10代がハマるTikTokに、「アンチ」「批判」が存在しない理由
まずは、TikTokで流行している「変身」に関するシリーズを2つ紹介したい。
●「1秒変身」
https://vt.tiktok.com/U9xvxj/ ●「加工100から0」
https://vt.tiktok.com/U9fAFk/ 前者は、寝癖にパジャマなどまったく身繕いをしていない状態から、メイクやヘアセットに
よりおしゃれをした状態に一瞬にして変わるという編集動画。後者は、TikTokにある顔面
加工機能をすべて100%にした状態から、すべて外した本来の自分の顔に一瞬にして変わる
という内容だ。まったく趣旨が逆のシリーズではあるが、共通しているのは「ダサい自分を
公開している」という点だ。
「ダサい自分」を公開したTikTokユーザー(=投稿者)が体験するのが、意外にも、「とに
かく褒められる」ことである。「変身後も綺麗だけど変身前もめっちゃ綺麗!」「加工して
なくても普通にかっこいい」。男女問わず、こうしたコメントが大量につくのだ。加工が
当然の時代になったからこそ「加工前の本来の姿」を晒し、しかもそれを褒めあうという
文化が形成されている。
このように互いを褒めることに大きな価値を見出しているZ世代は、アンチを絶対に許さない。
アンチコメントもあるにはあるが、「この人なりのかわいらしさがあると思うけど」「アンチ
してる人はこの人よりもかわいいの?」「暇なんだね」「やめなよ」という、アンチに対する
大量の返信で、アンチコメント自体が埋もれていく。
また、今年後半に入ってからは「このコメントを見て投稿主さんが自殺したらどうするんですか?」
という批判コメントも多くみられるようになった。リアリティーショー『テラスハウス』の
出演者がSNSでの誹謗中傷に苦しみ自殺したという不幸な事件を受け、若者たちがアンチに
対する危機感をいっそう強めていることがわかる。
こうした投稿やコメントから、TikTokユーザーの若者たちは、「人の悪口を言ってはいけない」
という、もはや信念ともいえる強い倫理観、道徳観で繋がっているように見える。
Z世代のこうした倫理観は、ついにはその対象を別の世代にまで拡張する。
TikTokには当然、いわゆるおじさん・おばさん、40代〜60代と見られるユーザーも存在する。
10代のユーザーたちと同じように、流行している音源で踊ってみたり、ネタを作ってコントを
してみたりと様々な挑戦をしているのだ。
https://vt.tiktok.com/U9sdnL/ https://vt.tiktok.com/U9U5u6/ https://vt.tiktok.com/U9f2Ss/ もしTwitterで、彼らが同様の投稿をしたら……と思うと、若干の恐怖にかられる。彼らの年齢を
揶揄するアンチコメントがつかないとはとても言い切れないからだ。
一方でTikTokユーザーたちは、彼らのことを両手をこれでもかと広げて歓迎する。「こんな上司が
いたら最高!」「こういうことできる人は絶対仕事もできるよね」「こういう風に年を取りたい」
そんなコメントが一斉についているのだ。
相手が誰であれ手放しに歓迎し、褒め、アンチは絶対に受け入れない。そんなZ世代がインター
ネットに求めているのは、隣人愛にあふれるユートピアなのではないだろうか。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/78262