンはきっと彼を避けて、父と看護師さんに気を遣わせてしまうかもしれない。
 けれどそれは、思いを告げなくても同じことだ。
 思いを隠し、義弟のふりをしてリヴァイを慕うことはエレンにはできそうもない。
 だったら、とエレンは立ち上がった。
「せ、先生…送って、行きます」
 突然のエレンの申し出に三人は驚いたが、リヴァイ以外は少しホッとしたようだった。
 リヴァイの住むマンションはここよりもう少し都市部に近い方らしい。
 学校へは車で行っているが、今日はおそらく酒を飲むだろうと思って一度家に帰った後に電車で来たらしい。
 駅まではそんなに遠くはない。
 その間に、エレンは話さなくてはいけないことがある。
「職員室でお前の名前を聞いた時にまさかとは思ったが、本当にイェーガー先生の息子だったとはな」
「あ、はは…」
 しれからリヴァイは家のことについて少しだけ話してくれた。
 十六歳でリヴァイを産んだ母は彼の父親である男とは結婚せずに女手一つで育ててくれたらしい。
 だから、エレンの父であるグリシャと結婚しようと思っていると告げられた時は安心したそうだ。
「俺は幸せになってくれればそれでいいと思う」
「…そう、ですね」
「お前は反対なのか?」
「い、いえ!反対じゃないです!オレも父の傍に誰かいてくれたらって思っていたので、全然…」
 でも、あなたとは義兄弟になりたくなかった。
「……あの、先生はオレが義弟になること、嫌じゃないですか」
 こんな形で距離を縮めたくはなかった。
「…学校では教師と生徒だからな。何かとやりにくいことはあると思う。特にお前がな、エレン」
 リヴァイはエレンがまだ十五の子どもだと言うことをよくわかっているのだ。
210 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:29:45.51 d
「まぁでも、生まれてこのかた弟なんていなかったから、お前のことは可愛がってやりてぇとは思う」
 そう言って笑うリヴァイはただ単純に義弟という存在ができることを楽しみにしているように見えた。
 胸が痛い。苦しい。
 リヴァイは歓迎してくれているのに、エレンは素直に喜ぶことなんてできない。
 リヴァイの望む義弟をやることなど、到底できないのだ。好き、という感情を携えたままでは。
 気がつけば駅に着いていた。
「送ってもらって悪かったな。一度お前と話をしておきたかったからちょうど良かった。気をつけて帰れよ」
 リヴァイがわからない。
 エレンの中では憧れの人で、教師で、義兄になる人だ。
 今はどのリヴァイなのだろう。でも、そんなことは大して重要ではない。
 エレンのこの恋心を一人占めしているのは他ならぬリヴァイで、この気持ちにけじめをつけなければ、憧れ続けることも、教師として見ることも、義兄として見ることもできないのだ。
「す、すいません、」
「なんだ」
 急に謝罪を始めたエレンにリヴァイは眉を潜めた。
「ごめんなさい、あの、す…好きです」
「…あ?」
リヴァイはエレンのいきなりの告白にとても驚いているようだった。
「初めて見た時から、ずっと、今まで…で、でも…その、踏ん切りをつけたかっただけ、なので…だから、」
緊張して、うまく話せない。喉はからからなのに、掌は汗ばんでいた。
「ちゃんと、ふって、ください」
 その言葉にリヴァイは大きく目を見開いたが、エレンが彼に求める答えはただ一つだった。
211 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:30:26.69 d
「ふってもらえたら、ちゃんと、弟…できると思うので」
「……悪い」
 そう、それでいい。それで良かった。
 けれど、さすがに胸が痛い。
「…はい。これから、よろしくお願いします、えっと、リヴァイ、さん」
 何と呼べばいいのかわからなくてそう呼んだら、気恥ずかしくなって、へら、と笑った。
 本当は泣きそうになったのを誤魔化そうとしたら失敗してしまっただけなのだけれど。
「…お前は、それでいいのか」
「オレのこと気にしてくれるんですか?…嬉しいです。さすがお兄ちゃん、ですね」
 あはは、と笑うと、リヴァイは少し顔を歪めた。
「ああ、学校ではちゃんと、リヴァイ先生って呼ぶので大丈夫ですよ。オレ、ちゃんと生徒もできますから」
 胸の痛みが増して、苦しくなる。
 リヴァイは何か言いかけたけれど、ちょうど電車が来ることを伝えれば、何も言わずに電車に乗って、帰って行った。

 正式に再婚が決まって、届け出を出したわけでもなく、一緒に住むことになったわけでもない今ならば、まだなかったことにできると思った。
 けれどやはり辛かい。
 リヴァイを好きであった事実は変わらなくて、ふられた今でも本当はまだ好きだ。

「好きな人が、お兄ちゃんになっちゃったなぁ…」

 エレンの呟きは春の夜風に消えた。
 好きな人が、お兄ちゃんになりました。
                                       


おわり (糞笑)

ちなみに続ける予定はあまりないです(キャプション以来二度目)
212 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:30:43.37 d
かみやゆすら


「…探している資料があるんだが、調べてもらえるか」
「あ、はい。何の資料ですか?本の名前とか、解りますか」
「本の名前、というか…ウォール時代のことが書いてある文献を探しているんだ」
漠然としたリヴァイの要求をどう受け取ったのか、図書委員は目をぱちりと瞬かせる。そうしてこてんと小首を傾げた。
その動作を困惑と受け取ったリヴァイは、遠慮なしにまた溜息を吐く。やっぱり一年坊主には荷が重たかったか。
「ああ、いい。自分で探すから」
彼に頼るのは諦めて、今の時間内で出来る限り探してみようとリヴァイは踵を返しかけて、くいと袖口を引かれる感覚に足を止める。
振り返れば、遠慮がちに、だがしっかりとリヴァイの制服のジャケットを握り締める手。
潔癖のきらいがあるリヴァイにとっては余り好ましい動作ではなくて、多少の不快感が袖口でざわめいた。
「…てめえ、何しやがる」
「先輩、ご案内します」
リヴァイがぐっと睨みつけてやっても、図書委員は小首をこてんと傾けて少しも怯まなかった。
凛とした声がはっきりと告げてきた言葉に、リヴァイはくいと片眉を上げる。
検索システムを使うような素振りはなかったし、まさか一年のくせに蔵書の場所を覚えているとでもいうのだろうか。それとも当てずっぽうか。
「…場所、わかるのか」
「はい」
リヴァイの問いにひとつ頷いてカウンターから出てきた図書委員は、迷いなく足を図書室の南側へと向けた。
そうして振り返ってこちらの様子を窺ってくるから、一瞬の戸惑いはとりあえず置いておくとして、リヴァイは彼についていくことにする。
リヴァイより少し背の高い、細身の背中。僅かに頭頂部に残った寝ぐせがひょこひょこと揺れるのを何となく眺める。柔らかそうな髪だから、寝ぐせも付きやすいんだろうか。
そんな風にとりとめもなく考えていたら、前を歩く彼はどんどんと図書室の奥の方へと進んでいく。リヴァイにとっては初めて足を踏み入れる領域だ。
ただでさえ静かな空間なのに、奥まったこの場所では更に音は遠ざかって、何だか世界から切り取られたような錯覚を抱く。
棚が並べられた間隔は狭く、譲り合ってようやく人がすれ違える程度の幅しかない。
隙間なくびっしりと並べられた本が左右から迫ってくるように感じられて、リヴァイは思わずごくりと息を飲んだ。
「先輩、ここです」
涼やかな声が前方から静かに届いて、リヴァイは周囲に散らしていた視線をそちらへと戻す。
213 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:31:09.42 d
おいおい図書委員としてそれはいいのか、と多少気になったけれど、午後の授業がもうすぐ始まろうという今、図書室にはもう自分達以外いないことを見て取って、リヴァイは肩を竦めるだけでそれを流すことにした。
「せんぱーい、学生証貸してください」
先程より随分気安くなった口調で、図書委員がリヴァイを呼ぶ。制服のポケットから取り出して渡すと、男にしては華奢な指が丁寧にそれを受け取った。
慣れた手つきでカードリーダーに通せば、パソコンの画面にリヴァイの情報がぱっと表示される。
画面をちらり、そうして手元の学生証をちらり、小首をこてんと傾けた図書委員の視線の動きが気になって何となく追いかけていると。
「リヴァイ、せんぱい」
小さな、小さな声で彼に名を呼ばれてはっとする。
彼の視線は既にリヴァイが借りる本に移ってしまっていて、きっと自分の呟きをリヴァイが拾ったことにも気づいていないんだろう。それでも、聞こえてしまったその響きがどうしようもなくくすぐったい。
いよいよ自分の頬の熱さを自覚して、リヴァイは慌てて彼から目を逸らした。
「貸し出し期間は一週間です。忘れずに返してくださいね」
手続きを終えた図書委員が重ねた本の上に学生証を乗せて、すっと差し出してくる。もごもごと口の中で了解の返答を呟いて、本を受け取った。
腕に伝わる、四冊分の重み。これがあれば課題はどうにかこなせるだろう。
リヴァイの用件はその時点で終わってしまって、だからさっさと教室へ向かえばいいのに何だか立ち去りがたくて、リヴァイは呆然とする。何だろう、この感覚。
「…先輩?」
こてんと、小首を傾げて彼が不思議そうな声を出した。何か、何か言わなければ。
「…名前、」
「…はい?」
「お前、名前、教えろ」
自分の口から飛び出した言葉の余りのたどたどしさに、リヴァイは言った瞬間に頭を抱えたくなった。もうちょっと言いようがあっただろうに、何を緊張しているんだ俺は。
今すぐ消えてしまいたいリヴァイの心境など知る由もない目の前の彼は、一瞬の間の後に、ふんわりとまた花の咲くような笑みを浮かべた。
「…エレン、エレン・イェーガーです。…また来てくださいね、リヴァイ先輩」
エレン、と舌の上で聞いたばかりの名前を転がしてみる。それが何だか癖になりそうな響きで脳に焼き付いて、リヴァイは腕の中の本をぐっと抱き締める。
きっと自分はまた図書室を訪れるだろう。
214 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:31:16.41 d
図書委員としての仕事もそっちのけ、予鈴も聞こえなかったくらい本選びに没頭しているエレンに声を掛けるのが躊躇われた結果、授業には完全に遅刻してしまいそうだ。けれど、今のリヴァイにとってそんなことは些細なことだった。
「うわっ、わっ、昼休み終わっちゃう!手続きしちゃっていいですかっ」
「ああ、頼む」
確か一週間前も似たような台詞を聞いたなあなんて思い返しながら、リヴァイは何となく満たされた気持ちで小首をこてんと傾けたエレンの作業を眺める。
並べられた三冊の本はどれもリヴァイがまだ読んだことのないものだった。完全にエレンの好みが反映されたそれ。
本の中身そのものよりも、それを読めばエレンの内面に迫れるような気がして期待が膨らんでいく。エレンは、本を通してどんな世界を見たんだろうか。
「おい、エレン」
「へ、あ、はい」
忙しく手を動かすエレンに遠慮なしに声を掛ければ、やや上の空の返事があった。
顔を上げてこてんと小首を傾げる仕草はもう何度も見たことのあるもので、きっとエレンの癖なのだろう。
「お前、受付当番はずっと水曜なのか」
「えっと、その予定です、けど」
「じゃあ来週も来る。その次も。…来るから、本を用意しておいてくれるか」
お前が好きな本をもっと知りたいから。リヴァイの言葉に、エレンはぼんと音がしそうなくらいの勢いで頬を赤らめた。――おいおい、なんだその反応。
予想外のエレンの様子にリヴァイは少しばかりうろたえるけれど、それはやっぱり顔色には表れない。
「今度は一週間猶予があるからな。…期待してるぞ」
内心の動揺を抑えつつ、にやりと笑みを浮かべてリヴァイがそう言うと、エレンは上気した頬のままこくりと頷く。
「…先輩が来てくれるの、待ってますね。本と一緒に」
柔らかな笑みとともにそっと呟かれた言葉は、ちょうど鳴り響いた午後の授業開始を告げるチャイムに掻き消されることなく、リヴァイの耳に届いて甘く響いた。
                                         



続く(大爆笑)
215 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:31:42.21 d
それはイケナイ愛情表現♡

by かみやゆすら


 本当にツいてない。ツいてない日は徹頭徹尾ツいてないもんだと思い知らされた。
 エレン・イェーガー十六歳。この世のなにもかもが極彩色に見える、花の高校二年生である。
 それなのに、だ。今日は最初からまったくもってツいてなかった。不運ばかりに見舞われた。
 今日ほどツいてないことなんて、一生のうちにそうそうあるものではない。
 エレンは押しこめられた病院のベッドの上で、真っ白い天井を見上げながらふうと嘆息した。
そもそも発端はなんだったか。朝からの己を振り返る。
 朝、寝坊した。登校するため慌てて自転車に乗って家を出たら、五分もしないうちにみるみる空模様が変わり、あっという間に真っ暗になったかと思うと、嘘みたいな土砂降りの夕立になった。
 朝なのに夕立ってなんだそれ、ありえんのかよ、なんて悪態を吐きつつも、自転車を漕ぐ脚は止めなかった。
 雨宿りなんかしてたら完璧に遅刻するからだ。
 生活指導に釘を刺されていて、これ以上一日だって遅刻してみろ、進級できんからな、などと脅されていたことを思い出す。
 進級できないとなると、母カルラが角を出して怒り狂うのは目に見えている。母ちゃんには弱い。世の男どもの常に、エレンも当て嵌まる。
 仕方ねえな、着いたら体操着にでも着替えるか、なんてびしょ濡れのまま学校を目指していたら、今度は目の前に猫が飛び出してきた。しかもひょろくて小さい仔猫である。
「嘘だろ?!」
 絶対に! 何が何でも! 轢きたくない!
 キュッと急操作したハンドルは、間一髪のところで仔猫を避けた。
 けれど、濡れたアスファルトは細いタイヤをするすると滑らせる。
 ずしゃあっっと横滑りした挙句、乗っていたエレンごと吹っ飛ばして盛大に倒れてしまった。
「いってえええええ!!」
 気づいた時には地面とお友達。
 もうすでにびしょ濡れだったから、自分の身は諦めがつくものの、前かごに入れていた通学かばんもずっぽりと水たまりに浸かってしまった。
216 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:32:06.38 d
「ああああああ! チクショウ、母さんの弁当!!」
 慌てて拾いにいく途中で、さきほど自分が避けた仔猫に気づく。
 生後間もないキジトラは、豪雨のせいでびっしょびしょになっていた。
 冷えてしまったのか小刻みに震えている。
(やべえ、これ病院連れていかなきゃ死んじゃうフラグか?!)
 仔猫は冷えることに大層弱い。エレンも昔、猫を飼っていたことがあるのでわかる。
 こんなチビのうちに体温を奪われてしまえば、あっという間に儚くなってしまう。
 そっと抱き寄せると、案の定仔猫は抵抗する気力もなく、エレンの腕のなかに収まって丸まった。
(進級か! このちっこい猫か!)
 エレンは本当に本気で悩んだ。とてつもなく重い二択だった。
 しかして、うんうん唸りながら悩んでいたエレンの耳に、別方向から小さな鳴き声が聞こえてくる。
 にゃう、と掠れた微かなそれは、チビ猫が蹲っていたのとまったく逆の車道側。
「は?!」
 声のする方へバッと目をやると、そこには同じような大きさのキジトラがもう一匹。
 兄弟なのかもしれない。
 そう悠長に考える間もなく、そのもう一匹は車道へぴょこんと飛び出してしまったではないか。
「ばっかやろ!」
 そこからはもう、考える余地もなく身体が動いていた。
 地面を蹴る。
 身を躍らせて腕を伸ばす。
 どうかこの手が届きますように、と強烈に願ったところで、エレンの意識はブラックアウトした。
217 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:32:23.39 d
(痛え……)
 ふ、とそう思いついたところで、エレンの意識はふわり浮上した。
 なんだかよくわからないが、身体のあちこちが痛む。
 肘や肩、背中のあたりがじわりと痛い。それから下半身。
 どうも足の感覚がない。
 どこかに寝かされているらしいことはわかったが、頭もぼーっとしているためいまいち状況はわからない。
 そのうちに足音が近づいてきて、見知らぬ女性の声があがった。
「先生、患者さんの意識戻りました!」
 バタバタっと離れていく気配。そのすぐ後に、今度は人数を増やして近づいてくる足音。
 なにやら近くで機械を操作するような音がして、エレンはうっすらと瞼を開けた。
(男の……人……)
 じわじわと開けた視界で、こちらを覗きこんでいる男の姿。
 すっきりと撫でつけた髪。汚れひとつない眩しいほどの白衣に聴診器。
 小柄で少し目つきの悪いその人は、ふ、と安堵の溜息を漏らして見せた。
「生きてて良かったな、死に急ぎ高校生」
「……は?」
 ぱちぱち、と瞼をしばたかせる。少しずつ見えてきたのは、自分が真っ白な部屋へ寝かされているということ。
(病院か)
 あー、そっかそっか。やっぱりなー。なんて暢気な感想が巡る。
 仕方ない。車道に飛び出したのは自分だ。車に轢かれてお陀仏、なんて結果にならなかっただけマシだ。
 生きてるだけで儲けもん。そんなフレーズが頭に浮かんで消える。
「イェーガーさん、左足の腓骨骨折、並びに右手指基節骨骨折で入院決定です」
「え?」
「聞こえなかったか? 左足の膝下と、右手の指が折れてるって言ったんだ。ぽっきり。見事に」
「はあ……」
「とりあえず今日はこのまま入院してもらう。お前の意識が戻らないうちにお母さんがいらしたが、ついさっき入院用の準備をするために帰宅なさった。詳しい説明はまた後で、お母さんが戻られた時にさせてもらう」
「はあ……、そうですか」
「なんだ、素直だな。まだ麻酔が効いてるか?」
 ぼんやりするのは麻酔のせいなのか、と納得する。効果が切れたらきっと痛みに悶えるのだろう。
218 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:32:36.44 d
「俺、足と手、骨折したってことですか?」
「そうだな」
「車に轢かれた?」
「いいや、それは免れた。居合わせたドライバーのテクニックに感謝しろ。お前は自分から幹線道路の中央分離帯に突っ込んで、反射板に激突して怪我したんだ」
「マジでか」
「まったく、運動神経がよくても判断力がないと困るな」
 腕を組んで呆れたように嘆息する。
「で、入院すんの?」
「そうだ」
「そっかー」
 仕方ねえな、と苦笑すると、白衣の先生は驚いたように瞠目した。眇められていた目元が和らぎ、印象が柔らかくなった気がした。
「それでいいのか、お前」
「だって仕方ないじゃん。怪我しちゃったもんは」
 でも先生には面倒かけてごめんなさい。
 そう言って首だけぺこりと動かしたら、先生はまるで珍しいものでも見るかのように目を見張った。
「……」
「あー、先生」
 はっきりしない頭で、ひとつだけ気になることを思い出す。
「なんだ?」
「猫は?」
 あいつらは無事だったのか。そこだけは確かめておきたい。あんなちっちゃい猫たちだ。俺なんかの無駄に丈夫な体とは違う。
 俺の言葉を聞くと、先生はさも可笑しそうに片眉を跳ね上げた。
「骨折して死にかけた自分より猫の心配か?」
「悪いかよ」
「いや、面白い」
「はあ?」
 面白がられる筋合いはない。ムッと唇を尖らせると、先生は手をのばしてふわふわと俺の頭を撫でた。それも至極優しい手つきで。
「お前が意識を失ってもまだ猫を抱いて離さないもんだから、駆けつけた救急隊員が二匹とも保護をして警察へ渡したそうだ。いまのところ拾得物で預かってくれているそうだぞ」
「そっか」
 いまも寒さに震えているのかと思っていたから、これでひとまず安心できた。ふう、と安堵の嘆息をつく。
 母さんに相談して、うちで引き取れないか頼んでみよう。それから忘れていたけど進級を逃した件も正直に白状しよう
219 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:33:07.32 d
 こっぴどく叱られる覚悟をしつつも、自分が守りたかった命の無事を聞き、ほっと安心する。
「今夜は熱がでるかもしれん。薬は出しておく。遠慮せずに具合が悪くなったらいつでもナースコールするように」
 ぽんぽんと頭の天辺をあやすように撫でられる。
(優しい先生でよかった)
 ありがとう、と呟くと、白衣の医師は目尻を細めた。
「ああ、お大事に」

 などという、まったくツいてなかった昼間の回想をしながら、エレンはひとり痛みと闘っていた。
 時間は真夜中。病棟はすっかり静まり返っており、時折廊下をひたひたと歩くナースだか警備だかの足音しか聞こえない。
(うう……痛え……)
 全身が熱を孕んでだる重く、折れた足に至ってはずきずきと派手に疼く。
 昼間、医者の先生が言っていたことは本当だったな、と妙なところで納得する。
 あともう少しだけ我慢してみて耐えられないようなら、恥ずかしいけどナースコールしようと思った時だった。
 個室の引き戸がするりと開いた。と、同時に小さく声がかけられる。
「イェーガーさん、入りますよ?」
「……っ?」
 暗闇に姿を見せたのは、昼間の医師だった。
「ああ、起きてたのか」
 ぱっちりと目の開いたエレンを認めると、やっぱりなという顔をした。
「せんせ……いたい……」
 ふにゃりと弱音を吐いたエレンに寄り添うと、額の汗を拭ってくれた。ひやりとした掌が気持ちいい。
「ああ、そうだろう。ナースコールがないと聞いたから眠れてるのかと思ったが、やっぱり違ったか。耐えてもいいことなんかなにもない。さっさと俺たちを呼べばいいものを」
「……まだいけるかと思って」
「馬鹿。つまらん我慢大会なんかするな」
 そう呆れつつも、医師はてきぱきと処置をしてくれた。最初からこの状況を見越して準備してきてくれたのだと思う。
「あと少しだけ待て。薬が効いてきたら楽になる」
 うん、と頷いたら、いい子だというようにまた頭を撫でられた。
 なんだろう。これ、とても安心する。
「痛みが引いたら眠れるだけ眠れ。明日の朝、また看てやるから」
「先生、名前教えて」
「俺のか? リヴァイだ。外科医のリヴァイ。お前の担当医だ、覚えとけ」
「うん」
 胸の中で、いま聞いたばかりの名前を反芻する。
220 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:33:19.49 d
 リヴァイ先生。優しくて頼れる、俺の担当の先生。
 今日は朝からまるでツいてない日だったけれど、良かったことがあったとしたら猫たちが助かったこととそれから――。
(リヴァイ先生に担当してもらえたことかもな)
 そんなことを考えながら、エレンはうとうとと眠りの世界へ引き込まれて行った。


(安心したって、そう思ったばっかなのに!)
 詐欺かよ! と脳内で叫んだエレンは、急転直下の事態に混乱していた。
 入院三日目の夜。エレンの様子を看るために病室を訪れたリヴァイが、とんでもないことを言い出したのだ。
「やりたい盛りの高校生なのに、右手がそれじゃ不自由だろ。手伝ってやる」
 白いギプスに包まれたエレンの右手を差し、真顔でずいと迫ってきた。
「はあ?!」
 なにを言っているのだろう。なんのことだろう。なんとなく薄ぼんやりと想像はついたが、はっきりと形にして考えてはいけないと頭の中で警鐘が鳴る。
「なに? なんなの、先生!」
 また具合を悪くしているのではないかと、心配して様子を見に来てくれたのだとばかり思っていた。この三日あまりの検査や処置の丁寧さで、すっかりリヴァイに心を許していたエレンだったから、この混乱は凄まじい。
「なにじゃねえよ、言葉通りだ。溜まってるんじゃないかと心配してるだけだろ」
「たまっ、たまってるって……!」
「違うのか、病室でそんな雑誌見てるくせに」
 そんな、と言いながらエレンの枕元にあったグラビア誌を指す。
「これは! そういうのじゃなくて……!」
 昼間、見舞いに来てくれたクラスメイトのジャンとコニーが、面白がって置いて行ったものだ。
 その右手じゃ抜けるもんも抜けねえな、とかなんとか笑いながら。
221 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:33:46.18 d
「水着のグラビアか。お前、このアイドルが好きなのか? 乳でけえな」
 ペラと捲られて、カーッと赤面した。
「違う! 好きじゃない!」
 いや、これは嘘だ。おっぱいに憧れるのは、あらゆる高校生男子の通る道ではないだろうか。
 昼間、その写真集を捲りながら、股間に感じるものがあったことは絶対に言えない秘密である。
 確かに抜きたいと思った。エレンだって、骨折をしている以外は健康な男子なのだから当然だ。
 けれど思いとどまった。
 いまは怪我に障るかもしれないと思ったからだ。
 それなのに、このわけのわからない担当医は「抜いてやる」などとほざいている。
(冗談じゃねえ!)
「ほう、乳は好きじゃないのか。じゃ、なんだ。ケツか」
「うるせえな! 俺の嗜好がなんだっていいだろ!」
「いや、よくない」
「え?」
 そういうことが治療に関係するのか? と一瞬だけ思ったが、いや、そんなはずはない、と頭を振る。
「っいや! とにかく先生には関係ないから!」
 無事に動く左腕をバリケードのようにして身を守る。
 夜中の病室でする攻防では絶対にないけれど、いまは自分の身を守るのが最優先だ。
「関係ある」
「へっ? なんで?」
 大真面目に言われたから、毒気を抜かれた。つい普通に聞き返す。
 すると目の前の男は、薄く形の良い唇をすうっと引いて楽しげに笑んだ。
「俺はお前に一目惚れしたんだ。好きなヤツの好みくらい把握しておきたいだろ」
「……はあっ?!」
 いまなんと言われたのだろうか。嘘か、冗談か、さもなくば新手のギャグか。
 聞き間違いでなければ、一目惚れなどと頭の湧いた単語が耳に入った気がする。
(なに、なんなのこれ、からかってんの、正気なの、詐欺なの、この先生アタマ大丈夫かよ!?)
 ベッドに横たわって寝ているはずなのに、背中に冷たい汗が伝わった気がする。
(そうだ! 俺、こんな身体で逃げらんねえ!)
 走って逃げようにも、足はこの有様。立派なギプスにガチガチに固められ、挙上されている。
 これでは逃げ場などどこにもない。
(マズイ! ヤバい!)
 危険を察知する赤いランプがエレンについていたなら、きっともう忙しなく点滅しているのだろうと思った。
222 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:33:55.56 d
「先生、マジで! なに言ってんのかわかんないから!」
「まあそう言うな。大丈夫だ、ちょっと手伝ってやろうってだけだから」
「ちょっとってなんだよ!」
「ちょっとって言ったらちょっとだ。お前の気持ちいいことしかしねえよ」
 ベッド脇に立ったまま、薄がけの布団をさらっと剥がす。
「ちょっ、待って! なに!」
 慌てている間に、パジャマの腰からするりと手を挿し入れられた。骨ばった男らしい掌にぎゅっと股間を握り締められ、急所を押えられたショックで硬直してしまう。
「っ!」
 下着の上からガシッと掴まれたそこを、次にはやわやわと揉みこまれる。
「ぁッ!」
 小さく声が漏れた。
「ほう、いい声出すじゃないか」
 リヴァイの瞳がキラリと光ったように見えた。
「違う! 脊髄反射!」
 枕の上で頭をほとほとと振り乱し、やめろ、いやだと繰り返す。するとリヴァイは耳元に直接口をつけ、言うにことかいて「すらっとして形のいいペニスだな」と吹き込んできた。
 かあっと顔に血が上る。日常ではあまり耳にしない直截な単語。それだけで己の股間を凄まじく意識してしまう。
ついには下着の上から押さえられていたそこが、ぴくりと反応してしまった。
「おい、いやなんじゃなかったのか? 硬くしてるぞ」
「……ッ!」
 幹を辿るように、根元から先へ向けてにゅくにゅくと扱きあげられる。
 そうしているうちにもどんどん血液がそこへ集まり、芯を持って首を擡げ始めるのがわかる。
 違う。これは自分の意思じゃない。そう反論したいけれど、いま口を開けば不本意な嬌声が漏れそうで怖かった。
(先生の手、なんでこんなに熱いんだよ!)
 じわりとした熱と、驚くほど巧みな指捌き。
 下着ごしに根本の叢をすりすりと擽られて、身悶えるほど焦れったい。
 撓り、完全に勃ちあがったそれを悦ぶように、今度は裏筋から辿られる。
223 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:34:20.55 d
 ねっとりした指の動きに、電流のようなビリッとした痺れが背中を伝わった。
(やべ……気持ちいい……っ)
 正直な腰がぶるりと震える。
 すっかり臨戦態勢になってしまったエレンのエレン自身も、これ以上ボクサーパンツの中に収まっているのは窮屈だと訴える。悔しいけれど、もう後に引けないところまで引きずり出されてしまったと悟った。
(チクショウ、イキたい、出したい、もっと強く触って欲しい)
 絶対に口には出したくない恥ずかしい欲求と攻防する。ここまで来てしまったら、下腹部に溜まった熱を吐き出してしまわないことには治まらない。
 乱暴なまでの衝動が湧きあがる。下唇を噛んで耐えていると、リヴァイはもう一方の手を伸ばし、やっている行為とはかけ離れた優しい指先でそこに触れた。
「噛むな、傷つくぞ」
 それは最初の夜、薬を飲ませてくれたときと同じ手つき。優しい人だと思った、最初の印象を思い出す。
(酷くは……されないかな……)
 ふいに舞い降りた思考が、エレンをがっしりと捕らえる。
(酷いことや痛いことされないんなら、このまま流されちゃっても……)
 若い身体は熱の出口を求めていた。理性の糸はいままさに焼切れようとしている。
 一回だけなら、抜いてもらうだけなら。気持ちいいし。もう戻れないし。このままイキたい。イカせてほしい。
 拒絶の言葉ばかり考えていた脳内が、快楽でぼんやりと霞みはじめる。
 そこへ来て、リヴァイの指先が少し強めにエレンを刺激した。
「……ッア!」
 腰が引けるほどの快感。体内を電流のように這い上がる。
 あと少し。あともう何回か強く扱いてくれれば、この荒れ狂う欲望から解放される。
「ぁあ、……っく!」
 はやく、と思わず口に出しそうになったところで、エレンのペニスを弄んでいた手がいきなりゆるゆるとした緩慢な動きに変わった。
「えっ」
 残念そうな声が漏れる。発した後でしまったと思ったがもう遅い。
 目の前の男は、にやりと悪い顔で笑った。
「イキたいか?」
「……ッ」
「睨むなよ。ちゃんと責任もってイカせてやるから。それもいままでで一番、最高に気持ち良かったって言わせてやる」
 ゆっくり横へ引いた唇の端で、柘榴色の舌がぺろりと顔を覗かせる。
 あまりに艶めかしく見えて、エレンはもう目が離せなくなった。
224 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:34:35.51 d
 リヴァイの片手はゆるゆると股間を刺激し続けている。
 そして空いていたもう一方の手を使い、パジャマの前ボタンをプチプチとひとつずつ開けていく。
 露わになる素肌。開けたそこへ、リヴァイは躊躇なく顔を伏せた。
「アッ……!」
 ねろり、と熱くて滑った感触が肌を滑る。舐められているのだ、と理解したときにはもう、彼の舌はエレンの胸の上をぬ、ぬ、と卑猥な仕草で辿っていた。
「っ、……ッつ!」
 声を殺さねばならないほど、官能的な感触。
 肉厚な舌は、エレンの胸の真ん中を躊躇なく進むと、今度は喉元から左の鎖骨へと移動する。
 骨の真上を辿られたとき、ぞわぞわっとした震えが走った。
(ヤバい、なに、なにこれ……っ)
 下肢を直撃するような快感。くすぐったいのとも少し違う、動悸が一気に跳ね上がるような熱が生まれる。
 鎖骨を辿った舌は、ぴちゃ、と淫らな水音をたてながら首筋を這い上がる。
「あっ、あっ、やっ」
 皮膚の薄い場所を攻められ、本能的に首を竦めて逃げようとするも、それは許されなかった。
 ぬかるむ舌だけではない。それと同時に、彼の鼻先で表皮を擽られる。
 進む先に耳朶を見つけたリヴァイは、ふふっ、と息だけで笑った。それを耳から直接吹き込まれ、エレンはとうとう泣きそうになる。
「あっ、んんっ、せん、せ……っ」
「力抜いていい。痛いことも、お前が嫌がることもしない。約束する」
「んっ、んう、う、ほん……と……っ?」
「本当だ。大丈夫。気持ちよくなればいい、エレン」
「う、う……あ、んっ」
 にゅくり、と耳殻から尖らせた舌が挿し入れられた。その先の小さな穴を、舌の先端で抉るように動く。
「ああぁぁぁ……っ」
 ぐちゅ、じゅっ、にゅ、と、はしたない水音が頭いっぱいに響き、まるで脳ミソそのものをいやらしく舐められているかのように錯覚した。
「あっ、あっ、あっ」
 穴を十分探った後には、耳殻の軟骨をこりこりと味わうように唇で食まれた。痛くはない絶妙な力加減で。
「お前はいい匂いがする」
225 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:35:03.45 d
 耳の裏に鼻を埋め、すうと深呼吸をしたあとでそんなことを言われる。
 もう頭がおかしくなってしまったのではないかというほどの酩酊感を味あわされる。
「エレン、こっちの腕あげてみろ」
「ん……」
 ぐったりした身体は、もう彼の言葉に逆らう気力がなかった。
 言われるがまま、怪我をしていない左手を枕の方へ移動させる。
片腕だけ万歳をさせられたような、そんな奇妙な格好になる。
「薄いな」
 脇の下の茂みを見てそう言ったのだろうか。
 リヴァイは目を細めて嬉しげな顔をし、次の瞬間にはそこへ顔を埋めた。

「んんんんん〜〜ッ!」
 さり、という感触の後で、ぬろ、と熱が追いかけてくる。
「ああああんっ、い、やっ、いやぁ……!」
 窪みにそって執拗に舐めあげられた。何度も何度も伸ばされた舌がそこを行き来する。
 敏感な皮膚は、縦横無尽に動き回る舌の感触を逐一拾い上げる。
 ぬるぬるする熱。ぴちゃぴちゃと卑猥な水音。
 あげた腕をリヴァイががっちりと固定しているから、エレンには感覚を逃がす術はない。
 震えて悶える。ゾクゾクする。気持ちいい。
 滴るほどの唾液にまみれた後で、薄生えごとぢゅっと吸われたときには、エレンの下肢でとぷっと熱が溢れた。
 そこを握ったままのリヴァイが目を細める。
「少し出たな」
「……っはあ、あっ、うう……」
「でもまだ足りないだろう?」
 慣れない快感に溶け、すっかり考える力を失ったエレンは、欲望のままコクンと頷いた。
「可愛い。可愛いな、エレン」
 リヴァイのブルーグレーの瞳がきらりと輝く。
 もうすっかり従順な獲物に満足しているのかもしれない。
 薄く整った彼の唇が唾液でてらてらと濡れているのを目にした時、エレンは逆らうというコマンドを捨て去った。
「こっちも可愛がってやる」
 そう言って彼の舌が伸ばされたのは胸。
 お飾りのようについていた小さな乳首を、まるで美味だと言わんばかりにしゃぶられる。
226 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:35:40.21 d
「んあああっ、あっ、あう、そこっ」
ビリビリした刺激が下腹を直撃する。
 口腔内でころころ転がされぷっつりと勃ちあがったそこの先端を、舌でこそぐように弄ばれる。
 生まれて初めて体験する感覚。
「……は、あんっ、ああ……せんせ、そこ、や、なに……っ」
「気持ちいいか? 男の乳首も性感帯だ、覚えとけ」
「う、んんっ、あっ、あぁ、……もちい……ぃ」
 じゅるっと吸いあげられた。もっと、というようにエレンの背がびくびくと撓る。
 充血した乳首が薔薇色になるまで堪能される。
 リヴァイはその後で薄い腹をぬらぬらと舐め辿り、臍へも舌を挿し入れた。
「あぅ……は、あ……」
 腹の内深く。内臓までしゃぶられているような錯覚。皮膚の薄い腹を何度も舐め啜った後で、リヴァイの頭はエレンの下生えへと移動した。
「エレン、まだイクなよ」
 そう言ったかと思うと、次の瞬間には熱く滑った口腔内へ迎え入れられていた。
「〜〜ッ!」
 身悶えするほどの快感。
 火傷しそうなほどの熱に包まれ、エレンはあまりの衝撃に呼吸を止める。
(なにこれぇっ!)
 狭くてぎゅうぎゅう圧迫される洞。体験したことのない感触。
 瞼の裏で快感の火花がチカチカと点滅する。
 ずっぽりと咥えこまれていた。
 やわやわと動く彼の唇が、そして舌が、エレンの欲望を丸ごと深く包み込む。
 彼の鼻先が腹に当たっている。それほど深くまで飲み込まれ、エレンは背を弓のように反らせて震えた。
「……アアアアア……!」
 じゅっ、じゅぽっと水音をたて、彼の口がエレンの勃起を上から下までくまなく愛撫する。
「あっ、あああっ、せんせっ、それっ、あっ、イっちゃう、イっちゃう!」
 追い上げられるような悦楽に、内股が痙攣する。
 もう出してしまいたい。いますぐにでも白濁を放ってしまいたい。
 なのに、意地悪なリヴァイの指に根元を戒められている。
 堰き止められた熱が、出口を求めて身体の中で荒れ狂う。
「イ、きた、ぁいっ、せんせぇ、ねっ、も、もっ、やだぁ……!」
 下腹に伏せるリヴァイの後頭部を、左手でぐっと掴んだ。
227 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:36:16.96 d
 けれど彼は動くのを止めてはくれない。痛いほどに嵩を増したペニス。
 その皮膚の張りを楽しむように、何度も何度も幹を舐めあげる。
 そして、幹に走る血管を舌先で執拗に舐め辿る。
 粘る音は彼の唾液なのか、エレンの先走りなのかもう判別はつかない。
 彼の頭が卑猥な上下動をするたびに、綺麗に撫でつけられていた前髪がはらりと落ちてエレンの皮膚を擽る。
 まるで底なし沼だと思うほど奥深くまで飲み込まれて、エレンは自分の腰が浮くような錯覚を覚えた。
 いや、事実浮いていたのかもしれない。痛いほど張った先端が、こつんこつんと行き止まりを突いていたのだから。
 本能の欲求が、エレンのすべてを支配していた。
「うううう、もっ、むりっ、せんせえっ、イキたい! イカせてっ!」
「ん、もう、少し」
 泡立つほどにぐじゅぐじゅとこねくり回され、終いに先端の丸みをざらりとした舌の表面で撫でられたときには腰が砕けてしまうかと思った。
「あああ、んっ、やだっ、むりっ、も、ダメだからぁ!」
「もうちょっと」
 まだ舐めたい、と聞こえてきた時には、エレンの顔はいまにも泣き出しそうに歪められた。
 舐められすぎて、充血したペニスはもう痛いほどだ。
 彼の口の中で揉みくちゃに捏ねまわされ、まるで感電したかのようにビリビリと疼いている。
 気が狂う。このままでは、焦らされすぎて発狂してしまう。
 とろりと蕩けたエレンの瞳には、生理的な涙が溢れた。
「せんせっ、お願いっ、あああ、あんっ、も、うっ、むりぃ……イキたっ、イキたぁいぃ……!」
「ん、む……あともうちょっと……」
 ちゅぽ、と唇を外し、リヴァイはさも楽しそうに薄く笑う。
 その瞳と視線が絡まった瞬間、エレンの中の何かが爆発した。
「う……うえ……え……」
 ぶわっと盛り上がった涙を止める術はなかった。
「えっ、ック……うえ、ええぇぇっ」
 まるで幼児のように、手放しでしゃくりあげる。
「ふえええぇ、んん、や、だぁっ、も、やだって、言ってるのに……ぃ!」
 えっく、ひっくと喉が鳴る。取り繕う余裕もなく、真っ赤な顔で泣きじゃくる。
「もうさきっぽ痛いからぁ……! せんせっ、イキたいぃ……!
228 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:36:34.82 d
 それを見て、リヴァイはさも楽しそうに片眉を跳ね上げた。
「限界か、よくできたな」
 根元を戒めていた指を緩める。反射的にびゅくっと滴が溢れ出す。
 でもまだ足りない。もっと出したい。最後の最後、枯れてしまう一滴まで。
「ああっ」
「イけ、エレン」
 リヴァイはもう、意地悪をしなかった。先端にキスをしながら搾り取るように即物的な動きで扱き上げる。
「ああああっ、クるっ、すごいのっ、クるよぉっ! あああアアアッ……!」
 えも言われぬ絶頂感が身体の中を雷のように駆け抜ける。
 爪先までビリビリと痺れる。ナイアガラの滝へ身を躍らせたような、どこまでも落ちていく浮遊感。
 エレンの放埓は、一滴も余さずにリヴァイの中へ消えて行った。
 残滓ですら惜しいというように啜られ、エレンはビクビクと四肢を震わせながら、恍惚とした顔のまま意識を手放した。


