45分間を4野党が分け合った党首討論は細切れとなり、議論は深まらなかった。安倍晋三首相への追及と首相の答弁を短時間に繰り返す姿は、党首同士が政権をかけて骨太の論戦を展開するという期待された姿とほど遠い。党首討論は存在意義を失いかけている。
立憲民主党の枝野幸男代表は「老後資産2千万円」問題に特化して質問した。首相が「民主党政権時代の約10倍、(年金積立金の)運用益が出ている」などと答えると、枝野氏はいらだちを見せた。
「縷々(るる)お話をいただいたが、私の問いかけに正面から答えていない」「全く答えをスルーされた」
他の党首も、通常の委員会審議のようなやりとりを続け、丁々発止の討論とは言い難い場面が目立った。政権を狙うなら避けて通れない外交や安全保障の議論は皆無だった。
最大の原因は野党の多弱化にある。持ち時間は、立憲民主20分、国民民主14分、共産と維新が5分半ずつ−と細分化された。首相と枝野氏のやりとりは4往復で終わった。
党首討論の本来の趣旨は、2大政党の党首による政権交代をかけた論戦のはずだ。ただ、24年に民主党が政権から転落したのを機に野党は離合集散を繰り返し、特に旧民進党が事実上分裂した29年以降は、各党がまとまった時間を確保することも難しくなった。
党首討論が意義を取り戻すには、月1回開催する与野党合意が守られていない問題も含め、制度の見直しが急務だ。
https://www.sankei.com/smp/politics/news/190619/plt1906190047-s1.html