
奈良県警吉野署が、持ち運びできる速度違反自動取締装置(可搬式オービス)を模した<かかしオービス>を運用している。紙製の張りぼてだが、製造元にも許可を得た見栄えで、見かけて速度を落とすドライバーも。
署は一定の抑止効果があるとして今後も活用する考えで、「(取り締まり可能な)本物の場合もあるので、常にスピードは控えめに」としている。(遠藤絢子)
可搬式オービスの一つ「LSM―300」は1台約1100万円。容易に台数は増やせず、3台の装置を県内12署で運用しているため、各署の使用順は2、3か月に1度ほどしか回ってこないのが現状だ。また、通常の取り締まりには署員4、5人が必要で、小さな警察署では大きな負担になっていた。
そこで考案されたのが、ダミーだった。今春、吉野署の若手交通課員2人が「本物そっくりの偽物を使うのはどうか」と提案。製造元の東京航空計器の許可も取り、3か月かけて製作した。厚紙にラミネート加工を施した箱形で、黒く塗ったカップ麺の容器をストロボ部分に見立てるなどした。実物にうり二つの外観で、走行中の車からだと見分けがつかないという。
材料は全て署内で調達し、かかった費用は「0円」。片手で持ち上げられるほどの重さで、1人でも対応が可能になった。吉野署はこのダミーを7月に初運用。これまでに2回使用したところ、取り締まりを実施した地域の駐在所に、住民から「通行車両のスピードが落ちた」との声も寄せられ、効果が出ているようだ。署は今後も実物と並行して使用していく考えだ。
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230831-OYT1T50081/2/