「救急に運び込まれたお前を見て、好みだなと思った」
 数秒か、数分か、数十分か。
 しばらくして意識を取り戻したエレンを確認すると、リヴァイは幾分ホッとした顔を見せた。
 そして悪びれもせず、こんなことをのたまった。
「最初は顔が好みだなと思っただけだったんだが、その後で言葉を交わしたら、ますます俺の好みだと思った」
「はあ……」
「可愛いなと思ったら、もう駄目だった。お前を舐めたくて舐めたくて……」
「……先生ってだいぶキワいんですね」
 呆れる以外の感情が見当たらない。
 ベッドの上から彼を見上げる。涼しい顔をしている医者が、まるで宇宙人のように思えてくる。
(好みだからってあんなことするヤツはそうそういないと思う)
 ついさっきまでの自分の痴態も思い出し、エレンは目元を赤く染めながら唇を尖らせた。
 怪我をして動けなかったとはいえ、ナースコールを押すなどと逃れる手段はあった。
 けれど、途中で理性を押し流され、性欲に負けてしまった自分もはっきりと覚えている。
 気持ち良く抜いてもらった。
 この事実だけを考えれば、リヴァイひとりを糾弾するには後ろめたさが残る。
229 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:37:19.30 d
 行為の最中、エレンはこのままここで犯されてしまうのかと思った。
 男同士のあれやこれやを、知識としては知っている。
 そういう話題に事欠かない高校生だ。あんなとこ使うセックスなんて無理に決まってる、なんて笑いながら同級生と雑談をしたこともある。
 一生使う予定のなかったそこを、開かれてしまうのかもしれないという怯えはあった。リヴァイはそうしなかった。
(なんなんだよ…)
 彼に呆れると同時に、自分にも呆れている。
 目を覚ましたとき、エレンのパジャマはきちんと直されていて、その下の素肌にも違和感は残っていなかった。
 意識を失っている間にきっとリヴァイが始末をし、清拭までしてくれたのだろうと思う。
 この人なら酷いことはしなさそうだ、と最中に思った。
 そもそも、最初の印象が「優しそうなお医者さん」だった。
(ヤバい、なにこれ……)
 頬が火照る。意味がわからない。
 エレンは左の掌で、熱い顔半分をぺちりと覆った。
「せんせ……」
「なんだ」
「先生は……いいの?」
「なにがだ?」
「その……抜かないで……」
 彼の股間をちらりと見やる。男の欲望は身を持って知っているつもりだ。
 自分を気に入ったというのなら、彼にもそういう欲求を向けられても不思議ではない。
「俺だけで、いいの?」
 おずおずとしたエレンの申し出の意味を察し、リヴァイはふっと笑った。
「お前だけでいいって言ったろ」
「でも……」
「気にするな。ああでも、どうしてもお前が気になるって言うなら……」
「言うなら?」
 なんだろう、と鸚鵡返しする毒気のないエレンの顔を見て、リヴァイは目を細める。
「お前の怪我が治ったら、さっきのをもう一回したい」
「っ!」
 うぐ、と喉が詰まる。
 さっきの、と言われて、エレンの頭は反芻してしまった記憶のあれやこれやで沸騰寸前になる。
「あんな……っ!」
「ああ、あんな、だ。俺は死ぬほど楽しかったぞ」
「〜〜っ!」
「エレン、舐めたい」
「せんせっ!」
「舐めさせてくれるよな?」
 リヴァイは赤く艶やかな舌を覗かせ、薄い下唇をゆっくりと擦り舐めて見せる。
「!!」 
 さも満足げに笑むリヴァイの前で、エレンは自分の身体の奥深い場所がジンと痺れるのを自覚した。
230 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:37:26.58 d
続・銭湯へようこそ

by かみやゆすら


「リヴァイさんの腹筋、まじチョコモ○カジャンボだった」
 しみじみとした口調で吐露する男子高校生は、深い溜息を吐いて肩を落とした。
 哀しい訳ではない。悔しい訳でも。
 ただ、人間はあまりに深い感銘を受けると、手放しで喜ぶようなことにはならないのだと、齢十五にして悟ってしまっただけ。
「はあああああ」
 牛乳パックから伸びるストローを浅く咥えたまま、エレンは校舎の屋上から青い夏空をふり仰ぐ。
 そのなめらかな頬は、熟れた林檎のごとく真っ赤に染まっている。アーモンドのような形の良い瞳はうるうるに潤み、まるで恋する乙女のような風情。
 悩ましげな嘆息を何度も繰り返しながら、行き場のない感動に身悶えていた。
「…深刻なんだか笑っていいんだかわからないんだけど」
 持参した弁当をつつきながら、向かい合うアルミンが苦笑する。
 幼馴染とのランチタイム。屋上の一角を三人で陣取り昼食を取るのがエレンたちの恒例となっていた。
 この高校には冷房設備がない。熱気の籠もる教室にいるより屋上にある大きな時計塔の下で日陰に入り、風に吹かれている方が断然涼しい。
 グラウンドからは野球部が練習している声。吹奏楽部が練習するヘタクソな楽器の音も聞こえてくる。
 夏休み真っ最中のいま夏期講習に参加しなくてはいけない鬱屈もあるにはあったが、それよりもエレンは「理想の肉体」に出会った感動をいまだ引き摺っていた。
 母の作ってくれた弁当を前にしながら、今日何度目かの溜息を吐く。
 エレンの事情をよく呑み込めていないアルミンは小首を傾げつつ苦笑している。
 そしてもう一人の幼馴染ミカサは、仁王もかくやという憤怒の表情のまま、漆黒のオーラを撒き散らしながら静かに特製タマゴササミサンドをもっしゃもっしゃと咀嚼していた。
「そんなにすごかったの、リヴァイさんて人の筋肉?」
「ああ。アルミンもあの腹筋を目にすればわかる。すげえものに出会っちまったんだ、俺は。あんな理想的な人間が存在するなんて、夢にも思わなかった」
 すごい、とんでもない、信じられない、とひたすらうわ言のように繰り返すエレンを、アルミンは珍しいものを見るといった表情で眺めていた。
 筋肉フェチではないアルミンには、理解しがたい世界である。
231 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:37:52.37 d
「チョコモ○カジャンボって、表面ボッコボコじゃない。そんな人間、本当にいる?」
「いるよ! アルミン、いるんだよ!」
 見せてやりてえ! と拳を握ったすぐ後に、いやでも迂闊に見せるのはもったいない! と、まるで宝物を独り占めしたい幼児のような台詞を放つ。
 くねくねと身悶えしたかと思うとまたも空を仰ぎ、悩ましい溜息を吐く。いまどき小学生でも、こんなにわかりやすい憧憬の表し方はないのではないか。
 しかし残念なことに、エレンが大好きなリヴァイさんのチョコモ○カジャンボとやらは、アルミンに対してはまったくもって無価値だった。
「いや、いいよ。別に見たくないし」
「俺もさあ! 最初は信じられなかった!」
 差し込まれたアルミンの冷静な感想は黙殺された。完全に無視である。
「ちょ、エレン……」
「信じられなかったけど、俺はこの目で見たんだ!」
 すっかりリヴァイの肉体に魅了されているエレンの勢いは止まらない。
 呆れる友人をよそ目に、その思考は理想の筋肉への賛辞で埋め尽くされていた。オーバーなくらいの身振り手振りを交えて、その感動をなんとか伝えようとする。
「アルミンは見たことないだろ。完璧なバランスの人間を!」
「は? え……っと……」
「大体、筋肉ってものは動いてるうちについてくるってのが理想なんだよ。一部分だけ無理矢理バルクアップして、不自然に強調したりするもんじゃない。スポーツや力仕事で自然と培われた肉体! これこそが本来の筋肉の在るべき姿だと、俺は思う!」
 エレンの熱弁に、アルミンはよくあるボディビルダーの姿を思い浮かべた。曰く、リヴァイさんとやらの肉体は、そういうものたちとは種類が違うらしい。
 幼馴染の筋肉マニアっぷりはよく知っているつもりだったが、その中にも好みというものがあるとは想像したこともなかった。
 新しい発見をした、という意味で「へえ」と感嘆の声を漏らすと、なにを勘違いしたのか友人は語りの熱量を上げた。うっかり火に油を注いでしまったのだ。
232 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:37:59.93 d
「そういう意味で、俺はリヴァイさんの肉体は最高だと思う。まず無駄がない。主張しすぎない大胸筋も理想的だし、三角筋から上腕二頭筋の流れの美しさも文句なしだ。それから僧帽筋と広背筋の繋がり方と言ったらもう……!
 ほら美術室にあんだろ。デッサンに使う真っ白い石膏像。ああいう芸術的な美しさがあるっていうかさ、ほんとに全体が完璧なバランスなんだよ!」
 立て板に水のごとく、すらすらと賛美の言葉が流れ出る。
 エレンの美術の成績を知っているアルミンは、その口から「美しい」という単語が出たことにまず驚いた。
「はあ……そうなんだ……」
「そう! そうなんだよ! わかってもらえるか、アルミン!」
「う、うん、……多分」
 迫る勢いに気圧されながらもかろうじて笑顔で答えたが、多少引き攣っていたのはご愛嬌。心許ない返答にもエレンが満足気な顔をしてくれたのだから、ここはそれでよしとしよう。
 アルミンは大人しくこの話を聞くことが一番早く解放される道なのだと、直感的に悟っていた。触らぬ神になんとやらだ。
「俺が見たリヴァイさんの身体ってのは、そういうものなんだ。いままで見てた筋肉が農薬バリバリで品種改良された野菜だとしたら、リヴァイさんは自然なままのものってことだ。わかるだろ!」
「へ、へえ、そっか」
「それにあの人の腹直筋ときたらさあ! ガチガチに硬いだけじゃない。柔軟さも兼ね備えてんだよ。マジすげえ!」
「柔軟って……エレン、もしかして触ったの?」
「柔らかさなんて触ってみなきゃわからない。なら、触ったってこと? エレンのその指で、どこのだれかもわからないオッサンの汚い腹を直接触ったってこと?」
「ミカサ、お前なんてこと言うんだ! 汚くねえよ! リヴァイさんの腹筋は綺麗だよ!」
「いいえ、汚い。絶対。そうに決まってる」
「風呂入った後だったし、汚くなんかない! そんでリヴァイさんのことを悪く言うな! 俺、誘惑に負けてついガン見しちゃったのに、あの人『気にするな』って許してくれたんだぞ!」
 覗いたんだ、という嘆息混じりの感想は、アルミンの胸の内だけに消えた。
「それに、そんなに筋肉好きならって、触らせてまでくれる優しい人なんだ。あの時の腹筋の感触、マジ神がかってた」
「……ちょろイェーガー」
 ボソッと漏れたアルミンの本音を、ミカサは黙殺した。
233 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:38:25.84 d
「腹筋なんて、私だってついた。エレン、そんな汚い男の腹よりも、こっちのトレーニングの成果を見て」
 セーラー服の裾を躊躇なく捲り上げようとするミカサを慌てて制止するのは、必然的にアルミンの役目になる。
「ちょっと! 落ち着いて、ミカサ!」
「止めないでアルミン。エレンの目を覚まさせないと」
 ギャーギャー言い合うふたりをよそに、エレンはその場ですっくと立ち上がる。
「ミカサの腹筋がすごいのは俺も知ってる。でもな、あの人は腹筋だけじゃねえんだよ。大胸筋も上腕二頭筋も、それに……だ、だ、大臀筋も……!」
 言っちゃった、恥ずかしい、と顔を両手で覆う。
 赤らめた頬を確認するやいなや、ミカサがもう我慢ならんと立ち上がり、飲みかけの牛乳パックをぐしゃりと踏み潰した。
「ダメ、絶対。エレンはそのチビともう会ってはダメ。二度と。永久に。金輪際。銭湯のバイトも辞めるべき。すぐに。いますぐ。たったいま」
 エレンが言い難いなら私が言う、とポケットから携帯を取り出し、いまにもハンネスにコールせんばかりの勢いを見せる。
「バカ! やめろ、ミカサ!」
「エレンに悪い虫がつく前に、打てるべき手はすべて打つ」
「はあ?! なに言ってるのかわかんねえよ! とにかくやめろ! リヴァイさんは虫なんかじゃねえ!」
「エレン、あなたは筋肉に弱い。弱すぎる。精神的な意味でも、物理的な意味でも」
「物理ってなんだよ」
「細すぎるってこと」
「はあっ!?」
「もしも、その汚い中年腹筋男があなたに邪な気持ちを抱いていたとしても、あなたは自分の力では逃げられない。いいえ、むしろ仮説なんかじゃない。
もうすでにそのオッサンはエレンをそういう目で見ていると考えるべき。そうでもなければ、自分の腹筋をわざわざ触っていいなんて言う人間はいないと思う」
 アルミンは胸の中で、「ごもっとも」と頷く。
「邪な腹筋男にあなたが捕らわれたとして、抵抗して勝てると思う? 押さえつけられたりした時に、腕力で敵う? 無理でしょ。負けるに決まってる。だから弱いと言った。私は間違ってない。絶対に」
234 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:38:33.05 d
 だってあなたは、私にも勝てないから。涼しい顔でそう続けたミカサを見つめ返し、エレンはぐぬぬと口をへの字に曲げた。
 言い返せなかったのだ。
 実際、格闘技を始めてからのミカサは強い。並みいる同年代の男性陣も、もうミカサには勝てないほど強い。
 何度も試合を応援しに行ったのだから、エレンもそれはよくわかっている。だからミカサの言うこともよく理解できる。
しかし理解できるからこそ、とてつもなく悔しかった。
 自分のことを弱いと言われたことだけではない。リヴァイという人間をそんな風に言われたことが、心底悔しかった。
 あの人はそんなんじゃない。そんな風にこき下ろされていい人じゃない。
 ふつふつと負けん気が湧きあがる。
「クッソ! 見てろよ! 俺が強くなりゃいいんだろ?! お前にもリヴァイさんにも負けないくらい鍛えれば文句ないんだろ?! なら、強くなったうえで証明してやるよ。リヴァイさんはいい人だって!」
 覚えとけ! と、まるで某新喜劇のチンピラのような台詞を残し、エレンは肩を怒らせて屋上から走り去った。
 熱情の滾りにまかせて突っ走ってしまったことで弁当の残骸を残したままにしてしまい、代わりに片付けさせられたアルミンに小言と拳骨ひとつ食らうというオマケつきの昼下がりになった。


「リヴァイさん、お願いがあります!!」
 男湯の暖簾をくぐった顔を見るや否や、エレンは座っていた番台から声を張り上げた。
「は?」
 風呂屋に足を踏み入れた瞬間名前を叫ばれた男の方は、驚いたようにぴたりと動きを止める。
 脱衣所にいた他の客たちも、何ごとかと入口を注視する。
 皆エレンの顔は知っているので、またあの元気な坊主がなにかやらかし始めるらしい、と興味津々の顔つきである。
「いらっしゃいませ、お待ちしてました! どうぞどうぞ、今日もゆっくり風呂入ってってください! でもその前にお願いがあります!」
235 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:38:59.16 d
 いそいそと番台から降りたエレンは土間で固まったままの男の前に立ち、きっちり腰を九十度に曲げて頭を下げた。
(断られて元々だ)
 その覚悟を胸に、今日一日考え続けてきたことを口にする。
「俺に筋トレつけてください!!」
 言った。言ってやった。人知れぬ達成感に胸がすく。
 そんな清々しい気持ちを味わうエレンとは対照的に、困惑を浮かべる男がひとり。
「……はあ?」
 暖簾をひらりと押し上げた手もそのままに、リヴァイは形の良い唇から気の抜けた声を漏らした。
「なんだって?」
「俺に! 筋トレ! つけてください!」
 勢い込んで言ってしまったから、聞き漏らされたのかもしれない。
 そう思ったからもう一度ゆっくり区切って一語ずつ繰り返したのだが、リヴァイはますます訝しげな顔をした。
「ちょっと待て、言ってることはわかる。いや、日本語はわかるって意味だ。が、内容がさっぱりわからん」
「俺、リヴァイさんみたいな身体になりたいんです! いますぐ! で、腕っぷしも強くなりたくて! 無理なお願いだとわかってますが、そこをなんとかお願いします!」
 再度の最敬礼。
 断られては話にならないと、切実に懇願する。
(理想の肉体を持つリヴァイさんにこそ、指導してもらわねえと!)
 ミカサに対する一方的な宣言の後、エレンは考えに考えた。
 自身の肉体を鍛えあげるために必要なのは、なによりもまず適切な指導を受けることであると。
 細いと酷評された己の身体を一から作り直すためには、自己流なんかでちんたらやっている場合ではない。
 そして一番に思いついた指導者こそ、他でもないリヴァイ本人だったのだ。
236 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:39:19.17 d
「どうしても! お願いします!」
 完全に体育会系のノリで声を張り上げる。
 しかして勢いだけは一人前だが、いろんなことをすっ飛ばしている。
 案の定、面食らったリヴァイは困惑したように目を眇めた。
「おいおいおい、ちょっと落ち着け。説明になってない」
 深々と下げられた頭の天辺をぺちりと叩く。
 そして土間から一段あがると、ポケットを探り小銭をエレンに握らせた。
「ほら、まず入浴代」
「あ、こりゃ毎度どうも」
「で、なんだって? 鍛えたいだ?」
「はい! ぜひリヴァイさんに指導してもらいたくて!」
 脱衣所へ移動する間もリヴァイの後ろをぴったりと追い、きゃんきゃんとそればかり繰り返す。強くなりたい、もっと鍛えたいと訴える姿はまるで仔犬のようである。
 リヴァイ以外の入浴客たちは早々に状況を察し「エレンの筋肉好きがまた始まった」と苦笑した。
「俺、どうしても見返したいヤツがいるんです。だからそいつより強くなりたいんです」
「ほう。しかしお前、それなりにトレーニングしてるって言ってたじゃないか。それじゃ駄目なのか」
「駄目なんです! そいつキックボクシングやってて、俺なんかよりもよっぽどできあがった身体してるから、ちょっとやそっとじゃ追いつけない! お願いします! 俺の理想の肉体であるリヴァイさんならきっと、効果的なトレーニング指導してくれると思ったんです!」
 必死に訴えるエレンの話を聞いていたリヴァイは、そのうちひとつフム、と頷いた。
「なんだかよくわからんが、とりあえずお前の要望はわかった。だがな、俺はまず風呂に入りたい。お前もまだバイト中だろ」
 脱衣所の籐かごに持参してきたタオルを引っかけ、リヴァイはそのままシャツの裾に手をかける。
 いまにも上半身のシャツを脱いでしまいそうに見えた。
 それを見て、エレンの頭も幾分冷える。
 入浴の邪魔をしてはならないと、雀の涙ほど残っていた番台としての理性が働いた。
「あ、はい。そうでした。すみません」
「営業終了後にもう少し詳しい話を聞かせてくれ。時間あるか?」
「はい、そりゃもう! よろしくお願いします!」
 一刀両断に断られなかった。彼がお願いを聞いてくれる可能性はまだ残されている。それだけでもエレンの胸は躍る。
237 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:39:45.19 d
 営業終了まであと一時間ほど。
 時計の長針が一回りするのを、エレンはそわそわしながら待った。
 あまりに待ちきれず、リヴァイの衣類が残された籐かごの前を無駄にうろうろする。
 その光景は他の常連客たちに、「エレンに飼い主ができたらしい」と思わせるには十分な仔犬っぷりであったという。


 暗い夜道をふたり並んでそぞろ歩く。
 下町の住宅街だ。
 夜十時を過ぎれば人通りもほとんどなく、町内の道は時折横切る猫くらいにしか出会わない。
 風呂上りのリヴァイと並んで、エレンは自宅方面へと向かっていた。「家まで送るから、その間に話をしよう」と彼が提案してくれたからだ。
 高校生である自分へ配慮してくれたリヴァイが、ますます慕わしく思える。そして憧れの人とふたりきりで話ができるというシチュエーションにも単純に喜んでいた。
「で、エレン。鍛えたいとか言ってたが本気か?」
 リヴァイは面白がるような顔をしていた。さっきの訴えを、まだそれほど真剣に受け止めていないのかもしれない。
「本気ですよ。本気じゃなかったらこんなこと頼まないです。俺、マジで鍛えたいんです」
 決意を込めた瞳でリヴァイを見る。彼はそれに感心したようにふむと頷いた。
「ほう、悪くない」
「マジでお願いします。リヴァイさん、前にアドバイスくれたじゃないですか。俺の腹筋の仕方とか。そういうのでいいんで、効果的な筋トレ教えてください。サボらずちゃんとやりますから」
「サボらずやるのは当たり前だが……、アドバイスだけでいいのか? それだけでお前は一人でこなしていけるのか?」
 畳みかけるように言われ、ウッと言葉に詰まる。
「や、ります」
 多分、と続けそうになった弱い心を叱咤し、エレンはぐっと顎を引いた。
(やるんだ。やらなくちゃ勝てない。なんとか結果を出してミカサを見返してやらないと、このままじゃリヴァイさんの名誉も守れない!)
 自分が弱いと言われたことは事実だから仕方ないとしても、こんなに優しいリヴァイを誤解されたままというのはどうしても納得がいかなかった。
 ぐっと握り締めた拳に気づいたのか気づかなかったのか、リヴァイはしばらく考え込むように沈黙した。
 そして次の角を曲がればエレンの家が見える、というところまで来て、「提案だが」と口を開いた。
238 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:39:53.39 d
「最初だけ、俺と一緒にトレーニングするってのはどうだ。やり方さえ覚えちまえばあとはひとりでもできるだろう。だが、最初に間違った方法を覚えるのだけはまずい。その後に続くものの意味がなくなっちまうからな」
 願ってもない申し出である。一も二もなく飛びつく。
「お願いします! てか、いいんですか?! ほんとに?!」
「ああ、そのくらいなら俺にも協力できる。自宅にいくつかマシンもある。それでよければ使うといい」
「自宅にマシン!? なんだそれすげえ! いつ行けばいいですか! 明日ですか!」
「別にすげくはねえが……、お前本当にいいのか、それで」
 こちらの勢いに押されたのか、リヴァイは呆れたように片眉を跳ね上げた。
「いいのかって、なにがですか?」
 あ、明日はまずかったですか、と続けると、彼は苦虫でも噛み潰したような顔をした。
「危なっかしいってよく言われないか、お前」
「はあ?」
 いったいなんのことを話しているのか見当がつかなくて首を捻ると、リヴァイは小さく嘆息してそれ以上を言葉にすることはなかった。
「まあいい。次の土曜にでも来い」
 そう言って携帯を取り出し、アドレスを交換した。
 この番号の先で彼と繋がれるのだと思うと、エレンの心は軽やかに踊る。
(リヴァイさんが直接稽古つけてくれる! やった!)
 喜びで頭がいっぱいになる。
「よろしくお願いします!」
 嬉しさを込めて叫ぶ。気合を入れ過ぎたエレンの声は夜の街に響き渡り、ご近所さん数軒の電燈が灯ったとか灯らなかったとか。

 かくして土曜。
 リヴァイの自宅マンションへ招かれたエレンは、玄関で開口一番「つまらないものですが!」と叫んだ。
 エレンが両手で捧げ持つのはメロン。白い紙箱に入った、少々お高いやつだ。
「なんだこれは」
「メロンです!」
「いや、メロンはわかる。箱にそう書いてある。そうじゃなくて、なんでこんなもん…」
 困惑するリヴァイにメロンをぐいと押しつけ、エレンは深々と頭を下げた。
「近所の八百屋のおっちゃんに、一番甘そうなやつ選んでもらいました! 今日はご指導よろしくお願いします!」
「は? あ、ああ……それはいいが……」
「これはほんの気持ちです! あ、ちゃんとシガンシナ湯でバイトした給料で買いましたから、気兼ねなさらずに!」
239 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:40:30.54 d
 どうぞ、どうぞ、と勢いよく言うエレンに押され、リヴァイはメロンとエレンを一緒に招き入れることとなった。
 シガンシナ湯から徒歩五分に位置する真新しいマンションの一室。
 リヴァイの自宅は2LDKで、エレンの家と比べると飾り気のないシンプルなインテリアだった。
 それがとても新鮮で、「大人の男の部屋って感じだな」とついそわそわしてしまう。
 リビングダイニングと寝室、そしてもう一部屋がマシン専用の筋トレルーム。わざわざ床や壁を補強して設置したと聞いた時には、贅沢ですね、とエレンは感嘆の声をあげた。
「贅沢かと言われたらそうかもしれんが、独身で他にはこれといった趣味もないおっさんだからな。まあこのくらいはできる」
 案内された筋トレルームの扉を開けるや否や、エレンは驚いて叫んだ。
 八畳ほどの部屋にマシンが数台並んでいた。まるでどこかのスポーツジムと錯覚するほど本格的だ。
 シットアップベンチ、フィットネスバイク、床に転がっているのはダンベル。角柱の骨組みにラックやベンチが装備してあるマシンの名前はわからないが、バーベルシャフトに大きなプレートが設置してあるからにはベンチプレスを行えるものに違いない。
 個人宅にある設備としては夢のような豪華さで、エレンはアーモンドのように大きな瞳を零れんばかりに見開いて興奮した。
「やべえ! すげえ! かっけえ!」
「……落ち着け」
「落ち着いてられませんよ!すごい! これでリヴァイさんのあの肉体が作られてるのかと思うと、俺!もう…!」
 言葉にならない感激を、小刻みに震えて表す。
 気持ちを素直に体現するエレンを、リヴァイがますます好ましく思っているとは露ほども想像していない。
「リヴァイさん、どれから使うんですか?」
「どれ、じゃねえよ。最初からマシンなんぞ使わせるか。まずは柔軟だ、柔軟」
「へ?」
 部屋にあるマシンには目もくれず、リヴァイは細長いヨガマットをフローリングの床へ敷いた。
「ストレッチすっ飛ばして筋トレなんかやってみろ、早々に怪我をする。ストレッチで身体を解したら、次は身体を温めるためのウォーミングアップとしてジョギングや縄跳びだ」
「へえ」
「今日は基礎中の基礎からやるぞ。お前のペラい身体を見る限り、先は長そうだ。せっかくやるからにはそれなりの効果があるように教えてやる」
240 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:40:38.19 d
 リヴァイが本気で指導してくれようとしている。
 それがひしひしと伝わり、エレンは背筋をびしりと正した。
「はい! よろしくお願いします!」
 己の体力の限界を知る土曜は、こうして幕を開けた。
 すっかり床に伸びたエレンに、「今日はここまでだ」とリヴァイが告げたのが午後四時。トレーニングを初めて約二時間後のことである。
「はあっ、はあっ、はあ……っ!」
 まだまだ息の荒いエレンとは対照的に涼しい顔をしたリヴァイは、汗だくになったエレンの頭をポンと撫で、「よく頑張った」と労ってくれた。
「初日にしちゃやれた方だ。お前、ガッツあるな」
「はあっ、はあっ、ありっ、が、とうっ、……ざまっ」
 大の字に寝転がったまま、指一本も動かせない。それほどみっちりとしたトレーニング指導を受け、エレンはいま充実感を味わっていた。
(すっげえ辛かったけど、すっげえ楽しかった!)
 身体はあちこち痛むが心は弾んでいる。
 宣言通りストレッチから始まったメニューは、まず軽いウォーキングをこなし、息が上がるほどの縄跳びを経て、柔軟体操へ移行していった。「まだ若いくせに案外硬いな」などと言われながら、これまで意識したこともなかったような関節をぐいぐい刺激されて悲鳴をあげた。
 筋肉の作りや繋がりを説明されながら受けるトレーニングはとてもわかりやすく、そのすべてをいちいちメモに控えることも忘れなかった。
(しっかり覚えて忘れないようにしねえと!)
 手取り足取り教えてもらえるのはいまのうちだけ。
 リヴァイもそう言っていた。
 覚えられるだけ吸収して、文字通りしっかりと身に着けていきたい。
 熱心に受けた基礎メニューレッスンがみっちり二時間。
 着ていたTシャツはすっかり汗にまみれ、濡れそぼっている。
 疲れ果ててはいるが、充実感が凄まじい。
 やりきったという達成感とともに、リヴァイからの思わぬご褒美を受け取ることができたからだ。
(あ〜、やっぱリヴァイさんの身体ハンパなかった……)
 トレーニングの終盤、自宅でもできる腹筋運動について指導を受けていたときだ。
 リヴァイは唐突にトレーニングウェアを脱ぎ捨てた。
 上半身裸となってエレンの前で動きの見本を見せてくれたのだ。
241 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:41:36.34 d
「この運動によってどこの筋肉が動いてるのか、しっかり確かめておけ」
 裸体となった自分の身体を一部分ずつ指し示しながら、身体を動かして見せた。
「ただ闇雲に動いてるだけじゃもったいねえ。必ず頭も使え。その運動がどこの筋肉のどの部分に作用しているのか、そこを意識しながら動くことは重要だ」
「はい!」
「たとえば腹直筋。一概に腹筋と言っても範囲は広い。肋骨の真ん中あたりに始まり、終点は恥骨まである」
 そう言いながら自分の胸の真ん中あたりから臍の下までを指ですすっと撫で下ろす。
 エレンがチョコモナ○ジャンボと表現した八つの隆起。その真ん中を彼の指が通る。
(リヴァイさんの腹筋リヴァイさんの腹筋リヴァイさんの腹筋…)
 その完成された肉体を見て、思わず生唾を飲み込んだエレンはまったくもって正直な人間であると言わざるを得ない。
「いいか、エレン。腹筋てのはな、上の方では呼吸に働き、下の方では腹圧に係わる」
「へえ」
「まず自宅でクランチをやる場合、手伝ってくれる人間がいなければシットアップは無理だろ?」
「あ、はい。足首を押さえててもらうやつですね」
 一般的な腹筋運動をイメージする。
「そうだ。だからひとりでやる場合はこういうやり方が有効になる」
 そう言ってリヴァイは床にあおむけになり、膝下だけを低めのベンチの上へ乗せた。
「両手は腹の上でも頭の下でもいい。まずはこの状態で、自分の腹を覗き込むように身体を丸める」
「丸める」
「間違っても上体をがっつり起こそうとするなよ。顎や首から動かし始めるのもNGだ。ゆっくり息を吐きながら自分の腹直筋を丸めるように刺激する。これが正しい基本のクランチだ」
 そう言いながら、エレンの目の前で実践して見せる。
 それは確かに彼の言う通り上体を丸める運動。
 けして派手な動きではないのに負荷がかかるたびリヴァイの腹直筋がぐぐっと収縮して盛り上がる。
 確実にそこへ効いているのだということが目で見て理解できエレンは感嘆の溜息を吐いた。
「丸められる限界まで来たら、そこで息を吐ききって体制をキープする。身体を戻す時は息を吸いながら、なるべくゆっくりやるといい。
それから繰り返す場合は背中を床にべったりとくっつけるなよ。自分で決めたセット数をこなすまで、床すれすれで浮いた状態にしておけ」
242 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:41:44.16 d
 そう元気よく答えてから約十分後には、ホカホカと湯気を立て床に伸びる男子高校生がひとりできあがった。
「ふっ、はあっ、なんだこれ、きっつ……ッ」
「最小限の動きで最大限の効果を狙った結果だ」
「はあ〜っ、納得、です、っふう……」
「息が整うまで待ってやりたいが、身体が温まった状態のまま最後のストレッチに入るぞ。起きられるか?」
「はい……」
 重い身体をよろよろと持ち上げ、クールダウンのためのストレッチを教わる。それをなんとか最後までこなし、エレンは今度こそ本当に床へ伸びた。
「あー……きっちい……」
 声を張ることすらままならない。
 疲れ切った身体は、酷使された全身がまんべんなくぎしぎしと悲鳴をあげている。
 けれど、清々しいほどの達成感があった。やりきった、すべてこなしたのだという自負が、エレンの心を満足させていた。
(やっぱすげえ、リヴァイさんて)
 こういう積み重ねがあってこその彼の肉体であると、今日身を持って知った。
 たった数時間のトレーニングは、エレンがこれまで自己流で行ってきたものなど子どもの遊びだったと思い知らされるには十分なもので。
「はあ〜っ……やっぱ俺、リヴァイさんに相談してよかった〜」
 心の声が駄々洩れるかのように呟くと、可笑しそうな顔をしてリヴァイが笑った。
「ほう?」
「こんな実のある練習、俺ひとりじゃ絶対できませんでした。マジすげえ。教えてもらえてよかった」
「そりゃよかった。俺もたまには他人の役にたつもんだ」
「たまにはって……そんな冗談でしょ」
「まあ、三十路男なんてのはそんなもんだ。仕事以外で誰かに評価されることなんかそうそうねえ。自分のためだったこの趣味も、お前がそう言ってくれたならやってて良かったのかと思う。そんな程度だ」
「そんな風に言わないでください」
 エレンはムッと唇を歪めた。
 なんだか無性に悔しかった。
 リヴァイは自分のことを語っているだけなのに、屋上でミカサにリヴァイを評価されたあの時のような気分になる。
「やめてください。リヴァイさんの筋肉は、いや、リヴァイさんはほんとに価値ある人なのに、そんな風に言われたら俺……」
 悲しくなる、とぽつり呟く。
 零れ落ちたその言葉に、リヴァイは瞠目した。
243 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:42:16.88 d
「エレン……」
「俺、いまだからほんとのこと言いますけど、幼馴染にリヴァイさんのこと悪く言われて悔しかったんです。だから見返してやろうと思って、俺も鍛えたかったんだ。なのに、そのリヴァイさん本人からそんなこと言われると……」
 ぐっと唇を噛んだ。
 なにをそのくらいのことで、と笑われるかもしれない。
 けれどエレンは本気で悔しかった。
 自分が好きになった人のことを、たとえ本人であろうとも卑下するようなことを言ってほしくなかった。
「リヴァイさんはすげえ人だって、俺は思ってます」
 真っ直ぐ見つめる。
 床にへたばったままで格好がつかなかったけれど、それでも気持ちを伝えたい一心で真っ直ぐに彼の目を見あげる。
「こんな風呂屋のバイトにも優しくしてくれるし、一円の得にもならねえのにこうやって筋トレ教えてもくれるし、面倒見がよくて真面目でカッコイイ人です。俺の……俺の憧れの人だから……リヴァイさんは」
 自信をもって欲しかった。
 誰かわからない他人に評価されなくても、自分はこんなに慕っているということを知って欲しかった。
 リヴァイは虚をつかれたかのように、しばし無言でこちらを見返していたが、しばらくしてふっと頬を緩めた。
「まいった」
「へ?」
「お前に言われると、俺みたいなおっさんにもそれなりの価値があるかのように思えてくる。不思議だな」
「だから! リヴァイさんに価値がないなんてそんなことねえって言ってるのに!」
 聞いてました? と唇を尖らせる。不服だ、と顔で表すと今度は声を漏らして笑われた。
「はは、エレン。お前すげえな」
「え?」
「勘違いしちまいそうだ」
「え……?」
 なんのことかと聞き返す前に、リヴァイはすっと立ち上がる。
「そろそろお前の持って来たメロンが冷えてるころだぞ。食うか?」
「あっ、はい。でもあれはリヴァイさんにお土産で……」
「一人暮らしのおっさんがあんなもん丸々一個消費できるか。半分に割って真ん中にバニラアイス入れてやる。食ってけ」
「っ、はい!」
 慌てて身を起こし、部屋を出る彼を追いかけた。
 リヴァイの背中が、なんとなく嬉しそうに見えた。
244 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:42:28.85 d
 そう思いついてしまったら、急に気持ちがそわそわ浮足立つ。
 今晩、彼が銭湯にやってきたらチラシを見せよう。もし風呂に来なかったならメールすればいい。
 予定を聞いて、一緒にどうかと誘ってみる。そして彼が、
「いいぞ、付き合ってやる」
 と応えてくれたら――。
 そこまで想像して、エレンは突然耳の辺りがカーッと熱くなるのを感じた。
 首筋から頬、耳にかけてじわりと熱を持つ。
「なんだ、これ」
 頭の中で彼の答えを想像しただけだ。いつもの彼の声で。彼の口調で。
 なのに、なぜだか突然羞恥心が湧きあがった。
 おかしいな、あっ残暑ってやつか、あはは、と独り言ちて手のひらで顔をパタパタと仰ぐ。
 身の置き所がなくて咄嗟に壁時計を見る。
 午後四時。風呂は開いているが、客はまだ常連のじいさんたちだけだ。
「あ、い、いまのうちに飲み物の補充しとくか……」
 そそくさと在庫の箱を手に取る。
 十分後、どう見ても内容の偏ったドリンクケースが完成していた。
 スポーツドリンクがやたら多く見えるのは、きっと気のせいに違いない。


