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https://www.asahi.com/articles/ASN5F733JN5BTGPB004.html
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エツ漁が今月、解禁された。漁場の筑後川の流れはいつもと変わらず、福岡県大川市の70歳の夫婦は連日、いつも通りに未明から船を出して網を流し、とれたてを料亭の女将(おかみ)に渡す。だが、新型コロナウイルスの影響はここにも。客足が遠のく中、この季節の風物詩を忘れないでもらおうと関係者は工夫を凝らす。
9日午前4時15分、荒木三由さん、ミチエさん夫妻が小さな船で川をさかのぼる。昇開橋のたもとで網を船から落としていく。
しばらく待って網を上げると1匹、また1匹。エツを網から外し、川の水をくんだ水槽に入れていく。
「川が濁り過ぎているとかからん」と、コロナ対策でマスク姿の三由さん。橋の近くに戻ってまた網を入れる。
この日は計5回で漁は終了。午前7時すぎ、港に戻ると、近くの料亭三川屋の女将、大和寿子さん(54)が車で駆け付けていた。エツを受け取ると、急いで料亭に戻る。さっきまで生きていたエツだけが細く細く切られ、氷水につけられた。鮮度が命のあらい用だ。「身がぷりっとしていて、自信を持って出せる」と大和さん。
せっかくの珍味だが、コロナの影響で団体客が来ないのが痛い。夜の客の入り具合に合わせ、荒木夫妻にその日にもう一度漁に行ってもらうことも、今年はない。エツ漁は7月20日まで続く予定だが、船上で料理を楽しむ遊覧船の出番も見通せていない。
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そんな苦境の中、大川観光協会が新たな取り組みを始めた。エツづくしの弁当(3500円相当)が抽選で50人に当たる企画だ。
弁当には、刺し身、煮付け、南蛮漬け、すし、すり身のダンゴなどが入る。
協会によると、昨年までは市内の店に行って食べてもらっていた。今回は、コロナの影響を考慮して、市内9店のいずれかに弁当を取りに行ってもらう。
往復はがきに住所、氏名、年齢、電話番号、「大川名物初夏の味えつ御膳希望」と書いて、協会(〒831・0005 福岡県大川市向島2525の2)に送る。外れても、エツづくし弁当の10%割引券がはがきに印刷されて返ってくる。20日必着。問い合わせは協会(0944・87・0923)。(祝迫勝之)