![](http://img.5ch.net/ico/morara.gif)
生活が困窮した末…74歳母親と心中を図った息子の「悲しい動機」
<省略>
現在、コロナ禍によって格差がこれまでにないほど広がっていると言われている。
そして貧困ゆえに死へと追いつめられる者も決して少なくない。
NHKの調査では、2020年に起きた心中事件は全国で46件、101人。
しかも、その半数近くが、コロナ禍の影響で自殺者が急増した10月〜12月の3ヵ月間に集中していたという。
私は、心中事件を含む親族間で起きている殺人事件を『近親殺人――そばにいたから』(新潮社)にまとめた。
その中から、貧困が原因で起きた心中事件について述べたい。
◆放蕩三昧だった父親
<省略>
◆母親はボロボロの布団にくるまり……
<省略>
◆60万円の目算が15万円に
<省略>
◆ATMの表示に愕然
こうした生活の中で、彼の自殺願望は日増しに膨らんでいった。
精神医学の研究では、自殺者の9割以上がうつ病をはじめとした精神疾患の兆候があるとされている。
彼の場合も心の病が自殺願望を大きくさせていたのだろう。
2015年5月26日の明け方、貴志はほとんど客をつかまえられないまま夜勤を終えてマンションに帰った。
布団に入っても、寝付けない。頭にあったのは、翌日に迫っているカードの引き落とし期日だったが、銀行口座は空だった。
貴志は寝るのをあきらめ、彩子を連れて近所のコンビニエンスストアへ行くことにした。
ATMで借入をしようとしたのだ。だが、ディスプレイに出た表示は〈ご利用できません〉だった。限度額に達していたのだ。
頭が真っ白になって自宅に帰った貴志は、コップを握りしめて焼酎を飲みはじめた。
もう頼れる先はない。タクシーも、マンションも失うことになる。
貴志はコップを握りしめて言った。
「もう、死のっか」
部屋の隅には数年前にキャンプ用に買った練炭があった。これで二酸化炭素を発生させれば、眠ったように逝けるはずだ。
彩子は同意したように黙っていた。
貴志はその後も数十分間黙って酒を飲みつづけると、練炭を両手で抱えて台所へ運んだ。
ガスコンロの上にそれを置いて火をつける。彩子は口をつぐんでいる。
貴志は母親に言った。
「最後に一杯飲む?」
「そうね。いただこうかな……」
<続く>
https://news.yahoo.co.jp/articles/c3bde50542e06a141dc40c1979a9a56961190c7c