 異種格闘技フェスティバルとやらは、シガンシナにある公立体育館を貸し切って行われた。
 近所にあるジムやら道場やらが何軒も集まり、夏休み最後のお祭り騒ぎとしてこのイベントを企画したらしい。
 体育館内では試合が行われているが、体育館の外では本物の夏祭りさながらに出店が並び賑わっていた。
 親子連れも多い。輪投げやスーパーボール掬いの店の前には、小さいながら列もできている。
 イベントのタイトルにそぐわない、かなり長閑な雰囲気だ。
「リヴァイさん、腹減りませんか? 牛串売ってますよ」
 隣に歩く男の服をちょいと引っ張り、エレンは出店の方を指差した。
「あっ、チョコバナナもある! あっちは焼きそば。やべえ、いい匂い」
 体育館の入口へ辿り着くまでに、何度となくエレンが足を止める。
 必要以上にきょろきょろしてしまうのは、リヴァイとふたりきりなのが妙に落ち着かないからだ。
「食い物は後だ。先に観戦席に収まらねえと、お前の知り合いの試合も終わっちまうぞ」
「そうなんですけど」
 つい、と頭を掻いて笑う。
 リヴァイも釣られたように頬を緩めた。
 きっと呆れているに違いない。
245 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:43:23.93 d
 毎週土曜日は筋トレの日。
 面倒見のいいリヴァイは、結局毎週末ごとにエレンを自宅に招いてくれた。
 そのたびに新しいトレーニングを教えてくれたり、一緒になって身体を動かしてくれる。
 一人黙々とするトレーニングよりも、ふたりでメニューをこなす方が楽しい。
 それに気づいてからは、エレンも毎週土曜を心待ちにするようになっていた。
 すっかりそれが定着した頃。シガンシナ湯でのバイト中、ミカサに一枚のチラシを渡された。
「異種格闘技フェスティバル・イン・シガンシナ…?」
 躍動感のあるフォントでイベントタイトルが打たれている。
 試合での対決を煽るように、いかにもな赤い炎の演出つきだ。
 小首を傾げると、ミカサは気のせいか頬をうっすらと染めて「エレンに観に来てほしい」と言った。
「え、お前が出んの?」
「うん。ジムで出場選手を選んで、その中のひとりに入った」
 まるで学園祭の芝居でヒロインに抜擢されたような、そんな恥じ入った顔をしながら、ミカサはモジモジと頷いた。
「へえ、すげえじゃん」
「面白い組み合わせの試合も多い。きっとエレンも観て楽しい」
「ふうん?」
「私だけじゃない。エレンが気に入ってたキックボクシングの先生も出る。だから、良かったら…」
 言われて思い出した。ミカサの通う道場に見学に行った時、好みの体つきをしたトレーナーがいたことを。
 いまの自分はリヴァイ以外の筋肉に興味がない状態が続いているため、そんなことはすっかり忘れていたのだが。
「ああ、あの人か」
「そう。土曜だからちょうどいい」
「は?なにがちょうどいいんだ?」
「チビとの予定が潰せ、いや、週末の昼間だから。シガンシナ湯のバイトの邪魔にもならないかと思って」
「そっか、うん。じゃあ行ってみる、かな」
 エレンが来てくれるなら十倍頑張る、と拳を握り、心なしか弾んだ足取りで女湯の掃除へ戻っていった。
 その背中を見送りながら、ふうんとチラシの日付を確認する。確かに土曜日だ。
(リヴァイさん、格闘技が趣味って言ってたけど、こういうのも好きかな)
 いつもなら土曜は彼とトレーニングをする日。
 嫌いでなければ誘ってみてはどうか。もしも彼がOKしてくれたら、一緒に出掛けられるのではないか。
246 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:43:53.84 d
 勇気を出して格闘技イベントへ誘った日、なんと風呂屋の暖簾をくぐったリヴァイも同じイベントのチラシを手にしていた。
 彼曰く、出場するジムの友人から回って来たらしい。エレンを誘ってみようと思っていた、と言われ、またもムズムズするような落ち着かなさを味わった。
 同じチラシを突き合わせ、番台横でふたり一緒に噴き出す。
 気が合うというのかなんというのか、まさしくグッドタイミングだったと言わざるを得ない。
 かくして待ち合わせた試合当日。
 予定としては、試合を観戦した後でリヴァイの自宅へ行き、短いトレーニングに勤しむことになっている。
 最近ではエレンもそれなりにスタミナがついてきた。リヴァイのペースにも食らいついていけるようになってきたし、トレーニング負荷も最初より少しずつ大きくしている。
 結果的なことを言えば、まだリヴァイほどの肉体ができあがるには程遠いのだが、それでも初心者から初級くらいにはクラスアップできたと思う。
(このまま続けて、計画通りペライ身体とおさらばだ!)
 夢の実現まであと少し。
 隣を歩く男をちらと見る。目標としているのは他ならぬ彼。
 出店にはあまり興味のなさそうな顔で、ゆったりと会場入り口へ向かい歩いている。黒い半袖Tシャツから伸びる、恐ろしく整った腕が眩しく見えた。
(前腕筋までバランスがいいってリヴァイさんマジ神がかってる)
 逞しい上腕二頭筋はもちろんのこと、鍛える人間が多くない前腕までが男らしいバランスで伸びている。筋の流れがわかるラインがあまりに理想的で、エレンは「半袖の夏、万歳」と心の中で涙ながらにサムズアップした。
「空いてる席を探せ」
「はい!」
 会場内はそこそこ混みあっていた。階段状になっている観客席の約七割が埋まっている。
 ふたり並んで落ち着ける場所を探し、エレンは早々に陣取った。
 会場の中央にはリング。約六メートル四方の四角いマットの隅にはコーナーマット。
 そこへ四本のロープが渡され、かなり本格的な闘技場が作られている。
 小さな子ども同士の試合から始まり、出場者の年齢がだんだん上がって行くプログラムになっているらしい。
 中学生同士の試合が終わり、次は高校生の出番となる。
「あっミカサ!」
 リングサイドで上着を脱ぎ去った選手の顔を見て、エレンは思わず声をあげた。
247 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:44:17.43 d
 ジムの名前が入ったユニフォームに着替え、もういつでも戦いに臨めると言わんばかりの闘志を見せている。
 コールがかかればリングへあがり、試合開始となるのだろう。
 対して、試合相手としてリングに上がろうとしている選手は、女子ながらも上背がありかなり強そうに見える。
 ミカサが負けるわけがないとわかってはいても、思わず声援が口をついた。
「頑張れ、ミカサ!」
 広い体育館にいる大勢の観衆の中から、たったひとつの声が届いたとは思えないが、ミカサは二、三度首を巡らせると、視線をぴったりとこちらへ合わせた。
 バンテージを巻いた白い手をひらりと振って、心なしか嬉しそうな顔を見せる。
 が、次の瞬間、ミカサの顔は鬼の形相に変わった。
「えっ?」
 剣呑。不穏。物騒。そういう言葉がぴったり当てはまるような、凄まじく険しい表情。
 幼馴染の自分であっても、これまで見たことのないような顔だ。
(なんだ?)
 一瞬で様変わりした理由に思い当たる節がない。えっと、と困惑したまま隣の男に視線をやると。
「ひっ?!」
 こちらも負けてはいなかった。これまでに見たことのないような深い縦筋を眉間に寄せたリヴァイが、腕組みをして前方を睨みつけていた。
 ふたりとも、いまの一瞬にいったい何があったのか。
「ど、ど、どうしたん、ですか?」
「エレン、お前をこの試合に誘った友人というのはあの女か」
「えっ? え、はい、そうですけど……」
「ミカサ・アッカ―マン……、間違いないな?」
「は、はい……」
「なるほど」
 リヴァイの口からミカサのフルネームが出たことに驚く。
 えっと、お知り合いで?と続けたエレンの手のひらを、リヴァイは唐突に握り締めた。
「はっ?!」
 何の前触れもなく、右手が熱にぎゅっと包まれる。
 リヴァイさん、体格に見合わず手はおっきいんですね、などと暢気なことを考えている間に、繋がれた手はすっと胸の高さまで持ち上げられた。
 まるで誰かに見せつけるように。
「えっ、なにっ、えっ?」
 動揺している合間になにやらのアピールがあったらしい。
 リヴァイの視線の先で、ミカサが心底忌々しそうにリングサイドのパイプ椅子を幾つか蹴り倒した。会場に物騒な音が響き渡る。
248 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:44:24.45 d
 帯同していたジムのスタッフかが、慌てたように彼女を宥めている。
 ミカサはまるでいまにもリングサイドを駆け出し、どこかへ行こうとしているように見えた。
「えっ?! なに、あいつ何して……っ!」
「エレン、この試合が始まったら逃げるぞ」
「はあ?」
「ゴングが鳴ったらあいつも観念するだろ。さすがに試合放棄まではしないはずだ。そしたらすぐに立つ」
「へ? ええぇえ?」
 もうなにがなんだか訳がわからない。
「リヴァイさん、ミカサと知り合いなんですか?」
「知り合いもなにも、あいつと俺は従兄妹の間柄だ」
「えっ?! えええええええ!?」
 親戚! マジでか……、と呆然と呟く。
「合点がいった。お前があいつの言っていたエレンなんだな」
「言ってたってなんですか?」
「俺はな、エレン。お前に会う前からお前のことを知っていた」
「はあ……?」
 もうわからないことだらけだ。頭の中にはハテナマークが無数に飛び交っている。
「ちょっともうよくわかんないんで、俺にもわかるように説明してください!」
 軽いパニックを起こすエレンを宥めるように、リヴァイは繋いだままだった手にじわりと力を込めた。
 逃がさねえぞ、とでも言っているように。
「わかった、とりあえず俺んち来い」
 いつもより少しだけ熱っぽい声。膝の触れあう至近距離。そして繋がれた手。
 まるで口説かれているようではないか。
 はた、とそう思い至り、エレンの頬は途端にカアッと熱を持つ。
 そのタイミングで、体育館内にはカーン! と小気味いいゴングの音が鳴り響いた。
 高らかに試合開始である。
249 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:44:54.03 d
 自宅へ帰りつくや否や、リヴァイは玄関に施錠した。
 それもドアガードまでご丁寧に倒すという念の入りようで。
「ちょ、リヴァイさん!」
「このぐらいしとかねえとゆっくり話もできん。エレン、奥へ入れ」
「えっ、はい」
 背を押された先はリビング。仕方なしにソファーへ腰かけると、リヴァイも迷いなく隣へ座る。
(近い……)
 ついさっき妙な意識をしてしまったからか、距離が気になって仕方ない。偶然だとわかっていても、気持ちがそわそわと落ち着かない。
 反射的に身を少し引くと、なんとリヴァイは離れた分の距離を自分から詰めたではないか。
「へっ?!」
「エレン」
 たった一言。名前を呼ばれただけなのに、なぜだかいつもと違う。違って感じる。
 まるで大事なものを呼ぶような、そんな柔らかい声で囁かれると……。
(理由もないのに、ものすごく恥ずかしい気分になるじゃんか!)
「ちょ、あの……、リヴァイ、さん」
「逃げんな。話したい」
「は、い、えっと、逃げてない、です、けど」
「違う。こっち見ろ」
「え!」
 えっと、あの、その、としどろもどろになる。そう言われても、リヴァイをまっすぐ見ることがどうしてもできなかった。
 視線の行方に困り、意味もなくうろうろと部屋中を彷徨わせる。
(なんだ。なんなんだ。どういう空気、これ!)
 ミカサとリヴァイが従兄妹、というのはわかった。彼らが仲良しこよしではないことも何となく察した。
 でも、それがなんでいまこの現状に繋がるのだろう。
 ちら、と盗み見たリヴァイは、至極真面目な顔をしてこちらを見つめていた。
 困る。いや、なにが困ると聞かれても理由はうまく説明できないからもっと困る。
 エレンがいま一番困惑しているのは、リヴァイの態度よりも自分自身の羞恥心だった。
(なんで俺、こんな恥ずかしいんだ!)
 わからない。けれど、いまこの状況で逃げるのもおかしい。
「エレン?」
 窺うように呼ばれたのをきっかけに、よし、と腹を括った。
250 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:45:01.60 d
 俺も男だ。うじうじするのは性に合わない。ぐっと奥歯を噛み締める。
「あのっ、話っ、話をしましょう。えっと、説明、してくれるんですよね?」
 思い切って視線を合わせると、リヴァイは幾分かほっとしたような表情を見せた。
「ああ。ミカサの話な」
「あいつ、リヴァイさんの従兄弟だって」
「間違いない。歳の離れた俺の従兄弟だ」
「そうだったんですか。知らなかった。ミカサの口からリヴァイさんの話題が出たこともねえし……」
「そりゃそうだろ、あいつは俺のことを毛嫌いしてるからな」
「え?」
 嫌われている、という言葉がとても似合わないと思った。
 ミカサは身体を鍛えることが好きだ。ジムにも通うし、トレーニングだって喜んでこなす。
 身近にリヴァイのような肉体の持ち主がいたとしたら、嫌うどころか憧れを抱いてもおかしくないと思うのに。
「あいつはな、俺みたいな人間が心底嫌いだそうだ。ミカサが小学生のころにはっきりそう宣言された」
「そりゃまたどうして……」
「俺の身体が気に入らんらしい」
「冗談。リヴァイさんなら、ミカサの理想になってもおかしくないと思いますけど」
「完璧すぎて腹が立つ、そう言われたぞ」
「……」
 その気持ちはなんとなく察することができた。
「後から知ったが、思うように肉体改造できなくて悩んでた時期だったらしい。子どもの、ましてや女が身体を鍛えるのは難しい。嫌でも身体が成長する時期があるからな」
「ああ、そっか。そうですね」
「俺のようになりたいのに上手くいかない、これではエレンに振り向いてもらえない、と言われた」
「へ?」
 唐突に出てきた自分の名前にどきりとする。
「ミカサは昔から言っていた。自分が鍛えるのは『エレン』のためだと」
「……」
「友達であるその『エレン』とやらが逞しい身体が好きだというから、自分もそうなりたいんだと。俺はまた、変わった趣味の女子小学生もいたもんだと聞いてたんだが」
「女子……」
「すまん。ミカサの友人というからてっきり。名前の響きからも、疑いやしなかった。可愛いもんだと思ってたくらいだ」
「か、かわ……」
 ぐ、と喉元が詰まる。
(いやいやいや、なんで動揺するんだ、俺)
251 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:45:29.24 d
 誤魔化すように、ごほんとひとつ咳払いをする。
「俺、ミカサの前でリヴァイさんの話をしたことあります。でもあいつ、そんなことなんにも言わなかった」
 それどころか、こき下ろすような発言ばかりしていたように思う。
 だからこそ自分は発奮し、リヴァイに筋トレを頼むようなことになったのだ。
 自分が話題にする「リヴァイ」を、ミカサは従兄妹の「リヴァイ」と認識していたのだろうか。
 本人に聞いてみなければわからないことだが、「エレンが好みそうな体つきのよい」「名前がリヴァイ」とくれば、薄々勘付いていたのかもしれない。
「あ、だから俺に『もう会うな』ってしつこかったのか、あいつ」
 いつだったか学校の屋上で交わした会話が蘇る。
 もしかしなくても、ミカサは自分とリヴァイを近づけたくなかったのではないか。
 ぽろりと零した言葉を聞いて、リヴァイは苦い溜息を吐いた。
「そのへんは察してやってくれ」
「あ、はい」
 これでなんとなくふたりの関係性は理解できた。けれど、まだわからないことがある。
「でも、リヴァイさん。なんで俺の、えっと、手を……、手を握って?」
 まるでミカサに見せつけるような仕草だったと思う。
 あれを見て、ミカサの怒りがさらに燃え上がったような気がしたのだが、そのあたりがいまいち理解できない。
 どうして自分の手をリヴァイが握ることで、ミカサがブチ切れることになるのか。
 説明してほしい、と目で問うと、リヴァイはぐっとなにかを喉に詰まらせたような顔をした。
「それはな、エレン……」
 真剣な話を始める、という雰囲気になったところで、エレンの尻ポケットから高らかにロッキーのテーマが流れ出す。
 軽快な電子音が部屋の空気を一変させた。
「わ!」
 慌ててスマホを確認すると、ディスプレイにはミカサの名前。
「で、でんわ……」
「いまは出なくていい」
「でも」
 手の中の携帯はじゃんじゃんエレンを呼び出している。
 出るなと言われても電話は鳴るばかり。どうすりゃいいんだ。
 そのうち留守電に切り替わるんだったっけ。あ、音だけでも消せばいいのか?
252 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:45:35.53 d
 あわあわと持て余していると、リヴァイがそれをすっと取り上げ、プツッと応答拒否をした。
「あ!」
「いい。後でかけ直せ」
 そう言っているそばから、またも呼び出し音が鳴る。発信者はもちろんミカサ。
 鳴る。リヴァイが拒否する。
 それが四度ほど繰り返されたあと、「めんどくせえ」と言って、リヴァイはとうとう携帯の電源を落とした。
「チッ、時間がねえな」
「時間がない?」
「あいつのことだ、あっという間にここへ来る」
「ええ?」
「その前に、エレン。話しておくことがある」
 リヴァイの声は、いたって真面目なものだった。エレンもつられて背を正す。
「さっき俺がお前の手を握ったのはな」
「は、はい」
「宣戦布告だ」
「宣戦、布告?」
 それはリヴァイからミカサへ、という意味だろうか。
 考えているうちに、リヴァイはまたもエレンの手をそっと取った。
「!」
「お前がミカサの言っていた『エレン』と繋がったことで、合点がいった。それがわかった瞬間、俺はお前をあいつにやりたくないと心から思った」
「え……?」
 やりたくない、と。彼はいまそう言ったように聞こえた。
 意味を測りかね、ぱしぱしと瞬きをする。
 するとリヴァイはすっと視線を逃がした。どうにもその目元が赤いような気がしてならないのだが、これは目の錯覚なのだろうか。
「このところ俺の目はどうにもおかしくなったと思っていたが、独占欲を覚えるなんざ、もう決定的だ」
「へ、それ、は……」
「たいした取り柄もないこんな男に、無邪気に懐くお前が可愛いと思う」
「?!」
「ミカサには譲りたくない。言っている意味がわかるか、エレン?」
「えっ? えっ、あの、それは、えっと、もしかして……」
 好きとか嫌いとか惚れたとか腫れたとか、そういった話のことだろうか。
 いや、でもそうじゃないかもしれない。
 そうかもしれないけど違うかもしれない。脳内で否定と肯定が目まぐるしく乱舞する。
(リヴァイさんが、俺を、いやそんなはずは、ない、とは言い切れなかったら、じゃあありえたりするのか? だって元々は俺がリヴァイさんを、ってちょっと待て、俺がリヴァイさんをなんだっていうんだ!)
「……っ!」
253 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:46:01.34 d
 そうに違いない。リヴァイが憎からず思ってくれているとしても、きっと筋トレ仲間として可愛がってくれる気持ちからに決まってる。
 だって、彼の言葉を借りるなら、自分の方こそなんの取り柄もないただの高校生なのだから。
「リヴァイさんは俺みたいな初心者に付き合ってくれててあんまり楽しくなかったかもしれないけど、俺は毎週土曜日がすげえ楽しみでした。
 リヴァイさんと一緒にトレーニングするの楽しかったから。だってやっぱり理想の形が目の前にあるとモチベーションも違うし、リヴァイさんの組み立ててくれるメニューは頑張ればちゃんと成果も出たし」
 心配する必要はない、と伝えなければ。言葉を選びながら、エレンはさらに言い募る。
「だから、俺、ミカサが駄目だって言ったとしても、これからもリヴァイさんと一緒に筋トレしたいです!」
「お前…」
「ミカサが反対しても関係ありませんから。あいつは自分でジムに通ってるわけだし、俺のやることに口を出される筋合いはない。俺が一緒に筋トレしたいって思うのはリヴァイさんだけなんです」
 だから従兄妹と必要以上に険悪になる必要はないのだと、そこまで言い切ったところでエレンは目の前の男の異変に気づいた。
 まるで苦虫を噛み潰したような顔をしている。
 いや、銀紙の塊を奥歯で噛んだようなとでも言おうか。
「へ? ど、どうしたん、ですか?」
「……よくわかった」
「なに?」
「俺が悪かった。遠回しすぎた。お前のその筋肉に埋め尽くされた脳ミソをもうちょっと考慮すべきだった」
「リヴァ……ッ」
 名前を呼び終わる前に、エレンの視界はぐるっと天地がひっくり返った。
「えっ?!」
 見上げて気づく。
(あ、天井)
 それから覆い被さるようにして自分を見ているのは。
「リヴァ、イ、さ」
 まるで風のような早業だった。
 やっぱり筋力のある人は動きが違う、などと呆けたことを考えている間に、リヴァイは繋いでいた手を握る角度を変えた。
 そしてそのまま、エレンの手のひらを自分の腹筋へと押し当てる。
「あ、ひっ!」
 ゴツゴツとした感触。Tシャツ一枚を隔てた向こうに、リヴァイの神がかった腹直筋の存在をありありと感じる。
「かてぇ……」
 思わず感嘆を漏らすと、次の瞬間には容赦ない頭突きが降ってきた。
「いってえ!」
254 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:46:15.08 d
 瞼の裏にちかちかと星が舞う。
「いまのはお前が悪い」
「なんで!」
「そんなうっとりした顔でなんてこと言いやがる」
「はあ?」
 リヴァイの言っていることがよくわからくて首を捻る。そのうちに彼はエレンの上でゴホンとひとつ咳払いをした。
「エレン。さっきの話な、お前にもわかるように言ってやろう」
「え、はい」
「お前は俺との筋トレを楽しいと言ってくれたが、俺もお前と会える土曜をいつも楽しみにしていた」
「リヴァイさん」
「お前と一緒にいて楽しかったからだ。自宅の風呂が直っても、変わらず銭湯に通ってただろ。それも同じ理由だ」
 わかるな、と言われてコクンと頷いた。
「ミカサはお前が俺といるのをよく思わないだろう。だが俺は、これからもお前と一緒にいたい」
 今度は、わかるか、と問われ、エレンはまたも頷いた。
 リヴァイと一緒にいたいのは自分こそだったから。
「いい子だ。じゃあエレン、選べ」
「選ぶ?」
「そうだ。ミカサと俺と」
「えっ?!」
「正確に言おう。ミカサに反対されるままあいつの言いなりになって俺と離れるか、ミカサの言うことには耳を貸さず、これからも俺と一緒に週末の筋トレを続けるか」
 筋トレを、と言ったところで、リヴァイはなぜかエレンの手をより強く自らの腹部へ擦りつけたような気がした。そのゴリゴリした感触が心地良すぎて、うっかり喉がごくりと鳴る。
「お前、好きだろ?」
「え」
「俺の腹筋」
「あ……」
 わかってる、と言わんばかりにリヴァイがうっすらと笑う。
「お前が俺の身体目当てでも構わん。目的の齟齬は後々修正すればいい。どうだ、エレン。……俺を選ぶだろう?」
 俺を選ぶならこの身体は好きに触れ、と言わんばかりに、彼はエレンの手を腹筋から胸筋の上にまで滑らせた。
 なんという硬さ。なんというフォルム。
 これだ。これがまさしく自分の追い求めた筋肉。
(チョコモ○カジャンボとか言ってごめんなさい! やっぱお筋肉様だったっ!)
「俺っ、最初から言ってます! リヴァイさんがいい。リヴァイさんがいいです! ミカサがなんと言って反対しても、リヴァイさんと筋トレ続けたい。リヴァイさんと一緒にいたい!」
「エレン!」
255 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:46:41.96 d
by かみやゆすら

仲直りの方法は 


 むっつりと不機嫌な顔が、夜の暗い窓ガラスに映り込む。その顔に重なるようにして、ガラスの向こう側に輝かしい夜景が広がっている。
 宝石箱をぶちまけたような、とは使い果たされた陳腐な表現だが、いま見えているものにはまさにその言葉が相応しい。
 だがおそらく、キラキラと瞬く見事なまでのこの都会の夜を、世界中で自分だけが苦々しく見下ろしているのだと思う。
 そんなことを考えながら、エレンは唇をへの字に曲げた。
「いつまでそうやってぶすくれてるつもりだ」
 低い、こちらもまた不機嫌を露わにした声が聞こえる。
 それを投げかけられているのが自分だということはわかる。だってこの部屋には、自分と彼しかいないのだから。
 焦点を少し変えると、鏡のような窓ガラスには背後の様子も見えた。
 ホテルの一室。ラグジュアリーなインテリア。こんな豪華な場所、滅多に足を踏み入れられるもんじゃない。
 そしてその部屋の真ん中で仁王立ちをし、エレンの背中を見つめている男が一人。
 窓際の一人掛けソファーに身を沈めたまま動かなくなってしまったエレンを、どう扱うものかと思案している様子の恋人だ。
(リヴァイさんめ、こんな部屋で機嫌取りやがって)
 そう。ふたりは高級なスイートルームには似つかわしくない、痴話喧嘩の真っ最中なのである。
(こんなことじゃ許さねえんだからな)
 エレンは窓の外を見つめたまま動かなかった。もちろん返事なんてもってのほか。
「エレン」
「…………」
 聞こえないふりを続けていると、背後の恋人は疲れたようにひとつ嘆息した。
「…わかった。気が済むまでそうしてろ。俺は風呂へ入るからな」
 スーツのジャケットを放る音が聞こえた。そして、どこかのドアがぱたんと閉まる音。
 それを聞き届け、エレンは強張っていた肩の力をふうと抜いた。
 喧嘩なんかしたくてしてるわけじゃない。自分が少々意地を張りすぎているのもわかってる。
(でも絶対に許したくない。あんな名刺を持って帰ったあげく、ワイシャツにキスマークなんかつけられて帰りやがって!)
 会社の飲み会で遅くなると言った日、リヴァイは終電で帰宅した。エレンが出迎えた時にはいつになく酔っており、千鳥足の身体を支えてベッドまで連れて行ったほどだ。
256 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:47:05.83 d
 そこには丸っこい手書き文字で、「またキスしてくださいね! 気持ち良かった!」と。
(…………っ)
 エレンの理性が保ったのはここまでだった。
「なんっ……、なんっじゃ、こりゃああぁぁっ!!!」
 真夜中の絶叫は、マンション内にさぞ響いたことであろう。しかし肝心のリヴァイは目を覚まさなかった。
 その夜から今日まできっちり三日、エレンはリヴァイと口をきいていないのだった。


 濡れ髪を拭きながら、風呂上りのリヴァイは途方に暮れていた。
 理由は明白。誰よりも大事にしている恋人が、口をきいてくれないからだ。いや、口をきいてくれないどころか、まるでいないもののように存在を無視されている。
 いまも自分に背を向け、ただひたすらに窓の外を眺めるばかり。
(クッソ……なんでこんなことに……)
 三日前、身に覚えのない浮気を疑われ、朝起きた瞬間からブリザードのような冷たい視線にさらされた。
 ただテーブルの上に、赤い染みがついたワイシャツと呑み屋の名刺を並べられ、実に虫けらを見るような目で冷ややかに睨まれた。
(誤解以外のなにものでもねえって、どうしたら伝わるんだ。クソが)
 確かに名刺の店へ行った。同僚たちと飲み会の流れで、二次会と称し入った事実は認める。
 だが、エレンの想像しているようなことは断じてなかった。
 ワイシャツの赤い汚れは、口紅でも化粧品でもない。ラズベリーのソースを取り落した際についたものだ。
 あの日、飲み会メンバーの一人が誕生日だった。それを聞いた店側が機転を利かせ、小さなケーキを用意してくれた。
 酔っぱらっていた自分は手元を滑らせたらしく、あの染みができたという訳だ。
257 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:47:30.46 d
 横になるとすぐに寝息を立てはじめたパートナーの寝顔を、エレンは手のかかる子供を見るような顔で苦笑して眺めた。
「あ〜あ、珍しい。今日はちょっと飲み過ぎですねえ」
 脱力した身体からスーツを脱がす。皺になってはいけないから。
 そうやって重い身体をひっくり返しながらジャケットを脱がしたところまでは、優しい気持ちでいられたのだ。
「……なんだこれ」
 エレンには珍しい、地を這うような低音が零れた。
「もしかしてキスマークじゃねえの、これ?」
 リヴァイの白いワイシャツには、見事なまでに真っ赤な染みが残されていた。
 それも左胸の上に。
(いや、落ち着け。なんかのノリと勢いなんて、飲み会にはよくある話だ)
 深呼吸をしながら、他の異変がないかどうか目を配る。
 そしてワイシャツの胸ポケットに見つけてしまった。一枚の名刺を。
 それには明らかに女性が接客するタイプの店名が印字してあり、源氏名であろう名前が入っていた。
(クラブ……。リヴァイさん、そういうお店で飲んできたのか)
 エレンだって、頭ではわかっている。これがすぐに、イコール浮気ではないことくらい。
 社会人には付き合いだっていくらでもあり、リヴァイの希望でなくともそういう店に行くことがあるということも。
 でも、どうしても気持ちはもやもやとしてしまう。
 それはエレンのコンプレックスを刺激するには十分だった。
(女性にはどうしたって勝ち目がないのに……)
 リヴァイのパートナーになって何年経ったか。
 彼は「お前とは生涯を共にしたい」とまで言ってくれたけど、エレンはひとつだけ恐れていることがあった。
 やっぱり子供が欲しい。
 いつか、そんなことをリヴァイが言い出さないかと。
 人の気持ちは変わるものだ。いまはエレンを望んでくれているかもしれないが、リヴァイの気持ちがいつまでも変化しないとは誰も言いきれない。
 それだけが、酷く怖い。
(いや、リヴァイさんにも事情があるはずだ。こんなことで取り乱さずに、明日ちゃんと話を聞いて……)
 少なからず動揺している気持ちを落ち着けるように、深呼吸をした時だった。手にしていた名刺を、何の気なしにひっくり返した先にあったもの。
258 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:49:01.24 d
 それからあの名刺。あれこそ濡れ衣というもの。
(ありゃ俺じゃねえ。ナイルの野郎がもらった名刺だっつうのに)
 酔って調子づいたナイルは、一人のホステスを気に入ったようで終始デレデレとイチャついていた。
 まあ相手の女も満更ではない様子だったので放っておいたが、解散する時になってナイルが正気づいたらしく、「こんなもん持って帰ったら離婚の種になる」と青い顔をしながら、リヴァイのポケットに突っこんできたという顛末なのである。
(途中で捨てようと思いながら、すっかり忘れてた俺にも非がある。確かにあるが……)
 翌朝になって事態を把握し、リヴァイは青くなった。
 そして事細かに説明をし、迂闊だったこと、嫌な思いをさせてしまったことをエレンにひたすら謝ったのだが、こちらがどんなに弁解しようとも、聞く耳も持ってもらえなかった。
(強情すぎんじゃねえのか、あいつ)
 心を尽くして謝ったつもりだった。だがそれも受け入れてもらえないとなると、だんだん諦めが浮かんでくる。
 もしかしたらこれで終わりになるかもしれない。
 そんな嫌な想像も頭を過ぎる。
 元はと言えば、自分がエレンに参って始まった関係だった。
 十以上も歳の差のある美しい青年を、口説きに口説いてようやく一緒に暮らすまでになった。
 自分の気持ちは考えるまでもなくエレンにある。恥ずかしながら、首ったけと言ってもいい。
でも、おそらくエレンはそうではない。
(こんなうだつのあがらんオッサンを、あいつがいつまでも好きでいてくれる保証なんてなんにもねえ)
 心は移ろう。
 ただでさえ非生産的な男同士だ。世の男女のように、結婚なんていう確たる繋がりを与えてもやれない。
 口でいくらパートナーだと言っても、そんなものは泡と消えるシャボン玉のように儚く頼りないもの。
 エレンが自分に愛想を尽かしてもおかしくはない。
(クソ……)
 別れたくない。
 その一心で、リヴァイは最後にこの部屋を用意した。
 日常とは離れた場所で、もう一度ゆっくり話し合いをしたいと思った。
 それと同時に、ここ最近は仕事の忙しさにかまけ、エレンとふたりの時間をろくに過ごしていないことを思い出したのだ。
259 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:49:13.57 d
 環境が変われば、頑なな恋人も少しは軟化してくれるかと思ったのだが……。
(ダメか)
 エレンはこの部屋へ入ってからも、口をきこうとはしなかった。
 話しかけても答えない。ソファーへ身を沈めてからは微動だにもしない。
 ただ、一緒にはいてくれる。
(いまはこれまで、か……)
 リヴァイは濡れたタオルを椅子の背に放り、窓際へと歩み寄った。
 背を向けたまま、石のように座るエレンがいる。
「もう遅い。お前も風呂に入ってこい」
「……」
「エレン」
「……」
 やはりというか、反応はなかった。
 胸が痛む。ここまでさせるほど、自分がエレンを傷つけたということなのだ。
 突きつけられた現実に、リヴァイは目の前が暗くなった。
(もしも……、もしもこれでエレンが別れたいと口にしたら、受け入れてやるしかないか……)
 最悪の想像に頭痛がする。
 とにかく今日はもう遅い。なにもかも明日にしようと諦め、エレンに声を掛けた。
「先に寝る」
 それにすら、返事はなかった。
 リヴァイは嘆息し、ベッドルームに移動した。
 朝起きたらエレンが隣にいてくれるといいと願いながら、キングサイズのベッドを半分使って横になった。


(あったかい……?)
 ふわふわと柔らかいものに包まれている。
 深い眠りの底にいた意識が、だんだんと浮上する。エレンは長い睫毛を震わせながら、ゆっくりと瞳を開けた。
(ベッド……いつの間に……)
 昨夜は意地を張ったまま、リビングからベッドルームに移動することがどうしてもできずに、そのままカウチソファーで横になったはずだ。
 ホテルの部屋などセントラルヒーティングだから、その程度で風邪をひいたりすることもない。
 そう思って目を瞑ったはずなのに。
 目が覚めてみたら、ベッドに横になっていた。
 ご丁寧に、肌触りのよい毛布まで掛けてある。
(リヴァイさんか)
 他にいないのだから、そう考えるのが自然である。
 おそらくエレンが寝入った後、ここまで運んでくれたのだ。
260 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:49:39.38 d
(でも、いない……)
 エレンの隣のスペースは空っぽだ。シーツが乱れていたから、昨夜そこを使ったのは間違いない。
 見回してみると、ベッドと足元の方にはリヴァイが身に着けていたとおぼしきバスローブが脱ぎ棄てられていた。
(着替えてる。じゃ、風呂使ってるわけでもないってことで……)
 唐突に、もしかしたらもうリヴァイはこの部屋にはいないのではないかと思った。頑なな自分に愛想を尽かして、一人で帰ってしまったのではないかと。
「……っ」
 ゾッとした。
 起こした半身を抱き締めるように身を縮める。
(置いていかれた?)
 いつまでもくだらないことで拗ねている自分を、もういらないと思ったのかもしれない。
 言葉を尽くしても機嫌を直さない、それどころかろくに口もきかない、ただ手のかかる子供を煩わしいと思ったのかも。
(そんな……俺……)
 ここまで頑なに彼を拒絶するつもりはなかった。
 ただ、女性には敵わないという悔しい気持ちと、それを彼にぶつけてしまった情けない気持ちが相まって、なかなか素直になれずにいた。
 本当は彼の弁解を信じている。いや、彼が「そう」だと言うのなら、それが本当は嘘であっても飲み込む。
 だって、あの人は他の何にも代えられない、「エレンの好きな人」なのだから。
(間に合うか?)
 気持ちが逸り、リヴァイを追ってみよう、とベッドから降りた時だった。
「起きたか」
 寝室のドアが開いた。
 リビングから漏れる光を背に、よく知った男が顔を出す。
「リヴァイ、さん」
 彼はきっちり身支度を済ませていた。
 休日だから柔らかい色のチノと、綿のシャツを着ている。
 まるで家にいる時と変わらない、穏やかな表情をしていた。
「身体、痛くしてねえか?」
 ソファーで寝ていたことを言っているのだろうか。
「あ、はい。どこも……」
「そうか。ならいい。とりあえず朝飯だ。着替えなくていいからこっちこい」
「え?」
 そしてその上には、ほかほかと湯気を立てる皿が無数に並んでいる。
「え?」
(ルームサービスってことか?)
 たったいま、運び込まれたばかりのようなそれに面食らう。
「……好きなもん食え」
 そう言って、リヴァイも向かいの席に腰を下ろした。
261 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:49:48.18 d
 さっきまでの焦燥感をポッキリ根元から折られ、エレンはぱちぱちと瞬きを繰り返した。
 無駄に引き摺っていた毒気も抜かれ、促されるまますとんと椅子に座る。
 カリッと焼いた薄めのトーストと、ドライフルーツの入ったシリアル。
 エッグスタンドには眩く白いポーチドエッグ。カリカリベーコンとマッシュルームソテー。
 瑞々しいグリーンサラダは彩りも良く、フルーツボウルまでついて、まるで完璧なイングリッシュブレックファーストだ。
 エレンの側にはオレンジジュースとミルクのグラス。リヴァイの席にはティーコゼーを被ったポット。
 そしてテーブルの真ん中に、ひときわ光る金色の――。
「どうした、腹減ってないのか」
 一点を見つめたまま固まってしまったエレンに、リヴァイは訝しげに声をかけた。
「お前、昨夜もろくに食ってねえだろ」
 ちらと見る。リヴァイの眉間には深い皺が寄っていた。
(心配してくれてる)
 そのくらいの感情は手に取るようにわかる。これでも自分は、彼の恋人なのだから。
 まるでハンストでもしているみたいに心配されて、エレンは気持ちが温かく浮上していくのを感じた。
(リヴァイさんが、俺を……)
 そうすると、まるで条件反射のように腹が鳴る。
 現金なほどグウと鳴った音を聴いて、リヴァイは安堵したように唇を引いた。
「お前が怒る気持ちもわかるが、とりあえずいまは置いとけ。飯食ったら……」
 話をしよう、とでも続けるつもりだったのか。
 リヴァイも自分のカトラリーを手にしようとして、エレンの反応に気がついた。
「……」
 エレンはナイフもフォークも手に取らない。
 それどころか、ぱかりと大きく口を開けて見せた。
「エレン」
 困ったような妙に照れたような、そんな顔を一瞬だけ見せて、リヴァイはさっとカトラリーを手にした。
 次にはわざと、むっと怒ったような表情をし、
「どれだ」
 と、テーブルに並ぶ皿を睨みつけた。
262 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:50:13.70 d
 頬が緩む。
 大きく開けた口が波打たないように、唇の形をキープするのに苦心する。
(リヴァイさん)
 じわじわと愛しい気持ちが胸に込み上げる。
 しばらく逡巡したのち、リヴァイは真ん中の皿に手を伸ばした。
 金色の四角い塊にナイフを入れる。
 恐ろしいほど柔らかいそれは、一口大に切り分けられる間もふるふると震え、とうとうフォークに収まった。
 テーブル越しに、ゆっくりと口まで運ばれる。
 途中で落としてしまわないように、と慎重を期するリヴァイの真剣な顔すら愛おしい。
(チクショウ。大好きだ、この人)
 ぱくり、と口を閉じる。
 バターの芳醇な香り。こんがりついた焼き目の芳ばしさ。
 優しい甘さを楽しみながら咀嚼し、最後にはほんのり漂うバニラの香りが鼻から抜けた。
 なんとも言えぬ幸せそうな顔を見せ、満足のうちに一口を飲み下したエレンを静かに観察していたリヴァイは、自分こそが満足したかのようにほうと息を吐いた。
「正解です」
 欲しかったものを間違いなく選んでもらえたと、エレンは言葉少なに伝える。
「お前の好きな物を忘れたりしねえよ」
 照れ隠しなのか、リヴァイはフンと鼻を小さく鳴らす。
「俺の好きな物、わかるんですか?」
「ああ」
「じゃあ、俺がなにより一番好きな物もわかりますよね?」
 ここ数日、見せることのなかった満面の笑みで言う。
 向かいの男は、苦虫を噛み潰したような顔で白旗を振った。
「……お前には敵わん」
「迂闊すぎましたね、リヴァイさん。本気で浮気する時は、あんな証拠まみれじゃダメですよ?」
「しねえよ。するわけねえ。悪かった。……お前がいてくれりゃ、俺は他になんもいらねえんだ」
 台詞の最期は、語尾が蚊の鳴くような小さな音になった。
263 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:50:23.81 d
 照れているのだろうか。
 照れているのだと思う。
 普段、こんなことは滅多に口にしてくれない男だから、勇気のいる台詞だったに違いない。
(愛されてるな、俺)
 喜びが湧きあがる。
「エレン」
「それ、全部食べさせてくれたら仲直りします」
 この際、甘えられるだけ甘えてしまおうと思った。
 なにより、こんな馬鹿な茶番でもやらなくては、エレンの方こそリヴァイを許すためのきっかけを掴めないでいたかもしれない。
(こんなことでこの人と離れたくない)
 でも大人の、ましてや痴話喧嘩ともなると、無駄なプライドばかりがしゃしゃり出る。
 自分に否があるとわかってはいても、どうにも素直になれない煩わしさが立つ。
 おそらくはリヴァイも、同じような気持ちだったに違いない。
 普段、あまり甘えようとしないエレンを知っているのだから、この茶番の意味もきっともう悟っていることだろう。
 その証拠に、器用に片眉を跳ね上げながら、にっと笑った。
「お安い御用だな」
 そんなことを嘯きながら、もう一度同じ皿へと銀のカトラリーを伸ばす。
 エレンはふるふると首を振って見せた。
「……」
 しばしの思案ののち、リヴァイは皿に添えられていたハニーポットに手を伸ばす。
 とろとろと泳ぐほどにメイプルシロップを掛け、さらにそこへジャムも添えた。
 そして丁寧に切り分けたひとかけらを、もう一度エレンの口元へと差し出す。
「ん」
 幸せそうに頬張る恋人の顔を眺め、リヴァイも眉を下げる。
 そしてふたりして視線を交わすと次には、はは、と声をあげて笑った。
 仲直りの朝は、黄金のフレンチトーストと共に――。
264 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:50:52.18 d
by かみやゆすら

五日間の英雄


 学校から帰ったらランドセルはチェストの上、学帽はウォールフックの定位置に。
 外遊びで服が汚れていたらすぐに着替え、汚れ物は脱衣所のランドリーバスケットに入れておく。
 それから手洗いうがいをして、ようやくオヤツ。
 オヤツはダイニングテーブルで食べる、というルールがある。食べ終わったら手を洗い、今度は宿題に取り掛からなくてはいけない。
 宿題が終わったら、洗濯物を畳もうと計画している。そのあとで時間があれば、掃除にも挑戦したい。
 今日エレンがやりたいこと、やるべきことは山積みだ。
(リヴァイさんが帰るまで、ちゃんとやらなきゃな!)
 自分一人だってできる。なにひとつ、心配はないと証明しなくてはいけない。
 いまのエレンにはその理由がある。
 まずはこいつをやっつけねば。
 エレンはランドセルから引っ張り出したプリントの束を睨みつけ、鉛筆を握り締めて宿題との戦闘を開始した。


「エレン。四、五日留守にするぞ」
 誰より大好きな同居人がそんなことを言い出したのは、一週間ほど前のこと。
「なんで? どこ行っちゃうんですか?!」
 まるで今生の別れかと言わんばかりに取り乱すエレンを、リヴァイは「落ち着け」と宥めた。
「出張が決まった。一応、小学生のお前を一人置いて行けるかと抵抗したんだが、今回は仕事の内容的にどうしても俺が行かなきゃならんらしい」
「そんな! 誰がそんなこと決めたんですか!」
「エルヴィンだな。采配してんのはアイツだから」
 知った顔を思い浮かべ、『アイツ、俺が大きくなったらふくしゅうしてやる』と物騒なことを考えるエレンに、リヴァイは面白そうな顔で鼻を鳴らした。
「四、五日くらい大丈夫だろう? お前ももう来年は四年。高学年の仲間入りだしな」
「やだ! 俺も一緒に行きます!」
「馬鹿言え。学校があるだろ。平日だぞ」
「うう……」
「俺の留守中、夕方にはハンジが来るように手配してある。飯の心配はないし、夜も泊まって行くように頼んであるから、お前は普段と同じ生活をしてりゃいい」
 そう言って、リヴァイはこの出張を不動のものだと宣言した。
 エレンとリヴァイが一緒に暮らし始めて五年。
 それは実に初めてのことだった。
265 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:51:11.14 d
 双子の妹であるミカサが、生まれた時から重病に侵されていたという不幸が事の発端だった。
 エレンが四歳になったころ、日本では行えないという手術を受けるため、ミカサと両親は渡米を決意した。
 ただ、いつ現れるかわからないドナーを待つ日々にもなる。
 幼い子供ふたり、しかも一方は病人を抱えて、無事に成し遂げられるだろうかという不安に、両親は悩まされていた。
 そこへ名乗りを上げたのがリヴァイだった。
 エレンの母の弟、つまりエレンたちの叔父であるリヴァイは、エレンを預かろうと言ってくれた。
 いつ終わるかわからない不安定な生活を異国で送るくらいなら、エレンの将来のことも考え、日本で継続的に生活をさせる方がいいと主張してくれた。
 いまになれば少しはわかるのだが、それには経済的な問題も含まれていた。リヴァイはそれも含め、自分が預かると提案したのだ。
 エレンが両親の手元を離れれば、それだけ両親の負担も減る。
 ただでさえ、ミカサの手術費を工面するだけで精一杯だった両親たちだ。
 下げられるだけの頭を下げ、苦渋の決断でエレンをリヴァイに託した。
 そこから始まった新しい生活。
 エレンは呆れるほど呆気なく、リヴァイとの日々に馴染んだ。
 それどころか、両親たちよりもよっぽどリヴァイの方に懐く始末。
 それも仕方ないことだった。
 生まれてこのかた、両親は病弱なミカサを優先してきた。
 それが当たり前だと、兄である自分は我慢しなくてはと、幼いエレンなりに理解もしていた。
 でも寂しかったのだ。
 自分だって、父や母の腕に抱かれたかった。
「我慢できるわよね、お兄ちゃんなんだから」
 そんなことを言われない生活をしてみたかった。
 リヴァイと暮らしてみてわかったことは、彼の目に入る子供は自分だけだという事実。
 話をするときも、食事をするときも、いつでも自分とだけ向き合ってくれる。
 そんな当たり前のことがひどく嬉しくて、エレンはあっという間にリヴァイに夢中になった。
 リヴァイの言うことはなんでも聞くし、幼いなりにリヴァイになにかしてやりたいとも思い、いじらしいまでに尽くした。
 そんな健気なエレンを、リヴァイも可愛がらないわけはない。
 両親と離れて約五年、エレンとリヴァイの二人きりの生活はそうして穏やかに過ぎていた。
266 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:51:55.63 d
「ごちそうさまでした!」
 ぱちん、と両手を合わせ、深々と一礼をする。
 向かい合って食事をしていたハンジは、驚いたようにパチパチと目を瞬かせた。
「おやまあ、これまた綺麗に食べたもんだね」
 エレンの前に並んでいる皿は、主菜も付け合せも見事に平らげられている。
「生野菜、平気だった? サラダのレタス、ちょっと多かったかなって思ってたんだけど」
 ハンジの心配をよそに、エレンは首を振って見せた。
「大丈夫です!」
 リヴァイが出張に出かけた最初の夜。
 夕方にやってきたハンジは、エレンの好物であるハンバーグを作ってくれた。
 ハンジとはもう何度も一緒に遊んだことがある。リヴァイの腐れ縁だというこの人は、叔父と甥の奇妙な二人暮らしにも適度な距離で寄り添っていてくれる。
(リヴァイさんはハンジさんと仲良しだ。だから俺も仲良くするんだ)
 エレンは並々ならぬ決意の元、今回の留守番生活を開始していた。
「ハンジさん、ハンバーグおいしかったです!」
 自分の使った食器をそっと重ね、慎重な手つきで流しへ運ぶ。
 そして食卓へは戻らず、そのままリビングを飛び出した。
「俺、お風呂掃除してきます!」
 パタパタと軽い足音が遠ざかり、ハンジは箸を手にしたまま苦笑した。
「え? おやおや……」
 ついさっきまで食事の支度を手伝ってくれていたのに、今度は風呂掃除か、と感心する。
 ハンジが夕方ここへ到着した時にはすでに、乾いた洗濯物はきっちりと畳まれていた。
 その少し不格好な折り目は、エレンがやったものだと物語っていた。
267 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:52:25.99 d
 それだけではない。
 リヴァイ仕込みの掃除の腕で、家中がピカピカに磨き上げられていた。
 その上、聞けば宿題も明日の支度もすべて終わっているという。
 十にもならない子供が、こうもきっちりと物事をこなすことができるだろうか。
 ハンジの目から見ても、エレンが小さい彼なりに無理な努力していることは明らかだった。
(リヴァイとこんなに離れてることって初めてだっけ)
 幼い彼なりに、成すべきことに立ち向かおうとしているのかもしれない。
 エレンのそのいじらしさは、ハンジの庇護欲を掻きたてる。頑張ろうとしている少年の後方支援ができるように気を配ろう、と期間限定の保護者は相好を崩した。
 時計の針が午後八時きっかりを指す。
 風呂掃除を終えて戻ってきたエレンがリビングに戻ると同時に、ローテーブルに置かれていた子供用の携帯が鳴り始めた。
 飛びつくようにして手にしたのはエレン。
「もしもし!」
「エレンか?」
「リヴァイさん! お疲れ様です!」
 出掛ける前、毎晩必ず電話をすると言ってくれた。約束を守ってくれたことが嬉しくて、心が弾む。
「お仕事終わりましたか?!」
「ああ、いま引き上げてホテルに向かってるところだ。飯は食ったか? 風呂は?」
「ハンジさんの美味しいハンバーグ食べました! いまお風呂掃除も終わったとこです!」
「そうか、今日の宿題は?」
「終わりました! 明日の準備もすんでます!」
 まるで新兵が上官に答えるような勢いだ。
 思いのほか張りのある声を聞き、リヴァイも安堵したのだろう。
 電話越しに、ふっと笑う息遣いが聞こえた。
「やりゃできるじゃねえか。偉いぞ」
「えへへ」
 日焼けした少年らしい頬を桃色に染めながら、エレンは破顔した。
 褒められることは嬉しい。
 大好きな人に認めてもらったような気持ちになるから。
268 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:52:37.67 d
 今日一日を頑張って良かったと、そう思ったのだが――。
「俺がいなくても問題ないようだな。その調子であと四日、留守を頼むぞ」
「!」
 エレンは一瞬の間ののち、はいと元気よく答えてみせた。
(……問題なくないのに)
 内心ではそう思いながら。


 翌日も、エレンはせっせと動いた。
 朝はハンジに起こされる前にベッドから出たし、身支度も自分一人で整えた。
 朝食のあとには片付けを手伝い、登校前の忘れ物チェックも自分でやった。
 学校から帰宅すれば、昨日と同じように手際よく明日の支度もした。
 まるで文句のつけようのない完璧な小学生だ。
 ただ常日頃、リヴァイが在宅している時のエレンがこうであるかと言えば、実はそうではない。
 時々寝坊もするし、それなりに忘れ物もする。
 特に朝は、ぼんやりしすぎてうっかり歯磨きを忘れることもあり、何日かに一回はリヴァイに雷を落とされながら支度するという毎日だ。
 そんなエレンがこれだけ頑張る理由。
 それはひとえにリヴァイのために他ならない。
(リヴァイさんは俺に『留守を頼む』って言った。俺は男だ。俺はやる!)
 本当は、リヴァイのいない生活なんて考えられない。
 リヴァイがいなければ、いい子でいる意味などない。
 でも彼がそう望むなら、そういう子供でいたい。
 リヴァイが「留守番のできる子供」を望むのなら、自分はそれを成し遂げたい。
(だって、それがリヴァイさんの『必要な子』なら、俺はそうなれる)
 彼が喜び、満足してくれるのなら、エレンにとってもそれ以上嬉しい事はない。
 大好きな人の願いを叶えることなんて、お安い御用というもの。
 少々の寂しさなど、オヤツのドーナツと一緒に飲み込んでしまえばいい。
 胸の中でもやもやしているものなんて、サイダーのシュワシュワがきっと溶かしてくれるはず。
269 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:53:10.03 d
「俺はやれる。……うん」
 グラスを両手でぎゅっと包み込みながら、ひとりきりの静かなダイニングテーブルでエレンは唇を噛んだ。


