「鬼滅の刃」GDPにもっと貢献 12月に基準改定
大ヒットするアニメ映画「鬼滅の刃(きめつのやいば)」は、内閣府が12月に予定する約5年に1度の基準改定で国内総生産(GDP)にもっと貢献することになる。
映画などの娯楽作品の原本を「資本」とみなし、民間設備投資にカウントするように推計方法を変えるためだ。全体へのインパクトは決して大きくないのが現状だが、
日本のアニメ技術は世界に誇れる高さ。世界展開が進めば、経済成長率を大きく動かす日がくるかもしれない。
■娯楽作品の原本、名目GDP比0.2%程度
原本とはコピーや翻訳をする前のオリジナルな文書などのこと。映画やテレビ番組、音楽、書籍の原本の制作を「固定資本形成」とすると、内閣府によれば
15年の名目GDPの0.2%程度になるという。名目GDPは531兆3100億円だったので、金額にすると約1兆600億円だ。
内閣府は12月8日に公表する2020年7〜9月期GDPの2次速報値から過去にさかのぼって、基準年を現行の11年から15年に更新した改定値を明らかにする。
ビジネス版国勢調査である「経済センサス」など約5年に1度集計する大規模な構造統計の最新版(現在は15年)に合わせ、GDPも基準年を改定する。
娯楽作品の原本は、現時点ではGDPの推計上は製造業にとっての原材料などと同じく「中間費用」となっている。GDPはある期間中に国内で生み出した
付加価値を合計したものだから、企業などの「産出額」から中間費用を差し引く。娯楽作品の原本については今後、中間費用ではなく付加価値のある
資本として計上することになる。
「鬼滅の刃」を映画館で鑑賞すれば、GDPではこれまでも個人消費にカウントされてきた。そこに原本の制作が設備投資として加われば、GDPをさらに押し上げることになる。
(略)
■がんばれ、クールジャパン
原本の資本化と同時に娯楽作品などの著作権サービスのやりとりもGDPへの計上を開始する。国内でのやりとりは買った側の中間費用となって
相殺されてしまうので、影響が出るのは輸出入だ。ハリウッドやディズニーを抱える米国などからの著作権サービスの輸入が多いため、15年時点では
輸入超過となっている。
国内で制作した原本が設備投資として新たに加わる一方、著作権サービスの輸入超過分はGDPを押し下げる。娯楽作品の原本を巡る推計の変更を
トータルしてみると、内閣府の試算では15年の名目GDP比は0.0%程度。内閣府によると小数点2位以下までみるとプラスというが、インパクトはほとんどない。
「鬼滅の刃」は来年には米国でも映画公開の見通しだ。今後、日本アニメの海外展開が一段と加速していけば、著作権サービスはいつか輸出超過に
転じるかもしれない。がんばれ、クールジャパン。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL02HXQ_S0A101C2000000/