青信号を渡っていたのに ~絶たれた“マン画家”の夢
https://www3.nhk.or.jp/news/special/jiken_kisha/shougen/shougen58/
事故原因は信号無視
千葉県木更津市で突然、最愛の娘を失った日のことを語ってくれた母親の安藤正恵さん。
事故の詳細を知れば知るほど、受け入れることはできなかったと振り返ります。
母親の正恵さん
現場は片側2車線の県道で、見通しのよい交差点です。
事故を起こした車は赤信号を無視して交差点に入り、横断歩道を渡っていた音織さんと友だちの女の子をはねました。
車のスピードはおよそ60キロ、ブレーキを踏んだ形跡はありませんでした。
音織さんは30メートルほど飛ばされ、一緒にいた友だちは今も意識不明のままです。
友だちの両親は深夜も欠かさず3時間おきに、たんの吸引や体の向きを変える介護をずっと続けているそうです。
横断歩道には歩行者用の信号が設置されていて、音織さんたちは青信号を渡っていました。
49歳のドライバーは「ぼーっとしていて信号を見ていなかった」と供述。
過失運転致死傷の罪で起訴されました。
裁判の判決などによるとドライバーは過去に複数回、交通違反や人身事故を起こしていて、事故の5年前には免許の取り消し処分を受けています。
妻から運転適性がないと運転を止められていたにもかかわらず、1年後には再び免許を取って運転を続けていました。
裁判で信号無視の理由を問われた際には、「いつも青信号だったので、あの日も青信号だと思った」と繰り返し話したということで、正恵さんは怒りがこみ上げたといいます。
「どうしてブレーキをかけてくれなかったんだろうって。普通に目を開けて運転していたのならブレーキを踏めたはずだと思うんです」
判決で、裁判長は次のように指摘しました。
「被告は事故現場までの数百メートルにわたり、信号などに一切注意を払わずに漫然と運転していた」
「亡くなった女の子は無限の可能性に満ちた将来を奪われ、大けがをした女の子は一度も意識が回復せず延命治療が続けられていて、取り返しのつかない結果が生じた」
そして言い渡された禁錮3年6か月。
同じような事案の量刑傾向を踏まえた判決でしたが、正恵さんにとってはあまりにも“軽い”と感じざるを得ませんでした。