 二日目の夕飯はエビフライだった。
 見たこともない大きなエビに、エレンは顔を輝かせて喜んだ。
 もちろん昨日と同様に、率先してハンジの手伝いもしたし、自分がやるべき宿題なども完璧に終わらせた。
 そして夜八時の定期連絡にはことさら力を入れて、「俺は大丈夫。リヴァイさんはお仕事がんばってください!」と言った。
 三日目。
 朝、学校に出かけるまでは問題なく済んだ。一人で起床できたし、忘れ物もしなかった。
 ただ、学校でクラスメイトと些細な喧嘩をしてしまったことだけが誤算だった。
「お前、親に捨てられたんだってな」
 両親と離れて暮らしていることを、どこからか耳にしたらしい。
 日頃からエレンが気に入らなかったのか、クラスメイトのそいつは殊更勝ち誇ったように大きな声で言いやがった。
 悔しかった。言い返したかった。
 できるなら、拳を振り上げて仕返しをしてやりたかった。
 でも、できなかった。
(もし、俺が喧嘩したってリヴァイさんが聞いたら……)
 振り上げた小さな拳は、半ズボンのポケットに乱暴に突っ込んだ。
 そしてそのまま、振り返らずにダッと走り出す。
(我慢だ、我慢!)
 心配をさせてはいけない。リヴァイはいま遠い場所で一人、仕事を頑張っているのだから。
(離れてても俺は平気だからって、リヴァイさんに証明してみせなくちゃ!)
 子供ながらも矜持がある。
(大切な人を悲しませるなんて、男のすることじゃねえ!)
 全力で走るエレンの小さな胸には、ただリヴァイの顔だけが浮かんでいた。
270 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:53:19.54 d
 四日目。
 ハンジはなんとなく、エレンの異変に気づいていた。
(そろそろ限界かね)
 元気とやる気の塊だった初日に比べ、いまはその勢いが削がれたように、時々ぼんやりとした顔を見せる。
 いまも夕食に向かいながら、苦手な人参を前にして食事の手を止めてしまっていた。
「エレン、お腹いっぱいになっちゃった? 多くよそいすぎたかな、残してもいいんだよ?」
「! だっ、大丈夫です! 食べられます!」
 はっと驚いたような顔をして、シチューの中に残っていた野菜をせっせと口に運び始める。
 ハンジはそのエレンを眺めながら、後でメールでもしてやるか、と考えていた。
 リヴァイ、あなたの可愛い子は食べちゃいたいくらい可愛いよ、と。
 それを受け取った友人が、眉間に皺を寄せるのを想像するだけで笑いが込み上げる。
 ささやかな親切として付け加えるなら、小学生にはこのあたりが限界みたいだよ、と書いておいてやろう。
 五日目。
 エレンは、それはもう風のような速さで学校から帰宅をした。
(今日はリヴァイさんが帰ってくる!)
 心が躍る。朝から気が逸って仕方がなかった。
(リヴァイさんが帰ってくる前に掃除機をかけて、乾燥機の洗濯物を畳んで、お風呂も掃除して……)
 やらねばならないことは山のようにある。
 昨夜の電話では、六時に帰宅すると言っていた。
 ハンジはもう来ないらしいから、一緒に夕飯を作ろうとも言ってくれた。
(リヴァイさんが帰ってくる!)
 小さな頭の中は、もうそのことだけで一杯だ。
271 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:53:50.84 d
 エレンはその勢いのままオヤツを頬張り、宿題を済ませた。
 四時半、部屋と言う部屋に掃除機をかけた。五時、洗濯物を畳み終えた。
 五時半、ギリギリ風呂掃除を済ませることができた。
 時計の針と睨めっこしながら、玄関の開く時をいまかいまかと待っている。
(他に、しとかなきゃいけないことは?!)
 可能な限り完璧な状態で、リヴァイを迎えたい。
 なんせ五日ぶりの帰宅だ。
 「任せた」と言ってもらったのに、「やっぱりリヴァイさんがいないとなんにもできませんでした」なんてカッコ悪いこと言えやしない。
 好きな人に喜んでもらいたい。
 そして、好きな人に褒めてもらいたい。
 シンプルで純粋な欲求こそが、エレンの原動力になっていた。
(そうだ!)
 時計の針がもう少しで六時を指すと言う頃、エレンはハッと思いついた。
 リヴァイはきっと紅茶を飲みたいと言うに違いない。
 いまならまだ間に合う。お茶の用意もしておこう。
(いつものティーポットとティーカップ、棚から降ろして……、お茶の葉の缶も出して……)
 キッチンの食品庫の前に脚立を運び、紅茶の缶を取ろうと手を伸ばした時だった。
 気持ちが急いたのか、指先に力が入りすぎたのか。
「あっ!」
 シルバーの四角いアルミ缶はエレンの手をすり抜け、まるでスローモーションのようにして床へ吸い込まれていく。
 ガッシャン! と派手な音を立てたと同時に缶の蓋が開き、中身がザザザと零れてしまった。
「ウソ!!」
 キッチンの床一面が茶葉で溢れている。
「そんなっ」
 さーっと血の気が引いた。
 よりにもよって、リヴァイが特に好きだと言っていた茶葉なのに。
「あ、あ……」
 ショックのあまり、身体が動かない。
 さらに追い打ちをかけるように、玄関ドアの開く音が聞こえてきた。
(ウソ! リヴァイさん帰ってきちゃった!)
 脚立の上でおろおろとする。床に降りれば茶葉を踏む。
 茶葉を踏んで歩くと部屋が汚れてしまう。でも降りないと片付けられない。
(どうしよう!)
 混乱のあまり指先が震えはじめたタイミングで、とうとうリビングのドアが開いてしまった。
「ただいま。……エレン?」
 それは、五日ぶりに見るリヴァイの姿だった。
272 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:54:04.60 d
(あ……リヴァイさん……)
 唐突に、鼻の奥がツンとした。
 出て行ったときとは違うスーツ、両手にはブリーフケースとボストンバッグ。
 たった五日しか離れていなかったのに、彼の姿がこんなにも懐かしい。
 失敗に混乱する中、会えて嬉しいという感情も上乗せされて、エレンは更にパニックになり硬直した。
 リビングを見まわして不思議そうな顔をしたリヴァイが、次にこちらに顔を向けるのは自然なことで。
 キッチンカウンター越しに目が合い、エレンは盛大に肩を揺らした。
「エレン? そんなところでなにやって……」
「こないでください!」
 それはあまりに悲壮な叫びだった。泣き出さないのが不思議なほどに。
 すべてが片付いた後で、リヴァイに「こっちが泣きそうだった」と言わしめるほどに全力な拒絶だった。
「……」
 くるなと言ったのに、リヴァイはお構いなしに歩を進める。
 そしてキッチンに一歩踏み入れた時点で、すべてを把握したらしかった。
 ピタリと止まり、床とエレンを交互に眺める。そしてしばしの沈黙。
「……っ」
 失敗してしまった。完璧にしたかったのに。
 リヴァイに喜んでもらいたかった。
 紅茶の用意まで気を回せたのかと、褒めてほしかっただけだった。
(なのに、失敗した!)
 悔しい。悲しい。情けない。
 いろんな感情が入り乱れて、みるみるうちにエレンの瞳を潤ませていく。
「〜〜っ!」
 この世の終わりかと思うほどの絶望感を味わっているのに、目の前のリヴァイはなぜかふっと頬を緩めた。
「エレン、そのままストップだ。できるか?」
「っ!?」
「動くなよ? 動いたらおしりぺんぺんの刑だからな」
273 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:54:37.40 d
 まるで冗談のように笑いながらそう言い残すと、リヴァイの姿は廊下に消えた。
 次にリビングに入ってきた時には、その手には掃除機が携えられていた。
 そしてガーッという機械音とともに、キッチンの入口からエレンの立つ脚立の足元にまで、みるみるうちに一本の道が出来あがったではないか。
 茶色い茶葉の海を割るようにそこを通り、リヴァイはエレンの目の前まで来た。
 脚立の上に立ったままだから、リヴァイと同じ高さで目線が合う。気まずくて俯こうとしたエレンを、リヴァイは優しく許した。
「ほら、こい」
 両腕を広げて差し出す。穏やかに笑いながら。
「お……怒ってないですか……」
「怒るわけねえよ。ほら、来るのか来ねえのか?」
「……っ! リヴァイさん!」
 脚立から、彼の胸へ飛び込む。
 ぎゅっと力強く抱き締められて、目眩がするほどの幸福感に包まれた。温かい。
「ごめっ、……ごめっ、なさ……っ!」
 漏れたのは鼻声。
 リヴァイのスーツに顔を埋めながら、エレンは小さな身体を震わせた。
「泣くな」
「泣いてっ、ませ……っ」
 少年の痩身を軽々と抱き上げたままリビングへ移動し、リヴァイはソファーへ身を沈めた。胸にはコアラのようにくっついて離れないエレン付きだ。
「紅茶を淹れてくれようとしたのか?」
「……はい」
「ありがとう。後でもう一回チャレンジしてくれ。エレンの淹れる紅茶が飲みたい」
 すん、と鼻を啜る音がした。
「ハンジから聞いたぞ。俺が留守の間、ずいぶん頑張ったみたいだな」
 ぽんぽんと頭を撫でられ、全身の力の抜けるような安堵感を覚えた。
(リヴァイさん……帰ってきてくれた……)
 それだけでこんなに幸せになる自分はどこかおかしいのかもしれない。子供心にも薄ぼんやりとそう思う。
 こんなにも安心できて、あっさりと自分を甘やかしてくれる腕なんて他にはない。なんて特別な人だろう。
274 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:54:58.26 d
「家のことから学校のことまで、お前一人で頑張ったらしいじゃないか。ハンジも褒めてたぞ」
「……」
「エレンがこんなに頑張れるとは思ってなかった。これなら俺も安心して出張に出られるな」
「……嫌です」
「エレン?」
「もう、置いてかないで」
 ぽろりと本音が零れる。
 五日ぶりにリヴァイの顔を見て味わった安堵の前に、もう貫き通す意地の欠片も残っていなかった。
「……じゃ、次は一緒に行くか」
「はい!」
 リヴァイはなにが可笑しいのか、声を出して笑う。
 その振動が逞しい胸からくっつけている頬へと伝わり、エレンもようやく少しだけ笑うことができた。
「お土産あるぞ。バッグの中に」
「……いらない」
「おいこら、せっかく俺が選んでやったのに」
「ウソ、いります。でもいまはまだ」
 リヴァイさんの抱っこがいいです、と甘やかに囁く。
「仕方ねえな」
 そう言いながらも、リヴァイもエレンを抱き締める腕を緩めようとはしなかった。
 細い身体を力いっぱい抱き、エレンの頭頂部を顎でぐりぐりと弄ぶ。
「痛いです、リヴァイさん」
「うるせえ。こっちも五日ぶりなんだぞ。……黙ってされてろ」
「はは」
 リヴァイの胸に顔を埋め、幸福な体温を胸いっぱいに吸い込む。
 うっとりと瞳を閉じながら、エレンは考えていた。
 次に口を開いたらこう言おう。
 もう絶対絶対、二度と離れたくないです、と。




似たり寄ったりな終わりかたばっかりでサーセンwwwww
275 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:55:33.53 d
by かみやゆすら

今晩匿ってくれませんか


「今晩匿ってくれませんか」
 大真面目に言ったつもりだったけれど、俺の台詞を聞いた彼はまるで異世界の言葉を耳にしたと言わんばかりの不思議そうな顔をした。
 リアクションに困るんだが、とその精悍な頬に書かれている。
「一晩だけ。ダメですか?」
 顔の前でぱちんと両手を合わせ、拝む仕草をする。
 横に並んで歩きながらなので、その効力のほどはわからないが、これでも俺は真剣なのだ。
「……いったいなにに追われてるんだ」
「それは言えません。言ったらリヴァイさんの身にも危険が及ぶかもしれないんで」
「ほう、そりゃまたなんとも映画のような展開だな?」
「そうなんです。だからお願いします、リヴァイさん」
 珍しく俺の話に興味を持ってくれたようだったから、もしかしたらOKしてくれるのではと淡い期待を抱いたのだけれど。
「なにやら切羽詰っているらしいお前を案じる気持ちはあるが、こんな長閑な朝、どう見ても部屋着で、のんびり歩いて、コンビニに向かいながら、そんなこと言われてもな。エレン」
 スーツの男は呆れたように、横目で俺を一瞥した。
 やっぱり駄目か。がっくりと肩を落とすと、そんな俺を見て彼はさらに不思議そうな顔をした。
 母さんに叩き起こされ、開口一番「牛乳きれたからちょっと買ってきて」と言われたのが約十分前。
 頼む、と断る、の押し問答を繰り返すこと約二分。
 母さんに逆らうとは百年早い、と玄関からつまみ出され、同じタイミングでこの隣家の住人と顔を合わせたのが約五分前だ。
 ちょうど出勤のタイミングだったらしいマンションのお隣さんと肩を並べ、俺はコンビニへ向けて歩き出した。
 目的地は最寄駅までの途中にあるから、必然的に道中を共にすることになる。
 邪見にするでもなく同道を許してくれた彼を優しいなと思ったら、冒頭のような突拍子もないお願いが口をついて出ていた。
 今晩、この人の部屋に行きたい。
 まったく衝動的にそう思ったのだ。
276 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:55:57.89 d
「次はもっと面白い理由を作るんだな」
「ちぇ、ダメなんですか?」
「春休みで暇な学生と一緒にすんな。社畜はそんなに暇じゃねえんだよ」
 ガキは呑気なもんだ、と言う横顔は少し笑っていた。
 朝から笑いを提供できたのだとしたら、それはそれで結果オーライか。
 彼の部屋に行けないのは残念だけど、結果は薄々わかっていたからこのくらいで傷ついたり落ち込んだりはしない。
 片想いのメンタルは、そこそこ強くなければやっていられないのだ。
「リヴァイさん、帰り遅くなる? 忙しい?」
「まあな。年度末だから、それなりにやることはある」
「ふうん……」
 ではきっと、今日もそこそこの残業をするのだろう。
 彼の生活スタイルはだいたい把握している。
 エレンが生まれたころからお隣さんで、長く続く付き合いはもう家族とも言っていいかもしれない。
それくらいの親交はある。
 この感じだとこれ以上のワガママは言えないと察した。
彼の部屋へ行きたいのは山々だけど、決して煩わせたいわけじゃない。
 残念、と笑って見せる。これでこの話は終いだ。
「どうせ、うちにあるゲーム目当てなんだろ」
「あ、バレてる? リヴァイさん、鋭いから困る」
 俺はいつもの顔をして笑った。
 そう受け取られてるならそれでいい。本当のことなんて言えやしないから。
「リヴァイさんの言う通り、春休みで暇なんですよ。遊んでよ」
「もうすぐ高校生になるってのに、こんなオッサン相手にしてないでもっと楽しいことしろ」
「どんな?」
「そりゃお前……」
 と言ったきり、次の台詞が出てこない。
 多分彼は頭の中で、いまどきの男子中学生がなにを楽しむのか、などと考えているに違いない。
 歳の差がある。それもダブルスコアくらい。
277 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:56:19.03 d
 それこそオムツの時代から俺を知っている人だ。
 越えられないジェネレーションギャップがあり、家族同然であり、同性でもある。
 そういう如何ともしがたく、世界最強に手強いこの人に、俺はもう随分長い間片想いをしていた。
 もうラスボスと言ってもいい。この人を攻略できる最強魔術や必殺技などがあるなら、なんとしてでもその攻略法を手に入れたいところだ。そのためならお小遣い一年分をつぎこんだって構わない。
 肩を並べて歩きながら、横目でチラと彼を見る。
 社蓄、社蓄、と彼はよく口にするけれど、俺の目には今日も小ざっぱりと爽やかでかっこいい大人の男に見える。疲れ果ててクマがあるとか、やつれてよろよろしているとか、そんな姿はついぞお目にかかったことはない。
 濃紺のスーツには皺ひとつない。毎日変わるネクタイも歪みなくビシッとしているし、彼本人にも三十路とか嘘じゃねえのと疑うほどの張りがある。
(今日もカッコイイだけじゃんか、チクショ)
 いっそこの人が、本当に冴えないおじさんだったらどんなに良かったか。
 いつか、自分の知らない女性を連れて帰宅するのだろうか、とか。壁一枚隔てて隣り合わせてる彼の寝室から、あらぬ声が漏れ聞こえてきたらどうしようとか。
 もしも彼が冴えない、野暮ったいだけの男だったなら、そういう心配をしなくて良かったかもしれない。
 会うたびにこっそり彼の薬指をチェックすることも、実は心臓に負担がかかっているのだ。男子中学生の傷つきやすいメンタル舐めんな。なんて、一度くらい直球で吐きだしてみたいものである。
 今夜日付が変わると、俺はひとつ歳をとる。
 ついさっき俺を叩き起こした母さんに、「おつかい行ってくれたら、明日は一日王子様扱いしてあげるから」なんて言われたことが頭の隅に残っていた。
 さらに朝からリヴァイさんと鉢合わせたことが相まり、いつの間にか「匿ってくれ」なんて突拍子もない台詞が口をついて飛び出した。
 誕生日になにか特別なことがしたいと思ったわけじゃない。でも誕生日を口実に、願いをひとつ叶えられたらとそう思った。
 好きな人と一緒にいたい。一緒に過ごしたい。好きだから。
 それ以上でもそれ以下でもない。
 初恋は実らないとか、そんなことはよく知ってる。長年続く俺の不毛な恋バナを聞くたび、ミカサがそう繰り返すからだ。
278 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:56:28.87 d
 そんなことは知ってるし、実のところ期待もしていない。
 けれど今年の誕生日くらいは、許されるかなと思った。 
 カレンダーを一枚めくると、俺は高校生になる。新しい環境。新しい友人。新しい人間関係。
 きっと、これまでとは違う俺になる。
 そういう節目に、誰より彼と一緒にいたかった。
「あ、着いちゃった」
 目当てのコンビニの看板が見えた。
 大好きな人と偶然肩を並べることができた、棚ぼた的な朝のひと時もここでお終い。
(さっさと牛乳買って、帰ったら二度寝しよ)
 じゃあね、いってらっしゃいと彼を見送ろうとしたのだが、どういうわけだか隣の男も一緒にコンビニへ入る。
「あれ、リヴァイさんも買い物?」
「まあな」
 彼は勝手知ったるなんとやらでスイスイと店内を歩き、籠の中へぽんぽんと商品を放り込んでいく。
 ポテチ、チョコスナック、みたらし団子、それから牛乳と棒つきアイス。
「はあ? これから電車乗るのにアイス食べながら行くつもりですか?」
「違ぇよ」
 さっさとレジを通り会計まで済ませてしまった彼は、膨れたビニール袋をこちらにずいと突き出した。
「おら、これ持ってさっさと帰れ」
「は? え、これうちの?」
「牛乳はカルラさん。あとは春休みで暇してるお前のオヤツ」
「え、うわ、ほんと? いいの?」
 やったぁ、と素直に声をあげると、彼は器用に片眉をあげて満足そうにした。
「アイス溶けるから真っ直ぐ帰れよ」
「はぁい」
「今日はこれで我慢しろ」
「え?」
「明日はちゃんとしたプレートのついたケーキ買ってやるから」
「え、あ……」
 彼の台詞の意味が咀嚼できるまでに時間がかかってしまった。
「あ、えっと、その…………覚えてたの?」
279 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:57:09.13 d
 なんとなく罰が悪くなって、微妙に首を竦める。
 目の前の大人は、ますます満足そうにして唇を引いた。
「じゃあな、遅れるから俺はもう行くぞ」
「あっ、はい。うん、行ってらっしゃい。ありがとう」
 駅へ向うために一歩踏み出そうとした彼は、唐突に振り返る。
「いくら誕生日だからって、ガキの夜の外出は賛成できんな、エレン」
「あ、やっぱバレてましたか、あはは」
 気まずいのと気恥ずかしいのを誤魔化すように笑う。
 そんな俺を見て、彼は優しいのか意地悪なのかわからないような微笑を浮かべた。
「その代わり、日付が変わるころに電話してやる」
「!」
「いい子にしてろ、エレン」
 それだけを言い置くと、彼はもう颯爽とスーツの裾を翻して行ってしまった。
 取り残されたのは、茫然とする俺。
 それから、疼いて仕方ない恋心。
 大好きな背中が米粒になるまで見送りながら、俺は今晩ありったけの勇気を振り絞ることを心を決めていた。




 無防備な部屋着であんまりうろうろさせたくなかったので、わざとアイス買ってさっさと帰らせよう作戦をとったリヴァイさんなのでした。おしまい。




お〜わりっと(笑)カーーッゥッッペッ!!!
280 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:57:39.83 d
カウントダウン

by かみやゆすら


 俺の担任は人気がある。
 それも、「とても」という副詞がつくほどに。
 リヴァイ・アッカ―マンというその人は、強面だし、背は小さいし、言葉遣いも結構乱暴。
 風紀の担当でもあるので、軍隊式かよ、と思うほど厳しい指導をする時もある。
 なのに、だ。
 まず、情に篤い。面倒見がいい。生徒の話は最後まできっちり耳を傾けてくれるし、一方的な意見を押しつけたりすることはない。
 理由に納得がいけばそれなりに融通してくれる柔軟さも持ち、些細なことでも親身になってくれるから人望がある。
 下手に生徒に媚びたりもしない。
 逆に俺の背中を見ろ、という硬派なタイプでもないが、身を持って礼節を教えてくれる。
 静かで凛としたその姿勢は尊敬に値し、多くの学生の模範となっている。
 そういった人柄もさりとて、担当教科のわかりやすさにも定評がある。授業は明瞭明快。
 無駄な部分はできる限り削いで必要な個所だけを際立たせてくれるから、内容を整理しやすい。
 万が一テストで上手くいかなくても、救済措置を取ってくれる。追試も補講も丁寧だ。
「テストは点数がすべてじゃねえ。理解できていない自分を理解するためにある」
そう言って。
 正義感も強い。いや、どちらかというと陰湿や陰険、そういったものが嫌いらしい。
 学生の時分なんてなんでもカラッと清々しくあるべきだと公言し、陰ながらいじめや嫌がらせの類を見つけた時には、大きな声では言えないようなペナルティを科すという噂だ。
 女子に告白されているところを目撃したことがある。
 あれはバレンタインだったか。
 上級生の女子だったと思う。
 小さな赤い包みを彼に向けて差し出し、俯き加減にぼそぼそとなにかを告げていた。
 教科職員室の前で扉から半分身を出した彼は、彼女にひとつふたつ返事をしたように見えた。
 女子生徒からの包みは受け取らなかった。
 それから生徒相手にきっちりと頭を下げた。
 その光景はひどく印象的だった。
 すまない、と言ったのだろうか。それとも、ありがとうと言ったのか。
281 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:57:47.55 d
 なんにせよ、彼は人の心を弄んだり、手酷く傷つけるような人
 間ではないということがよくわかった。年齢が違っても、立場が違っても、きっと誠実に受け答えしてくれる人なのだ。
 そんな場面を見たしばらく後、新しい学年へ移るとともに彼は俺の担任になった。
 一年、二年と、彼が自分の教科担任だったことはなかった。エレンは委員会活動に精を出すようなタイプではなかったし、風紀で咎められるような覚えもなければ接点などないに等しい。校内で見かけても、ああいるな、くらいにしか思わなかったものだ。
 それが目の前の教壇に立っている。
 不思議なもんだな、と思ったのを覚えている。
 鼠色の冴えない背広が、その日に限ってはしゃっきりと見えた。いつ見ても着崩したりしないそれは、まるで彼の生き方を映したようで生真面目だ。
 四月の風が心地よく窓から吹き抜ける中、彼は黒板へ自分の名前を書いた。白く浮き上がったそれは、とても几帳面そうな右上がりの字だった。
 初日のホームルームが終わり、三々五々生徒たちがばらけた後で、エレンはこっそりスマホを取り出し、黒板に残された彼の名前を写真に収めた。
 どうしてそんなことをしたのか自分でもよくわからない。けれど、彼の名前があっさり塵と消えてしまうのが惜しかった。
 三年ともなると受験戦争が本格化する。特別に進学校なわけでもないけれど、いまどきはほとんどの人間が大学ないしは専門的な学校への進学を選ぶ。
 エレンも御多分に洩れず、中堅どころの大学に焦点を絞り、それなりの勉強をしていた。
 高い志なんてものはない。こうなりたいとかいう具体的な将来の夢もない。
 多分珍しくもないような会社へ就職し、どこにでもいるような平凡なサラリーマンになり、好きなことや嫌いなことやどうでもいいことをしたりしなかったりしつつも生きていくのだろうと思う。
 平凡で平坦、それでいい。安定していれば尚いい。
 行ってみたい場所へ旅行に出かけられる程度の余裕があると文句なしだ。
 そんな面白くもつまらなくもない将来のために、学校と予備校を行ったり来たりする。
 受験対策用の勉強は主に予備校で賄えるから、学校では息抜きも兼ねて比較的のんびり過ごす。
 そういう俺を「危機感がなさすぎる」と評する教員もいる。
 でも彼は、そういう俺を知っても変わらなかった。
282 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:58:17.99 d
 手元の書類にボールペンでなにかを書きこむ。面談終了のチェックなのかもしれない。
 もう終わるのか。短いな、と思った。
 もっと話したいわけじゃない。
 そもそも話したいことなんて思い浮かばない。
 でもなぜか、いまのこの時間を手放しがたかった。
「……なあ」
 それは幾分砕けた口調に聞こえた。彼の目はこちらを真っ直ぐ見据えている。感情は見えない。
「はい」
「将来の夢とか、聞いてもいいか」
 彼は走らせていたボールペンをかたりと置き、机の上でゆっくりと指を組んだ。
「特にありません」
「ねえのに大学行くのか」
「……ないから行くんじゃないですかね」
 俺の答えをどう受け取ったのかは知らないが、彼は少し考えるような素振りをして小さく頷いた。
「そうか……そうだな」
 さっきまで誰もいなかった廊下に、人の気配がした。次の順番を待つ誰かが来たのだ。
 途端に口をついた。
「先生は夢が叶ったから先生になってるんですか?」
 どうしても聞きたいと思っていたことではなかった。けれど、いま聞いてみたいという衝動に駆られた。
 彼は唐突な質問に驚きもせず、ふむと小さく頷いた。 
「夢だったわけじゃねえな」
「へえ」
「どうしてかって聞きたいのか?」
「いえ別に……いや、聞いてみたい気もするけど……」
 もしも言いたくなかったりするなら無理強いしたいわけじゃない。
 そう伝えたかったのに、上手く言えない。言葉を探す俺を見て、彼は少しだけ笑った。
283 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:58:32.31 d
「どっちなんだ」
「えっ、と……」
 どっちでも。消えそうな声で続ける。
「……お前、面白い奴だな」
 机の上に投げ出された書類。
 彼の指がその一部をなぞる。節の高い人差し指で。つうっと。
 それから彼はもう一度俺を見た。
「お前らの背中を見送るこの商売も、存外悪くねえといまは思ってる」
 もらえた答えはそれだけだった。
 それからすぐに、教室の引戸が薄く開いた。次の生徒が顔を出す。
「先生順番まだぁ? 俺、部活あるから早く終わらせてほしいんだけど」
「ああ、わかった。……じゃあイェーガー、残り一年頑張れよ」
「……はい」
 なにかに浮かされたように席を立つ。その後はもう振り返らずに教室を出た。
 彼の指がなぞっていたのは、俺の名前だった。


 エレン・イェーガーは人気がある。
 それも老若男女問わず、と言っていい。
 均整のとれたプロポーション。
 いまどきの若者らしく小顔で手足が長い。
 顔は言わずもがな。
 印象的な大きな瞳を輝かせれば、どんな女子たちだってあっという間に頬を染める。
 飛びぬけて勉強ができる方ではない。得意不得意に波がある。
 校内の図書館へはよく通っているようで、おそらく興味のあることだけを追求していく性格なのだろうと思う。
 運動はよくできる。身体能力は高い。
 持久走など、根気の必要なものは途中で飽きてしまうらしいが、球技や瞬発力の必要な陸上競技などは嬉々として取り組んでいるようだ。
 しかし部活には所属していない。
 運動部連中から引手数多だろうに、彼は一つのスポーツに集中して精を出すということには興味がないらしい。
284 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:59:04.04 d
 品行方正な模範学生というわけではない。かといって問題多き不良学生というわけでもない。
 遅刻は滅多にない。病欠も少ない。一度学校へ来れば早退もしないし、提出物などは比較的真面目に取り組んでいる。
 校則に反してアルバイトなどやっているのかどうかまではわからないが、特別荒れたところが見えないということは、プライベートもそれなりに充実しているのだろうと思う。
 友人は多い。見ている限り、よほど馬が合わないなどという理由がない限りは、どんなタイプの男子ともすぐに打ち解ける。
 いや男子だけに限らず、女子ともうまく付き合う。
 そして一度懐に入れた人間は大事にする。仲良くなると、友人関係は長く続くタイプらしい。
 別のクラスからよく彼を目当てに生徒がやってくる。
 昼飯を誘いにだったり、忘れた教材を借りにだったり。
 特によく見る顔が、アルミン・アルレルトとミカサ・アッカ―マン。
 どちらも以前、教科担任を持ったことがある。聞けば、エレン・イェーガーとは幼馴染みの三人組だという。
 なるほど、だから毎朝肩を並べて登校していたのかと合点がいった。
 たまに見かけると、その三人は中庭のベンチで昼食をとっていたりもした。
 アルミンは購買でパンを買うことが多いらしく、ミカサとエレンは弁当箱を持参していた。
 まるで子どものじゃれ合いのように、弁当の中身を交換したりもしているように見えた。
 取った取らないで頬を膨らませたり、いらないものを押しつけあったり。
285 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 04:59:21.78 d
 その光景を見るだけで、彼が愛された子どもなのだということが手に取るようにわかった。
 なんということはない、ごく普通の光景だ。
 高校という場所柄、そんなものは彼らだけに限った話ではない。
 それでも印象的だった。邪気なく笑う彼の顔が澄んでいたからかもしれない。
 彼らは受験生である。
 これまでなら楽しく長期休暇を過ごしていたのだろう夏が、一転して闘いの季節になる。
 受験は彼らの生活を一変させる。大半の生徒が目の色を変え、勉強優先の生活を始めることになるからだ。
 夏休みだからといって教員たちも暇になるわけでもない。
 授業はなくても臨時の講義はあったし、部活の指導もそれ以外の雑用も腐るほどある。
 八月のある日、教科指導室にある効きの悪いエアコンに辟易し、一時退避のつもりで購買部へと足を向けた。
 あそこには校内で唯一の自動販売機がある。冷えた緑茶が飲みたい気分だった。
 コンクリ打ちっぱなしの渡り廊下を歩いて、三つに分かれている校舎の南館へ向かう。
「先生」
 不意に後ろから呼ばれた。
「……イェーガー」
 今日ここにいるはずのない人間が、そこにいた。
 たったひとりで。人気のない廊下に佇んでいる。あのいつもの飄々とした顔をして。
「なんだ、来てたのか」
「もう帰るとこですけど」
「補講か?」
「いいえ」
 じゃあなんでここにいる。
 そう聞く前に、彼の方がスクールバッグを僅かに持ち上げてみせた。
「図書館に返し忘れてた本があって」
 呼び出しがかかってしまったのだと、決まり悪げに白状した。
「……忘れんな」
 月並みな言葉しか出てこなかった。正直言って、注意するほどのことでもない。
「すみません」
 はは、と声を漏らして笑う姿が眩しく見えた。真っ白な半袖のワイシャツから、健康的に日焼けした腕が伸びる。
 確か、彼は自転車通学だったと思い出す。
 それ以上、どんな会話をすればいいのかわからなくなった。
 受験勉強は順調かとか、夏バテをしていないかとか、世間話の類は浮かぶ。
 けれどそのどれもが彼との会話には似合わないような気がして、普段からたいして饒舌でもない口が、いつも以上に重くなった気がする。
286 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:00:11.95 d
「先生、俺ね」
 不自然な空白を埋めたのは、彼の方だった。
「つい最近、生まれて初めて思ったことがあるんですけど」
 切り出したのは自分のくせに、少し言いためらうように小首を傾げる。
 その仕草がこれまでの彼らしくなくて、子どもっぽいのか大人びているのかよくわからなくなる。
「……なんだ」
 聞いてやる。言外に促すと、彼は目尻に綺麗な皺を寄せた。
「夏休み、嫌いだなって」
 なにかが吹っ切れたみたいに、からりと笑う。真夏の向日葵のように。海面の煌めきのように。
 それがクソみたいに眩しくて、俺は微かに目を背けた。その時彼がどんな顔をしたのかはわからなかった。
 季節が過ぎる。緩やかに。
 進む時間はなにかを育む。枯れるなにかもあるだろうし、また芽生えるなにかもあるのだろうと思う。
 エレンは受験生という一年が収束を迎えようとしているのを感じていた。
 今年が終わる。年が明ければいよいよ入試当日がやってくる。
 すでに推薦で受験を終えたクラスメイトたちは、幾分すっきりとした顔をして机に向かっていた。
 終業式を、ついさっき終えた。
 ひとりひとりに成績表が配布された。
 その他の配布物も手元で束になっている。あとは担任が「終了する」と言えば、今年最後のホームルームは恙なく終わる。
 彼は教室内をぐるりと見渡し、
「今年は年末年始の連休も気が休まる時がねえだろうが、なによりまず体調に気をつけてすごせ」
 そう言って、教壇の上の名簿をぱたんと閉じた。
 自由の合図を感じ取った生徒たちは、途端に緩む。
 ガタガタと椅子を曳く音、後ろを振り向いてお喋りを始める声、そんなものが雑然と鳴りはじめる。
 今年が終わる。また長い休みに入る。
 彼が言ったように、入試はこれからが本番だ。呆けている時間はない。
 けれどどうしても、埋められないなにかが自分を蝕んでいた。
 カレンダーを思い浮かべる。
 明日から十日ほどの冬休みだ。十日か、とはっきり数字にしたところで微かな寒気を覚えた。
 慌ててマフラーを首に巻いた。
 気休めにしかならないとわかっていたけれど。
 これは物理的な寒さじゃない。もう知っている。
 あの夏季休暇で、俺は知ってしまった。
287 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:00:48.61 d
 たいした用もないのに学校に顔を出し、当てもなく校内を彷徨う自分を。
 そして自分にそうさせた感情の名前を。
 荷物を纏めて教室を出る者たちが現れるころ、廊下から自分を呼ぶ声が聞こえた。
「エレン!」
 半開きになった引戸から顔を見せたのはミカサ。その後ろにアルミンもいる。
「なんだよ」
 廊下へ出ると、ミカサは手にスマホを握り締めていた。
「エレン。急いで帰るのでなければ、ひとつお願いがある」
「お願い?」
「そう。」
 なにやら思いつめたような顔でずいと迫りくる。
「写真を撮って欲しい。一緒に」
「写真?」
「そう、エレンとアルミンと私で」
「いまさらそんなもん、なんに使うんだよ?」
 写真なんか、あらためて撮影しなくてもこれまでに何度も撮ってきた。フォルダを覗けばきっと幾枚も見つかるはず。
 そう思って首を傾げると、ミカサは真剣な顔で携帯を強く握りしめた。
「入試に向けてお守りにする」
「お守り?」
「そう。写真があれば、追い込みが辛くなっても癒される。エレンたちも頑張ってると思って私も頑張れる」
「ふうん」
 そんなもんかな、と言うと、アルミンが後ろで「気持ちの問題だよ」と笑った。
「ミカサは寂しいんだ。明日から冬休みでエレンに会えないから」
「アルミン違う、私はただお守りに」
 そうだ、そうじゃない、などと言い合いを始めたふたりを眺めながら、どっちでもいいんだけどと呆れはじめた時、タイミングよく背後の扉が開いた。
「先生……」
 教室から出てきたのは名簿を携えた彼。これから職員室に戻るのだろう。
「どうした、イェーガー。こんなところで」
「あ、えっと」
 説明が難しい。咄嗟に口を噤むと、彼の姿を見つけたアルミンが嬉々として声をかけた。
「あっ、リヴァイ先生! お願いがあるんですけど、シャッター切ってもらえません?」
「シャッター?」
「はい、この三人で写真撮りたくて」
 先生にそんなこと頼むなよ、と思った。どうせ断られる。
 遊んでないでさっさと帰れ、そう言われるのが関の山だと。
 けれどそんな予想を彼はあっさり裏切った。
「構わんが」
「やった!じゃ、これでお願いします」
 差し出されたミカサの携帯を受取り、慣れた手つきでカメラのピントを合わせる。
288 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:00:55.80 d
 それを見て、胸が僅かにもやっとした。生徒のこういう頼みに、きっと彼は慣れている。
「三人ちゃんと入れてくださいね。受験のお守りにするんですから。ほらミカサ、エレン、早く並んで」
 促されるまま窓を背にして立つ。両側からミカサとアルミンに挟まれ、ぎゅうと身体を押しつけられた。
 彼はカメラのフレームに三人を入れたのだろう。画面を見ながら角度を変えたりしているように見えた。
「あ、もしかして逆光だったりして?」
「いや、大丈夫だ。……撮るぞ」
 パシャリと電子音が鳴る。
「そのまま続けて何枚か撮ってほしい。全部保存で構わない」
 ミカサの勝手な言い分にも気分を害することなく、「わかった」とシャッターを切り続ける。
 撮っては保存、を繰り返しながら、どことなく彼が楽しそうに見えた。
「団子になられるとクソみたいに可愛いな、お前ら」
 あとでこの写真俺にも送れ、そう言いながら薄く笑っている。
「先生、なんかいつもとキャラ違いません?」
 アルミンが茶化すと、彼は至極真面目な顔を見せた。
「馬鹿言え。俺は元々けっこう生徒を可愛いと思ってる。特に担当したことがある奴らは余計に」
「僕たちの教科担任だったの覚えてるんですか?」
「当たり前だろ。お前もミカサも優秀な生徒だった。入試も頑張れよ」
 これがお守りになるというなら写真くらいいつでも撮ってやるから、そう続いた台詞が決定打になった。
 もう顔をあげることができなくなった。作り笑いもダメだ。
 駄目だ。駄目になってしまった。
 自分の欲求がはっきり形になった。いまそれが見えた。
(この人の特別になりたいだなんて……)
 馬鹿だ。阿呆だ。つける薬もない。
 どこからどう見ても、なにをどうやって考えても、俺は大勢いる生徒の中のひとり。
 それ以外でもそれ以下でもなく、一対数十の構図の中、群衆に埋没するチンケなひとり。
289 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:01:21.48 d
 そんなことはわかっている。
 わかっているのに、幼馴染たちにまで嫉妬した自分が、どうしようもなく惨めに思えた。
 もう平気な顔なんかできはしなかった。
「……クソ」
 俯いて、消えそうに微かな声で漏らす。
「エレン? ……どうかした?」
 異変に気づいたミカサが訝る。首元のマフラーに顔を埋めるようにして、ふる、と首を振った。
「……もういいだろ、俺トイレ行きたいんだ」
「そうだったの、引きとめてごめん」
 絡められていた腕が離れる。それを合図に踵を返した。
 ミカサもアルミンも俺を止めなかった。それが唯一の救いだった。
 振り返らず、一目散に廊下を歩く。言い訳に使ったトイレを通り過ぎても足を止めることはない。
 あの場所から離れて冷静になりたかった。
 長期休暇が嫌だと、初めて思ったあの夏。夏休みが長すぎるなんて、生まれて初めて感じた。カレンダーを眺めながら、次に学校へ行くのはなんて指折り数え、どうして学校へ行きたいのかに気づいた時はひとり頭を抱えた。
 休暇なんかクソだと開き直り、勝手に登校したあの日。幾日かぶりに彼の顔を見たら、その日までのもやもやした気持ちなんてすべて綺麗に吹き飛んだ。
 先生。
 リヴァイ先生。
 他に大勢いる生徒のひとりじゃ嫌だ。
 彼の目に映る、たったひとりになりたい。
 シンプルな心の欲求が浮かび上がる。浮かび上がったそれに、俺は自分で答えを出して呟いた。
「そんなの無理だって……わかってる」
「なにが無理なんだ?」
「ッ?!」
 文字通り、飛び上がった。
 踵も爪先も、地球から一瞬離れた。それくらい驚いた。
 唐突に聞こえた声。振り向いたそこには、彼が立っていた。
 ついさっき、シャッターを切っていたときと変わらない顔で。
 追いかけてきたのだろうか。いつの間に。
「……」
「……なんだ、その顔は」
「……」
「そっちにはもうトイレねえぞ」
「……」
「漏れそうなんじゃねえのか」
「……」
「なんか言え」
 固まったまま動けなくなった俺を興味深げに眺めている。
「なんで……ここに……?」
「さあ、なんでだと思う?」
290 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:01:28.75 d
 質問に質問で返すのは意地悪だ。
 そう思って睨むと、彼は可笑しそうに片眉を跳ね上げた。
「で、なにが無理なんだ?」
「……先生には関係ない」
「そうか」
 拒絶したくせに、あっさりと引いてしまわれると、少し寂しい。
 そんな自分がつくづく嫌になる。俺はいつの間にこんな強欲な人間になってしまったのだろう。
 そんな自己嫌悪にまみれているこちらを知ってか知らずか、彼はおもむろにジャケットの内ポケットから携帯を取り出した。
「なあ、イェーガー。……俺と写真撮らねえか」
「は?」
「携帯で。さっきみたいに」
「誰が?」
「俺とお前が」
「なんで」
 混乱していた。
 何故この人がこんなことを言うのか。
 目的がわからなくて動揺する俺を、彼は有無を言わさずに引き寄せた。自分で聞いたくせに、返事も待たないで。
「わ、ちょ」
 強引に肩を抱かれる。少し身長差があるから、肩を組まれるというよりは二の腕をがっちり引き寄せられるという感じに。
「え、あの」
「撮るぞ」
 彼は器用に、並んだ俺たちを自撮りした。パシャ、パシャ、と何度か電子音が続けて鳴る。
「笑え」
「そんな、無理」
「なんで無理だ。笑え。お守りにすんだから」
「え?」
 少なくとも十回以上はパシャパシャとやったあとで、彼はようやく俺を解放した。すぐに携帯を覗き、写真を確認している。
「チッ、お前一枚も笑ってねえ」
「あ、当たり前ですよ、あんな突然……」
「お前の携帯だせ」
「え?」
「ほら、早く」
「は? はあ……」
 言われた通りに差し出すと、赤外線を使い勝手に写真を送りつけられた。たったいま撮ったふたりの写真だ。
291 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:01:56.43 d
 彼と並んで写っている自分が、鳩が豆鉄砲を食らったような、という諺そのものの顔をしていた。
 赤面していなくて良かった、と一番にそう思った。
 突然こんなことをされて動揺しないほどまだ胆力はない。
 体温を感じられるほど近くにいて、平静を装えただけでもよくやったほうだと思う。
 どうして彼が自分にこんなことをしたのかがわからないが、必要以上に縮まってしまった彼との距離にまだ混乱していた。
「俺、ミカサじゃないし……受験のお守りとか必要ないんですけど……第一、先生の写真がお守りになるとかそんな……」
 手に戻ってきた小さな電子機器を、乱暴にズボンへ突っ込む。
 そのままぎゅうと握りしめ、これじゃまるで縋っているみたいだと手に汗を掻く。
 彼は自分の携帯を胸ポケットに仕舞い、大切そうにぽんぽんと叩いて見せた。
 そして目を細めた。それは嬉しそうに。
「馬鹿だな。誰がお前のお守りだって言った」
「え?」
「俺のだ」
「……」
「明日から冬休みでエレンに会えないから」
 ついさっきどこかで聞いた台詞が耳に入る。
 入った台詞を脳みそが理解するまで数秒かかる。
 いま。
 なんと言った。
 この人は。
 脳まで痺れたような気がした。
 呆然と立ち尽くしている間に、彼はすっと背を向ける。
「じゃあな。気をつけて帰れよ」
 なんて言いながらあっさりと。
 行ってしまう。
 俺の気持ちをここへ置いたまま。
 そんな無責任な、と思い至ったところで足が動いた。
「……っ、せんせ!!」
 追いかけないという選択肢はなかった。
 


※作中で書ききれませんでしたが、リヴァイさんだけ記憶ありの設定だったりしました!
タイトルの冒頭には「卒業式までの」とか「エレンの記憶が戻るまでの」など付けていただけるといいかと思います。おしまい!
292 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:02:03.07 d
 目を覚ましたその瞬間が悪夢の始まり。
 なんてありふれ得た話だろうか。
 漫画や映画、小説なんかで使い果たされた場面転換は、それでもエレンに起きた現実に他ならなかった。

「……ッ……?」

 身体が酷く気怠い。
 重い瞼を開こうとして、ひくひくと震える視界が霞んでいた。
 身を捩るのも億劫だ。
 両腕が痺れている感覚があって拳を握ってみたが、覚醒したばかりだからだろうか上手く力が入らない。

「ぅ」

 早く起きなければ。
 支度して、家を出て。
 でなければ遅刻してしまう。
 飛行機に。

「……え……?」

 だれきった身体を鞭打ち痺れた腕を寄せる。
 万歳のような体勢で寝ていたのが痺れの原因だったようだ。
 しかし、かしゃんと金属音がして、それだけ。
 何かに引っ張られているかのように、腕を視界に入れることができなかった。
 否、そもそも視界が既におかしかった。

(……夜……?)

