【ロンドン=藤沢有哉、イスタンブール=奥田哲平】イベリア半島南端に位置する英領ジブラルタル自治政府は
四日、欧州連合(EU)の制裁に違反し、シリアへ原油を輸送しようとした疑いがある大型タンカーを拿捕(だほ)した。
原油は、米国の経済制裁で輸出が滞るイラン産で、イランは英国に抗議。核合意の順守を巡るイランと欧米の
緊張がさらに高まることは必至だ。
自治政府は英海兵隊と共に同日早朝、ジブラルタル沖でタンカーを拿捕。「EUの制裁対象の組織が所有する
シリアの製油所に、原油を運ぼうとしていたと信じる理由がある」と発表した。
米ブルームバーグ通信によると、航路データなどから、タンカーは四月にイランで原油を積み、アフリカの
南端を回って地中海へ向かった。スエズ運河を経由する場合よりも距離が三倍以上になるが、タンカーは大型で、
運河を横断できないという。
イラン外務省は同日、駐イラン英大使を呼び出し「違法で容認できない。欧州は石油禁輸に反対していたはずだ」
などと抗議した。英ロイター通信は、ジブラルタルの領有権を英国と争うスペイン政府の見解として
「米国から英国への要請で拿捕が行われた」と伝えた。
内戦下のシリアは石油産出が激減し、欧米の制裁で燃料不足が深刻化。これまでも、シリアに向けてイランが
原油を輸送し、シリアの購入代金がイランの精鋭軍事組織「革命防衛隊」に流れているなどと米国が
問題視していた。
イランは五月、核合意を離脱した米国による経済制裁への対抗措置として、履行義務の一部停止を表明。合意に残る英仏独などに十分な経済支援策が示されなければ、今月七日にウラン濃縮を再開すると警告している。欧州側は「合意の順守」を求めるが、今回の拿捕でイランがさらに硬化するとみられる。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201907/CK2019070502000312.html