若者に必要なインフラそろう“快適さ”
菊地原さんは「ネットカフェにソーシャルワーカーを配置すべき」と言う。住居支援、就労支援も重要だが、ネットカフェに長期滞在している人の中には、借金、
心の病、障がいなど複合的な問題を抱えている人もいるため、一人ひとりに寄り添ったきめ細やかな対応が必要になってくる。
私はリーマンショック直後にホームレス状態に陥った若者50人に対する聞き取り調査をしたことがあるのだが、あの時も、ネットカフェ経由で路上に出たという若者が大半だった。
当時は日雇いの仕事すらなく、路上に押し出されてきたという現実があったように思う。
一方、今は選ばなければ、その日暮らしができる程度の仕事はある。とりわけ若ければ、ネットカフェ暮らしに問題を感じないこともあるのだろう。
ネットカフェはインターネット、ゲーム、マンガ本、軽食、適度な物音、便利な立地など、若者に必要なインフラが詰まった“快適な装置”であると言えなくもない。
しかし、ネットカフェに暮らしている以上、ホームレス状態であることに変わりはなく、派遣やバイト切り、体調不良など、ちょっとしたきっかけによって、路上生活へ突入していってしまう。
実際、東京都調査では、ネットカフェ難民の4割(43.8%)が「寝泊まりに路上を利用することがある」と答えており、うち週1〜2日程度路上で過ごす人が57%に及んでいる。
この結果からも路上ホームレスとネットカフェ難民の境界はあいまいだとわかる。
非常に見えづらい形で広がっているホームレス化。周囲からはもちろん、当事者すらも自覚がないまま、進行していく。それゆえ支援につながることは難しい。
どうすれば孤立している一人ひとりに必要な情報と支援が届くのか、対策を講じていく必要がある。 (文・飯島裕子、写真・今村拓馬)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180309-00010002-binsider-soci&p=4