 日中にしてはやけに暗い。
 天井の角すら目視が難しいほどの暗さ。
 その頃になって漸く意識が明瞭になっていく。
 もう一度頭上の両手を下げようと肘を曲げたが、今度ははっきりとした耳障りな金属音と手首に感じる不自然な冷たさを自覚した。

「ッ……は……?」

 力が戻ってきた腕を引っ張ればガチャ、ガチャと音が響く。
 頭上で何かに手首を拘束されている。それ以前に此処は何処だ。
 暗闇の中で視界は殆ど真っ暗だが、よく馴染んでいる筈の空気感や第六感で覚える雰囲気が間違いなく自分の部屋ではないと証明していた。
 どうしてこんな状況に、と思った瞬間。

(……嘘だ……)

 リヴァイさん?と、掠れた小さな声が口をつく。
 これが眠気だと理解することもままならないような強烈な睡魔。
 遠くなる意識の中で自分に語り掛ける声。
 そうだ、意識を失う時にいたのは自宅ではなくカフェ、一緒に居たのは彼だ。
293 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:02:41.73 d
 尊敬していたし感謝もしていた。
 そして信頼していたのだ。
 少なくても自分は、彼に対して猟奇的な感情を抱いたことなどない。
 しかし彼は違ったのだ。

「ッ放して、ください……家に帰る」
「駄目だ。帰さない」
「ふざけるな!」

 ひときわ大きく金属音が鳴り響いた。
 ベッドのパイプと擦れ合った不快な音がガシャガシャと騒がしく鳴り響く。
 何でも良いから蹴り上げてやろうとがむしゃらに足を振り上げたがしかし、直ぐに引っ張られて大した動作も出来ないまま蒲団へと落ちる。

「ッ……くそ……!」

 手首だけではなく足首も拘束されていたと気付いたのはその時だった。
 黒いベルトと鎖を合わせたような悪趣味な足枷が自分の両足首に施され、鎖の部分はベッドのフッドボードにあたる箇所のパイプに通され動きを制限されている。

「あんた、何考えてんだ……!」

 いよいよ危機感が耐え切れないくらいに大きくなってきて、流れる冷や汗と身体の震えが止まらない。
 呼吸まで荒げながらリヴァイを瞠目していると、彼は大きな鋏を取り出し躊躇なく自分へと近付けてきた。
 いっそのこと気絶したい気分で声を上げる。

「ひ、やだ!嫌だ!!誰か!!」
「……おい、暴れるなって言っただろ……怪我するぞ」
「ッ……!?っ……ッ……!」

 着ていたティーシャツの首許へ鋏を刺し込まれ、裾へ向けてしゅる、と状況に似つかわしくない滑らかな音を立てて布が割かれていく。
 あっと言う間に無残な前開きにされて胸や腹が露わになる。
 エレンは青褪めてそれを見下ろした。

「ッ……気に入ってたのに……」
「……お前面白いこと言うな」

 思ったよりも落ち着いてるみてぇだな。
 と、何故か安心したかのような声色で、再び鋏が入れられた。
 再び首から次は袖へと鋏が入れられ、金属の冷たさが肌を撫でるその都度びくつくのを抑えられない。
 手首を拘束されていても問題ないくらいまで服を切り刻まれて、ボロになってしまったそれをついに剥ぎ取られる。
 終わったところで生きた心地などしない
294 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:02:51.19 d
 最初に怪我を心配されていたことも相俟って、これから何をされるのか全く見当がつかなかった。

「ひぃ……!」
「綺麗なもんだな……想像してた以上だ」

 鋏を置いたリヴァイの手がおもむろに腹部を撫で上げた。
 緊張と警戒で過敏になった神経を逆なでされ、つま先から駆け上がるような悪寒に呼吸が引きつる。
 咄嗟に身を捩って回避しようにも制限された動きの中では限界があり、リヴァイが手を引くこともなかった。

「やめっ……ぅ」
「なあ……エレン」

 不本意にも撫でられる感触に慣れてきてしまうまで執拗に腹を滑っていた手指があばらへと広がり、臓腑が震えるような感覚に呻く。
 不意の呼び掛けに、獰猛な動物が威嚇するような目つきで睨みあげて応えると、やはりリヴァイは気にすることもなく言葉を続けた。

「怖がらなくて良い。怪我させたい訳じゃない」
「ッ……なら、放……」
「駄目」
「何考えてんですか…!」
「お前を俺のものにしたい」

 呼吸が止まった。
 漸く答えらしい答えを聞けたと思えば、彼は益々意味不明なことを口にする。

「……はあ?」

 困惑が酷い寒気を促す。
 特定の何かを自分のものにしたい。
 それは人間ならば少なからず持っている欲求の一つだろう。
 しかしリヴァイは特定の何かが自分だと言う。
 意味が分からなかった。否。

「ッ……ぅわ…!」

 リヴァイがエレンの平らな胸を何度も撫で、ベッドへ乗り上げるまま肩口へ顔を埋められる。
 意味が分からないのではなくて、考えたくなかったのだ。
 リヴァイが自分に何をしようとしているのか。
 猟奇的で残虐な行為よりも、それは非現実的に感じた。
 この期に及んで、まさかと思いたかったし、嘘だと思いたかった。

「さ、触るな……!」

 リヴァイは自分を辱めようとしているのだ。

「どんな目でお前のことを見てたか分かるか」
「ッ……放せ、変態……!」
「これからは幾らでもそれを分からせてやれる」
「ッ嫌、だ……嫌だ」
295 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:03:19.91 d
 異常だ。狂ってる。
 許される訳のないことを難なくしてみせたリヴァイと言う男が、恐ろしくて仕方ない。
 しつこいほどに胸板を撫でていた手が淡い色味の乳首へと触れる。
 乳輪を小さくなぞった指先が未だ柔らかい中心を押し潰すように埋め込まれた。
 そのまま小刻みに動かされ、少しずつしこってきた乳頭を摘みあげられる。

「リヴァ…ぃ、さん……放して下さい……っ。やめてくれたら、誰にも言いませんから……っ」

 リヴァイは答えない。
 片手でエレンの乳首をくりくりとくびりながら、肩口や鎖骨、首筋の肌の感触を唇で堪能している。
 近過ぎる距離で感じる熱く荒い呼吸に、手首や足首から響く金属音が終始鳴りやまない。
 女にするような行為を、男である自分が男にされている。
 それだけで愕然とするほど衝撃的なのに、相手はリヴァイだ。
 考えられない。
 考えられないようなことを今、現実として自分の身体に思い知らされている。

「っ……放せ」

 エレンは泣いていた。
 自分の身に起こっていることへの恐怖心、リヴァイからの裏切りとも言える行為。
 見開いた大きな瞳に涙の幕を張らせる。
 リヴァイが一度首筋を強く吸って顔を上げた。
 涙が浮かぶエレンの目尻を指先で撫でる。
 眼前に見たリヴァイの瞳に自分が映っていて、その中にまで閉じ込められてしまったかのような錯覚。

「どうした……?痛いことはしてないだろ」
「ッ、嫌な……こと……してるじゃないですか……っ」
「大丈夫だ……直ぐに良くなる」
「な、に……」

 喰いつかれる、と思った時には唇同士が重なっていた。
 つくづく信じられない。

「ッ……!」

 リヴァイが反射的に顔を背け眉間へ皺を寄せる。
 その唇は切れ、血が滲んでいた。

「触るなっ変態!!」

 エレンが咄嗟に噛み付いたのだ。
 口腔の中に残る僅かな血の味すら不快で、ぎりぎりと威嚇する。
 噛まれた激情のまま殴りつけるなり蹴りつけるなり、好きにすれば良い。
296 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:03:43.66 d
 されるがまま好き勝手に身体を触られるくらいならば、そちらの方が幾分もマシだ。なのに。

「はっ……」

 リヴァイは零すように笑ったのだ。
 嘲笑や馬鹿にするようなそれではなく、ただ心底嬉しそうに。
 リヴァイのその表情を見て、エレンは自分の行動の無意味さに絶望するしかなかった。

「本当に可愛いな……お前は」

 絶句していると、リヴァイは血に濡れた自らの唇を舐め、顔を下げた。
 エレンの胸元へその唇を押し付け、ちゅ、ちゅと肌を啄ばんでいく。
 身を捩って嫌がっても押さえつけられ、先程まで指で弄られていた乳首を食まれる。

「やめっ……ぅ……」

 やめろ離せ変態。
 そう叫ぼうとした口はくぐもった呻きを零したまま引き結ばれる。
 指で弄られていた段階では不快感ばかりだったが、それでも神経が少なからず開発されていたのか唇の感触や舌のぬめりを鋭敏に伝えてきたのだ。

「……ッ……、……く」

 もう片方の乳首は指で。
 つんと主張するしこりを小刻みに弾かれては摘ままれ、緩く引きながら指の中で擦られる。
 ぴくりと反応してしまう身体は抑えようもなく、痛みともくすぐったさとも言えない奇妙な感覚が背筋を撫でた。

「ッ……ふ」

 舐め転がされた乳首を乳輪ごと吸い上げられ、口腔の中で舌が絡められる。
 時折そっと歯を立てられびくりと反応した感覚を確かめるように、舌を強く押し付け舐め上げられた。

「ぁ……っ、……あ!?」

 無意識に零れた甘い吐息に動揺する。
 顔の温度が急激に上がっていくのを感じて、繋がれた儘の腕へ誤魔化すように擦り付けた。

「……っ……」

 リヴァイと目が遭ってしまった。
 悔しまぎれに眉間を寄せた。

「……気持ち良いみたいだな」
「……違う」
「弄られるの悦いんだろ」
「そんな訳」

 ない、と言い切る前にきゅっと乳首を摘み上げられた。
 ぅあ、と不意をつかれた声が出てしまって、更に悔しさがこみ上げた。
297 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:03:59.89 d
 違う、違うと自分へ言い聞かせるように必死に首を振っていると、リヴァイの手が下腹部に伸びてくる。
 硬いジーンズの上から股間を撫で上げられて、反射的に身体が強張った。

「……嫌だっ」

 リヴァイはエレンの脚の上に乗り上げてジーンズのベルトとジッパーを外し、腰許を緩め始める。
 蹴り上げようとして脚に力を入れても、関節に掛かるリヴァイの重みで儘ならない。
 一息にズボンと下着を膝の辺りまでおろされ、エレンの萎縮した性器が露わになった。

「ッ……!」

 強制的に晒された恥部を見られ、羞恥心に顔を赤らめながら奥歯を噛み締める。
 全裸に近い体勢で足も手も拘束されていると言う状況は、余りにも情けない。
 恨めし気にリヴァイを睨み付けると、彼は。

「え……?」

 萎えたペニスを握り込みそこへ、顔を埋めた。

「ぅ、そ……やめッ……止めて下さい……!」

 制止の声も意味をなさず、リヴァイが性器の先端に口付ける。
 一度離して幹の根元へ鼻先を埋め、すう、と嗅ぐような仕草を見せ付けられた。
 更に羞恥を煽られ、信じられない物を見るような心境でその様から目が離せない。

「ひっ……ぃ」

 根元からゆっくりと舐め上げられ、経験したことのない感覚に肌が粟立つ。
 舌の跡を広げるように幹全体を舐られ、その舌先が裏筋をちろちろと刺激する。
 敏感な性器を弄られては否が応にも息が荒み、最初萎縮していたそこは少しずつ頭を擡げ始めていた。

「はー…ッ、ぁ、はあ……!」
「エレン……暴れるなよ?」
「っ……?」
「噛んじまうからな」

 噛む、との言葉に怯えて震えたが、亀頭をぱくりと咥え込まれて何も言えなくなってしまった。
 雁首を唇で引っ掛けられて、熱い口腔の中で舌によって転がされているのだろう。
 咥えられたことでリヴァイの舌がどう動いているのかは視覚的に分からなくても、口腔の中で刺激される亀頭ははっきりと感覚を伝えてくるのだから知らぬふりもできない。
 荒らかな呼気に甘さが含んでしまうのも抑えきれない。
298 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:04:18.35 d
 亀頭を丁寧に愛撫した口が幹の全てを咥え込んで、何度か上下に扱いた後ぴたりと止まった。
 もっと、と駄々を捏ねるように腰が勝手に動いてしまうのも本能的なもので、不可避だ。

「はぁ、あ、は……ぁ……え……?」

 エレンのがむしゃらな腰の動きに合わせて舌を絡ませていたリヴァイが、突然性器から口を放してしまった。
 夢中になって昇り詰めようとしていた時だったので、それを取り逃がした焦燥と、行為に没頭しかけていた自分への失望に愕然とする。

「イきたいか?」 

 そんなの決まっている。
 イきたい。
 だがリヴァイにそれを請うなど冗談じゃない。
 理性と本能の狭間で放ったらかしにされている欲望に小さく震えた。
 リヴァイは、唇を噛み締めたまま一向に言葉にしないエレンの性器の先端をぴんと弾く。
 ひん、と情けない声が零れた。

「エレン……?」

 ぞっとするほど優し気な声。
 一度も肉体的な苦痛を強いられていない現状で、性的欲求を膨らませられたまま終わりを見失ってしまっている今、それは酷く甘く聞こえた。
 ただ我の強すぎるプライドがぎりぎりの所でエレンを食い止めている。

「……強情だな」

 はあ、と呆れたように吐いた息は、それでも何処か嬉し気だ。
 リヴァイはエレンの脚の上から退くと、足首の拘束具を片方外した。
 ここぞとばかりに暴れようとしたが、上手く組み押さえられて内股に口付けられる。
299 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:04:45.73 d
「ッ、ぅ……へんたい」
「……可愛いな」
「!……ちょ、何」

 両脚の膝裏へ手を差し込まれ、股を開かされた。
 膝が胸に着くほど押さえつけられリヴァイの前に恥ずかしい部分を全て晒す体勢になる。

「ッ……嫌だ、嫌だ」
「ちゃんとイかせてやる」
「も……やだ」
「……暴れるなよ……痛いようにはしたくない」

 再びペニスを握られた。
 ゆっくりと上下に扱かれる。
 赤ん坊がオシメを変える時のような幼稚な体勢を強いられ、幼稚とは到底言えない淫猥な行為を施されている。
 それが眩暈を覚えるような背徳感を生んで、堪らなかった。
 他にどうにも例えようがない。
 性器の幹をもどかしいほど丁寧に擦られ、小ぶりながらも若々しく張った陰嚢を揉まれた。

「……良い子だな、エレン」

 大人しくリヴァイの手を甘受しているエレンに、機嫌よく言葉が掛けられる。 
「は……は……ぁ」

 左足首に残った足枷のベルトから、外された方のベルトが鎖と共にゆらゆら揺れている。
 視界の隅にそれを認めながら到底イかせる気などないような手に、現実逃避しながらも翻弄されていく自分を見ぬふりも出来ない。

(ちがう)

 言いなりになっている訳じゃない。
 受け入れている訳じゃない。
 男にとって一番大事な急所を好きに弄ばれて抵抗できないだけだ。
 そう言い聞かせていなければ自分を見失ってしまいそうだった。
 その時、会陰を擽るように撫でていたリヴァイの指が更に降下し、硬く窄まった菊座の縁をくるくると撫でた。

「!?……そこ、」

 皺をひとつひとつなぞるように伝う指先。体験したことのない猛烈なむず痒さに腰が暴れる。
 そこは、嫌だ。

「駄目、それだけはッ、嫌です……!」

 リヴァイは自分を辱めようとしている。
 性的対象として見ている。
 それが分かれば、そのような箇所で何をしようとしているのかなど嫌でも分かる。
 興味が薄い類いでエレンの身体は無垢だったが、少ないながらに知識くらいはあったのだ。
300 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:05:00.87 d
「……お前を初めて見た時から、だ」
「?」
「……ずっと考えてた」

 埋められる指が深くなっていく。
 途中で潤いを足しながら奥へと進み、自分でさえ分からない身体の中を他人に触られている。
 男としては認めたくない状況だ。

「ひっ」
「お前を俺のものにできたら」
「ッ……」
「それ以上のことはない」

 二本目の指が身体の内側を拡げ始めた。
 耳を塞ぎたくなるような粘着質な水音が激しさを増しているのは、リヴァイの指の出し入れが早くなってきたからだ。
 エレンは耐え切れず声を上げた。
 呻きにさえ力が入らず、苦しく悶える女のような声が呼気に混じった。

「なあ、……、エレン」

 目を細め、恍惚としながら指の活塞を続ける。
 指の動きを自分の腰と性器に見立てているのだろうか、彼の声は酷く上擦っていた。

「俺が何回、お前に、こうするのを想像して」
「ぅあっ、はッ、ふ、ぅぐ……!」
「一人で抜いたと思う」
「知らな、ぁ、あ?…ッ…あああ!」

 その時リヴァイの指が一点を突いた。エレンは痙攣のような反射を起こして身体を大きく波打たせる。

「ここか?」

 見過ごされることは当然なく、内壁を蹂躙していた二本の指がそこを集中して擦り始めた。
 自分の感覚に理解も追いついていない状況で、それが快感なのか痛みなのかも分からないまま身体だけが激しく反応を示すのが恐ろしい。

「やぁっ……やだぁ!ぁあッ……!」
「……時間は掛からなさそうだな」
「あっァ!な、何っ、これ……なに」
「悦さそうだ」

 違う。気持ち良くなんかない。
 がむしゃらに首を振りながらも、震える性器の起立が萎えることはなかった。
 先走りを腹に垂らし絶頂を求めて頭を赤く腫らせている。

「はぁ、ぁ、あっ」

 初めて知った体内から得るこの感覚が、快感であることを否定できないほど反応してしまう。
 絶叫や呻きに近かった声が、自分のものではないような甘さを含み始めている。
301 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:05:33.36 d
 ぐちゅぐちゅと直腸を行き来する指がそこを擦る度に、喉から押し出されてしまう声が止められない。
 視界にばちばちと火花が散っていた。
 快感を自覚し始めたエレンに目敏く気付いたリヴァイは、益々その指を激しくした。

「あ、ぐっ……」

 急激に感覚が膨張していく。
 身体の中で渦を巻きながらその瞬間を本能が待ち望む。
 今まで体験したことのない大きな波が直ぐそこまできているのが分かった。

(い、いま、イッたら)

 間違いなく、気持ちが良い。
 それこそ今までに味わったことのないような、凄い感覚で。

「ぁ、イ、いく……ぅ、いきたい……!」

 卑猥な水音、両手を戒めている錠の鎖。
 室内に籠る異常な音の中でエレンの声がひときわ響き渡る。

「ああ、いいぞ……イけそうか?」

 エレンは首を何度も横に振った。
 汗と涙が飛び散る。
 今にも破裂して飛び散ってしまいそうな大きな快感も、直腸だけの刺激で極まることが出来るほど身体は慣れていない。
 リヴァイはそうか、と頷いた。しかし。

「参ったな……どうすればイける?」

 そんなことを口にしたのだ。

「!?ッ……どうっ……て」

 同じ男ならば態々聞かなくても分かるであろうことを、まるで想像も出来ないとでも言うように。
 しかしエレンだけが切羽詰まっている状況で、それに対して極端に不満を漏らす余裕もなかった。
 限界まで膨張したきり開放する機会もなく炙られ続けた吐精欲で、それ以外のことなんて考えられない。
 この男の思うつぼだと言うことも、到底考えに至らない。
302 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:05:41.07 d
「……教えてくれ、エレン……どうすればお前を気持ち良く出来る……?」

 皮切りになった。そうだ、リヴァイはずっとそう言っていたじゃないか。
 自分に気持ち良いことしかしない。彼ならばイかせてくれる。

「し、扱いて……じゃないと、イけない……!」
「何処を」
「ッ、ちんこ、扱いて……触って下さいっ」

 恥を捨てた懇願は受けいれられる。
 高めるだけ高めて放置されていた性器を、リヴァイが握り込んだのだ。
 切なく震えていたそこを掌の中に納められた安堵感と、望んだ通り扱かれる快感に眩暈がする。

「あッはッ、ふぁっ……ン、んぅ」
「……どうする?」
「っ……へ……?……ぁぅ」
「ケツじゃイけねえんだろ……指、抜いちまうか」

 一度深く挿し込まれた指を、ゆっくりと第一関節の辺りまで抜いた。

「だ、ダメ……!」

 エレンは声を上げた。
 リヴァイの指がぴたりと止まる。

「抜いちゃ、だめ」

 自分が何を言っているのかも自覚できていない。
 自分では制御しきれない大きな快楽の波を手放したくない、その一心だった。
 リヴァイが抜こうとしていた指を再び少し深く埋める。
 そこで先ほど見付けられた悦処をかりかりと擦られ、エレンは大きく喘いだ。

「んぁあう……っ」
「抜かなくて良いのか」
「ぃ、いから……そのまま……ッ」
「……そのまま?」
「イき……たい……イきたい……!」
「はっ……」
「おねが……ッ……リヴァイさんっ……イかせて」

 性器を扱くリヴァイの手が激しくなった。
 直腸への刺激も間断なく続けられ、最早だらしなく開きっぱなしの口から出るのは飲み込み損ねた唾液と嬌声。

(クる……凄い、のが)

 未経験の大きな快楽に対する恐怖と期待。
 中々開放させて貰えず肉体を苛むばかりだった焦燥と共に、リヴァイの手によって昇り詰めていく。

「あーっ……あっあ!ひぃ……ッ――ぁああああ!」

 遂に絶頂を迎えた。
 全身を強張らせた状態で痙攣を繰り返しながら、一度の射精にしては多すぎる量を流し続ける。
 身体がひっくり返るような衝撃は長い絶頂として続き出し切って脱力へ至るまでに、エレンは気を失ってしまった。
303 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:06:09.19 d
「ン……ん、ぅ……う……?」
 どれほど気をやっていたのだろうか。
 感覚としては然して時間が経っていない気もするが、余りの脱力感に全く力が入らない。
 身体を捩ろうとするが腰下は押さえ付けられているようだった。
 手首の拘束も未だそのまま。

「は……ぁ」

 朦朧としながら自らの下肢へ目を落とした。
 自ら放った精液に汚れる腹と、くたりと力を失っている性器が目に入り、それから。

「……起きたのか。丁度良かった」

 広げられた両脚の間に、服を全て脱ぎ去ったリヴァイが居た。

「……え……?」

 彼はその手に勃起した性器を握り、ワセリンと体液で濡れそぼった菊座へと宛がう。
 弄られ尽くしたそこへ雄々しく張った亀頭を擦り付けられ、指とは比べようもない熱さに縁がひくりと反応する。

「今から挿れてやるからな……ちゃんと、見ておけ」
                                           




続きを読みたければしっかり金払って買って読んでね!(笑)
304 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:06:18.08 d
 まだ寒さの残る新春の季節である。
 エレンの話をつまみに酒を飲み、ほろ酔いになりながら居酒屋を出た。
 いつもは話が弾みすぎて終電ギリギリに出る二人が、今日ばかりは早めに店を出た。
 居酒屋の前で「ごちそうさまでした」と笑顔でいい、駅の方向へ向かうエレンのコートの袖を引っ張った。
「うちにこないか?」
 リヴァイの問いかけに、エレンは顔を真赤にして小さく頷いた。
 リヴァイは初めてエレンを自宅に誘った。薄暗い住宅街を二人で手を繋いで歩く。
「まだ寒いですね」
「…そうだな。まだコートは手放せない」
 リヴァイのコートの袖口に、二人の手が潜り込んでいる。
 エレンは時々周囲を見回して誰もいないことを確認すると、嬉しそうに微笑んで、ぎゅうと強くリヴァイの手を握る。
 エレンの赤らんだ顔を見てリヴァイもまた強く手を握り返した。
 酔いを覚ますという方便で、二人は二駅分手を繋いだまま暗闇の中を歩いた。
 数十分の逢引に会話はなく、二人の間には繋げた手と同じような温かい沈黙が流れていた。
 リヴァイが家の鍵を取り出して、玄関のドアを開けるのをエレンはそわそわと落ち着きなく眺めていた。
「もう引き返せないが、いいか?」
「……だ、大丈夫、です!」
 エレンは真赤な顔をごまかすように、手の甲でぐしぐしと鼻先を拭い、そのように言う。
305 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:06:46.30 d
 リヴァイはフッと笑ってエレンの頭をなでた。            
「じゃあ入れ」
 ドアを大きく開き、エレンを手招く。
「し、失礼します…」
 二人の手は、まだしっかりと握られたままだ。
 まだ寒さの残る春先だというのに、二人の指先はぽかぽかと温まっていた。
「ここが、リヴァイさんの、家…」
 エレンは呆然と、リヴァイの家の中を眺めた。
 口を開けっ放しにしながら天井を見上げるエレンを見ながら、玄関のドアの鍵を後ろ手に閉める。
 もうただでは、こいつを朝まで帰さない。
 リヴァイは錠を落とすと同時にそう思った。
「エレン」
 家に上がったまま、廊下で棒立ちになっているエレンを胸に抱き寄せて、唇を押し付ける。
 がたんっと二人の足が靴箱にぶつかった。
 エレンが抱えたバッグが廊下に落ちる。リヴァイのバッグも、同じように落ちた。
「…いいか?」
 エレンは顔を逸らしながら小さく頷いた。壊れたのかと思うほど、バクバクしている心臓の割に、優しい声で聞けたと思う。エレンの身体を攫うように抱き上げて、雪崩れ込むように寝室に飛び込んだ。
「リヴァイさん」
 ベッドマットに足を掬われたエレンは背中からベッドの上に倒れ、リヴァイはその上に乗り上がった。
「優しくする。気持ちよくする。抱かせてくれエレン」
 
 そうしてリヴァイは、エレンを抱いた。
 ***

 リヴァイは仕事のデスクに座りながら、重たいため息をついた。
『予定があるので、今日は無理です』
 仕事の休憩中、エレンから来たメールにリヴァイは頭を悩ませていた。
食事の誘いをしたのだが、つれなく断られてしまった。
 エレンに断られるのは今日に限る話ではなく、その度にリヴァイのため息は重たさを増す。
 先週、初めて二人で夜を過ごしてから、丸三日エレンとは連絡がつかなくなった。
 エレンを置いて家に出たあと、何度かエレンに電話したが、彼が出ることはなかった。
 心配になったリヴァイは仕事を終えて、すぐに帰宅した。
 テーブルには浮かれた朝食が、手付かずで残っていた。
 どうやら浮かれていたのは、自分だけだったらしい。
 リヴァイはまた、はあと重たいため息を付いて、目の前の仕事を睨みつける。
 こんな日に限って、仕事の量は多くなる‥
306 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:07:10.92 d
 もしかしたら、エレンは自分たちの関係にああいうことはまだ早いと思っていたのかもしれない。
 エレンは性的な行為に明るい方ではないから尻込みしているだけだろうと思って、強引に引っ張りこんだのが悪かったか。
 エレンはリヴァイの押しに弱いのだ。
 二人で会うようになって半年、付き合って三ヶ月、キスもしたし、そういった雰囲気に何度もなりかけた。
 先週二人で会う約束は、リヴァイが数週間前から取り付けていたものだったから、そういうことが起こると、エレンもちゃんとわかっていたはずだ。
 家に呼んだ時、少なくともエレンは嬉しそうな顔だったように思う。
 一生心に留めておこうと思うくらい、エレンは嬉しそうに笑った。
『じゃあ、明後日は?』
 エレンのそっけないメールに、なお食いついて返事をする。
『最近、忙しいんです。ごめんなさい』
 朝起きた時のエレンは、初々しくも決して怒っていたり、失望したりしているようには思えなかった。
 一体何が悪かったか、リヴァイは全く思い当たるフシがない。
 会えばわかるかと思うのに、会うことも難しいのではリヴァイは一人で悶々と悩むだけだ。
『いつなら会える?暇な時にうちに泊まりにきてほしい』
 エレンの返信は随分時間が経った頃に返ってきた。
『来週なら……』
 あまりにも歯切れの悪い返事に、リヴァイはまた本日何十回目かの重たいため息を付いた。
***
                                       

「いや、ならしない」
 やめる気なんてないのに、悪い大人は余裕のあるふりをしてエレンに許可を求める。
 風呂あがりのエレンの濡れた髪の毛や、寝間着からちらちらと見える鎖骨やうなじに、気もそぞろにしていたというのに、こういう時だけは大人のふりだ。
「ん…やじゃないです…」
 リヴァイの手のひらに、エレンはすりすりと頬を寄せて両目を閉じた。
「すごく、きもちいい…」
 ふっくらとした頬はまだ子供らしさが残っていて、手で撫でると気持ちが良い。
 リヴァイは自分の頬をエレンの頬にすり寄せ、抱きしめるとぱたりとソファの上に押し倒した。
307 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:07:27.38 d
 肌触りを愉しむようにエレンの喉仏や鎖骨に指先を滑らせて、エレンの服をまくり上げた。  
「あ、あのリヴァイさん…」
 ぎゅっと怯えたようにリヴァイの腕にしがみついてきたエレンに、リヴァイは首を傾げる。
「どうした?」
 前回の出来事を踏まえ、リヴァイはなるべくエレンが言いやすいように優しく聞いてみる。

「あ、あの…ですね…お願いがあって…」 

 エレンは慌てた様子で、もたもたと喋った。
 リヴァイはエレンの頭を撫でながら、顔を見てゆっくりと聞いた。ここで無理をしたら、なんにもならない。
 エレンはますます顔を赤くして、リヴァイの腕にしがみつき肩口に顔を埋めると、リヴァイの腰に足を回してしがみついた。自分の顔を見せたくないらしい。

「お、おしりさわるの、きんし、で…」
「は…?」
「おしり、触らないなら…していい、です…」

 おしりとは、ただの尻のことではないだろう。
先日、リヴァイが丹念に優しく溶きほぐし、その柔らかさと居心地の良さにため息を付いた、エレンのしりのことであるに違いない。
 つまり、エレンの言葉はセックス禁止令に等しい。

「きもちわるかったか?痛かったか?」
「そういう、わけではなくて…」

 エレンはもじもじと太ももの内側をすり合わせる。

「もうしたくない?」

 リヴァイがぎゅっとエレンを抱きしめると、エレンは困ったように顔を見上げてリヴァイをみた。
 潤んだ蜂蜜の瞳に、自分の余裕のない顔が映り込んでいた。

***
                                          
「は…、あ、んっ…あふっ…」

 エレンを膝の上に乗せて、ゆるゆると溶けるようなキスをしながら、エレンの緊張をほぐそうと固く閉じられたふとももを撫でていた。
 エレンの身体は子供みたいに熱くて、体の節々が桃色に染まっている。
308 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:07:38.72 d
 エレンが自らの性的マイノリティーを自覚するころには、同性愛者という言葉自体も些か市民権を得ていたから、良い時代に生まれたと思う。
 そういうことでエレンはその日、暇つぶしのためにいつものバーに立ち寄っていた。
 その前日クラブで明け方まで愉しんでいたから、今日はクラブに行くか行かまいか少し迷っていて、このバーでおもしろそうな相手が見つからなければ、クラブに行くのはやめて友人の家に遊びに行こうと思っていた。
 エレンがいつも立ち寄るのは若者向けのバーで、浮足立った人間は多く、少しでも気が合えばすぐに二人腕を組み合ってビル群の狭間に消えていった。
 店員は大抵ネコで客はタチとネコが入り交じるが、大体三十路を超えていれば、タチに回ってくれる。
 エレンは今年一八の、ネコとしてはそこそこもてはやされる年齢だった。
 カウンターの上にランプが二つあり、五つのスツールが並んでいる。
 狭いフロアには三つのバーテーブルがあって、前の客が残したグラスが放置されたままだ。
 床は薄汚れた白い小さなタイルが敷かれていて、それがどことなくどこかのトイレを連想させるのが、このバーの特徴だった。
 いくら見た目が綺麗になっても昔と同じくこの地域が、世の中に向かって大声で叫べないセクシャルマイノリティの欲求や不満の掃き溜めになっているのは確かだから、あながち不適切な内装でもないのかもしれない。
 薄暗いバーの中で、オレンジに光る二つのランプの左側。その真下のスツールはエレンがいつも座る場所だった。
 その場所に見知らぬ黒髪の男が座っていて、隣には顔に見覚えのある若い男が座っていた。
 彼はエレンと同じくこの店の常連だった。
 黒髪の男は顔を横に振り、若い男は面白くなさそうな顔をしてするりとスツールから降りていった。
 サラリとした直毛の黒髪で目元の涼やかな男の首筋がランプの光を受けてオレンジに染まっている。
 彼の携帯がブルブルと震えて、画面が光る。
 『今どこにいるの?』そんなメッセージが表示された携帯を彼はズボンのポケットの中に突っ込み、手元のグラスの最後の一口を煽ると、更に店員にウィスキーのタブルを頼んだ。
 軽く一杯引っ掛けに来たというわけではないらしい。
「そんなに飲んで、どうするの?」
 エレンは小生意気に笑って、若い男が空けた椅子に滑るように座った。
309 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:08:08.16 d
 最初は音が立つだけのやさしいキスを、体の力が抜けてきたら、唇をぺ
ろりと舐める。
 リヴァイの熱いキスと呼吸に酔わされてエレンがぴくっとまぶたを震わせたら、唇の間に舌をねじ込んで、唇や頬の裏側を舐めた。
「ん、っ…、むぁ…」
 エレンが甘えるように、腹をまさぐるリヴァイの手に自分の手を重ね、ぎゅっと服の裾を掴むからリヴァイはますます、掻き立てられてキスの重なりを深めてしまう。
「服、持ってろ」
「う、ん…」
 服の裾を捲り上げて、彼に持たせた。エレンの肌はいつまでも触っていたくなるようなマシュマロの肌触りで、気持ちがいい。
 つやつやとなめらかな胸と腹を手のひらでするすると撫でながら、エレンの半開きになった口の中で泳ぐ舌をちゅるると吸った。
「あっ、あふ…」
 リヴァイの手のひらが、真っ赤に熟れた乳首に掠ってエレンの背中がびくりと跳ねる。
 リヴァイがくにくにと両手で揉むと、エレンの足が内股になって、すりすりと擦られていた。
「ちゃんと持て」
「ん…、あっあっ…あぅ…」
 服の裾を握りしめたまま、どんどん下がってくるエレンの腕をリヴァイはぐいっと持ち上げる。
 気持ちよくなると脱力して、腕が下がってしまう。
「きもちいい?」
 エレンは返事をする代わりに、両目をギュッとつむったままリヴァイに唇を押し付けた。
                  
 クラブのゴールデンタイムは深夜二時。日付が変わる前に行くのはおすすめしない。
 人の集まりが悪い上に遊びたがりの初心者しかいない。
 その上エレンの場合、いつもつるんでくれる奴らの仕事も終わっていなかった。
 エレンの夜遊びは大抵二十三時ごろには始まるから、クラブに繰り出す深夜二時までの三時間は適当に街を歩き回った。
 大抵はバーに寄って、適当な男に相手をしてもらう。
 いわゆるセクシャルマイノリティが集まる、都心の小さな界隈でエレンは毎夜ふらついている。
 セックスの相手を探しているというわけではなく、ただ自分の家に居たくないというだけだ。
 以前は汚く治安が悪いというイメージを持たれていたこのあたりも、自らのセクシャルを受け入れた若年層が入るに連れてそれなりに整備されて、綺麗な飲み屋も増えた。
310 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:08:17.42 d
 前述のとおり、エレンはセックスの相手を探すために、毎夜深夜に歩きまわっているわけではない。
 ただ面白そうな相手がいればそれはまた別の話というだけだ。
「この時間は、深酒するには早過ぎるか?」
 彼の腕時計は、頂点を過ぎたばかりだろうか。
 彼は少し赤くなった顔で構うなとでも言いたげに、エレンを見返した。
 エレンはぱちりと大きな瞳で瞬きして、彼の顔をよく眺める。
「こんなところであんまり呑んでると、相手を探してると思われますよ」
 カウンターの奥から、アイスピックで氷を割る音が聞こえてくる。
 男の手元に滑ってきたのは、琥珀色の液体が注がれたロックグラスだ。
 グラスの中で浮いた氷がくるくると回った。
「そうか」
 彼は小さく頷くと、再び酒を煽る。呑むのを辞める気はないらしい。
 軽い気持ちで、いいなと思っただけだった。
 僅かな興味と好奇心と、誰かが声を掛けてもちっともつれない彼に、自分はどのように評価されるのか、ただそれが知りたくて、隣の椅子に座った。
「どうしてこんなところに来たの?」
 彼のような幸せものの暇つぶしに付き合ってもいいと思ったのは、エレンもまた暇であったのと、オレンジ色に染まった彼の肌色が妙に艶めいていたからだ。
 時にはこうやって気楽に遊ぶのも悪くない。
「あなたみたいな楽な人、おれは好きですよ」
 エレンはするりと、彼の左の薬指を撫でた。

***
                                        

 連絡は週に一回か二回。
 起きたばかりのエレンが目を擦りながら、遅刻気味に待ち合わせ場所に来て、仕事を終えたばかりのリヴァイが「何を食いたい?」と聞く。
 適当に飯を食って、適当に酒を飲み、話題が尽きたら視線を交わして店を出る。
 最初に一回こそ色々話をしたが、三度、四度会うようになるともう話題は尽きる。
 歳も違うし、エレンは学生で、リヴァイは社会人だ。
 共通の話題もなく、プライベートについて話すわけもなかった。
 駅前の遊歩道を通り過ぎ、途中のコンビニで飲み物と朝飯を買うと適当なホテルに滑り込んで、好き勝手にお互いの身体で気持ち良いことをした。
311 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:08:42.98 d
 今日もそういう流れてホテルに入って、シャワーを浴びて出てきたところだ。
 男の体でセックスするというのはそれなりに準備が必要で、エレンはホテルに入ると必ず風呂場に引っ込んだ。
 身体を洗って尻の穴にローションをつっこんで、風呂から出てきたら、リヴァイはベッドの上で右手に携帯電話を抱えて、小声で話していた。
「今日は戻らない」
 少し強めの語調だった。エレンは足音を立てないように、ゆっくり歩くとリヴァイの隣に座った。
 彼の手のひらがくしゃりとエレンの髪の毛をかき混ぜて、ずるいひとだとエレンは笑う。
「明日の朝…、いや、昼ごろだな」
 リヴァイの首元に顔を寄せ、物音を立てないようにしがみついてきた青年の身体をなだめるように撫でながら、リヴァイは淡々と電話続けた。
いたずら心が湧いてきたエレンは、リヴァイのズボンのベルトを落とし、ファスナーを下げると指先を滑りこませた。
 ちらりとリヴァイがエレンの顔を見たが、構わずエレンはベッドの上に這いつくばって、リヴァイの股の間に顔を突っ込む。
                                        
 丸一日の仕事を終えてきたリヴァイの身体はうっすら汗の匂いがした。
 彼の電話の内容はよくわからない。
 なんとなく耳を澄ますと、電話の向こう側は女の声が聞こえたような気がしたが、確証はなかった。
 エレンは柔らかな手つきでリヴァイの股間を撫で回し、少しだけ固くなっているのを確認すると、下着のゴムを引っ張ってそのまま直接口に咥えた。
 びくりとリヴァイの下半身が震えて、思わず唇の端を釣り上げる。
 ふわふわと漂う汗の匂いを鼻先で嗅ぎながら、シャワーを浴びて温まった口の奥までずぶずぶと呑み込んだ。
 エレンの腰にまとったタオルがはらりとベッドの下に落ちる。
 太ももの間から垂れるのは、さっき風呂場でいれたローションだ。
「ん…っ…ふぁ…」
 せっかく人が声を出さないようにしてやっているのに、リヴァイの陰茎が急に芯を持ち始めたせいで、喉の肉壁が押し上げられて甘ったるい声が漏れてしまった。
312 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:08:50.64 d
 喉の奥をごりごりと突かれて、エレンはうっとりと目を細めた。
 上顎の前歯の裏のあたりを擦られるのがエレンは大好きだった。
 リヴァイの太ももの間から、掬いあげるように彼を見上げたら、彼は少し熱を込めた視線でエレンを見下ろしてる。
 エレンは笑って、口を大きく開ける。真っ赤な口からずるりと勃起した陰茎が飛び出した。
 ぬらぬらと唾液をまとって出てきたそれは、エレンが口に入れる前とは比べ物にならないくらい、勃起していた。
「あー…もう電話切っていいか?」
 急に電話の返事がぶっきらぼうになったリヴァイに、エレンはますます笑う。
 口からこぼれた唾液を手で拭い身体を起こすと、今度はリヴァイの膝の上に乗って、ぺろぺろと首元を舐めだした。
 くすぐったそうに身をすくめたリヴァイの肩を抑え、勃起した彼の陰茎に自分のものを擦り付ける。
「また電話する」
 ほとんど言い捨てるようにリヴァイは電話の相手に告げると、携帯の電源を落として放り投げた。
「いたずら小僧」
「んっ…、あっ、あっ…っ!」
 リヴァイはエレンを強引に押し倒すと、両膝の裏を押しベッドの上にひっくり返した。
 すでに十分に慣らされているエレンのアナルに先端を押し付けて、強引に突っ込む。
「あ…、ひっ…!」
 ずぶりとあっけなく入りこんだ陰茎にエレンは息を詰めて、リヴァイの背中にしがみつく。
 ぱつぱつと、エレンの尻とリヴァイの腰がぶつかって、いつもより大きい音がたった。
                                          
「舐めろ」
 傷つかない程度にエレンのアナルをほぐすと、彼の唇に自分の陰茎を押し付けた。
 エレンは顔をしかめてリヴァイを見上げたが、リヴァイはエレンの頭を掴み、ぐりぐりと先端を唇に押し付ける。
 言い出したのはエレンなのだから、やってもらわなくては困る。
「抱いて欲しいんだろ」
 エレンはしばらくの間、急に冷たい態度になったリヴァイを見上げていたが、諦めたように顔を伏せて口を大きく開いた。
 くちゅりと音が立って、エレンの口の中に勃ち上がりかけたリヴァイの陰茎が収まる。
313 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:09:22.21 d
「おれがさ、傷ついてんのわかってるんでしょ。わかってるけど、セックスするんだ」
 真夜中の都心、ネオンの光がちかちかとタクシーの窓に飛び込んでくる。
 酒が回ったエレンは、次々と窓から走り抜けるネオンの光を虚ろな目で追いかけていた。
「お前とセックスはしない」
 リヴァイがはっきりそう言うと、エレンは急にぽたぽたと泣き出した。
 まるで死刑判決を出された罪人みたいだった。ちゃんとエレンはわかっていたはずだ。

「んっ、ふ…っ」

 誰にも穢された事の無いエレンの身体は何処も彼処も敏感で、両の掌で唇を押さえて声を殺しながらも、リヴァイの愛撫に過剰な程に反応する姿が非常に愛らしく、服で隠れる部分を狙って幾つもキスマークを刻み付ける。
 そしてその数を増やす度に、エレンに対する独占欲は満たされて行く一方だった。
 この子供は俺のものだと主張するように、所有印はリヴァイの意志を宿して鮮やかに咲き誇っている。
 やがて高校生である彼にも体育の授業がある事に気付いたが、反省するどころか付けてしまったものを今更消す事など出来ないと、自分勝手に開き直った。

「ふ、んん…っ!」

 びく、と背を撓らせエレンが頑なに閉じていた双眸を剥く。
 リヴァイの唇が胸の突起を挟んで舌で嬲り出し、初めて他人に弄られる感覚に身体が不可解な疼きを覚え、遂にエレンが身悶え始めた。
                                         
「や、リヴァイさん…っ、あ…っ、んぅっ…!」

 一瞬だけ拒絶の声を上げ、しかし再び口を塞いで未知の刺激に耐える。
 これが所謂前戯と呼ばれるものなのだと自分に言い聞かせ、無理矢理納得させて受け身の姿勢を取る。
 ネットで必死に掻き集めた知識は、結局は何の役にも立たない。
 それを糧にして積極的になる事も出来ず、成す術も無く恥じらうばかりで、俎板の上に置かれた魚の様に、ベッドの上に転がっている事しか出来ないのだ。

「ん、んん…っ」

 リヴァイは身長こそエレンより低いが、その手はエレンのものより大きい。
 若干日に焼けた皮膚は過去に負った僅かな傷跡を残しており、爪は綺麗に切り揃えられ、甲には太い血管が浮き上がっている。まさしく、成熟された大人の手だ。
314 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:09:32.64 d
 その手が、少年と青年の中間を彷徨っているエレンの肌を、その滑らかな感触を愉しむように這い回る。

 唇は未だ突起を含んだままで、舌先で転がされたり吸われたり、その都度エレンは身を捩ったり息を詰めたりと忙しない。
 だが高まっているのは羞恥だけでは無い。
 リヴァイの愛撫により引き出された別の感覚が、ある一点へ着実に熱を集めていく。

「あっ…!」

 遂にその場所が暴かれようとした途端、エレンが一度は太腿まで下げられた下着とズボンを咄嗟に掴んでそれを制した。

「やだ…っ、ま、待ってください…っ!」

 慌てて元の場所まで引き上げながら、顔面を隅々まで紅潮させて、必死に懇願する声には既に涙が混じっている。

「脱がさないと、入れられないだろうが」

入れる、という直接的な表現に動揺を露わにしながら、至極尤もな正論に「でも」「だって」と、エレンが要領を得ない調子で口籠る。その様に、リヴァイはそっと目を細めた。
 セックスが前提である以上、全てを曝け出す事に抵抗がある気持ちはよく分かる。 
 本気を出せば、身包みを剥がす事はきっと容易い。
 だが今回ばかりは、エレンの意思を尊重する事を、15歳の彼のペースに合わせる事を決めたのだ。
 彼に不要な恐怖や不安を植え付けてしまっては元も子もない。
 15歳、その年齢が持つ意味を改めて思い知る。
 まだ家庭や学校という箱庭の中で、大切に養育されている無垢な子供。
 そして自分は、恋を覚えたばかりの彼の、『全てを捧げたい』と望む言葉に甘えて、己に課したルールを、部下達への誓いを呆気無く破ろうとしている愚かな大人だ。
 踏み止まれば、守れるものがきっとある。踏み出せば、失うものもあるだろう。
 どう足掻いても年の差は埋められない。
 だがきっと、身体を重ねる事で得られるものがあるという祈りにも似た確信を胸に、今だけは何もかも忘れて、エレンという最愛に溺れてしまいたかった。
                                          
「…分かった、待つ。で?何分待てばいい?」

 肩を竦めて溜息を零しつつ、リヴァイがエレンから離れてベッドの上で胡坐を掻く。
315 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:09:59.82 d
リヴァイからの唐突な質問に、エレンが思わず跳ね起きる。

