神奈川県の東名高速道路で2017年にあおり運転を受けた夫婦が死亡した事故を巡り、無関係の会社をインターネット上で中傷したとして小倉検察審査会から「起訴議決」を受けた投稿者の無職男性(65)=福岡県春日市=について、
検察官役の指定弁護士は2日、名誉毀損(きそん)罪で福岡地裁に在宅のまま強制起訴した。当初11人が書類送検されたネットデマ事件の捜査は審査会を経た「市民による起訴」で区切りとなり、司法判断が注目される。
起訴状などによると、強制起訴された男性は17年10月、あおり運転をした被告男性(1審で懲役18年、控訴審で差し戻し)が逮捕された後、
被告と同じ姓が会社名にあり住所も近い北九州市八幡西区の建設会社について、被告の勤務先であるかのような書き込みをネットの掲示板に投稿し、名誉を傷つけたとしている。
建設会社を経営する石橋秀文さん(50)によると、ネットには石橋さんの名前や住所、電話番号などがさらされ、会社には無言電話や中傷電話が多い日で100件以上かかってきた。
石橋さんから告訴を受けた福岡県警は18年6月、11人を名誉毀損容疑で書類送検したが、福岡地検小倉支部は同8月、11人全員を不起訴処分にした。
うち死亡した1人と石橋さんに謝罪した1人を除く9人について、石橋さんは不起訴を不当として小倉検察審査会に審査を申し立てた。
審査会は19年10月に9人全員を「起訴相当」と議決し、再捜査した地検小倉支部はうち1人を起訴、5人を略式起訴したが、残る3人は示談や和解が成立しているなどとして再び不起訴とした。
その3人について審査会は20年7月、今回強制起訴された男性を起訴すべきだとする「起訴議決」とし、残る2人は「起訴議決に至らず」と判断。審査会は「(男性の)和解はあくまで民事上で、刑事上の処分を免れさせるという意味ではない」とした。
男性の強制起訴で、名誉毀損罪の公訴時効(3年)を目前に当初書類送検された11人の捜査結果は出そろった形だ。一度は11人全員が不起訴となったが、検察審査会を経た再捜査でうち5人が略式起訴で罰金刑となり、起訴された2人の審理が法廷で始まる。
石橋さんは毎日新聞の取材に「ネット上のデマや著名人への誹謗(ひぼう)中傷がやまない中、少しでも抑止力になるような裁判所の判断を望んでいる」と話した。【成松秋穂、宗岡敬介】
https://news.yahoo.co.jp/articles/ecff4f26874155019c99c38147501e993e87ce3a