「建設工事受注動態統計調査の不適切処理に係る検証委員会」の報告書について
https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo09_hh_000047.html https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001459557.pdf 第2 本件二重計上問題の原因
1 直接的な原因
本件二重計上は、平成 22 年から平成 23 年 10 月までにかけて検討されていた推計方法の変更の過程において、集計の現場で本件合算処理が行われていたにもかかわらず、回収率の逆数を乗じる推計方法を採用したことによって生じたものである。
また、平成 25 年 4 月分の推計方法の変更以降の本件統計室の係員は、回収率の逆数を乗じて補正をしていることに加え、過月分合算を承知していたのであるが、そのことに疑問を持たずに、本件合算処理を継続した。
係員レベルでは、平成 25 年 4 月の変更時に必要な検討がされて、統計的に改善されて、完全なものができあがっていたと認識し、疑問を抱かなかったことがうかがわれる。
本件合算問題については、平成 31 年 4 月に本件統計室に着任した課長補佐がその処理に疑問を抱き、その問題点の洗い出しをしたことが、本件二重計上の発覚につながっており、係長又は係員において、同課長補佐のような「気づき」を得られなかったことが原因になっていると考えられる。
2 間接的な原因
平成 22 年から平成 23 年 10 月にかけての推計方法の見直しの過程で、本件統計室課長補佐以上の者が本件二重計上問題を認識できなかったのは、建設受注統計調査の集計等の実務を担当していた本件統計室の係長以下の者と、欠測値の推計による補完方法を検討していた課長補佐以上の者の間で十分な情報共有がなされておらず、いわば情報の分断が生じていたことにあると考えられる。
ここでも合算問題と同様に、集計作業は係員以下の現場作業で、室長ら幹部が集計作業を現場任せにしていたという分業意識が背景にあったと考えられる。
また、平成 25 年 4 月以降において、係長以下の係員が本件二重計上に気づかなかった原因も、目先の業務で手一杯で、回収率の逆数を乗じる推計方法の変更といった統計の理論的な問題と現場集計作業の実際とを結びつけるような思考を働かせることができなかったことにあると考えられる。