「な、何分!?」

 待ってもらえるのは有難いが、『何分』と単位を限定されてしまっては心が急く。
 焦りを滲ませながら何と答えて良いのか考えあぐねていると、今度はリヴァイが自分のシャツのボタンに指を掛けた。

「……冗談だ。そうだな、確かにお前だけ脱がすってのも理不尽な話だ。…俺も脱ぐ」
「え、えぇ!?」

 そして吃驚するエレンの前で、口角を持ち上げたリヴァイが素早くボタンを外し始めた。
 そのままシャツを脱ぎ、ベッドの隅に無造作に放る。
 当のエレンは唖然としたままその様子を見詰めていた。
                  
(すげぇ…俺と、全然違う…)

 いつもは服の下に隠されている完成された肉体美に思わずエレンが息を飲む。
 盛り上がった胸筋、割れた腹筋、逞しい上腕筋、自分との差異をまざまざと見せ付けられて男としての矜持が微かに痛んだが、それ以上にこの身体に今から抱かれるのだと改めて認識した瞬間、身体の奥底から得体の知れない感情が湧き上がる。
 それはまさに『欲情』と呼ばれるものだった。
 同性の裸体など今まで数え切れない程見て来たが、そのいずれに対しても羨望こそ抱いた事はあれども、魅了された事は一度も無い。

「先に、下も脱どくか?」
「い、いえ…!いいですっ!」

 リヴァイの上半身に見惚れている間に、自身のベルトのバックルに及んだ彼の手に、我に返ったエレンがぶんぶんと首を激しく横に振る。
 見てみたいという好奇心が頭の隅にちらついたが、エレンは無理矢理それを打ち消した。
 自分が先に脱げば自分の決意も固まり易いだろうという配慮からの発言だろうが、それはきっと逆効果になるという確信があった。
 それに、これ以上彼に手間を掛けさせるのは流石に申し訳無い。
 他の人間が相手ならこんな面倒な手順を挟まなくても、彼の要求に素直に応じただろう。
 難無く先の手順へ至っていた筈だ。それがひどく心苦しかった。
 主導権を握っているのは間違い無く彼だ。
 だがそれを無理矢理行使する事はせず、自分の心の準備が整うのを待ってくれている。
316 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:10:24.75 d
 彼を幸せにする為のものを、何ひとつ持たない。
 与えられた数々のものを、返す事すら出来ない。
 唯一捧げられるこの身体も、彼が抱いて来た誰よりも、見栄えも感触も遥かに劣るだろう。
                  
「俺は、何も持ってないただのガキです、だから」

 ぽろぽろと落ちる涙を肌に感じながら、リヴァイが彼の中に潜む苦悩の深さを知る。
 エレンが何も持っていないとは思わない。
 そして自分は、この恋愛で見返りを得たい訳ではない。
 心底惚れた相手が振り向いてくれた奇跡、それだけで十分だった。
 卑屈になりがちの彼に、これから少しずつそれは教えていけばいい。

「何かしたい、なんて思わなくていい。ただ、俺の傍に居てくれ。それだけで俺は十分幸せだ。………頼むから、この先も俺から離れないでくれ」
「こんな俺で、いいんですか…?本当に…?」
「馬鹿だな、お前がいいんだ。お前以外、何も欲しくない」

 相手の全てを求めて止まない、こんな胸を焦がすような恋は知らない。
 乱されてばかりの感情に、自分でも戸惑うばかりだ。今までは何事にも、冷静に対応して来た筈なのに。
 一旦身体を離してそのまま顔を近付ければ、その切実さに胸を打たれたエレンも、応じるように双眸を瞼の裏に隠した。
 深く唇を合わせて自重を掛けながら、エレンの身体をシーツの上に沈めた。
 そうして優しく丹念に肌の愛撫を再開し、今度こそズボンと下着を脱がせて床の上に落とす。
 若干の強張りは見られたものの、エレンは大人しくリヴァイに身を委ねている。
 現れた性器は興奮の程を表すように、先端から透明な雫を零しながら緩く立ち上がっていた。
 思わず見入っていると、「あんまり見ないで下さい…っ」と羞恥に淀んだ非難の声が届く。
 リヴァイは思わず苦笑を漏らし、まずは秘部を広げる為に指を数本、自らの口に含んだ。
 男は女のように、愛液で濡れる事は無い。
 だが潤滑剤となるローションもゴムも、残念ながら今は手元に無い。
 そして短時間で思案した結果、この方法に着地した。
317 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:10:44.74 d
「指入れるぞ、気持ち悪いかも知れんが少し我慢してくれ」
「は、はい…っ、ん…っ」
                                       
 唾液で濡らした指先を擽るように動かしながら、やがて固く閉じたままの蕾に1本だけを潜り込ませる。
 中は想像以上の窮屈さだった。
 否、エレンの身体に過剰に込められた力が、更に道を狭めているのだ。
 侵入を阻まれながらもリヴァイは根気強く中を解し、所謂『前立腺』と呼ばれる部分を探る。

「ひぁっ、あ、そこ、何…っ?」

 ある一点を掠めた瞬間、びくん、とエレンの身体が一際大きく跳ねて、漸く見付け出したそこをリヴァイが重点的に嬲る。

「あっ、やぁッ、そこ、いや、だめっ、あ…!」
「前立腺だ。ここを突いたら、男でも気持ち良くなれるらしい。調べたのなら、お前も知ってるだろう?」

 その名称は勿論以前から知っているし、男同士のセックスにおいて重要な器官である事も最近知識として得たばかりだが、刺激を与えるだけでこんなにも狂おしい程の快感を得られるとは思わなかった。

「…気持ちいいか?エレン」
「い、です…っ、あんっ」

 耳元で囁かれるリヴァイの声が媚薬の様に、エレンの脳髄を侵す。

「あ、あ…っ、ふぁ、ん…っ」

 覗き込んで来るリヴァイの輪郭が溶けていく。
 左右に開かされた下肢が、声を漏らす度に宙で揺れる。
 思考が急速に白んでいく。
 口を塞ぐ事すら億劫になり、高まる一方の絶頂感に流されるまま喘いでいると、ちゅぷん、と音を立ててリヴァイの指が引き抜かれた。
 エレンは気付かなかったが、いつの間にかリヴァイの指は3本に増やされていて、広がされた内壁が名残惜し気に蠢いて彼を誘う。
 エレンの中心は反り返り、先端から滲む蜜が腹部に点々と滴り落ちている。
 とても性行為に一度も及んだ事の無い、15歳の子供の反応とは思えなかった。
 淫靡な表情は絶えずリヴァイを煽り、その無垢な容貌の下に潜んだ素質の高さに、密かに内心で感心する一方だ。
 精神的にショックを受けるかも知れないと、今回は性器に口を付ける事はしないつもりだった。
318 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:10:58.49 d
 だがその色香に当てられて、吸い寄せられるように銜え込んだ瞬間、「ひ…!!」と引き攣れた悲鳴が漏れた。

「ふぁ、いやっ、やだ、そんなとこ、きたな…っ、ひ、あぁっ…!!」

 咽び泣きながらエレンが必死に訴えて来ても、リヴァイはそこから頑なに唇を離さなかった。
 足を動かして示した抵抗も、両手で難無く抑え込む。
 男への口淫など、相手がエレンでなければ一生経験する事はなかっただろうと本気で思う。
 幾ら場数をそれなりに踏んでいるとはいえ、リヴァイとしても初めて同性と交わすセックスは手探りの状態だった。
 
少しでも気持ち良くなって欲しい、その一心で唇と舌を巧みに動かす。

「だめ、だめっ、リヴァイさん…っ、んぁっ、いやだっ、あ、やぁあっ」

 絶え間無く溢れ出て来る蜜を湧き出る唾液と共に飲み下しながら、いつの間にかもっと泣かせたいという加虐心が混じり始めた事に気が付いた。
 リヴァイの理性を痺れさせる程、初めて目の当たりにするエレンの媚態はこの上無く刺激的だった。

「も、いく、いく、くち、はなして…っ、あっ、おねがい…ぃっ」

 千切れんばかりに首を振るエレンからの要求を無視して、リヴァイは彼を追い詰めに掛かる。
 他人の手によって齎される強烈な快楽を、自分が初めて与えたい。
 絶頂を迎える姿を、嬌声を、早く見たい、聞きたい。
                  
「我慢しなくていい。ほら、全部ぶちまけろ」
「や、ひぁっ、あぁぁ…っ!!」

 程無くして迸ったエレンの飛沫を、リヴァイが腔内で受け止めて余す事無く嚥下した。
 我に返れば衝撃の余韻に啜り泣く声が聞こえて、身体を起こしたリヴァイが、汗で額に張り付いたエレンの前髪を優しく掻き上げる。そして晒したそこに唇で触れた。

「…エレン。可愛かった、すごく」

 歯止めが利かなくなるぐらいに、と付け加えて、濡れた翡翠を覗き込みながら柔らかく顔を綻ばせた。
 ずっと頭の中で繰り返して来た卑猥な妄想とは違って、エレンとの初めてのセックスは決して円滑には運ばないが、身体と心の隅々まで満たされて蕩けてしまいそうな程に幸せだった。
319 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:11:30.70 d
 暴走しないよう自制心を総動員させつつ、チャックを下げて前を寛げ、下着の中から自身を取り出す。
 一応時間を掛けて丹念に慣らしたが、もう一度先走りをひくつく蕾へと馴染ませる。

「……………本当は、ずっとこうしたかった」

 余裕を欠いている自覚はある。念願叶って、好きな相手を同意の上で今からこの手に抱けるのだ。
 平静で居られる訳が無い。
 呼吸は終始整わないままだ。
 見下ろしたエレンの顔は情欲に染まり、その双眸が物言わずとも訴えている。『早く来て』、と。
 十分に解したとはいえ異物を挿入するのだ、要領を掴めずにエレンに苦痛を与えてしまうかも知れない。
 だからこそエレンの様子を注意深く観察しながら、行為を進める必要がある。

「エレン、入れるぞ」
「っ、リヴァイ、さ…っ、ん、んぅぅっ」

 先端部分を後孔に埋めれば、堪えるようにエレンがリヴァイの肌に爪を立てた。
 微かな痛みが背中に走る。
 もしかしたら皮膚が切れたのかも知れない。
 粘膜が傷付いたのかも知れない。血は出ていないだろうか。
「痛いか?」と問えば、顔を歪めたまま首を頻りに横に振る。
 だからそれが本心なのか分からない。
 それでもエレンが決心したのなら、同じく決意した自分もそれに応じるまでだ。

「ごめ、な、さい…」

 本人の意思に反して閉じようとするエレンの内壁に阻まれて、リヴァイの腰は完全に止まってしまった。
 罪悪感に苛まれて力無く詫びて来るエレンに、察したリヴァイが「謝らなくていい」と囁く。

「お前が望まない限り途中で止めたりしねぇから、今度は我慢するな。辛かったら遠慮せずに言え。とりあえず、深呼吸しろ」

 ぎちぎちと不随意に収縮する粘膜に締め付けられ、平静を装って見せてはいるものの、実際はリヴァイ自身も苦痛と衝動に耐えていた。

「はい…、は…ぁっ」

 少しでも力を抜かせる為に深呼吸を促せば、目尻から涙を流しながらもエレンがそれに従う。

「……あぁ、そうだ。ゆっくりでいい」

 エレンに他を気遣う余裕など無い。
 飽和状態に達した頭で、羞恥と不安と戦いながら、必死に自分を受け入れようとしてくれている。
320 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:12:45.63 d
321 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:13:46.43 d
〜これまでのお話〜

大学教授のリヴァイ(α)と大学生エレン(Ω)が紆余曲折を経て、番になりました。
リヴァイが発明した触手のテンタクル(またの名をオメガ専用防犯アイテム)と一緒に楽しく暮らしています。
3月30日、無事に20歳を迎えたエレンは……!?


オメガテンタクルBirthday0330



 リヴァイ・アッカーマン、バースタイプはアルファ。
 職業は大学教授。
 大学の生徒であった運命の番を見つけ、現在同棲中。
 番の名はエレン・イェーガー、バースタイプはオメガ。
 大学二年生。
 来月からは三年生へ進級する。
 彼と同棲を始めて一年経つが、大学を卒業するまでは役所に届け出もしない約束だ。
 もう自他共に認める夫婦のような生活をしているので、今さら法で縛ったところで何が変わるわけでもない。
 あぁ、エレンの苗字は変わるが。
 それだけだ。
 番の契約という、血よりも濃い絆を結んだ瞬間に、リヴァイはすでに覚悟をいろいろと決めていた。
 自身が研究する分野ではあったけれど、運命の番なんてものは半信半疑だった。
 どの文献やデータを読んでも、いまいちピンとは来なかった。
 それも今なら納得できる。
 運命の番というものは、言葉で簡単に説明できるものではない。
 血に引き寄せられるのだ。
 そのことが分かっただけでも、自分は成長したのかもしれない。
 隣にエレンがいて、とても充実した毎日を送っている。
 番馬鹿かもしれないが、なにしろエレンは可愛い。
 器量がいい。
 度量もあるし、内なる獣を飼っているような激情家なところが気に入っている。
322 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:13:55.29 d
 そんなエレンも、ようやく二十歳の誕生日を迎えた。
 三月三十日の桜舞い散る季節、エレンはこの世に生を受けた。

「やっと飲める!」
「とりあえず、いろいろと用意してみたが」

 エレンは瞳の奥をきらきらと輝かせて、はしゃいでいた。
 二人分のワイングラスと、リヴァイが運んできたビーフシチューを交互に見つめている。
 あんなに楽しそうな彼は久しぶりに見た。
 とくにここ最近は年度末ということもあって、リヴァイも忙しく、家に帰るのは夜遅くになる日が度々あった。
 エレンは健気にも自分を待っていてくれている時もあったが、大半が先に眠っていた。
 仕方がないのだが、しんとした室内が寂しくて、すやすやと眠っているエレンの頬をつついて遊んだりした。

「ううん!」

 寝ているのに、眉間に皺を寄せて怒られた。
 それでもめげずに、エレンの半開きの唇にキスをすると、

「おあえり……りばいさん……おやしみ」

 なんて、むにゃむにゃと喋って、すぐに寝息が聞こえてきた。
 寝顔が幼くて可愛い。
 本当は起こして、夜の営みとやらをしたいところだが、彼は滅多に承諾してくれない。
 同棲をしたばかりの頃は、よく体を繋げていたのに。
 それはもう獣のように、液体まみれになってエレンを抱き潰してしまった。
 それがアルファの性なのかもしれない。
 エレンだけが必要で、とにかく頭の中は彼のことでいっぱいになる。
 今は誘ってもだいたいが「NO」だ。理由を聞いても、

「どうせ三ヶ月に一度の発情期があるんですから、ヤらなくたっていいじゃないですか」

 と答えられてしまう。
 それはそれ、これはこれ、だ。
 リヴァイとしては、毎日抱いても抱き足りないのだ。
 でも彼はヒートがあるのだから、それ以外はセックスしたくないと言う。
323 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:14:23.06 d
 これがマンネリというやつだろうか。
 番なのに、エレンはあまりにそっけなくて心配になってしまう。
 まさか他に男ができたのか?
 もしくは女がいいのか?
 自分にはもう飽きてしまったのか。
 番の契約を結んでいるのだから、そんなことはない……と信じたい。
 リヴァイは毎晩ベッドで眠るエレンのうなじの匂いを嗅いで、何も混じってないか確かめた。
 自分の匂いとは違う男の匂いが混じっていれば、それはエレンが不貞をはたらいたということになる。
 でも、何の匂いも混じっていない。
 むしろ彼の甘い匂いに、興奮してしまった。
 おかげ様で、最近は右手が恋人である。
 エレンの寝顔を見つめながら、右手を動かした。
 彼は全く起きなくて、虚しさだけが募った。
 エレンのスウェットの胸元から、勝ち誇ったかのようなテンタクルが出てきた時は怒りでガラスケースに閉じ込めようかと思った。
 そう、リヴァイとエレンの住む家には、もう一匹(?)家族のようなものがいる。
 触手のテンタクル。
 薄紅色で半透明。
 スライム状でぬるぬるとしており、大きさなど体を変幻自在に変えられる。
 これはオメガであるエレンを外敵から守るため、リヴァイが発明した防犯アイテムだ。
 なかなか優秀だが、自分のアルファ遺伝子を移植してあるため、エレンが大好きという同じ特徴が生まれてしまった。
 アルファの男たちにいいようにされてきたエレンは、以前まで男性恐怖症だった。
 なので、この便利なテンタクルに依存してしまい、リヴァイは一度これを破壊している。
 その時のエレンの落胆と怒りときたら!
 リヴァイがいるというのに「番なんかいらない」と喚き散らされた。
 結局は無事に結ばれたが、今でもテンタクルは油断ならない。
324 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:14:31.49 d
 いわば、恋敵だった。
 扱いに困ってしまうが、背に腹は代えられないので、リヴァイがそばにいない時のエレンの警護を、テンタクルに一任している。
 最近のテンタクルは、リヴァイの言うことも聞かない。
 エレンの味方ばかりする。
 仮にも親はリヴァイだというのに。
 テンタクルはキュッキュッと体を鳴らして、エレンの体を這いずりまわっていた。

「……の、やろ」

 こっちはお預けを食らっているというのに、羨まし過ぎる。
 エレンいわく、最近テンタクルは乳首にはまっているらしい。
 普段から触手が吸い付いているせいか、エレンの乳首は敏感だった。
 全部、テンタクルのせいだ。
 リヴァイはチッと大きな舌打ちを一つ。
 すると、見ろよ、と言わんばかりにテンタクルは触手を器用に使って、エレンの上半身の裾を捲り上げた。
 寒い室内に、エレンの白い腹と桃色に膨らんだ乳首が姿を現す。
 テンタクルに悪戯をされているというのに、仰向けで寝ている彼は全く起きない。
 一発挿入しても、起きないのでは……?とすら思えてくる。
 本当はむしゃぶりつきたいところを、ぐっと堪える。
 しかし、触るくらい良いんじゃないか?
 その柔らかい乳首を転がして、舐めて、硬くさせて、吸い付くような肌を堪能して……頭の中はいやらしい妄想でいっぱいになる。
 エレンが足りない。
 やっぱり、彼に触れたい。
 いや、それは自分のプライドが許さない。
 エレンの意識がない時に触るなんて、フェアじゃない。
 自分の欲望だけで手を出すわけじゃない。
 欲求不満の自分を押し殺し、リヴァイはエレンの服の乱れを直し、羽毛布団をかけてやった。
325 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:14:58.86 d
 それからトイレで抜いた。
 恋人がいるのに、なんて虚しい。
 でも、今日はエレンの誕生日だ。
 記念日だ。
 今日くらいはエレンもセックスしてくれるのではないか、という甘い期待を抱かずにはいられない。

「何を飲む?」
「ワイン! あっ、リヴァイさん、チーズも用意してくれたんですか。それっぽい」
「サラミもある」
「わ、おつまみいっぱいじゃないですか」

 エレンが子どものような声を上げる。事実、自分よりはうんと年下で、子どものようなものだ。
 そう言うと、きっと彼は怒るだろう。
 エレンの二十歳の誕生日はどこかへ食べに行くか、と提案したが、彼は家が良いと言った。
 一番くつろげて、リヴァイと二人きりでいられるからだ、とはにかみながら答える姿は脳裏に焼き付いている。
 だから、今日の料理はほとんどリヴァイが作って、用意した。
 作っている最中、何度もキッチンにやって来て、テーブルの上の料理をつまみ食いしていくエレンを「こら」と叱った。
 そのたびに、嬉しそうに笑ってリヴァイの後ろ姿を眺めていた。
 これが幸せか、としみじみ思う。
 エレンへの誕生日プレゼントは、もう一週間も前に渡してある。
 彼の希望で、欲しがっていた有名ブランドのスニーカーを一緒に買いに行った。

「もっと高いやつでもいいぞ」

 と提案したが、

「これが良いんです。大事にしますね」

 と嬉しそうに靴の箱を抱えていた。
 いつから履いて行こうと悩んでいたが、結局四月から使うことに決めたらしい。

「誕生日おめでとう」
「へへ……ありがとうございます」

 二人で乾杯をして、グラスを傾けた。

「あ、おいしい」
「お前、酒は強いのか?」
「どうですかねぇ……でもなんか強い気がする」

 エレンはぐいぐいとワインを煽った。
 飲みっぷりがいいので、見ていて気持ちがいい。
 リヴァイも酒はザルなので、一緒に飲めるのなら嬉しい。
326 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:15:18.25 d
 同学年で一番誕生日が遅い彼は、この日を待ちわびていたらしい。
 これで大人の仲間入り。
 酒を嗜む年齢になった。
 浮かれていたせいなのか、何なのか。
 エレンは早々に酔っ払った。

「うぃ……」
「エレン、お前……顔が真っ赤だぞ。全然強くねぇだろうが」

 リヴァイが止める間もなく、エレンはすっかり出来上がっていた。

「えっ、オレ全然いけますよ! 大丈夫ですよ!」

 顔は赤いが、受け答えははっきりしている。
 だが、酔っぱらいの「大丈夫」は極力信じない。

「いいから、酒はストップだ。水を持ってくる」

 エレンから飲みかけのグラスを取り上げて、リヴァイは席を立つ。

「ぶぅ」

 不満そうに頬を膨らませている。

「そんな顔したって可愛くねぇぞ」

 可愛いけれど。
 しかし、リヴァイの考えは甘かった。
 自分が席を立った数分の間に、エレンは一升瓶を抱えて飲んでいたのだ。
 一体どこから引っ張り出してきたのか。
 リヴァイが隠し持っていた蒸留酒だ。

「馬鹿、お前何飲んで……!」

 慌ててエレンから瓶を奪いとった。
 心配したのは急性アルコール中毒だ。

「らいじょうぶ、らいじょぶれすって」

 エレンは先程よりも顔を真っ赤にして、ニコニコと笑っている。
 呂律すらまわっていない。
 体はメトロノームのように左右に揺れていた。

「気分は悪くないのか」
「ん、平気、れす」

 とろんと瞳をとろかせているエレンは、情事中を彷彿させた。
 相手は酔っぱらいだというのに、肌がしっとりと汗ばんで、色っぽい。

「ほら、水」
「飲ましてくらさい。んー」

 なんて言って甘えてくる。
 普段と全く違う様子に、理性がぐらつく。
 エレンはリヴァイに寄りかかり、唇を尖らせている。
 その唇にそっとキスをしてやって、水のグラスをエレンに持たせた。
327 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:15:35.96 d
「飲ましてくださいってば! ほら、口移し!」

 怒ったように服を引っ張る。
 酒が入っているせいで、大胆になっているらしい。
 甘えたになっているのか。

「わかった、わかったから引っ張るな。服が伸びる」

 リヴァイは仕方がない、とばかりに水を自分の口に含んでから、エレンの口の中へ上手に流してやった。
 濃厚な酒の香りがする。
 エレンの舌は発熱しているかのように熱い。

「ん……ふ……あ、これ酒じゃない……」

 しゅん、とエレンは眉尻を下げて、悲しそうな顔をする。
 とても酷いことをしているような気になるが、これは仕方がない。

「当たり前だ。水を飲め」
「はぁい」

 二回、三回と口移しを続けた。


「ふふふ……水ぬるい……」

 変な笑い方をして、エレンはソファにもたれかかった。
 ご機嫌だ。
 酔い方は可愛らしいので、しばらくの間エレンを見ていたい。
 本当は今日くらいセックスしたかったけれど、またお預けだろう。
 こんな状態の彼を組み敷くなんて、罪悪感に悩まされそうだ。

「……おしっこ」
「トイレ行けるか」

 エレンの腕を引いて立ち上がらせようとするが、彼の四肢に力は入らない。

「無理……ここでする……」
「馬鹿言え、こんなところで漏らす気か!?」
「テンタクルー……おいでぇ」

 エレンが呼ぶと、ぬるぬるとキッチンの方からテンタクルが触手を使ってやって来た。
 今日は体内に入れず、放し飼い(?)にしていたのだ。
 テンタクルの見た目は気持ち悪いスライム状の触手だが、エレンの言うことには従順だ。

「テンタクル、餌だぞ」

 そう言って、エレンはスウェットのズボンのゴムを引っ張った。服の中に入れ、と促している。
328 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:16:03.85 d
 テンタクルはにゅるん、とその服の中に体を滑りこませる。

「おい……エレン。まさか」
「ん……出すぞぉ……ちゃんと飲めよぉ」

 しょろ……と軽い水音がリビング内に響き渡る。
 だらしなく足を広げた状態でソファに座り、その体勢のまま、しょろしょろしょろ……と排尿の音が聞こえていた。
 彼はグレーのスウェット着ていたが、見た目には何の変化もない。
 股間のあたりに漏らしたような跡は一つも見えない。

「ん……んっ、はぁ」

 色っぽいエレンの吐息と、じゅるじゅると何かすするような音が混ざる。
 後者は間違いなく、テンタクルがエレンの尿を吸い取る音だ。
 テンタクルの餌は、主人の体液である。
 それはもちろん尿も例外ではない。
 テンタクルは喜々として、エレンの股間に張り付き、餌を吸い取っている。

「おしっこ、いっぱいでちゃった」

 エレンは体をもぞもぞと動かせて、排尿が終わったことを知らせる。
 少しだけ……ほんの少しだけ、ここで粗相をしてしまったエレンを見てみたいと思ったのは秘密である。

「お前……だらしねぇ下半身しやがって」

 リヴァイは大きく舌打ちする。
 すると、エレンは大きな瞳を動かして、

「あれ? どうした、テンタクル。まだメシ足んねぇの」

 と、リヴァイに向かって語りかけた。

「……あ?」
「仕方ねぇなぁ……ほら、おっぱい飲むか?」

 エレンは上半身の裾を捲り上げて、自ら乳首を露出させた。
 いつぞや夜中に見た彼の白い腹が、また露わになった。

「お、おい、ちょっと待て。エレン」
「? どうしたんだ、いつも飛びつくのに。おっぱいいらないのか?」
「……いる」

 素直に答えてしまったが、そうじゃない。問題はそこじゃない。
329 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:16:35.65 d
「エレン、待て。俺はテンタクルじゃない」

 エレンはどうしてそうなったのか、リヴァイをテンタクルだと思い込んでいる。
 会話が咬み合わない。
 どこをどう見たら、自分とテンタクルを間違えるのだ。

「うん、わかった。今日もセックスごっこしような」

 エレンはとろけた顔で、リヴァイの頭を撫でてくる。
 愛おしげに滑る彼の指先に、苛立ちが芽生える。

「……お前、いつもテンタクルと何してやがんだ」

 自分が居ない時、そんないやらしい行為をしていたのか。
 自分の誘いは断るくせに、テンタクルはいいのか。
 いや、テンタクルとしているからリヴァイとする必要がないのか。
 ほぅ、面白い。
 リヴァイはテンタクルになりすますことに決めた。
 これで普段から、彼がどんな生活をしているのか分かる。

「おいで、おっぱいやるから」

 エレンはリヴァイの後頭部を、自分の裸の胸に引き寄せる。
 準備万端に服の裾を鎖骨まで捲り上げて、リヴァイを待っている。
 自分の目の前に、エレンの乳首があった。
 弄られすぎて敏感なそれは、ふっくらとしていて愛らしい。
 彼の甘い匂いが、より濃厚になる。
 リヴァイはそっと唇を寄せて、待ちわびた尖りを吸い込んだ。

「んっ! きょ、きょうは強くねぇか……お前……そんなにこれが欲しかったのか?」
「あぁ、そうだよ」

 リヴァイは強めにエレンの乳首を吸った。
 舌先でとんとんと弾いたり、ねっとりと舐めたり、時折歯を立てたり、強く吸い上げたり。
 開いた片方の乳首はリヴァイの指先が、悪戯を仕掛けた。
 指で弾いたり、手のひらで乳首を転がしたり、乳輪を軽く引っ掻いたり、胸全体を強く揉んだり。
 触手にはできない愛撫を施してやった。

「はぁ……あ、んっ……今日のはっ、違い過ぎ……! んんっ」

 エレンの唇から、嬌声が溢れ始める。
 違って当然、テンタクルではないのだから。
 むしろ、同じと言われたらプライドが傷つく。

「ん、はぁ……よしよし」

 エレンの乳首から母乳が出ることはないが、彼の手のひらが温かくて気持ちよかった。
 自分が幼い子どもになったような気すらしてくる。
330 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:16:43.33 d
 テンタクルが足先のズボンの裾から、ひょっこりと顔を出した。
 床に広がって、ソファの上でいかがわしいことをする二人を見上げている。
 リヴァイはそっと、エレンの股間を撫でた。

「あっ」

 もじもじと太ももを擦り合わせている。
 間違いなく、服の下でそこは硬くなっていた。
 リヴァイはエレンの胸に吸い付きながら、スウェットのズボンの中に手を滑り込ませた。
 すべすべの肌に、柔らかな下生えを感じる。
 一時期、パイパンにハマって全部剃っていたこともあったな、と思い返す。
 剃らなくともエレンの陰毛は薄いので(しかもふわふわで手触りがいい)、生えていたって全然問題ない。
 エレンなら濃くても問題ないが。

「んん……きもちぃよ、テンタクル……」

 エレンは慣れているのか、腰を浮かせて自分からズボンと下着を脱ぎ捨てた。
 それから律儀に足を大きく広げた。
 片足はソファの背もたれに引っ掛けて、丸見えである。
 明るいリビングの下、色素沈着もない美しい裸体が目の前に晒される。
 エレンの陰茎は赤く、ぬるぬると光っていた。
 リヴァイは指で輪を作って、ごしごしと扱き始めた。

「あっ、テンタクル……いいっ……リヴァイさんの、手みたいで……すげぇ」

 エレンの体は熱い。
 まだ、自分をテンタクルだと勘違いしているのか。

「いつも俺の誘いは断るくせに、ずるい奴だな」
「うぅ……ごめんなさい……ゆるして」

 半ば熱に魘されたように、エレンは呟く。
 そっと忍び込ませた、足の奥……そこはびしょびしょに濡れそぼっている。
 ――挿れたい。
 エレンに包まれたいという欲望に火が付いた。

「テンタクル……もう、いいだろ……入って来いよ……」

 自分から、くぱ、と蜜孔を広げて誘ってくる。
 普段からテンタクルにこんな表情を見せているのかと思うと、腹が立ってくる。
 テンタクルに人間のような感情はないが、それでも面白くない。
331 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:17:09.03 d
 ぎゅう、と胸が締め付けられるような不思議な感覚。
 こんなに淫乱で可愛い男が、自分のものだと証明したい。
 エレンの体の弱い部分は知り尽くしている。
 そこを徹底的に突いてやった。

「あっ、あっ、あっ……あ、出るっ」

 熱を持ったその体が大きく跳ねた。
 その瞬間に、エレンの精子がぴゅっ、ぴゅっ、と飛び出す。
 テンタクルは新しい餌を見つけて、じゅううう、と音を立てて吸い上げた。

「んああっ」

 達したばかりの更なる刺激に、エレンは甲高い悲鳴を上げた。
 ――潮、噴くか?
 ちょっとした好奇心が芽生えて、再び彼の前立腺を突く。
 テンタクルもペニスへの刺激を止めない。
 濡れ過ぎた結合部は、ぐちゅっ、ぐちゅっ、と恥ずかしい音を垂れ流している。

「えっ、ちょっと、だめだっ……それ以上したらっ、出ちゃうから!」
「何が出るって?」
「し、しお……! ああっ、恥ずかしいからっやだっ! 見るな! はぁっ、あっ……」

 エレンの腰が浮く。
 そして、ペニスの先端からびゅーっと勢い良く透明な液体を噴射した。
 それはテンタクルが吸い上げる間もなく、リヴァイの腹にかかった。
 部屋着がぐっしょりと濡れて色が変わってしまったけれど、とても良い気分だった。
 テンタクルは不服そうに、萎えたエレンのペニスに纏わり付いている。
 潮噴いた瞬間、リヴァイは少しだけ中で射精してしまった。
 予想外の動きをした体内に、我慢ができなかった。
 ゆっくり腰を引いて自身を抜き取ると、エレンのアナルは寂しそうにひくひくしていた。

「潮噴いたな、エレン」
「はぁ、はぁ……ん、だから出るって言った……」

 エレンは全身しっとりと汗をかいて、桜色に染まっていた。
 頬だけが赤く、熟れたように艶めいている。
 どことなく全身色っぽい。
332 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:17:16.70 d
 リヴァイは一瞬の罪悪感に目を瞑り、早急に前立てを緩めた。
 数回扱いてから、ぴたり、とエレンのアナルの縁に当てる。
 もう何もしなくとも、彼の媚肉が飲み込んでしまいそうだった。

「あつっ……おまえ、こんなになっちゃったのか……?」

 いつもとは様子の違うテンタクルに、エレンはきょとんと首を傾げている。

「……犯してやる」

 リヴァイは半ば無理やり、エレンの中へ自身を押し込んだ。
 いつもはもっと入念に前戯をするのに。

「く、ああっ……あっ!」

 エレンは海老反りになって跳ねた。
 よほどの衝撃だったのだろう。

「つ、貫かれてる……オレっ……あぁ……テンタクル、お前でかさも長さも、リヴァイさんみたいっ、良いっ」

 乱暴にされて、エレンは喜んでいる。

「テンタクル、エレンのちんぽも弄ってやれ」

 リヴァイは良い子にしているテンタクルに声をかけた。
 了解、とばかりにそいつは触手を伸ばしてきた。
 天井を向いて透明な液体を止めどなく流しているエレンのペニスを、にゅるん、と飲み込んでしまった。

「ひぁっ……な、なに……」

 テンタクルはリヴァイの指示を上手に理解して、オナホのように彼の陰茎をねっとり包み込む。

「休憩している暇は無ぇぞ、エレン」

 ギシ、ギシ、ギシ、……とソファが悲鳴を上げて揺れ始めた。
 リヴァイが激しく律動を開始したのだ。

「中出ししてやろうか。それとも顔射がいいか」
「んあっ、あぁうっ、あっ、前も、後ろも、やばいっ」
「前と後ろじゃねぇだろ……? お前のここは」
「オレのっ、ちんちん、と、お、おしりっ……」
333 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:17:43.85 d
「……だったらどうする?」

 わざとそう言ってみると、エレンの両目は零れそうになるほど、大きく見開かれた。
 それからすぐに、キッと獣のように睨み上げてくる。

「絶対許さない」

 エレンは急に起き上がった。

「テンタクル、リヴァイさんを拘束してくれ」

 テンタクルは勝手にリヴァイの命令を解除して、キュキュッと触手を触れ合わせて鳴いた。
 エレンのペニスから移動して、俊敏な動きでリヴァイの両手を封じる。
 本当にこいつはリヴァイよりもエレンの命令を優先しやがる。

「……今度は何だ」

 リヴァイは動じない。
 後ろ手にテンタクルが両手を封じ込んでいる。
 ちょっと力を加えれば、簡単に解けそうだったがリヴァイはあえてそうしない。

「浮気は絶対許せねぇんで。これ……オレ以外の奴に挿れたんですか?」

 皮肉げに唇を歪めて、リヴァイの剛直を数回手で扱いた。
 その唇に吸い付きたいと思っているのだから、自分もだいぶ呑気である。

「駄目ですよ、オレのものなんですから」

 エレンはリヴァイの体を押し倒した。
 後ろ手に縛られた腕と、それを拘束するテンタクルが潰れた。
 もっとも、テンタクルは変幻自在なので、さほどダメージは食らっていないだろう。
 ギュッ、と変な音が聞こえたが、たぶん……大丈夫なはずだ。

「誰と性行為したのか言ってください」
「……言ってどうするんだ」
「……そいつ……どうしてやりましょうね」

 エレンは危険とも言える笑顔で、含みを混ぜる。
 まるで人を襲いそうな声音だ。
 ぞくぞくする。
 この獣のような思いは、まっすぐ自分に向けられているのだから。
 こんなに興奮することはない。

「教えない」
「……ふん、どうせ……どっかの尻の軽い男、引っ掛けてきたんでしょう。いや、相手は女性? 全く、腹が立つったら」

 チッ、とエレンは舌打ちを一つした。
 そのやり方が、リヴァイにそっくりだった。
 一緒にいるので、段々と癖が移っていたのかもしれない。
334 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:17:52.31 d
「……リヴァイさん、よーく見ててください。今から、このガチガチのちんぽがどうなるか」

 エレンは片足を床に付き、足を広げてリヴァイに跨る。
 自分から騎乗位の体勢で、リヴァイのペニスを挿れてくれるらしい。
 恋人の大胆さに、こちらも興奮してしまう。
 ゆっくりと腰を落としていき、いやらしいエレンの後孔は難なくリヴァイを飲み込んでいく。

「あぁぁ…すげ、奥までくる…はぁっ」

 彼は白い喉元を晒して、快感に震える。
 根本まで入りきった時、エレンは呼吸がすでに乱れていた。

「悪さをするちんぽは、お仕置きですよ!」

 エレンは腰をグラウンドさせ、妖艶に振り始めた。
 ぱちゅ、ぱちゅ、と水音と肌が触れ合う音は、よく響いていた。
 発情期でもないのに、淫らに乱れていく。
 時にゆっくりと、時に激しく動いて、エレンはリヴァイを責め立てる。
 いつの間にこんなテクニックを身につけたのか、彼の中は精子を絞りとるみたいにうねった。

「ねぇ……リヴァイさん。オレと……その浮気相手の奴、どっちが気持ちいい? 教えてくださいよ」

 エレンは腰を振りながら、質問する。

「どうだったか……忘れた」
「! オレの方が気持ちいいだろ! ほらっ、どっちが気持ちいいのか、言えよ!」
「……エレンの方が気持ちいい」
「当たり前です! オレの中はリヴァイさんの形になってるんだから……! ほらっ、早く精子出して!」

 エレンの体内は、リヴァイの射精を促した。
 それに流されて、勢い良く彼の中に射精した。
 ドピュッ、ドピュッ、と濃い精子がエレンの最奥に注ぎ込まれる感覚。

「うっ……」
「はは……いっぱい、出しましたね」

 ちゅぽ、という可愛い音を鳴らして、リヴァイのペニスを引き抜いた。
 とたんに、粘り気のある白い液体がとろとろと溢れる。
335 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:18:20.06 d
「ほら……すごい……こんなに濃い」

 いやらしい顔をしたエレンは、白濁液を掬いあげて自分のペニスになすりつける。
 自分がどんなに卑猥なことをしているのか、分かっているのか。

「今の気分はどうです?」
「……最高だ」
「なんですか、それ……オレのことは飽きたくせに」
「飽きねぇよ。そもそも浮気なんかしてねぇからな」
「……嘘だ」
「俺はお前以外と性行為をしたいと思わねぇ」
「……オレが淫乱でも?」
「俺相手限定だったら、最高だ」

 エレンはそっと屈みこんで、リヴァイと唇を重ね合わせた。
 間近で見る彼の顔は、すこし照れくさそうだった。

 ギュウ、とリヴァイの下から聞こえて、エレンが「あっ」と声を上げた。

「テンタクル、ごめんな」

 リヴァイが体を起こすと、もういいでしょ?と言わんばかりにテンタクルがにゅるにゅると姿を現した。
 エレンは気まずそうに、床へ足をつく。
 その後孔からはとろとろと精液と彼の愛液が混ざったものが、溢れ出た。
 上に捲りっぱなしだった上半身の服の裾も引っ張って、元の位置に戻した。
 下半身だけ何も穿いていないという卑猥な格好だ。

「せっかくの誕生日なのに……」

 食事そっちのけで、自分たちはこんなことをしている。
 前にもこんなことがあった気がする。
 中途半端に食べたテーブルの上の料理を、エレンは申し訳無さそうに見つめた。

「エレン」
「ん? はい?」

 おつまみ用のサラミを口に咥えて、リヴァイを振り返った。

「続き」
「えっ、まだ? だって、どっちも射精したじゃないですか」
「射精したら終わり、なんてルールは無ぇだろ」

 目の前にある白い双丘を、リヴァイは包み込むように撫でた。
 エレンの尻は美しい曲線を描いている。

「ん、変な触り方して……」
「頼む」
「……仕方がないなぁ」

 エレンは二、三枚サラミを食べてから、ティッシュを二、三枚取った。
 足の間を流れるものをティッシュで拭ってから、ソファに腰掛けた。
336 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:18:41.02 d
「オレの誕生日なのに」
「ちょっとぐらい、おじさんの相手してくれてもいいだろう」
「いつもしてるじゃないですか」

 言いながら、エレンの手はリヴァイのペニスへと伸びる。
 指先でくりくりと亀頭を弄り、裏筋をくすぐった。
 また天を向いて硬くなっている。

「もっとだ」
「どうして欲しいですか? また、おっぱい吸いたい?」

 エレンは人の悪い笑みを浮かべている。

「酔っ払ってる間の記憶はちゃんとあるんだな」

 リヴァイは口角をひっそりと上げる。
 先ほど、酔っ払った彼の胸にむしゃぶりついたのを、ちゃんと覚えているらしい。
 いや、むしろそれを促したのはエレンの方だ。こっちに非はない。

「ふふ……リヴァイさん、すげぇ赤ん坊みてぇだった」
「じゃあ、お前がママになるか?」
「……なりません」

 エレンは拗ねたように唇を尖らせた。頬が赤い。
 彼の体はオメガだ。
 今は学生であるとはいえ、いずれ母になれる体を持っている。
 それに、リヴァイはいつか……自分の子どもを孕んで欲しいと願っている。
 もちろん、それはエレンが了承してくれたらの話だ。
 嫌だ、と言われたら……仕方がない。
 自分一人の問題ではないのだ。
 エレンに断られたからと言って、愛情が冷めるわけじゃない。
 それとこれとは別の話だ。

「……そうだな」

 リヴァイは呟き、隣のエレンの体にもたれかかった。
 肩から伝わる、熱いほどの体温が心地良い。

「今はまだ、です」

 エレンがぽつり、と囁いた。

「な、なんにも考えていないわけじゃありませんから! そ、そりゃあ、オレたち番なわけだし……」
「……ありがとうな」
「なんでお礼言うんですか! お礼言われるほどのことじゃないですよ。恥ずかしいじゃないですか!」

 照れる彼を見ていると、こちらにもそれが伝染して照れくさくなる。
337 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:18:58.09 d
「なぁエレン……いつも、どうやってるんだ」
「え、いつもって……?」
「いつもテンタクルと、イイコトしてるみてぇじゃねぇか。俺をテンタクルと間違えるくらい」
「そ、それは……」

 エレンが目に見えて、うろたえ始める。
 忘れたわけじゃないだろう。
 酒を飲んでもしっかりと記憶がある彼なら。

「テンタクル使って、いつもやってること見せてくれよ。セックスごっこってなんだ?」
「無理! 無理無理無理! ほんっとに無理ですからっ」
「テンタクル」

 リヴァイが呼ぶと、テーブルの下にいたテンタクルは触手を伸ばしてエレンを捕らえた。
 本当に今日は人使い……もとい触手使いが荒いので、後で休ませてやらねばなるまい。

「ちょっと、おい、テンタクル! 今日はしないって!」
「いいじゃねぇか、すればいい。今日も」

 今日も、のところを強調して言うと、エレンは泣きそうな顔になった。
 テンタクルはいつものように、キュッキュッと触手を鳴らしながら、エレンの上半身から服を抜き取ってしまう。
 明るいリビングで、今度こそ全裸となってしまった。
 室内は一応暖房が効いているはずだが、エレンは寒そうに震えた。
 いや、寒くて……というよりは、興奮に震えているようだ。
 半透明の無数の触手たちが、一斉にエレンの体を包み込む。
 初めて触手を見た時、エレンはかなり怯えてぎゃんぎゃん泣き叫んだものだ。
 それが今やどうだ。気持ち良さそうに身を任せている。

「あっ……へんなとこ触るなって、ん……」

 触手はエレンの体を拘束するのではなく、優しく愛撫している。
 さわさわと全身を撫で擦ったり、つんと勃起した乳首に吸い付いたり、足を広げてペニスを苛めたり、ひくつくアナルに入り込んではすぐに出て行ったり……決定的な快感を与えない。

