【パリ=三井美奈】南太平洋にあるフランスの海外領土ニューカレドニアで12日、独立の是非を問う住民投票が行われる。ニューカレドニアは世界有数のニッケル産出地。経済進出を続けた中国が、ニューカレドニアの独立支持派に急接近しており、フランス国内で警戒感が強まっている。
ニューカレドニアは19世紀にフランスに併合され、現在は人口約27万人。1980年代、先住民から独立要求が高まり、98年の協定で、独立を問う住民投票を3回実施することが決まった。昨年までの2回の投票で独立はいずれも否決された。独立支持は2018年の第1回投票で43%、昨年の第2回投票は47%。今回は3回目の投票となる。
ニューカレドニアのニッケル産出量は、インドネシアやオーストラリアなどに次いで世界4位。ニッケルは電気自動車(EV)のリチウムイオン電池に不可欠な材料で、中国企業が相次ぎ開発に参入。最大の輸出先は中国となっている。
フランスでは保守系議員から「投票はフランスか、中国かの選択になる。マクロン大統領は住民に仏領残留を呼びかけよ」との声も出たが、仏政府は住民投票への介入を避けている。
仏国防省傘下の「フランス軍事学校戦略研究所(IRSEM)」は9月の報告書で、中国がニューカレドニアで在外中国人を通じて独立派に接近していると警鐘を鳴らしている。
その背景には、経済利権だけではなく、ニューカレドニアを中国包囲網打破の拠点とし、豪州を孤立させる計算があるとみている。周辺の島嶼(とうしょ)、フィジー、バヌアツなどでも中国は影響力を高めている。
https://www.sankei.com/article/20211211-O3DQNQC7PZPSFJSHGPQ5GQIRKI/