美術家・映像作家の山城知佳子さんが世界各地で評価されている映像作品「土の人」を舞台化した。
10〜11月に開催された「KYOTO EXPERIMENT2018 京都国際舞台芸術祭」で、
新作ライブパフォーマンス「あなたをくぐり抜けて−海底(うみぞこ)でなびく 土底(つちぞこ)でひびく あなたのカラダを くぐり抜けて−」が上演された。
沖縄戦の継承をどう表現するか模索する山城さん。
視覚、聴覚、触覚と身体感覚を刺激する新たな展開を、ジャンルを越境する表現者たちとつくり上げた。
会場は天井から壁を覆う巨大なスクリーンが掛かり、観客は床に座って鑑賞する。
上演が始まるとリビングを模した舞台には机とソファがあり、テレビは安倍・トランプ会談の様子を映す。
机の上には故翁長雄志氏の県民葬を報じる新聞があるが、ソファでくつろぐ役者2人はスマホをさわり関心がない様子だ。
そんな舞台と舞台を見る観客の様子を、別の男性がビデオカメラで映し、その会場のリアルタイムの映像も天井のスクリーンに投影される。
見る側だった観客は見られる側にもなり、いや応なく舞台に巻き込まれていく。
突如サイレンが鳴ると、スクリーンには現代の街と73年前の沖縄戦の映像が映る。
次第に銃撃音や爆撃機のプロペラ音、爆弾が投下される音が襲う。
音はすべて「ヒューマンビートボックスアーティスト」が自らの口から発する生身の声だが、サブウーファーのスピーカーを通した重低音が会場を激しく振動させる。
銃撃音は次第にDJが演奏を始めた音楽と重なり、ゲームの電子音のような軽い音も。
銃を持って戦争ごっこを楽しむ幼児の映像も映り、目前にあるのが過去の戦争なのか、近未来に起こりうる戦争なのか混在したような空間に。
音がやむと、スクリーンの裏から、白い服をまとった40人が息を深く吐きながら出てくる。
そして次々と舞台から転げ落ちる。白い服の人間たちは重い足取りで会場を徘徊(はいかい)するが、観客と観客の間に倒れ込んで体を微動させ、動かなくなる。
しばらくして生存者のような数人だけがゆっくり立ちあがり戦場体験を口々につぶやく。
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/351467
土の人より