「んんっ……はぁ……リヴァイさん、見てる……?」
「おう、見てるぞ。いつもこんなことやってんのか」
「……うん。留守番……してる時……こうやって」

 言いながら、エレンの手は自分の陰茎に伸びる。
 テンタクルの触手と一緒にぬるぬると扱き始める。
338 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:19:11.20 d
 これはただの自慰だ。
 リヴァイの目の前でオナニーショーをしているようなものだ。
 普段、どうやって自分の体を慰めているのか、丸わかりだ。
 エレンの指先の動きは辿々しく、けれど、とても大胆だった。
 ペニスの先端を指で弄るたび、広げたアナルの縁が収縮していた。
 テンタクルの体が半透明なため、何もかも透けて見える。

「恥ずかし……リヴァイさんに、見られてる……ううっ……は、ぁ」

 エレンに気づかれないように、ごくりと唾を飲み込む。

「テンタクル……いつもの、あれ、やって……」

 心得たように、テンタクルの形状がうねうねと変化する。
 想像以上に大きい。
 それはまるで人間の形だった。
 エレンはテンタクルが創りだしたその巨大な人形に、抱きつく。
 腕だけでなく足まで絡ませて、密着する。
 ――これがセックスごっこかよ。

「ん、はぁ、テンタクル……んちゅ」

 あろうことか、エレンはその人形にキスまでしている。
 熱に浮かされた顔をして、ちゅ、ちゅ、と唇を吸い付かせ、舌でぺろぉ、と舐めたりしている。
 見せろ、と言ったのは自分だが、なんだか面白く無い。

「あっ、あっ、あっ、……腰っ動いちゃう……あっ」

 エレンはテンタクルにペニスを擦り付けるように、腰をへこへこと振った。
 半透明なテンタクルの体に、熱り立ったペニスが押し付けられているのが見える。
 ぬるぬると滑って、気持ちいいらしい。
 エレンは、だんだんとその行為に夢中になっていく。
 リヴァイがここにいることなど、忘れてしまったかのようだ。
 テンタクルを押し倒し、覆いかぶさるような格好でエレンは淫らに腰を揺らめかせる。
 リヴァイの方に向けられた尻は濡れそぼって、糸を引いている。
 おそらくテンタクルではなく、エレン本人の愛液だろう。
 寂しそうなアナルがリヴァイを誘っている。
 苛立っていたリヴァイは、そっとエレンの背後に音もなく近づいた。
 それから一気に、逸物をエレンの中へ挿入した。

「あああっう!」

 突然の挿入にびっくりしたエレンは、海老反りになって嬌声を上げた。
339 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:19:37.84 d
「あっ、なっ、なんで、ちんぽ……いれる、のぉっ!」
「嫌だったか?」
「う、嬉しい……本物が一番いいっ」

 エレンは、嬉しそうに笑い、腰を高く上げた。
 もっと深くまで入ってきて、と促されているようだ。

「早くっう……動いて、……一番奥に、注ぎ込んで……っ」
「このスケベ野郎め。テンタクルといつもあんなことしやがって」

 リヴァイもまた律動を始める。

「だって、アッ、止まんねぇんだもん! エッチいっぱいしたくて、も、わけわかんな……リヴァイさん、いつも、仕事おせぇし……オレ、いつもっ留守番でっ……!」
「あぁ、そうだな……悪かった」
「リヴァイさんのっ、精子がっ、欲しい、よぉ……」

 もう我慢なんてできるはずもない。
 狂ったように、永遠にエレンと繋がっていたいとすら思う。

「アァ……やば、すごいのっ……くるっ……! あ、あ、……んんんっ」

 エレンの中がリヴァイを締め付ける。あっけなく、また達してしまった。
 精液全部、一滴残らず、彼の中に注ぎ込んでやった。
 ぽた、とエレンの白い背中にリヴァイの汗の雫が落ちた。

「ひ……あ……メスイキした……ぁ」

 エレンはすっかり雌の顔で、ぐったりとしている。
 どうやらドライでイッたらしい。
 しかし、これにはテンタクルが大ブーイングだ。
 エレンの下から出てきて、うねうねと無数の触手を動かして抗議の意を唱えている。
 言葉は喋らないが、なんとなくニュアンスは伝わる。

「テンタクルの餌が不足してるってよ」
「えぇ……もう無理です……出尽くした。もうなんにも出ない……」

 汗をびっしょりとかいたエレンは、ぐったりとリヴァイに寄りかかっている。
 テンタクルはエレンの体にまとわりついて、その汗をちゅうちゅうと吸い始めた。
 エレンは疲れきって、テンタクルの望むようにさせている。

「なんか……今日、いっぱいエロいことした気がする……」
「俺もそんな気がする」
「ん……眠い……」

 エレンの双眸は、とろん、と微睡んでいた。
 視界の隅ではテンタクルがご機嫌に、きゅ、と触手を擦り合わせていた。
340 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:19:45.60 d
***

「リヴァイさん……おはよう、ございます……」
「おはよう。声がガラガラだな」

 リヴァイが朝食用のウィンナーを焼きながら振り返った。
 エレンの体はきちんと綺麗になり、昨日とは違うルームウェアに着替えている。

「リヴァイさんが体……綺麗にしてくれたんですか」
「あぁそうだ」

 フライパンを傾けて、ころころ……と皿の上に転がす。

「……今日何日ですか」
「三十一日」
「うわ……オレの誕生日終わった……」

 エレンは足をずるずる引きずるようにして、キッチンの椅子に腰掛ける。
 それすらもしんどそうだ。

「昨日のケーキ、残ってるぞ。手つけてない」
「オレ思ったんですけど……リヴァイさんとセックスすると、食事が疎かになる」

 今度は卵を二つ取り出して、目玉焼きを作り始める。
 あ、失敗して黄身が割れた。

「食欲よりも性欲が勝るんだろ」
「餓死しそう」
「しねぇよ。これからメシにするぞ」
「オレ、黄身割れた方でいいですよ」
「なんだ、割れたの見えてたのか」
「勘です」
「そうか。残念ながら二つとも黄身は割れてる」

 皿にレタスとミニトマトを添えたら、なんだかぐっと朝食らしくなる。

「ねぇ、リヴァイさん」
「なんだ」
「オレのチン毛知りません?」
「あぁ、昨日捨てといた」
「捨てといた、じゃないですよ! なんてことしてくれたんですか! ツルッツルじゃないですか! またパイパンになってる!」
「案外、気づくのが早かったな」
「さっきトイレ行ったらびっくりですよ。なんですか、アレ」
「パイパンだろ」
「知ってますよ! オレが昨日寝た後に、剃りましたね!? 危ないじゃないですか! オレが寝返りとかして、チンコ切れたらどうしてくれるんです!?」

 怒るところはそこか、とリヴァイは内心思う。

「大丈夫だ。動かないよう、テンタクルに四肢を押さえつけてもらったから」
「くだらないことにテンタクル使って……ただの便利アイテムじゃないですか」
「なかなか楽しかったぞ。剃毛」

 しょりしょり、と泡と一緒に剃るのが快感だった。
 綺麗になった股間はまるで子どものようで、背徳感も増した。
341 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:20:11.99 d
 以前より興味があった……と言ったら語弊があるが、念願かなってエレンの股間を剃毛させてもらえた。
 今回は勝手にやってしまったが、次は彼が起きている時にやりたい。
 きっと顔を真っ赤にさせて、足を広げてくれるだろう。

「リヴァイさん、見て」

 もう一度振り返ると、エレンがルームウェアのズボンを足首まで下ろしていた。
 ご丁寧に上半身の裾も持ち上げている。

「なっ……! なんっだ、そりゃあ」

 不覚にも素で驚いてしまった。

「本当は昨日、これ穿こうかと思ったんです。やっぱり恥ずかしくて止めましたけど。今はパイパンだから、毛もはみ出てない」

 エレンはローライズの真っ白な紐パンツを穿いていた。
 窮屈そうなサテン生地で、陰茎の形を浮き彫りにしている。
 濡れたら透けてしまうのではないか。
 おそらく情事を盛り上げるためのアイテムに違いない。
 サイドで結んである紐を引っ張れば、すぐに脱げてしまうだろう。

「勝負パンツです」
「どうした、お前それ! おい」
「通販で買いました」
「もっと見せてみろ」

 リヴァイが近づこうとした瞬間、濃厚な甘い匂いが立ち上った。
 覚えのあるこの匂い。
 エレンの体がビクッビクッ、と震え、足の間を透明な液体がつぅっと滑っていくのが見えた。

「あっ……オレ……発情期、きたぁ…」

 リヴァイの後ろで、歪な目玉焼きが焦げている。





おわっちゃいました(糞笑)これでおわっちゃったんです(大爆笑)
342 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:20:26.26 d
それは当たり前なんかじゃなく、


by sekaE@春コミ西1B17b



「いってぇ……」

 二日酔いでズキズキ痛む頭を抱えて目が覚めたリヴァイはあたりを見回した。
 普段は枠と言われるほど酒で酔うことのないリヴァイだが、繁忙期により連日の疲れが溜まっていたことと、接待の飲みで相手方にしこたま飲まされたことが原因で昨日は珍しく酔っていた。
 何とか帰ってきたはいいものの、そこで力尽きてソファーで寝てしまっていたらしい。
 床に投げ出したままのスーツのジャケットを見て顔を顰める。
「何でそのままになってんだ…?」
 いつもなら同棲している大学生の恋人、エレンが見咎めるだろう。皺になるからハンガーにかけろ、とよく言われている。
 最近は疲れを理由にエレンに任せてしまっていたが。
 そこでやけに静まり返った部屋が気になった。
 時計が指さす時刻はまだ早朝、エレンが居て朝食を用意している時間だ。
 はっとしたリヴァイはテーブルに置かれた一枚の紙が目に入った。
「……どういうことだ」
 
 “さよなら”
 
 その紙にはエレンの字でたった一言そう書かれていた。
343 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:20:56.54 d
      * * *

                                      
 事の発端は昨日の朝だった。


「リヴァイさん!俺の話聞いてますか!?」
「…あ?」
 いつもの様に朝食を済ませて家を出る前だった。
 ぼうっと出勤後の最優先事項について考えていた時のことだ。
 エレンが自分に対して何か言っていたのだが、それをリヴァイは聞いていなかった。
「今日はなるべく早く帰ってきてほしいって言ったんですよ!」
「悪い、聞いていなかった」
「……本当に悪いと思ってますか?」
 エレンは苛々とした口調で聞いていなかったリヴァイを責める。
「最近いつもそうですよね。繁忙期で忙しいのはわかってますけど話くらい聞いてくれてもいいんじゃないですか!?」
「だから悪かったと言ってるだろう」
「全っ然、心が込もってません!謝っときゃいいとでも思ってんでしょう!」
 いつになく突っかかってくるエレンに対してリヴァイも苛々してくる。
 連日の業務の忙しさで疲れはピークだ。
 話を聞いてなかったことくらい甘く見てもいいのではないか。
「ったくうるせぇな」
「なっ!?」
「時間だからもう行くぞ」
「ちょっと!リヴァイさん!」
 まだ話は終わっていない、と言うエレンを無視してリヴァイは家を出た。
 これ以上話していてもお互い苛々しているしヒートアップするだけで時間の無駄だ。
 リヴァイは合理的な判断をしたと自分に言い聞かせつつ徐々に頭が冷えてきて、他に言い方はなかったのかと今更ながら後悔していた。
344 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:21:09.28 d
 その後、リヴァイは出社して昼飯を取る時間も無く仕事に没頭していた。
 かろうじてゼリー飲料を口にした程度でどっと疲れつつその日の業務を終えると、今度はエルヴィンに捕まって無理やり接待に連れて行かれた。
 さすがにエレンとあんなことがあったから今日は早めに帰ろうと身を粉にして働いていたというのに冗談じゃない。
 リヴァイは断ったがある企画で関わった先方に気に入られていたらしく、ほぼ無理やりエルヴィンに連れて行かれることとなった。

―――不本意だが、エレンも仕事なら仕方がないと理解してくれるだろう。

なんて罪悪感を感じながら、リヴァイはその日の接待に身を投じていた。
だから……まさか、エレンがリヴァイのマンションから居なくなっているとは思いもよらなかった。


      * * *


「リヴァイ、酷く疲れているようだが大丈夫か?」
「……誰のせいだと思ってやがる」
 あの後、慌てて連絡を取ろうとスマートフォンを取り出せば、一件メールが入っていることに気がついた。
日付は昨日の昼、エレンからのメールで、開いてみれば“朝はごめんなさい、帰りを待ってます。”という謝罪と帰りを待つメールだった。
昨日の昼忙しさにかまけてメールをチェックしていなかったことが仇となった。
急いでエレンに電話をかけてみるものの何度かけ直しても繋がらない。
結果出勤の時間になり、慌てて支度をして出てくることになった。
345 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:21:35.59 d
 急いでシャワーを浴びたものの時間が無かったリヴァイはアイロンが掛けてあるワイシャツがどこにあるかもわからない。
 仕方なく室内干しになっていたワイシャツを着て放り出してあった昨日来ていたスーツに袖を通し出勤することとなった。
 昨日早く帰らなかったことは悪かったかもしれないが何も出ていくことないだろう。
 しかも電話は繋がらず、着信拒否をされている。
 満足にシャツも見つけられない自分の不甲斐なさを突然出て行ったエレンへの不満に転嫁させていた。
「昨日はすまなかったな。早く帰りたがっていたというのに」
「わかっていたなら早く帰らせろくそが……」
「いや、先方がな……しかし昨日はお前もだいぶ飲まされていたな」
 リヴァイは出勤早々エルヴィンに絡まれてただでさえ最低の気分がどん底まで落ちている。
 二日酔いで気分も悪いというのに朝に起こった出来事で憔悴しきっていた。
「昨日お前早く帰りたがっていたが、エレンと何か予定でもあったのか?」
「……昨日は早く帰って来いと言われていた。あと、その朝ひと悶着あった」
「ひと悶着?」
「エレンの話を聞いていなくてな……怒らせた」
「それはまた……些細な喧嘩だな」
 学生時代からの付き合いだったエルヴィンは幼馴染で恋人であるエレンのことを知っている。
 エルヴィンからそう聞かれてリヴァイはふと、そういえば何故エレンは昨日早く帰って来いと言ったのだろう、と思った。
「昨日は3月30日……あー…」
「どうかしたか?」
「昨日は…あいつの誕生日だ……」
「……それは…」
 顔を青くしたリヴァイを見てエルヴィンは言葉を失う。
 恋人の誕生日を忘れていたなど、“些細な”ことでは済まされない。
346 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:21:59.60 d
「だからあいつ…部屋を出て行ったのか……」
「そうだったのか!…それは悪いことをしたな…」
 よりにもよってこんな大切なことを忘れていたなんて。
 エレンが怒って出ていくのも当たり前だ。
 そもそも昨日の朝の時点でおめでとうの言葉があって然るべきなのに、すっかり失念していた。
 エレンはそのことを言及しなかったがおそらく気にしていただろう。だからいつもなら突っかからないような些細なことに突っかかってきたのだ。
 しかも、早く帰ってきてほしいと言ったのも誕生日の些細な“お願いごと”だったにちがいない。
「くそ…なんて詫びれば……」
「……今日を越えれば業務も落ち着く。早めに帰すから、エレンと会ってくるといい」
「……エルヴィン」
「昨日は俺も悪かったからな」
 とりあえず、エレンの携帯にはつながらないのでエレンの実家に掛けるしかない。それで直接会いに行って詫びよう。
 そうは思ったものの誕生日のプレゼントすらない状態だ。
 帰りに急いで見繕っていくべきか、と頭を抱えながらリヴァイはその日の業務に当たった。


      * * *


「おい、なんでてめぇは俺の家に突然転がり込んでんだ」
「いーだろべっつにー、彼女もいねぇんだしよぉ」
「余計なお世話だこの野郎」
 エレンはリヴァイと同棲しているマンションから必要最低限のものだけ持ってジャンの一人暮らしのアパートに転がり込んだ。
 勝手にソファーを占領し、ジャンの本棚から抜き取った漫画を読んでいる。深夜の突然の来訪にジャンは心底迷惑そうだ。
「何だって誕生日の深夜にこんなところに来てんだよ。愛しのリヴァイさんとの夜はどうした」
「……帰ってこねーからいーんだよ」
「あ?」
「あの人、俺の誕生日なんか忘れてるし」
 今のリヴァイさんの仕事が繁忙期に入っていることはわかっている。
 ここのところは夜遅くに帰ってきて朝早く出勤していくし、休みの日となれば泥の様に眠っていた。
 そのことはわかっていたからエレンも邪魔をするつもりは無かったし極力支えになろうと家事もこなしてきた。
347 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:22:25.88 d
 それでもここのところリヴァイが帰ってくるとスーツは放りっぱなしだし、前はやってくれていた食器洗いもしてくれない。
 食べたら皿はそのままテーブルに置きっぱなしだ。
 見かねてせめて皺になる前にスーツはハンガーにかけてほしい、とか皿はシンクまで運んで水に浸しておいてほしい、と言うのだが、ちっとも守ってくれない。
 工夫を凝らしてリヴァイに守ってもらおうともしたのだが効果は無かった。
 エレンが大学生になってだいぶ経つ。
 甘えられているのだと最初は思っていたが最近は体のいいホームヘルパーなのではないかと思い始めた。
 だって最近、セックスもしていない。忙しくて疲れているとはいえ、一緒に暮らしている恋人がもうずっと肌を触れ合わせていないのだ。
 会話すら成り立っておらず、リヴァイはエレンの話に適当に相槌を打つのみ。これで本当に恋人の同棲だと言えるのだろうか。
 学生のエレンには社会人であるリヴァイの大変さはわからない。
 わからないなりにせめて邪魔にならないように恋人として支えようと積極的に家事をこなしてきたつもりだったし、疲れているリヴァイに文句を言うつもりは無かった。
それでも、せめて自分の誕生日くらいは二人で一緒に恋人らしい時間を過ごしたかった。
 正直忘れられていたことは少し悲しかったし、その日の朝はそれで“早く帰ってきてほしい”というエレンの話を聞いていなかったリヴァイに対して突っかかってしまった。
 それでも一緒に居られればそれでいい、と思い直してメールを送ったというのに。
 日付が変わっても帰ってこなかったリヴァイについに堪えられなくなったエレンは部屋を飛び出し二駅ほど離れたジャンのアパートまでやってきた。
「……一緒に暮らしたら、もっと毎日が楽しいんだと思ってた」
 エレンとリヴァイは家が近く、家族ぐるみでの付き合いが昔からあった。
 だからリヴァイが年の離れたエレンの面倒を見るかたちでよく一緒に居たのである。
 小さい頃からずっと憧れだったリヴァイ兄ちゃん。運動もできて頭も良くって喧嘩も強い。
 とにかく格好良くって大好きだった。
 それがいつから憧れから恋に変わったのかは覚えていないが、少なくとも中学の思春期には自分の彼への想いは定まっていた。
 彼女が居たところを見た事もあったし、男でガキの自分に希望は無いだろう。
348 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:22:34.95 d
 全てが順調にいっていると思っていたから、まさか一緒に暮らし始めてこうなるとは思わなかった。
 マンネリもいいところでまさか今まで忘れられたことのない自分の誕生日を忘れられるなんて。
「よくわかんねぇけど、喧嘩したのか?」
「……喧嘩にすら、なってなかったかもな」
 あの人、途中なのに仕事に行っちまったし。
「……悪かったな、夜遅くに。実家に戻るのもこの時間じゃ無理があって。昼間になったら実家に帰る」
「まぁ、別にいいけどよ。あの人に連絡とか一応入れた方がいいんじゃねぇか。心配するだろ」
「いいよ、どうせ俺の連絡なんか見てないと思うし」
 どうせ自分のことなんか気にしていない。携帯に連絡が来ることを期待したくないのであえて着信拒否にした。
 これなら最初から着信が来ないとわかっているので諦めもつく。
「もう駄目なのかな……」
 漫画を上に乗せて顔を隠す。あの人のことが好きなのに、傍に居たいって思うのに。
 こんな日々がもうずっと続いていて、それがエレンにとっては辛かった。

 ―――結局、リヴァイさんにとって俺はどうでもいい存在だったのかもしれない。

一緒に暮らしているのに、前よりも心が遠く離れているように感じた。


      * * *


 リヴァイは重い足取りで帰路に着いていた。時刻は夕方、かなり早い時間に業務を終えることができた。
 ついでに明日有給をもぎ取って、あとはエレンに会いに行くだけだと一先ずエレンが帰っているだろう彼の実家に電話をかけた。
 ところがエレンは実家には帰っていないらしい。
 何かあったのかと聞いてくるエレンの母に対して何でもないと誤魔化して切るとリヴァイは一気に落ち込んだ。
 エレンは今どこに居るのだろうか。場所を知ろうにも未だ着信拒否をされている。
 唯一エレンの友人であるアルミンの連絡先が手掛かりになるかもしれないが、明らかに自分が悪い上にエレンに避けられているとなれば彼にもエレンの居場所を教えてもらえないかもしれない。
 そう思うとアルミンに連絡をすることもできず、リヴァイは独りマンションに帰るしかなかった。
349 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:23:01.70 d
「……ただいま」
 自分でロックを解除し部屋に入る。やはり部屋は薄暗く誰も居ない。
 リヴァイはため息をついてドアを閉めた。
 思い返してみれば最近の自分は酷かった。仕事が忙しい、疲れていると言ってろくにエレンのことをかまってやれなかった。
 前まで嫌がられるほど頻繁に盛っていたというのに今は肉体的疲れでとんとご無沙汰だった。
 しかも、一緒に暮らしていて自分が働いているからといってエレンに家のことは全部任せっきりだ。
 一人暮らしの時は自分で全てできていたことなのに、エレンに甘え過ぎていた。
 エレン自身も「家賃を払ってもらっているから」と様々な家事を請け負ってくれてはいたが協力するところは協力しようと約束していたのに。
 ワイシャツの場所がわからないとか、どんだけだ。自分の愚かさに嫌気がさす。
 デートもしていない。前にエレンと二人で出掛けたのはいつだったか。そういえば、最近エレンはどんな話をしていただろう。
 エレンの最近の様子が思い出せない。こんな様子ではエレンの欲しいものが浮かぶはずもなかった。
 愛想をつかされても仕方がない。
 レポートで忙しい時期もあっただろうに全部家のことはやってくれていた。
 自分のことばかりでエレンのことを考えてやれていなかった。
 エレンが当たり前にくれる気遣いに、笑顔に、温もりに。
 自分は安心しきっていたのかもしれない。
 夜遅くに帰ることが多くてエレンに先に寝ることを言いつけて、エレンの寝ているベッドに潜り込んで抱きしめればその温もりに安堵する。
 それで日々の忙しさも乗り切れた。繁忙期が終わるまでだから、と自分だけ一方的に甘えて満足していた。
 エレンが物わかりよく何も言ってこないのをいいことに。
 あまつさえ誕生日すら忘れていたのだから救いようがない。
 昨日の朝のあれはエレンの我慢の限界を知らせる悲鳴だったのだ。それなのに自分は、なんて最低なことをしてしまったのか。
350 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:23:13.84 d
「くそ……」
 もう何もかも後の祭りだ。現実逃避にベッドに沈もうかと寝室に向かう。
 そこでベッドに身体を投げ出そうとして、エレンに口を酸っぱくして言われていたことを思い出した。

『スーツは皺になっちゃうんでちゃんとハンガーにかけてクローゼットにしまってください!』

 リヴァイはジャケットを脱いで埃を払う。潔癖の気があるリヴァイの部屋がこれだけ清潔に保たれているのもエレンのおかげなのだ。
 リヴァイは苦い思いでハンガーにかけてしまうべく、クローゼットを開いた。
「……これは」
 クローゼットの扉の内側にテープで貼られた小さいメモ用紙。 そこにはエレンの字で『よくできました!ご褒美にハグ一回!』と書かれている。そこでリヴァイはふとエレンが少し前に話していたことを思い出した。

『リヴァイさんがちゃーんと俺の言ったことを守ってくれたら、ご褒美あげます!』

 リヴァイははっとなってジャケットをクローゼットに突っ込んでリビングに走った。
 キッチンへ行くと生ごみに捨てられた昨日のご馳走が目に入る。
 それに心を痛めつつ、食器棚を開けてみるとそこにはまた紙がある。その紙には『食器の片付けありがとうございます!ご褒美にキス一回です!』と書かれていた。
 リヴァイは他にも思い当たる様々な場所を探った。
 ごみ袋の置いてあった場所には
『ゴミだしありがとうございます!ご褒美にひざまくら一回!』、掃除機には『自分で掃除するの久しぶりですよね?ご褒美に肩たたき一回!』、洗濯用洗剤の箱の内側に張られた紙には『洗濯機回してくれるんですね!ご褒美に一緒にお風呂一回!』
と。

 ―――俺はどうしようもないクソ野郎だ。
351 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:24:02.33 d
 エレンはこんなにもリヴァイと一緒に暮らすことに努力してくれていた。
 それなのにその甲斐もなく、何もしようとしないリヴァイに対して何を思っていただろう。
 誕生日の朝になっても“おめでとう”の一言すらなく、“うるさい”とまで言ったリヴァイに。
 あんなにいつも慕ってくれていた愛しい恋人に、自分はどこまで酷いことをしていたのだろう。

「……打ちのめされてる場合じゃねぇ」
 リヴァイはスマートフォンを取り出すと急いでアルミンへと電話をかけた。体裁を気にしている暇など無い。
『もしもしリヴァイさん?どうし』
「エレンがどこに居るか知らないか!?」
 矢継ぎ早なリヴァイの問いにアルミンが驚いたような声を上げた。
「喧嘩して部屋を出て行った。全面的に俺が悪い。エレンからは着信拒否されている」
『うわぁ、そんなことが…』
「今すぐ会って謝りたい。だが実家にも帰っていない。心当たりはないか?」
『うーん、しいて言うなら……ジャンのアパートですかね?』
「教えてくれ!」
 エレンはアルミンには何も言っていなかったらしい。
 アルミンはリヴァイの必死の追及に、すぐにジャンのアパートの場所を教えてくれた。車に乗り込んでリヴァイは急ぐ。
 ……それでも、別れを告げる紙と一緒に置かれていなかった鍵と、前にプレゼントしたペアリングに希望を持っていいのなら。諦めるわけにはいかなかった。


      * * *


「おい、エレン!お前いつまで寝てんだよ!」
「んあ!?」
 ジャンに身体をゆすられてエレンは目を覚ます。
 深夜にジャンのアパートに来たエレンは結局明け方まで眠ることができず、ようやく眠りについて気づいたら夕方になっていた。
「うわ、やっべえ。もうこんな時間かよ」
「ぐーすか寝すぎだろお前」
「わり、すぐに支度してここ出るわ」
 勝手に借りていたジャンの部屋着を脱いで着替える。
 身支度を済ませたエレンはさっさとジャンの部屋を出た。
「悪かったな」
「いーからとっとと仲直りしろよ」
「……おぉ」
 エレンが苦笑いで手を振るとジャンは微妙な顔をしつつガチャリとドアを閉めた。
 それを見届けてから、エレンは俯いて歩き出す。
 これから実家にでも帰ろうか。そう思っていた。
352 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:24:12.34 d
「―――エレン!」
「え?」
 そう思っていた矢先、エレンを呼ぶ声がした。声の方を見ようと顔を上げれば、リヴァイが走って眼前まで迫っていた。
「り」
「エレン!」
 驚いて立ち止まったエレンを、リヴァイは思いっきり抱きしめた。
「リ、ヴァイさ…」
「すまなかった!」
 声を大にして謝ったリヴァイには必死さが窺い知れる。エレンは目を白黒させた。
「え、あの」
「俺が悪かった!昨日はお前の誕生日だったのにそれを忘れて接待になんか行って!話も聞いてやらんし家事は全て任せっきりだった!」
「いや、その」
「お前がやってくれるのをいいことに何もしないでとんだ最低野郎だった!」
「リヴァイさん!声が大きいです!」
 これでは周辺に丸聞えだ。エレンは慌ててリヴァイの口を手で塞いだ。もがもがと口を動かしているリヴァイにため息をつきながら、冷静になったエレンは言った。
「とりあえず、ここで話しているのは周りの迷惑になるんで……一緒に帰ります」
 マンションへ。そう言ったエレンはリヴァイの車に乗り込んだ。


「エレン、すまなかった」
 マンションに戻ってきて開口一番にリヴァイは再びエレンに謝罪した。
「最近の俺は、忙しいからってお前を放りっぱなしだった。挙句家事も全部お前に任せてだらけていた……ワイシャツがどこにしまってあるのかすら、わからなかった」
「……ワイシャツは箪笥の引き出しの一番下です」
「お前が“ご褒美”を用意してくれていたのにちっとも聞いていなかった」
「ああ、気づいたんですね」
「……昨日の朝も、お前の誕生日を忘れていたくせに逆ギレして、帰りも遅くなって、すまなかった」
 その言葉に唇を引き結んだエレンは俯いて、リヴァイから視線を逸らした。
 そのことに胸が締めつれられる。……そんな顔をさせている自分はやはり最低だ。
353 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:24:38.72 d
 頭を下げるリヴァイにエレンは笑う。今まで年上で完璧なイメージしかなかったリヴァイだったが、実際は少し違った。
そして、それもいとおしかった。
「……エレン、今更だが、誕生日おめでとう」
「はい」
「明日は有給を取った。埋め合わせ、といったらあれだが、明日は好きなところに連れて行ってやるし、何でも買ってやる」
 リヴァイがそう言うとエレンは首を横に振る。
「そういうのいらないんで、明日は一日中家に居て、ずっと一緒に居たいです」
「〜〜〜お前は!」
「へっ?」 
その言葉にリヴァイはたまらなくなってエレンをソファーに押し倒した。
「これ、全部消化していいか?」
「あっ」
 リヴァイが見せたのはエレンが“ご褒美”を書いたいくつものメモ用紙だ。顔を真っ赤にしたエレンが無言でゆっくりと頷くとリヴァイはエレンに口付けた。
 その後、二人は久しぶりの濃厚な夜を過ごすこととなった。



―――それ以降、二人の同棲生活は少し変化した。

 リヴァイは積極的に家事をするようになったし、エレンに感謝のキスとハグを贈るようになった。どんなに仕事が忙しかろうとも、エレンとの時間を大切にした。
 一方エレンはというと、寂しい時は素直に言うようになり、リヴァイが家事を手伝ってくれたり嬉しいことをしてくれた時は、自分からキスを贈るようになった。
 どんなに距離が近くなろうとも、お互いがお互いを思いやることを忘れない。一緒に居る日々を大切にするようになった。

当たり前のように与えられるそれは、かけがえのないものなのだから。


―――Happy birthday, Eren!!



End.(大爆笑)
354 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:25:08.49 d
とあるカフェの午後の話

     <リヴァエレ>


正月を過ぎて、今年は暖冬だと言われているが、それでもやはり寒いものは寒い。
やっと訪れた週末の土曜日はあいにくの曇り空で、少しばかり風が強くてより寒さを感じる。
それでも、やはり恋人と一緒だと心が満たされていると暖かく感じるものである。
エレンはやっと出会うことができた前世からの恋人、リヴァイと週末のデートを楽しもうと、いつものカフェに来ていたのだが、少々困った状態になっていた。

「ほら、エレン。これもうまいぞ」

差し出されるフォークには、エレンの好きなガトーショコラが食べやすいように乗せられてエレンの口元が開くのを待っていた。
差し出しているのはもちろん、エレンの恋人、リヴァイ。

「あ、ありがとうございます、リヴァイさん。でも、自分で食べれますから」
「俺が食べさせてやりたいんだ。ほら、口開けろ」

早くしろと口元に軽くフォークを持ってこられてしまえば口を開くしかなく、エレンは甘さが控えめでほろ苦いビターのチョコレートの美味しさを感じながらも、内心焦っていた。

「うまいか」
「ん、おいしいですよ。リヴァイさんも食べてください」
「俺はいい」

あまり甘いものが好きではないリヴァイなので、強く勧めることはしないが、それならばケーキ屋がメインの
この店に来る必要はないというのにエレンが甘いものが好きだからという理由で、リヴァイは休日になるとこの店に来たがるのだ。

リヴァイとエレンの住むマンションから徒歩10分の場所にあるこの店は、メインがケーキ屋で、併設したカフェも落ち着いた雰囲気が人気の店で、平日はもちろん、休日ともなるとかなり混雑する。
ケーキの美味しさはもちろんだが、飲み物の種類が豊富で、どれを選んでもハズレがないと人気の店なのだ。
だが、不思議なことにリヴァイとエレンがこのカフェに入店する時に待たされたことがない。
355 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:25:43.86 d
いつもなぜか窓際の中央の『予約席』とプレートが置かれた席にすぐさま案内され、ゆっくりと二人の時間を楽しむことができるのだ。
    
「エレン。こっちも好きだろ」

濃厚なミルクを使ったプリンがたっぷり乗ったプリンアラモードに手を伸ばしたリヴァイがスプーンですくってまた口元に運ぶ。

「えーと、その……」
「ほら、食べろ」
「んぅ……」

口の中に入れられれば、美味しいと思う。本当に思うのだが少しばかり恥ずかしい。

「やった!今日はこの席でラッキー!」
「相変わらずラヴラヴねー」
「見てよ。彼氏のあの嬉しそうな顔」
「ってか、ケーキの甘味を感じなくなったわ」

周囲がざわりとなるが、原因は間違いなく、リヴァイ。そしてエレン。
実は、この店で店員はもちろん、客ですらエレンたちの顔を知らないものはいないというくらいに覚えられてしまっていた。
いや、それどころの話ではない。現在、カフェは満員。
しかも本来カフェで相席などありえないというのに、席という席はすべて埋まっている状態で、そのことに誰も文句も言わなければ、不満もないようだ。
    
「先に来ててラッキーだったね」
「この席ならばっちり見えるわ」
「実況中継、してあげないと」
「あ、店の宣伝来てるよ」
「店員さん、ナイス!」

ツイッターがすごい勢いで拡散していく。
カフェの店員は、なぜか店の宣伝を打ち込む。「甘い甘い時間をお過ごしください」と。
実はこれ、知るものが知るあのカップルが来ているぞという暗号でもあった。個人情報流出が叫ばれる中、店員が苦肉の策で編み出した方法で、意外にもこれが好評なのだ。
『これ以上、あのカップル見たさに人が増えられると座る席がなくなる』というのが理由である。
あのカップルというのはもちろん、リヴァイとエレン。
外は極寒の1月だというのに、この店だけは春……というには少々暑苦しいかもしれないが。
356 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:26:09.08 d
前世の記憶を持って生まれたエレンは、遠い遠い昔に恋人だったリヴァイを捜していた。
リヴァイも記憶を持っていたので、必死になってエレンを捜してくれていたのだが、なかなか出会うことができず、エレンが大学に進学するために上京し、一人暮らしを始めたころ、ようやく再会することができた。
壁に囲まれた世界で、巨人を倒すために命をかけて戦い続けた日々の中、エレンは調査兵団の希望であった兵士長リヴァイに恋をした。
共に戦う仲間としての信頼が深くなっていくにつれて思いは強くなり、溢れだしそうになった時にリヴァイも同じ思いを持っていることを知った想いを伝えあい、恋人になってもおもわしくない戦況の中、共にいることが出来ないまま命を落とした哀しい過去。
この平和な日常で、再びリヴァイに会えたことは、エレンにとって最高の喜びだった。
リヴァイも同じだったのだろう。
あの頃、伝えることのできなかったエレンへの想いを、隠すことなく伝えてくれる。
過去の世界でリヴァイは無口な人だった。
だがそれは彼の立場がそうさせていただけのことで、本来のリヴァイはそれほど無口というわけでもないのだ。
他愛ない話もするし、冗談だって言う。エレンに対して惜しみなく言葉で愛情を伝えてくれる。
そう。実はそれが少しばかり問題だった。

調査兵団にいた過去の世界で、リヴァイは本当に苦しんでいた。
次々と死んでいく仲間や様々な思惑をかいくぐって戦場に立たなければならないリヴァイは、エレンに気持ちを伝えることが出来なかったことをひどく悔やんでいたのだ。
その反動なのか、今リヴァイは本当にエレンへの気持ちを余すことなく伝えてくれる。行動にも躊躇いがない。
………それが二人きりだろうが、周りに人がいようが、往来であろうが。
たとえ渋谷のスクランブル交差点のど真ん中であろうとも、リヴァイはエレンを可愛いと思ったら、素直に口にしてしまうし、抱きしめる。
羞恥心がどこかに消えてしまって影も形もないのだ。
あれ、リヴァイさんってこんなに素直な人だったっけ?人前でもこんなにくっつくような人だったっけ?
あれ?
あれ?
違う。この人、俺の知ってるリヴァイさんじゃないと本当の意味で理解するまでに半年かかった。
エレンはエレンで相当浮かれていたので仕方ない。
357 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:26:26.57 d
ようするに、リヴァイは恋人であるエレンに対して、周囲がドン引きするほどの甘い言葉を臆面もなく言い放つ、ちょっと……、いや、かなり恥ずかしい人になっていたのだ。
「お前の手は柔らかいな」
「リヴァイさんと比べたら、ですよ」
「俺の好きな柔らかさだ」

ガト―ショコラとプリンアラモードをすべてリヴァイの手によって食べさせられたエレンは、ようやく恥ずかしさから解放されたとホッとしたが、片手はリヴァイの手によってテーブルの上で柔らかく握られたままになっている。
ふにふにと手の甲を突いてきたり、少し強めに握ってきたり。とにかく触れているのが嬉しいとでもいうように、離してくれない。

「これからどうします?買い物でも行きましょうか」
「そうだな。買いたいものがあるなら行こう」
「特にこれといってあるわけじゃないんですけど、たまには出かけたいところとかないですか」
「お前と一緒ならどこでもいい」
「一緒ですよ。せっかくの休みだし」
「そうだな。やっとお前と一日中一緒にいられる」

お前誰だよ、と思ったあなた。あなたは正しい。
だが、このリヴァイは正常運転であり、しかもこれくらいは序の口である。ボクシングでいうならジャブ。
軽い軽いジャブだ。
このカフェでは有名となりつつある二人の会話を周囲の人間が耳を澄ませて聞いているのだが、エレンしか眼に入っていないリヴァイはそんなものは関係ないし、エレンはエレンでまさかそこまで注目されているとは思っていなかった。
さすがにリヴァイに食べさせてもらう時は周囲の眼が気になったが、自分たちの会話を聞いて身悶えしている人がいるとは思っていない。
                  
「ねぇ、あの二人って一緒に暮らしてるんでしょ?」
「そうよ。半年前にリヴァイさんがエレン君を必死に口説き落として暮らし始めたの」
「なら、ずっと一緒にいるんじゃない」
「バカね、仕事で離れてる間が辛いのよ」
「どんだけ……」

リヴァイとエレンの座る窓際のテーブルを中心に、すべての席は埋まっている。
若い女性ばかりなのには、もちろんこの店がケーキ屋のカフェという理由があげられるが、それだけではない。
彼女たちの目的は、間違いなく、リヴァイとエレンであった。
358 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:26:40.86 d
ストーカーにならない程度の情報は共有され、この店の常連客は二人が一緒に位していることや、好んで食べるこの店のメニューくらいは把握している。
家を付きとめたり、あとをつけたりという行為は厳禁だ。
これは徹底されている。
あくまでも、この店で客としてこっそり聞き耳を立てて楽しむ。
それがこの店の客としての正しいあり方だと彼女たちはルールを順守していた。

「あー、この二人の会話を聞いて、来週も頑張れる気がするわ」
「ブラックのコーヒーがシロップの原液飲んでる気分になるのに、やめられないのよね」

こそこそと交わされる彼女たちの会話は、エレン達の耳には入らないようにひそめられている。
突然、リヴァイの手が、エレンの手を持ち上げて手の甲に唇を落とした。

「たまに正面に座ると、お前をまっすぐ見ることが出来ていいもんだな」
「リヴァイさん…、だから今日は隣に座らなかったんですか」
「ああ。だが、こうやってテーブル越しにしかお前に触れられないのは辛い」
切ない表情でリヴァイが握っているエレンの手を両手で包み込んでしまう。
赤くなったエレンは恥ずかしそうだがどこか嬉しそうだ。
背筋が寒くなるほどにくさいセリフだというのに、許されてしまうのはアレである。いわゆる但しイケメンに限る……というやつだ。
                  
「すごいわね…。私、今日初参加だけど、まさか本当にこんな人いると思わなかったわ」
「初参加なの?ラッキーじゃない。でもTwitterとかではかなり有名でしょ」
「都市伝説みたいなものかと思ってたの」

今日初めて参加した女性は、とんでもない美形が、超可愛い少年に甘い言葉を囁くというTwitterが賑わっていることを知り、友人に誘われてこの店に辿りついた新参者だった。
午前中からこの店に入店し、ケーキを楽しみつつ友人と話が盛り上がって長居していたら、二人が現れて、気が付けば周囲の席がすべて埋まっていた。

「カッコいいとは聞いてたけど、あそこまでカッコいい人と思わなかったし、恋人もあんなに可愛い子だと思わなかったわ」

さらに言えば、ここまでリア充爆発しろと思えるとも。

「まだまだ初心者ね」
「大丈夫よ。そのうち爆発しろなんて思わなくなるから」
「むしろもっとやれって思うようになるわ」
359 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:27:08.46 d
この店に訪れる女性は下は10代から50代まで様々な年齢層で、中には当然お腐れ様もいる。
お腐れ様率は高い。だいたい比率でいえば6対4といったところか。
ちなみにこの対比はお腐れ、乙女系といった2種類に大きく分けられる。
この分類がよくわからない初心者のために簡単に説明すると、お腐れは、まあ、わからない人はいないだろう。
男同士のカップルをこよなく愛し、カップルでないものまで脳内でカップルに返還させる特殊能力を保持した女性の尊称である。
最近は市民権を得たかのようにその数を増殖させている(異論は認める)
次に乙女系。
 これは乙女ゲームをこよなく愛す、二次元の世界に嫁やら夫やらがいる女性のことでもあるのだが、中には本当に純粋に自分もこんな甘いことを囁かれたいという願望を持った一般人も含まれているので要注意だ。(異論は認める)
一見、この女性たちにつながりなど何もない。
服装も違う、年代も違う、趣味、嗜好も違う。
なのに、彼女たちの一体感というものはすごかった。

「これを見ないと落ち着かなくなってしまったのよ。もう、中毒よね」
「わかる…!全身を駆け回る甘味がクセになるのよ」

周囲のざわつきなど耳に入っていないリヴァイは今日もエレンに思うがままの言葉を伝える。

「夕食は俺が作るからな」
「たまには俺が作ります。リヴァイさん、仕事で疲れてるのに…」
「お前がうまそうに食ってくれるのが俺の疲れを取ってくれるんだ。お前はただ座って待ってくれてりゃいい」
「俺も、たまには作りますよ」
「お前のこの手が、荒れることを想像するだけで気分が悪くなる。洗いものもするなよ」
「いや、1週間に1回もさせてくれてないじゃないですか。洗濯だって俺、一緒に住むようになって1回もやってないのに」
「お前がする必要はない。クリーニングに任せろ」
「下着とか、肌着くらい俺、洗います」
「それは俺の役目だ」

エレンは生活をするうえで必要な家事を一切やっていない。
リヴァイがやらせてくれないのだ。

「どんだけ過保護なの」
「手が荒れるって、今の洗剤、荒れないよね」
「炊事、洗濯やってるの、彼氏なんだ」
「羨ましいー。あたしの彼氏なんか、何にもしないのに」
「ってか、彼氏いるだけいいじゃない」
360 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:27:18.97 d
エレンの手をまだ離さないリヴァイは、正面で向かい合って座っているのがもどかしくなっているようで、しきりにエレンの手を引っ張っていた。

「リヴァイさん、引っ張らないで」
「こっちに来ないか?」
「いかないですよ。今日は向かいあわせが良かったんですよね」
「もう十分だ。やっぱりお前が隣にいねぇと落ち着かねぇ」
「我慢してください。これ、飲み終わったら出ましょう」
                  
まだ残っている紅茶を示してリヴァイを説得するエレンは、困った顔をしながらも幸せそうだ。
恋人に甘い我がままを言われて喜ばないわけがない。

「今から買い出しに行きましょうか。ちょっといいスーパーで買い物しましょう」

リヴァイの好きなワインを買って、それから二人で家に帰ろうと。

「荷物は持つなよ。俺が持つ」
「そんなたくさん買い物しないから大丈夫ですよ」
「お前は俺の手を持ってろ」

それは手を繋げと言っているのだが、こんなセリフ、テレビかゲームの中でしか聞いたことがない周囲の女性たちは身悶えた。

「待って…、心臓が痛い」
「いきなり投下してくるから、背中がぞわぞわする」
「あのいい声で、俺を持ってろ、なんて卑怯すぐる……!」
「ああ……、何で私、ホットココアなんて頼んじゃったんだろう。砂糖の味しかしない」
「言われてみたい……、あ、ううん、本気で言われたら引く」
「あの彼が言うから許されるのよ」

