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◇自然と闘い球場を維持 下関国際が練習で汗を流す下関球場(下関市冨任)。チームが毎回「足を踏み入れるのがもったいない」と敬意を払うほど整然とした球場は、担当者の山田信昭さん(72)の日々の努力のたまものだ。
幼いころから野球が好きで、60歳で会社員を定年退職後、当時球場で働いていた野球仲間から声を掛けられてこの道に入った。現在、球場の整備責任者を務めている。
仕事は自然との闘いでもある。降雨時には水が流れるように角度を計測し、傾斜をつくる。春先になると、外野の芝生に芽が生えて伸び始めるため、1週間に1度、機械で刈り、約1センチを保っている。
特に大切にしているのは試合の流れが変わってしまうイレギュラーバウンドの発生を防ぐことだ。特に走路は最短距離を走るため、ほぼ同じところに凹凸ができてしまい、ボールが飛んでいけばイレギュラーバウンドが起きる。大会中の試合と試合の限られた時間内であっても入念に整備している。
「どこの学校が甲子園に出ても、戸惑いの無いように」。そんな思いで整備してきた下関球場では、「ここ10年、イレギュラーバウンドで試合の流れが変わったことはないんじゃないかな」と胸を張る。
野球シーズンに入れば大会中は午前8時から試合が始まり、選手たちは6時ごろには球場へ来る。そのため、午前4時ごろに起きて、5時ごろから作業に取りかかる。オフシーズン(1・2月)もメンテナンスで忙しい。かき起こし(土を入れ替える作業)や、シーズン中に風で芝生に寄せられて積もった約10センチの砂を出して、芝生と土の間に段差が無いようにする。
球場整備の仕事を始めて10年以上たち、最年長のスタッフとなった。「簡単そうに見えるけど誰にでもできる仕事ではない。夏の暑さは新陳代謝で耐えられるけど、冬の寒さは手がかじかみ、足がしびれる」と苦労も多い。それでも野球の全てが好きだ。「特に高校野球は甲子園に向かってひたむきにプレーする選手たちの姿に感動する」と、下関国際の甲子園での活躍を楽しみにしている。【堀菜菜子】