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明るい話題に乏しい今年のアニメ業界で、“台風の目”となったのが「けものフレンズ(けもフレ)」と「この素晴らしき世界に祝福を!(このすば)2」だ。
「けもフレ」の第1話はニコニコ動画の再生回数が500万回を突破し、歴代1位だった「魔法少女まどか☆マギカ」を超えた。「このすば2」も第1巻のブルーレイディスクの売り上げが1万本以上と好調だ。
二つのアニメには「作画のきれいさが最優先事項ではない」という共通点がある。大作とはほど遠い、「作画低カロリーアニメ」の2作品が支持を集めたことは、
アニメ業界の“常識”に疑問を投げかけ、ビジネスモデルのあり方を一変させる可能性を秘めている。
深夜アニメの放送本数が1クールで100作品を突破してから数年がたつが、放送の延期が続き、有力な制作会社も倒産するなど、「アニメを作る環境」は厳しさを増すばかりだ。原因の一つは「きれいな作画への過度のこだわり」だろう。
近年のアニメ視聴者は、キャラクターの絵が崩れたり、整合性の合わない動きがあると「作画崩壊」と話題にする傾向がある。そのプレッシャーを制作サイドも意識して、絵柄が丁寧に統一された作品が増えた。
だが、それが当たり前になった現在、きれいな作画は埋没しやすい。また、作画にこだわり過ぎると制作期間も延び、制作予算を圧迫する。「きれいな作画にするべき」という“常識”が、制作現場を追い詰めている。
「このすば2」は、より「笑い」に振り切り、ヒロインたちもギャグ顔が増えた。全般にキャラクターの線が減らされていたが、シリーズを通じて一貫性があったので「作画崩壊」ではなく狙ったものだろう。
その分「動き」が豊かになり、最終回では「作画がきれい、かつ動く」作りになっていた。
「けもフレ」は十数人の少人数で制作され、「このすば2」は制作決定から1年未満で放送という制作期間の短さからも、どちらも作画のきれいさにこだわらないという割り切りがある。
いずれも、きれいな作画に頼れない分を補う「知恵」が注ぎ込まれている。
二つの作品は現場に過度の負担をかけない工夫、話の奥行きやギャグに頭を振り絞る「知恵」で勝利を収めた。
「作画低カロリーアニメ」の両作の成功が業界に変革をもたらすことを祈りたい。
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