被害者への保険金を抑えようとする損保会社 事故で全身まひの女子大生への冷酷対応
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagiharamika/20211207-00271483
交通事故で頚髄を損傷し、四肢麻痺の傷害を負った神谷ちさとさん(神谷さん提供)
「交通事故の被害者は、なぜこれほど苦しめられるのか……。先日、被害者・遺族の懇談会で、聴覚障害のお嬢さんを亡くされた井出さんとお話しする機会がありました。我が家も同じ損保会社から、障害者になった娘の生きる権利をも奪うような対応をされ、あまりに理不尽な現実に改めて怒りと疑問が込み上げました」
そう憤るのは、2年前、長女が交通事故で全身まひの重度障害を負った、神谷さんです。
神谷さんが意見交換をしたという井出さんの事故については、すでにメディアで大きく報じられているのでご存じの方も多いでしょう。
井出さんの長女・安優香さん(当時11)は、ろう学校に通う聴覚障害児でした。2018年2月、下校途中に信号待ちをしていたところ、暴走してきた工事用の重機にひかれ亡くなりました。
その後の民事裁判で被告側は、「聴覚障害者は思考力や言語力、学力を獲得することが困難。就職自体が難しい」として、健常女性の平均収入から60%カットして逸失利益(将来得られたであろう収入)を算出すべきだと主張してきたのです。
【聴覚・視覚障害の弁護士たちが立ち上った! 難聴の11歳女児死亡事故裁判に異議(柳原三佳) - 個人 - Yahoo!ニュース】
これに対して遺族は、「障害者への不当な差別だ」と反論。聴覚障害者の団体からも怒りの声が上がり、全国的な署名活動へと発展しました。
こうした世論に反応したのか、2021年9月、被告側の保険会社は裁判の途中で突然、これまでの主張を「聴覚障害者の平均賃金で算出すべき」という内容に変えてきました。
このとき多くのメディアは「主張を撤回」と報じましたが、実は、新たに提示された逸失利益も健常者の平均賃金の6割にとどまっており、裁判は今も大阪地裁で係争中です。