工業遺産の「南満州鉄道」火力発電所を誤って解体…ずさん管理、市が補修へ
2020/11/23 08:16 読売新聞
中国遼寧省撫順で1930年代初め、日本の国策会社「南満州鉄道」(満鉄)が建設した火力発電施設が10月、取り壊された。
撫順市の遺産に指定されていたが、業者が誤って解体した。中国の文化遺産管理のずさんさを改めて示したと言える。
壊されたのは、2011年まで稼働していた発電所の「第2工場」だ。周辺の施設を解体していた業者が第2工場でも作業を続けたという。
地元住民が10月中旬に気付き、市に指摘した。作業は止まったが、壁と屋根の一部を残すだけとなった。市当局は原因を調べ、補修する方針を示した。
満鉄関係者がまとめた資料などによると、第2工場は、満鉄の収入源だった撫順炭鉱の電力需要を満たす目的で建設された。
終戦後も利用された発電所の代表的な施設で、遼寧省を含む中国東北部の経済発展に貢献した。発電所は中国の「火力発電の母」とも称される。
撫順で歴史遺産の保存に取り組む地元の大学生、李想さん(22)は第2工場について「復元は難しいだろうが、残った部分だけでも保存してほしい」と話す。
市当局は18年、第2工場を含む満鉄時代の主な産業施設を「工業遺産」に指定し、保護を命じた。市は「愛国主義教育の重要性を促すことができるため」と説明した。
日本が中国を経済的に収奪したとの見方に基づくものとみられる。中国では急速な経済発展に伴う観光開発などを背景に、文化遺産の管理態勢の不備が指摘される。
習近平国家主席は16年、文化遺産保護の徹底を求める指示を出した。
https://www.yomiuri.co.jp/world/20201123-OYT1T50033/ 取り壊された後の画像。壁と屋根の一部を残すだけになった
取り壊される前の画像