中国共産党政権は現在、発展途上国へのワクチン提供を通じて政治的影響力を高める「ワクチン外交」を展開している。発展途上国69カ国に無償提供し、43カ国に輸出する計画も報じられた。
これに対抗して、自由主義を掲げるクアッドの首脳会合では、ジョー・バイデン米大統領がワクチンの生産拡大を加速させる連携を表明。日米豪印で、インド太平洋地域の発展途上国へのワクチン支援協力で一致した。来年末までにワクチン10億回分を供給するという。
欧米諸国は、中国が東・南シナ海などで軍事的覇権拡大を進めていることや、香港やウイグルでの人権問題も批判している。来年の北京冬季五輪ボイコットを示唆する動きもある。
ドナルド・トランプ米政権は今年1月、中国当局によるウイグル人弾圧を国際法上の犯罪である「ジェノサイド」と認定し、ジョー・バイデン政権も追認した。カナダ下院も2月22日、「ジェノサイド」認定し、中国以外での五輪開催をIOCに働きかけるよう政府に求める決議を採択した。
■“恩着せ”ワクチン外交
英国野党・自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首は同24日、下院で「(大虐殺が)私たちの目の前で起こっている」とし、英代表チームの北京大会の参加取りやめを求めた。米国のジェン・サキ大統領報道官は同25日、北京五輪への米国参加について、「(バイデン大統領は)最終決定していない」と語った。
こうしたなか、IOCのバッハ会長が「中国によるワクチン提供」を持ち出してきたのである。まさか、ドイツ人である会長が「ジェノサイド」という指摘を軽視するとは考えにくい。
バッハ会長は12日の記者会見で、「(ワクチンの確保などは)各国の指針や規則に従うことがIOCの原則」と述べた。
中国事情に詳しい評論家の石平氏は「中国は東京五輪のためでなく、北京五輪をボイコットさせないための伏線を敷こうと考えているのではないか。『ワクチン提供で、人権弾圧が払拭できればいい』と画策している可能性もある。もし、接種が進めば、『中国のおかげで東京五輪が成功した!』と宣伝するだろう。日本は米国などと協力して、信頼性の高いワクチンを早く確保すべきだ」と語った。
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