那覇署地域課の警察官2人が、那覇市安里の歩道を歩いていた視覚障がい者の70代男性への職務質問中、携帯端末で顔写真を撮影したことが27日までに分かった。
職務質問での顔写真撮影は法的根拠がない。男性は国指定の難病・網膜色素変性症を患っていて視力が弱いが、警察官が障害者手帳の提示申し出を受けることなく撮影を要求したため、やむなく応じたという。
識者からは「人権の侵害だ」「捜査ではなく、情報収集など別の目的があったのではないか」などと違法性を指摘する声が上がっている。
那覇署は本紙取材に「適正に行ったものと考えている」とコメントした。
男性によると15日午後5時ごろ、帰宅途中の同市安里の路上で、警察官2人から「酔っぱらいが近くで倒れている。事件があったようだ。(容疑者と)あなたの服装が似ているから写真を撮らせてほしい」などと背後から声を掛けられた。
男性は「私は事件に関係ない。障害者手帳を見せる」と申し出たが、警察官は「手帳はいいから写真を撮らせてほしい」と執拗(しつよう)に要求してきた。
男性は撮影を拒み続けたが、「ここで撮らなくてもまた別の警官からも声を掛けられますよ」と言われ、夕暮れが迫り視界が全く見えなくなることを恐れてやむなく応じたという。
警察官の1人がポケットから携帯端末を取り出し、男性の顔を1メートルほどの距離で撮影した。
その後「名前を教えてほしい」とさらなる要求をしたため、男性は拒否してその場を離れた。約15〜20分ほどの出来事だったという。
刑事訴訟法では、身柄を拘束されていない場合の顔写真撮影は裁判所の令状を必要とする。
警察問題が専門の清水勉弁護士は「逮捕されていないので(顔写真撮影に)法的根拠はない。人権などあらゆる権利の侵害で違法だ」と批判した。
刑事訴訟法が専門の沖縄国際大の中野正剛教授は「警察官が職務質問中に、写真撮影を要求するというのは聞いたことがない。東京五輪を前に警察が組織的に情報収集活動をしている可能性も拭えない」と語った。
一方、県警幹部は「通常の捜査の一環と考えている。不審人物や容疑者に似た人がいたら、声を掛けるのが警察の仕事だ」とした。
男性はこの日、市役所で紫外線から目を守る遮光眼鏡の交付手続きをした帰りだった。
「警察官に最初から容疑者扱いされていた。本当に腹立たしい。謝罪してほしい」と訴え、撮影された写真の削除を求めた。
(照屋大哲)
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