世界の真理、ただし、イケメンに限るの発動である。

紅茶を飲み終えたエレンが席を立ち、出口に向かうために足を進める。
リヴァイはエレンよりも出口に近い席なので、エレンが通り過ぎた後に立ち上がるのかと思いきや、横を通り過ぎようとしたエレンの腰を掴み、そのまま引き寄せて自分の隣に強引に座らせてしまう。
                  
「ちょ、リヴァイさん」
「お前が悪い」

エレンの肩に顔をうずめて、甘えるように眼を閉じて擦り付け、独特の色気のあるあの低音ボイスで囁いた。
361 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:27:45.40 d
「腹が減った。俺の好物が喰いてぇ」
「好物ですか?じゃあ、ついでに買って帰りましょう」
「俺が喰いたいのはとびっきり甘いこれなんだが」

ちょん、とリヴァイの指がエレンの唇をつつき、リヴァイの言っていることを理解したエレンの顔が真っ赤に染まる。
ガンッ、ガコッ。

「腰にキた……」
「ダメ。顔があげられない……凄すぎる」
「んー、これこれ。この背中を這い上がる感覚が癖になるのよ」
「まだまだイケるよぉ。こいこいっ」

慣れていない新参者はここでテーブルに突っ伏した。
恥ずかしくて顔があげられない、腰にきてテーブルに突っ伏すしかないなど、理由はあるが、常連客はまだ眼を輝かせている。
これが常連客の慣れというものなのか。
「こんなところで何言ってるんですか。ほら、出ましょう」
「もう少し」
                  
エレンの腰を引き寄せ、まだリヴァイは離す気がないようだ。

「家に帰ってからでいいじゃないですか」
「いやだ。今から買い物に行くなら、こうやって抱きしめることは出来ねぇだろ」
「だから、家に帰ってから……」
「エレン」

リヴァイがエレンの顔を覗き込み、唇が触れそうなほど顔を近付ける。

「お前の唇は俺とキスすることと、俺に愛してるって言うためにあるんだ」
それ以外、今は聞きたくない。

いや、そこは食べることも入れてやってくれ。本来の使用目的が完全に除外されている。
ガツンッ、ドンッ。
テーブルに頭を打ちつける音と、壁にぶつけた音が店内のそこかしこから聞こえてきた。

「鼻からシロップが出そう……」  
「吐く……。蜂蜜を吐く……」
「これは……、つうこんのいちげき……」
「子宮が疼いたわ」
「こんな攻撃が来るとは……」

歴戦の勇者……ではなく、常連客もテーブルに突っ伏す見事なリヴァイの攻撃。
カフェの店内は、テーブルに突っ伏す女性客にあふれていたが、店員は気力を奮い立たせ、脚を踏ん張り続けていた。
362 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:27:53.35 d
今まで、すべての光景をこの目に焼き付けてきたこのカフェのウエイトレスとして、私は負けない、と何と戦っているのかわからないが彼女は、立ち向かう。
だが、相手は強敵。
                  
「好き…ですよ。じゃなきゃ、一緒に住んでません」
「俺はお前のことが好きなんじゃねぇ。愛してるんだ」

クリティカルヒット。
ウェイトレスは400のダメージを受けた。

「もうダメ……。腰が抜けて……」
「全身が練乳に漬かってる感覚が……」

新参者たちはすでに戦闘不能状態だ。
常連客もすでにヒットポイントは残っていない。
今日もこのカフェで、甘さにやられた女性たちの屍が大量生産されてしまうのだろう。

「俺もだよ。リヴァイさん。こうやって一緒にいられるの、嬉しい」

少しばかり拗ねてしまったリヴァイにエレンも恥ずかしさを堪えて小さく囁く。耳が異常に鋭敏になっている女性たちはもちろん聞き逃しはしない。
そして本日、最大の攻撃が投下された。

「あと長くても70年しか一緒にいられねぇんだぞ。少しでも長く一緒にいてぇじゃねぇか」

リヴァイのエレンに甘えるような声音に、ついにウエイトレスの膝が崩れる。
あと70年。
それは今から死ぬまで一緒にいることは決定なんですね。
しかも70年しかと言いましたね。
短いんですか?
70年は短いから足りないと言っているんですね。
ありがとうございます。
膝と腰が同時に砕けたウェイトレスに、その場の誰も責めることなど出来ないだろう。
彼女はよく頑張った。そう褒め称えてやりたい。
ようやくリヴァイが納得したのか二人で席を立ち、会計を済ませるためにレジに向かったのを、壁に縋りながら必死に立ち上がって「ありがとうございました」と震える声で送り出したは、カフェの店員として優秀だった。
                                          


手を繋ぎ、二人寄り添って歩く後ろ姿を見送った店内では、店中の女性客が脱力し、その後、ブラックコーヒーの注文が殺到することとなる。
平和な休日の光景であった。
363 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:28:23.54 d
 秋も終わり、深夜の風はすっかり冷たいが、空にまたたく星はいっそう澄んで夜道を照らしている。
 リヴァイは足取りも軽く帰途についていた。原因はわかっている。
 エレンだ。
 まだ付き合いたての恋人であるエレンとは、人生の転機となる衝撃的な出会いからこっち、半同棲が続いている。
 今日は会社にとって重要な接待があり、リヴァイも出席しなければならなかった。
 数日前にそれを聞いたエレンは友人と飲みの約束をし、今日は実家に帰ると言っていたのだが、先程スマホをチェックしたところリヴァイの家に帰っているというメールがきていたのだ。
 一昨日会ったばかりとはいえ、やはり浮かれる。『今日のオレは一味違います』という意味深な追記は期待していいということだろうか。どんな味がすることやら。
(寝てなきゃいいがな)
 とはいえ寝てたら寝てたで明日は休みだ。たっぷり堪能させてもらう。
 そんなことを考えながら自宅の扉を開けたリヴァイは、すぐに違和感に気がついた。
 エレンの靴があり、リビングの電気がついている。
 しかしいつもならばエレンがおかりなさいのハグをしに犬のように走ってくるのだが、それがない。
 消灯を忘れて寝たのだろうかとリビングに入り、リヴァイはそこでソファに突っ伏しているエレンを発見した。
「……エレン?」
 寝ている。しかもただ寝ているのではく、上半身は何故か裸でビニール紐がぐるぐると巻かれてあった。
 ズボンのベルトは外されテーブルに放られており、そのテーブルにはガムテープとはさみが置かれていた。
 どういうことだ。何がしたかったのか謎だが、とにかくこのままでは体が冷える。リヴァイはエレンの肩を揺さぶった。
「おいエレン起きろ。風邪引くぞ」
「ん……」
 むにゃむにゃと口を動かすもののエレンは起きない。仕方ない。
 ゆるく巻かれただけのビニー紐を外し、リヴァイはエレンを抱き上げた。
「んぅ〜」
 むずがるエレンが、目を閉じたままリヴァイの肩口に額をぐりぐりと押し付けてくる。
 いとけないエレンの様子に機嫌が浮上する。
364 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:28:32.72 d
 寝室へ入り、エレンをベッドへ座らせたリヴァイは布団をあけてエレンの体をそこに滑り込ませてやった。
 ズボンと下着も脱がせる。
 そこまでしてもエレンは目を開けない。
 どうも大分飲んできたようだ。
(今日のお楽しみはなしか)
 少々残念に思いながら、エレンにそっとくちづける。
 そうしてからリヴァイは音をたてないようベッドを離れた。
 コートを脱いで所定の位置へかけ、リビングで部屋着に着替える。
 シャワーを浴びるつもりだったが、その前に冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しエレンの眠るベッドへ戻った。
 それほど飲んできたのなら水を飲ませておいたほうがいいだろうと思ってのことだ。
 あたたまった部屋ではエレンが裸の肩を出して眠っている。
「……」
 足の裏から頭のてっぺんまで貫いた充足感に、リヴァイは無言でエレンの寝顔を撮ることに決めた。
 そうでもしないことにはこの気持ちが収まらない。くすぐったいくらい、深くやわらかい感情。
 まさか自分が恋人の写メなど撮るようになるとは。
 感慨深くなりながら何枚か角度を変えて撮っていると、音に気づいたのかエレンがもそもそ体を動かし、ゆるり瞼を開けた。
「ただいま」
 髪を梳きながらそっとくちづける。
 酒と眠気でとろんとしている金を見つめ、今度はもう少しだけ深くキスすればエレンの唇が受け入れるように開いてゆく。
 吸い込まれるように、飽きず何度も音をたててくちづけていれば、エレンの反応も段々しっかりしてくる。
 このままやっちまうか。しかしシャワー浴びてえなと迷っていると、唇を離したエレンがふにゃりと笑った。
「リヴァイさんだあ」
 とろけた無防備な笑顔にリヴァイの心臓がどくりと音をたてた。
 だから反応が遅れた。
「しばってえ」
「あ?」
「しばるー」
 くすくす笑っている。
 言葉も舌ったらずで思った以上に酔っているようだ。
 エレンは強い筈なのでかなり飲んだのだろう。だとしても聞き捨てならん。
「しばるって、縛る、か? Tie me up please?」
「はい! ぷりーず!」
 子供のようにうんっと頷いたエレンが首に抱きついてくる。
 シャワーを諦めたリヴァイはそのままエレンの横に滑り込んだ。
365 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:29:10.05 d
「なんで、こんなこと…!」
「お前、女とセックスすんの大好きだろ?そういう奴を自分の雌にしてぇんだよ」
「ク、ソ…!変態野郎…!」

 リヴァイはわざとエレンの耳元で吐息交じりに囁く。
 こうすると相手の体が震えることをエレンはよく知っていた。
 ごりごりと腹に固くなった性器を押し付けられてゾワゾワと不快感が体中に広がった。

「ん!…っ、ゃ、んぅ…っ」

 頭の上で両手を押さえつけられ、顎も掴まれると強引に唇を塞がれる。
 少し唇がカサついていると思ったのは最初だけで、下唇を食まれ、ぬるりと舌をねじ込まれるとすぐにそんなことは忘れた。
 男の舌は思っていたよりも柔らかかった。
 それに、気持ちのいい場所を的確についてくる。
 いつもは自分が相手の唇を好きに貪っているのに、今は逆に貪られている。
 リヴァイの深いキスは食べられてしまいそうなほど強引で、獣のようなキスだった。

「ん、は、ぁ…ぅ、」

 くちゅくちゅと音を立てながら舌で口内をかき混ぜられて、だんだん頭がぼうっとしてくる。
 何も考えられなくなって、リヴァイに支配されてしまったのかもしれないと馬鹿なことを考える。
 だから体に力が入らなくなって、されるがままになっているのだと。
 唇を離したリヴァイが「良い子だ」とでも言うように頬を撫でる。
 エレンは浅く呼吸を繰り返しながら、潤む瞳でリヴァイを睨みあげた。

「おいおい、キスなんて飽きるほどしてんだろうが。ちゃんと応えてみろよ。それとも女にしてもらってんのか?」
「っはあ!?んなわけねぇだろ!」
「じゃあやってみろよ」
「クッソ…!」

 暗にキスが下手くそだと笑われてた。これでも女にはうまいと褒められる。
366 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:29:33.47 d
 そもそもそっちが無理矢理キスしてきたというのに上手いも下手もあるか、とエレンはプライドを傷つけられたようで安い挑発に乗ってしまった。
 縛られた腕をリヴァイの首の後ろに通されて、顔が近くなる。
 エレンはその腕でリヴァイの顔を自分の方へ寄せると、その唇に噛みつくようにキスをした。
 初めは唇をあむあむと食んで、その後で湿った舌を口内にねじ込む。
 上顎をなぞり、相手の舌の裏を舐めあげる。じゅる、と唾液を吸って柔く舌を噛んだ。
                  
「ん、は……ん、……っんん!?」

 いきなりれろりと舌を絡められ、エレンは驚いてくぐもった声を上げる。
 先ほどとは打って変わって大人しかったリヴァイの舌が突如動きだしたのだ。
 頭を枕に押さえつけられて、リヴァイの口内に入りきった舌を吸われ、甘噛みされる。

「ふ、…っん、ぅぅ……はぁっ、」

 先ほどまで握っていた主導権はいとも簡単に奪われて、また食べられてしまいそうな程深いキスにエレンは息をするのも精一杯で、必死にリヴァイの背中をどんどんと叩いた。

「んっ…んぅ!?」

 肌蹴てしまったバスローブの隙間からリヴァイの指がエレンの体に直に触れて、ビクリと跳ねた。
 相変わらず口内への刺激を止めてもらえず、体に力が入らない。
 リヴァイの指がエレンの乳首に触れて、ゆっくりと捏ねられる。
 指の腹でぐりぐりと押しつぶされると、そこからビリビリとした快感が走った。

「ふ、ん、ぁ……ゃめ、っ!」

 そしてぷっくりと腫れてきてしまったそこを、今度は指先で弾かれるように弄られる。
 その度に体がビクビクと跳ねてしまう。
 エレンが女にやるようなことを自分の体にされていた。
 もし自分がするならば次は軽く摘んで少し痛くした後に、それを労わるように舌で愛撫する。
 でもエレンは女じゃない。
 こんな所で感じるわけがないし、リヴァイがそれを男であるエレンにするはずがない。
367 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:29:50.41 d
 エレンは祈るような気持ちでリヴァイの腕から逃れようと必死になった。
 しかしそれは、リヴァイから逃げたいのではなく、確かに感じる快感から逃れたかったのだと気付く。
 いつの間にか唇は解放されていた。
                                      
「ああっ…ぁっ…!」

 散々弄られた乳首にリヴァイの暖かい舌がべろりと這った。
 エレンは目を見開いて体を仰け反らせ、高い声を上げた。言い訳のしようもない喘ぎだった。

「良い声で鳴くな。女の前でもそうなのか?」
「ちが…っん、やめ、…っひぁ!」

 ガリ、と歯を立てられた。
 ビクンッと体が勝手に跳ねる。

「なぁ、気付いてるか?テメェのここ」
「あっ、や…なんで…っ」

 リヴァイの指が触れたソコ。
 熱く、固くなって上を向いている。
 獣のように唇を貪られ、女のように乳首を弄られただけだというのにエレンの性器は固く勃起していた。
 それはリヴァイの愛撫に感じて、興奮してしまったという紛れもない証拠だった。
 エレンは自身が勃ってしまっているということに唖然とした。
 一方でリヴァイは心底楽しそうに笑って、エレンの性器を撫でている。

「一回出させてやる」
「ぁ…っや、やだ…っ」

 もう逃げられないと思ったのか、リヴァイはエレンの上から退くと、その足の間に移動して性器を両手で扱いた。

「あっ…さわんなっ!…ぁ、っく、」

 女のよりもごつごつした掌。
 性器を包みこんで、少し乱暴にも思える扱き方は女にされるそれとは全然違った。
 そして、ぱくり、と大きく口に咥えられた瞬間、エレンは身を捻じって声を上げた。

「ひぅっ!っ、あっあっ、ゃめ、…っ舐め…っぁ!」
「初めてでもねぇだろうが」
「ぁ、ゃだ…っこんな、っ」
368 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:30:05.45 d
 リヴァイの口は大きくて、キスの時のように食われてしまうと思う程深い口淫だった。
 わざとじゅるりと音を立てながら舐めしゃぶられて、尿道の入り口にも強引に舌をねじ込まれる。

「やぁ…っ!たべないで…はぁっ、ぁ」

 クスリとリヴァイが笑った気配がしたけれど、強すぎる快感にエレンは気がつかない。

「あっ、で、でる…っ、んっ…あっ?」
「気が変わった」
「ぁ、なに…っ」

 リヴァイの言っていることの意味を理解できないまま、乱暴にひっくり返される。
 そして尻を高く上げさせられて、四つん這いの格好にされた。

「やめろ…っ何する気だ…っひあ!?」

 べろ、とありえない場所に湿った舌の感触がした。

「ケツでイかせてやる」




このあとめちゃくちゃに奥まで突かれてメスにされた。


中途半端になっちゃったけど時間切れじゃった
369 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:30:49.01 d
 大学生の弟が引き籠っている。そう連絡が入ったのは昨日のこと。
 海外出張から帰国したタイミングで携帯が鳴ったので、思慮深い両親はこちらの仕事事情もそれなりに考慮してくれていたのかもしれない。
 とにかく「様子を見てきてほしい」と繰り返す義母を諌めリヴァイは今日の代休が潰れることを覚悟した。
 弟。戸籍上そう繋がっているエレンは、正確には義弟である。血の繋がりはない。
 二十余年前、未成年のうちに天涯孤独となってしまった自分を、遠縁のイェーガー夫妻が養い親となり引き取ってくれた。その後、夫妻には実の息子が生まれ、自分とエレンとは歳の離れた兄弟としてこれまで過ごしてきた。
 年齢差が十五。離れすぎているため、本当の兄弟らしいことはなにひとつない。けれどエレンは幼い頃から無邪気にもこんな自分を慕ってくれ、それなりに良好な関係を築けていたと思う。
(この春に大学へ入ったばかりだったな、たしか)
 年が明けて、合格祝いをしたことを思い出す。
 東京の大学に受かったから、これからはリヴァイさんの近くで勉強するよ。そう言って学生向けマンションの案内を嬉しそうに捲っていたエレン。
 地方の実家から、都会へ出たがる若者は多い。かくいう自分もそのくちだったのでリヴァイは笑って頷いてやった。しかして両親と一緒に決めた部屋は、大学とリヴァイのマンションのちょうど真ん中くらい。
「どっちも行きやすくないと困る!」
 と無邪気に笑った彼を、確かに自分は可愛いと思った。
 あれから三カ月いや四カ月か。
 五月の大型連休を終えた。環境を変えたばかりの若者はナーバスになることも多い時期だ。リヴァイの職場に入った若い奴らも、ここまでの疲れを見せ始めていたりする。
「学校でなんかあったのか」
 人間関係か勉学の内容か、それ以外の原因か。
 電話口の義母は「連休明けから連絡が取れなくなった」と言っていた。ラインやメールは繋がるし時折返信もあるが、電話口には頑なに出ないらしい。同じ大学に進学した幼馴染のミカサ情報によると、時を同じくしてエレンを学校で見かけなくなったという。
「引き籠っているか」
 大学生など気まぐれの塊だ。ましてや親元から離れて自由を満喫しはじめたばかり。
 そうそう心配することはないだろうと楽観しながら、それでも一応顔くらいは見ておいてやるか、と足を速めた。
370 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:31:01.82 d
 エレンのマンションへ訪れるのは二度目。
 一度目は、三月の末頃に引っ越しを手伝ってやった時。
 あの日、リヴァイ仕込みの掃除の腕を見せた義弟を思い出す。
(そういや、あれから会ってねえのか……)
 インターフォンに指を伸ばす。ピンポーンと小気味いい音が響く。
 オートロックなどというしっかりした建物ではない。玄関のすぐ前で、応答を待ってみる。
(出ねえな)
 しばらく待って、もう一度。幾度か繰り返しても中からの応答はない。
 出かけているのか、それとも居留守を決め込んでいるのか。リヴァイには判別がつかない。
 ふと思いついて、ボトムのポケットを探り携帯を取り出した。エレンのアドレスを呼び出して鳴らす。呼び出し音と同時に、目の前のドア一枚向こう側から、かすかに響く軽快な着信音。
 いる、と踏んだ。
(仕方ねえ、奥の手だ)
 リヴァイは嘆息すると、ボトムのポケットからもうひとつ取り出した。義母から預かっている合い鍵だ。
 差し込んで回す。呆れることに、チェーンロックはされていなかった。
 あっけなく開いたドアから身を滑らす。玄関から続く細い廊下は薄暗い。廊下の突き当たりにあった曇りガラスのドアを静かに開けると、そこにはこちらへ背を向けたエレンがいた。
 八畳ほどの部屋の真ん中で、ぺったりとフローリングの床に座っている。目の前の座卓には、リヴァイが入学祝いに買ってやったノートパソコン。そしてそこから伸びるコードが、エレンの頭にあるヘッドフォンに繋がっている。
 これのせいで聞こえなかったのか、と安堵すると同時に、部屋の中に漂う饐えた匂いに気がついた。
(これは……)
 よく見ると、背を向けたエレンの右手が小刻みに動いている。夢中で探る指は、言わずもがな陰部に当てられていた。
 はっはっと荒く小さな息遣い。
 マスターベーション。
 年ごろの男なら誰でも心当たりがある。
 なるほど、盛ってやがったから引き籠ってたのか。
 合点がいき、微かにあった心配が取り去られるのと同時に、リヴァイはごくりと喉を鳴らしていた。
371 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:31:33.03 d
 エレンはまだこちらに気づかない。夢中で自分の性器を擦りたてている。
 時折漏れる、荒い息。それに混じる微かな喘ぎ。
 なにを必死に見ているのだろうか。パソコンのモニターを覗き込みながら、一心不乱に耽っている。
 よく見れば、エレンの周囲にはティッシュペーパーの残骸と思しきものが幾つも転がっていた。
(クッソエロい)
 義弟の隠しごとを覗いた衝撃はかなり大きかった。
 そしてその衝撃は、リヴァイの隠されていた衝動を揺り動かした。
 嫌悪? そんなものはない。むしろ喜んでいる。
「……っぁ、はあっ、……ふっ、うぅ……」
 エレンの動きが激しくなる。最後が近いのだろう。細い身体を震わせ、陰茎を擦りあげて喘ぐ。男の情けとして、せめてフィニッシュまでは静かに見守っていてやろうと思ったリヴァイの耳に、信じられないものが飛び込んだ。
「アッ……、いいっ、イク……リヴァイさん!」
「!」
 ビクビクと数回身体を波打たせたエレンは、脱力したのか、そのままガクリと前のめりに傾いだ。露わになるしなやかなうなじには、しっとりと汗が滲んでいる。
 己の舌でそれを舐めとってやりたい衝動に駆られ、リヴァイはぐっとそれを堪えなければならなかった。
(いまなんと言った? 俺の名前を呼んでイキやがったのか?)
 俄かには信じられなかった。
 ひくり、ひくりと痙攣するようにしなった身体が、正気を取り戻すかのようにゆっくりと起き上がる。手探りでティッシュの箱を掴もうとしたときに、彼はようやく自分の置かれている状況に気がついた。
「……っ」
 ぎくりと硬直する身体。
 視線がリヴァイの足先を捕らえていた。そのまま固まること数秒。そして恐る恐るあげられる視線。
 エレンの瞳とリヴァイのそれが合うころには、彼はもう蒼白な顔をして、小刻みに震えはじめていた。
「よう、久しぶりだな、エレン」
「っ、なんっ、……なん、……なん、でっ……」
「なんでじゃねえよ。インターホンも着信も無視されりゃ、こうなるのは当然じゃねえのか」
 手にしていた合い鍵を振って見せる。
 さっきまで可愛らしく喘いでいたのが嘘のように、エレンの顔はすっかり血の気が引いていた。
372 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:31:53.38 d
 そして次の瞬間、床を這うようにして脱兎のごとく窓際へと逃げた。逃げた先はカーテン。
 丸めてしゃがんだ身体を、全身すっぽりと覆い隠す。
「かえっ、帰って! リヴァイさん! おねが、お願い、だからっ!」
 よほどショックだったのだろう。声が震えている。
 けれどリヴァイはもう見てしまった。エレンの自慰だけではない。
 床を這って逃げたエレンは――。
「なんでスカートなんか履いてんだ、お前」
「っ!」
「トランクスかと思ったが、どうも違うな。女物のスカート……だろ?」
「……っ」
 すらりとした健康的な脚は、ヒラヒラと翻るプリーツから伸びていた。
 どう見ても、若い女性が好んで着る服に他ならない。
 この義弟は女装に興味があったのだろうか。そんな素振りにはこれまで一度も気付かなかった。
 人にはそれぞれ性癖がある。百人いれば百人違うものを持っている。
 そんなものは我が身を鑑みても明白である。エレンに女装癖があったしても責めるつもりは毛頭ない。
 けれど隠していたことが唐突に、それも思いもよらない形で露呈してしまったエレンは、可哀そうなほどに震え慄いていた。
「ごめっ、ごめん、なさいっ、ごめん、ほんと……帰って……!」
 悲鳴のような涙声。
 少しばかり気の毒になったリヴァイの目に、先ほどまでエレンが熱心に覗き込んでいたパソコンのモニターが入った。
「!」
 驚いて瞠目する。そののち、リヴァイは薄い唇をゆっくりと三日月型に引いた。
 二、三歩足を運べば、あっという間に膨らんだカーテンへ追いついた。震える塊の前にリヴァイも膝をつく。
「短けえスカート履いて、オナニーショーか。いい趣味してるな」
「やめてよ、そんなっ」
「で、気持ちよかったか? 盗撮した俺の部屋を眺めながら、俺の名前を呼んでイっちまって」
「ッ!」
「なあ、……エレン?」
 カーテンの膨らみは、ますます小刻みに震えはじめた。
 パソコンには、リヴァイの見覚えのある部屋が映っていた。天井近くの俯瞰から、ある寝室を覗き込む角度。
 物の少ない殺風景なその部屋で、小柄な男が卑猥な動きをしているのが映し出されていた。
 よくもまあそこだけ切り取ることができたと思う。
 それはまさしく、自室にいるリヴァイが一人で性欲処理をしている姿だった。
373 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:32:20.57 d
「俺のオナニーなんざ覗いて楽しかったのか?」
「……」
「結構鮮明に見えるもんだな。え?」
「……」
「いまのいままで気づかなかった。……いつ仕掛けた?」
 詰問口調で畳みかけると、エレンは観念したのか、細い声で答えた。
「……先月」
「おいおい、そんな前にか。俺の部屋にはどうやって入った?」
「母さんに……合い鍵借りて……」
 はあ、と聞えよがしな嘆息を吐くと、カーテンの塊は面白いようにビクリと跳ねた。
 義兄に呆れられたか、軽蔑されたか、そんなようなことを考えているのだろう。快楽の頂点から一転、断罪される恐怖を味わっているのかもしれない。
(可哀そうな、可愛いエレン)
 こんなところを見られ、さぞかし身の置き所がないはずだ。
 どうしてやろうか、とゾクゾクする。こうなればもう、悪い義兄を持ったと諦めてもらうしかない。
「エレン」
 カーテンの裾から少しだけ覗いていた裸足を、指先でつうと撫でる。
「!」
 硬直したそれを少し持ち上げ、躊躇なく自らの口元へと導く。れろ、と舌を這わせてやると、まるで打ち上げられた魚のようにびくりと跳ねた。
「なっ……!」
 足指の一本ずつを丁寧に舐める。エレンは逃げようと抵抗を見せたが、がっちり掴みあげて許さなかった。
「あっ、あっ、やだ、なにっ?!」
 指と指の間を執拗にしゃぶる。滴るほどに濡れたら啜り、時折歯も立てた。
「あっ、うそ、なに、なんでそんな、リヴァイさん……っ!」
 拒んでいた声が、徐々に緩む。艶を含みだす。
「あっ、ああぁ、やぁだ、ね、やだぁ」
 鳴き声なのか喘ぎなのか、もう判別がつかなくなっている。
リヴァイは口に含んでいた小指をぢゅっと吸い上げてから、エレンの足を開放してやった。
「出てこいよ、エレン」
「やっ……」
「やじゃねえ、出てこい」
「む、り……っ」
「……出てきたらもっと気持ちいいことしてやる」
「っ!」
 息を飲む音。そしてたっぷり数分は葛藤したのち、エレンは握り締めていたカーテンをゆっくりと手放した。
 そこには、もう耳まで真っ赤に染め上げ、うるうるに瞳を潤ませた義弟がいた。
(クッソエロい)
 冗談じゃない。こんな可愛い生き物を手に入れるチャンスが巡ってくるとは。まるで夢のようだ。
374 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:32:32.94 d
 リヴァイの心はポーカーフェイスの下で確かに躍っていた。
「スカート見せてみろ」
「……」
 おず、と立てていた膝を崩す。
 素直な仕草は、もう完全にリヴァイへ屈しているのだと物語っていた。
「どこで手にいれたんだ、こんなもの」
 ひらりと薄く白い布を摘まみあげる。
「ネット、で……」
「お前、女装趣味があったのか?」
「な、い」
「じゃあ、なんでこんなもの履いてる」
「……俺が女だったら可能性あったかなって……そう……思って……」
 なんの可能性だ、とは聞かなかった。エレンの瞳を見れば、おのずとその答えは出ていた。
「へえ、スカート以外には? なんか買ったのか?」
「……グロス」
 エレンが視線をやった先には、小さな小瓶型の化粧品が転がっていた。ピンク色のとろりとした中身。
 リヴァイは躊躇なく手にとり、蓋を捻った。蓋と一緒に小さなブラシが顔を出す。
 それをそのままエレンへ近づけると、彼は抵抗することなく大人しく受け入れた。
 小ぶりで薄いそこへ、ピンク色を引く。
 エレンの形の良い唇は、瞬く間にぷるぷるつやつやの果物のように変わった。
「似合う」
「……ほんと?」
「ああ」
 小さな顎を引き寄せると、従順に従う。そのまま濃厚に口づけた。
「んっ、んぅ……」
「エレン」
 口腔内を気が済むまで蹂躙してやる。エレンはされるがまま息を乱した。
 キスの合間に身体へ手を伸ばす。Tシャツを捲りあげてラインを辿ると、リヴァイの指先になにかが触った。唇は離さないままそこを執拗にいじる。
 指先が全体を把握すると、その正体はすぐにわかった。
「乳首いじって遊んでたのか?」
 恥ずかしい暴露を耳元へ直接吹き込んでやる。エレンの身体は面白いように震えた。
 自分の声や言葉で鳥肌を立てるほど感じているのかと思ったら、リヴァイも静かな興奮を覚えた。
「ニップレスなんかが必要なくらいにいじってたのか? ん?」
「……っん」
 こくんと素直に頷く。
「服、擦れると……痛くて……」
 頬を赤らめて告白するエレンが、どうしようもなく可愛らしく見えた。
375 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:33:01.55 d
 親元から解放されたエレンは、性欲も解き放されたらしい。きっとそれまでは我慢していたのだろう。
 自分の性的欲求も。
 ぺり、とシール状のものを剥がしていく。じりじりと時間をかけてそれをすべて取り去ると、そこには濃い桃色の小さな花芽がぷっくりと勃ちあがっていた。
 捲り上げられたTシャツから覗く乳首。赤く腫れたそこはもちろん男の胸だから、柔らかな膨らみなどありはしない。けれど、リヴァイにはなにより扇情的に見えた。
 親指の腹でぐりっと押し潰す。すぐに仔猫のような喘ぎがあがる。
「あっ、んんっ」
「ここも舐めて欲しいか? 足みたいに」
 恥らいつつも素直に頷く。その様子がたまらない。
「俺の言うことが聞けたら、ご褒美に舐めてやる」
「ごほう、び?」
「ああ、そうだ。俺の前でシコって見せろ。さっきひとりでしてたみたいに」
「えっ?!」
「やれよ、見ててやるから」
「でも、そんなっ!」
「エレン、やれ」
「……っ!」
 逃れられないことを察したのか、泣きそうな顔で唇を噛む。
 おず、と伸ばした指は、まだ少し湿っていた性器を握り込んだ。
 カリから先端にかけてを数度扱いただけで、エレンのペニスはあっという間に漲りを取り戻す。
「さっき出したばっかなのに早いな。俺が見てるからか?」
「ぅ、んっ」
 張りつめた勃起はそれでも細くしなやかで、まるで持ち主自身のように慎ましく見えた。
 幹を愛撫した後に先端のつるりとしたところを撫でる。
 するとすぐに先走りがぷっくりと漏れ出した。
 先端から溢れる蜜は、次から次へと止まらない。
 そのうちエレンの指すらぐしょぐしょに濡らし、滑りの増した指はどんどん貪欲に快楽を追いはじめる。
 にゅちにゅちと恥ずかしい水音をたてながら愉悦を貪っていく。
「どこが気持ちいいんだ? 教えてくれ」
「んぅ……んち……」
「聞こえない」
「お、ちん、ちん……」
「へえ、ちんこのどこが気持ちいいって?」
「っ、やだっ、もお、言った……!」
「言え、ちんこのどこが気持ち良くて弱いか、教えろよ」
「うぅ……、先っぽ、と、裏のとこ……」
「で、俺にどうして欲しい? 正直に、全部言えたら、その通りにしてやる」
 正直に、全部、という箇所をことさら強調してやった。
376 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:33:31.78 d
 下唇を噛んだエレンは、泣きそうな顔で陥落した。
「触って……くれる……?」
「ああ、お前が望むだけ」
「う……、俺のせ、精液出るとこ、ちんちんの先っぽ、リヴァイさんに握って……ごしごしって、してほしぃ……っ!」
 とろりと溶けた顔が物欲しそうに赤らんでいた。
 躊躇はなかった。
 エレンの手に自分の手を重ねる。
 力を入れてごしごしと擦りたてると、たまらないとでもいう風に腰をつき出す。
 そしてたったの数度でエレンは爆発した。
「……んああああっ!」
「エレン」
 絶頂感を堪えるようにピンと張った足の甲。そのままの足首を掴んで上へ引き、エレンの身体を床に引き倒す。
「はあっ、ぁ……は、あ……」
 呼吸が整わないままのエレンに構わず、彼の濡れたばかりの陰部へと顔を沈めた。
「えっ、あっ、やだ……、リヴァイさん、そんな……っ!」
 かすかに抵抗を見せる両腿を、ぐいと開かせる。
 残滓で湿った下生えに鼻先を埋め、すん、と吸う。
「や、だぁ、リヴァイさんっ、汚い! そんなの汚いからぁ……っ」
 焦った声で悶えるエレンを無視する形で、リヴァイは自分の欲求を満たす。
 真夏の草いきれのような青い、湿っぽくて饐えた淫靡な香り。すう、と肺いっぱいに吸い込んで酩酊した。
(エレンの匂いだ)
 ここ数年離れていた、可愛い弟の匂い。懐かしいようでいて、新鮮にいやらしい。
 一緒に住んでいた頃は、毎日のように嗅いでいた。エレンが生まれたての乳臭い赤ん坊のころから、小学生になるころまでずっと。
 エレンの子どもらしい匂いは、リヴァイのなにかを擽り続けていた。

 諦めていた。自分のような者の手に堕ちるような子どもではないと、こんな後ろ暗いフェチズムを持つ義兄とは正反対に、太陽に愛された子だと思っていた。
(お前から堕ちてきたんだぞ)
 もう戻れない。もう返してなんかやれない。仄暗い喜びがリヴァイを突き動かす。
 仰向けにしていたエレンをひっくり返す。その間にミニスカートとTシャツを手荒く脱がせる。
 一糸纏わぬ薄い背中に口をよせ、ねろりと舐めあげた。
「あああっ」
 とてつもなくイイ声でエレンが鳴いた。それをきっかけに、リヴァイの箍は完全に外れた。
377 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:35:00.42 d
〜これまでのお話〜

大学教授のリヴァイ(α)と大学生エレン(Ω)が紆余曲折を経て、番になりました。
リヴァイが発明した触手のテンタクル(またの名をオメガ専用防犯アイテム)と一緒に楽しく暮らしています。
3月30日、無事に20歳を迎えたエレンは……!?


オメガテンタクルBirthday0330



 リヴァイ・アッカーマン、バースタイプはアルファ。
 職業は大学教授。
 大学の生徒であった運命の番を見つけ、現在同棲中。
 番の名はエレン・イェーガー、バースタイプはオメガ。
 大学二年生。
 来月からは三年生へ進級する。
 彼と同棲を始めて一年経つが、大学を卒業するまでは役所に届け出もしない約束だ。
 もう自他共に認める夫婦のような生活をしているので、今さら法で縛ったところで何が変わるわけでもない。
 あぁ、エレンの苗字は変わるが。
 それだけだ。
 番の契約という、血よりも濃い絆を結んだ瞬間に、リヴァイはすでに覚悟をいろいろと決めていた。
 自身が研究する分野ではあったけれど、運命の番なんてものは半信半疑だった。
 どの文献やデータを読んでも、いまいちピンとは来なかった。
 それも今なら納得できる。
 運命の番というものは、言葉で簡単に説明できるものではない。
 血に引き寄せられるのだ。
 そのことが分かっただけでも、自分は成長したのかもしれない。
 隣にエレンがいて、とても充実した毎日を送っている。
 番馬鹿かもしれないが、なにしろエレンは可愛い。
 器量がいい。
 度量もあるし、内なる獣を飼っているような激情家なところが気に入っている。
378 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:35:11.47 d
 そんなエレンも、ようやく二十歳の誕生日を迎えた。
 三月三十日の桜舞い散る季節、エレンはこの世に生を受けた。

「やっと飲める!」
「とりあえず、いろいろと用意してみたが」

 エレンは瞳の奥をきらきらと輝かせて、はしゃいでいた。
 二人分のワイングラスと、リヴァイが運んできたビーフシチューを交互に見つめている。
 あんなに楽しそうな彼は久しぶりに見た。
 とくにここ最近は年度末ということもあって、リヴァイも忙しく、家に帰るのは夜遅くになる日が度々あった。
 エレンは健気にも自分を待っていてくれている時もあったが、大半が先に眠っていた。
 仕方がないのだが、しんとした室内が寂しくて、すやすやと眠っているエレンの頬をつついて遊んだりした。

「ううん!」

 寝ているのに、眉間に皺を寄せて怒られた。
 それでもめげずに、エレンの半開きの唇にキスをすると、

「おあえり……りばいさん……おやしみ」

 なんて、むにゃむにゃと喋って、すぐに寝息が聞こえてきた。
 寝顔が幼くて可愛い。
 本当は起こして、夜の営みとやらをしたいところだが、彼は滅多に承諾してくれない。
 同棲をしたばかりの頃は、よく体を繋げていたのに。
 それはもう獣のように、液体まみれになってエレンを抱き潰してしまった。
 それがアルファの性なのかもしれない。
 エレンだけが必要で、とにかく頭の中は彼のことでいっぱいになる。
 今は誘ってもだいたいが「NO」だ。理由を聞いても、

「どうせ三ヶ月に一度の発情期があるんですから、ヤらなくたっていいじゃないですか」

 と答えられてしまう。
 それはそれ、これはこれ、だ。
 リヴァイとしては、毎日抱いても抱き足りないのだ。
 でも彼はヒートがあるのだから、それ以外はセックスしたくないと言う。
379 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:35:37.25 d
 これがマンネリというやつだろうか。
 番なのに、エレンはあまりにそっけなくて心配になってしまう。
 まさか他に男ができたのか?
 もしくは女がいいのか?
 自分にはもう飽きてしまったのか。
 番の契約を結んでいるのだから、そんなことはない……と信じたい。
 リヴァイは毎晩ベッドで眠るエレンのうなじの匂いを嗅いで、何も混じってないか確かめた。
 自分の匂いとは違う男の匂いが混じっていれば、それはエレンが不貞をはたらいたということになる。
 でも、何の匂いも混じっていない。
 むしろ彼の甘い匂いに、興奮してしまった。
 おかげ様で、最近は右手が恋人である。
 エレンの寝顔を見つめながら、右手を動かした。
 彼は全く起きなくて、虚しさだけが募った。
 エレンのスウェットの胸元から、勝ち誇ったかのようなテンタクルが出てきた時は怒りでガラスケースに閉じ込めようかと思った。
 そう、リヴァイとエレンの住む家には、もう一匹(?)家族のようなものがいる。
 触手のテンタクル。
 薄紅色で半透明。
 スライム状でぬるぬるとしており、大きさなど体を変幻自在に変えられる。
 これはオメガであるエレンを外敵から守るため、リヴァイが発明した防犯アイテムだ。
 なかなか優秀だが、自分のアルファ遺伝子を移植してあるため、エレンが大好きという同じ特徴が生まれてしまった。
 アルファの男たちにいいようにされてきたエレンは、以前まで男性恐怖症だった。
 なので、この便利なテンタクルに依存してしまい、リヴァイは一度これを破壊している。
 その時のエレンの落胆と怒りときたら!
 リヴァイがいるというのに「番なんかいらない」と喚き散らされた。
 結局は無事に結ばれたが、今でもテンタクルは油断ならない。
380 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:35:44.90 d
 いわば、恋敵だった。
 扱いに困ってしまうが、背に腹は代えられないので、リヴァイがそばにいない時のエレンの警護を、テンタクルに一任している。
 最近のテンタクルは、リヴァイの言うことも聞かない。
 エレンの味方ばかりする。
 仮にも親はリヴァイだというのに。
 テンタクルはキュッキュッと体を鳴らして、エレンの体を這いずりまわっていた。

「……の、やろ」

 こっちはお預けを食らっているというのに、羨まし過ぎる。
 エレンいわく、最近テンタクルは乳首にはまっているらしい。
 普段から触手が吸い付いているせいか、エレンの乳首は敏感だった。
 全部、テンタクルのせいだ。
 リヴァイはチッと大きな舌打ちを一つ。
 すると、見ろよ、と言わんばかりにテンタクルは触手を器用に使って、エレンの上半身の裾を捲り上げた。
 寒い室内に、エレンの白い腹と桃色に膨らんだ乳首が姿を現す。
 テンタクルに悪戯をされているというのに、仰向けで寝ている彼は全く起きない。
 一発挿入しても、起きないのでは……?とすら思えてくる。
 本当はむしゃぶりつきたいところを、ぐっと堪える。
 しかし、触るくらい良いんじゃないか?
 その柔らかい乳首を転がして、舐めて、硬くさせて、吸い付くような肌を堪能して……頭の中はいやらしい妄想でいっぱいになる。
 エレンが足りない。
 やっぱり、彼に触れたい。
 いや、それは自分のプライドが許さない。
 エレンの意識がない時に触るなんて、フェアじゃない。
 自分の欲望だけで手を出すわけじゃない。
 欲求不満の自分を押し殺し、リヴァイはエレンの服の乱れを直し、羽毛布団をかけてやった。
381 :
名無し草 (スプッ Sda8-LZzI)
2016/04/26(火) 05:36:11.24 d
 それからトイレで抜いた。
 恋人がいるのに、なんて虚しい。
 でも、今日はエレンの誕生日だ。
 記念日だ。
 今日くらいはエレンもセックスしてくれるのではないか、という甘い期待を抱かずにはいられない。

「何を飲む?」
「ワイン! あっ、リヴァイさん、チーズも用意してくれたんですか。それっぽい」
「サラミもある」
「わ、おつまみいっぱいじゃないですか」

 エレンが子どものような声を上げる。事実、自分よりはうんと年下で、子どものようなものだ。
 そう言うと、きっと彼は怒るだろう。
 エレンの二十歳の誕生日はどこかへ食べに行くか、と提案したが、彼は家が良いと言った。
 一番くつろげて、リヴァイと二人きりでいられるからだ、とはにかみながら答える姿は脳裏に焼き付いている。
 だから、今日の料理はほとんどリヴァイが作って、用意した。
 作っている最中、何度もキッチンにやって来て、テーブルの上の料理をつまみ食いしていくエレンを「こら」と叱った。
 そのたびに、嬉しそうに笑ってリヴァイの後ろ姿を眺めていた。
 これが幸せか、としみじみ思う。
 エレンへの誕生日プレゼントは、もう一週間も前に渡してある。
 彼の希望で、欲しがっていた有名ブランドのスニーカーを一緒に買いに行った。

「もっと高いやつでもいいぞ」

 と提案したが、

「これが良いんです。大事にしますね」

 と嬉しそうに靴の箱を抱えていた。
 いつから履いて行こうと悩んでいたが、結局四月から使うことに決めたらしい。

「誕生日おめでとう」
「へへ……ありがとうございます」

 二人で乾杯をして、グラスを傾けた。

「あ、おいしい」
「お前、酒は強いのか?」
「どうですかねぇ……でもなんか強い気がする」

 エレンはぐいぐいとワインを煽った。
 飲みっぷりがいいので、見ていて気持ちがいい。
 リヴァイも酒はザルなので、一緒に飲めるのなら嬉しい。
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lud20160804102035
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