「自粛 特に県外から」−。兵庫県三田市小野の青野ダム湖畔にある公園付近に、
そんな文言を大きく書いた看板が二つ張られていた。新型コロナウイルスの感染予防を呼びかけたとみられるが、
県市の条例は無断で公共の場に張り紙をすることを禁じている。
会員制交流サイト(SNS)上では自粛を強要するような行動に出る人を「自粛警察」と呼んで問題視する動きもある。
看板を書いた当事者、そして実際に県外から来る人はどう思っているのか。(門田晋一、喜田美咲)
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看板はいずれも高さ約50センチ、幅約1・5メートルで段ボールの上に紙を張って書いたとみられる。
ウイルスの絵も描いて、フェンスや案内板横に張りだしていた。
書いた高齢男性を見つけ、話を聞くことができた。
「自分の身を守るためには声を上げなければいけないと思った」。政府が4月7日に緊急事態宣言を発令しても
他県ナンバーの車で来て集団で釣りをしたり、バーベキューをしたりする客が絶えず、憤りを抑えられなかったという。
実際、市にも4月27日〜今月1日に同様の苦情や問い合わせが約20件寄せられていた。
「京都や大阪ナンバーの車が来ている」「先週よりも人が多くなっている」…。看板は市などが既に撤去したが、
担当者は「気持ちは分かるので、ルールは守ってほしい」とし、客側にも「密集状態は控えてほしい」と呼びかける。
今月2〜6日には市内の公園駐車場23カ所を全て閉鎖。同ダム周辺の5公園で
バーベキューを禁止し、不正使用がないかパトロールも始めている。
SNS上では、県外ナンバーの車を排除したり、営業中の店舗などに休業を求めたりするために
強引な手段をとる事例報告も相次いでいる。
実際に大阪府から市内の公園に来てピクニックをしていた40代女性は「墓参りのついでに来たので、
車のナンバーだけで攻撃するのはどうかと思う」。隣町の神戸市北区から来た40代男性は
「わざわざ県外から来るのはどうかと思うけれど、当人を怒らせても意味がない」と話した。
大阪から仕事で通う人も多く、県立施設で働く30代男性は「電車より安全と考えて車通勤にしたが、
いたずらは防ぎようがない。相手の背景を思う力を持ってほしい」と理解を求めた。
店舗にも不安の声が広がる。市街地にある飲食店の50代女性オーナーは県の要請の範囲内で
営業を続けている。「SNS上では無理やり休業させるために『店主が新型コロナに感染した』という
デマを流す人もいると聞いた。ただでさえ客が減っているのに、そんなことをされたらかなわない」と心中を打ち明けた。