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独裁国家・北朝鮮が突如「君主独裁に反対」
経済難による民心の悪化で金正恩(キム・ジョンウン)氏を「愛民指導者」に…指導層に不満が広がる事態を遮断
北朝鮮が「私利私欲」を満たす専制君主独裁を批判し、指導者の愛民精神と高位層の献身を強調した中国清の時代の書籍を肯定的に評価していたことが17日までにわかった。
対北制裁の長期化と経済難で民心が悪化しているため、住民の不満をやわらげると同時に、民心を引き締めるため金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長を独裁者ではない「愛民の指導者」と認識させる意図があるとみられる。
北朝鮮が隔月で発刊する雑誌「社会科学」2020年1月号において、中国清の時代に黄宗羲が書いた「明夷待訪録」を評価する文書が掲載された。
「黄宗羲の君主批判論とその意義」と題されたこの文書には「黄宗羲は、国家はすなわち天下の全ての民衆のものであり、国家の利益は天下の全ての民衆の利益にあるという観点に基づき、国家を君主個人の独裁物とし、国家の利益を君主個人の利益と同一視する封建的絶対君主制の弊端を明らかにした」と主張した。
黄宗羲は、明が異民族の清に滅ぼされた根本原因について「天下のためではなく、自らの私益を得ようとしたことにある」と指摘していた。
この文書はさらに「君主個人の独裁に反対し、天下万民の利益のため君主と臣下が共同で国家を治めなければならないとする黄宗羲の主張は、たとえ中世期的な観念から完全に脱皮はできていないとしても、新たな形の国家政治体制樹立へと向かった革新的なもの」とも主張した。
北朝鮮が、社会世論主導層が主に目にする社会科学の雑誌にこのような文書を掲載した背景には、昨年の「ハノイ・ノーディール」以降、対北制裁の長期化と経済難による住民の不満が指導部に向かうことを防ぐねらいがあるとみられる。
かつて北朝鮮の政府高官だった脱北民のA氏は「金正恩は独裁君主ではなく、住民と生死苦楽を共にする指導者というイメージを持たせ、民心を結集させる意図があるようだ」との見方を示した。
金正恩氏は先日、自らの個人倉庫を開放し、水害地域に医薬品と救護品を送った。さらに北朝鮮の高位幹部らは、労働党創建日の10月10日までに水害の復旧を終わらせることを誓った。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/08/18/2020081880002.html